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海をこよなく愛する人の為の埋葬法。リーフボールに遺灰を入れてサンゴ礁に鎮め、第二の人生をサンゴとして送る海洋葬 : カラパイア

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 多種多様化が進んだ現代、様々な遺体の埋葬方法が提案されている。巨大な卵に入れたリ凍らせたり、粉々に粉砕したり、腐食性の化学薬品で解体したりと様々だ。

 もし海が好きならば、海のサンゴとしてあの世を生きるという手段も可能だ。

 フロリダにあるエターナル・リーフス社は、リーフボールと呼ばれる穴のあいたドーム型の物体に遺灰をまぜて、それを海底に設置するという海洋葬サービスを提供している。リーフボールはいずれ海の生物の棲み処となる。
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自然葬のフルコース?


 「わたしたちは、自分たちのことを自然葬のフルコースと呼んでいます」というのは、エターナル・リーフス社のCEO、ジョージ・フランケル。

 まず最初にリーフボール概念を訊ねられると、こう答えた。「もし、自分が母なる自然だったら、どうしたいのか?ということです」

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サンゴ礁の活性化にもつながる埋葬の形


 死者の埋葬ビジネスが盛んになっている中、このリーフボール葬は数人のダイビング仲間たちとの間でひとつのプロジェクトとしてスタートした。

 会社の共同経営者のドン・ブローリーとトッド・バーバーは、フロリダ沿岸のサンゴ礁が死滅するのを食い止めるためになにかしなくてはいけないと感じていた。

 ふたりが編み出した対策は、特殊処方のコンクリートでできたリーフボールを開発して、現存の環境に対応できるミネラルを含む新たなサンゴの育成を推進するというものだった。

 リーフボール自体、水中の急な潮の流れに負けないものを作る必要があった。「流されて動いてしまったら、意味がないですからね」フランケルは言う。


母なる自然に還っていく


 中が空洞のリーフボールは、重さ362〜1814キロ。表面に大きな穴がいくつもあいたドーム型をしている。この穴のおかげで激しい嵐の圧力にもびくともせず、押し流されることはないという。

「母なる自然がなにもできないと言うつもりは決してありません」フランケルは言う。「でも、自然がこのリーフボールを動かせるなら、海よりも陸のほうで大きな問題があると言えるでしょう」

 1998年、ブローリーの義父カールトン・パルマーが、自分が死んだら海に埋葬してくれと言ったことから、彼は環境に優しい第一歩を踏み出す新たな目標を見いだした。

 「義父は病気になったとき、陸地の墓で昔の死者たちと一緒に埋められるより、海のサンゴと共にありたいと言っていました」

 義父の死後、フランケルは彼の遺志に敬意を表する最善の方法は、その遺灰をリーフボールの材料に混ぜ、永久的に残る野生生物の棲み処にすることだと気づいた。

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遺灰を海に沈めたいという問い合わせ殺到


 その後、遺灰をリーフボールにしたいという人たちからの問い合わせが相次ぎ、エターナル・リーフ社のコンセプトが誕生した。

 現在、ブローリーのリーフボールビジネスには3つの柱がある。ふたつの会社が持続的な漁場を確立するといった大規模なサンゴ礁構築プロジェクトに取り組んでいて、エターナル・リーフス社は、葬儀事業を扱う。

 新たなサンゴ礁を回復させ、生み出すための取り組みはたくさんあるが、あなた自身を構造物の一部にしてくれるのはリーフボール墓だけだ。

 フランケルはリーフボール葬を、自然保護を考慮した埋葬手段の流れにおいて重要なステップだとみている。

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 これは、樹木葬動向とはちょっと違う。

 「樹木葬はグリーンに囲まれて眠る。この自然保護葬は、誰かが生態系的に重要な土地の一画を占めて、ほぼ確実に開発者が監視しながら、故人の思い出の名のもとに、その場所を永久的にグリーンのスペースとして保存する。エンバーミングも、棺も、伝統的な墓石もなく、ほとんど自然の状態のまま残される」

