ベルギー、イーペルの町にはこの60年間ずっと続いているネコ祭りがある。「カッテンストゥッツ」国中から訪れる大勢の人でにぎわう人気の祭りだ。
3年ごとに開催され、巨大なネコの像やブラスバンドや騎馬のパレードなど、それは華やかな催しになる。パレードの参加者は皆、ネコや魔女、ネズミの扮装をして、沿道に詰めかけた人々に笑顔をふりまきながら町を練り歩く。
現在は陽気で楽しい華やかな祭りだが、もともとはもっと暗い歴史のあるものだった。
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中世の時代、猫は悪魔憑きとされていた
中世の時代、人々は動物、とくに猫に対して非常に残酷な仕打ちをした。この時代の西ヨーロッパの多くの都市は、儀式として猫を虐待していたのだ。
網やカゴなどでたくさんの猫を捕まえては、高みから放り投げてたき火の上に投げ落としていた。猫には悪霊が宿り、悪魔そのものだと考えられていたせいだと思われるが、哀れな猫たちが苦しみに鳴き叫ぶのを見て、群衆は大笑いしていたという。
猫が黒焦げになると、人々はその燃えさしや灰を集めて家に持ち帰り、お守りにした。
1950年代のカッテンストゥッツ
image credit:wikipedia
ネズミ捕りに猫を導入するも増えすぎて投げ捨てる習慣が根付く
ベルギー・イーペルの町も例外ではなく、民俗学的な迷信によって多くの猫が犠牲になった。
そのころ、イーペルを含めたベルギーのフランダース地方の町は、繊維産業で有名になっていた。イギリスからウールを輸入し、熟練の職人たちによって上等な服に仕立てられた。
輸入した原材料のウールも出来上がった洋服もクロスホールという巨大な倉庫に保管されたが、服はネズミの格好のターゲットになった。布地をかじり、どんどん子孫の数を増やしていったのだ。
こうしたネズミ退治のために、イーペルの商人たちは天敵である猫を導入した。だが猫も次第に増えすぎて、まもなく町の手に負えなくなってしまった。
そこから、猫を投げ捨てる習慣が始まったと言われている。猫が不吉なことの前触れだと思われていた時代、町の人々にとって、地元の教会の鐘楼から猫を投げ落とすことはなによりの楽しみになった。
image credit:Rostyslav Kudlak/Flickr
定期的に猫を処分する日が設けられる
さらに悪いことに、確実に猫を処分するためにこの投げ落としを恒例儀式にして、四旬節(レント)の第二週目を"猫の水曜日"として定期的に行うことにした。
この野蛮な行為は1817年まで続いたが、この年が最後になった。最後の猫は投げ落とされても生き延び、二度と捕まらないよう一目散で逃げたと言われている。
image credit:Cedric Dubois/Flickr
1950年代に猫の祭りに代わる
それから第一次世界大戦まで、猫の水曜日はただ教会の鐘を鳴らすだけのシンプルな行事となった。
1938年、ミサの侍者を務める少年たちのグループが、猫のパレードのようなものを初めて行った。それぞれが猫の人形を持って教会へ向かい、鐘楼に上がって猫の人形を投げ落としたのだ。
猫祭りは、地元の祭りとして細々と残っていたが、1950年代には西フランダース全域で新たな民族パレード祭りとなった。
1955年のレントの第2日曜日に初めて、エキストラ1500人がゴージャスな衣装をまとって練り歩く大々的なパレードが行われた。それ以来、3年ごとに町は猫祭りを祝って盛り上がっている。
今日、イーペルのクロスホールは町でもっとも壮麗な建物だ。第一次大戦のときに破壊されたが、細部まで戦前と同じ状態に再建された。
image credit:Steve Mullarkey/Flickr
このフェスティバルは現在、ベルギーで人気のある観光イベントの一つであり、イーペル周辺地域の観光に貢献している。次回の第45回は2018年5月13日に予定されている。
image credit:Cedric Dubois/Flickr
image credit:Rostyslav Kudlak/Flickr
image credit:Rostyslav Kudlak/Flickr
image credit:Tim Dobbelaere/Flickr
2015年に開催されたカッテンストゥッツ
Kattenstoet Ieper 10 mei 2015 Kattestoet gefilmd met Gopro Hero4
via:Kattenstoet: The Cat Throwing Festival/ translated by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1.
2.
