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【FGO×ダンロン】巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」【後半】|エレファント速報:SSまとめブログ

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【FGO×ダンロン】巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」【後半】

関連記事:【FGO×ダンガンロンパ】巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」【前半】





巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」【後半】






402:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/17(火) 17:53:17.11 ID:2gcyMwHX0



最原「……ふあーあ……昨日は……本当に酷い一日だった」

最原(雨降って地、固まるの諺のように行ってくれれば重畳なんだけどな)

最原(さて。昨日は東条さんもあんなこと言ってたけど、怪我も酷いから無理はさせられない)

最原(まだ八時になってないけど、今のうちに食堂に行って……東条さんを無理やり休ませるか、さもなくば手伝うかはしよう)

最原(……昨日の茶柱さんの涙が、まだ僕の心に残ってる。あの選択を間違いだとは思わないけど……罪悪感を覚えないかどうかは別だ)

最原「さて。行こう」

ガチャリンコ

巌窟王「……昨日はアンジーが世話になったようだな?」ゴゴゴゴゴゴ

最原「」

巌窟王「共に来い」

最原(死んだな僕)



第三章

Unlimited 在校生 Works



403:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/17(火) 18:05:04.84 ID:2gcyMwHX0



百田「ふあーあ……昨日はいい一日だったぜ。結果として東条の悩みとも全力でぶつかり合えたしな」

百田「さぁって! 今日も一日、ぶちかますとするか!」

ざわ・・・ざわ・・・

百田「……ん? なんだ? 騒がしいな」

キーボ「あっ! も、百田クン! 大変です! 食堂に……!」

百田「ん?」



数分後 食堂

百田「なんだこりゃ……壁一面に、文字? スプレーかこりゃあ」

星「いや。それよりも書かれている内容の方が問題だぜ」

白銀「春川魔姫は……超高校級の暗殺者!?」ガビーンッ

入間「こりゃあ、ひょっとするとモノクマの新しい動機ってヤツじゃねーのか?」

百田「……あ? なんだそりゃ。なんでコレが動機になんだよ」

星「忘れたわけじゃねーだろう。俺たちはコロシアイを強要されているんだぜ」

星「そんな中、もしも春川の才能が実際に超高校級の暗殺者だった場合は……」

赤松「……いや。関係ないよ。そんなの。春川さんは春川さんだもん」

赤松「第一! これが本当かどうかなんて、春川さんに訊かないとわからないし!」




春川「……なに、これ……」

赤松「あっ」

王馬「うん! 赤松ちゃんみたいなこと言う人が出るかと思って、連れて来たよ! 件の春川ちゃん!」

百田「おいハルマキ。コイツは……」

春川「……!」



404:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/17(火) 18:10:15.66 ID:2gcyMwHX0

ダッ

百田「ハルマキ!」

王馬「ありゃりゃ、逃げちゃった。認めたようなモンだよね、コレ!」

百田「クソッ! 待てよハルマキィ!」ダッ

星「……」

星「おい王馬。コレを書いたのはアンタだな?」

王馬「え? 違うよ? 何を根拠に言ってるの?」

星「今までモノクマは動機の提示を、俺たちの真正面からやっていた」

星「全員に。平等に。同時に。わかりやすくな」

星「だがコレはどう見ても春川を狙い撃ちにしている。モノクマの署名も一切ない」

星「そして……春川の才能の真実を知っている生徒は、俺とアンタだけだ」

白銀「えっ!? そ、それって、どういうこと……!?」

王馬「……にしし……俺から説明しよっか」

星「あっさり認めやがって……食えない野郎だ」

入間「なー。東条はどこ行ったー? 俺様は腹が減ったぞー」

赤松「空気……読もうよ入間さん……」



405:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/17(火) 18:17:21.73 ID:2gcyMwHX0

寄宿舎周辺 中庭への階段寄り

百田「ああ、くっそ足速ェ! 止まれハルマキィ!」

春川「……」ピタッ

百田(お。止まった)

春川「……アレ。本当だよ」

百田「そうか」

春川「……誰だか知らないけど、やってくれたね。私の努力が全部パァだよ」

百田「……まさか、あの研究教室の中って」

春川「『色々』ある」

百田「……そうか」

春川「……引いたでしょ? 引いたよね」

春川「当たり前だよね」

百田「……ハルマキ。俺ァ――」

春川「もう私に近づかないで。私は……」

春川「……せっかく、みんな結束しそうだったんだよ。私がいたら邪魔だよ。どう考えてもさ」

百田「そんなこと――!」

春川「あるんだよ」

百田「……」

百田(そう言うなり、ハルマキは再び、走り出そうとした)

春川「だから、もう私に関わらな――」



巌窟王「クハハハハハハハハ!」ビュンッ


ドカァァァァァンッ


春川「ひでぶっ」

百田「ハルマキが超速度で走る巌窟王に轢かれて吹っ飛んだーーーッ!?」ガビーンッ!

春川「ごはっ」ベシャッ

百田「ハルマキ! しっかりしろ! ハルマキー!」



406:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/17(火) 18:24:40.79 ID:2gcyMwHX0

中庭

巌窟王「戻ったぞ! 倉庫から持ってきたマシュマロだ!」ギンッ

アンジー「神様ありがとー!」

最原「……えーと……何これ……」

真宮寺「焚火」

天海「鉄串」

東条「あとキッチンペーパー、新聞紙、アルミホイルで包んだキャンプ用の食材よ」

焚火「」パチッパチッ

最原「朝からやることじゃ……ないよ……明らかに」

獄原「でもちょっとワクワクするよね!」



ハルマキィィィィィ!


最原「ん? 遠くで百田くんの声が聞こえたような……」

巌窟王「始めるぞ!」ギンッ!



414:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 18:05:31.14 ID:1a0hgLso0

夢野「んあー。巌窟王が最原を取り調べするらしいぞ? 楽しみじゃのー」

茶柱「はあ。いや、それの何が楽しみなんです?」

夢野「なんでも巌窟王がアンジーから『取り調べと言ったらカツ丼だよねー』って言われたらしくての」

夢野「で。東条に頼もうにも凝った料理ができないくらい手がボロボロじゃろ?」

夢野「カツ丼はやめよう。誰がやっても知識があればできるそれなりのものにしよう」

夢野「じゃあ焚火囲んで色々焼いて食べることにしようってなったんじゃ」

茶柱「発想にちょっとスキップかかってますね」

夢野「冒険の経験やフィールドワークの経験のある真宮寺と天海」

夢野「なんかもう見た目からして野趣溢れるゴン太とかも巻き込んで」

夢野「今は中庭あたりでもう色々やっておるころ……?」




百田「ハルマキーーー! 目を開けろってハルマキーーー!」

春川「」チーン

百田「ハルマキーーー!」

夢野&茶柱「」




中庭

巌窟王「夢野が遅いな……後で五月蠅いだろうから茶柱も誘ってくると言ってたはずだが……」

巌窟王「まあいい! 取り調べを開始する!」ギンッ

アンジー「吐けー!」

最原「……取り調べとは名ばかりだよね」

真宮寺「焚火を囲んでマシュマロ焼きつつ下らない話に興じる……」

天海「ノリが修学旅行の『お前誰好き暴露会』のまんまっすよねー」フーフー

東条「……」ボッ

最原「東条さん。マシュマロを火に近づけすぎ。引火してる……」

東条「……ごめんなさい。普段はこんな失敗しないのだけど」

最原(やっぱり怪我が尾を引いてるのか。包帯だらけだし……)



415:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 18:12:39.71 ID:1a0hgLso0

獄原「でもなんでゴン太たちのことまで誘ってくれたの?」

巌窟王「ついでだ。お前たちに話しておかなければならないことがあってな」

天海「それは?」

巌窟王「俺のホームからここに物資が転送されてくる」

最原「!」

巌窟王「……だが、前回の天海の仮面のように、アレは学園のどこに出るかは大雑把にしか決められないらしい」

巌窟王「最低限、現状で足を運べるどこかに転送するとは確約させたが……足で探すにはそろそろ学園が広すぎるからな」

真宮寺「なるほど。そこで僕らの出番というわけだネ」

天海「具体的な物資の内容は?」

東条「モノによっては状況の打開を図れるかもしれないわね」

巌窟王「カメラとプリンター。そして写真術のマニュアルだ」

最原「期待して損した!」ガビーンッ!

アンジー「卒業アルバムの野望は未だ潰えてないのだー!」キラキラキラ!



416:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 18:21:48.75 ID:1a0hgLso0

最原(……っと。そうだ。野望でなんとなく思い出した。そこまで大仰なものじゃないけど)

最原(アンジーさんの血液をどうにかして採取したいって入間さんから依頼されてたんだったな)

最原(報酬は天海くんの動機ビデオデータ……昨日は色々なゴタゴタがあったからできなかったけど)

最原(……普通に健康診断に誘う感じでいいか)

巌窟王「最原。何をアンジーのことをじっと見ている?」

最原「……い、いや。なんでもないよ」

巌窟王「……」ジーッ

最原「……」ガタガタ

巌窟王「そうか!」ギンッ

最原(無意味な間を置くのやめてほしいなぁ。寿命縮むから)ズーン

東条「……」ボッ

天海「東条さん。またマシュマロに引火してるっす」

東条「ごめんなさい……」

獄原「アルミホイルの方はまだかな」ワクワク



418:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 20:29:21.38 ID:1a0hgLso0

カルデア

BB「さてと。転送終了。どこに行ったかまではわかりませんが……」

BB「引き続き片手間にこの空間の解析を進めますか」

BB「多分、かなり答えは単純で、単なる並行世界だと思うんですけど……」

BB「それも剪定事象みたいな『何らかの理由で手が届かなくなったレベルの別世界』じゃない……もっと普通の」

BB「……ダメだ。今一歩足りませんねー。明らかに手がかりが不足してます」

BB「それにしては何か、世界観が滅茶苦茶すぎるんですよね。まるで、そう」

BB「この学園だけじゃなくって、外の世界まで誰かに用意されているような……」



才囚学園

春川「……ハッ!」パチリ

百田「おお! 気が付いたかハルマキ!」

夢野「ふいー、ひやひやしたわい。怪我も特になさそうじゃの」

茶柱「……ん? でも何か様子がおかしくありませんか?」

百田「んなことねーって。な、ハルマキ」

春川「私は誰?」

百田「」

茶柱「」

夢野「」


春川は記憶を失った



419:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 20:36:31.05 ID:1a0hgLso0

数時間後

巌窟王「……行くぞ」

天海「ええ。ここから先は……」

真宮寺「競争、だネ」

東条「全力を尽くすわ」

アンジー「みんながんばー!」キラキラキラ

最原「うん。えーっと……頑張るよ。片手間に」

最原(というか物資一つ探し出すのに凄い無駄にやる気出してるなぁ)

巌窟王「さて。ひとまず食堂に道具を片付けに行くか」

東条「洗い物は……」

最原「当然僕たちがやるよ。東条さんは無理しないで」

東条「……」



食堂

最原「春川魔姫は……って、え!? 何これ!?」ガビーンッ

巌窟王「残酷なことだ」

天海「マジっすか!」

赤松「みんな気づくの遅いよ!」ガビーンッ!



情報はやっと全員に行き渡った



420:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/18(水) 20:43:09.76 ID:1a0hgLso0

獄原「よし! ゴン太も頑張ろう! 卒業アルバムって楽しそうだしね!」キラキラキラ

獄原「まずは外を虱潰しに探して……」フラッ

獄原「ん……なんだろう。一瞬、目が霞んだような……気のせいかな?」



夢野の研究教室

夢野「この五円玉をじーっと見ていると、ほら、段々と記憶が蘇って……」チクタクチクタク

春川「ううっ……確か私は超高校級の暗……」

百田「……」

春川「……パンマンだったような」

茶柱「誤魔化し方下手すぎますね」

夢野「くっそーーー! 失敗じゃ!」

百田「いやこれ以上ないくらい成功してっから安心しろ!」



426:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 17:15:13.66 ID:dcUyXBR80

巌窟王「今日のところは訓練は休んで、物資の探索をするか」

アンジー「にゃははー! 神様と一緒ー!」

巌窟王「……なるほど。学級裁判を一つの区切りとして、学園の区画が解放されていくのか」

アンジー「いつも神様はこういうときに部屋に引きこもってたから知らないよねー!」

巌窟王「俺にもやることがあるからな」

アンジー「……ねえ神様ー。楓の学級裁判のときに言ってた個人的な目標って、なに?」

巌窟王「言う必要はないな」

アンジー「アンジーにできることは」

巌窟王「ない」

アンジー「……命令されれば何でもするよー?」

巌窟王「ない」

アンジー「……」

アンジー「……」ムク

巌窟王「む? 今むくれたか?」

アンジー「にゃははー! まっさかー! 神様の言葉でむくれることなんて未来永劫ありえないよー」

アンジー「……超高校級の美術部であると同時に、超高校級の巫女だからね」

巌窟王(初耳だ。話半分に聞いた方がいい事実かもな)

アンジー(明らかに信憑性に乏しいから聞き流そうって顔してる……)



427:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 17:30:46.82 ID:dcUyXBR80

アンジー「確か終一が新しい区画を開放させているはずだよー。何よりも優先させるって言ってたし。行ってみよう!」

巌窟王「……今度こそお前の研究教室があればいいがな」

アンジー「そだねー!」




新しい区画

巌窟王「む? これは……見た限り超高校級の民俗学者の研究教室か?」

真宮寺「……」ゲシッゲシッ

真宮寺「ダメだ。扉が開かないネ。木製に見えるのにそうじゃないみたいだ」

入間「燻蒸消毒機能つってたな? 超高校級の民俗学者らしいクソ陰気な機能だぜ」

入間「ま、中に閉じ込められてるキーボはロボットだ。燻蒸ガスくらいヘーキだろ」

巌窟王(あそこにいるのは真宮寺と入間か)

アンジー「美兎ー! 是清ー! どうかしたかー!」

真宮寺「朝に聞いた物資の捜索しているついでに、自分の研究教室が実装されているって聞いたから覗いてみたんだけどネ」

入間「それに同行してやってた俺様がたまたま見つけた燻蒸機能スイッチを押してな」

入間「で。その燻蒸消毒にキーボが巻き込まれた状態で研究教室が閉鎖されちまったってわけだ」

巌窟王「燻蒸……」

アンジー「博物館とかがたまにやってる消毒方法だねー。有毒ガスで建物の中を満たして虫、カビ、その他美術品に有害なものを除去するんだよー」

真宮寺「流石は超高校級の美術部。詳しいネ」



428:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 17:39:05.39 ID:dcUyXBR80

モノクマ「ちなみに、この燻蒸消毒で使うのはボクが制作した万物に終焉をもたらす猛毒……」

モノクマ「モノクマ印の地球環境破壊ガスだから、人間なら一息吸えば一発で死ぬよ。虫やカビなら言わずもがな!」

モノクマ「ま、赤外線センサーで『中に人がいるかどうか』を判別してから消毒作業は行われるから大丈夫だけどね!」

巌窟王「ほう」

アンジー「仮に神様が閉じ込められても大丈夫だよねー? 毒利かないもん」

巌窟王「巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)は防毒の効果があるからな」

巌窟王「第一、俺が使う炎は毒入りだ。仮に俺を毒殺するのであれば物理法則に則った通常のものは話にならない」

真宮寺「それも巌窟王さんの毒炎を凌駕するものでなければ不可能、か。大分難易度高いネ。覚えておくヨ」

入間「で。この燻蒸消毒機能の解除はどうすんだ?」

モノクマ「一度発動したら三十分経つまで解除できないよ!」

巌窟王「……真宮寺。燻蒸消毒が始まってどのくらい経った?」

真宮寺「もうすぐ三十分だネ」


カシャンッ

ガララッ


キーボ「う、うわああああん! 死ぬかと思いましたーーー!」

入間「お。出てきやがった」



429:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 17:47:58.64 ID:dcUyXBR80

入間「あー。ちょっと見せてみろ……相変わらず凄いカラダ……!」ハァハァ

入間「っと、いけねぇ。軽くだ軽く。本格的なコトは俺様の研究教室で……じっくりしっぽり……!」

真宮寺「ガスの除去は終わっているのかな」

モノクマ「最後の十分でガスを除去しにかかるから大丈夫だよ!」

キーボ「ずっと叫び続けてたのに全然返事も助けも来ないから本当に怖かったです!」

アンジー「うーん。でもコレ便利だけど危ないよねー」

真宮寺「中に人がいるときは使えない以上、大丈夫じゃないかな」

キーボ「ぼ、ボクは……」

入間「大丈夫だったじゃねーか。そもそも毒ガスが利かないのなら考慮にすら値しないっつーの」

キーボ「ロボット差別です……」シュン

アンジー「あれ? いつもより元気ないぞー、どしたー」

キーボ「もう叫び疲れてしまったので……」

真宮寺「あ。そうだ。二人とも。奥の方に超高校級の美術部の研究教室もあったヨ」

巌窟王「行くぞアンジー!」ダッ

アンジー「おー!」ダッ

真宮寺「……ククク。仲良きことは美しきかな、だネ」

入間「も、もう我慢できない。ここでおっぱじめちまおうぜ……!」

キーボ「え。ちょっと。入間さ……うひゃあああ!?」

真宮寺「これは美しくない」



431:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 18:47:36.34 ID:dcUyXBR80

超高校級の合気道家の研究教室

最原「……ふう。これで今回の解放された場所は全部かな」

最原(物資は見つからなかったな。だとすると既に解放されていた既存の場所にカメラ類が転送されている可能性が高いけど……)

最原(通りすがりでも見かけた覚えはない。ということは『既に解放されている場所』で尚且つ『僕が行ったことない場所』の可能性が高い)

最原(……ついでだ。春川さんの研究教室に行こうか)

茶柱「転子の研究教室がついに実装ですってーーー!」バターンッ

最原「あ。茶柱さん」

茶柱「……」

ガチャリンコ

最原(無言で出て行った……まあ謝らないとか言ってたしな)

最原(……仕方ないか。間違ってないからって、正しいわけじゃない)

最原「……仲直りは無理だろうな。ただでさえ男子が嫌いだし。茶柱さん」



432:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 18:59:07.03 ID:dcUyXBR80

超高校級の暗殺者の研究教室

カメラ類「」ドーンッ

東条「……見つけた。こんな物騒な場所に……」

東条「早くこれを巌窟王さんに届けないと」

ズキッ

東条「……ダメね。この手じゃ。うっかり落として壊したりしたら取り返しが付かないもの」

東条「あとどのくらいで治るのかしら」




夢野の研究教室

夢野「よいかー。この五円玉をじーっと見つめるんじゃぞー……」

夢野「スリー。トゥー。ワン。ヒミコ!」カッ

春川「ぐー」スヤァ

夢野「なんか想像以上に催眠術がハマりすぎて楽しくなってきたのう」

百田「遊んでんじゃねーよッ!」ガビーンッ

夢野「スリーサイズを上から順に言えー」

春川「ななじゅうな――」

百田「起きろハルマキィ! これ以上は夢野のオモチャになるだけだぞ!」ガクガク!



433:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 19:16:38.47 ID:dcUyXBR80

超高校級の美術部の研究教室

巌窟王「ふむ。チラリと見ただけだが、真宮寺のよりは幾何か施設が大人しいな」

アンジー「充分! 充分だよー! これで今までできなかったこともたくさんできるようになるー!」

巌窟王「……嬉しいか?」

アンジー「うん! それもこれも神様のお陰だよー! ありがとねー!」

巌窟王「……」

巌窟王「なんとなく思っていたのだが、やはりな」

アンジー「ん?」

巌窟王「アンジー。お前からの魔力供給は、お前が表に出す感情の量に比例するらしい」

アンジー「……元から抑えてないけどー?」

巌窟王「さて。それはどうだろうな」

巌窟王(それに、ここから先は言うつもりはない。言ったところで自傷行為に走られても面倒だからな)

巌窟王(……どうやら怒りや悲しみ、不満やフラストレーションの爆発、漏洩が鍵になっている)

巌窟王(今まで絆を育んできたのは決して無駄ではない)

巌窟王(……先ほどはむくれていないと否定されたが……その虚栄、いつまで続くかな?)

巌窟王(俺は聖女などに仕える気は毛頭ないのだ)

アンジー(……神様が何を考えてるのか、なんとなくわかるよ)

アンジー(怒れと言われれば怒るし、喜べと言われれば喜ぶのに……)

アンジー(……どうして願ってくれないの? アンジーの何が悪いの?)

アンジー「……感情、か」

アンジー(……あの夢や、学級裁判での頑張りを見てから、終一の顔が脳裏にチラつくんだよねー)

アンジー(終一なら教えてくれるのかなー。頭いいし……ね)

巌窟王(猛烈にタバコ吸いたくなってきた……早く脱出をしたいものだ……)



434:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/19(木) 19:22:34.85 ID:dcUyXBR80

食堂

白銀「……なんかさ。地味に歯車が軋んでいる気がするんだよね」

星「そりゃそうだろう。いくら上手く行こうが、同じ空間に十六人も閉じ込められてるんだ」

星「人間関係はイヤでも進展する。その過程で何かが軋むこともあるだろう」

白銀「……元には戻れないのかな」

星「無理だろうな」

星「それに……なんだろうな。アンタがそういうのを一番楽しんでいるように見えるぜ」

白銀「……気のせいじゃない?」

白銀「……気のせいだよ」

星「……」



星(そろそろ、嵐が来るかもな)

星(東条のときとは比較にならない嵐が……)



440:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 19:07:30.20 ID:o7q8B6c00

夕飯の時間

春川「へえ。ここが食堂……いっぱい人がいるね」

茶柱「まだ治ってないんですか」

夢野「まだ治っておらんぞ」

最原「どうしたの春川さん」

百田「……巌窟王にやられた……」

春川「……で。食事ってどうするの? 作るの? 誰かが作ってくれるの?」キョロキョロ

最原「い、いや。東条さんはまだ怪我が治ってないから無理……」


トントントン


最原「あれ。包丁の音?」

王馬「あれれー。東条ちゃんが料理してるー」

東条「ええ。心配かけさせたわね。簡単なものしか作れないけどすぐに用意するわ」

獄原「だ、大丈夫? 無理しなくっていいんだよ?」

東条「無理なんかしてないわ」

獄原「よかった! それなら安心だね!」

アンジー「……安心だー! 全部元通りだよー!」

茶柱「……?」

最原(元通り……本当に?)



441:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 19:16:33.61 ID:o7q8B6c00

三十分後

最原「おいしい……」

最原(味噌汁と焼き魚とご飯……シンプルだけど間違いなく美味しい)

最原(流石に米はとげないから、これだけはレトルトみたいだけど)

東条「よかった。みんなのお口にあって何よりよ」ピクッピクッ

赤松「……待って。東条さん、手が震えてない?」

東条「!」

茶柱「すいません。その手袋の下、見せてくれませんか?」

東条「……今は食事中よ。見ない方がいいわ」

夢野「んあ? どういう意味じゃ?」

星「……」

入間「?」モグモグモグ

最原「……やっぱり元通りとは行かないよね。そう簡単には」

天海「見せてほしいっすね。今すぐに。じゃないと逆にメシが喉を通らないっす」

東条「……」


スッ


ボタッ


入間「んなっ! うえ……!」

キーボ「入間さん。余計なことを言うくらいなら目を背けていてください」

入間「……あーはいはいわかってるっつーの!」

最原(東条さんの手袋の下は包帯でグルグル巻きだった)

最原(……しかも、その手袋が真っ赤に染まって、赤いモノが滴り落ちている)

最原(手袋の中にもいくらか溜まっていたようだ。そちらからも垂れている)



442:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 19:26:06.07 ID:o7q8B6c00

茶柱「酷い。そんな手でどうやって……!」

東条「倉庫から持ってきた痛み止めで、なんとかなったわ」

白銀「それってダメージそのものが無効化されてるわけじゃないから! 絶対!」

百田「無理に手を使って傷口が開いたってのか……バカ野郎!」

東条「大丈夫よ。細心の注意を払っていたから、料理の中には入ってないわ」

百田「そういう問題じゃねーんだよ! 誰か手当できるヤツは……!」

天海「俺がやるっすよ。簡単なものしかできないっすけど」

春川「……なんでこんなに傷だらけな人に料理させてるの?」

夢野「完璧にシクッたわ。東条! しばらく料理はしなくてよいぞ!」

東条「でも……」

茶柱「でもは禁止です! 天海さん、よろしくお願いします」

天海「心得たっす」

東条「……ごめんなさい……」

茶柱「……」ギッ

最原(う。凄い目でこっち見てるな、茶柱さん……)

王馬「にしし! 東条ちゃんを止めなかった時点で同罪なのに、最原ちゃんに八つ当たり? 良い身分だね! 茶柱ちゃん!」

茶柱「ッ!」

最原「王馬くん!」

王馬「ん? なあに? 庇った礼なら後で講座に振り込んでくれればいいよ?」

最原「礼なんか……!」

赤松「……やめようよ。誰も悪くないんだからさ」

最原「……」

最原(クソ……!)



443:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 19:35:22.68 ID:o7q8B6c00

赤松「……そ、そうだ! さっき東条さんから預かったんだけどさ!」

赤松「カメラとかその他の機器が学園に届いてたんだよ!」

赤松「今は私が預かってるんだけど……」

赤松「巌窟王さんはどこ?」

アンジー「しーらない!」

赤松「そ、そっか」

アンジー「届け物ならアンジーが預かるよー!」

赤松「じゃあ……お願いしようかな」

春川「巌窟王って誰?」

最原「春川さん本当に大丈夫?」



444:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 19:40:50.46 ID:o7q8B6c00

どこかの教室

巌窟王「ニコチンが足りなさ過ぎてイライラするが、アンジーが真似するので吸うわけにはいかない……!」ガタガタ

モノクマ「偉いですねー。ちなみにこの学園に来てから、あなたが禁煙していることはキチンと把握しています!」

モノクマ「身内に祝ってもらうのも禁煙のモチベーションを上げる一つの方法ですよー」

モノダム「頑張レ。頑張レ」

モノファニー「大丈夫よー! アタイたちがついてるわー!」

モノタロウ「依存症に負けるなー!」

巌窟王「クハハ……祝い、か……考えておこう」



依存症のカウンセリングを受けていた



448:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 20:52:32.51 ID:o7q8B6c00

数十分後

アンジー「じゃ、すぐに取りに行くけど……大きいのならバッグを用意してから行くよ?」

赤松「そうだね。結構かさばるから運ぶものがあるといいかも。そんなに大きくなくてもいいけど」

アンジー「そかそかー! じゃ、倉庫に寄ってから行くねー!」ピューッ

最原「……」

最原(今は傍に巌窟王さんはいない。チャンスかな)スッ



倉庫

アンジー「ふんふんふーん」ゴソゴソ

最原「……アンジーさん。ちょっと話したいことがあるんだけど」

アンジー「ん?」

最原「あのさ。実は……」

アンジー「あ。待って。終一、そこから先は急ぎじゃないなら今度にしてー?」

最原「え」

アンジー「アンジーも終一に用があったんだー! 明日になったら裏庭のあたりに来てよー!」

最原「……できれば巌窟王さんはなしで話したいんだけど」

アンジー「!」

アンジー「……」ニコニコ

最原(……なんだ? 不機嫌になるのならわかるけど、明確に上機嫌になった?)

アンジー「いいよ。じゃ、そういうことで……ね?」

最原「うん」



449:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/20(金) 20:56:27.32 ID:o7q8B6c00

茶柱「……東条さん、心配ですね。あのままだとずっと傷口開きっぱなしにしそうで」

夢野「そうじゃのー。じゃ、見張りを立てるとするか」

茶柱「見張り?」

夢野「『明日マジカルショーをするので手伝ってくれ』という名目でヤツを一日中傍に置いておく」

夢野「当然、重労働はナシの方向じゃ。これなら問題ないじゃろう」

百田「お? ハルマキの記憶の復元はどうすんだ?」

夢野「……忘れとったわ。さて……」

茶柱「あ。じゃあそちらは私が担当します。体を動かせばフッと戻る何かがあるかもしれません!」

茶柱「転子の研究教室に案内しますとも!」

春川「研究教室ってなに?」

百田「……頼む。なんかもう色々不憫だ……」



454:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 06:39:11.45 ID:tv0/5s9u0

モノクマ「お疲れ様でしたー。次のカウンセリングの予約はよろしいですかー」

巌窟王「どうせ暇だろう。そんなものはいらん」

モノクマ「またのお越しをー」

モノタロウ「あ、これ気休めの飴だよー。タバコ欲しいときになったら舐めてねー」

パクッ

巌窟王「……」ナメナメ

モノファニー「一も二もなく舐め始めたわね……」

モノダム「本当ニ辛インダネ」

巌窟王(帰るか)スタスタ


アンジーの部屋

巌窟王「……」ガチャガチャ

巌窟王「鍵がかかっているな。まだ帰ってきてないのか」

巌窟王「門限までには帰ってくるだろうが……」

ガチャリンコ

赤松「じゃあ、アンジーさん。結構重いけど頑張ってね」

アンジー「もっちもちー! じゃ、ぐっばいならー!」

巌窟王(なんだ。赤松の部屋にいたのか)



455:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 06:45:06.08 ID:tv0/5s9u0

アンジー「おお! 神様! ジャストタイミングー!」

巌窟王「少し待ったぞ」

赤松(そこは正直に言っちゃうんだ……)

アンジー「この鞄の中にねー! 斬美が見つけたカメラ他の機材が入ってるよー!」

巌窟王「……何?」ゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「アンジー。その言葉、偽りはないだろうな」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

巌窟王「俺を騙したが最後、臓腑を生きながら炭化させられる地獄の苦しみを味わうと知っての言葉か?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

赤松(なんで無駄に脅すの!? 怖いよ!)ガビーンッ!

アンジー「騙してないから怖くないよー」ケロリ

赤松(アンジーさん凄い平然!)

巌窟王「そうか」

巌窟王「……」

巌窟王「飴をやろう」

アンジー「わーい!」

アンジー「おいしー!」ナメナメ

赤松「……前々から思ってたけど仲いいよね。二人とも」



456:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 06:52:12.63 ID:tv0/5s9u0

巌窟王「それで、俺がいない間に何か変わったことは?」

アンジー「あのねー。斬美がねー……」


ガチャリンコ


赤松「……二人して部屋に入って行った……本当に一緒に住んでるんだ」

赤松「あれ? でも巌窟王さん、鍵は?」

モノクマ「スペアキーの類は用意してないからアンジーさんと一緒に入るしかないねー」

モノクマ「巌窟王さんだけが部屋に残る場合は後でアンジーさんが戻ってきて、巌窟王さんを外に出してから閉めてるよ」

赤松「へー」

赤松「……うわっ! モノクマ!」

モノクマ「なんかもう神出鬼没が当たり前すぎて、そんな反応が懐かしくも嬉しいなぁ」



458:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 09:43:57.45 ID:tv0/5s9u0

カルデア

BB「……何回も見返してやっと掴めましたよ」

BB「この空間、あの白黒クマの許可が出ない限りは死人でも外に出れない結界になってるんですね」

BB「偶然か必然かはわかりませんが……魔術の神秘の塊のサーヴァントすら外に出さないとは恐るべし、です」

BB「……ただやっぱりあそこまで損傷して復活できる仕組みの方はわかりませんけど……」

BB「うーん。お茶でも淹れてきましょう。続きはそれから」スタスタ



五分後


ナーサリー「BBー。暇なのだわー。またスミソニアンにハッキングしてお友達と遊ばせて……」

ナーサリー「あら。いない」

ナーサリー「……ん? でも何かの映像をつけっぱで外に出て行ったみたいなのだわ」

ナーサリー「コピって部屋に持ち帰ってみましょう」カタカタ


ピロンッ

後にBBは語る。『月の聖杯戦争出身の英霊は機械に強いからイヤなんですよ』と。
女神たち中心に才囚学園の記録は大人気となった。



459:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 10:49:06.86 ID:tv0/5s9u0

翌日

百田「……一晩寝た内に記憶がこっそり戻ったりとかは」

春川「してない」

百田「だよなぁ」

茶柱「では、春川さん。転子の研究教室へとお連れしましょう!」

茶柱「あ。朝ごはんは事前に教室に運んでおいたので」

百田「……しかし、テメェ大丈夫か? ハルマキは超高校級の暗殺者だぞ?」

茶柱「はい? よりによって百田さんがそれを言いますか?」

茶柱「……いえ。平時であれば転子だって警戒してますよ。拘束した方がいいとすら思ってます」

茶柱「でも転子は最原さんのやり口を認めたくない」

茶柱「『許しに何らかの代償が必要』とか神様かヤマの言い分ですから」

茶柱「……愚かでも何でも、転子は一方的かつ無条件で人を信用したいのです」

茶柱「最原さんのやり口は……転子にとっては外道のそれにしか見えませんでした」

百田「……アイツだって悩んでたんだぜ?」

茶柱「……許すきっかけがあれば」

百田「お前――!」

茶柱「……失言です」

春川「???」



460:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 11:14:01.77 ID:tv0/5s9u0

百田(……アイツは怒ってるんじゃないな)

百田(いやまあ実際に怒っちゃいたんだろうが、もうそれは学級裁判で終一を引っ叩いたときに清算できてる)

百田(今のアイツはただ『東条のために怒っている』だけで『怒っているから怒っている』ってのとは違う)

百田(終一は……まあ気付いてるだろうが、許してくれなんて口が裂けても言わないヤツだよな……)

百田「……探すか。終一」

百田「案外、早く仲直りできるんだぜ」



アンジーの私室

巌窟王「クハハハハハ! 読める! 読めるぞ! コレがカメラというものか!」

巌窟王「BBには礼を言わねばなるまい! 我が黄金律で! 桜の木を一本丸ごと送ろう!」

巌窟王「アンジー! 外に繰り出すぞ! 今から卒業アルバムの制作計画を実行に――!」

アンジー「アンジー今日用事あるからパスするよー」

巌窟王「予定があるなら仕方ないな!」ギンッ

巌窟王「さあ! 始めるぞ! 俺一人で!」



461:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 11:15:08.66 ID:tv0/5s9u0

休憩します!



462:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 13:36:00.33 ID:tv0/5s9u0

CM

ピロロロロロ…アイガッタビリィー

BB「クレオパトラさぁん!」

クレオパトラ「!」

BB「何故あなたは映画を見たにも関わらずその記憶がないのか」

BB「何故帰った記憶がないのか」

BB「何故化粧のノリが普段より今一なのくわァ!」

白銀「……!? それ以上言うなー!」ダッ

BB「その答えはたった一つ」

白銀「やめろー!」

BB「あはぁー……」ニヤァ

BB「クレオパトラさぁん! あなたが映画の最中で……うっかり寝落ちしてしまった女だからだァーーー!」

BB「あーっはっはっはっはっはっはっは!」

クレオパトラ「私が……映画の最中で寝落ち……? 嘘よ。私を騙そうとしている……!」

白銀「そそそ、そうだよ! クレオパトラさんはまだ劇場に行ってないだけ……!」

ポロッ

クレオパトラ「あら? ポケットから何か落ちて……」

来場記念ポスカ『HFの映像化! 叶わない願いなんかじゃなかった! byこやまひろかず』

クレオパトラ「うわあああああああああ!」←劇場で寝落ちしたことを思い出した

白銀「クレオパトラさーーーん!」ガビーンッ

上映中の寝落ちは多大な損失を産みます。


劇場版Fate/staynight Heaven's feel
大好評上映中


白銀「また行こう?」

クレオパトラ「はい……」エグエグ



468:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 18:13:41.43 ID:tv0/5s9u0

夢野「というわけで、じゃ。今日はウチに付き合ってもらうぞ。東条」

東条「ええ。依頼とあらば」

夢野「と言ってもそこまでの重労働はさせる気は……」

夢野(……いずれバレることではあるが気遣ってることをわざわざ口に出すこともないか)

夢野「なんでもない。本題に入るぞ」

夢野「次のマジカルショーは屋外でやる。風船にガスを入れて入れて入れまくるのじゃ!」

東条「了解」

夢野「……やってやろうではないか。利用されたままでは終われないからのう!」

東条「利用してごめんなさい……」

夢野「違う! 東条ではなくモノクマに言ったのじゃ! やるぞ! まずは材料を倉庫に調達じゃ!」

東条「ええ」



469:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 18:17:23.92 ID:tv0/5s9u0

校舎内

巌窟王「ふむ。卒業アルバムはまず『どんな場所で学びを受けたか』を知るために校舎を撮影するものなのか」

巌窟王「ではひとまず校舎内を撮影して……」

ズルウッ ゴチンッ

王馬「にしし! いやあ、巌窟王ちゃん! 言い忘れてたけどそこ、シャンプーをたまたまぶちまけちゃったから足元注意だよ!」

王馬「いやあ! 遅かったかー! 言うの遅れてごめんね巌窟王ちゃん!」

王馬「巌窟王ちゃん? がんくつ……」

王馬「……死んでる……」

※別に死んでなかった



470:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 18:26:09.73 ID:tv0/5s9u0

数十分後

巌窟王「……ハッ! また燃やされたいか王馬ァ!」ガバァッ

巌窟王「くっ。逃げたか……相変わらず逃げ足の速いヤツめ」

巌窟王「カメラは無事だったな」

巌窟王「……む? 外で何かやっているか?」




裏庭

最原「……遅いな。アンジーさん」

アンジー「やっはー! 終一! 遅くなってごめんねー!」スタスタ

最原「あ! アンジーさん!」

アンジー「いやぁー。おめかししてたら遅くなっちゃってー!」

最原(おめかし? なんで? 確かにいつもより気持ち綺麗だけど)

最原「ええっと。実はアンジーさんに頼みたいことがあるんだけど」

アンジー「……内容が見事一緒だったらビンゴー! だねー!」

最原「え?」



472:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 19:35:13.47 ID:tv0/5s9u0

夢野「ゼハー……ゼハー!」ヒューヒュー

東条「喉から酷い音がしてるわよ。やっぱり私がそのボンベを……」

夢野「よい! この程度軽い軽い!」ヒューヒュー

夢野「ウチを誰だと思っておる……超高校級の魔法使い、夢野秘密子じゃぞお!」

夢野「この程度の重みで音を上げていたら巌窟王に笑われてしまうわい!」

東条「……」

夢野「安心しろ東条。ウチらは仲間じゃろう」

夢野「仲間なんじゃから……ウチらのことを信じてもいい!」

夢野「一度や二度の裏切り程度、なんてことない!」

夢野「いざとなったら巌窟王が助けてくれる!」

夢野「ウチらがそれに応える方法は、信じることじゃ」

夢野「手がボロボロで……体もボロボロで……心もボロボロで……」

夢野「これじゃあ助けてもらった価値なんてないって思っておるのなら大間違いじゃ!」

東条「……!」

夢野「助けられたからには無価値ではいられないなんて、とんだ誤解じゃ」

夢野「価値があるから助けたんじゃろッ! だから……ごめんなさいとか、言わんでいい!」

夢野「笑ってほしいんじゃ! みんな! お主に! だから、ウチは……!」フラッ

夢野「うわわっ」

東条「夢野さん!」


ガシッ


巌窟王「……これを運べばいいのか?」

夢野「んあ……巌窟王」

巌窟王「その体格でよくやる。興が乗ったぞ、夢野」ニヤァ



473:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 19:47:44.60 ID:tv0/5s9u0

巌窟王「ヘリウムガスのボンベか? こんなものを何に……」

夢野「……ま。後のお楽しみじゃ」

夢野「まったく美味しいところばっかり持っていく天才じゃのー、お主」

巌窟王「クハハ」

東条「夢野さん」

夢野「なんじゃ?」

東条「……ありがとう」

夢野「……礼なら巌窟王に言えばよいのではないか? 結局ボンベ運べなかったしのう」

東条「それもだけど、あの……」

夢野「さっさと行くぞ。今日の夜までには完成させたい」スタスタ

東条「……そうね。そうしましょう」フッ

巌窟王「笑ったな?」ニヤァ

東条「!」

巌窟王「……アイツの魔法とやらもバカにできないのかもな」

東条「……憧れている人が隣にいるから頑張れるのでしょう?」

巌窟王「誰のことだ?」

東条(……とぼけてるんじゃなくて本気でわかってないわね、これ)



475:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 21:24:26.23 ID:tv0/5s9u0

裏庭

最原「ということで、アンジーさんに血液を提供してもらいたいっていうのが僕の頼みなんだけど」

アンジー「ふーん。蘭太郎の動機ビデオと、美兎の研究のために、ねー」

アンジー「……ちょっとそれは無理かなー」

最原「え」

アンジー「いや、多分ね。神様がこの場にいたら『いい機会だ、受けるがいい』って言うと思うんだけど」

アンジー「アンジーは……やめた方がいいと思うなー」

最原「あれ」

最原(基本的に巌窟王さんの言うことには逆らわないアンジーさんが、珍しい)

アンジー「美兎が本当に欲しいのはアンジーのデータじゃなくってー……」

アンジー「ううん。これ以上は言わない方がいいや」

最原「……?」



476:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/21(土) 21:28:00.06 ID:tv0/5s9u0

アンジー「あ、でもでもー! こっちの要求を聞いてくれるのなら考えてあげてもいいよー!」

最原「ん」

最原(譲歩案を出してくれるのは助かるな。天海くんの正体を知るためには、ある程度無茶な条件でも飲んでもいいし)

最原(コロシアイを強要されてる状況下だ。命より軽いものなら……)

アンジー「結婚してー」

最原「……」




最原「は?」



480:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 08:44:27.85 ID:nwUELrJE0

巌窟王「……理解に苦しむな。またやるのか。マジックショー」

夢野「マジカルショーじゃ! ……とかお主に言ってもなんか虚しいが……」

夢野「細かいことはよいか。今度は屋外で、この大量の風船を使ったショーをするんじゃ!」

巌窟王「アンジーはどうした? 今回は手伝っていないのか」

東条「捕まえようとしたのだけど、断られてしまったの。何か用事があったようね」

巌窟王「ふむ。今日は妙に落ち着かない様子だったからな。ヤツもヤツで何か考えているのだろう」

巌窟王「まあいい。我が仮初のマスターの理念に従い、お前たちが望むのなら手を貸してやらないこともないが?」

夢野「お主本当にアンジーのことが大好きじゃのう」

巌窟王「俺が? クハハ、まさか!」

巌窟王「俺のマスターは過去現在未来にただ一人。あれとはお互いの利害の一致に伴った薄っぺらな関係しかない」

巌窟王「この関係に抱く想いも、同様に薄っぺらなものだとも」

巌窟王「大体アレは共に歩むにしては幼過ぎる。雛鳥のように後ろをヨチヨチ歩きでついてくる程度が関の山だろうよ」

東条「その割には甘やかしているように見えるけど」

巌窟王「サーヴァントだからな!」ギンッ!



481:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 08:45:36.27 ID:nwUELrJE0

百田「まあ、確かにアンジーに対して特別扱いはしてねぇだろうな」

百田「テメェは俺たちのことみんなが大好きなんだもんな! わかってるぜ!」ニカッ

巌窟王「……気持ちの悪いことを言うな」

夢野「百田。お主どこから湧いて出てきた」

百田「終一を探してたら派手な風船が大量に見えたからよ。ちょっと寄ってみただけだ」

夢野「ついでじゃ。百田も手伝うがよい。風船がもっと大量に必要だから……って、あ!」

フワッ

夢野「あー。一個無駄にしてしまったわい」

巌窟王「クハハ! 任せろ! あの程度の高さ、造作もない!」

ドンッ!

東条「……跳んだわね」

夢野「あ、キャッチした」

百田「おお。無駄に一回転して校舎の屋根に着地したな」



482:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 08:46:28.98 ID:nwUELrJE0

巌窟王「クハハハハハ! どうだ!」

百田「無駄にテンション上げてるなー」

夢野「造作もないって自分で言ってたのにのう」

東条「巌窟王さん。そこ結構な急斜面になってるから、気を付けて降りてね」

巌窟王「任せろ! 昇ったのだから降りることなぞ更に容易い――」

巌窟王「む?」

巌窟王(裏庭に誰かいるな……あれはアンジーと最原か?)

巌窟王(一体何をして……)

アンジー「終一ー! アンジーのお婿さんになってー!」キラキラキラ

最原「ええっ!?」

巌窟王「!?!?」ガビーンッ!


ズルゥッ


百田「足を滑らせたーーーッ!?」ガーンッ!

夢野「言わんこっちゃない!」



483:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 08:51:38.75 ID:nwUELrJE0

ベシャッ

最原(ん? なにかがどこかで落ちたような音が……)

最原(それどころじゃない!)

最原「ど、どういうこと!? それが交換条件!? 冗談だよね!?」

アンジー「やだなー。こんな冗談言わないよー。仮にそうだとしたら悪趣味すぎるしー」

最原(確かにこれが嘘だったら下手したらトラウマものだよな……)

アンジー「なんならここで証明できるけどー?」

最原「え」

アンジー「……アンジーの言葉が嘘じゃないって」

アンジー「『どこまでやれば』本当だと認めてくれる?」

アンジー「……なんでもするけど?」

最原「」

最原(身の危険を感じる……!)



485:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:16:41.44 ID:nwUELrJE0

最原「なんで僕なの? 僕なんかしたっけ?」

アンジー「学級裁判で神様とは違う答えを出した」

アンジー「それ以前にもあったけど、このときピンと来たんだよー!」

アンジー「二人が揃えば無敵だってさー!」キラキラキラ

最原「いや、僕は……」

最原(そんなに大したことはしていない。絶対に)

アンジー「神様は間違えない。神様は強い。神様は救ってくれる」

アンジー「でもね。できないことはあるよ。だからアンジーたちがいるの」

アンジー「あとアンジー一人にもできないことはあるし……」

アンジー「だから、ね? 終一がいれば安心なんだー」

最原「要は勧誘じゃ……いや、そうだよ! これ勧誘だよ!」

最原「別に結婚する必要はないよね!?」

アンジー「あるよー」ダキッ

最原(問答無用で抱き着かれた!?)ガビーンッ!



486:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:26:37.74 ID:nwUELrJE0

アンジー「……神様はすぐに帰っちゃうから」

最原「……」

最原「まさかアンジーさん、寂しいの?」

アンジー「別にー。真の絆は別れた程度で消えたりしないしねー」

アンジー「でも一つくらい手元に残る絆があってもいいかなーって」

最原「そういう理由ならお断りだ」

アンジー「!」

最原「……僕は巌窟王さんの代わりになれないよ」

アンジー「……」

アンジー「ふぅん……」ニヤァ

スッ

最原(離れた……)

アンジー「……」


スタスタスタ


最原(そして俯いたまま、どこかに行ってしまった……)

最原(……言い方がキツすぎたかな。でもこれ以上どう言えば……)



487:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:33:56.66 ID:nwUELrJE0

アンジー(わざとだよ。わざとアンジーは自分でも『これはないな』って告白をしたんだよ)

アンジー(……ああ。なんか……いいなぁ。終一はいい。凄く)

アンジー(心臓がドクドク言ってる。顔から火が出そう。体がとってもふわふわしてる)

アンジー(もちろん、あの打算的な言葉に嘘はない。ないけどー……)

アンジー「……」

アンジー(神様がアンジーに願わない理由は、アンジーになにか悪いことがあるから)

アンジー(終一は悪いことを見つける天才)

アンジー(そしてきっと……神様はアンジーが『終一が欲しい』って言ったら相談に乗ってくれる。優しいから)

アンジー(……この関係性はきっと運命だよ。だからー)

アンジー「諦めるとは言ってないよー。一言も。一っ言も、ねー……」ニヤァ



488:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:41:26.44 ID:nwUELrJE0

巌窟王サイド

巌窟王「」チーン

夢野「たたたたた大変じゃあ! 巌窟王! 死ぬな巌窟王おおおおおお!」

百田「東条! 俺たちはどうしたらいい!?」

東条「夢野さんは倉庫から布製の担架を持ってきて」

夢野「わかっ……!」

夢野「いや担架!? 布製の!? それって運ぶ人間が二人必要なヤツじゃろ!?」

東条「二人いるわよ? 私と百田くん」

百田「東条は除外に決まってんだろ!」

夢野「ウチは……ウチは……!」

夢野「見せてやるわい! 魔法のパゥワーをなぁ!」ギンッ

百田「ヤケクソになってんじゃねーよ! 無理なら無理って言っていいかんな!?」

夢野「うわああああああああん! 担架ーーー!」ダッ

百田「よし。アイツは行ったな……俺は他の人手を探して来る! 安心しろ! アテはある!」

東条「よろしくお願いするわね」

東条「さて。私は簡易的に応急処置を……この包帯で……」マキマキ

包帯ぐるぐる巻き王「」チーン

東条(ミイラ男みたいになってしまったわ……)



489:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:46:20.91 ID:nwUELrJE0

超高校級の合気道家の研究教室

百田「ハルマキ! 茶柱! いるかーーー! 大変だ! 巌窟王が」

茶柱「チェスト竹●房ォォーーーイッ!」ブンッ

百田「え。茶柱今何を投げ……」


ガンッ


百田(薄れゆく意識の中、俺は思った……)

百田(そういえばネオ合気道って木刀までならOKって言ってたな)バタリッ

百田「」チーン

春川「はあ……はあ……いや木刀をぶん回すならともかくとして投げるってどうなの……」ゼェゼェ

茶柱「はあ……はあ……春川さんが意外にできる人だから仕方なくって……!」ゼェゼェ

百田「気絶している場合じゃねぇ!」ガバリッ



490:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 14:51:01.03 ID:nwUELrJE0

百田「おい! 事情は後回しにするが人手が必要だ! どっちか俺と一緒に来い!」

茶柱「今いいところです! 決着が付くまであと幾分かかかるので、そこで見学してた真宮寺さんに頼んでください!」

百田「おお! ジャストタイミングだな! 真宮――」

真宮寺「」チーン

百田「死んでるーーーッ!?」ガビーンッ

春川「なんかいつの間にか死んでた」

百田「明らかにテメェらの巻き添え食らったんだろ! 起きろ真宮寺ィ!」

真宮寺「うう……世界は危ないものでいっぱい……」

百田「違う! ここだけが特別に危険なだけだ! 起きろォ!」ガクガク



結局巌窟王の搬送は時間がかかった。大事には至らなかった



492:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 16:16:34.81 ID:nwUELrJE0

東条の私室

包帯王「……ハッ! 今、何時だ?」ガバァッ

東条「起きてすぐの一言がそれなの?」

包帯王「……夢野のマジッ……」

包帯王「マジカルショー。見逃すわけにはいかないだろう?」

包帯王「……」

包帯王「ところで何故俺はこんなところにいる?」

包帯王「確か夢野の風船を取ったあと名状しがたい何かを見たような……?」

東条「何を見たのかは知らないけど、その後あなた屋根から落ちたのよ」

包帯王「……」

包帯王(……忘れたフリをしただけだ。我が身の忘却補正が恨めしい)



493:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 16:25:44.75 ID:nwUELrJE0

夜 屋外

赤松「あ! 来たよ、巌窟王さん!」

包帯王「来ないと思ったか?」ギンッ

夢野「前回は来なかったじゃろ、お主」

東条「……」

夢野「……何度も言うが、気にするな東条。アレはモノクマのせいじゃからな!」

夢野「気にしているヤツなぞ……」

王馬「……」ニヤニヤ

包帯王(夢野。『誰もいないぞ』と言ったらアイツが絶対に『えー! 俺は気にしてるよー!』と傷口を開きにかかるぞ)ヒソヒソ

夢野(今気づいたわい)

夢野「……王馬くらいしかおらんわッ!」

王馬「!?」ガビーンッ!

