魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
2017年11月22日:22:00
- カテゴリ:ネタ
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:35:56.40 ID:DdF333IT0
魔王と勇者、どっちを女で想像した?
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:36:17.49 ID:B0jnRddtO
どっちも
3: 鰐 ◆WANIvSPbAo 2009/09/03(木) 16:36:32.50 ID:+UEU+NCZ0 BE:297589032-2BP(5066)
魔王ですね
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:37:57.59 ID:LTpYI0vmO
迷ったが、女勇者で頼む。
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:38:13.58 ID:dpPFO8nMO
え?え?
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:50:11.37 ID:s4r1gUtjP
魔王「どーしてもか?」
勇者「アホ云うな。お前のせいでいくつの国が
滅んだと思ってるんだ」
魔王「南の森林皇国のことか?」
勇者「空は黒く染まり、人々は貧困にしずんでいった」
魔王「考え無しに森林伐採して木炭作りまくって
公害で自滅したんだろう」
勇者「公害……?」
魔王「あー。えーっと。そうか、まだ判らないか」
勇者「誤魔化すなっ! 政王国の大臣憑依だって
魔族の仕業じゃないかっ!」
魔王「欲の皮の突っ張った大臣が政権奪取と
王族の姫君大集合ハーレムを作ろうとして失敗しただけだ。
そもそも逮捕された後に魔族の洗脳とか言い出すのは
人間の悪人の悪い習慣だと思うぞ」
勇者「アホ云うな。お前のせいでいくつの国が
滅んだと思ってるんだ」
魔王「南の森林皇国のことか?」
勇者「空は黒く染まり、人々は貧困にしずんでいった」
魔王「考え無しに森林伐採して木炭作りまくって
公害で自滅したんだろう」
勇者「公害……?」
魔王「あー。えーっと。そうか、まだ判らないか」
勇者「誤魔化すなっ! 政王国の大臣憑依だって
魔族の仕業じゃないかっ!」
魔王「欲の皮の突っ張った大臣が政権奪取と
王族の姫君大集合ハーレムを作ろうとして失敗しただけだ。
そもそも逮捕された後に魔族の洗脳とか言い出すのは
人間の悪人の悪い習慣だと思うぞ」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:55:18.10 ID:s4r1gUtjP
勇者「ごまかすのか……許せん……」
魔王「誤魔化してない」
勇者「南部諸王国と戦争はどうなんだ。俺は戦場で
何百という人間が魔族の軍勢に倒されているのを
この目で見てきたんだ」
魔王「それで?」
勇者「は? 人間世界を侵略してきた魔王、貴様を
許しはしない!」
魔王「どちらが侵略したかという点については見解の相違だ。
こちらにはこちらの言い分はあるが、まぁ、戦争してるのは
事実だなー」
勇者「貴様は悪だ」
魔王「じゃぁ、悪でも良いけど。当然私を殺した後には
南部諸王国の王族も全部抹殺して回るんだろうな?」
魔王「誤魔化してない」
勇者「南部諸王国と戦争はどうなんだ。俺は戦場で
何百という人間が魔族の軍勢に倒されているのを
この目で見てきたんだ」
魔王「それで?」
勇者「は? 人間世界を侵略してきた魔王、貴様を
許しはしない!」
魔王「どちらが侵略したかという点については見解の相違だ。
こちらにはこちらの言い分はあるが、まぁ、戦争してるのは
事実だなー」
勇者「貴様は悪だ」
魔王「じゃぁ、悪でも良いけど。当然私を殺した後には
南部諸王国の王族も全部抹殺して回るんだろうな?」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 16:59:14.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「は? 悪はお前だけだ」
魔王「人間が魔族を殺していないとでも?
魔族は悪で人間が善だって誰が決めたんだ?」
勇者「……っ」
魔王「そこで『俺が法だ!』とか『俺が神だっ!』とか
『俺がガンダムだっ!』とか云えたら、お前も
もうちょっと生きるのが楽なのになぁ……」
勇者「うるさいっ!!」
魔王「勇者は好きだから、この話はやめてやる」
勇者「好きとか云うな」
魔王「この資料を見ろ」
勇者「なんだ、これ……羊皮紙じゃないのか?
薄くて白くてつるつるだ……」
魔王「プリンタ用紙だ。それはどうでもいい。書いてある
ことが重要なんだ」
勇者「……えっと、需要爆発……雇用? 曲線?
消費動向……経済依存率?」
魔王「人間が魔族を殺していないとでも?
魔族は悪で人間が善だって誰が決めたんだ?」
勇者「……っ」
魔王「そこで『俺が法だ!』とか『俺が神だっ!』とか
『俺がガンダムだっ!』とか云えたら、お前も
もうちょっと生きるのが楽なのになぁ……」
勇者「うるさいっ!!」
魔王「勇者は好きだから、この話はやめてやる」
勇者「好きとか云うな」
魔王「この資料を見ろ」
勇者「なんだ、これ……羊皮紙じゃないのか?
薄くて白くてつるつるだ……」
魔王「プリンタ用紙だ。それはどうでもいい。書いてある
ことが重要なんだ」
勇者「……えっと、需要爆発……雇用? 曲線?
消費動向……経済依存率?」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:06:53.97 ID:s4r1gUtjP
魔王「わかったか?」
勇者「なんだこれは。邪神の儀式か?」
魔王「違う。経済的視点から見た巨大消費市場としての
戦争の効用だ」
勇者「……効用?」
魔王「そうだ」
勇者「戦争に意味なんてあるものかっ。
貴様ら魔族が人間世界を滅ぼすための侵略だ」
魔王「勇者がどーシテもと云うなら、ちゃんと戦ってやる」
勇者「っ」
魔王「話によっては、討たれてやっても良い」
勇者「その首差し出せ」
魔王「だから、半日ほど話を聞け」
勇者「……」
魔王「これは100年ぶりのチャンスなのだ」
勇者「なんだこれは。邪神の儀式か?」
魔王「違う。経済的視点から見た巨大消費市場としての
戦争の効用だ」
勇者「……効用?」
魔王「そうだ」
勇者「戦争に意味なんてあるものかっ。
貴様ら魔族が人間世界を滅ぼすための侵略だ」
魔王「勇者がどーシテもと云うなら、ちゃんと戦ってやる」
勇者「っ」
魔王「話によっては、討たれてやっても良い」
勇者「その首差し出せ」
魔王「だから、半日ほど話を聞け」
勇者「……」
魔王「これは100年ぶりのチャンスなのだ」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:11:55.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「良いだろう、話せ」
魔王「じゃぁ、説明する。手元の資料の一ページ目を」
ぺらっ
勇者「表だ」
魔王「グラフというのだ。……これは中央大陸のこの
50年の消費量と景気を可視化したものだ」
勇者「……え」
魔王「気がついたように、我らが戦争を始めた15年前
から中央大陸の景気は上昇局面に入った」
勇者「……嘘だっ」
魔王「嘘ではない。2ページ目を見るが良い。
こちらには各種統計資料が添付されている」
勇者「戦争で数多くの死者が……」
魔王「戦争を始めてから人間世界の人口は順調に増加を始
めている」
勇者「そんなのは理屈で考えておかしいだろうっ。
戦争で人が死ぬことはあっても、人が増える道理など
あるものかっ」
魔王「じゃぁ、説明する。手元の資料の一ページ目を」
ぺらっ
勇者「表だ」
魔王「グラフというのだ。……これは中央大陸のこの
50年の消費量と景気を可視化したものだ」
勇者「……え」
魔王「気がついたように、我らが戦争を始めた15年前
から中央大陸の景気は上昇局面に入った」
勇者「……嘘だっ」
魔王「嘘ではない。2ページ目を見るが良い。
こちらには各種統計資料が添付されている」
勇者「戦争で数多くの死者が……」
魔王「戦争を始めてから人間世界の人口は順調に増加を始
めている」
勇者「そんなのは理屈で考えておかしいだろうっ。
戦争で人が死ぬことはあっても、人が増える道理など
あるものかっ」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:15:50.07 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、一般解はそうだな。
しかし、この世界における戦前の常識では違う。
戦前の――まぁ、この戦前は数百年続いたわけだが
世界では、人間の死因は疫病と飢餓だったのだ」
勇者「……」
魔王「この二つは非常に強大な敵で
人間はこの二つを結局500年以上克服できなかった。
人口は増えるどころか、時に疫病が猛威を振るい
国単位で滅亡することも少なくなかった」
勇者「疫病も飢餓も人間には御し得ないものだ。
神が人間に与えた試練と行ってもいい。
魔族の侵略と一緒にするなっ!」
魔王「まぁ、降りかかるについてはそうかも知れないな。
しかし、だから克服できないとか、克服してはいけないと
いうものでもなかろう?」
勇者「それは……」
しかし、この世界における戦前の常識では違う。
戦前の――まぁ、この戦前は数百年続いたわけだが
世界では、人間の死因は疫病と飢餓だったのだ」
勇者「……」
魔王「この二つは非常に強大な敵で
人間はこの二つを結局500年以上克服できなかった。
人口は増えるどころか、時に疫病が猛威を振るい
国単位で滅亡することも少なくなかった」
勇者「疫病も飢餓も人間には御し得ないものだ。
神が人間に与えた試練と行ってもいい。
魔族の侵略と一緒にするなっ!」
魔王「まぁ、降りかかるについてはそうかも知れないな。
しかし、だから克服できないとか、克服してはいけないと
いうものでもなかろう?」
勇者「それは……」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:16:38.67 ID:FgcY1YL00
面白いな 支援
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:16:57.45 ID:iSLHBLTp0
④
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:23:52.82 ID:s4r1gUtjP
魔王「現に戦争が開始されてからこれら二つの
原因にする死者は30%まで低下した」
勇者「理由は? ……なぜ?
魔族の暴威を見かねた神の恩寵か」
魔王「私は結構長生きしてるが、神など見たことはないよ。
理由は明白だ。最大の原因は中央大陸危機会議の設立だよ」
勇者「……?」
魔王「つまり、魔族との戦争に対して、人間の王国が
連合を組んだからだ」
勇者「それで、なぜ死者が減るんだ……?」
魔王「食料の多い国が少ない国へ送ったり、医療の
進歩した国や農業技術の進歩した国が指導を行なった
からだな」
勇者「それこそ人間の手柄じゃないかっ!」
魔王「その程度のことも魔族と喧嘩しなければ
実行できない人間が大きな事を言ってはいけないよ」
原因にする死者は30%まで低下した」
勇者「理由は? ……なぜ?
魔族の暴威を見かねた神の恩寵か」
魔王「私は結構長生きしてるが、神など見たことはないよ。
理由は明白だ。最大の原因は中央大陸危機会議の設立だよ」
勇者「……?」
魔王「つまり、魔族との戦争に対して、人間の王国が
連合を組んだからだ」
勇者「それで、なぜ死者が減るんだ……?」
魔王「食料の多い国が少ない国へ送ったり、医療の
進歩した国や農業技術の進歩した国が指導を行なった
からだな」
勇者「それこそ人間の手柄じゃないかっ!」
魔王「その程度のことも魔族と喧嘩しなければ
実行できない人間が大きな事を言ってはいけないよ」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:29:42.30 ID:tjWFelAOO
勇者頭悪すぎだろ
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:31:05.78 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「そんなに悔しがるな。魔族だって大差は
ない事情だった」
勇者「そう……なのか……?」
魔王「戦国だったからな。地方豪族や領主が次々と
王を名乗っては一族郎党血まみれの戦いを送っていた」
勇者「……」
魔王「まぁ、そんな事情で、戦争は人間と魔族を救った」
勇者「……」
魔王「そんなに唇をかむな。血が出てしまうぞ?」
勇者「触るなっ!」
魔王「……君が望まない限り、触れないよ」
勇者「……」
魔王「私の言い分も判ってくれるか?」
勇者「……」
魔王「そんなに悔しがるな。魔族だって大差は
ない事情だった」
勇者「そう……なのか……?」
魔王「戦国だったからな。地方豪族や領主が次々と
王を名乗っては一族郎党血まみれの戦いを送っていた」
勇者「……」
魔王「まぁ、そんな事情で、戦争は人間と魔族を救った」
勇者「……」
魔王「そんなに唇をかむな。血が出てしまうぞ?」
勇者「触るなっ!」
魔王「……君が望まない限り、触れないよ」
勇者「……」
魔王「私の言い分も判ってくれるか?」
勇者「……」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:35:13.26 ID:s4r1gUtjP
勇者「戦争に意味が……結果的にあったかも知れない」
魔王「そう言ってもらえるとほっとするよ」
勇者「だが続けて良い理由にはなってない。
初めて良い理由にもなっていない。
お前は戦争犯罪人だ。いますぐ戦争を中止して
戦争犯罪者として法廷に立つんだ」
魔王「んー」
勇者「私利私欲でやった訳じゃないってのは
いまの話で、ちょっとだけ判った。
俺が付き添ってやるから投降しろ」
魔王「それは難しいな」
勇者「なぜだ?」
魔王「理由は二つある。6ページ目の資料を見てくれ」
ぺらり
魔王「ここに消費市場としての『南部諸王国』と
『中央大陸』の物流の関係が記してある」
魔王「そう言ってもらえるとほっとするよ」
勇者「だが続けて良い理由にはなってない。
初めて良い理由にもなっていない。
お前は戦争犯罪人だ。いますぐ戦争を中止して
戦争犯罪者として法廷に立つんだ」
魔王「んー」
勇者「私利私欲でやった訳じゃないってのは
いまの話で、ちょっとだけ判った。
俺が付き添ってやるから投降しろ」
魔王「それは難しいな」
勇者「なぜだ?」
魔王「理由は二つある。6ページ目の資料を見てくれ」
ぺらり
魔王「ここに消費市場としての『南部諸王国』と
『中央大陸』の物流の関係が記してある」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:41:53.98 ID:s4r1gUtjP
勇者「物流……?」
魔王「まぁ、早い話、物の流れだ。食べ物や着るものや、
生活用品から武器、鉄、木材に至るまで全てだな」
勇者「これは『南部諸王国』でどんどん使ってるのか?」
魔王「そうだ。戦争は何でも大量に消費されるからな」
勇者「……『南部諸王国』はどうやって支払ってるんだ?」
魔王「ん?」
勇者「だって物を買ったらお金が必要だろう?」
魔王「ああ、良いところに気がついたな。偉いぞ」
勇者「撫でようとするなっ」
魔王「うっかりだ。そう、許可がない限り触れない。
私は契約を重視するタイプなのだ」
勇者「どうやって購入してるんだよ」
魔王「中央大陸危機会議決議による、戦時支援基金でだ」
勇者「……?」
魔王「わからないか。つまり、全世界が戦争中の
『南部諸王国』に義援金を送ってるんだ」
勇者「そうだったのか!! 人間の善の心に祝福を!
どうだ魔王、これが人間のもつ優しさだ」
魔王「まぁ、早い話、物の流れだ。食べ物や着るものや、
生活用品から武器、鉄、木材に至るまで全てだな」
勇者「これは『南部諸王国』でどんどん使ってるのか?」
魔王「そうだ。戦争は何でも大量に消費されるからな」
勇者「……『南部諸王国』はどうやって支払ってるんだ?」
魔王「ん?」
勇者「だって物を買ったらお金が必要だろう?」
魔王「ああ、良いところに気がついたな。偉いぞ」
勇者「撫でようとするなっ」
魔王「うっかりだ。そう、許可がない限り触れない。
私は契約を重視するタイプなのだ」
勇者「どうやって購入してるんだよ」
魔王「中央大陸危機会議決議による、戦時支援基金でだ」
勇者「……?」
魔王「わからないか。つまり、全世界が戦争中の
『南部諸王国』に義援金を送ってるんだ」
勇者「そうだったのか!! 人間の善の心に祝福を!
