【ガヴドロ】ヴィーネ「笹の葉の下で願い事を」
- 2017年07月07日 22:10
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下界ではこの日を七夕と呼ぶらしい。
願い事を書いた短冊を笹の葉に吊るして、星に願い事をするという風習。
その話を聞いたとき、私はなんてロマンチックなんだろうと思った。
そして、ふと思いついた。
臆病な私が、ささやかでも想いを形にできる方法を……
授業終わりのホームルームで、先生が話していたのを思い出す。
この学校では七夕の行事として、校庭に笹を置いて生徒たちが願い事を書いた短冊を吊るす習慣があるらしい。
そのことを聞いたほかのクラスメイトはざわざわとざわめき始めた。
そんなみんなを、私やガヴやサターニャはぽかんとした表情で眺めていた。
当然だ、天界にも魔界にもそんな習慣はないのだから。
話の内容は、もちろん七夕のこと。
聞くところによると、下界ではこの日に笹という植物に願い事を書いた紙を吊るすらしい。
一年に一度めぐり合う織姫と彦星に想いを馳せ、願い事をするのだとか。
由来を聞いた私は、とても素敵な風習だと感動してしまった。
そんな私を、みんなはあきれた顔で見つめていた。
イベント好きな私らしい、と口々に言われる。
一人で盛り上がっていた私は、少し恥ずかしくなって俯いた。
わくわくしないわけがない。
それは別に私がイベント好きだからというだけではなく、ちょっとした理由があるから。
それはささやかな、けれども大切な想いを天に届けるということ──。
放課後に学年全員で笹に飾りつけをすることになっていた。
みんなで折り紙を切り貼りしたり、小道具を取り付けるのはとても楽しかった。
ガヴもサターニャのラフィも、なんだかんだで真面目に手伝っている。
その中の一人をちらりと見ると、目が合いそうになって目をそらす。
彼女の何気ない仕草も追ってしまう自分は、完全に心を奪われていた。
一通り飾りつけの準備が終わると、生徒たちはそれぞれお願い事を短冊に書き始める。
私たちは四人で集まって、何をお願いするか話していた。
ガヴは「一生遊んで暮らせるお金が欲しいなー」
……ふふっ、ガヴらしいお願いね。でも、ちゃんと勉強もしないとだめよ?
サターニャは「大悪魔になる!」
……それ、お星さまにお願いすることかしら。でも、きっとなれると思うわ。
ラフィは「毎日面白いことがおきますように」
……ラフィが言うとちょっと怖いわね。でも、それもいいと思う。
少し考えるふりをして、自然に笑うように見せながら。
「みんなで楽しく過ごせますように」
嘘じゃないけど、嘘をついてしまった。
一枚だけ持ち帰った桃色の短冊。
みんなの前で書いたものとは別のもの。
これに、自分の本当の願い事を綴るのだ。
今から書いて飾りつけに行けば、明日の片づけまで誰にも見つからない。
片付けの時に急いで回収すれば完璧だ。
なんだかずるいような気もするけれど、これが自分のできる精いっぱいの行動。
まだまだこの想いは、隠しておきたいから。
緊張と恥ずかしさで震える手で、ゆっくりと想い人の名前を書き始めた。
悪魔らしくない私の、ささやかな悪魔的行為。
……仕送りがちょっとでも増えていると嬉しいんだけど。
誰もいないのはわかっているけど、念入りに注意して校庭へと急ぐ。
目的の場所へとたどり着いた私は、一息ついて視線を上げた。
昼間に見た笹とはまったく印象が変わり……まるで別世界のように妖しく、とても美しかったからだ。
みんなで飾りつけた色とりどりの折り紙の色彩と模様が、薄暗い闇の中で宝石のように輝いて。
その身に願いを乗せた短冊は夜風にひらひらと揺られていた。
その瞬間のひとつひとつの光景が、
とても儚げで、美しかった。
見つからないうちに、早く結びつけないと。
持ってきた短冊を、一番上に飾り付けようとする。
空に一番近い場所で、願い事が叶いますように。
……しかし、手が震えてなかなか結び付けられない。
早くしないと、と焦れば焦るほどに手元が狂う。
落ち着いくのよ、私。
落ち着いて、冷静に……
……夜の学校に、私以外の人が?
私はびっくりして、手に持っていた短冊を後ろ手に隠した。
あまりに慌てていたので、端の方が折れてしまった。
少し心が痛んだが、今はそれどころじゃない。
人影はゆっくりと近づいてくる。
夜の闇に目が慣れていた私は、それが誰かすぐにわかった。
それは私が密かに想いを寄せていた人物。
私が大好きな人だった。
目を丸くしてこちらを見つめている。
その時、私はなんて言ったのだろうか。
あまりにも動揺しすぎて、はっきりとは覚えていない。
たしか、散らかっている葉っぱを掃除しに来た、とか。
意味のわからないことを口走っていた気がする。
あたふたしているうちに、後ろ手に持って隠していた短冊を見つけられた。
こっそり短冊を結びにきていることを、あっさりと見破られてしまった。
……こういう時には無駄に勘が鋭いんだから、困ってしまう。
純粋な好奇心から質問しているのだろうが、私の口からはどうしても言い出せない。
言えるわけがない。
だって……だって。
一番伝えたい相手だけど。
一番伝えたくなかった相手でもあったから。
やがて私はその応酬に負けて、くしゃくしゃになった短冊を広げて見せる。
私の書いた短冊。
目の前の子の名前が書かれた短冊。
そこに刻まれている言葉は、まぎれもなく愛の告白だった。
拒絶されるのが怖くて、表情を見られなかった。
どうしよう。泣きそうだ。
こんなはずじゃなかった。こんなつもりじゃなかった。
どうか、卑怯で臆病者の私を、嫌いにならないで……
夜風が冷たいはずなのに、なぜ?
顔を上げると、目の前に彼女の顔。
私は彼女に抱きしめられていた。
ポケットから取り出した紙切れを差し出される。
夜の中でもわかる、薄い水色の短冊。
その時、私はなぜ彼女がこんな時間にここに来たかわかった気がした。
誰にも教えたくない願い事をするために、飾り付けようとしたのだろうか。
私を元気づけようと、慰めのつもりで自分の願いを教えてくれようとしているのだろうか。
夜の暗がりのせいではっきりとは見えないが、頬が少し紅潮しているような気もする。
少し震える手を抑えつつ、手渡された短冊を受け取った。
目の前で私を見つめる、大好きな人を抱きしめた。
『恋人になれますように』
私の短冊と、同じ言葉が書かれていた。
月の光に照らされながら、手をつないで帰る2人の女の子
笹の葉に結ばれた2枚の短冊が
結ばれた2人に手を振るように、夜風に揺れていた。
完
元スレ
ヴィーネ「笹の葉の下で願い事を」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499426130/
ヴィーネ「笹の葉の下で願い事を」
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コメント一覧
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- 2017年07月07日 22:15
- 相手はガヴだろ!?
知ってる
ガヴィーネ尊い
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- 2017年07月07日 22:24
- ガヴちゃんでしょうね
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- 2017年07月07日 22:27
- 多分ガヴだろうな
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- 2017年07月07日 22:37
- ガヴリール以外ありえないwwww
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- 2017年07月07日 22:40
- 満場一致でガヴリールでワロタ
俺もソーナノ
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- 2017年07月07日 23:07
- やっぱり僕は王道を征くガウリールですね
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- 2017年07月07日 23:53
- ガヴィーネいいぞ
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