「ジャンボ尾崎が斜面を滑りおりてくる想像をしたら少し元気になれました」
Twitterで過去のツイートを見返していたら、2011年3月10日のツイートにそう書いてあった。本当に元気になれるのか?
試しに想像してみたところ、コレが意外とイケる。
70歳になった今もなお、現役プレイヤーとして活躍するゴルフ界の重鎮・ジャンボ尾崎。一見普通の短髪なのだがよく見るとえり足だけ長い、一種独特なヘアースタイルのジャンボ。身長181センチ、体重76キロ、恵まれた体格のジャンボ。
そんなジャンボが「袋田の滝カントリークラブ」にて、ゴルフ場のコースを回っている。その最中、急勾配になっているフェアウェイの前で、ジャンボはふと立ち止まる。
「ちょっと待って」
共にコースを回っているジャンボ軍団の面々に声をかけるジャンボ。その目は好奇心に満ち溢れている。
「おい、段ボール持って来い」
そう、ジャンボは、滑りおりるのに最適な斜面を発見したのだ。芝に直接尻をつけるよりも、尻の下に段ボールを敷いて滑りおりたほうがスピードが出る。ジャンボはそのことを熟知していた。
ジャンボ軍団の1人が、キャディーバッグの中から、ジャンボの尻にフィットする大きさの段ボールをさっと取り出す。ジャンボが斜面を滑りおりることは、あらかじめ予測していたのだ。
“なんでジャンボ軍団は、そんなに用意周到なの……?”
そう思った読者の方もいるだろう。その疑問の答えは、ジャンボ軍団が「尾崎兄弟によって結成されたチーム」だからだ。そう、一緒にコースを回っていたのは他でもなく、弟の健夫(ジェット尾崎)と直道(ジョー尾崎)だったのだ。弟らは、兄の考えることなど手に取るようにわかるのだろう。
弟の2人はこれまで、さまざまな斜面を滑りおりる兄の姿を見てきた。雨の日も風の日も関係なく、いつだって滑りおりようとする兄に、畏敬の眼差しを向けていたに違いない。そしてジャンボは、滑りおりたいときにいつでも段ボールを手渡してくれる弟たちを、心底愛した。
ジャンボが、段ボールを小脇に抱えて、斜面をのぼっている。
頂上に立つと、人差し指を舐め、風向きを確認した。
「よし、今だ」
ジャンボが、勢いよく斜面を滑りおりる。長いえり足を、風になびかせながら。
ほどなくして、弟たちの拍手と笑い声が、袋田の滝カントリークラブに響き渡った。
……ほら、少し元気になれたでしょ?