夢野「……かっかっか」

王馬「……気にしてる、わけ、ない、だろ……」ヒクヒクッ

獄原「王馬くん。笑顔が物凄く引きつってるよ。大丈夫?」

王馬「先読みされたのがめっちゃ不満……」ガタガタ

包帯王「クハハハハハハ!」

夢野「かーっかっかっかっかっか!」



494:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 16:36:42.94 ID:nwUELrJE0

入間「ところでテメェなんで包帯グルグル巻きなんだよ。コンドームのコスプレか?」

包帯王「……?」

包帯王「……!」

バサッ

巌窟王「……」

最原「気付いてなかったんだ……」

巌窟王「他に気になることがあったから、な」

最原「え? 何それ?」

巌窟王「……」

巌窟王「言う義理があるか?」ギリィッッッ

最原「!?」ビクゥッ!



495:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 16:43:20.18 ID:nwUELrJE0

アンジー「にゃははー! 今度は全員揃ってるねー!」

真宮寺「ククク。ま、前とは違うからネ。僕たちは」

白銀「そうだね! 巌窟王さんのお陰で、段々一つに纏まってきたって感じがするよね!」

星「……ふっ。悪くはねー、か」

天海「で? 今度はどんな魔法を見せてくれるんすか? 夢野さん」

夢野「今度? 違う……ウチは本当の魔法なぞ、まだ一度も見せたことはないぞ?」

夢野「全てが終わったとき、お主はこういうじゃろう」

夢野「『産まれてこなきゃよかったっす』となァ!」ギンッ

天海「笑顔は!?」ガビーンッ!

夢野「始めるぞ!」



496:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 16:56:38.78 ID:nwUELrJE0

夢野「じゃあひとまず手始めに……」ゴソゴソッ

最原(ん。帽子の中を漁り始めた)

ズルウッ

夢野「モノクマから貸してもらった倉庫のアイテムカタログじゃ」デンッ

最原(既にこれがマジックだな……凄い分厚い)

ズルゥッ

夢野「人数分あるぞ?」デンッデンッデンッ

最原(もう既に凄い!)

春川「何コイツ。マジシャン?」

茶柱「夢野さんは超高校級のマジシャンなんですよ!」

夢野「魔法使いじゃ魔法使い!」プンプンッ!



497:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 17:08:59.57 ID:nwUELrJE0

夢野「じゃあまず、巌窟王! 欲しいものがあったら言えい! そのカタログの中からの!」

巌窟王「コーヒーミルがあるな」

夢野「……目ん玉飛び出させないよう気を付けるんじゃぞー?」ギュムギュムッ


パァンッ


巌窟王「!」

最原(割れた風船の中からコーヒーミルが! カタログと同じヤツ!)

夢野「プレゼントフォー・ユー! じゃ!」ニコニコ

巌窟王「……」

巌窟王「フッ……悪くない」

夢野「ここまでやれば、後に何が起こるのかはわかるじゃろう?」

茶柱「夢野さぁん!」

春川「この『たのしいどうぶつえん』って本が欲しいんだけど」

夢野「あ。お主ら二人は強制的に医療グッズ限定じゃぞ」

茶柱&春川「」

夢野「ボロッボロじゃからな」

茶柱&春川「」ズーン

最原「……喧嘩でもした?」

百田「そういうわけじゃねーんだが……」



498:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 17:18:58.88 ID:nwUELrJE0

夢野「さあ。まだ風船は大量にあるぞ! カタログに書いてあるものなら何でも出してやろう!」

夢野「これがウチの! 魔法じゃぞ!」

巌窟王「……」ニヤリ

最原(滅茶苦茶上機嫌だ……)

キーボ「あ、あの! じゃあボクは……」

パァンッ

夢野「オイルをやろう」

キーボ「……」

最原(滅茶苦茶複雑そうだ……ていうか返事を聞く前にやってるし)

夢野「さあ! どんどん行くぞ!」



499:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 17:25:25.92 ID:nwUELrJE0

最原(その後も夢野さんの魔法は続いた)

最原(前みたいな悲劇は特にない。ただ夢野さんが生徒の要望に応えてどんどん風船を割って、中からプレゼントを出して配るだけ)

最原(……平和だった。こんな状況でも、確かに)

真宮寺「東条さん。昨日とは別人みたいになってるネ」

東条「!」

真宮寺「……ククク。顔が晴れやかになってるヨ。僕にはわかる」

東条「ええ。夢野さんのお陰よ」ニコリ

真宮寺「……」

夢野「かーっかっかっか! さあ! 風船は残り僅かじゃぞう!」ニコニコ





真宮寺「……完璧、だネ」

東条「どうかした?」

真宮寺「なんでもないヨ」



501:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 20:55:50.71 ID:nwUELrJE0

巌窟王「……」



巌窟王の回想


ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ「さあ! プレゼントをどんどん配りますよー!」

JDASL「え? なんですかししょー。あのなんか黒炎出してる怖い顔のおじさんにもあげてきなさい……?」

JDASL「え。あの正気ですか。サンタって子供にしかプレゼントは……いや、いいですけど……」

JDASL「あ、あの……プレゼント……さっき王妃様に貰ったとっておきのマカロンなんですけど……」

JDASL「……うう……後で私が食べようと思ってたのに……え? いい? くれてやる?」

JDASL「貰ったものをどうしようが俺の自由だろうって……? ば、バカにしないでください!」

JDASL「それはそれとして論理は完璧ですから貰いますけどね! 返しませんからね! いいんですね!?」

JDASL「や、やったぁ……」


回想終了


巌窟王「……」プッ

最原「何か思い出し笑いしてる……」



502:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 20:59:37.42 ID:nwUELrJE0

夢野「さて。風船も残り一個じゃのう」

夢野「……今までの学園生活の立役者である巌窟王にやろうかの?」

巌窟王「辞退しよう。それは我がマスターのアンジーに渡せ」

夢野「了解じゃあ。ではアンジー。他に欲しいものはあるか? 既に結構渡しておるが」

アンジー「うーんとねー……」

アンジー「終一!」

夢野「そうかー。最原かー。よし、それじゃあ」

夢野「は?」


パァンッ


最原「……」

巌窟王「……」






一同「……」

一同「……ゑ?」



503:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 21:04:17.78 ID:nwUELrJE0

最原(最後の風船は割れた。だが中身が現れることはなかった)

夢野「それって……どういう意味で?」

アンジー「お婿さんに欲しいなー。終一が」

赤松「……」

巌窟王「……」

最原(そして……みんなの視線がこちらに向く……)

最原(僕はいつの間にか冷や汗でビッショリで……いつの間に流れていたのかまったくわからなくって……)

巌窟王「最原」

最原(その声を聞いた途端に震えが止まらなくなった)

最原(もう熱いのか寒いのかわからない。熱砂の砂漠のど真ん中のように熱いし、冬の湖の中のように冷たい気もする)

ポンッ

巌窟王「……返事は?」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「さっき伝えました……」

巌窟王「なんと?」

最原「断ったんです……」

最原(涙も止まらない。後ろから肩に手を置かれているけど振り向けない)

最原(ここが地獄かな?)



504:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 21:10:16.15 ID:nwUELrJE0

最原(おかしいなあ。さっきまで僕たちは……)

最原(束の間の平和を甘受してたはずなのになぁ……)

巌窟王「……」

巌窟王「……そうか……」

巌窟王「よし。燃やすぞ?」

最原「」

赤松「やめてーーー! お願い、巌窟王さん落ち着いてーーー!」ガビーンッ!

百田「アンジー! 冗談だよな!? 冗談なんだろ!?」

アンジー「冗談じゃないよー! 本当に終一と結婚したいんだってー!」キラキラキラ

キーボ「わあ。素敵な笑顔」

入間「ダサイ原にとっては悪魔の笑顔だけどな……」

春川「えーと、なに? 状況がよくわからないけど……」

春川「おめでとう?」パチパチパチ

王馬「おめでとー!」パチパチパチ

アマデウス斎藤「静まりたまえー! 静まりたまえー!」

獄原「その仮面まだ持ってたの!?」



505:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/22(日) 21:15:28.05 ID:nwUELrJE0

最原(こうして夢野さんのマジカルショーは混沌の内に終わった)

最原(アンジーさんの爆弾発言による余波を残して……)

最原(後に何が起こったのかは覚えていない)

最原(あまりにも……大騒ぎしすぎて疲れたので、バッタリ気絶するように眠ったこと以外は覚えていない……)

巌窟王「我が霊基を犠牲にしてでも、この学園を破壊する……最原ごと……な」

白銀「もうやめて巌窟王さん! 最原くんの精神的ライフポイントはゼロよ!」

巌窟王「はなせ!」

夢野「じゃあ後片付けは明日に回して今日はもう解散じゃあ。めんどい」スタスタ

真宮寺「真っ先に逃げちゃったネ」

東条「……ふふっ……」



510:ソロモンは特に関係ない ◆SxyAboWqdc 2017/10/23(月) 18:53:30.77 ID:yOGFXvaj0

翌日 食堂

赤松「で。えーと。昨日は色々あったけど」

アンジー「終一ぃー」スリスリ

最原「……」ズーン

赤松「されるがままに抱き着かれてるね。最原くん……」

百田「おい。こんなところ巌窟王に見られたら、またアイツ怒るぞ」

アンジー「あ。大丈夫。今日の神様は部屋で不貞寝してるから」

夢野「メンタル弱ァ……」

アンジー「少し経ったらモノクマにカウンセリング頼んでるから部屋に来ないでくれって」

星「本当にショックだったんだな……」

東条「まあ……彼は夜長さんのことを相当可愛がっていたから当然と言えば当然かしら」

王馬「それを横からかっさらうとか、最原ちゃんも相当命知らずだよねー!」

王馬「……」

王馬「本当に死にたいの?」

最原「ガチトーンで問いかけるのやめて……!」ガタガタ



511:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/23(月) 18:57:28.48 ID:yOGFXvaj0

最原「ええっと、アンジーさん。僕はそろそろ……」

アンジー「どこ行くのー? アンジーもついていくよー!」キラキラキラ

最原「あの……本当に迷惑じゃないっていうか、迷惑じゃないんだけど僕たちは離れてた方がいいっていうか……」シドロモドロ

最原「いややっぱり迷惑なので近づかないでくれると嬉しいなぁ!」

真宮寺「もう形振り構ってられないんだネ」

春川「百田。私、思い出した。ああいうのをスケコマシっていうんでしょ?」

百田「あんまり思い出しても嬉しくない知識だな……」

茶柱「……」

最原「……」

茶柱「……ハッ……」スタスタスタ

最原(めっちゃ見下した笑み浮かべてどこか行っちゃった……)



512:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/23(月) 19:02:37.84 ID:yOGFXvaj0

数十分後 屋外

夢野「と、いうわけで! 後回しにしたマジカルショーの片付けを開始する!」

夢野「が! その前に!」

最原「その前に?」

夢野「……ウチの研究教室から手品用の鳩が一匹いなくなったんじゃ」

夢野「最原。片手間に探してほしいんじゃが」

最原「う、うん。任せてよ」

最原(鳩……?)



同時刻 アンジーの私室


モノクマ「どんな気分ですか?」

巌窟王「シャトーディフにとらえられた数年後並みに頭が重い……」

巌窟王「未来に希望が持てない……これが現実なのか……」

モノクマ「明日はアンジーさんも一緒にカウンセリングした方がいいかもしれないですねー」

巌窟王「段階をいくつか吹っ飛ばしてるな! 真面目にやれ!」

モノクマ「はぁい」



514:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/23(月) 20:24:54.57 ID:yOGFXvaj0

中庭

最原「……鳩……鳩か……安請け合いしちゃったけどそうそう簡単に見つかるわけないよな」

最原「というか既に外に逃げちゃった可能性もあるし……」


ドガシャーンッ!


入間「あああんじゃこりゃあああああああああッ!」

最原「!?」ビクゥッ

最原(今の声……研究教室の方か?)

バターンッ

入間「ち、ちくしょう! やりやがったな! やぁりやがったな、ちくしょーーー!」

入間「……ハッ! ダサイ原! テメェの仕業かァ!? ああん!?」

最原「え? 何が?」

入間「とぼけてんじゃねぇ! 俺様の研究教室から巌窟王と同じ色の……!」

入間「……な、なんでもねぇ……!」

入間「……クソッ……クソッ……ふざけやがって……! 燃やされる前に取り返さねぇと」ブツブツ

最原「……?」

最原(不満気な声を漏らしながら、入間さんは自分の研究教室へと戻って行った)



515:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/23(月) 20:28:13.33 ID:yOGFXvaj0

図書室

天海「さーてと。それじゃあ俺はいつも通り、魔術に関する書籍の再分析を……」

天海「……ん……?」

天海「あれ。これは……そんな!?」

天海「ページがいくつか破り取られてる!? なんで!?」ガビーンッ



中庭

最原(そう。この時点で、わかってもよかった)

最原(一度狂った歯車は、元には戻らないんだってことを……)

最原(……わかってもよかったんだ)



520:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/24(火) 20:52:17.73 ID:4wi8FiL30

王馬「完成! 悪の総統印の落とし穴ー!」

獄原「ええっ!? 土を掘ってみれば虫さんがいるかもって王馬くんが言ってたから掘ったんだけど!?」

王馬「ああ、ごめんねゴン太。今のは嘘なんだ。冗談だよ」

獄原「冗談だった! よかった!」

白銀「王馬くーん。こんなところに呼び出してなんのつもりー?」スタスタ

獄原「あれ。白銀さんも呼んでたの?」

王馬「ちょっと用事があって……ああっ! 白銀ちゃん! あそこに!」

白銀「え?」

王馬「あそこに野生のマフィア梶●がーーー!」ビシィッ

白銀「マフィアさーーーん! 羽海野チカ先生のサインくださーい!」ダッ


ズボォッ


白銀「きゃー!」

王馬「……マフィアのサイン貰いなよ……まあいいや」

王馬「悪は滅びた。このまま放置して帰るぞ、ゴン太!」

獄原「……」

王馬「ん? どうした木偶の坊?」

獄原「う……」


バタリッ


王馬「……は? ゴン太?」



521:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/24(火) 21:11:52.21 ID:4wi8FiL30

三十分後 獄原の私室

東条「過労ね」

白銀「か、過労!? なんで!? ゴン太くんがそういうのと一番無縁そうなのに!?」

獄原「う、うう……最近は巌窟王さんに憧れて、トレーニングしてたからかな……」

獄原「寝る前に腕立て伏せ一万回腹筋一万回スクワット一万回背筋一万回インナーマッスル強化トレーニングもろもろ多数とか……」

王馬「わかっていたことだけどやっぱりお前、バカだろ」

獄原「ご、ごめん……」

白銀「って言ってる割には部屋まで運んだり東条さん呼んだり……男のツンデレ?」

王馬「やだなー。俺が優しいからだよ。もう白銀ちゃんにはわかってたことだと思ったんだけどなー」

白銀「え。やさしさ? どの口が?」

王馬「ショック!」



522:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/24(火) 21:18:26.38 ID:4wi8FiL30

夕方 食堂

鳩「くるっぽー」

夢野「おお! ハトムギ! 帰ってきたか!」

最原「ええっと……近くの木に留まってたからどうにか連れてきたけど」

最原「ハトムギ……」

夢野「よくやったぞ最原。後で撫でてくれてもよいぞ?」

最原(僕が撫でる側かよ)

最原「……巌窟王さんが食堂にいないのはともかくとして」

最原「他にもアンジーさんやゴン太くんがいないな」

東条「獄原くんは……しばらく食堂には来れないと思うわ」

王馬「アイツは過労でぶっ倒れてるからね」

百田「なにぃ!?」


ヤイノヤイノ


最原「……」

最原(……なんだろう。特に何が起こったってわけじゃないんだけど……)

最原(イヤな予感がする……)



523:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/24(火) 21:22:32.53 ID:4wi8FiL30

アンジーの研究教室

ボオッ


巌窟王「これは……!」

アンジー「どう? これがアンジーの……神様に捧げる、本気だよ……」ニヤッ

巌窟王「……なんてことを……アンジー……!」

アンジー「罰は受ける。だから神様、どうか……」

アンジー「アンジーの話を、聞いて?」



524:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/24(火) 21:25:01.15 ID:4wi8FiL30

最原(……水面下で何が起こっているのか、なんて僕たちに知る由はなく)

最原(知ることができたとして、何を変えられたわけでもない)

最原(次の日の夜。僕たちは直面しなければならなくなる)

最原(……多くの人間を巻き込んだ『最悪』の事件に)



528:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 18:31:01.27 ID:g+XyUiG70

翌朝

最原「……」

最原(体が……重い)

最原(何故だろう。昨日からイヤな予感が止まらない)

最原(……周期的にはそろそろモノクマの動機の提示があってもおかしくないころだけど)

最原(……警戒はしておこう。とにかく、朝ご飯を)ガチャリンコ



巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「」

巌窟王「……すぐに済む。時間は取らせない」

最原(瞬殺的な意味で?)



529:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 18:34:09.21 ID:g+XyUiG70

巌窟王「……」ポンッ

最原「え」

最原(肩に手を置かれた……そこから炭化させられるのかなー。急所を燃やされてサクッと逝きたいんだけど)

巌窟王「……」

巌窟王「アンジーを……頼んだ……」

最原「え」

巌窟王「不本意だ。不本意だが……!」

巌窟王「マスターの意志を曲げる矜持を俺は持たない。故に、これ以上は何も言うことはない」

巌窟王「……本当に……不本意だ……」スタスタ

最原「いやそんな悲しそうな顔されても……」

最原「待って。行かないで。あの!」

最原「だから僕、断ったんだってーーーッ!」ガビーンッ!



533:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 19:34:12.24 ID:g+XyUiG70

食堂

最原「……あの……アンジーさん……」

アンジー「なぁに、終一ー? なんでも言ってー! 未来の夫婦なんだからねー!」キラキラキラ

最原「くっつくのをやめてください……」

アンジー「それはヤダ」

赤松(ガチトーンだ……)

最原「だから僕は巌窟王さんの件が仮になかったとしてもアンジーさんとは付き合えないんだって……」

アンジー「終一ー」スリスリ

最原「主従揃って話を聞かないなぁ、もう!」

王馬「巌窟王ちゃんは? どうしたの?」

百田「……さっき学園の屋根で寂しそうに空を見上げているのを見たぞ……」

春川「凄い遠い目をしてたね」

天海「……ちょっと様子見てくるっす。相談したいこともあるので」スタスタ



534:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 19:45:35.79 ID:g+XyUiG70

白銀「でも凄いよねアンジーさん。この前までは最原くんからアンジーさんを殺してでも奪い取る勢いだったのに」

最原「元からもらってない……!」ガタガタ

白銀「どうやって説得したの?」

アンジー「……秘密ー!」

アンジー「真面目な話、ちょっと言えないような手段だしさー……」

アンジー「神様から本気で心配されちゃう始末だったし……」

アンジー「……だから、ね? アンジーの犠牲のためにも、お願い。お婿さんになってー!」キラキラキラ

最原「知ったことじゃないッ!」

真宮寺「最原くんも最原くんで、なんか不自然なくらい拒絶してるよネ?」

真宮寺「そんなに仲悪かったっけ? あるいは他に好きな人がいるとか?」

最原「いや、それは……!」

最原(アンジーさんの告白の理由が死ぬほど不誠実だったからなんだけど……)

最原(……万が一巌窟王さんの耳に入ったらマズイよな。代わりがいるだなんて思われたくないだろうし)

最原「……」

赤松「え? 本当に好きな人がいるの?」

最原「いないけどさ!」



535:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 19:55:36.48 ID:g+XyUiG70

入間「……くそ……見つからねぇ……ちくしょう……善行詰んだ俺様になんて仕打ちを……」ブツブツ

鳩「くるっぽー」

夢野「なんか調子悪いんじゃよなー。変なものでもついばんだかー?」

東条「吐き出させてみせましょうか? いっそのこと出るまで待つのも手だとは思うのだけど」

王馬「……で。ゴン太はどうしたんだっけ?」

星「過労でぶっ倒れてるって話だったろうが」

最原「……」

最原(……やっぱりいつも通り平和、だよな。気のせいだったのかな)

アンジー「にゃははー!」

最原「本当に離れてよ……!」

茶柱「……」

茶柱「……フッ……」スタスタ

最原(アンニュイな笑み浮かべてどっか行っちゃったよ……)



536:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/25(水) 19:59:28.63 ID:g+XyUiG70

屋外

天海「それでーーー! よく見てみたら破り取られたページっていうのがー!」キィィィン!

天海「目次を見てみる限り『令呪の移譲』についての項目でー!」ポヒュンポヒューン!

天海「なくなったページがページっすからー! 凄いイヤな予感がするんすよー!」ポヒュキィィンッ!

