男「大長編をやろう」幼馴染「え？」
幼「え？」
男「考えてみたんだ…俺たちの人生に何が必要か」
幼「はい」
男「長編だよ！長編！」
幼「……長編ですか？」
男「俺たちってすっげー退屈な日常を過ごしてると思わない？」
幼「う～ん。そうでしょうか？」
男「そうだよ！だって考えてみろ！今まで何か命をかけるようなことが起きたことはあるか！？いいやない！」
幼「平和でいいじゃないですか」
男「たしかに！平和はけっこう！でもたまにはそういうワクワク感も大事じゃないか！ドラえもんだって大長編があるだろ！」
幼「…そういえば昨日部屋の掃除するって言ってましたね」
男「え？そうだけど…？」
幼「その様子だと全く進まなかったみたいですね」
男「そうそう久しぶりに読んだらやっぱ面白くて…じゃなくて！」
幼「冗談ですよ」ｸｽｸｽ
幼「賛否両論ありますけどね」
男「それは言っちゃだめ！とにかく！俺たちにも大長編が必要だ！」
幼（要は…漫画に影響されたってことですね）
幼「男さんは相変わらずですね」ﾊｧ
男「え、俺今呆れられた？」
幼「気のせいですよ。理由は分かったので具体的な話を聞かせてください」ﾆｺ
男「お、乗り気だな！とりあえず幼が拐われるとかどうよ」
幼「ぶっ…私がですか？それは…面白いですね…あはははは」ｸｽｸｽ
幼「いえ……すみません…あまりにも予想外すぎて…ふふふ」
男「ちゃんと理由は考えてるんだぞ！」
幼「あら、そうなんですか？聞いてもいいですか？」
男「おう！幼ってお嬢様だろ？つまり身代金を要求するために拐われんのよ！」
幼「え？」
男「なんでそんな呆然としてるの…」
幼「いえ…あまりにも理由がありきたり過ぎて…」
男「うっ…し、しかたないだろ！それしか思いつかなかったんだから！」
幼「期待した私が悪かったんですかね？」
男「そんなこと…俺に聞かないでくれ…」
幼「なら聞きますけど誘拐された私はどうなるんですか？」
男「それはもちろん俺が助けに行くのよ！」
幼「どうやって？」
男「それはもちろん戦うんだよ」
男「た、戦えるさ」
幼「どんなふうに？」
男「それは…まあ、、こう不思議な力とかで？」
幼「アバウトですね」
男「そこはおいおい考えてけばいいのよ」
幼「おいおいですか…じゃあ私を助けた後はどうするんですか？」
男「終わりだな」
幼「え？」
男「え？」
男「え！？終わりじゃだめなの！？」
幼「全然大長編じゃないじゃないですか！」
男「た、たしかに！！！」
幼「せめて拐われる理由をもっと壮大なものにするとかあるんじゃないですか？」
男「例えば？」
幼「例えば…うーん、実は私は遠い星とか異世界のお姫様で…今生きている姿は仮初の姿でって…何ですかこれ。言ってて恥ずかしいんですけど」
男「いや、幼が自分で言ったんじゃん」
幼「そうですけど！とにかく！男さんの長編は全然ダメです！そもそもワクワクしません！！」
男「なっ！！」ｶﾞｰﾝ
幼（あ、言い過ぎましたかね…）
幼「で、でも私個人としてならありですよ！」ｱｾｱｾ
男「こんなに否定しといて？」
幼「だって男さんが助けてくれるんですよね…不思議な力で」ｸｽｯ
男「その予定です…」
幼「なら…私はありかなって思います」ﾆｺ
男「…どういうことなんだ」
幼「まあ、何事もちゃんと考えてからやりましょう？男さんは思いつきで行動することが多いですからね」
男「想像力が足りなかったのか…」
幼「そういうことです」
男「そうか！そういうことか！」
幼「何ですか今度は？」
男「いや、幼の言う通りだ…確かに長編をやるには俺たちは無知すぎた！」
幼「え…私も含まれてるんですね…」
男「だから分かった…俺たちが真に必要なものが…！」
男「修行編をやろう」
幼「え？」
幼「そのための修行編ですか…？」
男「そう！！」
幼「どういう目標で？」
男「そ、それは長編をやるための…」
幼「初めて聞きますね…そんな修行」
男「いいじゃん！何事にも初めてはある！」
幼「まあいいですけど…具体的にはどうするんですか？」
男「それは…今から考える」
幼「それでは、私は待ってますね」
男 ｳｰﾝ
幼「……」
男 ｱｰﾃﾞﾓﾅｲｺｰﾃﾞﾓﾅｲ
幼「……」
男 ｿｳｶ!
