468 名前:水先案名無い人 sage New! 投稿日:2007/08/22(水) 22:09:37 ID:cna0ycFxO
20歳を迎えたその日、姉が雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。
初めてのバーに圧倒されている俺を見て、姉は「緊張してんの?なんか子供の頃のアンタみたい」とニヤけた顔をしながら大好きなコロナビールをあおっていた。

俺と姉は結構仲が良く、ファッションや音楽も大体同じ感覚で、たまに姉と買い物に出掛けたが途中で飽きる事が無かった。
友人たちから、お前らマジで姉弟関係なのかと問われる事があるくらい仲が良かったんだなって思う。


俺も姉もいいカンジに酔ってきた時、いつもの顔ではない姉がそこにいた。
「本当、アンタとこんな風に飲めるなんて思わなかったわよ。あの時、アンタが死んでたらアタシも死んでたかも…。何時だってアンタは…アンタはアタシの弟なんだよ…。アタシ、アンタの姉で良かったよ」そう言って姉はポロポロと涙を溢した。


469 名前:水先案名無い人 sage New! 投稿日:2007/08/22(水) 22:10:36 ID:cna0ycFxO
俺は小学校の時に、交通事故に遭って生死をさ迷った。姉と二人で登校していたのだが、信号無視の車が俺に突っ込んだのだ。
親から聞いたのだが、その時に姉は俺を轢いた加害者に掴みかかり「弟が死んだらアタシも死んで化けて出てやるんだから」と言ったらしい。

「ねぇねぇアンタ彼女にフラレたらしいじゃん。寂しいならアタシが構ってアゲルよ~」
「姉ちゃん酔いすぎだヴォケ!」
色目使って脇腹をつつく姉に、俺はこの人が姉で本当に良かったと思った。
元気で優しくて、時折ケンカもして、だけど辛い時はいつも相談に乗ってくれて、そのあと俺の大好きなポテトサラダを作ってくれた姉。

そんな姉が、去年他界した。

病気で辛かったはずなのに、俺や親に黙ってて気付いたら手遅れだった。
鈴虫の鳴く声が響く静かな夜、最期に姉はこう言った。
「あの時にアタシはアンタに命を分けた気がするよ。だから、アンタはアタシの分までしっかり生きるんだよ。それと――――」


俺は姉が大好きだったんだなって思う。マジで半分くらいシスコンだった気がする。
でも姉ちゃん、俺はねマジでアンタが実姉で本当に良かったと思うよ。