どうだ魔王、これが人間のもつ優しさだ」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:44:52.56 ID:tjWFelAOO
それ使ってハーレムか裏山
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:46:14.18 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、そのお金で中央大陸の数多くの国は
自分の国の品物を買ってもらってるんだ。
つまり、お小遣いを上げて自分の店の商品を
買わせているだけさ」
勇者「……?」
魔王「このランクの説明は多少難しいかな。……つまり、
富をため込むってのは『お金持ち』にはなれても
『豊か』にはなれないんだ。
お金を渡して、使ってもらう。物もお金も流れが
よどみなく太いことが豊かなんだよ」
勇者「……難しい」
魔王「まぁ、そう言う物なんだ。
全部を自分でやったりせずに、得意な分野で協力する。
これは理論的に正しいことだ。
麦と塩、木材と鉄を交換することで国も人々の暮らしも
豊かになる」
勇者「それはまぁ、何となく判る。王立広場の市場みたいな
もんだろう?」
魔王「うん、そのとおりだ」
自分の国の品物を買ってもらってるんだ。
つまり、お小遣いを上げて自分の店の商品を
買わせているだけさ」
勇者「……?」
魔王「このランクの説明は多少難しいかな。……つまり、
富をため込むってのは『お金持ち』にはなれても
『豊か』にはなれないんだ。
お金を渡して、使ってもらう。物もお金も流れが
よどみなく太いことが豊かなんだよ」
勇者「……難しい」
魔王「まぁ、そう言う物なんだ。
全部を自分でやったりせずに、得意な分野で協力する。
これは理論的に正しいことだ。
麦と塩、木材と鉄を交換することで国も人々の暮らしも
豊かになる」
勇者「それはまぁ、何となく判る。王立広場の市場みたいな
もんだろう?」
魔王「うん、そのとおりだ」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:49:18.57 ID:9ci+3Biw0
ラスボス戦でわかる戦争経済
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:49:30.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「でも、この場合、違うだろう」
魔王「違うとは?」
勇者「中央大陸の国家は、戦争で疲弊した『南部諸王国』に
善意からお金を送ってるんだ。結果として、その物流?
が良くなったとしても、送ったお金は自分の物じゃないか」
魔王「ふむ」
勇者「つまり特産品同士を交換してるわけじゃない」
魔王「してるんだよ」
勇者「与えているだけじゃないのか?」
魔王「『南部諸王国』は、中央大陸に安全を
輸出しているんだ。つまり、戦争で血を流して
人間世界を防衛することでお金を得ている。
――見たことがあるんだろう?
人間世界の『全て』が戦火にまみれていたのかい?」
勇者「……」
魔王「新しく発明された馬車、豊かな光、豊富なご馳走
毎晩のように舞踏会を開いている国はなかったかい?
ブドウ畑で酔いしれている貴族はいなかったかい?」
魔王「違うとは?」
勇者「中央大陸の国家は、戦争で疲弊した『南部諸王国』に
善意からお金を送ってるんだ。結果として、その物流?
が良くなったとしても、送ったお金は自分の物じゃないか」
魔王「ふむ」
勇者「つまり特産品同士を交換してるわけじゃない」
魔王「してるんだよ」
勇者「与えているだけじゃないのか?」
魔王「『南部諸王国』は、中央大陸に安全を
輸出しているんだ。つまり、戦争で血を流して
人間世界を防衛することでお金を得ている。
――見たことがあるんだろう?
人間世界の『全て』が戦火にまみれていたのかい?」
勇者「……」
魔王「新しく発明された馬車、豊かな光、豊富なご馳走
毎晩のように舞踏会を開いている国はなかったかい?
ブドウ畑で酔いしれている貴族はいなかったかい?」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:53:30.25 ID:s4r1gUtjP
勇者「……それは」
魔王「つまり、そういうことだ。人間社会は
『南部諸王国』の巨大消費と防衛ラインという存在に
現在依存しているんだ」
勇者「い、ぞ……ん?」
魔王「そうだ、頼っている。溺れているというような意味だな」
勇者「でも、大多数の人間は戦う力なんて持っていないんだ。
そのためには、『南部諸王国』の戦士団や騎士団に
守ってもらい、せめて食料を送るしかない。
その何処がいけないって云うんだよっ!!」
魔王「まぁ、感情的にはそれが真実だろう。
そこまで否定したりはしない。
でも同時に、経済的にこの市場が無くなると
人間社会の物流や為替が破滅するのも確かなことだ」
勇者「破滅……?」
魔王「そうさ。その資料にあるだろう? これだけの
巨大消費がなくなったら、中央大陸の生産者は
大ダメージを受ける。特に鉄鋼業や造船業がね。
このダメージは波及して、数十万の死者がでる」
魔王「つまり、そういうことだ。人間社会は
『南部諸王国』の巨大消費と防衛ラインという存在に
現在依存しているんだ」
勇者「い、ぞ……ん?」
魔王「そうだ、頼っている。溺れているというような意味だな」
勇者「でも、大多数の人間は戦う力なんて持っていないんだ。
そのためには、『南部諸王国』の戦士団や騎士団に
守ってもらい、せめて食料を送るしかない。
その何処がいけないって云うんだよっ!!」
魔王「まぁ、感情的にはそれが真実だろう。
そこまで否定したりはしない。
でも同時に、経済的にこの市場が無くなると
人間社会の物流や為替が破滅するのも確かなことだ」
勇者「破滅……?」
魔王「そうさ。その資料にあるだろう? これだけの
巨大消費がなくなったら、中央大陸の生産者は
大ダメージを受ける。特に鉄鋼業や造船業がね。
このダメージは波及して、数十万の死者がでる」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 17:56:58.63 ID:s4r1gUtjP
勇者「そんな……」
魔王「まぁ魔王の云うことだから嘘かも知れないけどね」
勇者「嘘なのか?」
魔王「少なくとも私は本気だ。もしかしたら避ける方法が
あるかも知れないけれど、私は知らない」
勇者「……」
魔王「さて、この物流と依存型のいびつな経済構造が
二つの理由のうち、一つだ」
勇者「まだ……あるのか」
魔王「もう一つは比較的簡単に説明できる」
勇者「……」
魔王「説明が簡単なだけで問題が簡単なわけではないが」
勇者「どういう理由なんだ?」
魔王「魔族との大戦争で人間社会は結束した。
物流が改善されて、医療技術もひろまって
疫病と飢餓は少なくなったと云っただろう?」
勇者「ああ、云ってたな」
魔王「まぁ魔王の云うことだから嘘かも知れないけどね」
勇者「嘘なのか?」
魔王「少なくとも私は本気だ。もしかしたら避ける方法が
あるかも知れないけれど、私は知らない」
勇者「……」
魔王「さて、この物流と依存型のいびつな経済構造が
二つの理由のうち、一つだ」
勇者「まだ……あるのか」
魔王「もう一つは比較的簡単に説明できる」
勇者「……」
魔王「説明が簡単なだけで問題が簡単なわけではないが」
勇者「どういう理由なんだ?」
魔王「魔族との大戦争で人間社会は結束した。
物流が改善されて、医療技術もひろまって
疫病と飢餓は少なくなったと云っただろう?」
勇者「ああ、云ってたな」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:00:13.15 ID:s4r1gUtjP
魔王「アレは説明の半分なんだ。確かに物流が以前よりは
活発になった。以前は国民の半分が餓死するような国の
隣では大豊作の国があり、協力なんてしなかったからね」
勇者「うん……」
魔王「だが、物流が改善されたとはいえ、この世界の
食料生産そのものが劇的に向上した訳じゃない」
勇者「……?」
魔王「判らないのかい? ……つまり、まだ餓死者は
いるんだよ」
勇者「ああ。旅の途中でいくつもの村で、飢えた子供を見たよ」
魔王「そんな世界で、『大戦争による死者』が居なく
なったらどうなる? 長い戦争で剣を振るう以外に
生きる術を知らない何十万人もの人間が中央大陸に
あふれるんだ。彼らは生きているから食料を必要とする。
人間は増えるぞ? ――でも、食料はそこまで増えない。
この世界にはまだ輪作の概念すらないんだ」
勇者「そんな……」
魔王「それが現実なんだ」
活発になった。以前は国民の半分が餓死するような国の
隣では大豊作の国があり、協力なんてしなかったからね」
勇者「うん……」
魔王「だが、物流が改善されたとはいえ、この世界の
食料生産そのものが劇的に向上した訳じゃない」
勇者「……?」
魔王「判らないのかい? ……つまり、まだ餓死者は
いるんだよ」
勇者「ああ。旅の途中でいくつもの村で、飢えた子供を見たよ」
魔王「そんな世界で、『大戦争による死者』が居なく
なったらどうなる? 長い戦争で剣を振るう以外に
生きる術を知らない何十万人もの人間が中央大陸に
あふれるんだ。彼らは生きているから食料を必要とする。
人間は増えるぞ? ――でも、食料はそこまで増えない。
この世界にはまだ輪作の概念すらないんだ」
勇者「そんな……」
魔王「それが現実なんだ」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:03:12.31 ID:sHbYBGGTO
面白い
ゲーム化確定
ゲーム化確定
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:04:09.74 ID:INursCOY0
なるほど。
こういう視点でファンタジーを見るのもおもしろそうだな
こういう視点でファンタジーを見るのもおもしろそうだな
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:04:32.19 ID:s4r1gUtjP
勇者「だって、だって」
魔王「だいたい、何で君は1人でここにいるんだ?」
勇者「……へ?」
魔王「腐っても魔王城だぞ。そりゃ警備をくぐり抜けて
こんな所まで来れちゃう君は突然変異というか、
それこそ冗談みたいな奇跡だけど」
勇者「何を言ってるんだ?」
魔王「戦争を終わらせるのは、軍の仕事だろう?
君は勇者じゃないのか?」
勇者「勇者だよっ。それが俺の天命だっ」
魔王「敵の王の命を単身仕留めるのは
暗殺者の仕事じゃないのかい?」
勇者「……っ!?」
魔王「多分ね。……人間の王たちも判っているよ」
魔王「この戦争が終わったら、勝っても負けても
人間は滅びてしまうって」
勇者「……」
魔王「だから君を1人で送り出したんだよ」
魔王「だいたい、何で君は1人でここにいるんだ?」
勇者「……へ?」
魔王「腐っても魔王城だぞ。そりゃ警備をくぐり抜けて
こんな所まで来れちゃう君は突然変異というか、
それこそ冗談みたいな奇跡だけど」
勇者「何を言ってるんだ?」
魔王「戦争を終わらせるのは、軍の仕事だろう?
君は勇者じゃないのか?」
勇者「勇者だよっ。それが俺の天命だっ」
魔王「敵の王の命を単身仕留めるのは
暗殺者の仕事じゃないのかい?」
勇者「……っ!?」
魔王「多分ね。……人間の王たちも判っているよ」
魔王「この戦争が終わったら、勝っても負けても
人間は滅びてしまうって」
勇者「……」
魔王「だから君を1人で送り出したんだよ」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:05:47.02 ID:NsnMGxXP0
なにこのネ申スレ
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:07:47.42 ID:hROtz5Pp0
>>1と書いてる人、別人なんだな
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:11:57.67 ID:INursCOY0
>>43
え、じゃあ、これって書き貯めじゃないのか?
え、じゃあ、これって書き貯めじゃないのか?
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:13:18.95 ID:s4r1gUtjP
>>43
P2はスレ立て規制中なのだ。
だから空いてるスレに即興で書いてるのだお。
1が帰ってきたらいるでもやめるぽ。
P2はスレ立て規制中なのだ。
だから空いてるスレに即興で書いてるのだお。
1が帰ってきたらいるでもやめるぽ。
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:14:20.67 ID:JfwSSBtrO
>>43
今までこういうスレだと思って読み進めてたんだけど違うのか?
今までこういうスレだと思って読み進めてたんだけど違うのか?
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:18:46.41 ID:6RxRyL350
もうこういうスレでいいじゃん
魔王は屈強なおっさんを想像してた…
魔王は屈強なおっさんを想像してた…
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:07:55.85 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「一方的なことを云ってしまったけれど、それは
魔族の側も事情は一緒でね。知っていると思うけれど
一口に魔族といっても、その内情は様々なんだ。
有角族や飛翼族、鉄蹄族。スライムや遊びコウモリ
なんていう低級なヤツらも沢山いる。
悪戯好きなだけの種族も多いけれど、有力な氏族は
ひどく好戦的だし、種族中心主義だ」
勇者「そうなのか……」
魔王「うん、そうなんだ。
私はね……見ての通り、腕も細いし、ひ弱で華奢だろ?」
勇者「魔法で戦うんじゃないのか?」
魔王「そりゃまぁ、使えるけれど。
大魔法使いというほどじゃない」
勇者「なら、どうして魔王になれたんだ?」
魔王「要領とタイミングと、なんだろう。
……多分、偶然で」
魔王「一方的なことを云ってしまったけれど、それは
魔族の側も事情は一緒でね。知っていると思うけれど
一口に魔族といっても、その内情は様々なんだ。
有角族や飛翼族、鉄蹄族。スライムや遊びコウモリ
なんていう低級なヤツらも沢山いる。
悪戯好きなだけの種族も多いけれど、有力な氏族は
ひどく好戦的だし、種族中心主義だ」
勇者「そうなのか……」
魔王「うん、そうなんだ。
私はね……見ての通り、腕も細いし、ひ弱で華奢だろ?」
勇者「魔法で戦うんじゃないのか?」
魔王「そりゃまぁ、使えるけれど。
大魔法使いというほどじゃない」
勇者「なら、どうして魔王になれたんだ?」
魔王「要領とタイミングと、なんだろう。
……多分、偶然で」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:18:08.19 ID:s4r1gUtjP
魔王「私の一族は変わり者が多くて、魔界の端っこで
長年研究をしていてね。私の専門は経済なんだ」
勇者「経済ってなんだ?」
魔王「信じられないなぁ、人間の文明の程度は」
勇者「なんかむかつく」
魔王「魔族も人のことは云えない。
この戦争が終わったら、たとえ魔族の側が
勝ち残ったとしても、前にも増した乱世が始まるよ。
今度は人間の土地を舞台にして、奴隷を奪い合う
恐ろしい時代が幕を開けるだろう。
有力な魔族は人間の王国を次々と勝手に略奪して
それぞれを自分たちの『植民地』と呼ぶ時代だ。
裕福になった戦闘的な氏族は
その富で弱小氏族を従えたり、より大きな戦力を
調えて魔族統一を目指すだろうけれど
いまよりもっと混沌とした魔界はたやすく統一なんか
出来るわけが無くて、いまよりずっと多くの
血が流れるだろうね」
長年研究をしていてね。私の専門は経済なんだ」
勇者「経済ってなんだ?」
魔王「信じられないなぁ、人間の文明の程度は」
勇者「なんかむかつく」
魔王「魔族も人のことは云えない。
この戦争が終わったら、たとえ魔族の側が
勝ち残ったとしても、前にも増した乱世が始まるよ。
今度は人間の土地を舞台にして、奴隷を奪い合う
恐ろしい時代が幕を開けるだろう。
有力な魔族は人間の王国を次々と勝手に略奪して
それぞれを自分たちの『植民地』と呼ぶ時代だ。
裕福になった戦闘的な氏族は
その富で弱小氏族を従えたり、より大きな戦力を
調えて魔族統一を目指すだろうけれど
いまよりもっと混沌とした魔界はたやすく統一なんか
出来るわけが無くて、いまよりずっと多くの
血が流れるだろうね」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:22:11.68 ID:s4r1gUtjP
勇者「植民地?」
魔王「他人の土地に攻め込んで支配して、
自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること」
勇者「許されるわけ、無いっ」
魔王「人間が勝ったら魔族の土地に同じ事をするだろうね」
勇者「人間は、そんなことっ」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「しないって、云えないだろう?」
勇者「……」
魔王「まぁ、いろんな世界がそうやって滅びていったんだ」
勇者「世界?」
魔王「ああ、それは私たち一族の研究だよ。
気にしないで。でも、私は……」
魔王「他人の土地に攻め込んで支配して、
自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること」
勇者「許されるわけ、無いっ」
魔王「人間が勝ったら魔族の土地に同じ事をするだろうね」
勇者「人間は、そんなことっ」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「しないって、云えないだろう?」
勇者「……」
魔王「まぁ、いろんな世界がそうやって滅びていったんだ」
勇者「世界?」
魔王「ああ、それは私たち一族の研究だよ。
気にしないで。でも、私は……」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:26:43.76 ID:s4r1gUtjP
魔王「私は、まだ見たことがない物が見たいんだ」
勇者「……」
魔王「勇者になら、判るかも知れないと思ったんだよ」
勇者「何を、だよ」
魔王「言葉では言い表せないけれど」
勇者「お前学者なんだろ?」
魔王「学者……? ああ、うん、そんな物だ」
勇者「じゃぁ、説明しろよ」
魔王「うーん、つまり」
勇者「……」
魔王「『あの丘の向こうに何があるんだろう?』って
思ったことはないかい? 『この船の向かう先には
何があるんだろう?』ってワクワクした覚えは?」
勇者「そりゃ……あるけど。わりと、沢山」
魔王「そうだろう? 勇者だものな!」
勇者「何でそんなに嬉しそうなんだよ」
勇者「……」
魔王「勇者になら、判るかも知れないと思ったんだよ」
勇者「何を、だよ」
魔王「言葉では言い表せないけれど」
勇者「お前学者なんだろ?」
魔王「学者……? ああ、うん、そんな物だ」
勇者「じゃぁ、説明しろよ」
魔王「うーん、つまり」
勇者「……」
魔王「『あの丘の向こうに何があるんだろう?』って
思ったことはないかい? 『この船の向かう先には
何があるんだろう?』ってワクワクした覚えは?」
勇者「そりゃ……あるけど。わりと、沢山」
魔王「そうだろう? 勇者だものな!」
勇者「何でそんなに嬉しそうなんだよ」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:30:05.56 ID:s4r1gUtjP
魔王「だから、そう言う物が見たいんだ」
勇者「……勇者になりたいのか?」
魔王「近い。でも、違う。だって私は学者
なのだろうし、いまのこの身は魔王だ……」
勇者「……」
魔王「やってて幸せとは云えないけれど
責任を感じるし他の誰かに押しつける気はない。
勇者じゃない私が、勇者になりたいなんて
そんな夢物語で時間を浪費するつもりはないんだ。
けれど」
魔王「見たことがない物は、見てみたい」
勇者「……そか」
魔王「だから、もう一度云う。
『この我のものとなれ、勇者よ』
私が望む未だ見ぬ物を探すために
私の瞳、私の明かり、私の剣となって欲しい」
勇者「断る」
勇者「……勇者になりたいのか?」
魔王「近い。でも、違う。だって私は学者
なのだろうし、いまのこの身は魔王だ……」
勇者「……」
魔王「やってて幸せとは云えないけれど
責任を感じるし他の誰かに押しつける気はない。
勇者じゃない私が、勇者になりたいなんて
そんな夢物語で時間を浪費するつもりはないんだ。
けれど」
魔王「見たことがない物は、見てみたい」
勇者「……そか」
魔王「だから、もう一度云う。
『この我のものとなれ、勇者よ』
私が望む未だ見ぬ物を探すために
私の瞳、私の明かり、私の剣となって欲しい」
勇者「断る」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:31:56.02 ID:8SE1zQF00
ドラクエ1のエンディング詳細はこれだったのか!!!
