カラスは人気者ではない。どっちかというと忌み嫌われる存在で、世界的に見ても死や病気と結びつけられ、凶鳥とされてきた。また作物を荒らす鳥、迷惑な鳥として迫害も受けてきた。
だがカラスだって地球上の生態系を形成しているメンバーである。彼らだって一生懸命生きているのである。賢いし柔軟性があるカラスと一度信頼関係を結んでしまえば、こんなに心強い味方はいないかもしれない。
そんなカラスに関する事実をいくつか見ていこう。
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1. 年上の兄弟が雛の子育てを手伝う
ほとんどのカラスは実に社交的だ。例えば、アメリカガラスは年のほとんど(あるいは一生を)つがいか、小さな家族グループで過ごす。冬になると、数百あるいは数千羽が集まり夜一緒に眠る。
繁殖期、運のいいつがいなら子育てを手伝ってもらえるかもしれない。親カラスの巣を捕食者から守る若いカラスがよく目撃されている。また両親や雛たちにエサをとってくるカラスもいる。
ある研究によれば、アメリカガラスの巣の8割にそうした手伝いをするカラスがいるという。中には5年以上も両親を手伝い続けるカラスもいる。
2. 死ぬと葬式が催される
カラスの遺体には数百ものカラスが集まる傾向がある。この間、生きているカラスは遺体に触れたりはしないため、死体漁りが目的ではない。
いくつかの研究は、この行動について生存戦略の一部であると指摘する。カラスは脅威を学習しているらしく、遺体が発見された場所にはエサが豊富にあったとしても近寄ろうとしなくなるそうだ。
関連記事:カラスは仲間が亡くなるとお葬式をする?その真相と驚くべき知能と社会性が明らかに(米研究)
3. 日本では停電の原因になっている
1990年代以降、日本の生ゴミが多い地域ではカラスが増加している。電力会社にとっては迷惑な話で、都会のカラスは変圧器の上に巣作りをすることがあり、その材料としてワイヤーハンガーや光ファイバーケーブルを使ったりする。
これが時折、停電を発生させることがある。2006年から2008年において、東京ではカラスが1400近い光ファイバーケーブルを盗んだ。中部電力によれば、同社の設備だけでもカラスに起因する停電が年に100件起きているという。
この対策として、中部電力は2004年に人工の巣を導入した。これは非導電性の樹脂でできたもので、特にいたずらの心配がない鉄塔の電線よりずっと高いところに設置される。
どうやら上手くいったようで、人工巣の67パーセントが使用され、カラスは無用なトラブルを起こさずに命を育めるようになった。
4. 比率で言うと、人間より大きな脳を持つ
カラスはあまりの賢さゆえに動物学者から”羽の生えた類人猿”とまで呼ばれる。霊長類の視点から見れば、カラスの脳はちっぽけかもしれない。
例えば、カレドニアガラスの脳はたったの7.3グラムしかない。だが体の大きさとの比率で言えば実に巨大な代物で、体重の2.7パーセントを占めている。ちなみに人間の成人なら1.9パーセントである。
現存する鳥類の中で脳と体の大きさの比率が最大であるのが、カラス、ワタリガラス、オウムだ。実験では、彼らが類人猿に匹敵する認知能力を有していることが明らかになっている。
それどころか前脳のニューロンの密度は霊長類のそれを上回る。この領域のニューロンの量は知性と相関があると考えられており、理論的にはそれが多くなれば認知的な推論の力が向上することになる。つまりカラスは侮りがたい知性の持ち主ということなのだ。
関連記事:カラスは点の集合を理解し、数神経細胞を使って人間のように計算ができることが判明(ドイツ/イギリス/アメリカ研究)
5. 方言があり、意図的に使い分けられる
カァカァといった鳴き声以外にもさまざまな鳴き声がある。そして、それぞれが異なる意味を持つ。例えば、カァカァは縄張りの主張であるし、ときには血縁者に居場所を知らせる合図としても使われる。
カラスの言葉は一様ではない。グループによって若干の違いが見られることもある。また地域によって差があり、人間の方言のように谷から谷へと変わる。しかも、あるカラスが別グループに移った際、そのカラスはグループの方言を真似しようとまでする。
6. 信号の意味が分かる
日本のハシボソガラス(Corvus corone)は車を巨大な調理道具のように使いこなす。クルミなどの大好物を交差点の路上に置いてしばし待つ。車がその上を通過し殻が割れたら、あとは美味しい中身をいただくだけだ。
