桶屋「儲けたいなぁ……よっしゃ、風を吹かせよう!」
- 2017年06月05日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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桶屋「あーあ、最近桶が売れないなぁ」
女店員「まあ、そうそう売れるような商品でもないですしね」
桶屋「ここらで一発ドカンと儲けたいなぁ……」
桶屋「となると、アレしかないか……」
女店員「アレ?」
桶屋「よっしゃ、風を吹かせよう!」
女店員「は!?」
桶屋「君は“風が吹けば桶屋が儲かる”ってことわざ知らないのか?」
桶屋「風が吹くとホコリが飛び散り、ホコリが目に入って失明する人が増える」
桶屋「失明した人は生活費を稼ぐために三味線を買い求め、材料になる猫が殺されまくり」
桶屋「天敵がいなくなったネズミが桶をかじるようになり……桶屋が儲かるってやつだよ」
女店員「さすがにそれぐらい知ってますけど、問題はそこじゃないですよ」
桶屋「決まってんだろ……雨乞いならぬ風乞いよ!」
桶屋「天に風よ吹けと祈れば、きっと天は風を吹かせてくれる!」
桶屋「風さえ吹けば、あとは儲かるのを待つだけって寸法よ」
桶屋「そうと決まれば、祈祷の準備だ!」
女店員「はぁ……」
桶屋「風よォォォォ、吹ぅけぇぇぇぇ……」
桶屋「……ダメだ! なにも吹かない!」
女店員「吹くわけないでしょう」
桶屋「おかしいな、あの有名な諸葛孔明はこうやって東南の風を吹かせて、赤壁で……」
女店員「あれは天候を読んだだけで、妖術でもなんでもないって話じゃないですか」
女店員「あなたのやってることは、1800年前の中国人以下ですよ」
桶屋「ぐっ……!」
TV『しばらく風の吹かない日が続くでしょう。全然風が吹かないでしょう。しばらく無風でしょう』
桶屋「マジか~!」
女店員「どうあがいても、風は吹きそうにないですね」
女店員「どうやって?」
桶屋「こうやって、うちわで……」バッサバッサ…
桶屋「疲れた!」ポイッ
女店員(うわぁ……なんという頭の悪さ、根気の無さ……)
女店員「ですね」
桶屋「だったらどうせ客なんか来ないし、いいアイディアを思いつくために出かけよう!」
女店員「そうしましょう」バサッ
桶屋「――ん、なんだその紙の束」
女店員「お出かけついでにチラシ配りでもしようかと思って」
桶屋「チラシ配りなんかで客が増えたら苦労しねえよ!」
女店員(そうかもしれないけど、この人だけには言われたくない)
桶屋「――お、第一通行人発見!」
女店員「どうするんです?」
桶屋「決まってんだろ?」
桶屋「風が吹かないのなら、第二段階に移行するまで!」
女店員「第二段階?」
桶屋「風が吹いてホコリのせいで失明する人が増える……で、風が吹かないわけだから」
桶屋「俺の手で奴の目を潰す!!!」
女店員「は!?」
通行人「ん?」
桶屋「悪いが……両目を潰させてもらうぜ」ザッ
通行人「……来たまえ」ザッ
女店員「あっ、相手になってくれるんだ」
通行人「ふん」サッ
桶屋「俺の蹴りがかわされた!?」
通行人「この足の裏……魚の目があるな」
通行人「お返しに……魚の目を潰してやろう」グチュッ
桶屋「ぐぎゃあああああ!!!」
通行人「あ、どうも」
女店員「大丈夫ですか?」
桶屋「いてぇぇぇ……いてぇよぉ……」
女店員「目を潰そうとして、その程度で済んだんだから幸運ですよ」
女店員「第三段階は……失明した人が三味線を買い求める、ですね」
桶屋「その通り!」
桶屋「だから、目が見えない人に三味線を買わせる!!!」
女店員「ちょうどいいところに、目が見えない人が歩いてきましたね」
盲目男「……」スタスタ
盲目男「ん? 声からしてかなりIQの低い人のようだ」
桶屋「なんだとォ!? 声だけで分かるわけねえだろ!」
女店員(正解)
桶屋「まぁいいや、この三味線買えや! 5000円でいい!」
盲目男「イヤです」
桶屋「3000円!」
盲目男「いりません」
桶屋「1000円!」
盲目男「いらないです」
桶屋「タダでいいから……」
盲目男「結構です」
桶屋「ならば……死ねぇッ!!!」
盲目男「目が見えずとも、音や気配で相手の動きは読めるのですよ」スッ…
ドゴォッ!!!
桶屋「ぐはぁっ!?」
盲目男「あ、どうも」
桶屋「ぐはっ……げほっ、ごほっ……」
桶屋「なんで目が見えないのに、あんなに強いんだよぉ……」
女店員「目が見えない人がものすごく強いのはお約束ですから」
女店員「例外もいますけど」
琉球人「何が可笑しい!!!」
女店員「どうやって?」
桶屋「路上ライブだ!」
桶屋「駅前で路上ライブを開いて、三味線をアピールするんだ!」ベベンベン
女店員(だんだんおかしくなってきたわ……いや最初からか)
桶屋「桶狭間でぇ~、今川義元死んじゃった~♪」ベンベベベン
シ~ン……
桶屋(くそっ、誰も聴いてくれない……)
女店員「駅前だとチラシ配りがはかどりますね」ピラッピラッ
桶屋「はい?」
桶屋(お、なんだか業界人っぽい男!)
