今月7月8日、米フロリダ州パナマシティービーチで、2人の子どもたちを救った「人間の鎖」が話題になっている。
それは海水浴中に急な引き潮にさらわれた子ども2人を救うため、80人にも及ぶ海水浴客たちが、互いに手と手を取り合って長い鎖を作り上げた姿だ。
その鎖を導いたのは困った人を見過ごせなかったジェシカ・シモンズだ。彼女この状況を知るやいなや、捨てられていたボディーボードをひっつかみ、夫とともにいち早く救助に乗り出したのだ。
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80 Strangers Form Human Chain to Rescue Family From Ocean Riptide
楽しい海水浴から一転、潮にさらわれた子どもたち
その日の午後、ロベルタ・ウルスリーとその夫、母、甥、2人の息子たちはパナマシティービーチで海水浴を楽しんでいた。
ロベルタと夫
image credit:dailymail
夫妻の子どもたち
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ロベルタと母親バーバラ
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しかし、浜辺に上がったロベルタがふと気づくと、目の前にいたはずの8歳と11歳の子どもの姿が見えない。
さっきまでそばにいたのに・・と、すぐにあたりを見回した彼女は目を疑う。
なんと2人の姿はもはや信じられないほど沖にあった。そんな!!一瞬にして血の気が引いた彼女は全速で子どもたちの元に向かった。しかし次の瞬間、泣き叫ぶ子どもたちの悲鳴が聞こえた。
離岸流の潮に捕らわれた子どもたち
実は当時、浜辺では局地的な引き潮、離岸流が起こっていたのだ。それは沖に向かう強い潮の流れで幅は10m程度だが、巻き込まれて抜け出せず死者が出る危険なものだ。海に向かうロベルタは人々の「行くな!」という声を聞いた。
だが彼女も家族も溺れる子どもたちを救うことに必死だった。彼らは悲鳴を上げる子どもたちを目指し懸命に泳いだ。しかし流れは想像以上に強く、気をつけていたもののとうとう捕らえられてしまった。
ロベルタによると、一家が立ち往生した場所は水深およそ4.6mのところだった。そして一緒に泳いでいたロベルタの母親はその途中で心臓発作を起こし、危険な状態にあった。
「もう家族を失うと思いました。これが自分の最期なの・・という気持ちになっていました」
助けたい!いち早く行動を起こした見ず知らずの女性
夫と浜辺で休んでいたジェシカ・シモンズは、ゴミ箱にまだ使えるボディボードを見つけ、娘たちが一緒に来た時に使わせてやろうと海水で洗っていた。するとビーチの人々が皆、沖を見て指をさしていることに気づいた。
いち早く救助を始めた
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サメ?違う!誰か溺れてるんだ!しかもあんなに遠くに・・。彼らを助け出さねば!と思い立った彼女はボディボードを片手に、すぐ夫の元に駆け戻ると2人で走り出した。
困っている人を放っておけない性格のジェシカは、地元のアラバマ州で竜巻が起こった時もボランティアをかって出て被災者の支援をしたこともある。
そんな彼女が窮地にある子どもたちを見過ごせるわけがない。浜辺に出た彼女は、夫と共に付近にいた何人かの人々と手をつなぎ、人間の鎖を作り始めるのと同時に海に入り、ボディボードと共に沖に向かった。
次々と伸びていく鎖がついに一家のところに
あの子たちは助かる。まだ終わりなんかじゃない。私たちが無事に救うんだ。鎖の先頭の彼女は自分自身にそう言い聞かせながら水をかき、一心に溺れる子どもたちを目指した。
その間に人間の鎖はどんどん伸びた。溺れる一家を助けようとに立ち上がった人々の数はいつの間にか80人にものぼり、その長さは90mを超えようとしていた。
image credit:dailymail
そのなかには泳げない人もいた。だが彼らはなんとか助けたい一心で浅瀬で鎖に参加していた。また、海中にいる人々は水面から顔を出し、シモンズ夫妻がもう少しで一家にたどりつくのを見守っていた。
そしてとうとう鎖の先が一家のそばに届いた!
