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複雑系とマストドン : 情熱のミーム 清水亮 - Engadget 日本版

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複雑系とマストドン : 情熱のミーム 清水亮

ブームから3ヵ月。一段落しつつあるマストドンと複雑系の関係性

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マストドンがブームになってから3ヵ月が経過した。

mstdn.jpは一時期ほどの熱狂的な雰囲気は薄れたが、さまざまなローカルインスタンスの流速は未だ衰えることもなく、なんとなく安定状態に突入した感がある。

マストドンはTwitterライクではあるがTwitterをリプレースするものではない。

それ自体を目的としていない。もしかすると開発者のオイゲン・ロチコ氏はTwitterをリプレースすることを想定していたかもしれないが、実際の使われ方は、それぞれ居心地のいいローカルインスタンスをとまり木にした緩いコミュニティが点在し、緩やかな連合を形成しているところで落ち着いている。

その一方で、pixivが絵師のためのPawooだけでなく音楽を作ることが趣味の人のためのPawoo Musicをスタートしたりと、大規模インスタンスの運営自らが目的別ローカルインスタンスを作り込むなどの動きも生まれている。

Twitterが最初に日本でブレイクして、それから3ヵ月したとき、ちょうど2007年の9月頃、早くも「twitterは必要か」は「恋人は必要か」という議論に似ているという記事が投稿されている。この頃はTwitterはごく少数の有名人と一部のスキモノ、オタク、変わり者が使っているだけ、というイメージが強かった。まさか高校生やら大学生やらが当たり前のように使うようなものになるとは誰も思っていなかった。

マストドンの場合、Twitterの流れを経験しているので誰もが一度は「昔来た道だ」と思ってTwitterに起きたことを超高速で繰り返しているように見える。つまり、検索エンジン(Twitterもかつては検索エンジンは内蔵しておらず外部だった)、モバイル向けアプリ(Twitterがブレイクし始めた頃はまだ日本にiPhoneは来てなかった)、そしてモバイル向けアプリ内広告などのビジネスモデルの研究、独自の機能追加、クローン、などなどである。

マストドンはオープンソースなので、クローンが作りやすい。というかそれぞれのインスタンスがすべてクローンと言える。

マストドンやブロックチェーンが標榜する非中央集権化(Decentralized)という言葉には図らずももっと重要な意味があることに先日気づいた。

非中央集権化という言葉は、言い換えれば局所化(localize)と連合(Federation)である。局所的なルールをピア ツー ピアで結び、それが連鎖的に拡大してひとつの巨大なシステムを構築する。インターネットがまさしくこのような形で成立しており、同時にこれは筆者にしてみればある種の郷愁を感じるほど馴染み深い構造で、一般的にはこのようなシステムは複雑系と呼ばれる。

マストドンを非同期の複雑系(Complex Syste)と解釈すると面白い。

やろうと思えば、マストドンのインスタンスそれぞれがひとつのオートマトンになったセル・オートマトンが実現可能だ。動作全体を俯瞰できないとセル・オートマトンのありがたみはわかりにくいが、これまでは俯瞰的に見下ろすことしかできなかったオートマトンを、主観的に内部から観察することができるようになったと考えると興味深い。

先日、Amazonプライムで「正解するカド」というアニメを見た。
このアニメのストーリーはともかく、印象的なのは3Dフラクタルで描画された異次元の存在「カド」だ。

まあ普通に考えたら、本当に異次元の存在なら人間の考え出した数学的法則に則った高次元フラクタルなど使う必要はないのだが、その立体とも生物ともつかない不思議な動きは印象的で、ついにアニメ作品に本格的にフラクタルが使われるようになったかと驚いた。

本編の方は別に見ていただくとして、3Dフラクタルとは下記のビデオのようなものである。



これもまた、非常に単純な法則の組み合わせのみによって成り立っている。
たった2つの式からなる複素方程式だけでこの不思議な世界は表現されている。

式が示す関係性は局所的にはシンプルだが、そこから生み出される表現のバリエーションはほとんど無限大のようにも思える。これが複雑系の持つ最大の魅力であり、不思議さでもある。

現在、マストドンインスタンスを俯瞰する方法は開発されていないが、各インスタンスのトゥート数やアクティブ率の可視化は盛んに行なわれている。

ただ2つの数式よりはより複雑なプロセスによって各インスタンスや各ユーザが関わるため、俯瞰したところで実は美しくはないのかもしれないが、マストドンやブロックチェーンに魅力を感じるのも、ごく自然なことなのかもしれない。

フラクタルとは自己相似図形のことで、自然界にはありふれた現象だ。有名なのは三陸海岸のようなフィヨルド地形や、シダ植物の形など、細部がどことなく全体に似ているという性質を指す。

この「似ている」という言葉が実に曖昧で、厳密に一緒ではないし、「似ている」ことは分かっても「同じ」といえるケースはほとんどない。

にも関わらず、「似ている」と誰もが納得する。


このフラクタル構造が「似ている」ということがどういうことなのか、これまで深く考えられたことはなかった気がするが、もしかするとニューラルネットワークもフラクタル構造を見て、全体と細部が「似ている」と解釈するかもしれない。

マストドンの連合の仕組みとユーザの絡み方の構造も全体と細部が似た、フラクタル構造をしていて、たとえば関西広域連合のインスタンス群はごく親しい友だちしかフォローしないユーザに似ている。

大阪丼は国際都市らしくどこのインスタンスとも連合するので、関西広域連合のインスタンス群にとっては外界とのゲートウェイとして機能している。

一方、最初から規模の大きいmstdn.jpやmstdn.socialは規模が大きいばかりでインスタンスの方向性が定まらない、いわば「その他大勢」のインスタンスであるように見える。

「その他大勢」と関わりたくないインスタンスは真っ先にmstdn.jpをブロックするのだろう。

一時期激しさを増していたマストドン本体のアップデートラッシュもようやく一段落したようなのでここいらでマストドンをどう使いこなしていくべきか、今一度じっくり考えるべき時期が来たように思う。

いや、別に使わなくてもいいわけだけど、こんなにおもしろい道具が無料で手に入るなら、使わないのは勿体無いではないか。

関連キーワード: internet, mastodon, twitter
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