スーツ男「よかったら……ここへ連絡してくれ」スッ…
桶屋(え!? もしかしてスカウトの予感!?)
桶屋「さっそく電話してみよう!」ピッピッピッ
電話『こちらハローワークです』
桶屋「クソがああああああ!!!!! 俺は無職じゃねえよ!!!」
桶屋「だったら、なるべくやりたくない手段だったが……アレしかないな」
女店員「アレ?」
桶屋「ああ、心を鬼にするしかない」
桶屋「桶をかじるネズミを増やすために……猫を殺る!」
桶屋「君がここらの猫のボスだそうだな……」パキポキ
猫「うむ……吾輩は猫である」
桶屋「恨みはないが……桶屋のために死んでもらう!」
猫「来るがいい」
女店員(この勝負……見るまでもないわね)
ドゴッ!
桶屋「ギャアアアアアアッ!」
女店員「……」
桶屋「いてぇ……ちくしょう……あんな強い猫、アリかよ……。ライオンより強いんじゃねえの……」
子猫「ニャ~ン」
桶屋「お、あんなところに捨てられた子猫が!」
桶屋「衰弱しまくってるし、あれになら勝てるッ!!!」
子猫「ニャア~……」
桶屋「犠牲……」
子猫「ニャ~……」
桶屋「……」
桶屋(殺せないっ……俺には殺せない!!!)ガクッ
桶屋「今日からお前は……俺の猫だ!」ガシッ
子猫「ニャ~ン」
女店員(たまにこういうとこがあるから、この人見捨てる気になれないのよね)
桶屋「ミルクうまいか?」
子猫「ニャン!」
桶屋「そうかそうか、お前のことはシャミと名づけよう!」
子猫「ニャ~ン」
女店員「シャミちゃんか……いい名前ですね」
女店員(ネーミングの由来が三味線なのがちょっと引っかかるけど)
女店員「あ、まだ続けるつもりだったんですか」
桶屋「当たり前だ! なぁ、シャミ?」
子猫「ニャン!」
桶屋「こうなったら……」
桶屋「ネズミに桶をかじらせるしかない!」
女店員「どうやって?」
桶屋「このあたりのネズミの巣窟は知ってる。そこに行って直接頼み込む!」
ネズミ「イヤだよ。今の時代、桶よりかじりがいのあるものなんて一杯あるしさ」
桶屋「チーズあげますから……」
ネズミ「ネズミがチーズ好きってのは俗説ね。別に好きでもなんでもないから」
桶屋「くそっ! 下手に出てたら付け上がりやがって! かじれよォォォ!」
ネズミ「あんまりしつこいと、親分呼ぶよ?」
桶屋「おう、呼んでみろ! こちとら猫のボスともやり合ってんだ、ネズミの親分なんか怖くねえ!」
ネズミ「おおっ、大きく出たもんだね」
ネズミ「おやぶーん!」
ハハッ!
桶屋「!?」ギョッ
桶屋「あ、あなたは……!?」
ネズミ親分「ボクガコワクナイダッテ? ハハッ!」
桶屋「いや……違うんです! まさかあなたが出てくるなんて!」
ネズミ親分「ジャアファイトシヨッカ! ハハッ!」
桶屋「ま、待って下さい! あの……これは誤解で――」
ネズミ親分「モウテオクレサ! ハハッ!」
桶屋「ぐぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」
女店員「見ちゃダメよ、シャミちゃん。あの人は最凶の相手に喧嘩を売ってしまったの」
子猫「ニャァ……」
桶屋「ぐ、ぐふっ……」
女店員「大丈夫ですか?」
桶屋「なんとかな……」
子猫「ニャア……」ペロペロ…
桶屋「ありがとう、シャミ……」
女店員「知能も商才も腕力も三流だけど、生命力だけは一流ですね」
桶屋「ひ、ひでえ言い草だ……」
桶屋「それにしても……ことわざはしょせんことわざに過ぎなかったな……」
桶屋「風が吹けば桶屋が儲かる、なんてのは夢物語だったんだ……」
桶屋「――ん?」
客B「桶ひとつちょーだいな!」
客C「桶売ってくれ!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
桶屋「えええ、なんで客が!? どうしてなの!?」
子猫「ニャァン!」
桶屋「チラシ……? ああ、そういえばさりげなく配ってたな」
桶屋「君はどんなチラシを配ってたんだ?」
女店員「これです」ピラッ
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女店員「日本人って風情を大切にするところがあるから、わりといけるかなって思いまして」
子猫「ニャ~ン」
桶屋「なるほど……」
桶屋「風が吹かないと桶屋が儲かる……ってわけか」
おわり
元スレ
桶屋「儲けたいなぁ……よっしゃ、風を吹かせよう!」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496665143/
桶屋「儲けたいなぁ……よっしゃ、風を吹かせよう!」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496665143/
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それにしても、宇水さん プークスクスw