勇次郎「刃牙、プールに行くぞッッッ!!!」刃牙「応ッッッ!!!」
刃牙「あっちィ~……」パタパタ
刃牙「こう暑いと、出てくる言葉が“暑い”だらけになっちゃうよ」
刃牙「なァ、オヤジ――」
勇次郎「…………」ミキッ…
刃牙「~~~~~~~~~~~ッッッ!」
全身運動の苦痛でもって、五体が感じる“暑さ”を上書きする。
かろうじて無表情を保持(キープ)していた。
勇次郎「…………」ミキッ…
刃牙「暑くないのか……ッ!」
刃牙(やっぱスゲ……)
元々「強き者は耐えぬ」という信条を持つ鬼(オーガ)、ついには爆発する!
勇次郎「暑いッッッ!!!!!」
刃牙「オワッ!」ビクッ
勇次郎「こんな日は……たまにゃ水泳(スイミング)もいいだろう」
勇次郎「刃牙、プールに行くぞッッッ!!!」
刃牙「応ッッッ!!!」
勇次郎「ストライダム」
ストライダム『なんだ、ユージロー』
勇次郎「刃牙とプールに行くことにした。大至急、車で迎えに来い」
ストライダム『エ~~~~~ッ!? しかし、私はこれから軍の会議……』
勇次郎「キサマの事情を考慮するつもりはねェ」
ストライダム『イ、イエッサ……』
刃牙「カワイソ……」
ストライダム「プールといっても、どこのプールに行くんだ?」
ストライダム「まさか、いつだったかの滝を利用したプールか?(設計ミスの……)」
勇次郎「イヤ……今日はそうじゃねェ」
勇次郎「父親が倅を連れていくにちょうどいい場所といや、やはり市民プールだろう」
勇次郎「都心から少し離れたとこにある、市民プールに向かえ」
ストライダム「オーケー」
ストライダム(あ~あ、今日もカーナビが派手にズレそうだ……)
勇次郎「…………」ズチャッ
刃牙「そういえば俺、市民プールって初体験なんだよね……。まずどうすりゃいいんだい?」
勇次郎「チケットを購入する」
刃牙「ナルホドね……」
勇次郎「公営プールには時間制限があるところと、ないところがあるが――」
勇次郎「この市民プールは時間制限を気にすることなく入れる」ニィ~
刃牙「ッヘェ~……」
刃牙「フンフ~ン」ヌギヌギ…
刃牙(水泳なんて久しぶりだから、ワクワクするな)
勇次郎「刃牙よ」
刃牙「?」
勇次郎「水泳帽(スイミングキャップ)はどうした」
刃牙「海パンとゴーグルしか持ってきてないけど……」
勇次郎「…………」メキッ…
勇次郎はスマートに身に付けているッッ
勇次郎「市営プールで水泳とくれば和・洋・中を問わず、スイミングキャップの着用は必然ッッッ!」
勇次郎「俺を満足させるほどに成長したかと思えば、よもやこんな凡ミスを仕出かすとは……ッッ」
刃牙「ゴメン……ちゃんと教えられたことなかったし……」
勇次郎「イヤミか、貴様ッッッ!!!」
勇次郎「施設内の売店で売ってるハズだ。すぐに買ってきなさい」
刃牙「ワカったよ……」
刃牙「ウン」
勇次郎「よく引き締まった五体だ……あれから更に鍛え上げたようだな」
刃牙「オヤジこそ……筋肉がデカくなってる。アナタは今なお成長期だね」
勇次郎「…………ッッ」
勇次郎「フンッ、こんな公共の場で父子でイチャつくもんじゃねェ……シャワーを浴びに行くぞ」クルッ
刃牙(アンタからハナシ振ってきたンじゃん……)
勇次郎「――――!」
勇次郎「キ、キサマはッ!」
独歩「オウ」ザァァァァ…
勇次郎「愚地ッ! なぜここに……ッ!」
刃牙「何してるんですか?」
独歩「滝浴びならぬシャワー浴びをな」ザァァァァ…
勇次郎「ふむ、シャワー浴びは正しく行えば、滝浴びと同等の効果があるとされる……」
刃牙(この人はまだまだ地上最強の座を諦めちゃいない……ッ)
刃牙「ヘェ~……50mプールと25mプール、それと子供用プールがあるのか」
勇次郎「ウム……この三つのみで水泳上級者から初級者まであらゆるニーズに応えられる」
勇次郎「市民プールとは機能性を極限まで追求した存在なのだ」
勇次郎「学べ……刃牙」
刃牙(オヤジが……俺に教育してくれている!)
