首狩りは、儀式などの目的のために人の首を切り落としたり、それを保管したりする習慣のことだ。
首級をあげた人物の武勇の証明、儀式的な力の獲得、死者の死後における奴隷化、戦利品といった意味合いがあった。以下では、首狩りを行なっていた10部族を見ていこう。
スポンサードリンク
10. マオリ族
ポリネシアの移民はニュージーランドに到達すると、独自の言語と文化を作り上げ、マオリ族として知られるようになった。彼らはポリネシアの習慣を基礎とし、部族内では戦士の文化が育まれた。
マオリ族は敵を討ち取ると、その頭蓋骨を取り除いた後、頭部を煙でいぶし、丁寧に保存した。犠牲者の刺青や顔の特徴はそのまま残るため、首は戦利品として扱われた。マオリ族は制圧した敵の首狩りと食人を行なっていた部族としては最も有名な人々だろう。
9. スンバ族
インドネシア、スンバ島で暮らしていた部族。東スンバと西スンバのどちらも首狩りを行なっていたが、その理由は異なる。東部では占領地を示すため、西部では対等な者同士の復讐の証としてである。
首級を保管するという点では共通している。東部では対立が起こると頭部を木にぶら下げたが、平時になると頭を埋めた。西部では首を家族に返すこともあったが、魔法の調合薬を作るために髪の毛は手元に置いた。
8. スキタイ
スキタイはイラン系ユーラシア人の遊牧民で、中央アジアから南部ロシアやウクライナに移住しては、今日クリミアと知られる強力な帝国を作り上げた。馬術に長けており、獰猛だったとヘロドトスが記している。
ペルシャの支配者らはその治世の大半をかけてスキタイの撃退に費やしたが、彼らはそれを戦い抜いた。馬上から弓矢を射かける優れた狙撃手であり、仕留めた敵は女子供であろうと喉を切り裂き、頭蓋骨はコップとして利用した。
7. ワ族
ミャンマー東部や中国雲南省の山間部に暮らす。血の供物を中心とした信仰を有しており、結婚式や葬式などで、鶏、豚、水牛を狩る儀式を行う。また首狩りの習慣があったことでも知られており、春になると豊作を祈願するために敵の首を狩った。
6. モンテネグロ人
熱心な首狩り族であり、1912年でもその風習は続いていた。首を狩ると魂を自分に乗り移らせるためにその髪を編んで、持ち運んだ。
ヨーロッパのモンテネグロ人は、首狩りの対象として主にオスマントルコの人々を狙った。オスマントルコにも首狩りの風習があったが、襲撃の獰猛さでは彼らに劣る。
モンテネグロ人にとって戦争における首狩りは付随的なもので、特に敵対者が付近で暮らしている場合はそれほど重要ではなかった。
彼らが戦いを求めることはなく、周辺であえていざこざを起こすようなことは好まなかったため、大規模な首狩りを行うのは相手が遠方に住んでいる場合のみであった。
5. ナガ族
ナガ族はインド北東およびミャンマー北西に暮らす複数の部族の共同体である。17の部族が同様の文化を有しており、インド、ナガランド州が成立している。インドではほかにマニプル州、アッサム州、アルナーチャル・プラデーシュ州にも分布する。
ナガ族が敵の首狩りを行うのは戦利品を得るためだ。アッサム州のナガ族は特に獰猛な部族として知られていた。
「アッサム」とは絶滅したアーホーム語で「無双」の意であり、屈強な首狩り族にはぴったりであった。ブラマプトラ川の南部に暮らす人々は皆元首狩り族である。
首狩り族の多くは戦士らしく襲撃を行なったが、アッサム族の場合は気づかれずに忍び寄るといった奇襲を得意としていた。
4. 秦の兵士
首狩りに関する古い記録によれば、中国春秋時代(紀元前770〜476年)と戦国時代(紀元前475〜221年)の秦の兵士が行なっていたという。やがて彼らは中国初の統一王朝を作り上げている。
秦の兵士の大半は奴隷で、家族を自由にするために戦っていた。敵の首を集めると、その褒美として自由を与えられることがあったのだ。秦の兵士にとっては士気の維持につながり、敵に対しては士気をくじく効果があった。
3. 台湾原住民
台湾原住民はいくつもの部族に分かれているが、雅美族を除けば、どの部族にも首狩り(出草)の風習があった。
後から入植してきた台湾人や日本人が侵入者と見なされて、首を狩られることもあった。日本統治時代にも行われ、1930年代になってようやく政府によって禁じられた。
それ以前は首狩りが定期的に行われており、誕生日、葬式、結婚式など、様々な儀礼で首を見ることができた。煮沸した後、乾燥させたり、木から吊るすこともあった。幸運をもたらすものとして、首狩りに成功した者が帰還するとそれを祝うこともあった。
2. ケルト人
