▲iPhone Xはティム・クック氏から「one more thing」として披露された
アップルは、9月12日(現地時間)、Apple Parkに併設されたSteve Jobs Theaterでスペシャルイベントを開催。「iPhone X」「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「Apple Watch Series 3」「Apple TV 4K」と、怒涛の勢いで5つの新製品を発表しました。すでにEngadgetでは、多数の記事が上がっているため、全容や詳細な仕様などはそちらを参照していただくとして、ここではこのイベントに参加した筆者の視点でのインプレッションをお届けします。
一言でまとめるなら、やはりiPhone Xはすごかったというところに尽きるでしょう。イベントではCEOのティム・クック氏が「one more thing」と語ったあと、最後に紹介したことからも分かるように、アップルとしてもiPhone Xを目玉と捉えています。イベント終了後のハンズオンでは、報道陣がiPhone Xに殺到。順番待ちが厳しそうだと思ってあきらめた筆者は、先にiPhone 8/8 PlusやApple Watch Series 3を触りにいったほどでした。
▲前面がほぼすべてディスプレイになったiPhone X。ハンズオンでは争奪戦に
縦長の全画面スマートフォンは、今年からのトレンドであり、それだけで目新しいわけではありませんが、「あのiPhoneが対応した」というのは大きなニュース。しかも、iPhoneは代々ホームボタンを搭載してきたため、前面のすべてを画面にしてしまうと、どうしても操作体系を変えざるをえません。そこで、アップルは、フリックでホーム画面に戻り、コントールセンターを右上から引き出すという仕様を盛り込んできました。
▲上フリックがホームボタン代わりに
▲コントロールセンターは、右上から引き出す仕様
これは、同時に発表されたiPhone 8、8 Plusとも異なるもの。歴代のiPhoneユーザーにとっては違和感があるかもしれませんが、いろいろなスマホを使ってきた筆者は、ハンズオン中に慣れました。Androidのように、ソフトキーを実装してくるかと思いきや、一歩進めて、フルゼスチャーの操作方法を提案してきたところは、ハードとソフトの両方を作っているアップルならではで、さすがと感じたところです。ここまで来たら、ついでにApple Pencilにも対応してペンでの操作も提案してくれるとなおよかったのですが、それは次回以降のお楽しみとして取っておきたいと思います。
ティム・クック氏が「スマートフォンの未来」と語っていたiPhone Xですが、逆にいえば、iPhone 8や8 Plusは「スマートフォンの今」ということになるのかもしれません。確かに、機械学習の処理に優れた最新の「A11 Bionic」を搭載したり、背面をガラスに変えて高級感を高めたりと、iPhone 8、8 Plusもフルモデルチェンジをがんばっていたのは事実です。一方で、インパクトの強い「未来」を見せつけられたあとだと、どうしても印象が薄くなってしまうのも事実。これまでの集大成といえる端末なだけに、少々もったいないかなと思いました。
▲10年の集大成として披露されたiPhone 8と8 Plus
もっとも、セールスという観点では、iPhone 8、8 Plusに期待が持てそうです。iPhoneの枠をはみ出してしまったiPhone Xに対し、良くも悪くもiPhone 8、8 Plusは普通のiPhone。変態解像度のiPhone Xとは異なり、アプリ開発者の特別な対応も必要なく(iOS 11のための64ビット対応は必要ですが)、今まで使えていたアプリが、同じように動くのは安心感が高いところ。スマホにそこまで新しさを求めていない人にとっては、いい選択肢です。iPhone Xと比べると、相対的に安価なのもセールス面で期待できるポイントといえます。
ただ、アップル自身も、3モデル展開、SEまで含めると4モデル展開になった結果として、1モデルあたりの売れ行きが落ちるのは覚悟していることがうかがえます。当たり前ですが、モデル数を増やしたらそのぶん倍々ゲームで数が増えるわけではありません。むしろ、1モデルごとの数量は減ってしまうおそれもあります。
その対策かもしれませんが、iPhone 8、8 PlusはiPhone 7、7 Plusのときより、色数や容量のバリエーションが絞られています。選べるのは64GBか256GBで、シルバー、ゴールド、スペースグレーの3色。組み合わせでいえば、6通りとシンプル化しています。ここからは、SKU(スキュー、在庫管理単位)を絞って1モデルあたりの収益性を高めたい狙いも透けて見えます。こんなところからも、iPhone 8、8 Plusの"現実感"というか"地に足の着いた感"が伝わってきました。
▲モデル数は増えた一方で、容量やカラーのバリエーションは削減されている
iPhone Xにすごみを感じ、iPhone 8、8 Plusでは納得感を得た筆者ですが、今回の発表会で、一番興奮したのは、iPhoneではなく、Apple Watch Series 3だったかもしれません。なぜかというと、それはeSIMやLTEのカテゴリー1に対応することで、ついにApple Watchが携帯電話の周辺機器から、携帯電話そのものになったためでしょう。iPhoneをサポートするという利用シーン自体は大きく変わるわけではありませんが、可能性が大きく広がったのも事実です。
▲Apple Watch Series 3は、LTEに対応して電話そのものになった
しかも、サイズ感は過去のApple Watchとほぼ同じ。この小型筐体に、LTE対応のチップセットを詰め込み、さらに複雑なバンド対応を可能にするアンテナまで搭載できた点に、技術の進歩を感じました。MIMOをカットしてスマートウォッチのような小型のIoT機器に搭載しやすくするLTEのカテゴリー1があったためでもありますが、実際にきちんとこれをサポートした機器はあまり見かけません。一般のコンシューマーに対し、幅広く販売されるデバイスという観点では、初の製品ともいえるでしょう。
▲このサイズでセルラー対応なのは、やはり驚くポイント。しかも通信方式はLTEだ
▲アンテナ技術やeSIMなどが、小型化に貢献している
欲をいえば、iPhoneとペアリングする必要なくスタンドアローンでも使えたり、iPadと組み合わせたりする選択肢があるとさらにうれしかったのですが、現段階では、iPhoneと同じ電話番号で発着信できることを優先した方が、使い勝手もよく、利用シーンが見えやすいのは間違いありません。各キャリアも、きっちり料金プランを用意してきており、販売にも力が入りそうです。iPhone X待ちの人も、9月22日の発売日にはぜひチェックして「未来」を感じてみてください。
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