刃牙「じゃあ、さっそく――」ダッ
勇次郎「待ていッッッ!!!」
刃牙「!?」ビクッ
勇次郎「プールに入る前は、準備体操を忘れてはならぬ」
刃牙「だけど、俺たちファイターに準備体操なんか――」
勇次郎「市民プールにおける準備体操は一種のマナー……漫然とプールに入るな」
刃牙(そっかァ~……“いただきます”みたいなものか)
勇次郎「ごォッッッ! ろくッッッ! しちッッッ! はちッッッ!」グッグッ…
勇次郎「にィッッッ! にッッッ! さんッッッ! しッッッ!」グッグッ…
勇次郎「ごォッッッ! ろくッッッ! しちッッッ! はちィッッッ!!!」グッグッ…
刃牙(声デカイって……親父)
刃牙「理解(わか)ったよ、親父」
刃牙(今までのオヤジのイメージだと、オヤジがプールに入る時は――)
勇次郎『プールに入る時は、天井から飛び込むに限る』バッ
ちゅどっ!!!
刃牙(――こんな風に入るとばかり思ってたけど、食事前の会釈といい、この人は意外と礼儀を重んじる)
刃牙(俺はまだまだこの人のことを知らないンだなァ……)
刃牙「…………ッ」ゴクッ…
刃牙(見られる……オヤジの泳ぎ……ッ!)
勇次郎「ぬんッッッ!!!」
ザバァァァァァッ!!!
刃牙(バタフライかァ~~~~~)
刃牙(たしかにクロールや平泳ぎより……遥かに親父的ッ!)
「いやァ~……驚愕(おどろ)いたなんてもんじゃないですよ」
「なんでプールにシャチがいるの、ってホントに思っちゃいましたもん」
「恐慌(パニック)を通り越して、死を覚悟しちゃいましたからね。あ、喰われる……って」
「だけど落ち着いて目を凝らしてみると――人間だったんです」
「イヤ、あれは……人間というより鬼でしたね」
「海パンはいた鬼が、豪快なバタフライで泳いでたんですわ……」
刃牙(速え~~~~~!!!)
刃牙(やっぱりそうだ……オヤジは水中でも最強だ!)
刃牙(って、せっかくプールに来たんだ。俺も泳がないと……)
刃牙(――ン、ちょっと待てよ?)
刃牙(改めて周囲を見回すと、他にも知ってるカオがちらほら……)
刃牙(あっちでは郭海皇さんが水の上走ってるし……)スゲ…
ジャック「ガボッ、ゴボッ……!」
刃牙(水道場では兄さんが地上で溺れてるし……多分、目を洗おうとしたら涙穴に水がぶつかったんだな)
花山「すまねェ」
水泳部員「…………」ピクピク…
刃牙(向こうでは花山さんが水泳部員を座礁させてるし……)
武蔵「水練の鍛錬をしたいのだが……」
係員「帯刀しての入場はご遠慮いただいております」
武蔵「ぬう……」
刃牙(なにやってんだ、あの人……)
刃牙「ルミナ!?」
ルミナ「今日はトレーニングですか?」
刃牙「いや……トレーニングというよりはバケーションの方が近いかな」
ルミナ「そうなんですか」
ルミナ「だったら……刃牙さんの泳いでるところ、見せてもらってもいいですか?」
刃牙「いいとも」ニィ…
刃牙(よォ~し、親友(ダチ)にいいとこ見せてやるか!)
世界記録をやすやすと超える速度で、25m地点を突破――
ルミナ(スゴイや……刃牙さん、ますます成長してるッ!)
ところが――
刃牙「!?」ビクンッ
この日、刃牙がイメージしたのは手足に繋がった超巨大な鉄球!
