衆院選で北朝鮮情勢の争点化を図る安倍晋三首相が強調するのが、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法制定の「実績」だ。公示前日の党首討論で「北朝鮮の危機の中、何人もの米軍のトップが『これがあるから日本を一緒に守れる』と口をそろえている。日米の絆は強くなった」と誇り、「やめれば日米同盟は打撃を受ける」と同法の廃止や見直しを唱える野党をけん制した。
冷戦終結後の日本の安全保障政策は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮と、経済・軍事の両面で台頭する中国の脅威に備えてきた。
2012年12月に政権を奪還した安倍首相は、第1次安倍政権(06~07年)で模索した集団的自衛権の憲法解釈変更に再挑戦した。14年7月、それまで違憲とされてきた集団的自衛権の行使を可能とする法整備の方針を閣議決定。15年には安保法を成立させた。
日本にとっては、アジア太平洋地域の軍事バランスが崩れないよう、将来にわたって米軍の抑止力が維持されることが望ましい。そのために米軍を後方支援する法整備を進めてきた。首相はさらに、米軍が攻撃を受けた場合に自衛隊が一緒に戦う集団的自衛権の行使も必要だと考えた。
今年1月、「米国第一」を掲げるトランプ大統領が就任した。米国がアジア地域への関与を弱める懸念が広がっていた2月、訪米した首相はトランプ大統領との初の首脳会談で安保法を例示し「日本の役割拡大に努力してきた」と強調した。これまで計4回の首脳会談、14回の電話協議を重ねてきた首相は「トランプ政権ができて、この法律を作っておいて本当に良かったと思った」と振り返る。
一方、安保法に反対する側は、集団的自衛権の憲法解釈変更を「違憲」と批判するとともに「自衛隊と米軍の一体化が進み、米国の戦争に日本が巻き込まれる」と警戒する。
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