 毎年、何千個ものリーフボールが海底に投入されるが、そのうちの120〜150がエターナル・リーフス社のもので、当然のことだが極めて個人的なものだ。

 リーフボールの大きさは3種類あり、金額は4000〜7500ドル(約44万円〜83万円)。より大きなリーフボールほど、複数分の遺灰を含むことが可能で、家族も共に眠ることができ、さながら水中の壮麗な霊廟のようになる。

 遺族や友人は、コンクリが乾く前に手形やマーキング、メッセージなどを入れることもできる。それぞれのリーフボールには、死者の名を記した真鍮のメダルがとりつけられ、誰のものかわかるようになっている。

フロリダ州サラソタにある、ジェームズ・オルバリーのメモリアルリーフ。
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墓参りすることも可能


 リーフボールが海に沈められるときには、従来の葬儀のように家族はつきそうことができる。海底への設置が済むと、遺族は海上から、あるいはダイビングでその後も墓参りすることができる。

 フランケルによると、100人以上の友人や遺族が彼らのメモリアルリーフを訪れたイベントを主催したこともあるという。

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生きているサンゴの一部として死者に第二の人生を


 エターナル・リーフス社に葬儀を依頼してくる人たちのタイプは、漁師やダイバーなど海の関係者だけではない。

 子どもを亡くしたりしたあらゆる年代の親たちが、生きているサンゴの一部として、死者に第二の人生を与えようと頼みにくる。「すべて自然に戻すという考えからきている」

 よくあるのは、ペットの遺灰も加えたいという要望だが、金額がとても高くなってしまうため、ご本人が灰になるまで一緒に埋めるのを待つよう勧めているという。

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 今日、世界70ヶ国の海に70万以上のリーフボールが設置されている。墓石としてのリーフボールはそのうちのほんの一部だが、自然保護葬はいずれはわたしたちの葬儀の習慣に大転換をもたらすだろうとフランケルは言う。

 エターナル・リーフス社のメモリアルボールは、新たなエコ葬儀をうちたてるひとつのステップになるかもしれない。

via:eternalreefsatlasobscura/ translated konohazuku / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:35
  • ID:hvRnDdtP0 #

