【艦これ】加賀「赤城さんの部屋」
提督「なんだ加賀。深刻そうな顔をして」
加賀「提督は……その……」
提督「どうした? 歯切れが悪いな」
加賀「いえ、その。空母寮に……来たことはあるかしら」
提督「空母寮? 何度かあるが……別に用がなければ行かないな。あそこはおまえらの家みたいなものだろう」
加賀「ええ、まあ。家ね、私達にとっては」
提督「そうだろう。いわば女の園だ。男の俺が踏み入っていいところではない」
加賀「その、仰る通りではあるのだけれど……赤城さんの部屋を、見たことはあるかしら」
加賀「ええ」
提督「いや、ないな。加賀のほうがよく知っているだろう」
加賀「いえ。それが、先日、初めて赤城さんの部屋に入ったのよ」
提督「先日?」
加賀「……具体的には、3日前」
提督「初めてか?」
加賀「そうね」
提督「赤城はもう2年以上いるし……加賀だって似たようなもんだろう」
加賀「それは、そうなのだけれど……」
提督「?」
提督「……は?」
加賀「私が朝起きて、洗面所に向かうと、ほぼ用意を終えた赤城さんがいるのよ」
提督「いくら早いったって……2年間ずっとか?」
加賀「ずっとよ。たまに歯を磨いているところを見たことはあるけれど、寝ぼけた赤城さんを見たことがないわ。起こされることはあっても、起こしたことはない」
提督「加賀が出動で赤城が休日のことだってある」
加賀「提督は赤城さんがオフのところを見たことがある?」
提督「そりゃ……ん……? いや、休みなのに訓練してるのは、見たことがあるが……」
加賀「赤城さん、オフでもほぼずっと部屋にいないのよ。自主トレしてたり、散歩とかしてたりで」
加賀「そうね。私は見たことがないけれど」
提督「……マジ?」
加賀「大いにマジよ」
提督「いや、待て。何度かあいつの外出申請を受けたことがある」
加賀「どこまで?」
提督「……街。買い出しに行くと言っていたが……そういえば、全部ただの買い出しだった気がするな」
加賀「そうね。何度か付き合ったことがあるけれど、本くらいしか買わないのよ」
提督「おい。なんか怖くなってきた」
提督「ああ、赤城の部屋」
加賀「そう。入ったのよ、3日前に。気になって、赤城さんの部屋で、お茶でもしようって」
提督「……どうだった?」
加賀「何もなかったわ」
提督「……」
加賀「寮の支給品の、ベッドと、机、棚」
提督「そうだな。どの部屋にもあるだろう」
加賀「それしかなかったわ」
加賀「私だって多趣味な方ではないけれど、部屋にはそれなりに物があるわ。着替えとか、お菓子とか、なんだかんだ、生活感が出る」
提督「ああ。俺の部屋なんて汚くて嫌になる」
加賀「だけどね、赤城さんの部屋には何もなかったわ。棚に本があったけれど、大した量じゃない。聞いたら、読んだら売ってるそうよ」
提督「仕送りでもしてるのか?」
加賀「赤城さんは海軍の名家の出よ。家はむしろ裕福なほうだし、一度聞いたら実家は資産運用で長者番付に載ってるそうよ」
提督「……いや、待て。赤城はあれだろう、食事が趣味みたいなものだ」
加賀「まあ、確かに、よく食べるほうではあると思うけれど」
提督「だろう。給料全部使ってんじゃないか」
提督「……まあ、知ってるよ。おまえらすげえ給料いいよな」
加賀「そうね。食費だけで使い切ろうと思ったら、毎食叙々苑に通ってもおつりがくるわね」
提督「……気になるな、加賀?」
加賀「ええ、とても」
提督「……おるか!」
川内「おそばに!」
提督「川内、赤城の私生活について何か知ってるか」
川内「スーパーストイック仕事鉄人深海棲艦絶対殺すマンってとこかな」
加賀「……私生活は?」
川内「筋トレと弓の稽古と読書」
提督「マジ?」
川内「マジ。最初サイボーグかと思ったよ」
青葉「こちらに!」
提督「何かあるか」
青葉「ありません!」
提督「次」
青葉「あっ、待って!待って提督!一応ある!ありますよ!」
提督「なんだ。あるのか」
青葉「といっても、大した情報ではないですが。街に出てる赤城さんの写真がこちらに」
加賀「ほう」
提督「……飲み屋で焼き鳥食ってるな」
川内「食べてるね。ひとりで」
青葉「ちなみにおひとりで6千円ほど飲み食いした後、ナンパに寄ってきたチャラ男相手に15分ほど説教して、ついにキレたチャラ男が――」
加賀「どうなったの?」
青葉「胸ぐらを掴もうとした瞬間、宙を舞ってました」
川内「だろうね。赤城さんだもんね」
提督「……貴重な情報ではあるが、今以上の情報ではないな」
青葉「ちなみに説教はあと15分続きましたが。お役にたてず申し訳ないです」
提督「構わん。あとで俺のほうから赤城に言っておく」
加賀「はい」
提督「いったい赤城は、給料をどうしていると思う?」
加賀「まあ、いろいろと、推測はできるけれど」
提督「暴飲暴食」
加賀「NON。いくら赤城さんがよく食べよく飲むといって、艦娘の給料を使い切ることは恐らく不可能。青葉の情報からも、食費で使い切るほどではない」
加賀「貯金」
提督「NON。赤城の口座は個人のものではない。どうやら実家と口座を共用しているようだ。加賀が言った通り赤城の実家が裕福なら、貯金なぞ大して意味を成すまい」
提督「ゲーム課金」
