1週間のあいだに拾いきれなかったニュースを、いくつかピックアップしてお届けします。今回は「光を捻ってデータ送信」「VR空間で使える開発者用キーボード」「VRで幻肢痛をやわらげる治療方法」といった話題をピックアップしました。
光を捻ってデータ送信・VR空間で使えるキーボード・VRで幻肢痛をやわらげる治療 #egjp 週末版99
亀を銃だと教えるその心は
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Virgin総帥リチャード・ブランソン、政府向け宇宙輸送企業Vox Spaceを設立
Virginグループの総帥リチャード・ブランソンが、宇宙船を設計製造するThe Spaceship Company、そしてその宇宙船を利用して民間宇宙旅行を実現しようとしているVirgin Galactic、宇宙貨物輸送業をめざすVirgin OrbitにつづくVirgin第4の宇宙企業、Vox Spaceを設立しました。この会社は米国およびその他西側諸国の政府を主なターゲットとして、宇宙輸送業務の受注を目的としており、月や火星を目指すプロジェクトが進んでいくにつれ必要になるであろう宇宙への物資輸送業務を担おうとするものです。
正確には、Vox SpaceはVirgin Orbitの子会社として設立され、人工衛星打ち上げを主な業務とするVirgin Orbitのとはまた別の宇宙貨物輸送業務を担うことで、SpaceXやObital ATKとの競争に参入することを望んでいます。また打ち上げ用の機体としては、2018年に初のテストを予定している「LauncherOne」を使うことが予想されます。
光を捻ってデータ通信する技術
光ファイバー回線は非常に高速にデータ通信が行えますが、まだ重要な制約があります。それは光ファイバーという媒体の通った場所でしか通信ができないということ。グラスゴー大学の研究者は、光子に角運動量を与える方法でより多くのデータを光に乗せ、オープンな空間を乱気流などといった干渉にもまけないよう伝送する方法を発見しました。従来の光データ通信では光子を1と0として扱っていましたが、この研究では光子を撚り合わせることで、1と0双方に別のデータを負荷できるようなデータ伝送が可能になるとのこと。これは光を特別なホログラムに通し、光子に光学的角運動量を与えることで実現します。
実際のところ光子に角運動量を与える方法は、すでに光ケーブルによる通信では使われているものの、開放空間でそれを実現するのはわずかな気圧の変化でも光線が拡散してしまい困難だとされていました。
しかし研究者らは、然るべき光の位相と強さがあれば長距離のデータ伝送が可能であるとして、ドイツの1マイル以上離れた高層ビル間で実験を実施。乱気流の影響が起こりうる都市環境であっても上手く通信を確立できたとしています。
もちろん、オープンな空間における光通信では、雨や雪、その他光を遮る物体が問題を引き起こすことは考えられます。ただ、通信のラストマイルを無線で手早く構築できるこの方法は、条件が合えば次世代のネットワーク構築に役立てられるようになるかもしれません。
VRが麻痺患者の幻肢痛治療に効果を発揮
主にエンターテインメント分野で話題になることが多いVurtual Rality(VR:仮想現実)ですが、医療分野での活用方法もいろいろと探られています。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の科学者らは、四肢を失ったり麻痺状態となった患者らが感じる、実際には感じるはずのない痛み "幻肢痛" を軽減するためにVRを使う方法を発見しました。研究者は対麻痺で足の感覚を失ったものの幻肢痛に悩む患者に対して、VRゴーグルを装着し、あたかも両足が機能するようにみせかける映像を見せるようにしました。すると患者はその映像が本当に自分の足のように感じ、研究者がVR空間でそのダミーの足をかるくたたくと、その感触までもが感じられたとのこと。さらに、患者が訴えていた神経性の疼痛を和らげる効果もあったとしています。
麻痺に関して言えば、VRを四肢麻痺患者のリハビリに使って効果を得たとする米デューク大学の研究もあり、これらを融合した治療プログラムの開発もできそうです。
ニューラルネットワークに誤った情報を教え込む方法
MITの学生が、ニューラルネットワークの目を欺いてある物体を別のものとして認識させる方法を考案しました。実験では亀の画像データを認識させつつ、それをライフル銃として学習させることに成功しています。具体的には、画像にいわゆる透かしのように本来とは異なる画像のイメージを薄く合成したり、拡大、クロップや角度、その他の画像加工を用いました。そして、その結果2次元の画像だけでなく、3Dプリントした亀の模型をAIはライフルだと誤認識するようになったとのこと。
これはニューラルネットワークの強化段階で意図的に、しかも比較的簡単に誤情報を混ぜ込めてしまうということを証明するものであり、何者かが悪用できる可能性があることも示しています。今後あらゆる分野に本格的にAIが浸透していく前に、こうした強化のしかたにもなにか変更や対策が必要になるかもしれません。
LigitechとHTC、VRの世界にキーボードを持ち込む
HTC ViveチームとLogitechは、VR空間内でテキスト入力ができる開発者向けキット「BRIDGE」を発表しました。このキットにはLogitech GシリーズのキーボードおよびVive Trackerが含まれます。そして、双方を接続するとVR空間内に仮想のLogitech Gキーボードと自身の手のシルエットが表示され、前方の画面とキーを見ながらタイピングができます。完全にブラインドタッチをマスターしているなら手のシルエットは不要と思うかもしれないもののそうでない開発者にとってはしっかりキーを見ながらタイピングできるのは心強いかもしれません。
またVR空間内でキーボードをカスタマイズすることも可能で、様々な機能を書くキーに割り当てることも可能です。
このキットは現在は米国内の開発者向けにベータプログラムとして50セットだけが用意されます。使用希望者は11月16日までに申し込むことで150ドルでこのキット購入を申し込めるとのこと。
Logitechは「もし需要が大きければさらに多くのキットを用意する可能性もある」としています。