auを展開するKDDIの田中孝司社長は9月22日、Engadget日本版の単独インタビューに応じました。その場では、ついに発売したPhone 8 / iPhone 8 Plusや、格安スマホ並の料金をうたう「auピタットプラン / フラットプラン」、3G非対応の影響などについて語りました。
料金の安さでドコモ・ソフトバンクに「勝った」
田中社長 僕らは今回、iPhone 8 / Plusの発売に合わせ、(格安料金の)ピタットプラン・フラットプランをiPhoneに対応させました。このタイミングで料金体系を変えていこうと思ったんです。あれって料金は基本的にはMVNO並まで落としているんですね。1500円くらい下げてますからね、平均すると。
田中社長 今のお客様って、基本的にはランニングコスト(端末代込みの月額料金)を気にしているんですよね。矢崎さん(編集長)みたいなお金持ちはいいんですけど、ランニングコストを下げようと思ったら、端末代と通信費の分離プランにするしかない。それはそうだと。
では、端末の値段をどうするんだと。値段を下げるのなら、端末の割賦期間を長くするしかない。そこで今回(iPhone半額プランの)「アップグレードプログラムEX」を入れました。すると、結構お得になっているんですよね。全体として減収なんですよ。それは当然下げているので、それによってお客さんの流出が止まるならいいのかなと。
あと、もうひとつ、シンプルになるんですね。まず、Androidで(ピタットプラン・フラットプランを)導入したときは、混乱が無かったんですよ。通常キャンペーンでいろいろいれると混乱が生じるのですが、今回はなかった。だから結構良いのと、前よりもポジティブなレスポンスがあって、iPhoneにもピタットプラン、フラットプランをいれなきゃなという思いがありました。
──ほかのキャリアに比べ、auの月額料金は「最安」とアピールしていますが...
田中社長 auとソフトバンクさんとドコモさんでしょ。auの通信料金は1980円ですよね。ソフトバンクさんも1980円で追従してるけど、端末の割引(半額サポート for iPhone)は効かないんですよね。一方ドコモさんはシェア型に限定しています。これは誰か払ってくれる人がいないとだめということ。つまり、料金面では我々がドコモ・ソフトバンクさんに完璧に勝っているんです。
端末のほうは結局、12か月と24か月の機種変更タイミングがあります。ソフトバンクは半額サポート for iPhoneの1年オプションで我々とほとんど変わらないですね。一方のドコモはついてこれていません。全体でみたら通信費と端末代はセットじゃないとだめだから、料金は勝ったなと。ピタットプランは凸凹してるからわかりにくいけど。
──従来のiPhoneでもピタットプラン、フラットプランは使えるんですよね?
田中社長 はい、iPhone Xにも適用されますし。基本的に従来型と同じスキームでやっていきます。
iPhone X待ちは「今だけ」
──今回、ボリューム層はiPhone XよりiPhone 8を選ぶと思いますか?
田中社長 結局半々くらいになると思っています。ところがこの時期ってXにシフトします。みんなスグ欲しいから。今のタイミングは明らかに「X待ち」が多いです。
──iPhone X待ちが多いというのは、肌感覚として感じていらっしゃる?
田中社長 予約をとっていますからね。数字は言えませんが7:3くらい。これが時間が経つと半々くらいになってくると思います。今の時期は新しいもの好きのユーザーが新iPhoneにするじゃないですか。
また、今の時期(にiPhoneを購入する層)って毎年機種変更する人が多いんですよ。でも一般を平均してみると、機種変更の間隔ほとんど2年、だから僕らは、本当は「アップデートプログラムEX」(48割賦の半額プラン)だけでよかったんです。月額料金が安くなったハッピーですよね、みんなMVNOくらいの料金がほしいならはまりますから。ところがiPhoneユーザーだけが毎年欲しい人がいる。だから僕らは12か月で機種変できる「アップグレードプログラムEX (a)」を入れたんです。
──それはiPhoneユーザーの機種変更サイクルが速いということでしょうか?
田中社長 iPhoneのハイエンドユーザーの機種変サイクル速いんです。iPhoneユーザーって裾野が広いから。Androidユーザーはだいたい2年間使います。あと、ほんとに記者さんって特殊で、データだって20GB・30GB使うじゃない。Wi-Fiもガンガン使うのも特殊。一般の人ははっきり言うと5GBでいい、その意味でもピタットプランはぴったりだと思います。
──ライトユーザーのほうがギガが足りないという傾向もあるように思いますが。
田中社長 それは1GBの契約をしている人とか。データの使用量は全体としては伸びてるんですよ毎年。でもあなたたちは特殊。そりゃそうだよね、僕も特殊。
──ソフトバンクが50GBプランを出しましたが、対抗プランの予定はあるのでしょうか?
田中社長 僕らは30GBを出してるでしょ、30GBで十分というのが我々の認識です。50GBを出すんだったらシェアとかになりますが、もう少し時間はかかるかな。必要になったらその時に準備すればいいと。記者さんは30GB超えの方もいらっしゃいますが、それはさすがにマジョリティではありません。
au版iPhone 8の3G非対応「話題になったことに驚き」
──au版のiPhone 8が3Gに非対応と一部で話題ですが、通信品質に問題はないのでしょうか?
田中社長 まったく問題ないです。だって僕らAndroidでは3年前から3G対応をやめてLTEオンリーにしていますよ。1000万弱のユーザーさんに使っていただいていて、最初は繋がらないこともありました。それを3年かけて潰してきたから。なので、話題になっている事自体に驚いています。
──実際、au端末を普通に使っていて3Gになることってほとんどないですよね。3Gになるパターンってほかのキャリアさんはまぁまぁ多いじゃないですか。だから多分、auユーザーじゃない人が、3Gが今回auでは使えないと聞いて、ネガティブな発信をしているのかもしれません。
田中社長 その点、ガツンと書いてよ〜ビックボイス(笑)。もうひとつ、今回のiPhoneではEVSをサポートしています。これは前にドコモさんがVoLTE+と呼んでいたものですが、これに慣れると3Gの音質には戻れませんよ。VoLTEの音声のコーディングがさらによくなったんです。
──3キャリアでは、auが一番最初に3Gを停波することになりますか。
田中社長:それはわかりません。車載モジュールなどはまだ3Gが動いているんですよ。スマートフォンは機種変更をずっと続けていくと、実質的にはそうなりますよね。あとはモジュールですよね。クルマとかセキュリティとか。
(後編に続く)
聞き手:ACCN(編集長)、小口(編集部)
(iPhone XやApple Watchについて田中社長が熱く語る後編は、9月25日週に公開予定です)