当初、ケルト人が首狩りを行なったのは宗教的な理由のためだった。くぎで首を壁に打ち付けたり、馬にぶら下げることもあった。
ケルト人はのちにキリスト教に改宗するが、それ以降も首狩りの風習が続けられた。やがて首狩りの宗教的な意味合いは薄れ、伝統的色彩あるいは戦利品的意味合いが強くなる。アイルランドでは中世末期まで行われていた。
1. ヒバロ族
南アメリカの少数民族であり、アンデス東部で暮らす。戦闘的で、これまでよそ者に制圧されたことがないことを誇りにしている。首を乾燥させて干し首(ツァンツァ)にする習慣があった。オレンジと思って手にしたそれが、縮んだ干し首ということもありえたのだ。
作り方は、まず敵の頭蓋骨を取り除いてから、皮膚に熱い砂でパックする。こうすると顔の特徴や刺青を残したまま小さな猿の頭の大きさくらいまで縮む。彼らは干し首が超自然的な力を与えてくれると信じていた。また怨敵に対する復讐としても首狩りが行われた。
ヒバロ族でも特に危険なのがシュアール族だった。今では首狩りの風習は行われていないが、観光客向けの干し首のレプリカ製造は現在でも行われている。
via:10 Vicious Tribes That Practiced Head-Hunting/ translated by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
カニバリズムに関しての興味深い10の事実
人間が見世物とされていた時代。アメリカの人間動物園の目玉となったフィリピンのイゴロテ族(1905年)
8つの奇妙な宗教的儀式
カニバリズム研究:脳を食べる部族に脳疾患に対する遺伝的な耐性が現れたことが判明
まるでエイリアン。かつて世界各地で行われた人工頭蓋変形、その歴史と意義(※閲覧注意)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 4393 points | 一生のうちほんのわずかしか眠らない、マッコウクジラの貴重な睡眠シーンがついに激写される | |
2位 4017 points | 今そこにある残酷な現実をとことん突きつけていく、アメリカの子ども向け絵本『うちのご近所にようこそ』 | |
3位 2653 points | あまりにも辛すぎる鳥生を送っていた鳥に、やっと幸運が訪れた。大親友を得てこれからという時に、ああなのに・・・ | |
4位 2637 points | SNS上で超話題となっている知能検査と称したこの計算問題、君は解くことができるかな? | |
5位 1762 points | 赤ちゃんができたなら犬を飼っちゃダメ。姉の忠告を無視して犬を飼った妹。その決断は正しかった。犬と少女の10年物語 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
首切りの習慣なら現代にもある
2. 匿名処理班
アイルランドのケルトをケルト人として扱っても良いものかどうかという点
3. 匿名処理班
DQのくびかりきぞくをくびきりかぞく間違えて読んで恐ろしい一家だなと思っていたのを思い出した
4. 匿名処理班
リアル妖怪首おいてけ・・・
5. 匿名処理班
敵の首を取るの習慣というなら、戦国時代日本もそうだったのでは?
6. 匿名処理班
日本の武士も同類
7. 匿名処理班
日本はないんだな。
首を加工して保管しないからかな?
8. 匿名処理班
戦国時代の日本もじゃないのかな
9. 匿名処理班
戦いで敵の首を重要視するという点では、古代から織豊政権期あたりまで武士も該当すると思うけど、ここではノーカウントなのか。
10. 匿名処理班
フットボールの起源とか本当なのかどうだか
11. 匿名処理班
大航海時代のアメリカでも開拓民が人食いや首狩りに襲われ、
かなりの数が命失ったっけ
アマゾンあたりだといまだいるらしいし、怖いことです
12.
13.
14.
15. 匿名処理班
フランシス・ラーソン 著「首狩りの歴史」によれば、
東南アジアから南方の首狩りは、西洋人がグロテスクな土産として干し首を欲しがったために
→ 原住民は部族間抗争に勝つために強い鉄製の武器が欲しい
→ 西洋人は干し首と高レートで交換してくれる
→ 敵部族の首を取って武器を充実しよう
→ どの部族もたいした理由も無くお互いに戦いを仕掛けるようになる
と、ヤクザの抗争のようにエスカレートしたらしい。
16. 匿名処理班
闘争の習俗としては普通の事だとおもうんだけどな、首狩りって
日本でも首とったとらないってそんな違和感ない
17.
18. 匿名処理班
マオリ族、うさ耳…!
