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科学の名のもとに、とはいうものの・・・現代における不穏な10の科学実験 : カラパイア

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 研究者たちの飽くなき探求心が人類の進歩と発展を促してきた。これは誰もが認めるところであるが、時に知識を追求するあまり、インモラルな方向に進んでいってしまう場合もあるようだ。

 人類はこれまで、科学の名の下に動物を殺し、生きた人間で実験を行なってきた。審査委員会が作られたのは、科学に道徳規範を設けるためだ。

 多くの国々にそうした制度があるにもかからわず、倫理的に懸念される実験は今もなお行われているようだ。神を信じる国においては特に心配になるであろう、どこか不穏さを感じさせる実験がまとめられていた。
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10. マインドコントロール・ネズミ


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 小さいが、優れた運動能力を誇るネズミは実験動物として最適だ。ニューヨーク州立大学で発明されたのは、そのネズミを操る技術である。まだ初期段階であるが、460メートル離れたネズミを操ることができる。しかし生き物をコンピューターによってコントロールすることは、どこか不気味さを感じさせる。

 この技術はコンピューターでネズミの脳の報酬系を刺激する信号を送信する。こうするとネズミは嬉々として奴隷として振る舞うようになる。

 仮にこの技術が人間を含めた他の動物をコントロールする足がかりとなるのであれば、我々は独裁者や腐敗した政府によって自主性を奪われる危機に直面していることになる。研究者は生身の人間では危険な作業を動物に行わせる際に有効だと言うが、同時に完全な奴隷や従順な市民を作り上げることも不可能ではないということなのだ。


9. 人工子宮


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 人工子宮でを用いて羊の胎児を育てる実験が成功した。それは配線が繋がれたビニール袋のような外見である。開発目的は、脳性まひや呼吸合併症を引き起こしやすい未熟児の生存率とクオリティ・オブ・ライフを向上させることだ。

 関連記事:ビニール袋のような人工子宮の中で羊の胎児を育てることに成功

 だが将来、出産自体に変化が起き、出産する唯一の方法として人工子宮を利用するしかなくなったとしたらどうだろう。その先にあるのは優生学と人口のコントロールだ。ゆえに人工子宮は恐ろしい可能性を秘めているのだ。


8. 遺伝子編集技術「CRISPR」


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 CRISPR-Cas9は比較的新しい、正確かつ安価な遺伝子編集技術だ。遺伝子改変はこれまでも賛否両論であったが、この技術の登場により人類はいくつもの倫理的ジレンマに直面することになった。その代表的なものがデザイナーベビーだろう。

 遺伝的特徴は実に複雑なものだ。多くの特徴が複数の遺伝子によって制御されており、そのことが特定の遺伝子を操作した際に現れる影響を予測しづらいものにしている。

 ある状況では有害な遺伝子が、別の状況では有益なこともある。それが多様性というものだ。したがって、潜在的に有害とされる遺伝子を除去した場合であっても、長期的にはデメリットになる可能性もあるのだ。

 デザイナーベビーの普及は貧富の差をさらに拡大させる恐れもある。


7. ヒトキメラ


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 ここでいうキメラとは、2つの個体の細胞でなる生物のことだ。自然界にもヒトキメラは確かに存在するが、それでも100パーセント人間だ。ところが科学者は人間と動物のキメラを作り出した。

 その狙いは、動物の胚に幹細胞を注入することで、動物の体内において人間の臓器を培養することである。これは臓器移植を必要とする多くの人々の命を救うだろうが、人間と動物の境界を曖昧にしてしまう。

 果たして人間とは何であろうか? 一体いくつのヒト細胞があれば、それは人間なのだろうか? さらにもしそのキメラが人間と同程度の認知能力を有していたとしたら、キメラにも人権を認めるべきなのだろうか?

関連記事:世界初、人間の細胞が入ったブタの胎児を作ることに成功


6. 絶滅種の復活


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 『ジュラシック・パーク』を彷彿とさせる試みである。最初に復活したのはピレネーアイベックスである。2003年のことだ。それはただ死ぬために誕生し、2回目の絶滅が起きた。

 そして今、科学者が目指すのはマンモスの復活である。それはマンモスのDNAと代理母となるアジアゾウを用いて実現される。成功すれば、いつの日か動物園でマンモスの姿を見ることができるようになるかもしれない。

関連記事:2年以内にマンモスをよみがえらせるプロジェクトが発足
 
 しかし仮に復活できたとしても、絶滅種が野生の状態で生存することができない現代に蘇らせることは倫理的にどうなのだろうか?

