テレビ番組『月光仮面』に登場する悪役『サタンのツメ』(※ママ)のマスクをして、盗みを働いた男が捕まった。
『サタンの爪』(※記事では『サタンのツメ』表記)とは1958年からテレビ放送された特撮番組『
月光仮面』(1958年~1959年放送)に登場する悪役の名前である。
『月光仮面』は『仮面ライダー』よりも古く変身ヒーロードラマの元祖であり、平均視聴率50%近くを記録する大人気番組だった。
記事によると犯人は、お手製のサタンの爪を模した黒マスク、黒手袋にドライバー、ガラス切りなど7つ道具を用意していたプロの盗み屋で、強盗の常習犯だった。捕まった当日は東京都青山にある豪邸で、忍び込みカメラや腕時計など貴重品の数々を物色していたという。
なお記事には「サタンの爪そっくり」とは書かれているが、掲載写真を見てみると、
サタンの爪には思わず目眩がするほど全くもって似ていない。
犯人や記者、もしくは警察関係者が『月光仮面』のファンだったのもしれないが、勝手に名前を使われてしまったサタンの爪もいい迷惑だろう。
なお1950年代後半は覆面強盗事件が相次いだ時期らしく「サタンの爪事件」の真下には「赤覆面の少年強盗」という記事が掲載されている。
これは平均16歳の少年グループが「義勇党」なる赤い覆面をトレードマークにした強盗団を結成し東京都内で盗みを働いていたことを伝える記事で、「サタンの爪事件」も「義勇党事件」と同じように当時多発していた覆面強盗事件の一つだったのだろう。
1975年「ザ・デストロイヤー風覆面強盗事件」
お次はグッと時代をタイムスリップさせ1975年に発生した強盗事件をご紹介したい。
これは1975年1月11月の毎日新聞に掲載された記事だ。1月10日、東京都内のとある豪邸に強盗が入り、
家族を人質に2000万円の身代金を要求した大事件だ。
犯人は2人組で、
当時の人気プロレスラー「ザ・デストロイヤー」(1930~)に似せた覆面をかぶり、ナタを片手に豪邸へ押し入った。
犯人らは借金に困った一般市民であることから計画の甘さも際立ち、事件発生から18時間後に逮捕。人質にとられた家族に怪我はなかったという。
被っていたデストロイヤー風のマスクは
マスクカバーをくり抜いた手作りで、ペイントは犯人の二人が行ったものだという。
当時の小学生の間ではプロレス中継が大ブームで、特に
ザ・デストロイヤーはマスクマンレスラーの代表として人気が高かったためデザインの参考にしていたと思われる。
もっともマスクは
犯人たちの個性が発揮されすぎていて、ザ・デストロイヤーにあまり似ていない……というのが正直なところ。「サタンの爪」といいもっとオリジナルに似せてやれよ!と思ってしまう。
なおザ・デストロイヤーは現役時代にはジャイアント馬場やアントニオ猪木と激戦を繰り広げた悪役レスラーのひとりである。
サタンの爪強盗といい、なぜ悪人は悪人のマスクを被りたがるのか、この点はちょっと理解に苦しむところである。
もしかしたら世の悪人は自分の弱い心を隠すためにあえて悪役のマスクを被っているのだろうか。
我々も多かれ少なかれ、弱さを持っている。さすがに犯罪行為はアウトだが、せめて10月31日だけは、悪役のマスクでも被ってハメを外してみるのもいいかもしれない。