19. 匿名処理班
「道」の字は道端の木に首がぶら下げられてる光景を表してるらしいね
20. 匿名処理班
※5
いくらでも嘘を言えるから証拠としてチョンパしただけで
嵩張る首じゃなくて成人男性の象徴として髭をはやしていて
上唇と鼻のセットとか耳とか証拠は色々あって記事みたいに
首自体が証拠以上の意味は自分が知る限りないから
ちょっと違うのではないだろうか。
21. 匿名処理班
アメリカ人も世界大戦当時敵兵ぶっ殺して頭蓋骨をトロフィーに加工してたとかいうし
だいぶ一般的な風習なんじゃないかな
22. 匿名処理班
干し首ってなんで頭蓋骨より小さくなるんだとずっと思ってたけど、
頭蓋骨抜いてから干してたのか
23. 匿名処理班
台湾の首狩族の中には当時、狩った首を入れていたリュックが
用途を変えて現役だったり、当時の頭蓋骨とか加工品とかが
現存していたりとこの手の文化を窺い知れる珍しい所だったりする
ヒバロ族の干し首はアメリカの車改造文化の一つHOT RODに
装飾品として取り入れられて普及しているからレプリカは
観光客以外にもこういった人達にシュランケンヘッドと呼ばれ
一定の需要があり、アメリカ文化が普及している日本でも
出回っているから、日本で一番身近な首狩文化かもね。
24. 匿名処理班
コップの代わりにだけはされたくない…
25. 匿名処理班
日本でも塩漬けくらいはしてたのになぁ
26. 匿名処理班
大将首が(
27. 匿名処理班
上野の科学博物館に展示されてたな
28. 匿名処理班
日本の武士がない。やり直し。
29. 匿名処理班
フランスでは1977年 ギロチンで最後の死刑が行われた
30. 匿名処理班
てっきり日本も入ってると思ったわ
とった首を位の高い人に見せるために
女性が首に化粧をしたっていうのは、
けっこうレアな気もするけど
31. 匿名処理班
最後のはジャック・スパロウの母親みたい
32. 匿名処理班
美内すずえの「はるかなる風と光」って漫画を思い出した。
主人公が首狩り族だった部族の人たちに育てられたので、干し首を宝物にしていたら
白人に馬鹿にされるシーンがあったんですよ。
女海賊になったりする冒険活劇で面白いので、機会があったら読んでみて下さい。
33. 匿名処理班
150年前までは日本人だって戦士階級は首刈り族だよな
34. 匿名処理班
※23
アンタなんでそんな詳しいんや・・・
35. 匿名処理班
見せしめに首を晒したり
首実検を行った話なんて西洋文明にもいくらでもある話なので
日本の武士を首狩り族と言うなら、世界中殆どの国が首狩り族だな
36. 匿名処理班
※29
おっしゃる通り、フランスをはじめヨーロッパでも普通に、首をはねる風習はあった。
首を狩るといのは、人類にとって普遍的な意味合いを含んでいるのだろう。
37. 匿名処理班
戦国時代、夫や息子らが敵の首を取ってきたら、
奥さん達はまず首級あらためのためそれらを水で洗い清めたとか聞いた。
あと織田信長は、誰か名前は忘れたけど討ち取った敵将の頭蓋骨で盃作って、そこに酒を入れて部下の各大名に回し飲みを強いたとか、小説で読んだ。
日本もそりゃあ残酷なことしてるよ。
殺し合い、奪い合いの戦争だもん。
38. 匿名処理班
大東亜戦争中も、何故か首の無い日本兵の死体が沢山有ったと、とあるご老人から聞いた事があります。
39. 匿名処理班
日本の首刈りは台湾とかミャンマーとかとルーツがつながってるのかな
40. 匿名処理班
うわぁ・・・首狩りだって。こっわ
海外の部族はこわいな〜
あ、日本のSAMURAIもだっけ
41. 匿名処理班
日本のは首実検のあと葬ってたから、挙げられている事例とはちょっと違うよね
あくまで戦果の証拠だから
42. 匿名処理班
こういう残虐に感じる文化も起源やつながりを調べているとほんと興味深いよね。
大概宗教関連かと思ったらそうでもなかったりするし
43. 匿名処理班
スンバ族の写真見てゆーとぴあを思い出していた…。
44. 匿名処理班
こういうのなら侍もじゃないのか?
45. 匿名処理班
イバン族が抜けてますよー
46. 匿名処理班
スンバ族 伸びーるゴム紐の端っこを口にくわえて云々
47. 匿名処理班
中国の春秋戦国時代、秦が大暴れしてた時代って首じゃ無くて耳が戦果の証じゃなかったっけ?
捕虜を斬首する、というのはあったけど、それはただの刑罰だった筈だし
あと、春秋戦国時代の兵士って基本は国に籍のある国民がなるものだし
秦の場合、戦場で武功を揚げれば人民としての爵位があがり逆に敗北すれば罰を受ける、という信賞必罰がはっきりしてたからこそ強かった、って話だし
というか、奴隷云々ってどっから出てきたんだろ?
つか、ここの首狩り云々に相当するのは秦よりも、商(殷)の方だよねぇ
首をまじないの道具として、城壁に並べ魔物の侵入を防いだり、自分達の治めている場所だと明示するための標識として首を木にかけたり(県の字源)してたし