幼（なにか思いついた見たいですね）
男「修行と言えば弟子入りだ！！！！」
幼「なるほど、そう来ましたか」
男「主人公に立ちはだかる壁！！そこに現れるのは主人公よりも実力も経験もある大人！！そして生まれる師弟の絆！！完璧か！」ﾄﾞﾔｧ
幼（まあこの際…細かいところは置いといて…）
幼「では男さんは誰に弟子入りするんですか？」
男「え！？それは…」
幼「担任の先生なんてどうでしょう！」
男「え？」
幼「学力的実力も人生的経験も男さんより上じゃないですか！」
男「え、いやそうだけどさ」
幼「立ちはだかる期末テストの壁！いつも赤点ギリギリの男さんが先生に頼み込んで猛勉強！目指せ学年一位！」
男「いや、えっと」
幼「ライバルと生まれる友情！努力！そして勝利！…完璧ですね！」
男「お、幼さーん」
幼「ふふ、冗談ですよ」ﾆｺ
男「知ってて、遊んだな…」
幼「勉強だって大事ですよ？」
男「そうだけどさ…やっぱ勉強の修行なんてやりたくないだろ！それに」
幼「それに？」
男「俺には幼がいるから必要ない」
幼「え？」ﾄﾞｷｯ
男「ん？」
幼「あ、い、いえ。何でもないですよ」ﾆｺ
幼（危なかったですわ…今のは『勉強を教えてくれる』幼がいるから必要ないって事ですよね…）
男「大丈夫か？」
幼「大丈夫ですよ。それならやっぱり修行の目的を決めてから考えるべきじゃないですか？」
幼「強さですか…」
男「男たるもの強さっしょ！」
幼「なら師匠は必然的には一人に絞られるんじゃないですか？」
男「え？」
幼「男さんのお父様ですよ」
男「！！！…それは…ダメだろ？」
幼「あ…」
男「忘れたのか！？うちの親父がどれだけ怖いかを…武のことになると普段の親父からは想像できないほど厳しくなるんだぞ！！」
幼「あぁそういえばそうでしたね」
男「忘れもしない…小学生のころ…」ｶﾞｸｶﾞｸ
幼「懐かしいですねぇ…あの頃の男さんも可愛かったですけど」
男「そんな可愛い息子に…超厳しいんだぞ！！」
幼「でも遊び半分でやるよりはいいかと」
男「それはそうだけど…理屈じゃないんだあの恐さは！」
幼「でもためになったことはあるじゃないですか。確実に精神面は鍛えられましたよね？」
男「そうかなぁ。まあ大抵のものは怖くなくなったけど…」
幼「ならやる価値はあるじゃないですか！」
幼「過去を引きずっていては強くなれませんよ？…まあ私は今のままでも充分良いとおもいますけど…」ﾎﾞｿｯ
男「ん？今なんて言った？」
幼「え？」
男「いや、今幼なんて言った？」
幼「え？あ、いえ、今のままでその」ｶｧｧ
男「いや、その前」
幼「あ、そっちですか…過去を引きずっていては強くなれないって言ったんですよ」
男「……それだ！！」
男「過去編をやろう」
幼「え？」
男「過去編だよ！過去編！かつての自分を見つめなおすことで、新たな自分を発見できるんだ！」
幼「なんだか勢いに任せてませんか？」
男「そ、そんなことはない！」
幼「思い付きじゃないんですか～？」
男「ふふふ。分かってないな幼…過去編なら既に置きた事を思い出せばいいだけ！！これならできる！」
幼「あら、男さんのことだからトンデモな過去を作り出しちゃったりするのかと思いました」
男「あ、その手があったか…」
幼「もう遅いですよ～」
男「ま、まあいいや。過去編スタートだ！」
～～～～～～～～～～～～
男「こんにちは！」
幼「こ、こんにちは」ﾋﾞｸｯ
男「僕、男っていうんだ！君は？」
幼「わ、私は幼…です」
～～～～～～～～～～～～
幼「ちょっと待ってください」
男「え？」
幼「そんなところから始めるんですか！？」
男「ダメなの！？」
幼「ダメではないんですけど…その、過去編ってどこからどこまでやるつもりで？」
男「うーんとりあえず幼と出会った時から高校になるまでだな！」
幼「長いです！」
男「え？」
幼「なんですかそれ…長編より長い過去編って…」
男「でも、小学生の時のキャンプとか中学三年で一緒に勉強したこととか外せないじゃん！そしたらもういっそ全部やった方がよくない？」
幼「その…思い出を大事にしてくれるのは嬉しいのですが、やはりここはテンポを意識しましょう」
幼（だんだんと何の話をしていたのかわからなくなってきましたね…）
男「うーむ。幼がそう言うなら」
幼「それに高校の話なんて現在のことじゃないですか」
男「入学式は？」
幼「それはたしかに去年のことですけど…過去編とはまた違う気が」