加賀「NON。赤城さんはスマホやパソコンは持っていないし、ガラケーも通話とメール機能しかないものを持っているわ」
加賀「夜な夜な街で遊んでいる」
提督「NON。川内が気付かないわけがない」
加賀「つまり」
提督「そう。川内や青葉に気付かれることなく、俺や加賀に悟られることもない、それでいて膨大にお金を消費することができる。そんな方法だ」
提督「うむ。ない。思いつかない」
赤城「人の財布事情でそんなに盛り上がらないで下さい」
提督「うおわぁあっ!!」
加賀「あっ……赤城さん……」
赤城「まったく……私が私の給料をどう使おうと構わないでしょうに」
提督「いや、その通りだ。すまんな、度が過ぎた」
加賀「ええ、ごめんなさい、赤城さん」
赤城「あ、いや、そんな謝られることではありませんけど……」
提督「なんだ。教えてくれるのか」
赤城「別にやましいことはないですが……お金の使い道なんて、どうでもいいじゃないですか」
赤城「強いて言えば読書ですが……読み返すことはないので、すぐ売ってしまうだけです」
加賀「毎日私より早く起きてるのは?」
赤城「ただの習慣ですよ。そこまで不思議でもないでしょう」
提督「休みの日まで稽古してるのは?」
赤城「別に深い意味はありませんよ。したいからしてるだけです」
提督「……ほう、そうか」
加賀「提督?」
提督「いや、なんでもない。時間をとらせてすまなかったな、赤城」
赤城「いえ。それでは。行きましょうか、加賀さん」
加賀「ええ……そうね。行きましょう」
赤城「あら、提督……夜更けに一人で散歩だなんて、提督ともあろう方が危ないですよ」
提督「ここ横須賀の警備を抜けて俺に辿りつくまでに、いったいどれだけの壁があることやら」
赤城「まあ、並の人間では無理でしょうね。川内さんもいますし」
提督「そうだろう。風にでも当たりたい気分だったのでな」
赤城「おや、風流ですね。護衛がてら、ご一緒しても?」
提督「ああ。俺も話し相手が欲しかったところだ」
赤城「ええ。私も提督に話したいことがあったんです」
提督「このあいだのことか?」
赤城「察しが良いですね。そうですよ」
赤城「ああ、ご存知でしたか……ええ、まあ。こちらの鎮守府に着任してから、ほぼ毎月、送り続けてますから」
提督「どうしてそこまでするんだ?」
赤城「いけませんか?」
提督「いや。理由を知りたいだけさ」
赤城「まあ、概ね、考えておられる通りかと思いますが」
提督「……おまえも戦災孤児なのか?」
赤城「そうですね。記憶はほとんどありませんが、実の両親は他界しています」
提督「そうだったのか……知らなかったな」
提督「海軍中将だったか」
赤城「はい。若いころ、実父とは海軍学校で切磋琢磨し合った仲だったそうです」
提督「ああ、それで……」
赤城「ええ。義父には子供がいませんでした。実父は深海棲艦の手によって殺されましたし、母はその後を追うように、病気で亡くなったそうです」
赤城「幼い私を、今際の際に母は父の古い友人である義父に頼んだそうです。生前、そういう約束をしていたようで」
提督「『もしも俺が死んだなら――』か」
赤城「縁起でもない、ですよね」
提督「そうだな。いつ死ぬかわからん職である以上、仕方のないことだが」
赤城「そこで、知ったんですよ。『赤城』の適性があることを」
提督「……なぜだ?」
赤城「何がです?」
提督「死ぬかもしれんのだぞ」
赤城「そうですね。死ぬかもしれません。海は怖いです」
提督「……じゃあ、なぜ……」
赤城「私は実父の顔を知りません。思い出せません。母の顔もです」
赤城「父がかつてそうであったように、人類の敵と戦いたい。変ですか?」
提督「いや。少しも」
赤城「五航戦の子たちには矢に邪を込めるな、などと教えておきながら、私の矢は憎しみでまみれている」
赤城「こんな様では、『赤城』の艦霊に、申し訳が立たない」
提督「そんなことはない。おまえの射は美しいよ」
赤城「ありがとうございます、提督。お優しいんですね。でも、誰にもわからなくても、私には、わかってしまうから」
提督「たとえ赤城の矢が泥にまみれていても、おまえが命を救ったのは事実だろう」
赤城「……そうですね。そうであれば、いい」
提督「赤城。俺はおまえのことを信頼しているよ。たとえ憎悪であっても、おまえの矢は多くを救ってきた。そしてこれからも、多くを救う」
赤城「そういう、考え方もありますか」
赤城「ひどい上官ですねえ」
提督「まったくだ。そんな男が日本防衛の要を担う艦隊の提督とはな。日本も終わりか」
赤城「いったい大本営はなにをしてるんですかねえ」
提督「さあな。それじゃ赤城、俺は寝る。明日もよろしくな」
赤城「ええ、おやすみなさい提督。明日もよろしくお願いします」
赤城「……かっこつけちゃって、提督。憲兵に賄賂なんて渡してないくせに」
赤城「みーんな知ってますよ。あれ、戦災孤児への寄附だって」
赤城「まったく。いい提督に恵まれましたね、本当に……」
赤城さんかっこいい…かっこよくない…?
初期赤城さんの仕事超人っぷりはボイスから伺えるのでぜひwikiでも見てみて下さい。
びっくりするほど仕事に関することしか言いません。
HTML化依頼だしてきます。