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:52:36.79 ID:yPDuc+cD0
せかいをはんぶんこ!
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:32:17.06 ID:6RxRyL350
見てるよ見てるよ
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:34:02.22 ID:s4r1gUtjP
魔王「だめか?」
勇者「だめ」
魔王「絶対か?」
勇者「絶対」
魔王「交渉の余地はないのか?」
勇者「ない」
魔王「……」
勇者「……ないぞ? ほんとだぞ」
魔王「あると見た」
勇者「くぁ、なんでそこで上目遣いなんだよ。
学者がとって良い態度かよっ」
魔王「学者であると同時に私は経済屋なんだ。
経済屋は決して諦めない。どんなことにでも
妥協して明日を目指すんだ」
勇者「なんだか俺より勇者っぽい」
勇者「だめ」
魔王「絶対か?」
勇者「絶対」
魔王「交渉の余地はないのか?」
勇者「ない」
魔王「……」
勇者「……ないぞ? ほんとだぞ」
魔王「あると見た」
勇者「くぁ、なんでそこで上目遣いなんだよ。
学者がとって良い態度かよっ」
魔王「学者であると同時に私は経済屋なんだ。
経済屋は決して諦めない。どんなことにでも
妥協して明日を目指すんだ」
勇者「なんだか俺より勇者っぽい」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:34:38.17 ID:qOWxW7aqO
支援!おもしろいよ。
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:39:17.01 ID:s4r1gUtjP
魔王「故事によれば『世界の半分』を交渉材料にするらしい」
勇者「へー」
魔王「余裕たっぷりだな」
勇者「そんなので転ぶ勇者がいるかよ。
もしいたらそいつは勇者でも何でもない。
1から出直せって話だ」
魔王「うん、私の知っている故事でも
結末はそうなっていた」
勇者「ださっ」
魔王「私もそう思う。そもそもその魔王だって
世界征服が終了していた訳じゃないだろうに。
自分が所有していない物件の50%を譲渡するなんて
商道徳にてらしても法的観点から見ても
契約の有効性に疑問を持たざるを得ない」
勇者「そういう嘘つきだから勇者にふられるんだよ」
魔王「仰せの通りだ」
勇者「へー」
魔王「余裕たっぷりだな」
勇者「そんなので転ぶ勇者がいるかよ。
もしいたらそいつは勇者でも何でもない。
1から出直せって話だ」
魔王「うん、私の知っている故事でも
結末はそうなっていた」
勇者「ださっ」
魔王「私もそう思う。そもそもその魔王だって
世界征服が終了していた訳じゃないだろうに。
自分が所有していない物件の50%を譲渡するなんて
商道徳にてらしても法的観点から見ても
契約の有効性に疑問を持たざるを得ない」
勇者「そういう嘘つきだから勇者にふられるんだよ」
魔王「仰せの通りだ」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:44:23.58 ID:s4r1gUtjP
勇者「だからといって魔界の50%譲渡とか云ったって
俺は絶対うんなんて云わないからな。
そんな見知らぬ土地なんかもらったってちっとも
嬉しくない。そもそも賄賂や金品で転ぶなんて
勇者のすることじゃないぞ。
人間ってのは、ベッド一個のスペースと、
毎日腹が満ちる程度の雲のがあればそれで充分なんだ」
魔王「清貧の志だな」
勇者「貧しいとか云うな。魔王のクセにっ」
魔王「私としても領土の割譲をテーマに交渉する気はない」
勇者「そうなのか?」
魔王「領土割譲は、後世の統治から見た場合、
民族問題やプライド城の問題があって、紛争の火種に
なることもしばしばなのだ。眼前の交渉が重要とはいえ
後世に禍根を残すのは気が進まない」
勇者「ふぅん……。そういうものなのか」
魔王「そうなのだ。それにだいたい『50%』という
言い方が良くない。それでは結局『こちらとそちら』が
再生産されるだけではないか」
俺は絶対うんなんて云わないからな。
そんな見知らぬ土地なんかもらったってちっとも
嬉しくない。そもそも賄賂や金品で転ぶなんて
勇者のすることじゃないぞ。
人間ってのは、ベッド一個のスペースと、
毎日腹が満ちる程度の雲のがあればそれで充分なんだ」
魔王「清貧の志だな」
勇者「貧しいとか云うな。魔王のクセにっ」
魔王「私としても領土の割譲をテーマに交渉する気はない」
勇者「そうなのか?」
魔王「領土割譲は、後世の統治から見た場合、
民族問題やプライド城の問題があって、紛争の火種に
なることもしばしばなのだ。眼前の交渉が重要とはいえ
後世に禍根を残すのは気が進まない」
勇者「ふぅん……。そういうものなのか」
魔王「そうなのだ。それにだいたい『50%』という
言い方が良くない。それでは結局『こちらとそちら』が
再生産されるだけではないか」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:44:25.04 ID:tjWFelAOO
勇者がうざい
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:48:30.93 ID:VDp+O7me0
なんという良スレ
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:49:02.17 ID:wTnPTrp80
支援
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:49:22.62 ID:0Tddc46GO
魔王は目元に憂いを湛えた大人の女性だな
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:50:17.49 ID:s4r1gUtjP
勇者「どうゆうこと?」
魔王「つまり、世界を分割するのが問題だ、ということだ。
その分割という発送は、結局現在の問題である
『人間世界と魔族世界』という対立を
『勇者の支配地域と魔王の支配地域』という対立に
問題をすり替えただけだという話だ」
勇者「あー。もっともな話だ」
魔王「だろう? それは交渉でも妥協でもなく
ただの時間稼ぎに過ぎない」
勇者「ふむ」
魔王「故にその種の論法は却下だ」
勇者「じゃぁ、交渉も失敗だな。時間もちょうど半日だ。
……戦闘するような気分じゃなくなっちゃったけれどさ」
魔王「いや、ちゃんと提案はある」
勇者「あるのか?」
魔王「半分などとけちくさいことは云わない。
でも大地は私の物ではないから差し出せない。
勇者が欲しい。代価は私にはらえる全て。
つまり、私自身だ。
これだけは私の意志で勇者に捧げられる。
お願いだから私の物になってくれ」
魔王「つまり、世界を分割するのが問題だ、ということだ。
その分割という発送は、結局現在の問題である
『人間世界と魔族世界』という対立を
『勇者の支配地域と魔王の支配地域』という対立に
問題をすり替えただけだという話だ」
勇者「あー。もっともな話だ」
魔王「だろう? それは交渉でも妥協でもなく
ただの時間稼ぎに過ぎない」
勇者「ふむ」
魔王「故にその種の論法は却下だ」
勇者「じゃぁ、交渉も失敗だな。時間もちょうど半日だ。
……戦闘するような気分じゃなくなっちゃったけれどさ」
魔王「いや、ちゃんと提案はある」
勇者「あるのか?」
魔王「半分などとけちくさいことは云わない。
でも大地は私の物ではないから差し出せない。
勇者が欲しい。代価は私にはらえる全て。
つまり、私自身だ。
これだけは私の意志で勇者に捧げられる。
お願いだから私の物になってくれ」
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:53:20.60 ID:oC5/O60WO
お金って何だろうって最近よく考える
よくインフレにも成らず、調整が出来てるよな。
よくインフレにも成らず、調整が出来てるよな。
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:55:56.79 ID:s4r1gUtjP
勇者「……お、お、おまっ」
魔王「口をぱくぱくさせると間抜けに見えるぞ」
勇者「なっ何をっ」
魔王「交渉の提案だ」
勇者「何言ってるか判ってるのかっ?」
魔王「判っている」
勇者「しょ、正気かっ!?」
魔王「もちろんだ」
勇者「もうちょっと物考えて発言しろ!
わ、わ、わ、わきまえろっ!!」
魔王「そんなに驚かないでも良いではないか。
人間世界では15にもなれば農夫の息子だろうが
宿屋の娘だろうが、そこら中でこのような睦言と
甘やかな契約を交わして乳繰りあっていると聞く」
勇者「聞くなよっ」
魔王「正確には書物で読んだわけだが。
――読んだだけで実体は不明で経験もない。
これも一つの『未だ見ぬ物』だな」
魔王「口をぱくぱくさせると間抜けに見えるぞ」
勇者「なっ何をっ」
魔王「交渉の提案だ」
勇者「何言ってるか判ってるのかっ?」
魔王「判っている」
勇者「しょ、正気かっ!?」
魔王「もちろんだ」
勇者「もうちょっと物考えて発言しろ!
わ、わ、わ、わきまえろっ!!」
魔王「そんなに驚かないでも良いではないか。
人間世界では15にもなれば農夫の息子だろうが
宿屋の娘だろうが、そこら中でこのような睦言と
甘やかな契約を交わして乳繰りあっていると聞く」
勇者「聞くなよっ」
魔王「正確には書物で読んだわけだが。
――読んだだけで実体は不明で経験もない。
これも一つの『未だ見ぬ物』だな」
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:56:00.06 ID:INursCOY0
魔王のイメージが色っぽい大人のお姉さんで固まった
なんという誘惑。ここで頷かなければ勇者は男じゃない
なんという誘惑。ここで頷かなければ勇者は男じゃない
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:58:44.10 ID:hROtz5Pp0
魔王-お姉さん
勇者-若造
勇者-若造
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 18:59:54.23 ID:s4r1gUtjP
勇者「何を」
魔王「優れた提案とは提案した時点で
提案者の目的の一分を達せられるのだ。
『純潔を捧げる願い』を告白するなどと
私の人生に訪れるとは思っていなかった知見だ。
精神的に平静ではいられないなんて貴重だな」
勇者「まるっきり平静に見えるよ」
魔王「ダメか?」
勇者「だっ、だめっ!!」
魔王「絶対か?」
勇者「ぜ、ぜ、ぜ」
魔王「前回よりもさらに余地があるように見える」
勇者「近寄るなっ」
魔王「許可無い限り触れたりしない。私は奥手なんだ」
勇者「契約主義者ってさっきまでは云ってたじゃないか」
魔王「それは真実だ。『奥手』というのは
真実にかぶせる演出上の工夫だ」
魔王「優れた提案とは提案した時点で
提案者の目的の一分を達せられるのだ。
『純潔を捧げる願い』を告白するなどと
私の人生に訪れるとは思っていなかった知見だ。
精神的に平静ではいられないなんて貴重だな」
勇者「まるっきり平静に見えるよ」
魔王「ダメか?」
勇者「だっ、だめっ!!」
魔王「絶対か?」
勇者「ぜ、ぜ、ぜ」
魔王「前回よりもさらに余地があるように見える」
勇者「近寄るなっ」
魔王「許可無い限り触れたりしない。私は奥手なんだ」
勇者「契約主義者ってさっきまでは云ってたじゃないか」
魔王「それは真実だ。『奥手』というのは
真実にかぶせる演出上の工夫だ」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:05:18.00 ID:s4r1gUtjP
魔王「勇者」
勇者「何だよっ」
魔王「んぅ。話づらいな」
勇者「あんだけ悲惨な未来をぺらぺら解説して
やがったじゃないか」
魔王「あれは専門分野の講義だったから」
勇者「どんだけ死にものぐるいな専門分野なんだよ」
魔王「経済というのは血が流れない戦争なんだ」
勇者「おっかないよ。戦闘能力のない魔王を
初めておっかないと思ったよっ」
魔王「怖がらせるのは本意ではないし……。
混乱させたら申し訳ないと思うけれど」
勇者「……」
魔王「少しセールストークをする」
勇者「うー。押されてる」
魔王「私を独占すると色々便利だぞ?」
勇者「たとえば?」
魔王「家計簿を付けるのが得意だ。完璧を約束できる」
勇者「何だよっ」
魔王「んぅ。話づらいな」
勇者「あんだけ悲惨な未来をぺらぺら解説して
やがったじゃないか」
魔王「あれは専門分野の講義だったから」
勇者「どんだけ死にものぐるいな専門分野なんだよ」
魔王「経済というのは血が流れない戦争なんだ」
勇者「おっかないよ。戦闘能力のない魔王を
初めておっかないと思ったよっ」
魔王「怖がらせるのは本意ではないし……。
混乱させたら申し訳ないと思うけれど」
勇者「……」
魔王「少しセールストークをする」
勇者「うー。押されてる」
魔王「私を独占すると色々便利だぞ?」
勇者「たとえば?」
魔王「家計簿を付けるのが得意だ。完璧を約束できる」
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:06:40.52 ID:8SE1zQF00
意外に庶民的w
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:18.30 ID:iSLHBLTp0
魔王のセールストークに思いっきりグラついたw
かわいすぎるだろwwwww
かわいすぎるだろwwwww
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:25.36 ID:yPDuc+cD0
いいお母さんになりそうですw
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:07:27.14 ID:zBdn+UA50
魔王結婚してくれ
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:09:56.32 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだかなぁ。家計簿か」
魔王「それにね」
勇者「?」
魔王「この戦争の向こうに行ける」
勇者「それは出来ないって云ってたじゃないか」
魔王「もちろん、すぐには無理だ。人間の王たちも
納得はしまい。私が投降しても、それは秘密裏に
処理されて、偽魔王が立てられるだろう。
それくらいこの戦争は、人間社会に必要になって
しまっている」
勇者「……」
魔王「でも、だからこそ、それが『別の結末』を
迎える事ができるのならば、
それは私にとってだけじゃない。
三千世界にとって『未だ見ぬ物』じゃないだろうか?」
勇者「……」
魔王「どうだ?」
魔王「それにね」
勇者「?」
魔王「この戦争の向こうに行ける」
勇者「それは出来ないって云ってたじゃないか」
魔王「もちろん、すぐには無理だ。人間の王たちも
納得はしまい。私が投降しても、それは秘密裏に
処理されて、偽魔王が立てられるだろう。
それくらいこの戦争は、人間社会に必要になって
しまっている」
勇者「……」
魔王「でも、だからこそ、それが『別の結末』を
迎える事ができるのならば、
それは私にとってだけじゃない。
三千世界にとって『未だ見ぬ物』じゃないだろうか?」
勇者「……」
魔王「どうだ?」
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:17:09.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「それが」
魔王「ん?」
勇者「おまえなんだ」
魔王「うん、これが私なのだ」
勇者「ずっとそんなこと考えてきたんだ」
魔王「戦争を終わらせるのが軍だとすれば
終わる着地点を模索するのが王の役目だ」
勇者「そのために俺を欲しがったのか?」
魔王「うん、まぁ。そうとも云える」
勇者「……」
魔王「いや、誤解しないでくれっ。
勇者が欲しいのは本当だぞ?
向こう側を一緒に見に行く連れが欲しいだろう?
朝の散歩に一緒に出かけるような気分なんだっ。
それから家計簿も本当だ。偽りはない。
なんだったら賃借対照表や生涯賃金提案書も書けるぞっ。
足りないかっ? 足りないのか?
