動物寓意集は、12〜13世紀頃のヨーロッパで流行っていた動物のイラストでキリスト教的道徳話を図解したものだ。
そこに出て来るのは、実存の動物や植物だけでなく、ドラゴン、ユニコーン、バシリスク、マンティコラ、セイレン、ヒッポカンポスなどの想像上のクリーチャーも含まれている。
中でも1200年頃にイングランドで作られた「アバディーン動物寓話集」は、中世のもっとも豪華な手書きのイラスト本として知られている。
本には金箔がふんだんに張られ、たくさんの動物のイラストで道徳的行為を延々と説いており、中世に発行されたものの中でもユニークで人気となった。
そんな大昔の本が今、ネットで簡単に見ることができる。オリジナルの原書を4世紀近くも所蔵していたアバディーン大学が、高解像度デジタル版をオンラインで公開しているのだ。
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それぞれの写真の転写とラテン語の文章の翻訳だけでなく、研究者の注釈もついている。
▼閲覧、ダウンロードはここから
【The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen】
大学が手書きの寓話集全体をウェブにアップし始めたのは1996年のこと。これらはスライドカメラで撮影されている。今月更新されたサイトには、高解像度の複数の絵が掲載されていて、拡大してラインの筆使いや作成の途中で残された塗料のはね跡まで、原稿の詳細を仔細に見ることができる。
木に連なった鳩(フォリオ65R)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
アバディーン動物寓意集は一般大衆向けであることを確認
新たに絵の画質が向上したこともあって、美術史家たちはかつてヘンリー8世のものだったこの寓話集が、王室の限られた人たち向けではなく、広く大衆向けに作られたものだったと信じるようになった。
アバディーン大学の教授、ジェーン・ゲデスによると、以前は肉眼では識別できなかった記号や注釈が鮮明になったことで、散逸した修道院の貴重な蔵書の中から密かに探し出されて、この書物が最終的に宝として王の蔵書になったことがうかがえるという。
写字室で多くの手によって作成、編集の跡も残されていた
本は凝った装飾がほどこされているが、完結していない。間違いなどが明らかにわかることから、中世修道院の写字室で多くの手によって作成されたものであることがうかがえる。
制作チームは、刺し師、筆写師、製図師、絵師などで構成され、各ページには、職人たちが互いに出しあった指示が残されている。余白にはスペル間違いの訂正や、物語に関する明らかな誤りまで、編集の跡も残されている。
筆記者イジドア(81r)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
使用頻度がわかる中世の人々の手垢や指の跡
さらに、使われている羊皮紙の状態も、この本の教材としての目的をそれとなくほのめかしている。親指の跡がほとんどのページの下や隅についていて、人が頻繁にページをめくっていたことがわかる。指の跡が上のほうについているページもあり、つまり、この本を使った人間がひっくり返してまわりの人に見せたようだ。
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
「この本が頻繁に使われたことは、ページの端が手垢で汚れていることからよくわかります」ゲデスは言う。
「もちろん、こうした汚れはいつついてもおかしくないのですが、これは宗教改革の後、100年もの間、王立図書館にあった書物です。チューダー朝の君主が定期的に引っ張り出して見ていたとは思えません。続いて、科学を専門とするプロテスタント・マーシャルカレッジで興味の対象となったかもしれませんが、主流の分野ではありませんでした」
多様なイラストで空想上の生き物も描かれていた
なぜこの本が魅力的なのかはよくわかる。イラストは驚くほど多様で、小さなアリからゾウなど一般的な動物だけでなく、フェニックスなどの空想の動物も出てくる。
写真:穀物を口にくわえたアリの行列(24v)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
目立たないウニの道徳的資質でさえ、複数の章でとりあげられている。生き物を並べるだけでなく、さまざまな木や貴石、人間などの様相や質についても述べている。
21世紀のわたしたちの目にはコミカルに映るかもしれないものもある。例えば、巣箱に帰るミツバチの群れは、規則正しく並んだカモの列に似ているとしている。
巣箱に戻るミツバチ(63r)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
コウモリの絵は、その膜のような羽が指や足や尾とつながっているさまをほぼ正確に描いている。
コウモリ(51v)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
モグラ(24r)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
こうした豊富な詳細図は、読み手がこの本が作られた当時にわかっていた自然界を理解するいい助けになったはずだ。
今、一般の人たちのためにデジタル化されたこの動物寓話集は、わたしたちにとってはもちろん、現在よりも過去について多くを明らかにしてくれているが、教育というもともとの目的を果たすためによみがえったというわけだ。
人間を食べるハイエナ(11v)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
円の中のヨタカ(35v)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
ネコ、ネズミ、イタチ(23v)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
サラマンダーが巻きつく木の根元に横たわる死んだ男(70r)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
肉を運ぶ犬、傷を舐める犬(19r)
image credit:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen
via:The Aberdeen Bestiary | The University of Aberdeen / hyperallergicなど/ translated by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
カワウソと柴犬が出演している。
2. 匿名処理班
肉を運ぶ犬ってイソップ物語のを描いたやつだよね?
サラマンダーが巻きつく木の根元に横たわる死んだ男が
挿絵というより絵画っぽくていいなあ
3. 匿名処理班
一枚目の鳩の絵は純粋に綺麗。
他の動物は妙な愛嬌がある。
中世のもぐらの絵は初めて見て、個人的に一番インパクトがあった。
4. 匿名処理班
こういう古書は本当興味深い
さすがに手垢がついてるとのことだけど色は鮮やかだね
5. 匿名処理班
高解像度にされても、読めん