 もしネアンデルタール人が復活してしまったらどうだろう? CRISPRを使えば、将来的にそうしたことも可能になるかもしれない。

 だがに彼らにとって現在社会での生活は楽なものではあるまい。奇異の目にさらされるであろうし、肉体的な能力や知的能力も現代人と同じではないだろう。


5. 人工生命


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 科学者は神にでもなろうというのだろうか?2010年、初の人工生命体の誕生が発表された。 その合成生命体はエネルギー安全保障、汚染、疾病といった差し迫った問題を解決してくれるという。

 しかし自然界には存在し得なかったものを作り上げようというのだから、その影響は計り知れない。新しい生命体によって、人類や他の生物が甚大な被害を受ける可能性もある。一体どのようなしっぺ返しがあるのかわからないのだ。


4. 外骨格


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 ここで言う外骨格とは、人間が身体機能を向上させるために着用するデバイスのことだ。ヨーロッパで開発されたアクティブ骨盤装具(Active Pelvis Orthosis)は、高齢者の転倒防止対策として作られたものである。

 しかし、これにはコストや引退に関する問題を突きつける。まず、その費用を考えると、こうした装具を手にできるのは富裕層だけであろう。さらに、これが普及した場合、高齢者であっても引退できないという状況を作り出すかもしれない。

 高齢者でなくとも、健康な人間が肉体的能力を補完するために使用することもあるだろう。その場合、スポーツのロボット化、兵士の強化、労働の長時間化といったいくつもの問題の発生が予想できる。力を求めたがゆえに、かえって事態が悪化することだってありうるのだ。


3. 頭部移植


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 頭部を移植するなど正気とは思えないかもしれない。だが、イタリアのセルジオ・カナベーロ博士はマウスの脊髄を切断し、それを無事修復させることに成功したと主張している。懐疑的な意見もあるが、カナベーロらは次は犬で実験するつもりらしい。
  
関連記事:死後冷凍保存された脳を新しい体に移植し死者をよみがえらせる計画

 無論、倫理的な問題は山積みだ。そもそも脳の拒絶反応はどうするのだろう。患者はこの危険な手術を受けた後、一生薬を飲み続けるのだろうか。この手の免疫抑制剤には骨粗鬆症、筋力の低下、血糖値の上昇といった副作用がある。

 また自己同一性についても疑問がある。まったく新しい体に挿げ替えられるという経験はトラウマになるのではないだろうか。さらに潜在的なドナー候補者に臓器移植に対する嫌悪感を与える可能性だってある。


2. 強化病原菌


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 あまりにも危険すぎる研究であるため、ホワイトハウスは病原菌をさらに危険にしようという研究への資金提供を再審理している。そして2014年、実験室における恐ろしい事故のために多くの研究が中止された。

 こうした研究は、将来的なパンデミックに備えるためのものだという。しかし、万が一、それが実験室から外部に漏れでもしたら、それこそ厄介なパンデミックを発生させることになる。

 またバイオテロに利用される懸念もある。病原菌の毒性を高めるということは、病原菌の脅威をさらに高めることに他ならないのだ。


1. 媚薬(惚れ薬)


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 愛とは素晴らしくも、理解不能なものだ。多くの苦悩はこれに起因する。これを科学の力で解決しようという動きがある。

 研究者が人間関係を改善する助けとして研究を進めているのは、神経ペプチドのオキシトシンだ。これが本当に愛の薬になるのかどうか定かではないが、もし本当に成功してしまった場合、その倫理的な意味合いは甚大だ。

 こうした薬剤はおそらく愛を生み出すというより、補助的なものとして使われるだろう。しかし愛のような複雑な代物を再現しようという試みは、まるで神に成り代わろうとでもしているかのようだ。

 また誰かを強制的に自分を好きになるよう仕向けることが可能になったとすれば、それはそれで大いに問題である。個人の自主性を侵すことになるからだ。

 あるいは失恋や破局を取り繕うバンドエイド代わりとしても利用されるかもしれない。

via:Top 10 Disturbing Modern Experimentsなど/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 20:45
  • ID:kxTk2YVb0 #