そうだな。……あまりにも粗末な粗品だが
一緒にいるのも得意だ。私は静かな魔王だからな。
部屋に置いておいても邪魔にはならないことに定評がある
添い寝とかも多分役に立たないほど下手だろうが
セット商品についている細々とした備品程度でいいならな
付けることが出来る」
魔王「ん?」
勇者「おまえなんだ」
魔王「うん、これが私なのだ」
勇者「ずっとそんなこと考えてきたんだ」
魔王「戦争を終わらせるのが軍だとすれば
終わる着地点を模索するのが王の役目だ」
勇者「そのために俺を欲しがったのか?」
魔王「うん、まぁ。そうとも云える」
勇者「……」
魔王「いや、誤解しないでくれっ。
勇者が欲しいのは本当だぞ?
向こう側を一緒に見に行く連れが欲しいだろう?
朝の散歩に一緒に出かけるような気分なんだっ。
それから家計簿も本当だ。偽りはない。
なんだったら賃借対照表や生涯賃金提案書も書けるぞっ。
足りないかっ? 足りないのか?
そうだな。……あまりにも粗末な粗品だが
一緒にいるのも得意だ。私は静かな魔王だからな。
部屋に置いておいても邪魔にはならないことに定評がある
添い寝とかも多分役に立たないほど下手だろうが
セット商品についている細々とした備品程度でいいならな
付けることが出来る」
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:20:55.82 ID:LTpYI0vmO
魔王可愛い
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:24:09.48 ID:s4r1gUtjP
勇者「あー」
魔王「契約詐欺にならないようにあらかじめ
告げておかなくてはならないのだが、
私は料理は不得手だ。料理は科学なのだろう?
わたしにはゲル化や乳化を行なうための
洗練された手先の技術が欠けているようで
調理に関して期待してもらっては困る」
魔王「それから、あー。
世間の、ほら。大多数の一般的な性別において
男性を有する成人の人間が望むような外見的
肉体的な美しさには欠けていると思われる。
運動不足だしな」
勇者「そうか? そ、そんなことないだろ」
魔王「いいや、そんなことはあるのだ。
これは侍女たちの用意した魔王のお仕着せであって
欠点が隠れて、と言うか、見えないだけで、
二の腕とかつまめるのだっ」
勇者「泣きそうになるなよ」
魔王「ぷるぷるなのだぞ!?」
魔王「契約詐欺にならないようにあらかじめ
告げておかなくてはならないのだが、
私は料理は不得手だ。料理は科学なのだろう?
わたしにはゲル化や乳化を行なうための
洗練された手先の技術が欠けているようで
調理に関して期待してもらっては困る」
魔王「それから、あー。
世間の、ほら。大多数の一般的な性別において
男性を有する成人の人間が望むような外見的
肉体的な美しさには欠けていると思われる。
運動不足だしな」
勇者「そうか? そ、そんなことないだろ」
魔王「いいや、そんなことはあるのだ。
これは侍女たちの用意した魔王のお仕着せであって
欠点が隠れて、と言うか、見えないだけで、
二の腕とかつまめるのだっ」
勇者「泣きそうになるなよ」
魔王「ぷるぷるなのだぞ!?」
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:29:31.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「いや、その……大変美味しそうに見えます。
……特に胸とかおっぱいとか」
魔王「いや、いいんだ。無用な慰めだ。
それに地味すぎて、こればかりは申し訳ない。
思うに我が一族の頭部は長い伝統で
見てくれよりも中身を重視してきたはずで」
勇者「そうか?」
魔王「私も娘時代、つまり150年ほど前だが
その時代にもうちょっとこう、何というか
身なりやお手入れに気を配っておけば
こんな一世一代の交渉時、リコールにおびえる経営者の
気分を味合わないで済んだはずなのに……」
勇者「用語が難しいな」
魔王「世の中は色々難しいのだ」
勇者「まったくだな」
……特に胸とかおっぱいとか」
魔王「いや、いいんだ。無用な慰めだ。
それに地味すぎて、こればかりは申し訳ない。
思うに我が一族の頭部は長い伝統で
見てくれよりも中身を重視してきたはずで」
勇者「そうか?」
魔王「私も娘時代、つまり150年ほど前だが
その時代にもうちょっとこう、何というか
身なりやお手入れに気を配っておけば
こんな一世一代の交渉時、リコールにおびえる経営者の
気分を味合わないで済んだはずなのに……」
勇者「用語が難しいな」
魔王「世の中は色々難しいのだ」
勇者「まったくだな」
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:31:19.59 ID:0Tddc46GO
一瞬魔王の頭部が長いのかと思ったぜ…
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:34:50.04 ID:tjWFelAOO
>>98 俺も焦ったわ
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:31:33.06 ID:uUam7kAj0
巨乳お姉さんとな
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:34:36.34 ID:s4r1gUtjP
魔王「とにかく、そう言った外見的な物については
あまり満足のいく案件ではないのだが、経済を
中心にした知識と……知識と……。
それくらいしか誇れないのか、私は」
勇者「……」
魔王「あと誇ることが出来るのは、貞淑さくらいだ。
私は長命種で、学者の家系の出だからな。
それに純然たる契約主義者でもある。
私にとっていったん締結されれば
この種の契約は魂にまで食い込み
過去も未来もその一転において鋼に勝る強度を持つだろう。
――側近く侍る。直ぐなる時も病める時も寄り添おう。
それは約束できる」
勇者「……」
魔王「どうだ? 私の物にならないか?
私はあんまり我が儘は言わないぞ。
『丘の向こう側』に一緒に行ってくれれば
それだけで満足だ」
あまり満足のいく案件ではないのだが、経済を
中心にした知識と……知識と……。
それくらいしか誇れないのか、私は」
勇者「……」
魔王「あと誇ることが出来るのは、貞淑さくらいだ。
私は長命種で、学者の家系の出だからな。
それに純然たる契約主義者でもある。
私にとっていったん締結されれば
この種の契約は魂にまで食い込み
過去も未来もその一転において鋼に勝る強度を持つだろう。
――側近く侍る。直ぐなる時も病める時も寄り添おう。
それは約束できる」
勇者「……」
魔王「どうだ? 私の物にならないか?
私はあんまり我が儘は言わないぞ。
『丘の向こう側』に一緒に行ってくれれば
それだけで満足だ」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:40:31.38 ID:s4r1gUtjP
勇者「沢山殺すことになるんだろうな」
魔王「ああ。……うん。誤魔化さない」
勇者「河が血で染まるほどかな」
魔王「うん、終わるまでは。手を血で汚さない約束は
できない。私も、勇者も、非道なことを
沢山することになるだろう」
勇者「裏切り者と呼ばれるかな」
魔王「それは、正体を隠すことも出来る。
私の誇りにかけて、勇者の伝説は綺麗なままに
出来るはずだ」
勇者「必要なのか?」
魔王「それは違う。このままワルツのように戦争を
消耗を繰り返し、屍山血河の平和を享受することも
この世界に許された選択肢の一つだ」
勇者「それはそれでおびただしい犠牲だろう」
魔王「でも勇者が直接的手を汚さないで済む」
魔王「ああ。……うん。誤魔化さない」
勇者「河が血で染まるほどかな」
魔王「うん、終わるまでは。手を血で汚さない約束は
できない。私も、勇者も、非道なことを
沢山することになるだろう」
勇者「裏切り者と呼ばれるかな」
魔王「それは、正体を隠すことも出来る。
私の誇りにかけて、勇者の伝説は綺麗なままに
出来るはずだ」
勇者「必要なのか?」
魔王「それは違う。このままワルツのように戦争を
消耗を繰り返し、屍山血河の平和を享受することも
この世界に許された選択肢の一つだ」
勇者「それはそれでおびただしい犠牲だろう」
魔王「でも勇者が直接的手を汚さないで済む」
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:46:44.08 ID:s4r1gUtjP
勇者「なんだよ契約したくないのかよ」
魔王「騙して契約したくないんだ」
勇者「そか」
魔王「騙して手に入れたものは、一夜で失われる」
勇者「信義に厚いんだな」
魔王「善悪の話じゃない。ゲーム理論で証明された
商道徳レベルでの話だよ」
勇者「よし、お前の物になる」
魔王「いいのか?」
勇者「いいんだよ。……あー、いっとくけどなっ」
魔王「?」
勇者「おっぱいのためじゃないからなっ!」
魔王「こんなものがいいのか?」 ふにふに
勇者「自分で揉むなっ」
魔王「勇者」
勇者「何だよ、魔王っ」
魔王「触れたい。触って良いですか?」
魔王「騙して契約したくないんだ」
勇者「そか」
魔王「騙して手に入れたものは、一夜で失われる」
勇者「信義に厚いんだな」
魔王「善悪の話じゃない。ゲーム理論で証明された
商道徳レベルでの話だよ」
勇者「よし、お前の物になる」
魔王「いいのか?」
勇者「いいんだよ。……あー、いっとくけどなっ」
魔王「?」
勇者「おっぱいのためじゃないからなっ!」
魔王「こんなものがいいのか?」 ふにふに
勇者「自分で揉むなっ」
魔王「勇者」
勇者「何だよ、魔王っ」
魔王「触れたい。触って良いですか?」
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:47:15.39 ID:Nsb3gHws0
魔王は、FF8のイデアだ
異論は、認める
異論は、認める
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:57:12.81 ID:s4r1gUtjP
勇者「……」
魔王「信用してないな?」
勇者「口調がいきなり丁寧でびっくりしただけだ」
魔王「少しだけだから、触らせてくれ」
勇者「判った」
魔王「……」 おずおず
勇者「魔王、手がひんやりしてるな」
魔王「冷たいか? 済まない」
勇者「いや、気持ちよい」
魔王「私は、勇者のものだ」
勇者「俺は魔王のものになる」
魔王「契約成立だ」 勇者「契約成立だな」
魔王「嬉しいぞ」にこっ
勇者「……。くぁっ。は、はなれろっ」
魔王「そうか?」
勇者「で、最初の一手はどうするんだよ」
魔王「そうだな……まずは、麦から手を付ける」
勇者「麦か……。長い旅になるな」
魔王「もちろん。わたしは勇者と一生離れる気は
ないんだからなっ」
魔王「信用してないな?」
勇者「口調がいきなり丁寧でびっくりしただけだ」
魔王「少しだけだから、触らせてくれ」
勇者「判った」
魔王「……」 おずおず
勇者「魔王、手がひんやりしてるな」
魔王「冷たいか? 済まない」
勇者「いや、気持ちよい」
魔王「私は、勇者のものだ」
勇者「俺は魔王のものになる」
魔王「契約成立だ」 勇者「契約成立だな」
魔王「嬉しいぞ」にこっ
勇者「……。くぁっ。は、はなれろっ」
魔王「そうか?」
勇者「で、最初の一手はどうするんだよ」
魔王「そうだな……まずは、麦から手を付ける」
勇者「麦か……。長い旅になるな」
魔王「もちろん。わたしは勇者と一生離れる気は
ないんだからなっ」
111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:58:56.62 ID:INursCOY0
なんだ、もっと見ていたいんだが、もう終わりなのか…?
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 19:59:34.85 ID:s4r1gUtjP
よし、良い区切りまで来たし、
いったんおわるんだぜ、べいべいぇー。
魔王と勇者は、このあと世直し旅? すんのかなー。
お腹減ったんだぜー。
いったんおわるんだぜ、べいべいぇー。
魔王と勇者は、このあと世直し旅? すんのかなー。
お腹減ったんだぜー。
113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:00:31.57 ID:vt5xegV+O
魔王が急に可愛くなった
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:00:33.29 ID:FgcY1YL00
おつ!面白いから期待してるぜ
115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:01:30.74 ID:jRO4gQ6G0
ひとまず乙
経済なんたらかんたらの話面白かったよ
もっと読みたい
経済なんたらかんたらの話面白かったよ
もっと読みたい
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:11:23.91 ID:hZUXhspQ0
続けてもいいんじゃよ?
119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:23:35.09 ID:aUNI2KPT0
終わり?
121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 20:49:58.07 ID:tjWFelAOO
続きに期待
130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 22:54:12.52 ID:56Uu5Ef2O
保守
132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:28:25.44 ID:voFsT+3oO
ほあ
133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:39:08.74 ID:s4r1gUtjP
――冬越しの村
勇者「うぉ、寒くなってきたな」
魔王「これから冬に向かっていくからな」
勇者「こんな中途半端なところで良いのか?」
魔王「中途半端とは?」
勇者「いや、だからさ。魔王の話によれば
いまの人間、中央大陸にとって麦は食料として大事だ。
ってことを基本にしてるんだろう?」
魔王「ああ、そうだ」
勇者「だったら、もっと農業大国の湖の国とか
紫旗女王国とかさ、そっちに行った方が良いんじゃね?」
魔王「話が聞いてもらえるならな」
勇者「あー」
魔王「勇者もしばらくは姿を見せない方がよいと思う」
勇者「そうか?」
魔王「ああ。あんな風に私の所へよこされたんだ。
誰かが勇者を疎ましく思っていたのかも知れない」
勇者「んなことないって」
勇者「うぉ、寒くなってきたな」
魔王「これから冬に向かっていくからな」
勇者「こんな中途半端なところで良いのか?」
魔王「中途半端とは?」
勇者「いや、だからさ。魔王の話によれば
いまの人間、中央大陸にとって麦は食料として大事だ。
ってことを基本にしてるんだろう?」
魔王「ああ、そうだ」
勇者「だったら、もっと農業大国の湖の国とか
紫旗女王国とかさ、そっちに行った方が良いんじゃね?」
魔王「話が聞いてもらえるならな」
勇者「あー」
魔王「勇者もしばらくは姿を見せない方がよいと思う」
勇者「そうか?」
魔王「ああ。あんな風に私の所へよこされたんだ。
誰かが勇者を疎ましく思っていたのかも知れない」
勇者「んなことないって」
134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:39:32.45 ID:FgcY1YL00
おお まっていたぞ
137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:45:31.80 ID:s4r1gUtjP
魔王「それに何処に行って紹介するにしたところで
説得力を出すためには実際の実験と資料が必要だ」
勇者「そりゃそうだ」
魔王「この村でそのための手はずを整える」
勇者「そう、なのか?」
魔王「うむ。手の者を忍び込ませているのだ」
勇者「手回しが良いな」
魔王「何事も根回しと調整が必要だ」
勇者「この村か」
魔王「ああ、何の変哲もない村だろう?」
勇者「うん、こんな村は沢山知っている」
魔王「『南部諸王国』辺境部では典型的な開拓村だな。
複合的な大規模農業を中心に小作農や職人たちが
緩やかな村を形成している」
勇者「魔王軍との戦いもあるだろうになー」
魔王「それでも大地にしがみついて生きてゆくんだ。
人間はそこがすごいところだ」
説得力を出すためには実際の実験と資料が必要だ」
勇者「そりゃそうだ」
魔王「この村でそのための手はずを整える」
勇者「そう、なのか?」
魔王「うむ。手の者を忍び込ませているのだ」
勇者「手回しが良いな」
魔王「何事も根回しと調整が必要だ」
勇者「この村か」
魔王「ああ、何の変哲もない村だろう?」
勇者「うん、こんな村は沢山知っている」
魔王「『南部諸王国』辺境部では典型的な開拓村だな。
複合的な大規模農業を中心に小作農や職人たちが
緩やかな村を形成している」
勇者「魔王軍との戦いもあるだろうになー」
魔王「それでも大地にしがみついて生きてゆくんだ。
人間はそこがすごいところだ」
139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:49:39.59 ID:s4r1gUtjP
勇者「で、手の者ってのは」
魔王「ああ。小さな一軒家を用意してもらってるんだが。
どこなのだろうな。この村としか聞いてないんだが」
勇者「あー。そうなのか? 探せば判るんだろうけれど
そろそろ陽も暮れるし、こんな寒い中をうろつき回るのは
ぞっとしないなぁ」
魔王「うむ、もっともな指摘だ」
勇者「だよなぁ」
メイド長「まおー様ぁ~まおー様ぁ~♪」
勇者「ば、ば、ばっ」
魔王「おお。この声は」
メイド長「まおー様~♪」
魔王「おお、紹介しよう。勇者!」
勇者「この馬鹿っ。一応人間の村だぞっ!
まおーまおー叫んでどうするっ!」
魔王「む。そう言えばそうだ。以後注意するように」
メイド長「はい、まおー様!」
魔王「ああ。小さな一軒家を用意してもらってるんだが。
どこなのだろうな。この村としか聞いてないんだが」
勇者「あー。そうなのか? 探せば判るんだろうけれど
そろそろ陽も暮れるし、こんな寒い中をうろつき回るのは
ぞっとしないなぁ」
魔王「うむ、もっともな指摘だ」
勇者「だよなぁ」
メイド長「まおー様ぁ~まおー様ぁ~♪」
勇者「ば、ば、ばっ」
魔王「おお。この声は」
メイド長「まおー様~♪」
魔王「おお、紹介しよう。勇者!」
勇者「この馬鹿っ。一応人間の村だぞっ!