巌窟王「……」ボーッ

天海「ダメだ。聞いてるのか聞いてないのか全然わかんない……」

モノタロウ「ねー。そろそろエグイサル返してー。お父ちゃんから他の拡声装置を何かしら借りてくるからさー」

天海「ごめんなさいもうちょっと……」



540:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 19:33:56.54 ID:VeeOGTSw0

百田「さてと。色々ゴタゴタがあったが、今日こそは終一を見つけて茶柱のところにけしかけてやるぜ」

百田「終一ー! どこだー!」

赤松「さっきアンジーさんから逃げて全力疾走してたけど……」

百田「アイツ本当に面倒ごとに巻き込まれる天才だな……」

アンジー「終一ー。どこー?」キョロキョロ



超高校級のメイドの研究教室

最原「……しばらくクローゼットの中に隠れていよう」



541:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 19:40:27.27 ID:VeeOGTSw0

数時間後

トントントントン

最原「……ハッ! しまった、寝ちゃってた」

最原「ん……包丁の音?」

最原(……ちょっとだけクローゼットを開けて覗いてみよう)

茶柱「食材を切るときは猫の手……食材を切るときは猫の手……!」

東条「ふふ。そう。上手よ、茶柱さん」

最原(……茶柱さんが東条さんと料理してる……)

東条「ごめんなさい。手が無事だったなら手伝わせたりはしなかったのに」

茶柱「いいんですよ! むしろ転子は東条さんの役に立てて嬉しいくらいです!」

最原「……」



542:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 19:52:30.11 ID:VeeOGTSw0

茶柱「……でもゴン太さんの過労を治すためとは言え、これから深夜までアク取りでしょう?」

茶柱「大丈夫ですか? なんなら転子も手伝いますが……」

東条「いいのよ。仕事ですもの。なにより私がやりたいの」

茶柱「でも……」

東条「……みんな優しすぎるわね。本当に」

東条「大丈夫。自分を犠牲にしすぎるようなことは、みんなのためにもしないわ」

茶柱「……ん……ちょっとは立ち直ったようですね」

茶柱「よかった。でも、転子は結局なにもしてあげられませんでした」

茶柱「……それが心残りです」

東条「その言葉だけで充分すぎるわ」

東条「でもそうね、もしも私のために何かをしたいというのなら、もう一つ」

茶柱「なんですか?」

東条「……最原くんのことを、あんまりイジメすぎないであげて?」

茶柱「ッ!」

最原(……別にいいのに。茶柱さんは僕を責める資格がある)

最原(というより、彼女みたいな主張を持っている人間がいないと、逆にこの空間が狂っていくだけだ)

最原(……許してくれなんて言えないしね。図々しすぎて)



543:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 20:01:02.14 ID:VeeOGTSw0

東条「思うに、私だけじゃないのよ。自分を傷つけることで罪悪感を軽くしようってもがいてる人は」

東条「最原くんは、茶柱さんに憎まれることを当然のことだって思っているんでしょうけど」

東条「茶柱さん。あなたも……」

茶柱「……許したいと思っているのに、きっかけがないからできない」

最原「!」

茶柱「東条さんにはかないませんね」

東条「メイドですもの。このくらいは当然だわ」

茶柱「……そうですね。東条さんも、もう大丈夫そうです」

茶柱「あの男死のことは心底気に食わないのですが、東条さんがそう言うのであれば」

茶柱「……許す努力はしてみます」

最原「……」

最原(僕は許されていいのかな)

最原(よく……わからないや)

最原(茶柱さんは凄いなぁ。あんなに怒ってたのに、僕のことを許す努力をするって?)

最原「……う……!」ポロッ



545:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 20:05:58.86 ID:VeeOGTSw0

茶柱「じゃあ転子はこれで! 東条さんも本当無茶しないでくださいねー!」

東条「大丈夫よ。まだ無茶をすると手から出血してしまうもの」

東条「この痛みがリミッターになってくれるわ」

茶柱「あんまり使ってほしくないリミッターですね……」

茶柱「じゃ、転子は行きます。お疲れ様でしたー!」ピューッ

東条「また明日、ね」

東条「……さてと」

東条「そろそろ出てきたら? 最原くん」


ガチャリンコ


最原「……」グスッ

東条「なんでそんなところに……」

最原「アンジーさんから逃げてた」

東条「そう」



546:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 20:17:30.66 ID:VeeOGTSw0

最原「……本当凄いね、茶柱さん。僕を許すって?」

最原「間違ってないだけで、東条さんに酷い傷を負わせたのは事実なのにさ」

最原「別に許さなくってもよかったのに……」

東条「最原くん。いいのよ」

最原「……」

最原(……何一つとしてよくない。僕は、そうとしか思えない)

東条「……みんなに許されるチャンスをくれたこと、感謝してるわ」

最原「やめてよ。キミを助けたのは巌窟王さんだ。それに東条さんが僕に感謝なんかしたらさ」

最原「……なんか共謀してたみたいに見えちゃうよ。東条さんもそれはイヤでしょ」

東条「ふふ。そうね。だから一度きりしか言わないわ」

東条「それに、私を助けてくれたのは確かに巌窟王さんだけど……」

東条「あなただって、巌窟王さんと同じくらい格好いいのよ?」

最原「僕が?」

東条「ええ」

最原「……」

最原「はは。面白い冗談だね、それ」

東条「えっ」

最原「……もうこれ以上は話さない方がいい、よね」

最原「必要もなさそうだ。キミはもう大丈夫」

東条「待って。冗談のつもりじゃ……」

最原「……じゃあね」スタスタ

東条「……」

東条「卑屈すぎ……ね」



547:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/26(木) 20:23:02.70 ID:VeeOGTSw0

最原(……僕は正しくない。でも間違ってもいなかった)

最原(大丈夫。もう東条さんは裏切らない。自分を無暗に傷つけたりもしない)

最原(……少し早めだけど、僕は部屋に戻ることにした)

最原(アンジーさんとも鉢合わせず。このまま僕は……時間を潰して……)




数時間後 夜時間 三つの空き部屋


ギコ……ギコ……


真宮寺「ふう……こんなもの、かな」

真宮寺「さて。誰かに気付かれる前に片付けないと」セッセッ


ガララッ


真宮寺「……ッ!?」

アンジー「あれれー? 是清ー! こんなところで何してるのー?」

真宮寺「……」





ガンッ!



552:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 17:36:25.74 ID:2i6irfEA0

最原「……ん……?」

最原(時間は十一時五十分……なんだかすごく中途半端な時間に起きてしまった)

最原「……睡眠が浅いのかな。寝なおそう」

最原「……」スヤァ


ドンドンドンッ

ピンポンピンポンピンポーン!


最原「!」ガバァッ

最原「……誰だ? こんな時間に」

ピンポンピンポンピンポーン!

最原「はい! 今出るからそんな慌ててインターホン押さないで!」

ガチャリンコ

茶柱「た、たたたっ、大変です最原さぁん!」

最原「……茶柱さん? 珍しいね。時間も変だけど」

茶柱「そ、そんなことを言っている場合じゃなくって! 早く! 外に出て!」

最原(その慌てようは尋常ではなかった。段々と頭が冴えてくる)

最原「何があったの?」

茶柱「て、転子の……転子のッ!」



553:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 17:39:18.88 ID:2i6irfEA0

茶柱「超高校級の合気道家の研究教室が燃えてるんですーーーッ!」

最原「……」

最原「はあッ!?」ガビーンッ



寄宿舎の外


最原「……た、確かになにか焦げ臭い! 尋常じゃないくらい!」

最原(ついでに中庭の方角が妙に明るい気がする!)

茶柱「転子は他のみなさんも起こしてくるので、最原さんは研究教室の方へ!」

茶柱「人数集めて消火活動すれば、どうにかなるかもしれません!」

最原(そんなレベルだとは思えないけど……でも様子も見たい。乗ろうか)

最原「わかった! 先に行ってるね!」ダッ



554:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 17:46:58.13 ID:2i6irfEA0

茶柱の研究教室「」ボオオオオッ!

最原「う……なんだこれ。不自然なくらいに炎上してる……」

最原「なんでこんなことに――!」


オオ……オオオオオ……!


最原「ん? この声……なんだ?」

巌窟王「おおおおおおおおおお……ッ!」

最原「……巌窟王さんの声? どこから……?」キョロキョロ

最原「……」

最原「嘘でしょ」

最原(燃え盛る研究教室の中。黒い炎がチラりと見える)

最原(何度も僕たちを助けてくれた、あの黒い炎は見間違えるはずもなく……!)

最原「巌窟王さん!? 何してるの!?」

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおお……!」

最原(その炎の主はしかし、出てくる気配が何故か無かった)



555:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 17:51:59.88 ID:2i6irfEA0

最原「……そうか。茶柱さんが慌ててた理由がなんとなく理解できた!」

最原「中に巌窟王さんがいるからか!」

最原(なんで中にいるのかは皆目見当も付かないけど)

茶柱「さ、最原さぁん! ひとまず夢野さんと百田さんを連れてきましたよー!」ドタドタッ

夢野「なんじゃあ!? こりゃあ!」ガビーンッ

百田「おいおい! 冗談だろ! あん中に巌窟王がいるってのかよ!」

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおおお……!」

茶柱「あの声と炎の色を見ても、まだそんなことが言えると!?」

百田「マジかよ」

最原「色々質問があるけど、最初にこれだけは」

最原「人数が少なくない!?」

茶柱「今は赤松さんが転子の代わりに部屋を回って人を集めてます!」

最原(じゃあ後から増員が期待できるってことかな)

最原「茶柱さん! 状況を教えてくれない!?」

最原「何があったの!?」



556:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 18:01:52.40 ID:2i6irfEA0

茶柱「ことの発端は今から大体十分前のことでした。寝付けなくって、転子が寄宿舎の外に出たんです」

茶柱「外の空気を吸って気分でも入れ替えよう……とか、そんな理由で」

茶柱「そのときちょうど寄宿舎へと戻ってきていた巌窟王さんと顔を合わせました」

茶柱「そのときです。どっちが先に気付いたのはもうまったく覚えてませんが、転子の研究教室が炎上していることに気付きました」

茶柱「二人して研究教室まで走って行って、それで……」

茶柱「巌窟王さんが炎の中に『何か』があることに気付いて、言ったんです」

茶柱「『人手が必要かもしれない』と」

茶柱「……聞き返す前に巌窟王さんは一人で……ん? うん……ええ」

茶柱「『一応一人で』中に入っていってしまいました」

最原(なんかところどころ不明瞭っていうか、あえてボカされた部分がある気がするけど)

最原「なるほど。大雑把な事情はわかったよ」

百田「とにかく、中に巌窟王がいんだな!? ならさっさと鎮火させるぞ!」

夢野「このままじゃ巌窟王のスモークステーキの出来上がりじゃあ! 一刻を争う!」

夢野「このあたりに水道は……!」

茶柱「一番近いものはあっちにあります! バケツもいくつかそこに!」

夢野「バケツリレーの開始じゃあああああああッ!」ダッ

百田「行くぞおおおおおおッ!」ダッ

最原「……」

最原(なんだ? 巌窟王さんは何に気付いた……?)



557:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 18:07:50.23 ID:2i6irfEA0

巌窟王「……やはり見つけたぞ。これは……!」

焼け焦げたペットボトル「」ボロッ

巌窟王「だが『ヤツ』が見つからない! どこだ。どこにいる!」

巌窟王(火事で発生する有毒ガスは問題なく無毒化できるが……それはそれとして熱い)

巌窟王(この火事を発生させたのは間違いなく生徒だ。ならば俺がその影響を受けるのも必定)

巌窟王(あまり長い時間はかけられないな)

巌窟王「……何故だ。何故魔力の供給が安定しない……こんなときに……!」

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおッ!」



560:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:27:13.22 ID:2i6irfEA0

十二時五十分

最原「ダメだ! 全然鎮火しないよ!」

赤松「なんならさっきより火力が上がってる気もするんだけど……!」

百田「……ごほっ……ごほっごほっ……!」

百田「やべ、ちょっと出た」ゴシゴシ

春川「百田?」

百田「ヘーキだ! まだやれるぞ! 俺ァ!」

巌窟王「おおおおおおおおおおお……!」

天海「……妙っすね。一体あの中で何をしてるんでしょう。巌窟王さんは」

最原(もしかしたら何かを言っているのかもしれないけど……)

最原(それを聞き取れる程度には巌窟王さんの声が漏れてきてくれないんだよな)

最原(そうか。火事って結構、音も凄いんだな)



561:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:40:41.16 ID:2i6irfEA0

午前一時十分

夢野「よしキーボ! 行けい! 今こそ救助ロボの力を見せるときじゃ!」

キーボ「そんな目的のために作られたわけじゃありません! 無理です! 死にます!」

最原「……」

最原(いつの間にか人が増えている……のは、赤松さんが声をかけてくれたおかげだろうけど)

最原「……?」

最原(人が……減ってる気がする)

最原(いや、最初のときと比べると間違いなく増えてる。んだけど……)

最原(さっきいたはずの人がいなくなったりしてないか?)キョロキョロ

最原「茶柱さんは?」

夢野「んあ? 転子?」

キーボ「さっき『ちょっとしたらすぐ戻ってきます』って言って、どこかに走って行きましたが」

最原「……」

最原(待てよ。巌窟王さんの『人手が必要になるかもしれない』って、どういう意味だ?)

最原(てっきり火事をどうにかするのに、って意味だと勘違いしてたけど……!)

最原「……茶柱さんを探して来る!」

夢野「んあ?」

最原「ごめん、時間はかけないから!」



562:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:46:55.12 ID:2i6irfEA0

最原(考えろ。こんなときに茶柱さんが現場を離れるに至った理由……!)

最原(……そうだ。赤松さんが生徒を呼んだのは寄宿舎の中でのことだ)

最原(だとすると寄宿舎にいない人間は当然呼べない)

最原(じゃあ、茶柱さんは『赤松さんでは呼べない人』を呼びに行ったんじゃ……)

最原(もしかしたら倉庫に何か便利な道具……消火剤とかを取りに行ったのかもしれないけど……)

最原(どっちにしろ空振りにはならない。僕が行くべきは……!)




超高校級のメイドの研究教室

茶柱「……おかしいですね。ここで料理しているはずなんですけど……」

茶柱「女子トイレにも姿はありませんでしたし……」キョロキョロ

茶柱「ううーん。引き返すべきですかねー……?」

茶柱「あれ。なんでしょう。この掃除道具用ロッカー……なにか……変ですね?」



563:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:48:50.33 ID:2i6irfEA0

超高校級のメイドの研究教室周辺

最原「ふう……ふう……疲れてきたな……ちょっと走り過ぎたかも」

最原「でも急がないと、だよな。巌窟王さんをあのままにはしておけないし……」


……アアアア……!


最原「ん?」

茶柱「……いやあああああ……!」

最原「……茶柱さんの声? いや……」

最原「悲鳴?」



564:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:52:29.37 ID:2i6irfEA0

最原「……!」ダッ

最原(気付いたら走り出していた)

最原(……段々と茶柱さんの声が大きくなっていく)

茶柱「誰か……誰かああああああああ!」

茶柱「お願い! 誰か助けてえええええええ!」

茶柱「誰か……誰かああああああああ!」

最原(辿り着いた先は、超高校級のメイド教室の入口)

最原(悲鳴は中から聞こえてきている)

最原(僕はそのドアノブを握ったとき、手に汗をかいていたことに気付いた)

最原(……疲れ? 違う。僕は……ドアを開けたくなかったんだ)


ガチャリンコ


最原「茶柱さん! どうか……した……?」

最原「え?」

最原(その先にある光景を、僕は一番見たくなかった)



565:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 19:56:23.21 ID:2i6irfEA0

茶柱「あ、あ、あう……最原、さん……!」

茶柱「助けて……!」

最原「……」

最原(助けを求められているのに、足がすくんで動けない)

最原(ドアを開けた先にいるのは、血塗れの茶柱さん……?)

最原(違う)

最原「東条さん……?」

最原(血塗れで、ぐったりしている東条さん。それを抱いて泣きじゃくっている茶柱さんの姿だった)

最原(……僕は……巌窟王さんの言葉の意味を、勘違いしていたんだ)



第三章

Unlimited 在校生 Works 非日常編



568:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 20:24:21.51 ID:2i6irfEA0

最原(東条さん……)

最原(超高校級のメイドとして、僕たちに奉仕してくれていた女の子)

最原(……責任の大きさを利用されて、僕たちを裏切りはした。でも罪悪感も呑み込んで、先に進める人だった)

最原(これから、いいことがいっぱいある。あるはずだったんだ。なければいけなかったんだ。この人は)

最原(その東条さんが――)

茶柱「最原さん……!」

最原「……死んでるの?」

茶柱「……」

茶柱「動かなくって……ぐったりしてて……」

最原「……」

最原「嘘だ……こんなの。起きてよ……東条さん!」

最原「目を開けてよ、東条さんッ!」





東条「了解したわ」スック

茶柱&最原「え゛」

東条「……頭がくらくらするわね。ごめんなさい。次の指示を貰う前に治療してもいいかしら?」フラフラ

最原「……」

最原「生きてるじゃんッ!」ガビーンッ

茶柱「う、うえええええええええん! よかったあああああああああ!」ダバーッ



569:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 20:29:26.10 ID:2i6irfEA0

茶柱「え、ええと! 治療できる人……天海さんを呼んできますね! ちょっと待っててください!」ダッ

最原「あ、う、うん!」

東条「……つっ……!」

最原「大丈夫? 東条さん……って」

最原(そんなわけがない。どう見ても無事じゃない)

最原(ただ、傷口からはいまいち殺意を感じないのも確かだ)

最原(……手加減されてる?)

最原(大雑把に見て、血が流れ出てるのは頭部。出血は酷そうだが、意識もハッキリしているし、止血さえすれば現時点では問題はなさそうだ)

最原「……他に怪我はない?」

東条「手が……痛いわ」

最原「手?」

東条「両手が……ちょっと動かすのを躊躇する程度には、痛いの」

最原「……手袋を取って見せてくれる?」



570:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 20:38:01.23 ID:2i6irfEA0

ボタボタッ

最原「……!」

最原(手袋の下には包帯。これは前に見た通り)

最原(ただ、その包帯ごと手が真一文字に切り裂かれていた)

最原(両手ともに)

東条「これは……どういうことかしら?」

最原「……」チラッ

最原(考えろ。茶柱さんは東条さんを抱きしめていた)

最原(抱き上げた……って感じじゃない。どこかから東条さんが落ちて来るか倒れて来たのを受け止めてああなった感じだ)

最原(だとすると、その前の東条さんはどんな状態だった?)

最原(……すぐ近くに掃除道具を入れる縦長のロッカーがある。ドアは開かれていて、モップが倒れて飛び出している)

最原(床には引きずったような痕……)

最原(後で茶柱さんから訊かないとなんとも言えないけど、茶柱さんが発見するまで東条さんはこの中にいたのかな)

最原(……いや。いたはずだ。ロッカーのドアの隙間に固まった接着剤がついてる)

最原(多分これでドアを固定して東条さんがドアに倒れ込み、外に飛び出すのを防いだんだろう)

最原(……わからない。なんでこんなことを……?)

最原(……いや。心当たりはある。最悪の可能性だけど)



572:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 20:42:38.16 ID:2i6irfEA0

最原(でも現段階で東条さんを見つけたのが僕と茶柱さんだけでよかった)

最原「……」

最原「東条さん。お願いがあるんだけど」

東条「何かしら?」

最原「包帯は持ってるよね。自分で自分の傷を治療するためにさ」

東条「……そうね。手から出血したときのために、替えの包帯は常に携帯してるわ」

最原「だったらさ――」



573:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/27(金) 20:45:55.18 ID:2i6irfEA0

午前一時ニ十分

巌窟王「……もう、いいな……これだけやれば充分だ。ヤツはここにはいない!」

巌窟王「クハハ……やってくれたな。誰だかはわからないが、随分とナメた真似をしてくれる……!」

巌窟王「さて。後は脱出するだけだが……」

巌窟王「難しいか? これは」

巌窟王「……」

巌窟王「また始まるかもしれないな。学級裁判が」

巌窟王「すまない。アンジー」



583:やあ。今回もダメだったよ。石は話を聞かないからなぁ ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 19:55:07.32 ID:Ko5u1CU20

百田「……」

百田「なんか巌窟王の声が聞こえてこなくなったぞ? 気のせいか?」

白銀「た、多分コレ、気のせいじゃないよ……!」

星「ちっ。このままだと、鎮火した後で巌窟王の焼死体を拝む羽目になるぜ」

キーボ「入間さーーーん! 大変ですー! ここを開けてくださーい!」バンバンッ

天海「……入間さんの研究教室って鍵あったんですっけ?」

夢野「どうでもよいわ! とにかく水をかけ続けなければいかんぞ!」

赤松「でもそのころまでに巌窟王さんが生きてるかどうか……!」


バシャァッ


春川「?」

百田「……」ポタポタッ

春川「百田? なんで急に水を被ったの?」

百田「行く!」

春川「は?」

百田「うおおおおおおおおおおお!」ダッ

春川「……はあッ!?」ガビーンッ



584:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 19:59:12.79 ID:Ko5u1CU20

午前一時三十分

ボオオッ

巌窟王「……くっ!」

巌窟王(笑い話にもならんな。恩讐の炎で万物を焼き尽くして来た俺が焼死などと……)

巌窟王(あと一歩が果てしなく遠い。ここまでか?)

巌窟王(……ふん。考えるだけ無駄だな。俺に諦める権利などないのだから)

ガクリッ

巌窟王「……足に力が入らなくなってきたな」

巌窟王「ならばもう、這っていくしかないか?」

百田「そんなことはねぇぞ! 巌窟王!」

巌窟王「!」

百田「助けに来てやったぜ! ありがたく思え!」ニィッ

巌窟王「……」

巌窟王「ふっ。バカめ」

百田「んだとコラ!」



585:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 20:06:27.23 ID:Ko5u1CU20

巌窟王「……あと十メートルほど前進したい。肩を貸せ。そこからは俺がなんとかする」

百田「お? なにか奥の手があんのか?」

巌窟王「機会は一度きり。かつ一瞬だ。そこですべてが決まる」

百田「へっ。そういうの俺の大好物だ! やってやらァ!」グイッ


ズリッ……ズリッ……


百田「……こんなボロボロになるまで、ここで何してたんだよ」

巌窟王「おそらく気付くヤツは気付いたはずだが……」

巌窟王「……アンジーは外にいたか?」

百田「あ? いや……悪ィ。よくわかんねー。誰がいたか、いなかったとか、この混沌だと判別しづらくってよ」

百田「最低限、夢野とハルマキがいたことは覚えてるんだが……」

巌窟王「そうか。それなら……やはり俺はハメられた、ということだろうな」

百田「……あー?」

巌窟王「外に出てから話そう。とにかく前へ!」

百田「おうっ! ……っと」フラッ


ガシッ


春川「……もう片方の肩は私が持つから。しっかりしてよ」

百田「は、ハルマキ!? なんで……」

春川「こっちの台詞なんだけど。殺されたいの? ほら。前に行くんでしょ」

百田「……ははっ!」

巌窟王「……」ニィッ



586:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 20:15:14.72 ID:Ko5u1CU20

百田「見ろよ巌窟王……俺たちは、強ェだろ?」

巌窟王「ああ」

百田「……助けてよかったって思うだろ?」

巌窟王「そうだな」

百田「……だから、俺たちもお前のことを助けてやんよ。それが仲間だからだ」

巌窟王「……そうか」

百田「とか言っている間にもうそろそろじゃねーか?」

巌窟王「よし。一度、俺から離れろ。二人とも」

巌窟王「……よくやった」

春川「……上から目線がムカつく」

巌窟王「そう言うな。許せ」ニヤァ

巌窟王「さて。奥の手を出そう」ゴソゴソ



587:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 20:20:39.05 ID:Ko5u1CU20

モノダム「ムグー! ムグウー!」ジタバタ

百田「」

春川「」

巌窟王「それでは行くぞ。思い切り! 大きく振りかぶって!」ギンッ

巌窟王「せーのっ!」

百田「待て」

巌窟王「ム?」

百田「なんだそれ?」

巌窟王「モノダムだ。俺の予備のマントでグルグル巻きにして身動きを取れなくした状態の」

春川「いやまあ何をしようと文句はないんだけど、一応聞いておくね」

春川「そいつをどうする気?」

巌窟王「こうする気だ!」

巌窟王「疑似宝具、展開!」

巌窟王「ヘラクレス直伝!」

巌窟王「オリジナル『ブーメランサー』改め……」

巌窟王「友よ、お前のことは忘れない(ブーメランサー・モノダム)!」ブンッ



モノダム「ムグウーーー……」


カッ!

ドカァァァンッ!



588:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 20:25:17.01 ID:Ko5u1CU20

百田「……壁に大穴が開いたな」

春川「外が見えるね」

巌窟王「何をしている! 走れ!」

巌窟王「あと三秒ほどで屋根が落ちて来るぞ! 潰されたいのか!」

百田「そういうことは先に言えェ!」ガビーンッ


ベキミシミシッ


春川「という会話をしている内にもう余裕が――」

百田「ぎゃああああああああ!」

巌窟王「クハハハハハハハハ!」



ドガシャアアアアアッ!