ところがジェシカは深刻な状況を目の当たりにすることとなる。
一家は全員生きていた!人間の鎖に運ばれようやく浜辺に
心臓発作を何度か起こしていたロベルタの母親はすでに気を失いかけていた。だが、救助に気づくと「私のことはいいから家族を救って!」と頼んだ。家族は強い波に打たれ全員が激しく消耗していたが、幸いにもかろうじて息があることがわかった。
シモンズ夫妻と善意の人々は2人の子どもから救助を開始し「人間の鎖」に運んでいった。そして鎖となっていた人々は順々に彼らを引いて次に送っていき、ついに一家の全員を浜辺に届けたのだ。
その光景はまさに胸を打つものだった。見ず知らずの人々がお互いを信頼し合い、一家を救おうとがんばる姿にジェシカは感極まったという。
見ず知らずの人たちは懸命に待ち続けた
image credit:dailymail
助かったロベルタは途中で気を失っており、浜辺で意識を取り戻した。そして彼女の母親は救急車で一度心肺停止したものの、一命をとりとめて入院中、甥は手を骨折した。しかし一家は全員徐々に回復に向かっているという。
ロベルタの母バーバラ(中央)
image credit:dailymail
もしあの時鎖が無かったら・・思いやりある人々に感謝する家族
ロベルタは救助に立ち上がった善意の人々に心からの感謝を述べており、「もしあの時、皆さん全員があの場所にいなければ、私と家族全員が海中で命を落としていたでしょう」と語っている。
もしあの場にいた人たちが手をつながなかったら・・
image credit:Roberta Ursrey
ジェシカは当時のことを振り返りながら、誰もが救助に協力したことに感銘を覚えたという。
彼女はインタビューに対し、
「自分の人生を生きることはとても素晴らしいこと。そして私たちはいつも急ぎ足で生きています。ですがもし、誰かが助けを必要としていたら、みんなで立ち止まって手を差し伸べたいものです」と語り、以下のように結んでいる。
「世界ではあらゆることが起こっていますが、私たちにはまだ人間らしさがあるんです」
via:dailymail / newsheraldなど / translated by D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
あ、やばい、涙が...
2. 匿名処理班
こういう話には弱い……。゚(゚´Д`゚)゚。
3. .
離岸流に流された時のマニュアルを読んでおこう
4. 匿名処理班
こういうの咄嗟にできるってなかなかない
5. 匿名処理班
アメリカはアメリカでいいところあるよ。
6. 匿名処理班
こんなに太くて強固な鎖は他では見られない
7.
8. 匿名処理班
まじかよ人間の優しささいこーだな
9. 匿名処理班
凄い。
勇気が有るなあ。
10. 匿名処理班
泣けた。優しい思いやりのある人が沢山いたからこそ、この家族は救われたんだね。
11. 匿名処理班
サメ「さすがに空気よみました」
12. 匿名処理班
離岸流にさらわれたら無理に岸を目指すと体力使うから一回沖まで無抵抗で流されて左右どちらかから回り込むように戻るといいとどこかで聞いた(たしかマンガ)
ホントかどうかわからんが、良い子は試さないでね
13. 匿名処理班
アメリカ人て、ヒーローのようにかっこいいことを平気でするよね。
すごいよ
14. 匿名処理班
行動力と対応力すごいね
とりあえずこういう方法があるってことだけでも頭に仕込んでおこうっと
15.
16. 匿名処理班
危険すぎないか
途中で誰か手離したらその先の人間皆流されちゃうだろ
17. 匿名処理班
その行動力と勇気には敬意を抱くけど、そもそも離岸流が発生するような危険なところを海水浴場にするってのはどうなのよ
日本ならそんなところは遊泳禁止だし、地元民は絶対に子供を海辺に近寄らせない
18. 匿名処理班
ライフセーバー何やってたの…?
19. 匿名処理班
割とマジで目頭が熱くなるなぁ
20. 匿名処理班
ポケデジか何かで撮ったのかな?
草の根救援隊っぽさがさらにマル。
21. 匿名処理班
おっちゃんこういう話弱いんよ
ええ話やんけ。よかったよかった
22. 匿名処理班
普段し街をしかめっ面で歩いてたり、あまり関わりたくない様な第一印象の人が案外いい人だったりするよな。その逆も多いけど
23. 匿名処理班
※17
離岸流はちょっと沖に出るとどこにでもあるんじゃない?
海水浴場でヤバくなったことあるし、湖でもあるよ。
24. 匿名処理班
凄いなぁ…
25. 匿名処理班
今回は死人がでなくてよかったけど、下手したら鎖作ってる人も全員まとめて流されてた可能性もあるよね。
26. 匿名処理班
※5
これがアメリカ。
トランプ大統領、偉大なアメリカは過去でも未来でもなく、
今あなたの目の前にあるのですが、あなた同様、
気づいていないアメリカ人は本当に多いのです。