多少の危険も伴うが、人間と違い滅多なことでは轢かれたりしない。なぜなら、このカラスたちが信号の意味を理解しているからだ。
ハシボソガラスは赤信号になってからクルミを置き、青信号の間はクルミが割れても近寄らない。そして再び赤信号になってから颯爽と中身の回収に舞い降りるのである。
7. 人間の顔を憶える。ときには復讐も
カラスを敵に回してはいけない。2011年に発表されたワシントン大学の研究では、カラスの凄まじい脳力が明らかにされている。
研究者の目的は、カラスが人間の顔を区別できるかどうか知ることだった。実験では野蛮人とディック・チェイニーのマスクを購入。野蛮人のマスクはカラスをいじめる役、ディック・チェイニーのマスクは対照群として用いることにした。
5ヶ所で野蛮人のマスクを被ったままカラスを捕獲して縛り、それから逃がした。すると捕獲されたことのあるカラスは、野蛮人に対して大きな声で威嚇するようになった。これを見た付近のカラスもこの威嚇行為に参加し、野蛮人マスクの人に滑空しては嫌がらせをした。
この実験を7年間続けたが、野蛮人マスクの着用者は必ずカラスから威嚇や襲撃を受けた(捕獲された経験の有無は関係なかった)。反対にディック・チェイニーのマスクを被った場合はそのような反応がなかった。
そのあまりの激しさに1ヶ所では実験が中止されたほどだ。また実験開始時には生まれていなかった若いカラスまで攻撃に加わっていた。彼らの敵対心が世代を通じて受け継がれているのは明らかだ。近所のカラスにはあなたも優しくしたほうがいいのは言うまでもない。
関連記事:カラスの知能は天井知らず?自分に危害を加えた人物を認識しそれを仲間に伝える能力も(米研究)
8. 道具を作成して使うカレドニアガラス
人間以外にも道具を使う動物はたくさんいる。だが野生でもフックを作ってしまう動物は地球上にホモ・サピエンスとカレドニアガラス(Corvus moneduloides)の2種しかいない。カレドニアガラスは小枝をくちばしでJの形に曲げて、狭い隙間に潜む昆虫を捕まえる。
このカラスにはほかにも驚くべき点がある。ほかの鳥とは違い、クチバシが下に向かって湾曲していないのだ。長年その理由は謎とされてきたが、最近ではそれは道具をつかみやすく、さらに使用中に見やすいようにするためではないかと考えられている。
2016年には、超希少なハワイガラス(Corvus hawaiiensis)も道具の利用と製作に適応していることが明らかにされた。
関連記事:カラスを使ってお金を集める方法。コインを入れると餌がでてくるカラスの為の自動販売機
9. 捕食者相手に一丸となって戦う
カラスには鷹、フクロウ、コヨーテといった捕食者と戦わねばならないときもある。そうした敵を追い払うために、カラスは数の力に頼る。
警戒すべき敵がいれば集団となり、それぞれが急降下してクチバシの一撃を食らわせる。傷つく仲間もいるかもしれないが、上手くいけば敵を退散させることができる。
ちなみにカラス以外に、ツバメやハチドリなどもこうした集団戦を挑むことが知られている。そしてときにはカラスが自分より小さな鳥の標的になることもある。
10. 欲求を我慢できる
2014年の研究によれば、少なくとも一部のカラスは目の前の楽しみを我慢することができるそうだ。ゲッティンゲン大学の研究チームは、ワタリガラス5羽とハシボソガラス7羽を注意深く観察し、それぞれの好物を把握した。
その上で、研究者の1人が手でカラスに少量のエサ差し出す。次いでカラスにはそれとは別に好物が提示される。もし2番目のエサのほうが気に入れば、カラスはそれをと交換することができる――ただし、交換が認められるのは彼らが一定時間じっと待ったときだけだ。その間に最初のエサを食べてしまえばチャンスは失われる。
実験からは、ワタリガラスとハシボソガラスはもっといいエサがもらえるならば、待つことを厭わないことが判明した。パンを差し出されたカラスは、フライドポークと交換できると分かっていれば、喜んで待つのである。
ちなみにもし2番目に差し出されるエサが同じパンであれば、待つ意味はないだろう。この状況に置かれたカラスは先に出されたエサをついばむ傾向にあることが確認されている。
関連記事:カラスやオウムは、目先の欲望を我慢するなど霊長類に匹敵する知能を持つことが判明
via:mentalfloss/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
カラスを観察するとき、我々もまたカラスに観察されているのである。
2. 匿名処理班
俺より頭良くね?