――モノダムは星になった。巌窟王という友を救うために。

きっと、彼らは生涯忘れない。自分たちのことを救ってくれた、あの優しいナマモノを……



594:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 21:23:55.62 ID:Ko5u1CU20

巌窟王「クハハハハハハ! 脱出できたぞ! 俺自身信じられん!」

百田「たっく……よく考えれば壁壊したら、そりゃあ天井が降ってくるわな。考えなしにもほどがあるぜ」

巌窟王「だが生きているぞ。全員な。結果こそがすべてだ」

巌窟王「……いや。過程を蔑ろにするわけではないが、な」

百田「ああ。とにかく生きてりゃ儲けモンだ! な、ハルマキ!」

春川「」チーン

百田「ハルマキィーーーッ!?」

巌窟王「む?」

モノダムの首「」ゴロッ

巌窟王「ふむ。どうやら逃げるとき勢い余って、モノダムの首に足を引っかけて転び、地面に突き出た尖った岩に額をしこたま打ち付けたようだな」

春川「」ダクダクダク

巌窟王「引くほど流血しているな」

百田「死ぬなハルマキィーーーッ!」



595:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 21:28:03.72 ID:Ko5u1CU20

春川「……ハッ!? 私の名前は春川魔姫! 超高校級の暗殺者」ガバリッ

百田「うおおっ! 急に起きた!」

春川「そ、そう……思い出した! 私はこの前、巌窟王にハネ飛ばされて……記憶を……!」

春川「……」チラッ

巌窟王「?」

春川「フンッ!」ブンッ

巌窟王「がはぁ!?」ゴキィッ

百田「ハルマキの上段回し蹴りが見事に決まったーーーッ!?」

春川「これでチャラ」フン

巌窟王「」チーン



596:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 21:33:47.35 ID:Ko5u1CU20

ドタドタドタッ

夢野「んあ! 天海! こっちじゃこっち! なんか凄い音がしたと思ったら脱出しておるぞー!」

天海「了解っす! 応急処置でいいのならすぐに……!」

茶柱「いやいやいや待ってください! こっちの方が先ですってば! 東条さんの研究教室で……!」

巌窟王「……なんだ? 騒がしくなってきたな」

真宮寺「ククク。おかえり、巌窟王さん。みんな心配していたんだヨ?」

茶柱「……ああ、もう! いいです! 確かにこっちも治療必要そうですもんね!」

茶柱「じゃあせめて巌窟王さんだけでも連れて行きます! 彼が傍にいれば安全ですからね!」

天海「いや、そんなこと言われても……」

百田「……んだよ。他に誰か怪我してんのか?」

赤松「実は、超高校級のメイドの研究教室で東条さんが……」



597:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 21:37:09.13 ID:Ko5u1CU20

かくかくしかじかえりえり~

巌窟王「……」

巌窟王「天海を連れて行くぞ」ガシッ

天海「え。百田くんと春川さんは……」

巌窟王「応急処置なら自分でできるだろう?」

春川「……はいはい。行ってらっしゃい、巌窟王」

百田「おう! 後のことは俺たちに任せておけ!」

茶柱「こっちです、こっち!」ダッ

巌窟王「行くぞ、天海!」

天海「はいっす!」



598:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/28(土) 21:42:58.54 ID:Ko5u1CU20

巌窟王(……やはりアンジーはいなかった)

巌窟王(やはり俺は誰かにハメられたのだ)

巌窟王(……しかし本当の標的は俺ではない。決して)

巌窟王(だとすると、真の標的は……!)



602:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 10:44:02.70 ID:HeBOzWiX0

超高校級のメイドの研究教室

最原「……遅れてくれて逆に助かったけど……茶柱さん遅いな」

東条「ここから中庭まではそこまで距離はないはずだけども……」

最原(……仕込みは上々。あとはコレが役に立たないのを祈るばかりだ)

最原「手は大丈夫?」

東条「痛みはまったく引いてないけど大丈夫よ。治療自体は上手くいっているわ」

最原(やっぱり大丈夫じゃないな……思ったより怪我が酷かったから当然か)

最原(……血塗れの包帯、落とさないようにしないとな)



ガシャァァアンッ!


最原「!?」ビクゥッ

巌窟王「しゃらくさい! ここからロープを下ろすから全力で登れ、天海!」

天海「了解っす!」

最原「巌窟王さんが窓ガラスを破壊してやってきたーーー!?」ガビーンッ!

天海「すぐに行くっすよー! 東条さー……」


ブチッ


巌窟王「む。急に軽くなったな。下りたのか?」

天海「わあー……」


ベシャッ


最原「落ちてるんだよッ!」ガビーンッ!


天海は後で普通に階段からやってきた



603:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 10:50:35.29 ID:HeBOzWiX0

午前一時四十分

天海「なんだ。頭の怪我は既に最原くんが応急処置したんすか」

天海「……適切っすね。これなら大丈夫っすよ。本当なら一度病院に突っ込んで検査とかさせたいところっすけど」

最原「そっか。よかった」

天海「俺は茶柱さんから『東条さんが誰かに襲われて凄い怪我してる』としか聞いてないんすけど……」

天海「頭以外にどこか怪我はないっすか?」

東条「……」チラッ

東条「ないわ。どこにも。頭以外はいつも通りよ」

巌窟王(……何故今、最原に視線を投げかけたのだ?)

巌窟王「まあいい。最原を借りるぞ。後のことは天海に任せておけ」

最原「え?」

巌窟王「……アンジーが行方不明だ。これだけ言えばわかるか?」

最原「!」

最原「……うん」

巌窟王「行くぞ!」



604:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 11:25:58.54 ID:HeBOzWiX0

アンジー捜索道中

最原「というか結局、なんで巌窟王さんは炎上中の研究教室なんかに突っ込んだの?」

巌窟王「ことの発端は……ひとまずあまり言いたくはないのでボカすが」

巌窟王「アンジーの作品が発端だ」

最原「作品?」

巌窟王「様々な要因が積み重なって、俺とアンジーは頻繁に別行動を取るようになっていた」

巌窟王「ふと俺はアンジーに用ができてアンジーの研究教室へと向かったのだが……」

巌窟王「どれだけ待ってもヤツがそこに現れることはなかった」

最原「あれ。確かアンジーさんの門限って」

巌窟王「夜時間。つまり十時だ」

巌窟王「……だがヤツは創作活動に打ち込みたいと言うので条件付きで夜時間の延長を認めさせた」

巌窟王「条件は二つ。創作しているときは鍵を閉めること。研究教室の鍵は俺に預けること、だ」

巌窟王「創作途中での外出は……トイレなどもあるだろうから黙認せざるを得なかったが」

巌窟王「もしかしたらどこかですれ違ったのかもしれないと考え、俺は一度寄宿舎に戻った」

巌窟王「……そこであの火事だ」

最原「なるほど……」

最原(アンジーさんは巌窟王さんのことを徹夜で待ってたりしてたけど、巌窟王さんは堪え性なさそうだしな)

最原「アンジーさんへの用って、出迎え以外でのことで?」

巌窟王「……」

最原「ああ、やっぱり出迎えだったんだ」

巌窟王「それ以外にもあるぞ。関係ないので言うつもりはないがな」



605:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 11:33:14.73 ID:HeBOzWiX0

最原「でもそれって火事を発見するに至った経緯であって、火事に突っ込んだ理由ではないよね?」

巌窟王「……」

最原「それも言いたくない?」

巌窟王「……」

最原(露骨に話を打ち切ってる……余程答えたくないのかな)

最原(でもなんとなくわかった。巌窟王さんが研究教室に突っ込んだ理由)

最原(アンジーさんの所在をさっきから異常に気にしてるって点を考えれば明らかだよな)

最原「火事の中にアンジーさんのパーカーでも見えたの?」

巌窟王「……似たようなものだ」

最原(やっぱり)

巌窟王「……無駄話はこれで終わりだ。早くヤツを探すぞ」

巌窟王「死んではいない。死んではいない、はずだ」

最原「……」

最原(凄く不安そうだ。こんな巌窟王さん見たことない)

最原(……早く見つけないと)



608:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 16:54:25.26 ID:HeBOzWiX0

最原「……」

最原(こうして眺めてみると……超高校級のメイドの研究教室から超高校級の美術部の研究教室までの道って)

最原(ほぼ一直線だな。迷わない。普通の学校なら一階から二階、三階に上がるときは別の階段があったりするのに)

最原(間には超高校級の昆虫博士の研究教室や、超高校級のテニスプレイヤーの研究教室もあったりして……)

最原(……見通しがいいのに隠れやすい。隠れる人間には妙に優しいな)

最原(あそこより奥の区画はまだ解放されていないわけだから、奥に何人いるかを予測するのも……工夫すればいくらでもできそうだな)

最原(袋小路になっているわけだし……)

最原(……)

最原「超高校級の美術部の研究教室周辺に行こう」

巌窟王「そこにアンジーがいるのか?」

最原「可能性は高いと思う」

最原(……間に合ってくれ!)



609:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 17:07:39.39 ID:HeBOzWiX0

巌窟王「……ム。赤外線センサーがなくなっているな?」

最原「赤外線センサー?」

巌窟王「さっきこの階段の周辺にあったのだが……今はどうでもいいな」

最原「……」

最原「それってさ! 巌窟王さんがアンジーさんを出迎えしたときはあった!?」

巌窟王「なかったな。俺には忘却補正があるからまず間違いないぞ。あったのは俺がここから寄宿舎に戻るときだけだ」

最原(確定! アンジーさんはここより上にいる!)

最原「急ごう!」



610:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 17:11:31.45 ID:HeBOzWiX0

某所

ウゾウゾ……ウゾウゾ


アンジー「う……あ……?」

アンジー(……気持ち、悪い……体中に何かが張り付いてる気がする……)

アンジー(暗い……気持ち悪い。頭が……ふわふわする……)

ギシッ

アンジー(……よくわからないけど、体が動かない……?)

アンジー(縛られてるの……?)

ウゾ……ジュルッ……

アンジー(やだ……離れてよ……)

アンジー(怖い……)

アンジー(……でも何か、助けを呼んだらいけない理由があったような……?)

アンジー(そもそもどうしてこんなことになったんだっけ……?)



614:今日はこのまま寝ます ◆SxyAboWqdc 2017/10/29(日) 22:12:14.76 ID:HeBOzWiX0

巌窟王の影響をモロにうけてる生徒のログ

最原
本当は帽子を付けていたいが赤松にからかわれるので外している。人の視線に関しては気合で慣れた。
アンジーのアタックに関して一番困ったことは巌窟王に目の敵にされたこと。割とショックだった
本人は巌窟王の背中を追いかけているつもりだが、割と独自の方向に暴走しがち。気持ちは本物なので無自覚に味方を作る。

夢野
巌窟王に対して『お主にとっての魔法使いとは』と訊ねたことがあるが、そのときイリヤを連想した巌窟王が『作詞?』と答えたためたまに作詞している。赤松協賛。
なおイリヤはネロとかエリザの歌の作詞とかしている。

入間
第一印象でこそ魔術に対して懐疑的だったが、今となっては全力で魔術を解析しにかかっている。伊達に発明家やってないので解析力は折り紙付き。
巌窟王の見立てでは魔術回路の質と量は両方ともに『アンジーよりかなり下』くらい。

天海
アマデウスの仮面を外した後は全力で巌窟王のサポートに回る。
才能を思い出せていないため他の生徒に対して引け目を感じているが、できることをしようと考え方を変えようとしている。
アマデウスの仮面そのものを手放す気はない。

獄原
凄まじいトレーニングの結果、過労で倒れることとなった。
未だに誰一人として知る由もないが、この後、彼は超ゴン太として復活を遂げることとなる。
半分嘘である。

アンジー
段々『自分の感情』を表に出すようになってきている。だがそれを指摘すると仮に巌窟王が相手だったとしても否定する。
それ自体が感情の証明になっているということに彼女が気付くことはない。
『巌窟王に甘やかされている』という理由でカルデアの女神連中から目を付けられている。好奇の視線的な意味で。



618:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 19:19:26.73 ID:SUngxkLl0

超高校級の美術部の研究教室周辺

最原「ここからは別行動を取ろう! ここまで絞り込めれば、本腰入れて探せば見つかるよ!」

最原「身軽な巌窟王さんは超高校級の民俗学者の研究教室を調べてて! あっち広すぎるから!」

巌窟王「了解した」

最原(アンジーさんの研究教室は巌窟王さんがいたから除外)

最原(残るは三つの空き部屋と、謎の超巨大な機械があったあの部屋のみ……)

最原(……三つの空き部屋の方を調べよう! 確かあそこは床下にスペースがあったはずだ!)ダッ



三つの空き部屋:中央

最原「あれ……なんだろう。微かに何か燃えたような臭いがするような……?」

最原「……それどころじゃないな。床板を剥がしてみよう!」

最原「アンジーさん! いる!?」ガリッガリッ

最原(……結構隙間なくピッチリ並べられているから爪が引っかからないと、いまいち剥がしにくいな……!)



「む……ん……」



最原「!」

最原(……いた。いや、絶対にいる。微かな声だから聞き逃しそうだったけど)

最原「……ッ!」ガリィッ

最原(無理でもなんでもいい。とにかく自分の手が傷ついてでも、急いで床板を取っ払う)

最原(だけど床下は思ったよりも遥かに薄暗かった)


モゾッ


最原(床下に何かが蠢いているということ以外は何も見えない)

最原「……そうだ! 蝋燭! 燭台!」

ガッ

最原(そして僕は蝋燭で床下を照らして……)

最原(照ら……して……?)

最原「……え、あ、ひ……!?」



619:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 19:24:41.76 ID:SUngxkLl0

超高校級の民俗学者の研究教室

巌窟王「……なんだこれは。アルミホイルの……破片?」

巌窟王「何故こんなものがここに……」

最原「うわあああああああああああああッ!?」

巌窟王「!」



中央の空き部屋

最原「あ、あ、ああ……?」ガタガタ

最原(僕が見ているものは現実か?)

最原(……いや……夢なんかじゃない。この手に刻まれた傷が、痛みがそれを証明している)

最原(床下に広がる光景は、明らかに常軌を逸していた)

最原(……常軌を逸して、グロテスクだった)

巌窟王「最原、ここかッ!?」ガララッ


ズンズンズンッ


バキィッ!


巌窟王「ぐあああああ! 床板が抜け……違う! この部屋ではない! 隣か!」


ガララッ


巌窟王「最原! ここだな!? 何が……?」

巌窟王「……アンジー?」



620:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 19:31:48.57 ID:SUngxkLl0

最原(巌窟王さんと共に深淵に目を奪われる。そこにいたアンジーさんは、着衣が乱れていた)

最原(パーカーは限界まではだけ、ビキニはズレて、上履きも脱げて転がって裸足だ。いつもより露出度が上がっているように見える)

最原(だけどそれを呑気に眺めていられる状況ではない)

最原(アンジーさんの健康的な褐色の肌には、ところどころ『くっついていた』)

最原(あれは……)

巌窟王「ヒル、か……?」

最原(そう。血を吸い上げ、丸々と太っているヒル)

最原(……アンジーさんは荒縄で縛り上げられている状態だ。無抵抗に……血を吸われていた)

最原(あまりにも酷い光景だった)



623:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 20:46:53.89 ID:SUngxkLl0

巌窟王「……」

巌窟王「獄原を呼ぶ必要があるな。こういうのはヤツの得意分野だろう」

最原「今すぐ燃やすわけにはいかないの……?」

巌窟王「……燃やしたところで傷口から延々と出血するだけだ」

巌窟王「安心しろ。すぐに戻ってくる」グシャッ

最原「……」

最原(頭を乱暴に撫でられた……)

最原「……巌窟王さん」

最原(気付いたときには巌窟王さんは消えていた)

最原「……僕は……やっぱり無力なのかなぁ……」

最原「うっ……ううっ……!」

アンジー「……む……ん……?」

最原「!」

最原(アンジーさんの目が薄く開いた。薄暗くて今一判別しづらいけど、視線がこちらに向いている気がする)

最原「アンジーさん!」

アンジー「む……んん……」ギシッ

最原「あ……口になにかハメられてるの?」



624:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 20:53:58.27 ID:SUngxkLl0

最原「待ってて、今それは解くから……体の方は……」

最原「ごめん。ヒルを毟り取られたら出血が酷くなるだけだから、今は我慢して」ガタガタッ

最原(床板を更に剥がす。一枚、二枚剥がれれば、後は簡単にどかすことができた)

最原「……随分と本格的な猿ぐつわだな……」

最原(口の中に丸めた布を突っ込んでから、それを吐き出させないようにぐるりと布で口周辺を巻くタイプだ)

最原(口の中に含ませる布の量によっては、これだけで体力が消耗する)

アンジー「……ぷ……は……しゅう……いち……」

最原「アンジーさ……!?」

最原(酒臭ッ!?)

最原(猿ぐつわを解いた瞬間に充満する酒の臭いに、思わずむせ返りそうになる)

最原(……いや、気付いてなかっただけで、もう既に臭っていたのかもしれないが、それにしても凄まじいアルコール臭だ)

最原(一番酷い臭いの元は)

最原「……猿ぐつわの布に……何か沁み込ませてあるな。これはワイン?」

アンジー「あ……うう……」

最原「……」

最原(泣いている場合じゃなくなったかもしれない)

最原(なんだか次は凄く……)

最原「腹が立ってきた」



625:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 21:01:29.15 ID:SUngxkLl0

最原(何かの間違いで鼻が詰まってたら窒息死していたかもしれない。布を誤飲してもやっぱり窒息)

最原(……仲間のことをなんだと思ってるんだ……!)

アンジー「終、一……お願いが、ある、の……」

最原「なに? 口の周りがベトつくんなら、ハンカチがあるから……」

アンジー「そうじゃ、なくって……令呪……!」

最原「……ん?」

アンジー「令呪、あげるから……アンジーの替わりに……神様を、守って……」ポロッ

アンジー「アンジーがいなくなっても、令呪を引き継いだ誰かがいれば、神様は消えないから……ひっく……!」ポロポロッ

最原「……」

最原「大丈夫。アンジーさんは死なないから」

最原「もう僕が見つけたから」

最原「すぐに巌窟王さんがゴン太くんを連れて来るよ。そうしたら助かるから」

アンジー「えうっ……アンジーは……ひっく……アンジーは……」ポロポロッ

最原「……」

最原「泣いちゃダメだよ。水分は大事だからさ。今は」スッ

最原「僕がいるから、もう怖くないよ」



626:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 21:07:46.39 ID:SUngxkLl0

寄宿舎

巌窟王「獄原! 悪いが緊急事態だ! 今すぐ俺と共に来い!」ドンドンッ

巌窟王「……ええい、時間も惜しい。ドアを破壊してでも連れて……!」

ガチャリンコ

巌窟王「?」

巌窟王(ドアの鍵が開いている?)

巌窟王「獄原?」

獄原「……むにゃ……」スヤァ

巌窟王「……無事だな」

巌窟王(しかし、枕元に置かれているこの大量の炭酸飲料はなんだ? いくつか飲みさしだが……)

巌窟王(……)

巌窟王「王馬の見舞いか。なるほど。鍵をかけるのを面倒臭がったな?」



627:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 21:13:27.58 ID:SUngxkLl0

獄原「……ふあ……ん? 誰かに担がれて……る……?」

巌窟王「我が征くはアンジーの傍ら!」ズダダダダダッ

獄原「……」

獄原「なんだ夢か!」

巌窟王「夢ではない! ひとまず事情を今から説明する!」

巌窟王「このまま俺に身を任せていろ! そうら、すぐに到着だぞ!」ギンッ

獄原「え、え? 何っ……ええっ!?」ガビーンッ



628:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/30(月) 21:19:48.00 ID:SUngxkLl0

中央の空き部屋

ガララッ

巌窟王「連れて来たぞ! 最っ……!」

アンジー「終一。好き。本当に好き……大好き……」

最原「……最初からそう言っていれば……」

最原「あっ」←巌窟王と目があった

巌窟王「……最初からそう言っていれば……?」

巌窟王「何だと言うのだ? なんだと……」ガクリッ

バターンッ

巌窟王「」チーン

最原「魔力不足から来る体力不足と心労のダブルパンチで倒れちゃったーーーッ!?」ガビーンッ

獄原「ごめん! 巌窟王さん! 今はそれどころじゃないから放置させてもらうよ!」

獄原「すぐにヒルさんをアンジーさんから離すね!」ダッ



633:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/31(火) 18:39:07.30 ID:zpsM/qck0

午前二時

獄原「……ひとまずヒルさんをアンジーさんから離して、ヒルさんの抗凝固作用を持った唾液を分解する酵素も投与したから大丈夫……」

獄原「……って言いたいんだけど、ちょっとコレ手遅れだったね」

最原「は?」

巌窟王「……アンジーはまだ生きているぞ?」

獄原「うん! わかる! それはわかるんだけど……! いや、ハッキリ言って助かる余地はあるんだけど」

最原「逆に言えば『助かる余地が多少はあるって程度』には消耗してるってこと?」

巌窟王「……」

巌窟王「待て、しかして――」ポワッ

アンジー「うぐっ……!」

巌窟王「……ダメだな。この消耗状態では、本末転倒になりかねない」

最原「何しようとしたの?」

巌窟王「回復宝具を使おうとした……が、無理だった。仕方がないな」ポチポチ



634:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/31(火) 18:45:52.00 ID:zpsM/qck0

BB『はーい! いつもニコニコあなたの傍に寄り添う後輩、BBちゃんでーっす!』

巌窟王「我がマスターが死にそうだ。助けてくれ」

BB『……え。あの。いつものクソ迂遠な言い回しと、チクチク責めて来るハイテンションな嫌味はどうしました?』

巌窟王「頼む」

BB『……』

BB『わかりました。おふざけなしで行きますよ。何が必要です?』

巌窟王「泥酔した状態で出血している。水分と輸血の設備だ」

BB『はいはいっと……あー。カルデアの礼装の類は転送できませんよ。アレに手を付けたら本気でデリートされちゃいます』

BB『カルデアに縁のある人間しか使えませんしね』

巌窟王「わかった」



635:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/31(火) 18:56:54.33 ID:zpsM/qck0

巌窟王「治療設備が届く。今度は気合を入れて俺の近くに転送されるように手配するようだ」

最原「……助かるかな?」

巌窟王「死ぬと思っているのか? 俺のマスターだぞ?」

巌窟王「俺が死なせない」

最原「……」

最原(ピンチのときに巌窟王さんほど頼りになる人はいないよな……本当になんとかなる気がしてきた)

BB『はい! 転送しましたよー! あんまり大量には送れないのですが!』

巌窟王「あるだけマシだ。さあ! どこに転送されて」

ヒュンッ

グシャッ


巌窟王「ぐああああああああああ!?」

最原「巌窟王さんが設備の下敷きにーーーッ!」ガビーンッ!



636:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/10/31(火) 19:03:56.56 ID:zpsM/qck0

巌窟王「ぐううううう……!」

巌窟王「クハハハハハハ! 幸運だった! 俺が下敷きになったお陰で機材と輸血パックは一切無事だぞ!」

最原「凄くポジティブ!」

BB『私が指示しますので、ひとまずテキパキやっちゃってくださーい』

獄原「アンジーさん! 助かるよ! 巌窟王さんが助けてくれるよ!」

アンジー「……うん……」




最原(こうして混沌の内に始まった夜は、ひとまずの終わりを告げた)

最原(でも……アンジーさんはまだ助かっていない)

最原(これからどう転ぶかも不明瞭だ)

最原(そして……この状況を心の底から面白がっているヤツが一人いた)

最原(……半分くらいの確率で乗ってくるとは思っていたけど)



モノクマ「うぷぷ……これだね……全員生き残っちゃったお陰で用意した動機がパァになっちゃってたけど」

モノクマ「……これを動機にしちゃお。それを望んでいる人もたくさんいるみたいだしね……」

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷぷぷ……」



641:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 18:41:09.94 ID:NnV3cor60

午前二時十分

巌窟王「……」

巌窟王「顔色が良くならないぞ」

BB『ああーっ……コレ、現実的な治療の範囲だと危ないかも……!』

巌窟王「何……?」

BB『本当に消耗しきってるっていうか……バイタルは機械越しにモニタできてるので治療に全力は尽くしますけど』

BB『助かるかどうかは五分五分と言う他に……なさそうです』

最原「そんな!」

獄原「な、なんとかならないの!? 巌窟王さんの友達なら、魔術でもなんでも使うとかさ!」

巌窟王「友達ではない。そしてそれは不可能だ」

巌窟王「……そういうモノを送ったとして、使える人間がいない」

BB『ただコレは現状は、の話です。他に味方に付けられそうな人とか設備とかありませんか?』

巌窟王「……」

巌窟王「モノクマ……しかいないだろうな」

最原「最悪な着地点だ……!」



642:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 18:43:40.96 ID:NnV3cor60

モノクマ「はいはーい! お呼びしましたかー!」ボヨーンッ

獄原「うわっ! 出た!」

モノクマ「で? なに? 用があるの?」

巌窟王「アンジーを助けろ」

モノクマ「いいよ!」グッ

巌窟王「これでよし」

最原「……」

最原「は?」

最原「はあ!?」ガビーンッ!



643:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 18:49:01.55 ID:NnV3cor60

最原「いやいやいや! 巌窟王さん! 何もよくないけど!?」

最原「モノクマ! 確かお前、生徒同士のコロシアイには関知しないって校則で……!」

モノクマ「あー。うん。それはそうなんだけどさ……」

モノクマ「オマエラがコロシアイを成立させる前に見つけちゃったから、もうコロシアイに関しては『破綻した』とみなしたよ」

最原「校則に関してはそれで納得するとして、だ!」

最原「何を企んでる!? 怪しすぎるぞ!」

モノクマ「あ。バレた。いや、アンジーさんの体の中に謎の改造を施そうとか考えてませんよ?」

巌窟王「……そんなことをしたら確実に貴様を燃やすぞ」

モノクマ「まあ大丈夫! アンジーさんは一〇〇%治すから!」

モノクマ「ただし……最原くんが察した通り、タダで、とはいかないなぁ……?」ニヤァ

最原「……!」



644:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 18:57:05.17 ID:NnV3cor60

モノクマ「そこまで理不尽なことを要求する気はないよ。むしろ、オマエラの利になることかもね……?」

巌窟王「言ってみろ」

モノクマ「アンジーさんを殺そうとした『未遂犯』を議論すること。これがボクの提示する条件だよ」

最原「……議論? えっと、それって……」

獄原「学級裁判みたいに、ってこと?」

モノクマ「エサクタ!」

モノクマ「もちろん未遂だから正しい犯人を指摘したとしてもおしおきはなし」

モノクマ「間違った人間を犯人扱いしても、これまたおしおきはなし」

モノクマ「ただし……多数決によって選ばれた生徒が、犯人かそうでないのか、の成否の確認のみは通常の学級裁判と同様」

モノクマ「つまり『一〇〇%公正に』行われるよ」

モノクマ「謂わば疑似学級裁判だね」

最原「疑似……」



645:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 19:02:10.94 ID:NnV3cor60

最原「……これがお前にとって、どんな得になるんだ?」

モノクマ「あらら。凄い疑り深いね。人生損するタイプ」

モノクマ「……これがボクの提示する新たな動機だから、とだけ言っておくよ」

最原「!」

モノクマ「トリックが破綻しちゃった犯人にとっては『やり直し』のチャンスだしね。コレ」

巌窟王「……確かに、このままアンジーがズルズル死にかけの状態のままだと……」

最原「そうか。アンジーさんの口から犯人の名前が漏れるんだ。もしかしたらトリックも全部喋られるかも」

最原「そのまま死んじゃったら学級裁判は盛り上がらない。だからモノクマはアンジーさんの治療を申し出たんだな?」

最原「……治療するって名目で隔離して、アンジーさんの記憶に『何か』するために」

巌窟王「生徒たちの記憶を奪ったモノクマだ。再度記憶を封印すること程度、容易いだろうな?」

モノクマ「うぷぷ」



646:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 19:08:53.80 ID:NnV3cor60

モノクマ「そこまでわかっているんなら、ボクの提示する条件の前提もわかってるよね」

巌窟王「アンジーに『誰にやられたのか』を訊ねるのもアウト。そういうことだろう」

モノクマ「イグザクトリー!」

モノクマ「アンジーさんの声で、誰が犯人かを聞いた人間が一人でも出た場合、この取引はナシだよ」

モノクマ「すべて白紙に戻してもらう」

モノクマ「……それでもいいかもね? 助かる確率はゼロじゃないんでしょ?」

BB『コイツ……』

巌窟王「飲もう。アンジーは連れていけ」

最原「巌窟王さん!」

巌窟王「……ただし。助かったアンジーの身に、何か余計な付録でも付いていたら……わかるな?」

モノクマ「うぷぷ。大丈夫だよ! ボクは殺人ドクターの異名を持つからね!」

最原「殺しちゃってるじゃないか!」

最原「いや、それ以前に……!」

巌窟王「文句は受け付けない。犬にでも食わせておけ」

最原「……」

獄原「ええーっと。で、どういうことになったの?」

モノクマ「こういうことになったの!」


ピンポンパンポーン!



647:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 19:13:25.67 ID:NnV3cor60

モノクマ『死体が発見されまし……あ、ごめん! 誤報です!』

モノクマ『死体は発見されませんでしたが、これより、一定の捜査時間を設けます!』

モノクマ『疑似学級裁判に関する資料をすぐに全員に配りますので、詳細はそこを参照してくださーい!』


ブツンッ


最原「……モノクマ」

モノクマ「なぁに?」

最原「いつまでもお前の思い通りになると思うなよ」

最原「こんなところ、いつか絶対に抜け出してやる」

最原「……絶対にだ!」

モノクマ「……うぷぷ。無理なのになぁ……! オマエラはどこまで行っても、ボクの肉球の上で踊ってるだけなんだよ」

モノクマ「うぷぷぷぷぷ……あーっはっはっはっはっは!」



649:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 21:21:03.88 ID:NnV3cor60

疑似学級裁判概要

・正しいクロを指摘してもおしおきは行われません。
・間違った生徒をクロと指摘した場合においてもおしおきは行われません。
・上記のルールの都合上、間違ったクロを指摘した場合はクロが誰なのか周知されません。
・ただし、多数決によって指摘された人物がクロだった場合は『正解である』と必ず周知されます。
・なお、被害者である夜長アンジーさんの発言権は確実に制限されます。ご了承ください。


最原「……シロにとっては危険人物を知るチャンスで、クロにとってはやり直すチャンス、か……」

最原(ミスリードだな。実際のところ、これでせっかく沈静化してた生徒間の軋轢が更に深く、強くなる)

最原(……でも、乗らないわけにもいかないよな)

最原「調査を始めるよ。ひとまず、今夜何があったのかを一から調べなおす」

最原(いや……今から考えると、遡る時間が一夜で済むかどうか疑問だな……)

モノクマ「それじゃあ、さっそくアンジーさんを集中治療室へ――!」

最原「待って。アンジーさんの体でまだ調べられてないことがある」

最原「それが終わるまではここで治療して」

モノクマ「薄い本みたいに?」

最原「うるさい!」

巌窟王「……最原」

最原「ん?」

巌窟王「変な気を起こすなよ……」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「大丈夫! 大丈夫だから!」アタフタ



650:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/01(水) 21:28:36.55 ID:NnV3cor60

数分後

最原「頭の出血痕は打撃によるものだな。それと、口の中が荒れ放題だ。何か棒みたいなものを入れられて引っ掻き回されたような」

最原「……あとやっぱり酒臭い。未成年にしてはありえないレベルだ」

モノクマ「これも消耗の理由だね。ただ出血しただけなら、ここまで危険なことにならないよ!」

BB『大分強いお酒をガバガバ飲まない限りはこうはなりませんよ。血中アルコール濃度もアホみたいに高いです』

最原「猿ぐつわに沁み込ませてあったワインは……どう考えてもダメ押しだな」

最原「これに沁み込ませた量だけじゃ、どうしたって足りない」

巌窟王「……」

最原「……巌窟王さん?」

巌窟王「もういいか?」

最原「あ、ご、ごめん! もう大丈夫だよ! モノクマ!」

モノクマ「オーキードーキー!」

アンジー「……神、様……」

巌窟王「もう何も喋るな。次に会うときまでにすべて片付けておいてやる」

アンジー「……」コクリ

最原(アンジーさんはモノクマに連れられて、どこかに行ってしまった)

最原(巌窟王さんの脅しもある。多分、大丈夫だ。そう信じるしかない)



655:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/02(木) 19:52:39.48 ID:FJRBmP5u0

BB『しかしおかしいですね。縄みたいなもので縛られていた割には抵抗の痕が少ないような……』

最原「え?」

BB『まったくない、というわけではないんですが、微妙に少ないんですよ。擦り傷が』

獄原「……アンジーさんは消耗してたんだから当然じゃない?」

最原(いや……それはおかしい。だってアンジーさんが縄で縛りつけられていたのは……)

最原「おっと。そうだ。荒縄も調べないと」

巌窟王「……これは超高校級の民俗学者の研究教室にあったものだな」

獄原「え? そうなの?」

最原「それ、間違いない?」

巌窟王「我が忘却補正にかけて断言しよう」



656:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/02(木) 19:58:43.54 ID:FJRBmP5u0

最原「……そうだ! 疑似学級裁判のことが周知されたのなら、一番に見なきゃいけないところがあったんだ!」

巌窟王「どこだ?」

最原「東条さんの研究教室! 行ってくるね!」ダッ

巌窟王「ふむ……手分けした方がいいか?」

巌窟王「……そうだな。こちらは獄原から話を聞こう」

獄原「え? ゴン太に?」

巌窟王「あのヒルについてだ。そもそも虫の類はこの学園に『ほぼ』存在しないのではなかったのか?」

獄原「う、うん。ゴン太の研究教室にいるもの以外はね。あのヒルさんも間違いなくゴン太の研究教室にいたものだよ」

巌窟王「昆虫ではないな? ついでに言うと『虫』かどうかも怪しいぞ」

獄原「確かに、ハッキリ言ってヒルさんを虫と言い張るのはクモさんやカニさんを虫と言い張るのと同じくらい強引だけどさ」

獄原「いたんだから仕方ないよ」

巌窟王「……ふむ」



657:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/02(木) 20:05:57.08 ID:FJRBmP5u0

巌窟王「あのまま誰にも見つからなければ、アンジーはどうなっていた?」

獄原「死んでいた……と、思う……」

獄原「なんでかはわからないけど、ヒルさんが限界を越えて血を吸っていたんだ。あのままだったら確実に助からなかったよ」

獄原「……あ、あれ?」

巌窟王「どうかしたか?」

獄原「ヒルさんが一人見当たらなくって……おかしいな。アンジーさんから引き離したときはいたのに」

巌窟王「……逃げたのではないか?」

獄原「うーん。お腹が壊れそうになってたから、それは考えにくいんだけど」

獄原「おーい! 出てきてよー!」

巌窟王「ふむ。どうせこの場にはまだ調べるべきことがある」

巌窟王「ついでだ。そいつも探してやろう」

獄原「名前はヒル御前だよ!」

巌窟王「ヒル御前! 出てくるなら今のうちだぞ! クハハハハハハ!」ギンッ!



658:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/02(木) 20:13:16.87 ID:FJRBmP5u0

東条の研究教室

最原「……さてと。東条さん、まだいる?」

東条「ええ。ここに」

茶柱「あ! 最原さん!」

最原「え? 茶柱さん?」

最原「……そういえば、天海くんを呼んだ後、どこに行ってたの?」

茶柱「倉庫で飲み物とか治療道具とか見繕ってたんですよ。それより!」

茶柱「なんですか、疑似学級裁判って! アンジーさんは無事なんですか!?」

最原「……一応」

茶柱「ハキハキ言いなさい!」

最原「命に別状はないよ。治療をしているのはモノクマだけど、こういうときのアイツは約束を破らない」

東条「……口惜しいわね。私の手が無事なら――」

最原「東条さん!」

東条「……あ。ごめんなさい。そうだったわね」

茶柱「?」

最原(さてと。東条さん、茶柱さん以外にも、捜査のためにここに来た人が何人かいるな……)

最原(……しっかり観察しないと)



662:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/03(金) 18:59:55.95 ID:qs7/ZpKX0

真宮寺「……」ゴソッ

真宮寺「……?」

最原(割と素直に引っかかってくれたな……ゴミ箱に注意しすぎだ)

最原(犯人はキミだな。真宮寺くん)

最原「茶柱さん。ちょっと確認したいことがあるんだけど」

茶柱「なんです?」

最原「ここに来たのっていつ?」

茶柱「……最原さんとそんなに変わらないですよ」

最原「そっか。じゃあちょっと頼みたいことがあるんだけど」

茶柱「?」

最原「……ここじゃなんだから、ちょっと外に出て話そう」

茶柱「変なことしたら被害者第三号にしてやりますよ?」

最原「しないって!」



663:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/03(金) 19:04:56.99 ID:qs7/ZpKX0

巌窟王サイド

巌窟王「ヒル御前は見つからなかったが……色々とわかったことがあったな」

BB『どう考えてもアンジーさん、この部屋でぶん殴られてますね』

獄原「凶器の床板。床下の血だまり。この二つがあるのなら、ほとんど決まりなんじゃないかな……」

巌窟王「それと、さっきから気になっていたのだが……何かコゲてる臭いがするな」

獄原「巌窟王さんのマントじゃない?」

巌窟王「……」

BB『いえ。臭気はこの部屋からも間違いなく』

BB『……この部屋で何か燃えたんでしょうか。ライトでもあれば焦げ跡を探せますよ?』

巌窟王「もういい。見つけた。証拠写真も今撮ろう」カシャッ

巌窟王「こんなことのために転送したものではないのだがな」



664:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/03(金) 19:09:51.87 ID:qs7/ZpKX0

ガララッ

百田「巌窟王! アンジーはどこだ!?」ドタドタッ

巌窟王「今はモノクマが治療している。命に別状はないだろう」

百田「……クソッ! あんなヤツに頼らなきゃいけねーなんてよ……!」

春川「ここが事件現場?」ヒョコッ

巌窟王「というよりは発見現場だが……その認識でも間違いはないかもな」

キーボ「証拠が残っているかもしれません! 今こそ追加されたボクの機能を見せるとき」ビカーッ!

百田「いぃーーったい目がァーーーッ!?」ギャァァァ!

春川「うっさい」ベシッ

百田「ごめんぬッ!」

百田「とにかく、ここの調査は俺たちに任せろ! 巌窟王!」

百田「俺たちが付いてる! 今回の事件もぜってぇー見つけるかんな!」

巌窟王「……」フッ

BB『機嫌いいですねー』

巌窟王「黙れ」



666:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/03(金) 19:41:46.92 ID:qs7/ZpKX0

茶柱「……その程度なら別にいいですけど、でもそんなウソにどんな意味が?」

最原「ハッキリ言って、怪しい人は三人くらいいるんだけどさ」

最原「……絞り込むには足りないんだ。決め手が」

最原「多分、そのウソがあれば炙り出しできる」

茶柱「その三人の中に、もしかして東条さんも入ってたりします?」

最原「するよ」

茶柱「……ヌケヌケと良くもまあ。本当に死にたいんですか?」

最原「ごめん。でもだから必要なんだ。茶柱さんの協力がさ」

茶柱「……」

茶柱「大前提として、その計画には」

最原「東条さんには事前に言ってあるよ」

茶柱「東条さんが噛んでるのなら……仕方ないですね」

茶柱「……いいでしょう。協力します。でも一言だけ言わせてください」

最原「なに?」

茶柱「サイッテーです」

最原(……仲直りできると思ったんだけどなぁ! 泣きたい!)



667:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/03(金) 19:50:16.76 ID:qs7/ZpKX0

再び東条の研究教室

最原「さてと。それじゃあ引き続き調べないと」

天海「あ。最原くん。戻ってきたんすね」

最原「ん。天海くん」

天海「……それじゃあ、俺はこれで。ここはもう結構人手足りてるっぽいっすし」

天海「俺は中庭の方に戻って、あっちの捜査に加わることにするっす」

天海「バトンタッチってことで」

最原「あ……そっか。天海くん、茶柱さんが来るまで東条さんの傍にいてくれたんだね」

最原「……ごめん。二人きりにさせちゃって。怖かった?」

天海「凄く怖かったっすよ!」

天海「……東条さんに事情を聞いてみたら、誰に襲われたのかわからないって話じゃないっすか」

天海「正体不明の殺人未遂犯。一体、誰なんでしょうね」

最原(……アンジーさんに殺意があったことは間違いないんだろうけど)

最原(東条さんの方に殺意は無さそうなんだよな。ただ気絶させて閉じ込めただけだ)

最原(……誰にやられたのかわからない、か。おおよそ予想通りだけど、東条さんから詳しい話を聞かないと)

東条「いいわよ。いくらでも話すわ」

最原「あれ。口に出てた?」

東条「エスパーだから」

最原「え」

東条「……当然冗談よ」クスリ

最原(東条さんだと冗談に聞こえない……)



670:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/04(土) 19:51:37.05 ID:GnQR9ocd0

東条の証言

東条「料理をしている最中で、ドアがノックされたのよ」

東条「入ってもいい、って言っても一向に入ってくる気配がなくって、ノックだけが延々と聞こえて来たの」

東条「もしかしたら両手が荷物で塞がっているのかもしれない、と思ってドアに近づいて、ノブを捻ったところで……」

東条「逆にドアを思い切り開けられて、額を思い切りドアにぶつけてのけぞって」

東条「そのまま『誰か』が馬乗りになって、私の頭を思い切り殴打したの」

東条「……薄れゆく意識の中、無念だけがあったわ」

東条「『私らしい報いではあるけど、これ以外の方法で恩を返したかったわね』って」

最原「うん。本当に無事でよかった」

東条「犯人の顔は見ていないわ。仮に見ていたとしても、何かで顔を隠していたでしょうね」

最原「ところで、ついこの学園の食事事情を知っている東条さんにもう一つ聞きたいんだけどさ」

最原「お酒ってどこで手に入る?」

東条「……アンジーさんは泥酔していた、とモノクマから聞いたから、当然聞かれると思ったわ」

東条「手に入る……というよりは、既に私が管理しているのよ」

最原「え?」

東条「開けゴマ!」

カッ

ゴゴゴゴゴゴゴ!

ガシャンッ

最原「なんか凄い大仰な仕掛け扉が現れたーーーッ!?」ガビーンッ!



671:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/04(土) 19:55:41.32 ID:GnQR9ocd0

茶柱「凄い! 声帯認証なんですか!?」キラキラキラ!

東条「いいえ。リモコンで開閉するわ」シャキーンッ

最原「え!? じゃあ今の開けゴマってなに!?」

東条「ノリよ」

最原「ノリ良いな!?」ガビーンッ

真宮寺「う。凄くヒンヤリした空気だネ」

東条「ワインセラーなのだから当然よ」

東条「ちなみにこの隠し扉、別に私自身は隠していたわけじゃないから、知っている人は知っているわ」

東条「『絶対に飲酒目的では使わない』と契約書にサインさせた後で入間さんにも渡したりしてたし」

最原「ん? 待って。飲酒目的でないなら入間さんはワインを何に使ったの?」

東条「発明品、と言っていたかしら。燃焼促進剤に転用するとか言ってたわね」

最原「……」

最原(燃焼促進剤、ね)



672:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/04(土) 20:07:42.72 ID:GnQR9ocd0

最原(ひとまずここで調べられることはコレで全部、かな)

最原(僕も天海くんが行った中庭に行ってみよう)

最原(そもそも僕の視点では、あそこからが事件の発端だしな)

最原「茶柱さん。まだ聞きたいことがあるから、良ければ僕と一緒に中庭まで来てくれないかな?」

茶柱「……チッ」

最原(凄い顔で舌打ちされた……けど拒絶はされてないみたいだ)

最原(OKでいいのかなぁ……)

最原「じゃ、じゃあ。行こうか?」

茶柱「ヘラヘラしなくても大丈夫です。別に仲良くする気ありませんので」

最原(ぐはぁ)



674:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/04(土) 21:39:02.50 ID:GnQR9ocd0

巌窟王サイド 真宮寺の研究教室

BB『BBちゃんスーパーまとめタイーム!』

BB『巌窟王さんが何故か火事場に突っ込んだと思ったら東条さんが襲われててアンジーさんが殺されそうになってましたとさはい終わり!』

獄原「そんなことが起こってたなんて……全然気付かなかったよ! 不甲斐なさ過ぎてごめん!」

巌窟王「フン。バカめ。もとより生徒たちに大した期待など寄せてはいない」

巌窟王「お前たちは足手まといにならなければそれでいいのだ」

獄原「足手纏い……?」

獄原「ゴン太たちのことか……」


ドシュウウウウッ!


獄原「ゴン太たちのことかーーーッ!」ドカァァァァァァンッ!

BB『あ、あれ!? 巌窟王さん! 学園のどこかから、ていうか巌窟王さんの周囲に謎の高エネルギー反応があるんですが!』

BB『具体的に言うとカルデアのログに残っているゲーティアとかティアマトよりヤバい感じの!』

巌窟王「ゴン太しかいないぞ。計器の故障だろう」

獄原「ハッ! ゴン太は一体……?」

BB『あ、消えた』



675:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/04(土) 21:49:36.30 ID:GnQR9ocd0

獄原「……でも調査なら巌窟王さん一人でもできるんじゃないかな。ゴン太がいたところでそれこそ……」

獄原「足……で……まと……」ユラァ

巌窟王「いや。獄原は俺の傍を離れるな。証拠の信用が下がる」

巌窟王「お前は俺の見つける証拠が確かにここにあったことを証明するためにここにいる」

獄原「ああ、そっか。巌窟王さんが犯人って可能性もあるからね」

巌窟王「逆に、お前が犯人である可能性もある。つまりこれはお互いの潔白を証明するための相互扶助、と言ったところか」

獄原「うん! 全力でそーごふじょするよ!」

巌窟王「やはり間違いなく、あの荒縄はこの研究教室にあったものだな。それと……」

巌窟王「……先ほどのアルミの破片が気になるな。少しこの研究教室を調べてみるか」

巌窟王「BB。ここの情報は記録しておけ。後で最原に纏めて渡す」

BB『アイアイ』



680:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/05(日) 16:26:13.19 ID:DPK5/rae0

東条の研究教室

真宮寺「……」

真宮寺(どうしようか。利用価値があるから彼女を殺すのは後回しにしたけど、今は偶然にも二人きりになってしまったわけだし)

真宮寺(捜査中に東条さんが今度こそ死んだら、茶柱さん大泣きするかなァ……)ゾクッ

真宮寺(ここで殺すメリットは皆無なんだけど)

白銀「さあ! じゃあ引き続き捜査を続けようか!」

真宮寺「あれ。いたのキミ」

白銀「え。酷くない?」



681:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/05(日) 16:29:37.17 ID:DPK5/rae0

中庭

最原「……ほぼ鎮火してる?」

夢野「お主が立ち去った後で色々あってぶっ潰れたんじゃ。その直後から火の手が弱まってのう」

茶柱「ああ……さっきまでそれどころじゃありませんでしたけど、こうして見ると泣けてきます」

茶柱「転子の研究教室がぁ……」

最原「でも何か不自然だな」

夢野「具体的にはどこがじゃ?」

最原「……あれ。巌窟王さんの炎じゃない?」

夢野「さっきまで巌窟王がそこにいたんじゃ。残り火ではないのか?」

茶柱「それなんですが……転子の勘違いでなければ、あの炎は巌窟王さんが中に入る前からあったものです」

最原「……それ本当?」

茶柱「嘘を吐く理由がありません」

最原(段々見えて来た。いや、予測できてきたかもしれない)



682:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/05(日) 16:36:29.10 ID:DPK5/rae0

最原「ところで……赤松さんと星くんは入間さんの研究教室周辺で何してるの?」

赤松「入間さーん! いい加減出てきてよー! いるのはわかってるんだよー!」ドンドンッ

入間「この研究教室はテメェらのような貧乳モンキー共には解放してねぇんだよー!」

入間「なんだ疑似学級裁判って! 命がけでないのなら、んなもんに俺様が参加してられるか!」

星「……」

星「いや。俺は見ているだけだぜ」

最原「あ。そうなんだ……」

星「後で天海が倉庫からバールを持ってきてドアをこじ開ける手筈になってるし、俺の手は必要ねぇだろう」

最原(うーん。あっちの方は三人に任せよう)

最原(今は夢野さんにもいくつか聞いておきたいことがある)



684:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/05(日) 21:39:07.10 ID:DPK5/rae0

最原「夢野さん。マジカルショーのときのカタログ、まだ持ってる?」

夢野「なんじゃ? あんなもの今更どうするんじゃ?」

最原「えっと、そのカタログの中の赤外線センサーの項目が見たくって」

夢野「どれどれ」ニュルンッ

最原(いつの間にか分厚いカタログを持ってる!)ガビーンッ

夢野「ああ。これじゃな。コレは確かアンジーと入間に渡したぞ」

最原「入間さんとアンジーさんに?」

夢野「ちなみに有効範囲は……」

夢野「お主なら知っておろうな。首謀者探しのときに使うことを検討したのではないか?」

最原「有効範囲が嘘みたいに狭すぎるのと、二対だから意外と目立つっていう二つの弱点があったからね」

茶柱「有効範囲?」

最原「ええっと、仮に誰かがセンサーに引っかかっても十m離れてたら警報器が鳴らないんだよ」

最原「だから赤松さんの学級裁判のとき、コレを使うのは諦めたんだ。僕らは教室に張る予定だったからね」

茶柱「十mじゃあ……確かにほぼ役立たずですね」

夢野「まあ、入間はコレを改造して『学園中どこにいても警報器が鳴るように有効範囲を広げられるぜ』と息巻いておったぞ?」

夢野「欲しいというのであれば入間に頼んでみてはどうじゃ?」

最原(そんなことも言ってたかもな?)