環境にやさしいというが、
殺到するくらいの数を沈めて生態系に本当に
影響はないのだろうか、とつい考えてしまいます。

2

2. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:36
  • ID:oaEiLHob0 #

ギャングに頼めばもっと簡単に・・・

3

3. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:39
  • ID:542D0MvX0 #

自然葬を好む人は葬儀一連の手間が嫌なんじゃないかなあ
というわけなので、この種の手間のかかる自然葬ってどーなの?って感じ

4

4. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:48
  • ID:ilQX6Eo60 #

いいなーこれ
珊瑚の広がる海の霊廟なんて想像しただけで綺麗
でも日本の地元でやるのは難しいよなぁ
羨ましいなー

5

5. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:48
  • ID:.dAnqyfg0 #

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏

6

6. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:50
  • ID:WoCO07Xb0 #

ブダイに骨をボリボリ食べて欲しいって言う人が居るんだけど、
これなら遺族も納得してくれそうですね。

7

7. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 18:58
  • ID:.0R8.mTS0 #

墓参りも楽しくなるな

8

8. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:09
  • ID:A8nkohuP0 #

この埋葬法すると死者の日とかお盆とかにフライングダッチマンのクルーみたいな風貌でお家に帰ってきそうだな。

9

9. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:09
  • ID:ipEI7KHQ0 #

日本の墓地は最低でも300万以上。それプラス永代費用は
1万から始まり3万以上もある
その値段に比べたら44万から88万ってやっすいなと思うのは
俺だけか

10

10. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:40
  • ID:mTmZPCWY0 #

お前達の無念を海の藻屑にはしない。

11

11. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:41
  • ID:KdNsHUSd0 #

石壁の中の壺の中で自然から外されるより
自然の中で自然のサイクルの中に戻りたいと思う

12

12. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:49
  • ID:g5TWcnYq0 #

※1
殺到と言ってもたいした数じゃないでしょ。
環境への影響なら洗濯洗剤とかのほうがよっぽどヤバイ。

13

13. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:50
  • ID:7i44zyhK0 #

我が墓標に名はいらぬ!(墓は欲しい

14

14. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:54
  • ID:7cLt2RTC0 #

墓の維持費大変だからなあ
うちのお寺さんも都内に昔からずっとあるので、周辺がビルばっかになってしまって困ってる。
この先維持できるとは思えないんだよなー
移転させちゃうのもご先祖様に悪いしなあ、どうしたものやら

15

15. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 19:56
  • ID:3oxGfN8.0 #

※9
後の手間を考えるとこっちのほうがいいかもねえ。
独身なんでおまいりするような人間も居ないし。

16

16. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 20:02
  • ID:p2RIV2qu0 #

こんなのが海の底にたくさんあったら不気味だ

17

17. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 20:21
  • ID:LQ5REOqe0 #

流されない様にとは言え一個あたりがデカいな。

海洋生物の住処にせずとも
自然物に似せた物を沈めるのじゃダメかと思ったが日本の場合
私は貝になりたいって名作があるから暗い印象を受けるな。

18

18. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 20:27
  • ID:Lv85S7j80 #

テトラポッドに遺灰を練り込んで浜辺に並べとくのはどーよ?

19

19. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 20:28
  • ID:.d5sTfSA0 #

率直な個人的感想として、真鍮のメダルは余計だなあ…。素材が自然に還りにくそうだし。墓石の表面に彫った字が磨滅してくみたいに、こういうのはだんだんと個の面影が消えて誰が誰だかわからなくなっていくのがいいんだと思っている(東洋っぽい思想なのかも)。死生観の違いなのかな。

20

20. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 20:42
  • ID:BcPsxe6u0 #

しご に さんご になる

21

21.

  • 2017年06月18日 21:03
  • ID:eoCaKG0b0 #
22

22. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 21:03
  • ID:GNMWbzjy0 #

※14
思い切ってポイッと捨てちゃえば案外一年もしないうちにどうでもよくなっちゃうかもよ
宇宙だろうが土中だろうが海中だろうが宇宙の一部なんで、残った人間が思い出してあげればどこにあっても一緒

23

23. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 21:32
  • ID:nT9JzcQ90 #

サンゴとして生きるのなら、それはもう人生ではないのでは

24

24. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 21:35
  • ID:ThkD26TG0 #

※19
名前が消えたころにはもう墓参りなんて来なくていいよってのがいいよな
負担になって墓じまいされるよりも、誰の手でもなく自然に消えるほうが双方幸せだろうなあ

25

25. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 21:37
  • ID:voCKIwiJ0 #

いいなあこれぞわぞわする
深海とかに沈めてほしいけどお参りできる位だからそこまで深くはないか
日本でもやってほしい

26

26. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 22:07
  • ID:mb8bmtO60 #

観光地としての価値は大丈夫なんだろうか
これがひしめいてる海にダイビングしたいとはあんまり思わないんだが
逆にサンゴ礁の保全になるとか?

27

27. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 23:00
  • ID:unmYdtFD0 #

自分も墓持たずに海に遺灰捲く葬儀がいいなと思ってる口だけど、本音言えば一番還元出来るのは燃やす前だと思ってる
鳥葬なんか良いよね。一番速攻で栄養価高く還れると方法なんじゃなかろうか
日本じゃまず実現不可能だけど

28

28. 匿名処理班

  • 2017年06月18日 23:05
  • ID:SN5Gt4rp0 #

※3
手間がどう、というわけじゃなくて、頼めるような子孫がいないとか、
いても負担をかけたくないとか(延々とお金もかかりますしお参りの手間も...)
宗教上のいろいろなこととか、できるだけ亡くなってから自然に溶け込みたい、
自然の一部になりたいとか色々あるんじゃないでしょうか?

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