男「そっかあ。幼とは同い年なのに小中違ったからさ、高校で一緒の学校になれたのすごい嬉しかったから…」
幼「え…そんな風に思っていてくれたんですか？」ﾄﾞｷｯ
男「まあ、たしかに去年のことは過去編にしては弱いか…」ｳｰﾝ
幼「な、なら一つだけ男さんにとって一番記憶に残っているものでなるべく古いものを選べばいいんじゃないでしょうか」ﾄﾞｷﾄﾞｷ
男「古いもので記憶にあるもの…あっ！」
幼「何かあるみたいたいですね」
～～～～～～～～～～～～
男「今日はもう帰るね！また遊ぼう！」
幼「はい。また…」
男「ん？なんか今日元気ないね？」
幼「あ、あの！男さんは好きな人はいますか？」
男「え！？好きな人！？…うーん…」
幼「いませんか？」
男「分かんないや…でも幼のことは好きだよ！」
幼「え…」ﾄﾞｷｯ
男「幼も僕のこと好き？」
幼「は、はい！」
男「やったー！」
幼「あ、あの！」
男「んー？」
幼「なら…私と結婚してくれますか？」
～～～～～～～～～～～～
幼「ストップ！！ストップです！！」
男「え～ここからいいとこなのに」
幼「な、何ですかこれ！」
男「何って一番記憶に残ってる過去。幼覚えてないの？」
幼（お、覚えてますけど…！）ﾓﾝﾓﾝ
幼「と、とにかくこれはダメです！」
男「なんで！？」ｶﾞｰﾝ
幼「ダメなものはだめです！」
男「そんな…これもダメならもう俺に思いつくことはないぞ…」
幼「いいじゃないですか…やっぱり平和が一番ですよ」
男「平和かぁ…だって高校生活ってもっと…こう！なんかさ！あるじゃん！」
幼「なんかですか…」
男「屋上で弁当食べたり！！体育館裏に呼び出されたり！でも何もないじゃん！」
幼「実際そんなものですよ」
男「そんなもんなのかよ…！！」
幼「あぁでも…この前体育館裏になら呼び出されましたよ」
男「……え？」
幼「それは男さん的に考えると青春なんですかね」
男「え、ちょっと待って…何それ知らない…まさか…喧嘩！？」
幼「違いますよ…」
男「じゃあ告白！？」
幼「まあ、そうですね…」
男「…嘘だろ…俺の知らない間にそんな青春イベントが…」
幼「そう言う意味では、もしかして先週転校生が来たことも青春イベントなんですかね？」
男「……え？何それ」
幼「え？男さん知らないんですか？」
男「知らない…だって幼とはクラス違うし…」
幼「男さんのクラスだけ離れた校舎にありますからね…」
男「うっ…そんなことより！その転校生について詳しく！」
幼「ハーフだって言ってましたね…バスケットボールをやっているらしくて背は高いですね…あと海外に住んでたみたいですね英語は上手かったですね」
男「え、えぇなにそいつ…できすぎだろ…てか詳しいな幼」
幼「席が隣になったので、色々と話はしましたね」
男「ベタかよ！！そんな奴いるのかよ！！」
幼「って言われましても…」
幼（こういう時、少しはヤキモチとか焼いてくれてもいいと思うんですけど）
男「…どうした？」
幼「なんでもありません！」
男「まさか…他にもあるんじゃ」
幼「さすがに…あっ…」
男「まだなんかあるのか！？」
幼「そういえばうちの高校の生徒会長さんの許嫁が私らしいんですよ」
男「えええええ！？」
幼「すごく驚いてますね…」
男「いや、驚くだろ！？え！？何それ！？」
幼「とは言っても、親同士が私が生まれる前に冗談で話したことらしいですよ」
男「つまり？」
幼「何もないってことですよ」
男「そっか…そうだよな…じゃないととんでもない事になるぞ」
幼「…？。それより…男さんこそ何もないんですか？私だけ言わせるのはずるいですよ」
男「だってないものは仕方ないだろ！」
幼「本当ですか？…実はハーレムとか築き上げてたりするんじゃ…」
男「あるわけないだろ…」ﾊｱ
幼「そうですか」ﾎｯ
男「…やっぱり無理なのかあ」
幼「男さんには日常ものがちょうどいいって事ですよ」
男「日常ものねえ」
幼「平和な日が続くというだけでも幸せですよ」
男「………そうか」
幼「そうですよ」
男「そういうことか！！」
男「大長編をやろう」
幼「え？」
幼「あれ？今この話終わる雰囲気じゃありませんでした？」
男「いや、ついにわかったぞ！！！！俺たちのできる大長編が！」
幼「えぇ…。一応聴きますけどなんですか？」
男「人生だ」
幼「は、はぁ」
男「いいか、幼…高校生活だっていつかは終わってしまう！でもそれからまた新たな生活は始まるんだ！つまりそれは…長編だ！」