元スレ
【艦これ】加賀「赤城さんの部屋」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1506425266/
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コメント一覧
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- 2017年09月26日 21:50
- 赤城を単なる食いしん坊キャラにしないのは良かったが…どっかで見たなこれって設定の乱立がうーん
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- 2017年09月26日 21:51
- これはSSで久しぶりに見た誇り高き一航戦!
恋愛的な意味じゃなく、同性でも惚れるわ
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- 2017年09月26日 21:57
- てっきり部屋に何も無いのはお腹が空いて食べたからだと…給料も硬貨をボーキ代わりに…
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- 2017年09月26日 21:59
- 最後ホモにする必要はあったんですか?
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- 2017年09月26日 22:09
- コイツは隙のない立ち姿赤城の方ですわ
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- 2017年09月26日 22:14
- こういう赤城さん好きやわ
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- 2017年09月26日 22:26
- NON
赤城さんはわt…加賀にはもっと心を開いてくれています。
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- 2017年09月26日 22:34
- どっかで見たなとかもうネタで言ってんのかな、もう今更何とも被ってない設定なんてないだろ
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- 2017年09月26日 22:37
- マジレスすると軍人って結構給料低いぞ
少なくとも金儲け目的なら内地で対軍人向けの商売した方が儲かるくらい
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- 2017年09月26日 22:41
- >>9
空海の輸送路が寸断されて軍人向け物資とやらの流通が困窮してるんだろ。そんな中一騎当千の戦力を有する人材、それを指揮する人材には一般軍人とは比較できない待遇があってもおかしくはない。
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- 2017年09月26日 22:53
- ファンタジーにマジレスってマジ?
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- 2017年09月26日 23:07
- そうだよ赤城はこう言うキャラじゃないと、食いしん坊も好きだけどね
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- 2017年09月26日 23:17
- ※12
本当にな
アニメみたいな大食いしてニコニコみたいなギャグキャラは公式でやめてほしかった
それを見ても盲目に憧れる吹雪はもっとやめてほしかった
大食いだけど黙々食べて、ストイックでキチンと空母代表で統率できるリーダーが見たかった
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- 2017年09月26日 23:17
- これは久しぶりにまともな性格の赤城SSだったわ。
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- 2017年09月26日 23:30
- 実はこの赤城の幼少期の過去は全部軍の捏造で、実は艦娘適性のある女性の遺伝子情報を元に造られたデザイナーズチャイルドだったらいいなと思った。
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- 2017年09月26日 23:51
- 米13 葛城と赤城のSS思い出した
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- 2017年09月27日 00:01
- 隙が全く無い赤城さんの画像を思い出した
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