3. 匿名処理班
このお祭りの起源は酷いけど、それを無かったことにせず歴史に残すのは良いね。
暗いお祭りも、今じゃ皆が平和に笑いあっている。
4. 匿名処理班
いいぞ!! 最後のねこ!
5. 匿名処理班
ネズミを捕ったのに酷い仕打ちだ…………
6. 匿名処理班
もういまはされてないとしても、投げ落とされてた猫達のことを
考えてたら泣けてきた...
ごめんよ、人間が迷信深くてばかで。
いまされてなくてほんとによかったよ。
(カエルの串刺し神事とかはまだ日本でもあるけどね...ごめんよカエル。)
7. 匿名処理班
この祭り、ついこの前NHKでやってた黒猫の歴史のドキュメンタリーでも流れてたけど、現在は「猫たちよ、今までひどい扱いしてごめんな」みたいな意味合いもあるらしいな
8. 匿名処理班
去勢しなかったのかな・・・
9.
10. 匿名処理班
ただ単に猫が増えただけじゃなく、魔女狩りと関係してると思うんだけどな
11. 匿名処理班
「水曜日のネコ」って名前のベルギー風地ビールを一時飲んでた
変わったネーミングとパッケージだなーと思ってたらこんな由来が…
12. 匿名処理班
楽しい祭になってよかったね
13. 匿名処理班
勝手が過ぎるな
14. 匿名処理班
そうやって猫を駆除した結果、ネズミが増えてペストが蔓延したって読んだような…
15.
16. 匿名処理班
※11
僕はCMかと思ったよ
『よなよなエール』などを販売する長野県の地ビールメーカー「ヤッホーブルーイング」が、『水曜日のネコ』という名前のビールを発売して評判になっています。スパイスにオレンジピールとコリアンダーを使用していて、さわやかな香りとすっきりした味わいが楽しめるということです。
もともと「水曜日のネコ」は、ベルギー生まれの「ベルジャン・ホワイトエール」というスタイルです。
ホップの苦みが非常に弱く、小麦のやわらかな味わいと甘酸っぱいフレーバーが特徴的。すっきりとした飲み口なので、普段ビールを飲まない方や女性にもおすすめのエールビールです。
17. 匿名処理班
残酷な祭りではあるが、日本でもいまだ年間10万匹前後の猫が殺処分されている現実があるわけで、昔は酷かったねで済ませる話ではないとは思う。
18. 匿名処理班
何とも楽しいお祭だなあ
(起源がひどすぎるけど)近くだったら毎年行っちゃうところだ
※7
なるほど
無残に殺された猫達の供養の意味もあるのか
19. 匿名処理班
※6
その頃は魔女狩りで、多くの無実の男女も火あぶりになったよ・・・
20. 匿名処理班
※8
するにしても中世に今みたいな技術があるとも思えないし麻酔がないと無理だし野良同然の猫達にその時代そこまで手間をかけるはずもない
21. 匿名処理班
供養のためじゃなくただの娯楽のためなんだな酷いな
22. 匿名処理班
※10
ある若く美しい女性が、庭で黒猫と会話をしている様に見えた
その話を耳にした当時、絶大な力を持っていた教会が「魔女だ!」「黒猫は、悪魔の使いだ!」「猫は魔女の使い魔だ!」で、数百万の猫が殺されてペスト大流行
当時の魔女狩りなんて、意味不明の事由で魔女(男女問わず)扱いされた
23. 匿名処理班
エジプト人は猫を盾にする敵軍を攻撃出来ずに負けたというのにヨーロッパ人と来たら……。
24. 匿名処理班
そのうち未来の俺たちも「蚊祭り」とか「ゴキブリ祭り」とかするようになるんだろうか
25.
26. 匿名処理班
原初は暗くとも明るい道へと進めば良い
その内に猫を讃える祭りにでもなるかもしれん
27.
28. 匿名処理班
何かが繁栄するとそれを拒絶する者が現れる。人類は大丈夫ですか?
29. 匿名処理班
増えすぎた猫の処分は産業保護上の要求から始まったのに、それをお祭りに仕立てて尚且つ猫の遺灰がお守りになるという異端じみた習慣ができたのは土着信仰の残渣なのかな。
30. 匿名処理班
人間のせいで増えすぎたなら駆除するのが義務じゃないの? 鹿とか熊とかブラックバスとかウチダザリガニとかと同じで。
31. 匿名処理班
弔う為の祭りって訳でもないのか…うーむ…
32.