幼「当たり前のことですよね…？」
男「そうか…人生とは長編だったのか…これなら幼と今までと同じように一緒に生きていくだけで長編になる！！」
幼「え？その長編って私も含まれてるんですか」
男「当たり前だろ！？幼のいない人生なんて意味ないだろ！」
幼「え！？」ﾄﾞｷｯ
幼（あ、危ない…この場合の『人生』は『長編』って意味ですよね…で、でも）
幼「一つ確認なんですが、今のはぷ、プロポーズではないですよね？」
男「ん？何言ってんだ？」
幼「で、ですよね！！」
幼（うぅ。恥ずかしいです…）
男「プロポーズはもう一回してるから良いだろ？」
幼「え？」
男「え？」
幼「ま、待ってください…ん？どいうことですか？」
男「どうって…覚えてないのか？」
～～～～～～～～～～～～
男「…結婚？」
幼「は、はい！」
男「んー分かんないや！だって僕まだ子どもだし！」
幼「ですよね…あはは」
男「あぁでも幼となら結婚したいかも！…ああでもダメだ」
幼「な、なぜですか？」
男「だってお父さんが言ってた！プロポーズは男からしろって！」
幼「プロポーズですか…」
男「うん！だから幼！将来結婚して下さい！」
幼「はい！」ﾆｺ
～～～～～～～～～～～～
男「ってことがあったじゃん」
幼「そ、それは子どもの頃の話じゃないですか！？」
男「あれ、やっぱり覚えてるじゃん」
幼「覚えてますよ！」
男「じゃあ問題ないな」
幼「ありますよ！」
男「え？」
幼「そんな約束…守ってたんですか！？」
男「え？」
幼「だ、だって！子どものころの話だから…あってもないものだと…」
男「待ってくれ…あれ？じゃあ結婚すると思ってたの俺だけ？」
幼「はい…って…え！？男さん結婚するつもりだったんですか！？」
男「違うの！？」
幼「い、いつから？」
男「その約束の日から」
幼「今まで？」
男「うん…え？だからいつも一緒にいたんじゃないの！？」
幼「いえ、それはただの友達としてかと…」
男「まさか…幼は俺のこと好きじゃないのか」
幼「！！」
男「……」
幼「……すよ…」
男「え？」
幼「だ、大好きですよ！」ｶｧｧ
男「あ、そ、そうか。なんか恥ずかしいな」ﾄﾞｷ
幼「恥ずかしいのはこっちの方ですよ！なんでこんなことになったんですかもう！」
男「なんでって言われても…」
幼「じゃあなんですか！…約束の日からずっと私のこと好きだったんですか！？」
男「う、うん…てかなんか荒れてない幼？」
幼「あれてません！小学生の頃は！」
男「好きだったよ…」
幼「中学は！」
男「好きでした」
幼「…今も？」
男「好きだよ」
幼「……」
男「……」
幼「……」
男「……」
幼「……えへへ」ﾆﾔｧ
男「え？」
幼「男さん私のこと好きなんですか？」
男「う、うん」
幼「そうですか…」
男「…？」
幼「……えへへ」
男「え！？何大丈夫幼！？」
幼「ずっと片思いだと思ってたんですよ…これが大丈夫でいられますか？」ﾆﾀｰ
男「それは…」
幼「男さん！」
男「は、はい！」
幼「好きです！大好きです！」ﾆｺ~
男「幼が壊れた…」
幼「壊れてませんよ…」
男「あ、戻った」
男「俺も驚いたよ…結婚するつもりだったのが俺だけだったなんて」
幼「確かに…長い付き合いでまさかこんなすれ違いが起きているなんて…思いませんでした」
男「過去編は大事だな…」
幼「そうですね…」
男「大長編はどうなるんだ…？」
幼「まだその話なんですね…」
男「やめたほうがいいかな？」
幼「大長編をですか？この話をですか？」
男「この話を…なんか他にやることありそうじゃん？」
幼「そうですね…大長編はやめましょう」
男「それがいいか」
幼「代わりに…」
幼「修行編をやりましょう」
男「え？」
男「そうかな…」
幼「そうです！だからこれから先そんな男さんを支えて行くには必要なんです！」
男「……修行が？」
幼「そうです…花嫁修行です！」
男「お、おぉ！」
幼「だから…楽しい大長編にしてくださいね？」
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男「大長編をやろう」幼馴染「え？」
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男「大長編をやろう」幼馴染「え？」
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