【アマガミ】6年後のクリスマスイブ
今まで誰も信じることのなかった私が唯一信じてもいいと思える人だった。
彼といると毎日が楽しくて、居場所のなかった私に居場所をくれた。
そして、待ちに待ったクリスマスイブ。
初めて好きになった人とする初めてのデート。
…つもりだった。
彼のいない今、私には何も残らない。
ただ胸に空いた、ぽっかりと大きな穴を除いては。
どうして?私のどこがダメだったのよ…
貴方がいなければ何も出来ない私に変えたのは貴方なんだからしっかり責任を取りなさいよね。
…こんなことを言ったって自分で自分を慰めてるだけに過ぎないことくらいわかってるはずなのにどうして、
それはきっと……
――今日がクリスマスイブだから――
そういっていつもより2時間も遅く目覚めてしまった。珍しく考え事をしていて遅くまで起きていたからだろう。彼は今何をしているのだろうか…
絢辻「っと、何バカなこと考えてるのよあたし」
私は、高校を卒業後、そのまま志望校へ進学し現在は就職して早いもので2年が経っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
絢辻「さて着替えたことだし、しゅっぱーつ」
どこへ行ったものか……。
とりあえず公園に散歩にでも行こう
絢辻「ここに来るのも6年振りね…」
そう、彼に連れてきてもらったこの公園。
この土地に就職したのも心のどこかで彼との思い出を忘れたくないから、とかあわよくば彼にもう一度会えるかもなんて淡い期待を寄せているからなんだろう。
需要あったら次スレほのぼの系で口直ししようと思ってるんですけど需要ありますかね?
だからなのかあそこに座っている男性までもが心なしか彼に見えてしま…
え……??
体が震えていた、二度と出会うことなんてないと思っていたから。
見間違えなんかじゃない、あれは間違いなく彼だ。
…どうして?
来なかったのは彼の方、なのにどうしてそんなこと思ったのだろう。
…考えても答えは出そうにない。
そんなことよりも彼に振り向いてほしい。
私という存在に一瞬でもいいから気づいてほしい。
もう一度だけ、私の名前を呼んでほしい。
彼がこっちを向いて私と目が合った。
橘「あの……」
彼は私の事を覚えていてくれた。誰だってわかる、その後悔と困惑に満ちた目を見れば、誰だって。
やっぱりね。
絢辻「もしかして、橘君?久しぶりね。」
相変わらず私は仮面を被って第一声を発した。
絢辻「それはもう元気よ。橘君は今どうしてこんなところに?」
橘「…もうそろそろトラウマに別れを告げてもいい頃かなって思ってさ」
絢辻「トラウマ?」
何のことだろう。私は必死に記憶を漁る。が、思い当たる節はない。
橘「OKしてくれたときはそりゃもう嬉しかったよ。彼女の一人すらできたこともなかったしね。
橘「でも当日、彼女は来なかった。2時間待ってもね。」
橘「それから二年後、僕は同じ状況に陥った。」
橘「しかも被害者じゃなくて加害者の方になってしまった。」
橘「ひどく後悔したよあの時は、ううん、今でも。」
どうしてその悲しみが分かっていながらその悲しみを私にも味合わせなきゃいけなかったのかと。どうして裏切ったのかと。
橘「実を言うと今日ここに来たのは絢辻さんが来る、そんな予感がしたからなんだよね」
絢辻「私が?」
橘「絢辻さん、本当にごめん。裏切られる苦しみを分かっていながら人を裏切ることがどれほどありえないことかあの頃の僕はわかっていなかった。」
やめて。
やめて。
橘「許してくれなくてもいいし謝ったところであの事がなかったことになるとは思っていない」
やめてってば。
橘「でも謝らせてほしい。本当に申し訳なかった。」
橘「え?」
絢辻「どうして、どうして謝るのよ…!!!!」
絢辻「別にあなたの事を恨んで生きてきたわけじゃないし謝ってほしいだなんて私は望んじゃいない」
絢辻「むしろあなたの顔を見なければ思い出すこともないし楽に生きてこれたわ」
絢辻「でも……」
ダメ
絢辻「でもね……」
それ以上言ったら
絢辻「あなたに再び出会い、こうやって謝られたら」
また辛くなるだけ
絢辻「思い出しちゃったじゃない…あなたへの想いを」
絢辻「うっ…グスッ…ひぐっ……」
絢辻「うわぁぁぁん…うっ…うっ…グスッ……」
それから私は彼の腕の中で泣き続けた。
あの日以来流すことのなかった涙を。
橘「ううん。全然大丈夫だよ。こうして直接話も出来たことだし。」
橘「なにより絢辻さんに久しぶりに会えたからね。
そういうところは本当に変わってないのね。
絢辻「あ、そうだ。橘君、この後少し時間あるかな?」
橘「えっ?」
絢辻「よかったら私の家寄って行かない?」
もう過去何てどうでも良くなっていた。彼と話せているこの現実だけでいい。
・・・・・・・・・・・・・・・・
絢辻「あれ、もう12時なんだ…そっか…」
結果から言うと、橘君が家に来ることはなかった。
絢辻「えっ…ど、どうして?」
橘「そろそろ唯の出かける支度が出来た頃だし家に戻らないといけないんだ。」
唯?何を言っているのかまるで理解できない。
橘「あぁごめん、唯っていうのは僕の娘の事だよ。」
橘「大学在学中に、高校の時から付き合ってた逢と結婚してさ。あぁ、逢ってのは七咲の事で…」
今の気持ちをどう形容していいのかわからなかった。
橘「もう二歳になるんだけど可愛くってさ」
少しでも期待してた自分が、舞い上がってた自分がどうしようもなく恥ずかしい。
絢辻「そう…なんだ。」
橘「ごめんね、連絡先交換しておく?」
絢辻「ううん、大丈夫。同じ町にいるならいつかまた、会えるだろうから。」
絢辻「うん、またね。」
彼が遠ざかっていく。心も身体もほんの少し近づいたと思ったらその何倍もの距離が開いてしまった。
やはり私に幸せになる権利はないのだろうか。
つくづく神を恨んだ。
確かに恨んで生きてきていないと言ったのは事実だ。
でも彼は私を裏切っておいて幸せな家庭を気づいている。
どうして私だけがこんなに不幸にならなければいけないのだろう。
あの頃の私だったら二人の仲をズタズタに引き裂いていたかもしれない。
だけど今は出来ない、二人の間には既に子供がいるのだから。
子供に罪はないのに。一瞬でもそんなことを考えてしまった。
そんな幻想も今日で見事に打ち砕かれてしまった。
無残にも12月24日に。
ふと外を見ると雪が降っていた。
その雪は私の心の広がってしまった大きな穴に積もること無く朝まで降り続けた…。
需要があれば口直し的な感じでほのぼの系で書きたいなーと思ってるのでもしスレ建てたら誘導したいと思います
元スレ
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コメント一覧
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- 2017年08月16日 23:59
- 七咲が好きだということは分かった
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