最原「ところで夢野さん。センサーを配った順番は? アンジーさんと入間さんのどっちに先に配ったか覚えてる?」

夢野「入間の方が先じゃったぞ。後からアンジーが入間の貰ったセンサーをじっと見た後『アレと同じの欲しい』と言ってきたから間違いない」

最原(ビンゴ。となると……やっぱり入間さんから話を聞かないとな)



685:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/05(日) 21:41:26.69 ID:DPK5/rae0

最原「あ。最後にもう一つ。本当に関係ないことかもしれないんだけどさ」

最原「僕が見つけたあの鳩、元気?」

夢野「元気じゃぞ。東条協力のもとに異物を吐き出させたからの」

最原「結局、何を食べてたの?」

夢野「さっぱり意味がわからんが……」





夢野「アルミホイルの破片を食っておったな」



687:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 12:22:58.05 ID:YUDhDoeb0

最原「で、えーと……まだ入間さんここを開けないの?」

赤松「うん。なんか完全に何もかも面倒くさいって感じで外のものを完全シャットアウトしてるね!」

赤松「アナ雪のマネしても全然ダメだよ! ギリギリでノッてくれたときは『もしや』って思ったんだけど!」

最原「……」

最原「えーと、ちょっとみんな、ドアから離れてくれるかな? 考えがあるんだけど」

赤松「ん? うん。わかった。何するの?」

最原「ちょっと内緒話を……」

最原「入間さん」

入間「あ? ダサイ原か?」

最原「……」ゴニョゴニョゴニョ

入間「ッ!」


ガショーーーンッ!


入間「ウェルカムトゥようこそ俺様パーク!」

赤松「一瞬で開いたーーーッ!?」ガビーンッ



688:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 12:29:29.83 ID:YUDhDoeb0

入間「で! 例のモノは……ああ、いい! 言わなくていい! 後で貰うからな!」

入間「ボンクラども! 聞きたいことがあればなんでも言え! 答えてやるかどうかは別だけどなァ!」ヒャッハー!

赤松「え? なに? なんかかつてないほど上機嫌になってるよ!?」

星「……何を言った?」

最原「ごめん。言いたくない、かな……」

星「そうかい。じゃあ何も聞かねーよ」

最原「入間さん。確認したいことがあるんだけど、アレって入間さんの発明品?」

入間「アレ? って、なんだ。茶柱の研究教室が燃えてんじゃねーか、なにが……」

入間「あっ」

赤松「ん? えーっと……私には燃えカスしかないように見えるんだけど」

星「……」

星「いや、そうか。わかったぞ。お前さん、なんてくだらないものを作りやがる」

赤松「ん?」

入間「……あひい……な、なんて……なんて酷いことを……!」ガタガタ

最原「その反応、やっぱり」



689:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 12:35:41.98 ID:YUDhDoeb0

入間「巌窟王と同じ色の炎を出す俺様の燃焼促進剤がーーーッ!?」ガビーンッ!

赤松「……はい?」

星「なるほど。段々繋がってきやがったぜ。複数の事件がいくつかのファクターで」

最原(そろそろ固まってきたかもしれない。すべての事件の犯人が、同一犯って可能性に収束してきた)

最原「入間さん! 聞きたいことがもう一つ!」

最原「入間さんの研究教室から、他に盗まれたものは!?」

入間「ね、ねぇよ……ねぇけど……ねぇように見えるけど?」

最原「ちょっと今すぐ赤外線センサーを分解してみて欲しいんだけど!」

入間「あ? あの口リペド女から貰ったヤツのこと言ってんのか?」

入間「……ちょっと待ってろ。えーと確かこの辺に。あった」ヒョイッ

入間「分解分解ヨーソロー」バラッ

入間「あ?」

最原「……どう?」

入間「……俺様のほどこした改造が綺麗さっぱり『元に戻って』やがる……!」ガタガタ

入間「え? なにこれ。新手のホラー? それが見えたら終わり?」

赤松「それ、最初から改造してなかったり……」

入間「んなわきゃあるか! 間違いなく改造したっつーの!」



690:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 12:44:37.88 ID:YUDhDoeb0

最原「……よし。これも大体予想通り」

最原「ええっと、入間さん。最後に、入間さんが作ったこの扉の『鍵』をもう一度見せてほしいんだけど」

入間「お? おお……」

入間「あっ」ピコーンッ

赤松(ん? 何この反応)

入間「いいぜいいぜ! 入れ入れ! そしてじっくりしっぽり眺めていけ!」

赤松「あ、じゃあ私も……」

入間「ダサイ原限定だ! ド貧乳松! じゃあな!」

ガシャンッ

赤松「ええーっ……」

赤松「……天海くんまだかなー……」



691:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 12:48:18.60 ID:YUDhDoeb0

入間「……おい。なんだよこの気持ち悪ィの……」

最原「入間さんが欲しがってたものだけど……」

入間「ざけんなよ……俺様が欲しかったのは……」

最原「いや、大事なのはコレの中身でさ……」

入間「……お? おお……おおおおおおお!」

入間「すごいのほおおおおお! ずっと……ずっと欲しかったものが、おほおおおおお!」




天海「バール持ってきたっすよー」スタスタ

赤松「天海くん。今すぐこの扉破壊して」

天海「え。脅すだけって予定じゃ」

赤松「破壊して。コン・パッショーネな感じに破壊して」

天海「いやわけわかんないんすけど」

赤松「すぐ」ギンッ



693:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 17:31:57.44 ID:YUDhDoeb0

ガシャコンッ!

天海「あ。開いたっすよ」

赤松「……そう」

天海(なんか凄いデストロイヤーな目つきしてたんすけど……怖ァ……)

最原「……なるほど。やっぱり前に見た通りだな。外から鍵を操作する機能がないんだね」

入間「たりめーだろ。あくまで俺様が引きこもれればいいんだからよ」

最原(入間さん以外の誰かが引きこもったときに外から開けられなくなるっていう欠点は……)

最原(……どうせ想定してないんだろうな。入間さんのことだし)

最原(……取引は終了。疑似学級裁判が終わったタイミングで天海くんに渡そう)

天海「?」



694:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 17:49:18.67 ID:YUDhDoeb0

最原「そうだ。入間さん。最後に一つ」

最原「……燃焼促進剤にお酒使った?」

入間「カッシェロ・デル・ディアブロだろ? 使ったぜ。ていうか使い切ったぜ」

天海「……チリワインのことっすか? どこからそんなものを」

最原「学級裁判のときに言うよ。使い切ったってことは……」

入間「ああ。新しく『アレ』を作るんなら再度あのメイドババァに頭下げなきゃなんなくなるからよ」

入間「……だからブチ切れてたんだ。わかんだろ?」

最原「入間さん。あの燃焼促進剤のことが重要になるかもしれないから、原材料を書いたメモか何か持ってきた方がいいよ」

入間「あー?」

最原「……あ、じゃあ僕はこれで。もう一度、超高校級の美術部の研究教室のあたり調べて来るね」スタスタ

茶柱「ついて行きますよ。証拠の信用を落とさないためにはツーマンセル以上での行動が重要ですので」

天海「……」

赤松「……気に入らないな」

天海「何がっすか?」

赤松「なんか……追い詰められれば追い詰められるほどさ」

赤松「最原くんのやり口が段々巌窟王さんに似ていくんだよ」

赤松「……似合ってないのに」



695:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 18:12:09.70 ID:YUDhDoeb0

巌窟王サイド

巌窟王「……詳しく調べてみても綺麗なものだったな」

巌窟王「なんなら、事件以前よりも綺麗になっている。逆説的に何かあったということか」

獄原「でもそれを証明できないよね。巌窟王さんの記憶を覗く方法はないんだし……」

巌窟王「……消毒機能のセンサーは赤外線を探知するんだったな……」

巌窟王「獄原。キーボを呼んでこい。すぐに確かめたいことがある」

獄原「うん! わかった! キーボくーーーん! こっちに来てーーー!」ボエエエエエッ

巌窟王(耳が痛い)



696:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 18:16:09.49 ID:YUDhDoeb0

五分後

キーボ「は!? また燻蒸消毒機能に巻き込まれてみろって!? なんで!?」

巌窟王「なに、確かめたいことがあるだけだ」

キーボ「……それ、事件に何か関係があるんですか?」

巌窟王「さて、どうだろうな。まあ無駄にはなるまいよ。それと」

巌窟王「頼みたいことが一つ。キーボ。中にいる間、前と同じように『大騒ぎ』していろ」

キーボ「……わ、わかりましたよ」

巌窟王「操作パネルはアレだな。よし」ポチポチ

巌窟王(……センサーは全部で八つ。床の四隅に四つ。天井の四隅に四つ……)

巌窟王(これに感知されると燻蒸消毒機能は働かない、だったな)

巌窟王「三十分後にまた会おう! なぁに、すぐに済む!」ギンッ

キーボ「うう」



697:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 18:20:22.64 ID:YUDhDoeb0

ガシャァァァンッ!

キーボ「行ってしまいました……ここ雰囲気的にも凄いイヤなんですよね。怖くて」

キーボ「まったく。巌窟王さんも人間ではないのだから、多少はボクの気持ちがわかると思ったのに」

キーボ「ああ、この後、またあのなんか宇宙的恐怖を感じるような虹色のガスが出てきて……」

キーボ「あれ」

キーボ「……?」

キーボ「出てこない? 何も?」



699:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 19:12:38.03 ID:YUDhDoeb0

最原サイド 研究教室に行く道中

茶柱「……」

茶柱「何を渡したんですか? 入間さんに」

最原「アンジーさんの血液。前からの取引だったから」

茶柱「……言いたくないって言ってくれれば、こっちだって知らないままでいてあげたものを……」

茶柱「取引の内容は?」

最原「天海くんの動機ビデオのデータと交換。なんで入間さんが持っているかは……色々あったと言うしかないな」

茶柱「……」

最原「どうやって採取したのかは聞かないの?」

茶柱「ヒルでしょう」

最原「ああ、うん。流石にわかるか……」

茶柱「……ゴン太さんが怒りますよ」

最原「流石にヒルをどうこうする気はないよ。入間さんに言い含めておいたし。必要なのは中身だけ、だ」

茶柱「次に、アンジーさんに無許可でこんなことをしたら……」

最原「当然、巌窟王さんは激怒するだろうね」

最原「……でもやれたんだから仕方ないよ」

茶柱「……」

茶柱「巌窟王さんに告げ口しないとは思わないんですか?」

最原「それならそれで仕方ないかな」

茶柱「あなた……!」



700:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 19:20:26.57 ID:YUDhDoeb0

茶柱「転子のことを利用しないでくださいよ! ふざけないで!」

最原「え? 利用? したっけ?」

茶柱「だから、その顔! なんかもう『自分は裁かれて当然の人間です』ってツラ! 凄いイラつきます!」

最原「……実際そうだし」

茶柱「そうですね! でも転子は! だからと言って、最原さんのことをぶん殴ったとしても!」

茶柱「その罪悪感を清算したりはできないんですよ……!」

茶柱「ふざけないで……! 転子はあなたのことを」

最原(許したいと思ってた、でしょ)

最原「それ以上は言わないで」

最原「……甘えちゃいそうだしさ」

茶柱「甘えていいんですよ! なんでもかんでも背負いすぎです!」

茶柱「あなたのやり方は巌窟王さんみたいな『いくら背負っても折れない強いヤツ』の立ち回りです!」

茶柱「あなたは……!」

最原「弱い、けどさ……いいよ別に。どうせ、この学園にいる間だけだ」

最原「……ごめん。心配かけさせちゃったかな?」

茶柱「まさか」

茶柱「ただ……絶望的に似合ってないだけです」

最原「……」

最原(……無理なものは無理、か。マネくらいはできると思ったんだけど)

最原「調査を続けよう。それで犯人を見つけて……」

茶柱「……またあんなことをするんですか?」

最原「……」

茶柱「……呆れ果てて涙も出てきそうですよ」



701:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/06(月) 19:28:21.27 ID:YUDhDoeb0

茶柱「もうちょっと弱くていいんですよ。人間なんですから」

茶柱「矛盾だらけだろうが問題はありません」

茶柱「ただ……重荷を背負いすぎるのはやめた方がいいです」

茶柱「自分が泥を被れば周りが上手く行く、とか傲慢です」

茶柱「……あなたなら実際上手くできてしまう辺りが本当に救いようがないところですが」

茶柱「お願いですから自分の身も顧みてください。あなたも仲間なんですから」

茶柱「上から目線でなんでもかんでも救おうと思わないでください。転子たちそこまで弱くありません」

茶柱「……わかりましたか?」

最原「うん」

最原「……はは。男子が嫌いなだけで本当に優しいな、茶柱さんは」

茶柱「ウッゼー。本当に。最終的にはコンクリの床の上で投げ技ですよ?」

最原「ほ、本当にやめてね。死ぬから」



704:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 18:10:44.41 ID:iKwi2pO/0

超高校級の美術部の研究教室周辺

最原「よし、来れた、と」

茶柱「結構時間かかってます。早めに済ませられるのなら早めにしましょう!」

最原「うん! そのつもり……?」

最原(……酒の臭いがする?)

最原(こっちから?)

茶柱「あれ? 最原さん? どこに?」

最原「えっと……スライド錠のところから臭いが……」

最原「……カバン、かな。なんか見覚えあるような……」

最原(そうだ。確かアンジーさんが使っていたヤツだ。巌窟王さんの写真機材一式を輸送するときに使った……)

最原「中身は……」ゴロンッ

最原「……ワインの瓶? しかもかなり度数が強いヤツだな」

最原「一本丸ごとなくなってる……」

茶柱「これ、もしかしなくっても……!」

最原(でもなんでこんなところに。研究教室の外、スライド錠のドアの手前なんかに……?)



705:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 18:15:06.89 ID:iKwi2pO/0

最原「スライド錠のドアは……閉まってるな」ガタガタ

最原「……事件当時はどうだったのかな」

最原「確か巌窟王さんは……」

茶柱「ところで最原さん」

最原「なに?」

茶柱「研究教室の中から声が聞こえるんですけど……」

最原「ん? 誰かいるんでしょ?」

茶柱「なんかギャーギャー言ってるんですが……」

最原「……え」



706:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 18:20:52.76 ID:iKwi2pO/0

研究教室の中

王馬「ぎゃああああああああ! 痛い! コメカミぐりぐりマジ痛いーーー!」

獄原「王馬くーーーんッ!」

巌窟王「解放されたくば今すぐ蝋燭を離せ。この責め苦が延々と続くだけだぞ……!」グリグリグリ

王馬「百田ちゃんパースッ!」ポイッ

百田「えっ」

百田「アツゥイ!」キャッチ

春川「でもキチンとキャッチできたじゃん。今のうち」

百田「お、おう! じゃあ――!」

巌窟王「よせ! やめろ! それを見るな!」

巌窟王「『それ』に火を付けるんじゃない!」


ボォウッ


春川「――」

百田「……そう、か。こういう仕組みに……アンジーはこんなモンまで作れたのか」

巌窟王「……!」

百田「……わぁーってるよ。一応やってみただけだ。すぐに消すっつの」フッ



707:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 18:25:36.28 ID:iKwi2pO/0

研究教室の外

最原「……」ガチャガチャ

最原「開かない。中から鍵がかけられてるみたいだ」

茶柱「中に誰かいることは間違いないんですけどね。何してるんでしょう」


ガチャリンコ


最原「あ。開いた」

百田「お。終一。戻ってきてたのか」

最原「あ。百田くん」

最原(――と、奥には王馬くん、春川さん、ゴン太くんと……)

巌窟王「……」

最原(なんか顔に手を当てて凄い凹んでる様子の巌窟王さん)

最原「何があったの?」

百田「アレだアレ」

最原「アレ?」



巌窟王のろう人形「」デデーンッ!



最原「うわあビックリした! 何アレ!?」

春川「夜長が作ったらしいよ。凄い似てるよね」

最原「に、似てるなんてものじゃないよ! 生きてるって錯覚するくらい凄い良くできてる!」

王馬「アンジーちゃん、本当に巌窟王ちゃんのことが大好きだったんだろうね」

王馬「四六時中凝視してなければ才能があろうがなかろうが『この段階』までは行けないって」

巌窟王「……フン」



708:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 18:31:32.58 ID:iKwi2pO/0

王馬「でも……見れば見るほど悲しくなってきちゃうよね……だって」

王馬「これがアンジーちゃんの遺作なんだと思うと、本当に残念で無念で俺はッ! 俺はァ……!」

百田「死んでねえよアホウ」

春川「……でも凄い技術力だよね。あんな仕掛けどうやって……」

巌窟王「やめろ。みだりに話すな」

最原「……やっぱり何か機嫌悪いよね? 何があったの?」

最原「あと百田くん。なんで蝋燭なんか持ってるの?」

百田「……まあ色々あったんだよ。必要になったら裁判中に話す」

最原「そ、そう?」



711:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 19:01:35.59 ID:iKwi2pO/0

最原「……巌窟王さん。あのさ。このカバン、見覚えがあるよね?」

巌窟王「む……? アンジーのカバンだな」

巌窟王「今朝はアンジーの私室の隅にあったはずだ。何故お前が持っている?」

最原「今朝は、か……」

最原「あ、さっき研究教室の外……スライド錠のドアの前に放置されていたのを見つけたんだ」

百田「外だと? アンジーの研究教室の中にあるんならギリギリ納得できなくもねぇけどよ……外だと?」

王馬「……」

王馬「ねえ巌窟王ちゃん。確かアンジーちゃんのことを探しているときに、この研究教室に寄ったんだったよね?」

王馬「アンジーちゃんがいないことを確認した後、巌窟王ちゃんはこの研究教室の鍵をどうした?」

巌窟王「流石にこれ以上の門限の延長は認められない、と思ったからな。鍵を閉めて下の階へと降りたぞ」

巌窟王「こうしておけば研究教室に戻ったアンジーも気付くだろうからな。俺が研究教室を訪ねて、入れ違ったことを」

最原(ということは……!)



712:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 19:09:26.40 ID:iKwi2pO/0

キーンコーンカーンコーン!

モノクマ『えー! それではみなさん、そろそろ始めちゃいましょうか!』

モノクマ『前代未聞の疑似学級裁判を!』

モノクマ『犯人を議論したいのなら裁判場を貸してあげてもいいよ! 面白いしね、うぷぷ!』

モノクマ『ていうか強制的に議論させるけどね! 何が何でも! 議論させるけどね!』

モノクマ『いつも通り、裁判場へ続く赤い扉へとお集まりくださーい!』




最原「……時間か」

茶柱「行きましょう。後のことは裁判中に明らかにするべきです」

茶柱「……気楽に行きましょうよ! だって、今回は誰も死んでなかったんですから!」

百田「アンジーからしたらとんでもねぇ話ではあるが……確かにな。今回は命がけってわけでもねぇし」

春川「……」

春川「そんなスタンスでいいのかな」

王馬「足をすくわれちゃう……かもよ?」

百田「うっせー!」

最原「行こうか」

巌窟王「……」



713:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 19:15:54.14 ID:iKwi2pO/0

赤い扉の中 エレベーター周辺

白銀「あ! やっとこれで揃ったね!」

入間「おっせーぞ短小共! どこでシコってやがった?」

最原「いや、ごめん……ちょっと誤算があって」

巌窟王「三十分は意外と長かったな」

キーボ「……置いてかれるかと思いました。本気で……!」

巌窟王「犠牲は無駄にはならなかった。許せ」

キーボ「もう! もう!」プンスカ!

赤松「何があったの?」

最原「なんか、キーボくんが真宮寺くんの研究教室に閉じ込められてたみたいで……」

入間「ん? ああ……」

最原(……ん。なんか入間さんが妙な反応見せたな)

最原「……後でいいか。そのための学級裁判だし」



714:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 19:24:38.32 ID:iKwi2pO/0

裁判場到着

モノクマ「おかえりー! 待ってたよー、オマエラー!」

東条「……二度と帰ってきたくはなかったけどね」

夢野「仕方ないじゃろう。一応、必要なことじゃ」

王馬「アンジーちゃんの治療と引き換えの議論だっけ? 面倒臭いなぁ。巌窟王ちゃんの友達も意外と役立たずだよね」

prrrr!

巌窟王「なんだ?」ピッ

BB『覚えてろ王馬小吉……! 地べたを這い、泥水を啜ってでも、今の台詞を後悔させてやる……!』

王馬「だってさ! 口は災いの元だよゴン太! 謝れ!」

獄原「ご、ごめん!」

百田「お前だお前ッ!」

巌窟王「コイツのことは気にするな。半分以上口だけだ」

白銀「残りの半分は!?」ガビーンッ!



715:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 19:33:09.33 ID:iKwi2pO/0

モノクマ「あ。巌窟王さん。もうモノクマーズの数が足りなくって組体操で椅子を作れなくなっちゃったから」

モノクマ「代わりにアンジーさんの席についていいよ」

巌窟王「……了解した」

モノクマ「うぷぷ……死んではいないけど、やっと一人欠けたね……学級裁判っぽくなってきました!」

百田「にゃろー、最低な喜び方してやがる」

天海「気にするだけ無駄っす。無視しましょう」

巌窟王「……さあ。本番はここからだ。才囚学園生徒一同!」

巌窟王「議論を始めるぞ! 隣人を疑い、隣人を信じ、隣人を庇い隣人を糾弾する……」

巌窟王「喉が焼け付くような陰惨な裁判を繰り広げようではないか!」ギンッ

百田「わかるように言え、巌窟王!」

巌窟王「いいだろう、つまりこういうことだ!」

巌窟王「『狂気の有無』を、計りとれ! 俺が重要視するところはそこだけだ!」

最原「狂気……狂気、か」

最原(……あるに決まってる)

最原(そして、それを証明しきったときに僕は……その狂気の所有者を許せるだろうか)

最原「……うん。わかった。見つけるよ、犯人」

最原「前みたいに!」





最原(三度始まる。極限の議論、狂気の演目)

最原(僕たちの……学級裁判が!)



717:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/07(火) 21:42:30.88 ID:iKwi2pO/0

巌窟王 エドモン・ダンテス

我が名は巌窟王(モンテ・クリスト)。
愛を知らず、情を知らず、憎悪と復讐のみによって自らを煌々と燃え盛る怨念の黒炎と定め、すべてを灰燼に帰すまで荒ぶるアヴェンジャーに他ならない。
この世界に寵姫(エデ)はおらず、ならばこの身は永劫の復讐鬼で在り続けるまで……というのはカルデアでの話。

旅行先を間違えたとはいえ、一応旅行は旅行。偶然出会った生徒たちとの出会いはそれなりに大切にしている。
『旅の恥はかきすてと言うだろう?』

絆LV1
マスターはサーヴァントのステータスを見ることができる。ただしアンジーはその権利をすべて放棄した上で巌窟王との契約を履行。
結果、実質上の巌窟王のステータスはすべて『不明』となった。
実際のところ、まともに測定はできない。なにせアンジーの都合、もとい感情で簡単に上下するので……

絆LV2
基本的に人理焼却が行われた世界にしか存在できないエクストラクラス故に、自らのマスターもカルデアのマスターただ一人と定義している。
だが事故ったものは仕方がないので、アンジーにもそれなりに世話を焼く。
さながら兄か父のように見えるが、本人にそれを指摘しても否定するかはぐらかすだろう。
なお、ここまでする理由は特にない。強いて言うなら『巌窟王自身が想像するサーヴァントのヴィジョン』を正直に実行しているだけ。
極論、契約したのが王馬だったとしても似たようなことになっただろう。(契約者がアンジーで本当によかったとは思うが)

絆LV3
宝具の解放はほとんどできないと言っていい。
巌窟王は本来、檻に対してこれ以上のない特攻を持つが、その効力すら実質ほとんど死んでいる。
モノクマの校則が強力なのか、それとも別の理由があるのかは定かではない。
なお、脱出の意思が死んでいるわけではない。檻は檻。巌窟王故に必ず破壊してみせる。

絆LV4
モノクマは巌窟王にとって、存在自体が許せない不倶戴天の敵である。
世界にあまねく理不尽と悪意の具現そのものである彼を、巌窟王は何をどう間違っても許さないだろう。
見逃すことはありえない。何故なら自らは間違っても『エドモン・ダンテス』などではないのだから。

人間性を取り戻し、見逃すなんて展開は――

絆LV5
?????????



719:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 18:03:03.72 ID:FAYKKJf+0

学級裁判 開廷

モノクマ「えー! 今回はまったく関係ないルールが多数ありますが、一応、学級裁判の簡単なルールをいたしましょう!」

モノクマ「学級裁判では『誰が犯人か』を議論し、その結果はオマエラの投票により、決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。だけど、もし間違った人物をクロとしてしまった場合は」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけに晴れて卒業の権利が与えられます!」

BB『えー。ではここから先は私が補足をば』

BB『しかし今回の学級裁判はあくまでも疑似です。どのような結果になろうとおしおきはありません!』

BB『ただし学級裁判の公平性のみは通常時と同様。投票された人間が犯人だった場合は、その結果が周知されます!』

モノクマ「わかりやすい補足をありがとう! えーと……誰オマエ?」

BB『エデかもよ!?』キャピーンッ

最原「はっ!? この人が!? 嘘でしょ!?」ガビーンッ!

