――安倍政権下の日本メディアをどう見ますか?
「首相が自分を批判するメディアを嫌うのは周知のことだ。友好的な一部の記者やメディアに、特ダネが流れることも知られている。日本の“記者クラブ”は、ドイツにはないが、メディア操作をしやすい制度だと思う。安倍政権はメディアを政府の影響下に置くことには成功しただろう。今は巨大与党で、何もしなくても世論を味方につけることができる。それなのになお、メディアを統制したがるのは狭量ではないだろうか」
――日本のメディアは、政府に忖度をしていると思いますか?
「政府と同じ目線で考えすぎると思う。報道より、“メディアの責任”を意識しすぎているのではないか。東京電力福島第1原子力発電所の事故の後は、報道や表現があまりに慎重で、海外報道のほうが真相を知りやすかった。特定の真実を『報道すべきではない』と、権力と同じように判断したら、知る権利が失われる。日本人は
非常に冷静な国民で過剰反応は起こさない。『何が起こったのか』を正確に知るほうが国民には重要なことだ。さらにメディアが、政府べったりと政府批判に分かれ、真相が見えにくい。スポーツ紙の短信のほうが、事態を理解しやすいこともあった」
――日本とドイツの保守政治家にどんな違いを感じましたか?
「戦後ドイツでは、保守政治家も第2次世界大戦を批判的にとらえた。ドイツの保守は、日本の自民党より“保守”ではないと思う。私の新聞もドイツでは“保守”だ。“欧州統合”の理念もドイツ保守の特徴で、最近死去したコール元首相は代表例だ。ドイツと比べ、自民党の政治家は、政策の説明や議論をほとんどしない。何を考えているのか自分の言葉で語らなければ、海外で理解されようがない」
カーステン・ゲルミス
1959年、独ハノーバー生まれ。バンベルグ大学などで政治学を学んだ後、通信社を経て2001年より高級紙『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記者となる。2010年から2015年には同紙東京特派員として、福島第1原発問題や日本政治を取材した。
http://www.sentaku.co.jp/articles/view/17035
メディアとして取材が足りないんじゃないですか?