まおーまおー叫んでどうするっ!」
魔王「む。そう言えばそうだ。以後注意するように」
メイド長「はい、まおー様!」
142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/03(木) 23:55:53.42 ID:s4r1gUtjP
魔王「まぁ、大丈夫だ。そんなに怒ってくれるな」
勇者「むー」
メイド長「怒りすぎると皺が取れなくなりますよ」なでなで
勇者「こいつは何なんだ?」
魔王「これは私の側近で、メイドを束ねるメイド長だ」
メイド長「ご紹介にあずかったメイド長です。
まおー様のことは幼い頃から世話をさせていただいて
おりますわ。この度は勇者様とまおー様のご結婚
まことに喜ばしく、お見守りさせていただいてきた
この身、この胸の内も震えんほどです」
勇者「突っ込みどころはたくさんあるんだけど、
最大のものは結婚なんてしてないって事だぞ」
メイド長「そうなんですか?」
魔王「期間無制限の相互所有契約だ」
メイド長「あらあら、まさに結婚じゃないですか」
魔王「白詰草とクローバーほどに違う」
メイド長「それじゃ同じものじゃないですか」
勇者「むー」
メイド長「怒りすぎると皺が取れなくなりますよ」なでなで
勇者「こいつは何なんだ?」
魔王「これは私の側近で、メイドを束ねるメイド長だ」
メイド長「ご紹介にあずかったメイド長です。
まおー様のことは幼い頃から世話をさせていただいて
おりますわ。この度は勇者様とまおー様のご結婚
まことに喜ばしく、お見守りさせていただいてきた
この身、この胸の内も震えんほどです」
勇者「突っ込みどころはたくさんあるんだけど、
最大のものは結婚なんてしてないって事だぞ」
メイド長「そうなんですか?」
魔王「期間無制限の相互所有契約だ」
メイド長「あらあら、まさに結婚じゃないですか」
魔王「白詰草とクローバーほどに違う」
メイド長「それじゃ同じものじゃないですか」
145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:02:31.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「あえて名前を変えることによる風情の違いがある」
メイド長「ああ、そうでしたか!
メイドと召使いと側女と寝室奉仕奴隷のようなものですね」
魔王「それも風情か?」
勇者「……」
メイド長「風情は大事ですよ。男女間の機微の80%は
風情で構成されていると言っても過言ではありません」
魔王「なんと! それでは殆ど具材がないではないか?」
メイド長「そこがミソなんですよ」
勇者「あのー。寒いんだけど」
メイド長「おやおや、まぁ!」
魔王「勇者が寒いと云っているんだ。どうにかならんか?」
メイド長「では、こちらへ。ご案内しますわ」
魔王「おお、守備はどうだ?」
メイド長「さほど大きくはありませんが、
村はずれの古い館を改修してございます」
魔王「でかしたぞ、メイド長」
メイド長「ああ、そうでしたか!
メイドと召使いと側女と寝室奉仕奴隷のようなものですね」
魔王「それも風情か?」
勇者「……」
メイド長「風情は大事ですよ。男女間の機微の80%は
風情で構成されていると言っても過言ではありません」
魔王「なんと! それでは殆ど具材がないではないか?」
メイド長「そこがミソなんですよ」
勇者「あのー。寒いんだけど」
メイド長「おやおや、まぁ!」
魔王「勇者が寒いと云っているんだ。どうにかならんか?」
メイド長「では、こちらへ。ご案内しますわ」
魔王「おお、守備はどうだ?」
メイド長「さほど大きくはありませんが、
村はずれの古い館を改修してございます」
魔王「でかしたぞ、メイド長」
146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:09:14.85 ID:EUtQl2pV0
実に瀟洒
147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:12:08.05 ID:AIDyRnsCP
――古びた洋館
勇者「なんだよなんだよ。充分でかいじゃないか」
メイド長「とんでもない。魔王城の1/100以下です」
勇者「あれはダンジョンだろ。一緒にするな」
魔王「いや、私はあそこに住んでたんだがな」
勇者「ああ、そっか」
メイド長「こちらへどうぞ。
ただいまお茶をお持ちしましょう」
魔王「すまんなー」
勇者「側近って、どんな関係なんだ?」
魔王「うむ。ああ見えてメイド長はわたしの親戚なのだ」
勇者「学者なのか?」
魔王「んー。学者というと語弊があるな。
学者一族と云うより『好奇心を抑えられない一族』なのだ。
しかも専門ジャンルを追求してしまう類の。
彼女は、私から見ると年上なのだが、
なんだか『メイド道』とやらに目覚めてしまってな」
勇者「ふむ……」
勇者「なんだよなんだよ。充分でかいじゃないか」
メイド長「とんでもない。魔王城の1/100以下です」
勇者「あれはダンジョンだろ。一緒にするな」
魔王「いや、私はあそこに住んでたんだがな」
勇者「ああ、そっか」
メイド長「こちらへどうぞ。
ただいまお茶をお持ちしましょう」
魔王「すまんなー」
勇者「側近って、どんな関係なんだ?」
魔王「うむ。ああ見えてメイド長はわたしの親戚なのだ」
勇者「学者なのか?」
魔王「んー。学者というと語弊があるな。
学者一族と云うより『好奇心を抑えられない一族』なのだ。
しかも専門ジャンルを追求してしまう類の。
彼女は、私から見ると年上なのだが、
なんだか『メイド道』とやらに目覚めてしまってな」
勇者「ふむ……」
149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:17:39.88 ID:AIDyRnsCP
メイド長「殿方における騎士道と似たようなものですわ」
魔王「早いな」
メイド長「紅茶でございますよ。
蜂蜜をたっぷり入れておきましたから」
魔王「まぁ、そんなわけで、ずっと一緒に育ったし
魔王軍の指揮なんかを任せたこともある」
勇者「おいおい、メイドってそんなことも出来るのか!?」
メイド長「主人のどのような求めにも応える。
それが私の『メイド道』ですわ」
魔王「早いな」
メイド長「紅茶でございますよ。
蜂蜜をたっぷり入れておきましたから」
魔王「まぁ、そんなわけで、ずっと一緒に育ったし
魔王軍の指揮なんかを任せたこともある」
勇者「おいおい、メイドってそんなことも出来るのか!?」
メイド長「主人のどのような求めにも応える。
それが私の『メイド道』ですわ」
151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:25:09.34 ID:xmRb8YGYO
メイドって凄い
152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:25:10.69 ID:AIDyRnsCP
魔王「これは、この館はどういう物件なんだ?」
勇者「そうだ、気になってた」
メイド長「さる貴族の別邸だったらしい建物でございます。
その貴族……騎士家だったそうですが、その家そのものは
跡継ぎを戦争で亡くされ、この館は手放されたとか」
魔王「正規の手段で手に入れたのだろうな?」
メイド長「ええもちろんです。
修繕を依頼した職工の方々への支払いも現金で行ないました」
魔王「うむ」
勇者「……穏当だな、以外に」
魔王「いずれ実力行使でなければ意を通せない相手も出てくる。
穏やかに通るところで無駄に暴力は使いたくない。
……嫌われると困る」
勇者「?」
魔王「なんでもない。
……で、我らはこの館に逗留して。んー身分は
どうしたものかな」
勇者「そうだ、気になってた」
メイド長「さる貴族の別邸だったらしい建物でございます。
その貴族……騎士家だったそうですが、その家そのものは
跡継ぎを戦争で亡くされ、この館は手放されたとか」
魔王「正規の手段で手に入れたのだろうな?」
メイド長「ええもちろんです。
修繕を依頼した職工の方々への支払いも現金で行ないました」
魔王「うむ」
勇者「……穏当だな、以外に」
魔王「いずれ実力行使でなければ意を通せない相手も出てくる。
穏やかに通るところで無駄に暴力は使いたくない。
……嫌われると困る」
勇者「?」
魔王「なんでもない。
……で、我らはこの館に逗留して。んー身分は
どうしたものかな」
153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:32:06.31 ID:AIDyRnsCP
メイド長「村長以下主立った方々へのご挨拶は
すませております。聖王都の神学院で研究なされた
高名な学者の姫君だと」
魔王「そんなんで通るのか」
勇者「格好さえどうにかすれば余裕だろう?」
魔王「この白衣とローブではだめかな」
勇者「ダメっぽいんじゃね?」
メイド長「ダメでしょうね」
魔王「着心地が良いんだが」
勇者「姫君ってのは着心地度外視で服選ぶんじゃねぇかな」
メイド長「そうですね。視線を意識せざるを得ない服で
緊張感を維持しているのかと思われます」
魔王「緊張感がないと!?」
メイド長「そうは申しておりません。しかし……」
魔王「なんじゃ」
メイド長「お耳を拝借いたします」
魔王「ふむふむ……」
すませております。聖王都の神学院で研究なされた
高名な学者の姫君だと」
魔王「そんなんで通るのか」
勇者「格好さえどうにかすれば余裕だろう?」
魔王「この白衣とローブではだめかな」
勇者「ダメっぽいんじゃね?」
メイド長「ダメでしょうね」
魔王「着心地が良いんだが」
勇者「姫君ってのは着心地度外視で服選ぶんじゃねぇかな」
メイド長「そうですね。視線を意識せざるを得ない服で
緊張感を維持しているのかと思われます」
魔王「緊張感がないと!?」
メイド長「そうは申しておりません。しかし……」
魔王「なんじゃ」
メイド長「お耳を拝借いたします」
魔王「ふむふむ……」
154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:33:27.02 ID:StalYhMD0
ずいぶん形から入るんだな
155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:35:13.37 ID:bh9onqb90
結局
魔王→女
勇者→男
で落ち着いてたのか
魔王→女
勇者→男
で落ち着いてたのか
158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:35:41.98 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者、勇者」
勇者「どうした?」
魔王「緊張感のない肉は駄肉か?」 じわぁ
勇者「なんで半べそなんだよ」
魔王「そう言われたのだ」
勇者「あー」
魔王「駄肉か? 駄肉なのか!?」
勇者「あー。そのー」
メイド長「お茶のお代わりはいかがでございましょう?」
魔王「ゆるんでぷにってしまうのか?」
勇者「コメントしづらいな」
メイド長「冬場は特に運動が不足しますからね」
魔王「うううう」
勇者「……その、たまには着飾るのも良いんじゃないか?
目先が変わって。その、風情とか云うヤツだ」
メイド長「さようでございますよ、まおー様」
魔王「そ、そうか……」
勇者「どうした?」
魔王「緊張感のない肉は駄肉か?」 じわぁ
勇者「なんで半べそなんだよ」
魔王「そう言われたのだ」
勇者「あー」
魔王「駄肉か? 駄肉なのか!?」
勇者「あー。そのー」
メイド長「お茶のお代わりはいかがでございましょう?」
魔王「ゆるんでぷにってしまうのか?」
勇者「コメントしづらいな」
メイド長「冬場は特に運動が不足しますからね」
魔王「うううう」
勇者「……その、たまには着飾るのも良いんじゃないか?
目先が変わって。その、風情とか云うヤツだ」
メイド長「さようでございますよ、まおー様」
魔王「そ、そうか……」
159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:40:22.91 ID:s4/0828FO
上手いこと誘導されとるww
160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:44:06.99 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、挨拶がどうとか」
メイド長「ああ、そうでした。
その学術の研究と、新しい農作指導のために
この村に興味を持たれてやってくる、というような
説明をいたしております」
魔王「そうか、話が早くて助かる」
勇者「そうだな、農業ともなれば時間がかかるものな」
メイド長「ええ。……まおー様」
魔王「ん?」
メイド長「魔王軍の方はいかがしましょう」
魔王「ああ。そうだな」 ちらっ
勇者「どうかしたか?」
魔王「勇者と私は、魔王の大広間で決闘をしたとしよう。
そこで両者共に深い傷を負ったという噂を流せ。
私はその傷を癒すために冥界温泉で療養中だ。
勇者は生死不明、一説によると落ち延びたと」
メイド長「かしこまりました」
メイド長「ああ、そうでした。
その学術の研究と、新しい農作指導のために
この村に興味を持たれてやってくる、というような
説明をいたしております」
魔王「そうか、話が早くて助かる」
勇者「そうだな、農業ともなれば時間がかかるものな」
メイド長「ええ。……まおー様」
魔王「ん?」
メイド長「魔王軍の方はいかがしましょう」
魔王「ああ。そうだな」 ちらっ
勇者「どうかしたか?」
魔王「勇者と私は、魔王の大広間で決闘をしたとしよう。
そこで両者共に深い傷を負ったという噂を流せ。
私はその傷を癒すために冥界温泉で療養中だ。
勇者は生死不明、一説によると落ち延びたと」
メイド長「かしこまりました」
161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:44:30.85 ID:pYANVDFA0
魔王かわいいよ魔王
162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:48:41.23 ID:AIDyRnsCP
魔王「それでいいか? 勇者」
勇者「ああ。かまわない。俺はどうせ魔王のものだしな」
メイド長「あたあた、まぁまぁ」にこっ
魔王「からかうな」
魔王「この噂で、まぁ1年くらいの時間は稼げよう。
魔王軍の急進派も何かの策略ではないかと見て
しばらくは動きを控えるだろう」
勇者「1年か」
魔王「その他にも手は打つ。粘るつもりもあるが
まぁ、3年と云ったところだろうな、猶予は」
勇者「……」
魔王「その間に『まだ見たことのない結末』を
見つけなければならない」
勇者「見たいだけじゃなかったのか?」
魔王「……見つけ出さないと、私の持ち主に嫌われる」
勇者「あ、その。そ……そっか。そうだな」
勇者「ああ。かまわない。俺はどうせ魔王のものだしな」
メイド長「あたあた、まぁまぁ」にこっ
魔王「からかうな」
魔王「この噂で、まぁ1年くらいの時間は稼げよう。
魔王軍の急進派も何かの策略ではないかと見て
しばらくは動きを控えるだろう」
勇者「1年か」
魔王「その他にも手は打つ。粘るつもりもあるが
まぁ、3年と云ったところだろうな、猶予は」
勇者「……」
魔王「その間に『まだ見たことのない結末』を
見つけなければならない」
勇者「見たいだけじゃなかったのか?」
魔王「……見つけ出さないと、私の持ち主に嫌われる」
勇者「あ、その。そ……そっか。そうだな」
164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:53:49.41 ID:AIDyRnsCP
魔王「それはいいとして、だ」
勇者「お、おう」
魔王「この地で結果を出したいのは、農法の改善だ」
勇者「のーほー?」
魔王「農業の方法だ」
勇者「農業の方法たって、
種撒いて芽が出て収穫するだけだろ?」
魔王「その方法を改善する」
勇者「うーん。改善なんてあるのか?」
魔王「同じ土地で麦を収穫し続けると
どんどん質がわるくなるのはしっているか?」
勇者「あー。聞いたことがあるぞ。
大地の恵みみたいな物がなくなっちゃうんだろう?」
魔王「この辺りで広く行なわれているのは三圃式農業という
もので、畑を3種類に分ける。
それぞれ夏に使う、冬に使う、一年間お休みと分けるんだ。
そしてローテーションさせてゆく」
勇者「お、おう」
魔王「この地で結果を出したいのは、農法の改善だ」
勇者「のーほー?」
魔王「農業の方法だ」
勇者「農業の方法たって、
種撒いて芽が出て収穫するだけだろ?」
魔王「その方法を改善する」
勇者「うーん。改善なんてあるのか?」
魔王「同じ土地で麦を収穫し続けると
どんどん質がわるくなるのはしっているか?」
勇者「あー。聞いたことがあるぞ。
大地の恵みみたいな物がなくなっちゃうんだろう?」
魔王「この辺りで広く行なわれているのは三圃式農業という
もので、畑を3種類に分ける。
それぞれ夏に使う、冬に使う、一年間お休みと分けるんだ。
そしてローテーションさせてゆく」
166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:03:56.12 ID:TMJUmSgc0
三圃式農業とか久し振り聞いた
高校の地理以来か・・・
高校の地理以来か・・・
165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 00:59:01.92 ID:AIDyRnsCP
勇者「工夫してあるんだな。ふむふむ。
いや、まてよ? そもそも何でローテーションするんだ?