巌窟王「もちろん嘘だ。吐き気を催すような嘘だ」

巌窟王「……AIは嘘を吐けないのではなかったのか?」

BB『えー? そんなキャラ設定ありましたっけー? 忘れちゃいましたー』キャルンキャルン



720:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 18:10:13.62 ID:FAYKKJf+0

王馬「俺は興味が無かったから全然捜査してないんだけどさー。今回の学級裁判で議論するのって『どの犯人』のこと?」

巌窟王「……ふむ。なるほど。様々な事件が多発していたからな」

巌窟王「いいだろう。まずは『何が起こったのか』を簡単に纏めるぞ」

BB『あのー。モノクマさん。ちょっとコネクターとか貸してくれません?』

BB『裁判場の上部のモニターを使えれば手っ取り早いんですが』

モノクマ「え? アレ使いたいの? うん、わかった。使っていいよ!」ポイッ

BB『よしっと……じゃあ巌窟王さん。デバイスと席についてる端子をコネクターで繋いでくださいな』

巌窟王「繋いだぞ」カチッ

BB『じゃあみなさーん! 裁判場上部のモニターをごらんくださーい!』

モノクマ「あ。ウイルスを仕込んだりしたらデバイスをドカンするからよろしくね?」

BB『そんな小細工しませんってー』



モニター「」ブゥンッ……




赤松「あ。アレって……才囚学園の全景のCG……?」

百田「すげーな。よくできてやがる」

最原(……本当に何者なんだろう。この人。並大抵の技術力じゃないよな……)



721:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 18:20:13.23 ID:FAYKKJf+0

BB『まず最初。第一の事件が発覚したのは十一時四十分ごろ』

BB『アンジーさんを探して彷徨っていた巌窟王さんと、偶然そのとき外に出ていた茶柱さんが第一発見者』

BB『超高校級の合気道家の研究教室が大炎上しており、巌窟王さんが何かに気付いて燃える研究教室へと吶喊』

BB『面喰った茶柱さんが寄宿舎へと戻り、最原さんを中心とした生徒たちを叩き起こし、消火活動を開始しました』

BB『あ。補足したいことがあったらなんでも言ってくださいね。このまとめ、巌窟王さんの証言から再構成したものなので』

茶柱「今のところ事実と食い違うところは一切ありません」

百田「でも結局、巌窟王はなんで炎の中に突っ込んだんだ?」

BB『おっと。補足は受け入れても質問は後回しでお願いします。続けますよー』

BB『消火活動は中々捗らず、一時間以上かけたものの研究教室は尚も大炎上』

BB『そんな折り、茶柱さんが消火活動から消えていることに気付いた最原さんが、彼女を探し始めたのが第二の事件発見の発端です』

BB『これも巌窟王さんからの伝聞ですが……ここから先は最原さんと茶柱さんから直接聞きましょうか』

最原「うん。そういえば巌窟王さんには簡単にしか言ってなかったしね」



723:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 19:34:51.28 ID:FAYKKJf+0

最原「僕が中庭から全力疾走で東条さんの研究教室に向かったのが一時十分ごろの話だよ」

最原「そのとき、僕は茶柱さんが『東条さんを呼びに行ったんじゃないか』って推理してて、実際それはドンピシャだったんだけど」

最原「……東条さんの研究教室で、僕は目を疑うようなものを目にしたんだ」

茶柱「血塗れの東条さん、ですよね。本当にビックリしましたよ。掃除用具を入れるロッカーを開けたらいきなりですもの」

東条「……世話をかけたわね。本当に」

入間「んだよ。掃除用具のロッカーの中に何があったんだ?」

入間「……ハッ! ま、まさか……全――!」

茶柱「違います」

入間「まだ言い終わってないのに!?」ガビーンッ!

最原「うん! 絶対に違うと思う!」

最原「……その瞬間は見てないけど、茶柱さんが言っている『いきなり』って」

茶柱「東条さんが倒れ込んで来たんですよ。ぐったりと脱力した状態の」

赤松「気絶してた……ってこと?」

BB『これが第二の事件。東条さんの襲撃事件のあらまし、ですかね』

茶柱「……」

茶柱(ここですね)

茶柱「ええっと、そこから転子と最原さんの『二人がかりで』東条さんを応急処置」

茶柱「しばらくして落ち着いたあたりで転子は中庭へと戻ったんです」

最原(……よし。茶柱さんは忘れてないな)



724:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 19:47:26.74 ID:FAYKKJf+0

天海「それって、俺を呼んで本格的に治療を施すためっすよね」

天海「……期待してくれるのは嬉しいんすけど、俺も東条さん以上のことはできないんすよね」

天海「しかし二人がかりで……っすか。てっきり茶柱さんはテンパってすぐに外に出たモンだと思ってましたよ」

茶柱「ハンッ! 男死が勝手なイメージで転子を語らないでください!」

BB『じゃあ話を元に戻しますよー。ここから先は巌窟王さんもやっと帰還。事件に本格参戦です!』

百田「俺とハルマキに感謝しろよ巌窟王! 俺たちがいなきゃ今ごろこんがりローストだぜ?」

巌窟王「クハハ。思い上がりもそこまで行くと滑稽だな。恩着せがましいぞ百田」

春川「強がりだけは一級品だね」

BB『巌窟王さんが火事の研究教室から出てこれたのは一時三十分くらいですねー』

BB『そのとき巌窟王さんは消火活動に参加していた生徒を全員認識したはずです。忘却補正もあるので、この点に関しての証言は後で行いましょう』



725:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 19:57:30.26 ID:FAYKKJf+0

BB『そして一時四十分に紆余曲折ありながらも天海さんが東条さんのもとへ到着』

BB『巌窟王さんはなおも発見できなかったアンジーさんを探すため、最原さんを連れて調査を開始』

BB『ついに恐怖の第三の事件発覚に至るのです……!』

東条「泥酔した状態のアンジーさんが、三つの空き部屋の中央の床下で、無抵抗に血を吸われていた……」

王馬「ゴン太の研究教室にいたはずの医療用ヒルに、だっけ?」

赤松「あ、あれ? ちょっと待って王馬くん。ヒルだとは確かに説明受けたけどさ」

赤松「……出所がどこかなんて聞いたっけ?」

王馬「ああ。それに関してはこう答えるよ。俺はヒルがゴン太の研究教室にいたのを知ってたんだ」

最原「あのさ。この場でハッキリさせておきたいんだけど」

最原「疑似学級裁判のことを聞いたとき、どの程度事件の情報をモノクマから聞いたの?」

白銀「アンジーさんが殺されかけたってこと。アンジーさんが発見時どういう状況だったのかってこと」

白銀「あとは第一発見者が最原くんと巌窟王さんだった、ってことだけかな」

真宮寺「東条さんの襲撃事件に関しては、茶柱さんが中庭に戻ってくるなり慌ててまくし立てたこと以上の情報は知らなかったヨ」

真宮寺「まあ、後で調査はしたけどネ」

最原(なるほどね……)



726:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 20:15:02.39 ID:FAYKKJf+0

BB『さて。まとめは大体こんなものでしょう。あとは巌窟王さんが写真を撮ったりしてたので、必要とあらば上のモニターに情報を追加しますよ』

最原「ええっと……やっぱり名前を知らないのは不便だな」

最原(何回か巌窟王さんが『ビィビィ』って言ってるのは聞こえたけど)

最原「とにかくありがとう。助かったよ」

BB『どういたしまして!』

王馬「で。結局、俺たちはどの事件の犯人を議論すればいいの?」

王馬「確かにすべての事件が一夜に起こった以上、同一犯の可能性は高いけどさ」

王馬「高いってだけで、三つの事件の犯人がすべて別人って可能性も否定できないよね?」

モノクマ「お答えしましょう! 今回の疑似学級裁判で議論すべきは、夜長アンジーさんを殺そうとした未遂クロです!」

モノクマ「あまりお勧めはしませんが……一切の議論なく適当に犯人を決めて投票するのもアリっちゃアリですよ」

モノクマ「その場合、アンジーさんを人数に含めれば十七分の十六の確率でハズレですけどね!」

真宮寺「もしも正しいクロを指摘できれば周知される、とは言うけどさ」

真宮寺「それって裏を返せば、投票した人がシロだった場合は『シロだということが周知される』って認識でいいんだよネ?」

モノクマ「もちろん。ま、ほとんど意味ないと思うけどね」

百田「たった一人の犯人を見つけ出すための裁判なわけだからな」

星「……後でアンジー本人に聞けばいい話じゃねーのか?」

モノクマ「悪いけどそれは不可能だよ。アンジーさんの事件に関する記憶は奪っちゃうからね」

モノクマ「もしも正しいクロを指摘できれば、意味がないから奪わないけど。無駄な労力とリソース使いたくないし」

星「なるほどな。エグイ真似をしやがる」



727:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/08(水) 20:40:18.27 ID:FAYKKJf+0

巌窟王「さあ。前提はすべて出そろったぞ。議論を本格開始するに不足したものは何一つとしてない」

天海「そっすね! じゃあさっそく議論を開始して……!」

王馬「いや議論するまでもないだろ! こんなグロい殺し方でアンジーちゃんを殺そうとするのは……!」

王馬「超高校級の昆虫博士の獄原ゴン太しかいねぇーだろうがよォーーー!」ズバァァァンッ!

獄原「ち、違うよ! ゴン太は虫さんに人殺しをさせたりしないんだッ!」アタフタ

春川「でも現実に、あの医療用ヒルは獄原の研究教室で育てられていたヤツだよね?」

獄原「う、うん。そうだけど。でもそもそも、ゴン太の研究教室にいたヒルさんを全員かき集めたとしても」

獄原「あんな……人一人を殺せるような量の血を吸ったりできないんだよ!」

東条「……確かに。獄原くんの研究教室にいたヒルだけで人を殺せるとは思えないわね」

東条「体格の小さい星くんなら別だけど、今回襲われたのは夜長さんなのだし」

最原「ゴン太くん。発想を変えてみよう。どうやったらあの数のヒルだけで人を殺せるようになるのか」

獄原「い、イヤな発想の変え方だね……」

最原「ごめん。でも超高校級の昆虫博士であるキミの力が必要なんだ」

巌窟王「……例えば、だが。ヒルが飲んでいたアンジーの血液に何らかの『混ぜ物』がしてあったとしたら、どうだ?」

最原「……?」




赤松「あれ……意外とゴン太くんのヒルのこと知ってた人多いね」

東条「獄原くんが定期的に他の生徒に対して『献血』をお願いしていたから。その弊害で、ね」

赤松「け、献血……」



731:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 17:41:48.94 ID:rlUnF97o0

最原「アレしか考えられないよね。発見時のアンジーさんは何故か酷く酔っていて、酒臭かった」

最原「……多分、ヒルを狂わせた元凶は『アンジーさんの血中アルコール濃度』……平たく言えば酒だよ」

百田「さ、酒だぁ?」

獄原「あ、そっか。それならありえるよ」

獄原「ヒルさんたちにとって、アルコールは麻薬に等しいからね」

獄原「もしも血を吸われている人の血中に、大量にアルコールがあったとしたら……」

獄原「うん! あの数のヒルさんたちだけでも、一人を殺す程度なら充分足りると思うよ!」キラキラキラ

王馬「空気読めよゴリラ! そんな誇らしげに言うな!」

最原(今日の王馬くんは当たりが強いなぁ)

獄原「ご、ごめん」

王馬「まあそれは置いといて……酒? 学園の中に酒なんてあったっけ?」

最原「あったと思うよ。さっき『酒の持ち主本人』から教えられたから間違いない」

東条「……私の研究教室の隠し扉の先よ。今まで言う機会がなかったけど、ワインセラーがあったの」

天海「東条さんの?」

東条「……でも私は犯人じゃないわよ」

天海「さて、それを決めるのは、俺でもキミでもないっすけどね」

東条「……」



732:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 17:42:45.42 ID:rlUnF97o0

茶柱「で、でも本当に、アンジーさんはお酒を飲んだっていうんですか?」

春川「あるいは血中に直接注射された……とも考えられない?」

巌窟王「いや……アンジーは間違いなく酒を口から飲んだはずだ」

巌窟王「最原。その根拠、お前なら答えられるだろう?」

最原「……」

最原(なんだ? さっきからの巌窟王さんの態度。まるで僕を試しているような……?)

最原「ええっと……うん。アンジーさんの口の中は、何かを無理やり突っ込まれたみたいに荒れ放題だったんだ」

最原「多分だけど、あの荒縄で雁字搦めに縛り上げた後で、無理やり酒瓶を口の中に押し込まれたんだろうね」

夢野「き、聞けば聞くほど、今回の犯人はエグすぎるぞ……!」ガタガタ

キーボ「……そういえば、あのアンジーさんを縛り上げた荒縄。あれは真宮寺くんの研究教室にあったものでは?」

真宮寺「あ、本当だ。よく気づいたネ」

百田「なんだ? 今回の犯人は、やたらあっちゃこっちゃから材料を調達してんな」

春川「獄原の研究教室の医療用ヒル。東条の研究教室の酒。真宮寺の研究教室の荒縄……」

春川「どれも鍵がかかってない研究教室だから、これで容疑者を限定するには弱すぎるけど」

最原(無視するのは無理、っていう程度には気になるな……)



733:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 17:49:55.20 ID:rlUnF97o0

BB『……あ! 巌窟王さん! ひとまずちょっと席を外すので、画像データの操作とかお願いしますね!』

巌窟王「俺はお前ほど芸が細かいわけではないが……まあいいだろう」

BB『あー、もう忙しい忙しい……!』

白銀「ね、ねえ。その人一体何をしている人なの? 仕事的な意味で」

巌窟王「そうだな。一言で言うと……」

巌窟王「……」

巌窟王「一言では言えんな!」ギンッ

天海「皮肉なことにその答えが既に一言っすね」

最原「ええっと……それじゃあ巌窟王さん。上部モニターの操作はお願いするよ」

王馬「議論を続けよっか」



カルデア

イシュタル「……今からBBの部屋に行くわよー」

ナーサリー「役者交代! 楽しみね、楽しみなのだわ!」ルンルン!



734:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 18:17:22.83 ID:rlUnF97o0

最原「……アンジーさんの襲撃事件に関しては特に謎はないよね」

赤松「え? そうなの?」

春川「まあ……襲撃場所はまず間違いなく、夜長が見つかったあの部屋だし」

春川「ヒルに殺人を委託した理由も大体わかるしね」

キーボ「というと?」

春川「暗殺者、つまり第三者に殺人を委託した人間がやることなんて決まってるでしょ」

春川「対象の死亡推定時刻にアリバイができるよう立ち回ることだよ」

星「となると、逆に怪しいのは……消火活動に参加していた人間ってことになるか?」

夢野「んあ? 何故そうなる?」

天海「あのタイミング、つまり夜に人が集まるイベントなんてアレ以外になかったっす」

天海「もしもアンジーさんが、あのままヒルによって失血死させられてたとしたら……」

赤松「あ。ほとんどの人にアリバイがない……!」

天海「それはそれで犯人にとって有利っすけど、でもわざわざヒルを使う理由としてはお粗末っすよね」



735:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 18:25:22.60 ID:rlUnF97o0

獄原「でもヒルさんの噛み傷は独特なんだよ? 計画が全部終わった後、アンジーさんをゴン太が見れば殺害方法はわかるはずだし」

獄原「そしたら死亡推定時刻にこれと言った意味がないってすぐにバレちゃうんじゃないかな」

春川「どうとでもなる」

獄原「え」

春川「……死体の状態を死後に変化させる術なんて、それこそ無数にあるわけだし」

春川「家庭で手に入る範囲の洗剤だけを組み合わせて、人体をドロドロに溶かしたこととか一度や二度じゃないよ?」

赤松「ど、ドロドロ!?」

東条「……最悪、水に漬けておくだけでも人体は二目と見られない有様になるわけだし」

東条「なによりこれはあくまで『殺人未遂事件』。この後どうなる予定だったのかを考えることに価値はあっても――」

巌窟王「現状に大した意味はない、か」

巌窟王「……」

最原「巌窟王さん?」

巌窟王「いや……ふとアンジーの声が聞こえないな、と疑問に思っただけだ」

巌窟王「いなくて当たり前だというのに」ズーン

白銀「アンジーさん難民になってる!」ガビーンッ!



736:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 18:33:45.97 ID:rlUnF97o0

赤松「だ、大丈夫!? 巌窟王さん、アンジーさんの代わりに私が頭撫でてあげようか!?」

巌窟王「やめろ……」

夢野「なんならウチのことを撫でてくれても構わんぞ!」

ギュンッ

巌窟王「……」ナデナデ

夢野「おおー。これは中々……」

最原「夢野さんを撫で始めたッ!?」ガビーンッ!

天海「割と本気でロスってるっすね。かなり症状が重篤っす」

巌窟王「……」

巌窟王「虚しい……」ズーンッ

夢野「んあっ!?」ガビーンッ!

ギュンッ

王馬「あ、元の席に戻った」

夢野「ウチの小動物的かわいさの何が不満じゃと……!?」ガタガタ

茶柱「夢野さんは可愛いです。巌窟王さんにはそれがわからないのです」



738:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 19:55:17.62 ID:rlUnF97o0

巌窟王「……謎なら一つ残っているな。アンジーの事件に関しては」

星「今は少しでも手がかりが欲しい。なんでも言え」

巌窟王「アンジーが具体的にいつごろ襲撃されたか、だ」

王馬「ああ、そっかー。それ大事だよねー」

百田「アンジーが襲撃を受けたタイミングによっては、他の事件との関連性も見えてくるだろうからな」

百田「確かにそこは絶対に判明させるべきだぜ」

赤松「うーん……アンジーさんが襲撃されたタイミングか」

最原「……それを示す証拠ならあったかもしれない」

最原「ほら。茶柱さん、アレだよ」

茶柱「……ああ、アレですか!」

茶柱「って言っても他の人にはわからないので、詳しく言いなさい! 詳しく!」

最原「ご、ごめん! ええっと、超高校級の美術部の外にあった、アンジーさんのバッグだよ!」

百田「あ? ああ、そういやそんなもんもあったな?」



739:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 20:04:19.84 ID:rlUnF97o0

赤松「アンジーさんのバッグって……前に私の部屋から写真機材を運ぶときに使ったアレ?」

巌窟王「ああ。間違いないな。具体的に言うと……」

ナーサリー『コレのことね! みんな、上部モニターに注目して?』

真宮寺「最近、何度かコレを使っている姿を見たことがあるヨ。確かに夜長さんのものだネ」

巌窟王(む? 今の声は誰のものだったか……?)

最原「この証拠品は発見された場所と、内容物が重要なんだよ」

最原「まず発見場所はさっき言った通り、超高校級の美術部の研究教室の外だったんだ」

天海「外? 中ならわかるっすけど……」

白銀「それで、バッグの中には何が入ってたの?」

最原「ワインのボトルだよ。しかも度数がかなり強烈なヤツ」

最原「中身は全部なくなってたけどね」

王馬「へえ」

百田「ってことは、アンジーを泥酔させた酒ってのは……」

最原「間違いなくコレだよ。東条さん、どう?」

東条「そうね。確かにそれは私の研究教室のワインセラーにあったものよ。保証するわ」



740:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 20:14:55.88 ID:rlUnF97o0

赤松「……よくわからないよ。なんでアンジーさんのバッグにワインのボトルが?」

最原「多分、犯人に襲撃されたとき、アンジーさんはこのバッグを背負ってたんだ」

最原「アンジーさんを殴って気絶させた後、犯人はあちこちから必要なものを持ってきてたけど……」

最原「その一連のアイテムは、すべてこのバッグで輸送していたんだろうね」

最原「それで、このバッグがなんで研究教室の外に置かれていたのかって言えば……」

巌窟王「俺が外に出るときに、研究教室のドアを閉めたから、だろうな」

巌窟王「本来であれば、そのバッグは『アンジーが良く行く場所』にあるのが自然だ。ボトルごとそこに移動させる腹積もりだったのだろう」

春川「でもそれは無理だった。他に処分できそうな場所も思いつかなかったから、スライド錠の前に置かれてたってこと?」

百田「……待てよ。確かにこれで『一連の工作が終わった時間』が『巌窟王が去った後』ってことはわかったけどよ」

百田「それでも肝心の『アンジーが事件に巻き込まれた時間帯』がまだ限定できてねーぞ」

茶柱「あ、本当です! 全然気づきませんでした! これだけだとまだ……!」

最原(いや。限定できるはずだ。でもこれを指摘すると……多分巌窟王さんがまた怒るだろうなぁ)



741:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 20:33:39.52 ID:rlUnF97o0

最原(……話を逸らそうか。巌窟王さんの様子を見よう)

最原「アンジーさんのバッグを犯人が使ったってことは、つまり犯人に襲われたときにアンジーさんがコレを持っていたってことだよね」

王馬「でもそれって凄い偶然だよねー。赤松ちゃんのバッグみたいに、四六時中持っていたわけじゃないし」

最原「……アンジーさんが襲われたこと自体が偶然だったとしたらどうだろう」

春川「何か心当たりがあるの?」

最原「いや……でも何か、今回の事件は『まともな計画性』があまり見えてこないなって思ったんだ」

最原(僕の推理通りの真相なら、犯人はそれぞれの事件で一石二鳥、三鳥を狙いすぎてる)

最原「突発的な犯行だったんじゃないかな。だって、巌窟王さんはアンジーさんが研究教室の外に出ることを良しとはしてなかったよね?」

巌窟王「……ああ。できるだけ研究教室の傍から離れるな、とは言ったな」

巌窟王「ただし『真っ直ぐ寄宿舎へと帰る場合』は別だぞ。あそこから寄宿舎への道はほぼ一本道」

巌窟王「俺がアンジーを迎えに行くタイミングとぶつかったとしたら、ほぼ確実に顔を突き合せることになるからな」

天海「アンジーさんはバッグを背負い、研究教室から寄宿舎へと帰ろうとしていた」

天海「だけどその道中、何故かアンジーさんは三つの空き部屋の中央の部屋へと寄って……」

天海「何故か襲撃され、殺されかけた」

白銀「うーん。地味によくわからないな。アンジーさんは空き部屋で何を見たんだろ」

星「むしろ『そこで誰が何をしたのか』が気になるがな。アンジーが殺されかけるほどの秘密……余程犯人は見られたことが気に食わなかったんだろう」



742:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/09(木) 20:42:57.18 ID:rlUnF97o0

赤松「むしろ『誰かと待ち合わせしてた』って線はどう? ほら、前の巌窟王さんの事件みたいにさ」

百田「あのアンジーがか? 巌窟王に無許可で?」

巌窟王「ありえんな」

赤松「……うん。確かにありえなさそうだね。アンジーさんが巌窟王さんより優先させる物事なんて、最原くん以外に思いつかないし」

王馬「あ! じゃあ犯人は最原ちゃんなんじゃない!?」

最原「え?」

茶柱「そうなんですかッ!? 騙されかけましたよ最原さん!」

最原「い、いや。僕じゃないけどッ!?」ガビーンッ

春川「……これ以上夜長の事件に関して議論してても埒が明かなさそうだね」

最原「う、うん。だからさ。この証拠品から見えてくる別の現場に、そろそろ目を向けてみようか」

最原(……ちょっと遠回りになるけど仕方ないな。本当なら『襲撃された時点でバッグに何が入ってたか』を議論するのがいいんだけど)

最原(巌窟王さんのスタンスが見えてこないからな)

最原「ワインのボトル……これを調達したのがいつだったのかを議論することが、アンジーさんの襲撃の時間を特定することに繋がるはずだよ」

夢野「ハッ……そうじゃった! それがあったわい!」



748:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/10(金) 23:25:53.74 ID:JAI/jDVy0

白銀「そっか! アンジーさんのバッグを奪ったことが始まりなら……!」

最原「少なくともアンジーさんが襲われた時間は、東条さんが襲われる時間より前ってことになるよね」

百田「東条! どうなんだ?」

東条「私が襲われたのは十一時ニ十分前後のことよ。残念ながら凶器はわからなかったけどね」

春川「東条の研究教室と、空き部屋の間を何回も往復する途中には、凶器なんていくらでもあったはずだよ」

春川「……私の研究教室とか」

百田「全部終わった後で、軽く水洗いして元に戻せば立派な証拠隠滅になるだろうな……あれだけ凶器があれば」

王馬「まったく! 持ち主として、もうちょっとしっかり管理しててほしいよね!」

春川「……」ビキッ

赤松「いつも通りの王馬くんの悪口だよ。そんな目くじら立てないで……」アタフタ



749:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2017/11/10(金) 23:35:56.39 ID:JAI/jDVy0

巌窟王「……東条が襲われているころ、となると。俺は美術部の研究教室にいたな」

巌窟王「だがいつまでたってもアンジーが戻ってこなかった。故に俺は……」

茶柱「鍵を閉めて、寄宿舎の方へとアンジーさんを探しに赴き、あの火事を発見した……」

茶柱「むむ? でもおかしいですね。