刃牙「…………ッ!」
刃牙(手足が動かな……ッ!)ジタバタ
刃牙「ガボッ、ゴボッ……!」ジタバタ
ルミナ「刃牙さァ~~~~~~~~~~ん!!!」
全身おおわれてる競泳用の水着着てるよ
そういえば着てるのあったな
めっちゃピチピチの
刃牙「かっこわるいとこ見せちゃったな」ハァハァ…
ルミナ「いえ……ボク、見えました」
刃牙「え?」
ルミナ「刃牙さんの手足に鎖と鉄球が……」
刃牙「へぇ……あれが見えたんだ」
ルミナ(刃牙さん……なんて自分に厳しいんだッッッ!)
刃牙「親父ィ……」
勇次郎「なんだ?」
刃牙「100mで勝負しね?」
勇次郎「!!!」
勇次郎「エフッ! エフッ! エフッ!」
勇次郎「この……親孝行者めが」ニィ~…
市民プールにて、再び親子喧嘩勃発ッッッ!!!
勇次郎「いいだろう」
刃牙「ヨーイドン!!!」
ザバァァァァッ!!!
刃牙はクロール、勇次郎はバタフライを選択――
全くの横並び!!!
「俺もねェ……数あるバイトからわざわざプールの監視員なんて選ぶだけあって」
「これでも結構マジで水泳やってた時期もあったんスよ」
「もしかして、俺ってオリンピックとか出れちゃう? ――なぁ~んて時期もあったりね」
「ま、上には上がいましたけど……」
「だから、いわゆる水泳の一流選手の泳ぎは人一倍見てきたって自負がありますけど」
「あの二人は次元が違ってましたね」
「アレを見ちゃうともう……世界水泳や五輪の水泳、楽しんで見られるか不安になっちゃいますね」
刃牙(さっき、鉄球のイメージとジタバタ格闘してる時に思いついた泳法――)
刃牙(ここで全身を脱力して、一気に加速する!)
刃牙(名づけて、ゴキブリ泳法!!!)
ザバァァァァァッ!!!
勇次郎「…………ッッ!」
勇次郎(この……孝行息子がッ!!!)
刃牙(タイミングは完璧だった! もうオヤジは追いつけない! 追いつけっこない!)
刃牙(やった! 泳ぎとはいえ、オヤジに勝――)
勇次郎「邪ッッッ!!!」ギュルルルルルッ
この時勇次郎、全身を高速で回転させることにより、プール内に巨大な渦潮を発生させる!
ゴオォォォォォ……!!!
刃牙「~~~~~~~ッッッ!」
これによりゴールめがけ直進していた刃牙は、大きく舵取りを狂わされ、プールサイドに激突――
範馬勇次郎の勝利となった。
刃牙「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」
勇次郎「覚えておけ、刃牙」
プール内にも渦潮は発生するということを!!!
刃牙(な? ――じゃねェッつーの!)
刃牙「フゥ~……水泳後のシャワーの気持ちよさは格別だね」
刃牙「プール……楽しかったよ。アリガト、親父」
勇次郎「まだ終わっちゃいねェ」
刃牙「え? まだなにかあるの?」
勇次郎「『遠足は家に帰るまでが遠足』という格言があるが――」
勇次郎「プールは水泳後にアイスチョコモナカを喰らうまでがプールッッッ!!!」
刃牙「ナ、ル、ホ、ドォ~~~~~~」
父子の脳裏にモナカの甘味、歯ごたえ、パリパリとした食感が現実(リアル)に思い描かれる。
パリッ… モニュッ… モグッ… パリパリッ…
刃牙(ヤバ……よだれ出てきた)ダラ…
勇次郎「あっちにアイスの自販機があったハズだ……行くぞッッッ!!!」
刃牙「応ッッッ!!!」
勇次郎「~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」
刃牙「~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」
勇次郎「こうなったら仕方ねェ……」
刃牙「ウン」モグ…
刃牙「ウマイや」パリッ
勇次郎「プール後にはこれがイチバンだ」メリ…
地上最強の父子、市民プールにて“エアモナカ”を堪能す……ッッ
― 完 ―
元スレ
勇次郎「刃牙、プールに行くぞッッッ!!!」刃牙「応ッッッ!!!」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1502109059/
勇次郎「刃牙、プールに行くぞッッッ!!!」刃牙「応ッッッ!!!」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1502109059/
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