どんどん新しい畑を開拓すればいいじゃないか。
新しい場所なら大地の恵みもたくさんある」
魔王「ばかもの。
誰もが勇者のように化物じみた戦闘能力と体力と
破壊魔法を使えると思ったら大間違いだ」
勇者「そ、そか?」
魔王「開拓には長い時間と労力がかかる。
それにそうやって開拓範囲を広くすれば、
収穫や種まきなどで移動しなければならない
距離も広がるし、魔物や野生動物から防衛しなければ
ならない敷地も広がってしまう」
勇者「そういえばそうか」
魔王「そこで3分割ローテーションを行なっているのだが」
勇者「ふむふむ」
魔王「この手法をより改善して、
食料の供給量を増やすのが当面の目的だ」
いや、まてよ? そもそも何でローテーションするんだ?
どんどん新しい畑を開拓すればいいじゃないか。
新しい場所なら大地の恵みもたくさんある」
魔王「ばかもの。
誰もが勇者のように化物じみた戦闘能力と体力と
破壊魔法を使えると思ったら大間違いだ」
勇者「そ、そか?」
魔王「開拓には長い時間と労力がかかる。
それにそうやって開拓範囲を広くすれば、
収穫や種まきなどで移動しなければならない
距離も広がるし、魔物や野生動物から防衛しなければ
ならない敷地も広がってしまう」
勇者「そういえばそうか」
魔王「そこで3分割ローテーションを行なっているのだが」
勇者「ふむふむ」
魔王「この手法をより改善して、
食料の供給量を増やすのが当面の目的だ」
167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:06:07.19 ID:AIDyRnsCP
勇者「目的は判った。けれど、具体的にはどうするんだ?」
魔王「輪作……つまりローテーションという概念は良いんだ。
これを4回転式に改善しようと思う」
勇者「ふむふむ」
魔王「すなわち、大麦を作る畑、クローバを作る畑、
小麦を作る畑、かぶを作る畑に4分割する。
この四つをセットにして4年周期で畑を活用するんだ」
勇者「なんか、3ローテと大差がないように聞こえるな」
魔王「3ローテは1周期に一回お休みがあるだろう?
こちらは4周期にお休みらしいお休みはクローバーだけだ」
勇者「それがそんなに大きい差なのか?」
魔王「差が出る秘密は、麦以外にある。それがカブだ」
勇者「シチューに入れると旨いけど、そんなに作っても
飽きるだろう?」
魔王「輪作……つまりローテーションという概念は良いんだ。
これを4回転式に改善しようと思う」
勇者「ふむふむ」
魔王「すなわち、大麦を作る畑、クローバを作る畑、
小麦を作る畑、かぶを作る畑に4分割する。
この四つをセットにして4年周期で畑を活用するんだ」
勇者「なんか、3ローテと大差がないように聞こえるな」
魔王「3ローテは1周期に一回お休みがあるだろう?
こちらは4周期にお休みらしいお休みはクローバーだけだ」
勇者「それがそんなに大きい差なのか?」
魔王「差が出る秘密は、麦以外にある。それがカブだ」
勇者「シチューに入れると旨いけど、そんなに作っても
飽きるだろう?」
169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:10:12.33 ID:AIDyRnsCP
魔王「もちろん人間が食べても良い。
麦ばかりだと健康に悪いからな。だがこのカブは
畜産の使うんだ。具体的に云うと豚の餌にする」
メイド長「豚、ですか?」
魔王「知ってるとおり、この寒くて貧しい地方では
肉食というのは冬場の重要な栄養素だ。
冬には充分な果物も野菜も採れないし、
充分な穀物が無い事の方が多い。
そこで豚を食べるわけだが、豚は生きているから
活かしておくためには食料が必要だ。
冬の間は人間の食糧すら不足するだろう?」
勇者「ああ、そうだな。だから豚は冬になる前に、
最低限の数を残してしめちゃうんだ。
それでソーセージやベーコンやハムにして、
冬の間の食糧備蓄をする。南部諸王国じゃ
何処でも見られる冬の始まりの風物詩って所だ」
魔王「冬場……つまり農作物が充分では無い時期の
代替え的補助食料なのに、結局は農業と同じように
季節に支配されている。これは非効率的なことだ」
麦ばかりだと健康に悪いからな。だがこのカブは
畜産の使うんだ。具体的に云うと豚の餌にする」
メイド長「豚、ですか?」
魔王「知ってるとおり、この寒くて貧しい地方では
肉食というのは冬場の重要な栄養素だ。
冬には充分な果物も野菜も採れないし、
充分な穀物が無い事の方が多い。
そこで豚を食べるわけだが、豚は生きているから
活かしておくためには食料が必要だ。
冬の間は人間の食糧すら不足するだろう?」
勇者「ああ、そうだな。だから豚は冬になる前に、
最低限の数を残してしめちゃうんだ。
それでソーセージやベーコンやハムにして、
冬の間の食糧備蓄をする。南部諸王国じゃ
何処でも見られる冬の始まりの風物詩って所だ」
魔王「冬場……つまり農作物が充分では無い時期の
代替え的補助食料なのに、結局は農業と同じように
季節に支配されている。これは非効率的なことだ」
170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:13:35.42 ID:MZUmdBBfO
おもしれぇ…
171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:14:22.20 ID:ymJMKDcU0
米みたいな連作に強い作物を作るって手もあるな
174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:21:22.41 ID:xmRb8YGYO
勇者で学ぶ農業
173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:17:28.72 ID:AIDyRnsCP
勇者「……云われてみれば、そうだな」
魔王「そこでクローバーとカブを使う。
クローバーは夏場の間、豚や羊などの牧草になる。
畜産をおこなえば肥料も出してもらえるしな。
カブは冬の間に飼料として役立つ」
勇者「そうかっ!」
魔王「そうだ。この方法は『畑を休ませない』、
『畑を痩せさせない』、『農作物以外も豊かにする』
の三つのアイデアで出来ているんだ」
勇者「そこでこの村な訳か」
メイド長「どういう事ですか?」
勇者「この村みたいな、農業も畜産もやって、
ある程度自給自足の体制の方がこの農法には都合が
良いんだよ。データ採りの意味でも。
都市部や、小麦ばっかりを大量生産している、
それが出来ちゃうような温暖な地域では意味が薄い。
東方の米みたいな穀物にも効果が薄い。
『寒くて貧しい地域を救う』アイデアだから」
メイド長「そういうことでしたか!」
魔王「そこでクローバーとカブを使う。
クローバーは夏場の間、豚や羊などの牧草になる。
畜産をおこなえば肥料も出してもらえるしな。
カブは冬の間に飼料として役立つ」
勇者「そうかっ!」
魔王「そうだ。この方法は『畑を休ませない』、
『畑を痩せさせない』、『農作物以外も豊かにする』
の三つのアイデアで出来ているんだ」
勇者「そこでこの村な訳か」
メイド長「どういう事ですか?」
勇者「この村みたいな、農業も畜産もやって、
ある程度自給自足の体制の方がこの農法には都合が
良いんだよ。データ採りの意味でも。
都市部や、小麦ばっかりを大量生産している、
それが出来ちゃうような温暖な地域では意味が薄い。
東方の米みたいな穀物にも効果が薄い。
『寒くて貧しい地域を救う』アイデアだから」
メイド長「そういうことでしたか!」
175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:22:32.70 ID:AIDyRnsCP
魔王「他にもいくつかある。北氷海の魚による肥料とか
、農機具にも改良の余地がある」
勇者「へ? 色々あるんだな」
魔王「難しいのは、農地と村の統廃合だ。
放牧地にした場合、羊などの動物はコントロールに
難があるしな。いまの危険な時勢だと、この種の
『開墾した権利』の縄張り争いは、たやすく利権の
争いに変化してしまうのだ」
勇者「そうだな、それは予想がつくよ」
メイド長「でも、人間は土地を重視する、
って、まおー様はいってましたよね。
話し合いで解決するんですか?」
魔王「そこで魔族だ」
勇者「?」
魔王「魔族で村を攻める。
どうせたいした守備軍もいないだろう?
ちょっとした中隊規模で充分だ。
脅して適度に放火でもしてやる。
最悪の場合は主立ったものを殺すこともあるかもしれない」
勇者「……」
、農機具にも改良の余地がある」
勇者「へ? 色々あるんだな」
魔王「難しいのは、農地と村の統廃合だ。
放牧地にした場合、羊などの動物はコントロールに
難があるしな。いまの危険な時勢だと、この種の
『開墾した権利』の縄張り争いは、たやすく利権の
争いに変化してしまうのだ」
勇者「そうだな、それは予想がつくよ」
メイド長「でも、人間は土地を重視する、
って、まおー様はいってましたよね。
話し合いで解決するんですか?」
魔王「そこで魔族だ」
勇者「?」
魔王「魔族で村を攻める。
どうせたいした守備軍もいないだろう?
ちょっとした中隊規模で充分だ。
脅して適度に放火でもしてやる。
最悪の場合は主立ったものを殺すこともあるかもしれない」
勇者「……」
176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:23:52.47 ID:pYANVDFA0
高校で習った四輪作法とかいうの思い出した。
クローバーが土地の復活を早めるとか先生がいってた希ガス
クローバーが土地の復活を早めるとか先生がいってた希ガス
177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:26:08.44 ID:AIDyRnsCP
魔王「村人が立ち退いたあとに、魔王軍は駆けつけた
騎士団と一戦して引き上げる。開拓民は戻ってくる
だろうが、それは領主の庇護下に入ってのことだろう。
その状況なら、農地の整理や、村と村との統廃合も
問題なく行くだろう」
勇者「……」
魔王「幻滅したか?」
メイド長「……まおー様」
魔王「むろん、手心は加える。そもそもこの手法は
王国側、少なくとも騎士団には内通者というか
こちら側の理解者が必要だ。
だがこの種の作戦には事故がつきものだ。
血が流れないと云うことはあり得ないだろう」
勇者「……」
魔王「だが、わたしは何かをすると決めたんだ。
このまま、血まみれの夢に似た消耗戦を100年繰り返し
取り返しのつかない停滞を過ごすつもりはない。
わたしは『終わった後の物語』が読みたいんだ」
騎士団と一戦して引き上げる。開拓民は戻ってくる
だろうが、それは領主の庇護下に入ってのことだろう。
その状況なら、農地の整理や、村と村との統廃合も
問題なく行くだろう」
勇者「……」
魔王「幻滅したか?」
メイド長「……まおー様」
魔王「むろん、手心は加える。そもそもこの手法は
王国側、少なくとも騎士団には内通者というか
こちら側の理解者が必要だ。
だがこの種の作戦には事故がつきものだ。
血が流れないと云うことはあり得ないだろう」
勇者「……」
魔王「だが、わたしは何かをすると決めたんだ。
このまま、血まみれの夢に似た消耗戦を100年繰り返し
取り返しのつかない停滞を過ごすつもりはない。
わたしは『終わった後の物語』が読みたいんだ」
178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:31:23.17 ID:AIDyRnsCP
魔王「愛想が尽きたか?
魔王なんて嫌いになったか?
で、でもダメだぞっ。
勇者は私のものだから。
絶対に手放すつもりはないぞっ」
メイド長「……」
魔王「それとも、やっぱり魔王を退治するつもりになったか?
それならそれで仕方がないが……。
私は勇者のものだから
その剣を避けるなんて出来ないけど……」
勇者「それでも……」
魔王「……」
勇者「それでも、救われる人はいるんだろう?
この3年間の秘密休戦で救われる人はいるんだろう?
それにその4ローテーションの工夫が上手く行けば
毎年何万人もの飢えた子供たちが春を迎えられるんだろう?
――そして戦争を終わらせるための余裕が、
人間の手に戻ってくるんだろう?」
魔王なんて嫌いになったか?
で、でもダメだぞっ。
勇者は私のものだから。
絶対に手放すつもりはないぞっ」
メイド長「……」
魔王「それとも、やっぱり魔王を退治するつもりになったか?
それならそれで仕方がないが……。
私は勇者のものだから
その剣を避けるなんて出来ないけど……」
勇者「それでも……」
魔王「……」
勇者「それでも、救われる人はいるんだろう?
この3年間の秘密休戦で救われる人はいるんだろう?
それにその4ローテーションの工夫が上手く行けば
毎年何万人もの飢えた子供たちが春を迎えられるんだろう?
――そして戦争を終わらせるための余裕が、
人間の手に戻ってくるんだろう?」
179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:34:26.27 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだ」
勇者「なら俺はやっぱり魔王の剣だ」
メイド長「……」
勇者「俺は何をすればいい?
……まぁ、うっすらと判っちゃいるんだが」
魔王「予想通りだ。
勇者には『正義の味方』をやってもらう。
攻め込んだ魔王軍を撃退する、南部諸王国領主の
軍事的先鋒だ」
勇者「茶番だな」
魔王「うん。悪の首魁とこんな話をしているいま、
それは限りなく茶番だろう」
勇者「100回地獄へ行っても救われないな」
魔王「判るなんて云わない」
勇者「でも『その役が』いないと始まらないもんな」
勇者「なら俺はやっぱり魔王の剣だ」
メイド長「……」
勇者「俺は何をすればいい?
……まぁ、うっすらと判っちゃいるんだが」
魔王「予想通りだ。
勇者には『正義の味方』をやってもらう。
攻め込んだ魔王軍を撃退する、南部諸王国領主の
軍事的先鋒だ」
勇者「茶番だな」
魔王「うん。悪の首魁とこんな話をしているいま、
それは限りなく茶番だろう」
勇者「100回地獄へ行っても救われないな」
魔王「判るなんて云わない」
勇者「でも『その役が』いないと始まらないもんな」
180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:34:43.49 ID:AvTxUljaO
勇者が少しずつ賢くなっていく
181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 01:36:08.31 ID:iyvdeica0
支援
240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:42:09.44 ID:AIDyRnsCP
――冬越しの村
魔王「思ったより難航しそうだな」
勇者「ああ、そうだな」
メイド長「あんなに分からず屋だとは思いませんでした」
勇者「仕方ないさ。俺たちにとっては挑戦だけど
この村の人たちは、一年不作になっただけで人死が
出るんだ」
メイド長「それはそうですが……」
魔王「考えてみると、この地よりも魔界の方が
気候的には恵まれているな」
勇者「そういやそうだな」
メイド長「勇者様は魔界のあちこちに旅されたのですか?」
勇者「ああ、人間では一番の魔界通だと思うぞ」
メイド長「しかし、村長があの態度ですと
農業技術の改良ですか? 難しいのでは……」
魔王「うむ。……露骨に断ってくるわけでもないので
対処に困るな」
勇者「村長から見たら、魔王は貴族の令嬢に見えるんだ。
正面から反対はできないさ」
魔王「思ったより難航しそうだな」
勇者「ああ、そうだな」
メイド長「あんなに分からず屋だとは思いませんでした」
勇者「仕方ないさ。俺たちにとっては挑戦だけど
この村の人たちは、一年不作になっただけで人死が
出るんだ」
メイド長「それはそうですが……」
魔王「考えてみると、この地よりも魔界の方が
気候的には恵まれているな」
勇者「そういやそうだな」
メイド長「勇者様は魔界のあちこちに旅されたのですか?」
勇者「ああ、人間では一番の魔界通だと思うぞ」
メイド長「しかし、村長があの態度ですと
農業技術の改良ですか? 難しいのでは……」
魔王「うむ。……露骨に断ってくるわけでもないので
対処に困るな」
勇者「村長から見たら、魔王は貴族の令嬢に見えるんだ。
正面から反対はできないさ」
243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:49:16.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「それならいっそ……」
魔王「却下」
メイド長「しかし、まおー様。目的のために手段は」
魔王「農地改革のために、細かい利権争いをする
領主や地主を取り除くのはやむを得ない。
生産性を上げるためには、必要なことだ。
でもそれは、農業技術が発展して集約農業が
可能になって初めて出来ることであって
その技術的な先行試験場で、指導者を
取り除くことには百害あって一理もない」
勇者「だよなぁ」
メイド長「困りましたね」
魔王「ん……。やはり教育程度がねっくなのか」
勇者「教育?」
メイド長「関係あるのですか?」
魔王「まぁ、いろいろとな。次の段階でと考えていたのだが
あちこちに手を入れなければ物事が進まないようだ」
魔王「却下」
メイド長「しかし、まおー様。目的のために手段は」
魔王「農地改革のために、細かい利権争いをする
領主や地主を取り除くのはやむを得ない。
生産性を上げるためには、必要なことだ。
でもそれは、農業技術が発展して集約農業が
可能になって初めて出来ることであって
その技術的な先行試験場で、指導者を
取り除くことには百害あって一理もない」
勇者「だよなぁ」
メイド長「困りましたね」
魔王「ん……。やはり教育程度がねっくなのか」
勇者「教育?」
メイド長「関係あるのですか?」
魔王「まぁ、いろいろとな。次の段階でと考えていたのだが
あちこちに手を入れなければ物事が進まないようだ」
244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:53:13.70 ID:EUtQl2pV0
食糧調達したり闘ったりファンタジーの中の人も大変だな支
245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 14:54:32.24 ID:AIDyRnsCP
メイド長「何をするのです?」
魔王「考えても見ろ。私たちがこの村で生産性を
向上させても。それを他の村や王国にも伝えて
いかなければ、全体的な変化は望めない。
でも私たちが一カ所ずつ教えて回るのは
時間的に見ても経済的に見ても不可能だ」
勇者「道理だな」
魔王「だから、新しい技術を覚えて様々な国へ
伝えるため専門の人員、まぁ、部下でも同盟者でも
いいんだが、そういった人材も必要だ」
勇者「ふむ」
メイド長「それで、教育ですか」
魔王「ところで聞くが人間界の教育とはどうなってるんだ?」
勇者「そんなこと云われてもなぁ。そもそも教育って何だよ」
魔王「考えても見ろ。私たちがこの村で生産性を
向上させても。それを他の村や王国にも伝えて
いかなければ、全体的な変化は望めない。
でも私たちが一カ所ずつ教えて回るのは
時間的に見ても経済的に見ても不可能だ」
勇者「道理だな」
魔王「だから、新しい技術を覚えて様々な国へ
伝えるため専門の人員、まぁ、部下でも同盟者でも
いいんだが、そういった人材も必要だ」
勇者「ふむ」
メイド長「それで、教育ですか」
魔王「ところで聞くが人間界の教育とはどうなってるんだ?」
勇者「そんなこと云われてもなぁ。そもそも教育って何だよ」
246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:00:09.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
魔王「えーあー」
勇者「いやだからさー。当たり前みたいに
難しい言葉を使われても」
魔王「つまり、知識を子供や年下の存在に伝えると云うことだ」
勇者「何だ、簡単な説明じゃないか。そんなのは
人間社会にだって当然あるよ。そもそも教えなきゃ
赤ちゃんは話せるようにだってならないだろう?