3. 匿名処理班
信号の話は初めて聞いた
すげーなカラス
4. 匿名処理班
でも集団いじめとかもあるみたいだし
人間社会同様世知辛いのかもしれない・・・
5. 匿名処理班
カラス懐くと可愛いよ
6. 匿名処理班
中部電力やる〜!
7. 匿名処理班
トップ写真は
カラスが波動砲を口から発射しているように見える。
8. 匿名処理班
カラス、大好き。
若い個体が冬に信号機の上に止まって、積もってる雪を少しずつ落としては、ハラハラと舞い散る雪を興味深そうに眺めてるのを見たことがある。アレはどんなこと考えてたのかな。
9. 匿名処理班
中部電力の人工巣はいいね、害だから排除でなく出来る限りの共存を選ぶのは大切だ。
10. 匿名処理班
ばあちゃんが餌付けしてたカラスがいるんだけど、そのカラスは敷地にフンをしなかった。
あるとき雛が落ちてるのを巣まで帰したんだが
その後は軒先に干してる干物なんかを他の鳥から守ってくれるようになったって。
カラスは恩を返す生き物だよ。
11. 匿名処理班
でもカラス嫌い。
ただ歩いてるだけで襲ってくるもん…
12. 匿名処理班
道路にいるカラスって向かってくる車に対してゆっくり歩いて避けようとするよね
あれ運転してる側からするとちょっとイラってするんだけどw
13. 匿名処理班
8.道具を作成して使う〜 は、オウムも自分で針金からフックを作って餌を取ったりするから2種類しかいないとかいうのは違う。
14. 匿名処理班
カラス、波動砲溜めてるw
15. 匿名処理班
身体の大きさが災いして「真上に飛び上がれない」という弱点がある事はあまり知られていない。
よく(小鳥の様に)真上に飛び立つ姿が描かれたりするけど、実際にカラスが飛び立つには滑走が必要。
16. 匿名処理班
カラスは本当に人間をよく観察していると思う。
以前、女ばっかり6人で花見に行ったとき、近くの枝にカラスの家族らしい集団がいて、私たちは
「カラスだ、かわいいーw」
「ごはん分けてあげるよこっちこーい」
などと呼びかけ(全員動物大好きなので)、おにぎりを割ったのとか唐揚げをちぎったのとかを紙皿において様子を見てたのだが、カラスたちは我々ではなく、我々の近くで宴会をしていた子連れの3家族のほうをずっと見ている。
その子連れの3家族は、
「カラスだ、気持ち悪い!」
「石投げて追っ払ってよお父さん!」
「黒くて不気味だよねえ、都の捕獲作業って進んでないの?」
と言いたい放題。
成人男性や大きい男児がお弁当を守るように円陣組んでいたのだが、本当に、ほんの一瞬のスキをついて、カラスたちがこの家族連れ集団を襲撃し、たくさん並べられていたお重やタッパーや紙皿のお弁当を徹底的に荒らしまわって食い散らかしていったw
男性陣は固まって動けず、女性陣は子供らを抱きかかえて泣き叫んで転げまわって我々の敷いたビニールシートに倒れこみ、あまりの叫び方に警備員が飛んできたほどw
我々は自分の弁当をパニック起こした人間集団から守るのに必死だったが、結局カラスたちは私たちが用意したお弁当は食べに来てくれなかった。
あのカラスたち、人間に悪口言われてるって分かってて襲ったんだろうなw
17. 匿名処理班
人間を嫌ってなくてノリのいいカラスだとたまに遊んでくれるぞ
そうそういないけどね
18. 匿名処理班
※14
発射音の直前に入るスパークしたような音の段階ですね!
19. 匿名処理班
中部電力の対応は素晴らしいな
こういう事こそ人間のやる事であって欲しいものだが・・・
20. 匿名処理班
※13
人間に教えてもらっていない、野生でやるかどうかじゃない?