アルゼンチン、ブエノスアイレス州の都市ラヌースの道を歩いていた少年二人は四本足の全身まっくろな生き物を発見した。その真っ黒い生き物は異臭を放ち、体を這いずるようにして通りを歩いていたという。
少年たちがおそるおそるその生き物を確認すると、それは全身タールにまみれた1匹の犬だということが判明した。犬が誤ってタールの中に落ちてしまったのかもしれない、あるいは何者かが犬をタールまみれにし、放置したのかもしれない。しかしそんなことよりも大切なことがあった。それはこのままではタールまみれの犬は確実に死んでしまうということだ。
少年らが助けを呼ぼうとしたところに運よく、パトカーが通りかかった。
スポンサードリンク
幸運にもパトカーが通りかかり、犬はボランティア運営の『ラヌース・人獣共通感染症センター』へと移送された。
犬はすでにタールを飲み込んでいたようで、身動きを取るのも苦しそうなほど衰弱していたという。ボランティアの人々は懸命にお湯などで体中洗い流すも粘性が増すばかりで落ちなかった。一つの命の危機を争う状況だ。
インターネットなどでタール除去の方法を洗いざらい調べ試すこととなった。クレンジング、油を溶かす薬剤、シャンプーなど努力は続けられた。
その後、どうにかたどり着いたのがオイルをかけ、溶けたタールを櫛やスパチュラでこそげ取るという方法だった。全身まんべんなくタールにまみれてしまった犬からタールをくしなどで除去するというのは気の遠くなる作業である。
最初は試行錯誤で作業をしていたスタッフたちだが、徐々にタールが落ち始めたことを確認できたときには大喜びだったという。作業は実に5時間を要し、5リットルものオイルが使われたとのことだ。除去作業中はスタッフが犬を励ますシーンや、あまりの長丁場に犬がうたた寝をするシーンもあったという。
やっとのことでタールの除去に成功すると、そこには栗色の毛をしたかわいい犬が現れた。スタッフもそして苦しんでいた本犬も喜びはひとしおだったろう。
獣医の診断により、鼻孔や耳、腸内にもタールがあったことから、中毒の心配もされたが、衰弱以外の問題はないようだった。
そしてこの危機を乗り越えた犬にはスペイン語で石油を意味する「ペトロ」という名前が付けられた。
何らかの理由によりタールを体内に飲み込んでしまったペトロは、その後薬物や点眼薬などによる適切な治療が施された。ペトロは疲れ切り、水こそ飲むものの与えられたご飯は食べようとしなかったそうだ。
しかし数日後、ついにペトロの体からすべてのタールが除去された。そうして、ペトロは徐々に健康を取り戻しつつあるという。
今後、ペトロはペトロを愛してくれる里親を募集する予定だとのことである。
ペトロが、どんないきさつでタールまみれになってしまったのかは分からないが、苦しかったであろうことには違いない。一生分の不運を使い切ったといっても過言ではないはずだ。これからのペトロの犬生の新しい章はきっと愛と幸福にあふれるものになることは間違いない。
via:Two Boys Rescue A Dog All Covered In Tar, And Now He Looks As Good As New translated kokarimushi / edited by parumo
▼あわせて読みたい
虐待された過去を持つイングリッシュ・ポインター犬、にぎやか家族の仲間入り、生涯の親友に出会う
よくがんばったね!交通事故で足が麻痺した犬が、もう一度歩けるようになるまで
これでまた飛べるはず。深刻な感電で翼を失った鳥の手術
ブラジルで脱水状態のタテガミオオカミに水を与えた優しいトラック野郎がいた
見捨てられ栄養失調で発見されたピットブル、消防署のアイドルドッグへ変身
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「画像」カテゴリの最新記事
「動物・鳥類」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3508 points | 睡眠不足になると脳は自らを食い始め、ダメージを負う(イタリア研究) | |
2位 2995 points | 欧米の動物病院にはこんなルールがある。待合室にあるロウソクに火が灯っていたら、「ペットと別れを告げている人がいる」という合図 | |
3位 2769 points | 海に投棄されたビニール袋が驚くほど少ない理由。微生物が進化を遂げ分解するようになった可能性(スペイン研究) | |
4位 2029 points | ほらやっぱりね!ティラノサウルスは羽毛でなくウロコで覆われていたことが判明(オーストラリア研究) | |
5位 1927 points | ポケモンがあまりにもリアルすぎた。ポケモン動物学(Pokemon zoology)に基づいたポケモンたちのイラスト図 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
タールって天然で沼みたいに溜まってる場所って有るの?
しかし助かって良かった
2. 匿名処理班
ペトロ〜〜〜〜〜〜〜よかったね
3. 匿名処理班
アルゼンチンはタールってそこらに普通に有るものなのか?ワンコが落ちるくらいなら人間だって危ないだろう、
ノラとか色々な事が頭をかすめたけど、目の前で危機に瀕してる命を救おうとする気持ちは価値が有ると思った。
4. 匿名処理班
急を要するのは呼吸器に詰まったタールの方だよね
記事中にあった油を溶かす薬剤を飲ませる訳にもいかんだろうしそっちの情報が知りたいわ
5. 匿名処理班
よく助かった…よく助けてくれた!
ありがとう!助けてくれた人たち!!
6. 匿名処理班
命の恩人「オイル」じゃないのか・・・
7. 匿名処理班
立派な足をしてる
きっと大きくて元気になるな!
8. 匿名処理班
よかったよかった
危うく未来の化石になるところだったな
9. 匿名処理班
これは可愛い、引く手数多なのでは?
10. 匿名処理班
可愛い犬だ
よかったなあ
11. 匿名処理班
もしこれがイタズラなら許せないが、救出した皆さんGJ!
12. 匿名処理班
うっかりタールの中に落ちるってのが想像できないんだけど?
海外には昔の肥溜めみたいにちょくちょくタールのプールがあんの?
13. 名無しのまとめりー
何故石油にちなんで名付けたのか
14. 匿名処理班
最初の写真だとラブラドールの成犬並の大きさにみえるけど、最後の写真だと子犬にみえる……
15. 匿名処理班
よかったペトロ
後遺症とかなければいいが
16. 匿名処理班
※1
英語だとタールピットっていって天然のタールが湧き出してる場所は世界中にある。動物がここに足を取られると、大抵の場合そのままタール漬けになって死にます。
ただ、今回は街中みたいだし、工場で運悪くドボンしちゃったか
悪意のあるイタズラな気がする。