このあたりじゃ、まずは子供はじいさんか
ばあさんに預けられて、まとめて育てられるな。
両親は畑や狩に出かけるから、同年代の複数の家の
子供がまとめて面倒を見てもらう」
メイド長「効率的なんですね。お年寄りにも仕事が出来ます」
勇者「ある程度年甲斐ったら、農作業の手伝いをすることに
なるな。魔王みたいな理屈での話じゃないけれど、
いつ何処に何を作付けするかとか、天気の読み方だとか、
獣の避け方だとか、そう言う知識は数年も働けば自然と
身につくもんだ」
魔王「えーあー」
勇者「いやだからさー。当たり前みたいに
難しい言葉を使われても」
魔王「つまり、知識を子供や年下の存在に伝えると云うことだ」
勇者「何だ、簡単な説明じゃないか。そんなのは
人間社会にだって当然あるよ。そもそも教えなきゃ
赤ちゃんは話せるようにだってならないだろう?
このあたりじゃ、まずは子供はじいさんか
ばあさんに預けられて、まとめて育てられるな。
両親は畑や狩に出かけるから、同年代の複数の家の
子供がまとめて面倒を見てもらう」
メイド長「効率的なんですね。お年寄りにも仕事が出来ます」
勇者「ある程度年甲斐ったら、農作業の手伝いをすることに
なるな。魔王みたいな理屈での話じゃないけれど、
いつ何処に何を作付けするかとか、天気の読み方だとか、
獣の避け方だとか、そう言う知識は数年も働けば自然と
身につくもんだ」
247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:03:00.78 ID:fPOGtycd0
支援
249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:24:38.66 ID:AIDyRnsCP
勇者「それから、この地方の冬は深いんだ。
雪がどっさり降るし、冬には嵐がやってくることも多い。
この地方のこんな村では、冬の間は殆ど家の中に
閉じ込められるんだ。そんな間、農民たちは
細かい工芸品を作ったり、羊毛で衣類をこしらえたりする。
子供たちは長い冬の間、村の智慧者たちから
いくつものお話を教わる。英雄譚や王の話、神々の話だな。
あー、なんだ。魔族の話も出てくるぞ。
それから、ちょっと目端の利く若者や村長の子弟は
読み書きを習ったりもする」
魔王「ふむ」
勇者「都市部だとまた話が違うな。
都市部で教育と云えば、教会でのミサと家庭教師だ。
家庭教師ってのは、知ってるか?
えーっと、物語や読み書きや算術を教えてくれる
個人用の語り部みたいなものだ。
裕福な商家や貴族の家では両親が家庭教師を雇って、
自分の子供に様々な知識と技術を教えさせる」
メイド長「勇者様もその口ですか?」
勇者「まぁ、そうだな。とは云っても、俺の場合は
剣の教師とばっかりつるんで遊んでいたようなものだけど」
雪がどっさり降るし、冬には嵐がやってくることも多い。
この地方のこんな村では、冬の間は殆ど家の中に
閉じ込められるんだ。そんな間、農民たちは
細かい工芸品を作ったり、羊毛で衣類をこしらえたりする。
子供たちは長い冬の間、村の智慧者たちから
いくつものお話を教わる。英雄譚や王の話、神々の話だな。
あー、なんだ。魔族の話も出てくるぞ。
それから、ちょっと目端の利く若者や村長の子弟は
読み書きを習ったりもする」
魔王「ふむ」
勇者「都市部だとまた話が違うな。
都市部で教育と云えば、教会でのミサと家庭教師だ。
家庭教師ってのは、知ってるか?
えーっと、物語や読み書きや算術を教えてくれる
個人用の語り部みたいなものだ。
裕福な商家や貴族の家では両親が家庭教師を雇って、
自分の子供に様々な知識と技術を教えさせる」
メイド長「勇者様もその口ですか?」
勇者「まぁ、そうだな。とは云っても、俺の場合は
剣の教師とばっかりつるんで遊んでいたようなものだけど」
250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:33:52.38 ID:AIDyRnsCP
勇者「どうだ? 教育ってこういう事の事じゃないのか」
魔王「いや、まさにそう言うことだ」
勇者「人間社会のことも任せておけっ」
魔王「まぁ、で、その人間社会の教育は未開なので」
勇者「未開っ!?」
魔王「む。表現が悪かった。『発展の過程における
初期的な未発達の状態』だな」
勇者「同じじゃねぇか」
魔王「からかっただけだ」
勇者「くぅ」
魔王「だが、自然な教育だよ。無理がない」
勇者「……」
魔王「とはいえ、こちらは不自然な発展を望んでいるから
不自然で気合いの入った教育をしなければならない。
……だがなぁ、教育って云うのは金がかかるんだ」
勇者「金かぁ。俺勇者だし、勇者の装備を売れば
そこそこ金にならないか?」
魔王「いや、まさにそう言うことだ」
勇者「人間社会のことも任せておけっ」
魔王「まぁ、で、その人間社会の教育は未開なので」
勇者「未開っ!?」
魔王「む。表現が悪かった。『発展の過程における
初期的な未発達の状態』だな」
勇者「同じじゃねぇか」
魔王「からかっただけだ」
勇者「くぅ」
魔王「だが、自然な教育だよ。無理がない」
勇者「……」
魔王「とはいえ、こちらは不自然な発展を望んでいるから
不自然で気合いの入った教育をしなければならない。
……だがなぁ、教育って云うのは金がかかるんだ」
勇者「金かぁ。俺勇者だし、勇者の装備を売れば
そこそこ金にならないか?」
251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:35:26.47 ID:ymJMKDcU0
支援
252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:40:23.28 ID:AIDyRnsCP
メイド長「えーっと、勇者の剣と勇者の盾、
勇者の鎧ですか……38万Gくらいにはなりますね」
勇者「なっ? すげーだろ?」
メイド長「どれくらい必要なのですか」
魔王「むぅ。そうだなぁ、今年度の予算計画は
流動的でいくつかのパターンを考えているのだが
切り詰めた案で5600万G程度かな」
勇者「お、おれの……勇者の……装備が……」
メイド長「落ち込まないでください。勇者様」なでなで
魔王「メイド長。それ以上の接触は禁止だ」
メイド長「はい、まおー様♪」
魔王「なかなかに難儀な話だなぁ」
勇者「まったくだな」
メイド長「まぁ、そろそろ冬になりますし、
どちらにせよ本格的な農業実験は春からでしょう?
この冬を使ってゆっくり手を打てばいいですよ」
勇者の鎧ですか……38万Gくらいにはなりますね」
勇者「なっ? すげーだろ?」
メイド長「どれくらい必要なのですか」
魔王「むぅ。そうだなぁ、今年度の予算計画は
流動的でいくつかのパターンを考えているのだが
切り詰めた案で5600万G程度かな」
勇者「お、おれの……勇者の……装備が……」
メイド長「落ち込まないでください。勇者様」なでなで
魔王「メイド長。それ以上の接触は禁止だ」
メイド長「はい、まおー様♪」
魔王「なかなかに難儀な話だなぁ」
勇者「まったくだな」
メイド長「まぁ、そろそろ冬になりますし、
どちらにせよ本格的な農業実験は春からでしょう?
この冬を使ってゆっくり手を打てばいいですよ」
253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:41:17.45 ID:JYjbCoDA0
人間に知恵をあたえる。
まさに悪魔か。
支援
まさに悪魔か。
支援
255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:44:13.69 ID:Lc0VoYEVO
>>253
蛇とリンゴってとこだろうな
蛇とリンゴってとこだろうな
254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:43:06.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうは云っても」
勇者「気は焦るよな。3年しかないし」
メイド長「まぁまぁ、今日は豚肉とカブのシチューを
作ってあるんですよ」
魔王「旨そうだな」
勇者「ああ、考えてても仕方ないか」
メイド長「では、調理の仕上げがありますので
わたしはこれで。夕食はあと1時間ほどです。
お呼びに上がりますので、暖炉にでも当たっていて
くださいね」
魔王「ああ、頼んだぞ」
ぱたり
勇者「……ふぅー」
魔王「疲れたか? 勇者」
勇者「んー。身体は何も疲れてないんだけどな。
普段考えないようなことを考えて、頭が疲れたよ」
魔王「ふふふ。そうだろうな」
勇者「気は焦るよな。3年しかないし」
メイド長「まぁまぁ、今日は豚肉とカブのシチューを
作ってあるんですよ」
魔王「旨そうだな」
勇者「ああ、考えてても仕方ないか」
メイド長「では、調理の仕上げがありますので
わたしはこれで。夕食はあと1時間ほどです。
お呼びに上がりますので、暖炉にでも当たっていて
くださいね」
魔王「ああ、頼んだぞ」
ぱたり
勇者「……ふぅー」
魔王「疲れたか? 勇者」
勇者「んー。身体は何も疲れてないんだけどな。
普段考えないようなことを考えて、頭が疲れたよ」
魔王「ふふふ。そうだろうな」
256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:46:39.50 ID:AIDyRnsCP
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「暖炉が暖かいぞ?」
勇者「おう。暖かいな。この地方の寒さも、暖炉の前だと
多少許せるよな」
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「そのぅ、良かったらなのだが。隣に来ないか?」
勇者「なんで?」
魔王「この角度が、暖炉が暖かくて気持ちよいのだ」
勇者「そなのか?」
魔王「そうなのだ。ほら、特等席だぞ」
勇者「ん。ほんとだ。あったけー」
魔王「どうだ?」
勇者「自慢そうな顔するなよ、魔王」
魔王「む。……まぁ、たしかに暖炉が暖かいのは
私の手柄ではないがな」
勇者「ん?」
魔王「暖炉が暖かいぞ?」
勇者「おう。暖かいな。この地方の寒さも、暖炉の前だと
多少許せるよな」
魔王「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
魔王「そのぅ、良かったらなのだが。隣に来ないか?」
勇者「なんで?」
魔王「この角度が、暖炉が暖かくて気持ちよいのだ」
勇者「そなのか?」
魔王「そうなのだ。ほら、特等席だぞ」
勇者「ん。ほんとだ。あったけー」
魔王「どうだ?」
勇者「自慢そうな顔するなよ、魔王」
魔王「む。……まぁ、たしかに暖炉が暖かいのは
私の手柄ではないがな」
257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:50:45.68 ID:AIDyRnsCP
魔王「……」
勇者「……」
魔王「勇者?」ぺ、ぺとっ
勇者「ん?」
魔王「さ、触って良いか?」
勇者「別に良いけど」
魔王「変な意味はないぞ。勇者の髪は暗い色だから
ちょっと触れてみたくてな。ああ、つんつんしてるな」
勇者「ご先祖様にサムラーイがいたんだ」
魔王「なんだそれは?」
勇者「東方の戦士だよ。鎧も兜も真っ二つにする技が
使えたんだとさ」
魔王「そうか、勇猛な戦士殿だったんだな」
勇者「一族全員戦いの家系なんだ」
魔王「そうか? それ以外にだって、
勇者には素晴らしくて良いところが沢山だぞ?」
勇者「……」
魔王「勇者?」ぺ、ぺとっ
勇者「ん?」
魔王「さ、触って良いか?」
勇者「別に良いけど」
魔王「変な意味はないぞ。勇者の髪は暗い色だから
ちょっと触れてみたくてな。ああ、つんつんしてるな」
勇者「ご先祖様にサムラーイがいたんだ」
魔王「なんだそれは?」
勇者「東方の戦士だよ。鎧も兜も真っ二つにする技が
使えたんだとさ」
魔王「そうか、勇猛な戦士殿だったんだな」
勇者「一族全員戦いの家系なんだ」
魔王「そうか? それ以外にだって、
勇者には素晴らしくて良いところが沢山だぞ?」
258: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:52:39.99 ID:QUKYS0oU0
魔王デレの破壊力は正に魔王クラス
259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:54:50.43 ID:AIDyRnsCP
勇者「そうかなー」
魔王「そうだぞ、たとえば、私が側にいても怯えないとか」
勇者「魔王はひ弱だし、女の人じゃん。運動不足だし」
魔王「でも魔王だからな」
勇者「そう言うものかな」
魔王「そう言うものなんだ」
勇者「なんだかしおらしいな」
魔王「さ、作戦なのだ」
勇者「?」
魔王「これから勇者相手に交渉をだな、するのだ」
勇者「何の?」
魔王「それを云っては交渉にならんではないか」
勇者「云わないで伝わるものか」
魔王「事は微妙を要する問題なのだ。出来るだけ誤解を
受けないようにきちんと説明をしたい」
勇者「話してみれば?」
魔王「そうだぞ、たとえば、私が側にいても怯えないとか」
勇者「魔王はひ弱だし、女の人じゃん。運動不足だし」
魔王「でも魔王だからな」
勇者「そう言うものかな」
魔王「そう言うものなんだ」
勇者「なんだかしおらしいな」
魔王「さ、作戦なのだ」
勇者「?」
魔王「これから勇者相手に交渉をだな、するのだ」
勇者「何の?」
魔王「それを云っては交渉にならんではないか」
勇者「云わないで伝わるものか」
魔王「事は微妙を要する問題なのだ。出来るだけ誤解を
受けないようにきちんと説明をしたい」
勇者「話してみれば?」
261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 15:58:09.56 ID:AIDyRnsCP
魔王「つまり、外は寒いだろう? 冬の嵐到来だ。
そしてここは暖かくて居心地がよい。
じきに夕食のお迎えが来るまでは二人は暇で、
さしあたってやることがないだろう?
もちろん今後やるべき課題は山積みでそれらに対して
考察を加えるという任務が巨大にそびえ立っているわけだが、
勇者は現在頭が疲れているという状況にあり、
効率的な作業は望めないわけだ」
勇者「あー」
魔王「もちろんこれはわたしの方で考えた草案というのも
愚かな一私案に過ぎないわけだが勇者の現在の疲労状況を
鑑みるにこのような俗説民間信仰の類も一概にその効能を
否定するわけにも行かないのではないかと思えるのだ時に
戦士はそのような蜜園で疲れを癒すと古書にもある勇者は
そのような爛れた習慣はないというかも知れないが」
勇者「で、なにをどーしたいんだ?」
魔王「勇者に膝枕してみたい」
勇者「よしきた」ぼふんっ
魔王「あっ。あわっ。勇者……」
勇者「俺は魔王のものなんだ。遠慮は無用だぜ」
そしてここは暖かくて居心地がよい。
じきに夕食のお迎えが来るまでは二人は暇で、
さしあたってやることがないだろう?
