ミサイル発射、Jアラートで嘘八百を垂れ流したテレビ
日本に求められる普通の安全保障リテラシー
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今回のミサイル発射を伝えるテレビのワイドショーはこれに輪をかけ、国民をミスリードする酷い内容が多かった。そもそも基礎的知識に欠けており、「ピント外れ」を通り越し、誤った知識をお茶の間に垂れ流していた。
例えばこうだ。高名なコリア・ウオッチャー曰く、「破壊措置命令が出ていないのに、Jアラートを出すというのは納得いきません」と。
テレビの嘘コメントが“真実”に
これに対し、スタジオの雰囲気は「そうですよね・・・」と一挙に政府批判の様相に転じた。政府批判は自由だが、正しい事実に基づいてなければ、ただのアジテーションに過ぎない。恐ろしいのはこれが"真実"となって国内に蔓延してしまうことだ。
「破壊措置命令」は稲田朋美防衛大臣の時からとっくに出されていた。だからこそ、イージス艦も日本海で警戒監視を続けており、PAC3も中国、四国地方に展開しているのだ。加えて「破壊措置命令」と「Jアラート」は全く関連性がない。
次のようなことを真顔で述べるコメンテーターもいた。「今回、自衛隊は『破壊措置』が実施できなかった。だから日本のミサイル防衛システムは役に立たない」と。
「破壊措置命令」が出ているからと言って、「破壊措置」をするとは限らない。
平時の場合、法律上「我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認める」ミサイル等に対して「破壊措置」が実施できる。
ミサイルの着弾地が不明な場合や、明らかに着弾地点が太平洋と分っているミサイルは現行法制上も破壊措置は取れない(能力的な観点もあるが、省略する)。
今回初めて出された「Jアラート」についても、随分いい加減なコメントが流されていた。本質的な理解が深まるどころか誤認識が広がったのではないだろうか。
代表的なコメントがこうだ。「警報が出されてから、ミサイルが飛んでくるまでに数分しかないから意味がない」「地下や頑丈な建物の中に避難しろといっても、近くにない場合はどうするのか」「避難できるような場所なんて、ほとんどないし、Jアラートなんて意味はない」・・・。
「Jアラート」は全国瞬時警報システムであり、対処に時間的余裕がない大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃などについての情報を、国から住民まで直接瞬時に伝達するシステムである。
住民に早期の避難や予防措置などを促し、被害の軽減に貢献することを目的としており、危機管理能力を高めようとするものである。
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知ったかぶりして、こういうことをまことしやかに語っていたコメンテーターもいた。
「なぜ、12の道と県にわたって『Jアラート』が流されたのか。なぜ、場所を特定できないのだ。政府は危機を不必要に煽っているのではないか」
「日本に落下する可能性があるのかないのかを瞬時に探知できなければ、そもそもミサイルディフェンスなんて成り立たない」
誰が訂正するわけでもなく、誰も正確に解説できないため、テレビでのこのコメントがあたかも真実のように定着しかねない。テレビしか情報源を持たない主婦や老人などは、「そうだな」と信じても不思議ではない。
そもそも、ミサイルのブースト・フェーズ(ブースターが燃えている状態)では着弾地点は分からない。ブースト・フェーズが終わった時点で、ミサイルは弾道軌道に入り着弾地点が特定される。
着弾点が分からないのは米軍も同じ
ブースト・フェーズで分かるとしたら、方向だけであり、着弾点が「瞬時に探知できない」のは米軍の最新システムでも同じである。だからと言って「ミサイルディフェンスなんて成り立たない」わけではない。「成り立たたない」ならこの世にミサイル防衛システムは存在しないことになる。
ブースト・フェーズが終了すれば正確に着弾地点が判明するが、それまで「Jアラート」発出を待つわけにはいかない。ただでさえ「数分間」しか余裕がないのに、手遅れになってしまうからだ。
ミサイル発射を探知し、概ねの方向性が分かった時点で、とりあえず関連地域に「Jアラート」を流すというのは、危機管理上も合理的であり正しい。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50956
彼らはこういうことのあるたびに、自分たちの未来の利益を売り払っていることをきっちりしてあげればいいさ。