もはや人間が神を滅ぼす時代は近いね
「神は人類を作り出し人類は神を滅ぼした」

2

2. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:00
  • ID:Ip6XgpBg0 #

何個かはいかにもキリスト教的に問題になる倫理問題って感じだな
正直倫理審査のための委員会があるだけ医学分野はマシという気もする
新しい学問だとそのへん適当なところいくつもあるし

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3. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:01
  • ID:S6.Oq5sH0 #

でも、やってみてーって思っちゃうもんだよな

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4. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:05
  • ID:AMRuunxv0 #

よく科学批判で「神に成り代わる」という言葉を聞くけど
いまいちピンと来ない…
神秘的だとされてきたことが再現可能になるからいけないのかな?

5

5. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:08
  • ID:CzYCCTkh0 #

もしネアンデルタール人が復活したとしても、多分社会的自由は与えられないと思う
人権が先ず無いし、そもそも生まれてから死ぬまで研究対象以外には成り得ないだろうし

6

6. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:13
  • ID:In.RyFrW0 #

2の場合ってレベル3クラスの病原菌なんて子供のおもちゃで
簡単にできる時代、規制するのが遅すぎ
それにいくら合成しようとも、誰でもかかる風邪に比べたら
最強のウィルスなんて大したレベルじゃない

7

7. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:19
  • ID:eO4Hk3M00 #

全部生体関係だな
結局人間が一番興味があるのは人間ってことなんだな

8

8. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:27
  • ID:hmPs3ayn0 #

誤字発見しました。訂正お願いしますm(__)m

8.遺伝子編集技術
>そのことが特定の遺伝子を操作した際に現れる影響を予測しずらいものにしている。

予測しづらいものにしている

9

9. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:28
  • ID:hmPs3ayn0 #

科学者が「神」になることを恐れる人がいるのはなぜ?

10

10. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:31
  • ID:s0Lcc1zc0 #

3.頭部移植

DIOかな?

11

11. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:36
  • ID:7uMZDW2s0 #

当たり前なんだろうけど
科学が〜とか、神が〜とか、動物と人間の境が〜とか
キリスト教的思想が根強いなぁ〜と思ったw

12

12. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:43
  • ID:iVsXMmYK0 #

これからの50年間、人類は試される期間だと思う。宇宙進出も進むだろうし、クローンや遺伝子操作のような生命倫理の問題にも直面するし、人工知能や量子コンピュータの出現によるシンギュラリティなど、挙げればキリがない。一昔前ならSFの世界だったことが、実現されようとしてる。未来の人々から「あの時代の人類は間違っていた」と罵倒されないような選択肢を取りたいものです。

13

13. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:43
  • ID:FkmxCzjI0 #

幾つかの項目は、新たな倫理や法則、法律による縛りによって回避することができる問題だろう。
だが、科学者は常に新たなテクノロジーの利用方法について警鐘を鳴らす義務がある。
人類が今まで経験した失敗を繰り返さないよう、考える必要はあると思う。

14

14. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 21:44
  • ID:EP09C0dO0 #

惚れ薬は良い研究じゃないかw

15

15. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 22:15
  • ID:kHAXaBpL0 #

強化病原菌は言い方は違えど日本でも研究してるんだってね
ワクチン作りたいらしい

16

16. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 22:17
  • ID:szVDBUVN0 #

最後の薬が開発出来たら離婚や少子化に歯止めが…甘いかな?
人工子宮は倫理的な不安こそあれ、
自分達の子供が欲しい夫婦には朗報となりそうですね。
いくつかは必要性が少ない物も有るけど、研究成果が意外な方向に活用され効果をもたらす事も有るので研究は続けて欲しいですね。

17

17. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 23:14
  • ID:AFb5L4Xg0 #

※4 キリスト教的倫理観では「存在の根幹に関わる部分にアクセスし、在り様を変える」「存在を創造する」というのは神の特権だから、これを人間がするというのはタブーなんだよ

18

18. 匿名処理班

  • 2017年07月12日 23:48
  • ID:zd7echj90 #

人工子宮は悪い話じゃないような
病気で妊娠が出来ない人が子供を持てるようになったり、未熟児で生まれてきた子が無事に育ったりするならいいことだと思う

媚薬は正直欲しいw

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