もちろん今後やるべき課題は山積みでそれらに対して
考察を加えるという任務が巨大にそびえ立っているわけだが、
勇者は現在頭が疲れているという状況にあり、
効率的な作業は望めないわけだ」
勇者「あー」
魔王「もちろんこれはわたしの方で考えた草案というのも
愚かな一私案に過ぎないわけだが勇者の現在の疲労状況を
鑑みるにこのような俗説民間信仰の類も一概にその効能を
否定するわけにも行かないのではないかと思えるのだ時に
戦士はそのような蜜園で疲れを癒すと古書にもある勇者は
そのような爛れた習慣はないというかも知れないが」
勇者「で、なにをどーしたいんだ?」
魔王「勇者に膝枕してみたい」
勇者「よしきた」ぼふんっ
魔王「あっ。あわっ。勇者……」
勇者「俺は魔王のものなんだ。遠慮は無用だぜ」
264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:02:58.41 ID:pr9Iy7N90
なんとなく、農業云々の説明してるときは
魔王=ハクオロ
勇者=エルルゥ
で再生されてしまう・・・
魔王=ハクオロ
勇者=エルルゥ
で再生されてしまう・・・
278: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:29:09.13 ID:LVCofh7VO
>>264
俺も思った
俺も思った
265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:03:32.95 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者」
勇者「んぅ……」
魔王「勇者の頭、もふもふしてるぞ」
勇者「遊ぶなよ」
魔王「撫でているだけだ」
勇者「魔王も良い匂いだぞ?」
魔王「毎日ちゃんと湯浴みしてるからな」
勇者「真面目だな」
魔王「うむ、真面目なのだ。
勇者のモノになって以来メイド長が容赦なくてな。
以前は研究続きで一週間着替えないなんて事も
少なくなかったんだが」
勇者「魔王は太ももすべすべだな」
魔王「そ、そうか? 太くないか?」
勇者「寝心地良いぞ」
魔王「そうか。救われる。勇者は本当に
寛大な心の持ち主だな」
勇者「あーえーうー。……えろ欲求の持ち主ではあるんだが」
魔王「?」
勇者「んぅ……」
魔王「勇者の頭、もふもふしてるぞ」
勇者「遊ぶなよ」
魔王「撫でているだけだ」
勇者「魔王も良い匂いだぞ?」
魔王「毎日ちゃんと湯浴みしてるからな」
勇者「真面目だな」
魔王「うむ、真面目なのだ。
勇者のモノになって以来メイド長が容赦なくてな。
以前は研究続きで一週間着替えないなんて事も
少なくなかったんだが」
勇者「魔王は太ももすべすべだな」
魔王「そ、そうか? 太くないか?」
勇者「寝心地良いぞ」
魔王「そうか。救われる。勇者は本当に
寛大な心の持ち主だな」
勇者「あーえーうー。……えろ欲求の持ち主ではあるんだが」
魔王「?」
266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:06:05.91 ID:ekUeP5Dz0
あぁ・・・いいなぁこういうの
272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:12:30.35 ID:AIDyRnsCP
魔王「その、勇者」
勇者「なんだー?」
魔王「さっきの、遠慮は無用というの」
勇者「?」
魔王「あれは本当か?」
勇者「うん、そうだぞ」
魔王「そ、そうなのか」おろおろ
勇者「……どした?」
魔王「う、うむ」
勇者「押し黙るなよ。怖いから」
魔王「私も自分がちょっぴり怖いぞ」
勇者「はぁ?」
魔王「いや、怯えてなどいられるか。
『まだ見ぬものを求める』。
それが私の生涯のテーマだったではないかっ」
勇者「??」
魔王「その、勇者……」じぃっ
勇者「何だよ、気軽に云えばいいぞ」
ガ タ ン ッ
勇者「なんだー?」
魔王「さっきの、遠慮は無用というの」
勇者「?」
魔王「あれは本当か?」
勇者「うん、そうだぞ」
魔王「そ、そうなのか」おろおろ
勇者「……どした?」
魔王「う、うむ」
勇者「押し黙るなよ。怖いから」
魔王「私も自分がちょっぴり怖いぞ」
勇者「はぁ?」
魔王「いや、怯えてなどいられるか。
『まだ見ぬものを求める』。
それが私の生涯のテーマだったではないかっ」
勇者「??」
魔王「その、勇者……」じぃっ
勇者「何だよ、気軽に云えばいいぞ」
ガ タ ン ッ
275: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:24:44.37 ID:AIDyRnsCP
魔王「何だ、あの音は」
勇者「裏手? ……納屋かっ?」
ダダダッ
魔王「えいこれ! 待てと云うのだ!」
――納屋
勇者「ここかっ!」
魔王「真っ暗ではないか」
???「……。……」
勇者(人の気配?)
魔王「しばし待て、明かりの呪文を……」ぽわっ
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
勇者「……なんだ? 子供だぞ」
魔王「どうしたのだ? 殆ど下着ではないか」
勇者「裏手? ……納屋かっ?」
ダダダッ
魔王「えいこれ! 待てと云うのだ!」
――納屋
勇者「ここかっ!」
魔王「真っ暗ではないか」
???「……。……」
勇者(人の気配?)
魔王「しばし待て、明かりの呪文を……」ぽわっ
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
勇者「……なんだ? 子供だぞ」
魔王「どうしたのだ? 殆ど下着ではないか」
276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:28:14.97 ID:iyvdeica0
支援
279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:29:26.13 ID:AIDyRnsCP
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
魔王「メイド長」
メイド長「また迷い込んできたのですね」
魔王「こやつらは何なのじゃ?」
メイド長「逃亡奴隷ですわ。この館は長い間無人でした。
無人の割には廃墟ではありませんでしたし、
周辺の村とは違う系統の権力に属していますからね。
そう言う場所は逃げ込む先として使われてしまうんですよ」
勇者「奴隷?」
メイド長「ええ、そうですよ」
勇者「奴隷なんて、そんなのどこから来るんだよ」いらっ
メイド長「そこら中にいるではないですか?
ここらにいる人間はその殆どが奴隷でしょう?」
勇者「ちがうっ。奴隷なんかじゃないっ!」
メイド長「あら。私の見当違いなのでしょうか」
勇者「奴隷制は野蛮だ。俺たちは許していない」
メイド長「そんなことをおっしゃられても」
魔王「メイド長」
メイド長「また迷い込んできたのですね」
魔王「こやつらは何なのじゃ?」
メイド長「逃亡奴隷ですわ。この館は長い間無人でした。
無人の割には廃墟ではありませんでしたし、
周辺の村とは違う系統の権力に属していますからね。
そう言う場所は逃げ込む先として使われてしまうんですよ」
勇者「奴隷?」
メイド長「ええ、そうですよ」
勇者「奴隷なんて、そんなのどこから来るんだよ」いらっ
メイド長「そこら中にいるではないですか?
ここらにいる人間はその殆どが奴隷でしょう?」
勇者「ちがうっ。奴隷なんかじゃないっ!」
メイド長「あら。私の見当違いなのでしょうか」
勇者「奴隷制は野蛮だ。俺たちは許していない」
メイド長「そんなことをおっしゃられても」
280: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:31:44.32 ID:4F4DnSRnO
しえしえ
281: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:32:49.55 ID:Z+4MLga8O
( ´∀`)しえん
282: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:33:04.54 ID:AIDyRnsCP
魔王「この者たちは、農奴なのだな」
勇者「農奴……?」
メイド長「やっぱり奴隷ではないですか」
魔王「農奴と奴隷は違う」
勇者「ほらみろ。この南部諸王国に奴隷はいないんだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「農奴は奴隷とは違い、個人財産が認められている。
家も持てるし、農機具も自前のものがもてる。
家族と一緒に暮らすことも出来るんだ」
勇者「まぁ、当たり前だな」
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
魔王「その一方で、職業選択や移動の自由はない。
主に荘園……地主の農地で、農作業を行なうための
労働力として、選択の自由無く働かされる存在だ」
勇者「……」
メイド長「……奴隷とは違うのですねぇ。へぇ~」ふんっ
勇者「農奴……?」
メイド長「やっぱり奴隷ではないですか」
魔王「農奴と奴隷は違う」
勇者「ほらみろ。この南部諸王国に奴隷はいないんだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「農奴は奴隷とは違い、個人財産が認められている。
家も持てるし、農機具も自前のものがもてる。
家族と一緒に暮らすことも出来るんだ」
勇者「まぁ、当たり前だな」
姉 がたがたがた
妹 ぶるぶるぶるぶる
魔王「その一方で、職業選択や移動の自由はない。
主に荘園……地主の農地で、農作業を行なうための
労働力として、選択の自由無く働かされる存在だ」
勇者「……」
メイド長「……奴隷とは違うのですねぇ。へぇ~」ふんっ
283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:38:20.18 ID:AIDyRnsCP
勇者「……」ぎりっ
魔王「メイド長、それ以上は云うな。奴隷制は悲劇的かも
しれないが社会制度の中で経済的にも意味があったのは
事実なのだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「メイド長っ」
メイド長「……差し出口を。申し訳ありません」
魔王「……」
勇者「……」
妹 ぶるぶるぶるぶる
姉「あ、あのぅ……。あ、あさにはでてゆきますっ。
ごめ、ごめいわく……かけませんから…っ…
どうか、ひとばんだけ」
メイド長「……」
魔王「メイド長。初めてではないのだろう?
いままではどのように対処していたのだ?」
魔王「メイド長、それ以上は云うな。奴隷制は悲劇的かも
しれないが社会制度の中で経済的にも意味があったのは
事実なのだ」
メイド長「そうでしょうか?」
魔王「メイド長っ」
メイド長「……差し出口を。申し訳ありません」
魔王「……」
勇者「……」
妹 ぶるぶるぶるぶる
姉「あ、あのぅ……。あ、あさにはでてゆきますっ。
ごめ、ごめいわく……かけませんから…っ…
どうか、ひとばんだけ」
メイド長「……」
魔王「メイド長。初めてではないのだろう?
いままではどのように対処していたのだ?」
284: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:41:05.44 ID:fPOGtycd0
しえん
285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:42:32.64 ID:AIDyRnsCP
メイド長「逃亡奴隷……農奴でしたか。それは重罪です。
付近の有力者との関係も悪くなります。
すぐさま通報して引き取りに来てもらっていました」
魔王「そうか」
勇者「……」
メイド長「勇者様、ご気分が優れないようですが?」
勇者「……厳しすぎないか?」
メイド長「自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。羽をもがれたようで見るに堪えません」
魔王「……っ」
勇者「あのなぁ!」
メイド長「大事の前の小事ではありませんか?
このような些末時で付近の有力者の方々の
心証を悪くされても益のないことだと思いますが」
魔王「そう……だな……」
勇者「魔王……」
メイド長「では」
魔王「いや、連絡は明日の朝まで待つ。
湯を沸かせ。もう少しましな衣服もあるだろう。
反論は抜きだ。今回はそうする。もう、決めた」
付近の有力者との関係も悪くなります。
すぐさま通報して引き取りに来てもらっていました」
魔王「そうか」
勇者「……」
メイド長「勇者様、ご気分が優れないようですが?」
勇者「……厳しすぎないか?」
メイド長「自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。羽をもがれたようで見るに堪えません」
魔王「……っ」
勇者「あのなぁ!」
メイド長「大事の前の小事ではありませんか?
このような些末時で付近の有力者の方々の
心証を悪くされても益のないことだと思いますが」
魔王「そう……だな……」
勇者「魔王……」
メイド長「では」
魔王「いや、連絡は明日の朝まで待つ。
湯を沸かせ。もう少しましな衣服もあるだろう。
反論は抜きだ。今回はそうする。もう、決めた」
286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:47:50.29 ID:AIDyRnsCP
――小さな部屋
魔王「あー。なんだ」
勇者「……歯切れ悪いな」
魔王「私は魔王であり経済屋だ。こういうのは苦手なんだ」
勇者「俺だって勇者で剣士なんだ。苦手だ」
姉「あの、ありがとうございます」
妹 おどおど
勇者「おう、気にしないで良いぞ」
姉「こんなりっぱなふく、はじめてです」
妹 こくり
勇者「そか? なんだかこの屋敷に残されてた古着だけど」
魔王「あー。腹はくちくなったか? 寝床は平気か?」
姉「はい。わらはふかふかで、
あたたかくて、きれいなへやです」
勇者「こんな小汚い部屋でもか……」
魔王「そう言う境遇なのだろう」
魔王「あー。なんだ」
勇者「……歯切れ悪いな」
魔王「私は魔王であり経済屋だ。こういうのは苦手なんだ」
勇者「俺だって勇者で剣士なんだ。苦手だ」
姉「あの、ありがとうございます」
妹 おどおど
勇者「おう、気にしないで良いぞ」
姉「こんなりっぱなふく、はじめてです」
妹 こくり
勇者「そか? なんだかこの屋敷に残されてた古着だけど」
魔王「あー。腹はくちくなったか? 寝床は平気か?」
姉「はい。わらはふかふかで、
あたたかくて、きれいなへやです」
勇者「こんな小汚い部屋でもか……」
魔王「そう言う境遇なのだろう」
289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 16:57:08.31 ID:AIDyRnsCP
姉「その、こんなによくしてもらったのですけど」
姉「あしたの、あさには、その……」
魔王「それは……」
勇者「……」
姉「おねがいです、つうほうしないでください。
いえ、そうじゃなくて」
妹 じわぁ
姉「にげますから。ほんのすこしだけ。よあけから
すこしのあいだだけ、まってください」
ガチャリ
メイド長「何を言ってるんですか。ろくな靴もない。
服も最低限。お金も道具も何もない。
街へ行って乞食でもやるつもりですか?」
妹「あ、あぅぅぅ」
勇者「どうにか……。どうにかなんないのか?」
姉「あしたの、あさには、その……」
魔王「それは……」
勇者「……」
姉「おねがいです、つうほうしないでください。
いえ、そうじゃなくて」
妹 じわぁ
姉「にげますから。ほんのすこしだけ。よあけから
すこしのあいだだけ、まってください」
ガチャリ
メイド長「何を言ってるんですか。ろくな靴もない。
服も最低限。お金も道具も何もない。
街へ行って乞食でもやるつもりですか?」
妹「あ、あぅぅぅ」
勇者「どうにか……。どうにかなんないのか?」
291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:02:44.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「なりません。奴隷の生活は惨めですよ。
何も出来ない。何の希望もない。
自分自身の罪でそう居続けるしかできないと
自分で自分に言い聞かせながら生きてゆくのです。
この世の地獄かも知れませんね。
でもね」
姉「……」
メイド長「やっていることはメイドと代わりはありませんよ。
主人の意を受けて、主人の言葉なら何でもしたがう。
主人の夢を叶えるため、そのために命を捧げる。
奴隷とたいした違いは有りはしません」
魔王「メイド長。私はお前を奴隷だなどと思ったことは
有りはしないぞ」
メイド長「ええ、まおー様。
私もそのような扱い、まおー様より受けた覚えはありません。
でもだからより一層、正視に耐えません。
私と同じ仕事をしながら、
自らの手に運命をつかむことの出来ない
その弱さは、灼かれて死んで償うべきかと思います」
妹「ちがうよっ!! ちがうもんっ!」
何も出来ない。何の希望もない。
自分自身の罪でそう居続けるしかできないと
自分で自分に言い聞かせながら生きてゆくのです。
この世の地獄かも知れませんね。
でもね」
姉「……」
メイド長「やっていることはメイドと代わりはありませんよ。
主人の意を受けて、主人の言葉なら何でもしたがう。
主人の夢を叶えるため、そのために命を捧げる。
奴隷とたいした違いは有りはしません」
魔王「メイド長。私はお前を奴隷だなどと思ったことは
有りはしないぞ」
メイド長「ええ、まおー様。
私もそのような扱い、まおー様より受けた覚えはありません。
でもだからより一層、正視に耐えません。
私と同じ仕事をしながら、
自らの手に運命をつかむことの出来ない
その弱さは、灼かれて死んで償うべきかと思います」
妹「ちがうよっ!! ちがうもんっ!」
292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:07:38.70 ID:AIDyRnsCP
妹「ちがうよっ、めがねのおねえちゃんはいじわるなのっ。
わたしたちはちゃんとにげてきたもんっ。
なにもできないわけじゃないもんっ。
みやこにいって、ふたりで、くらすんだもんっ」
勇者「……それは」
メイド長「何を夢物語を」
妹「でも、やるんだもんっ」
メイド長「百歩譲ってその熱意を努力と呼んでも
良いでしょう。しかし、それをなすに当たって
他者の家に忍び込み、あまつさえその厚意にすがり。
そればかりか寝床と食事を与えてくれた
その他者の立場を逃亡によってさらに悪くする。
そのような方法を是とする。
それがあなたたち農奴のやりようですか?」
妹「だって、だってぇ!」
メイド長「もう一度云います。
自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。大嫌いです。
虫で居続けることに甘んじる人を人間だとは思いません」
姉「……」
わたしたちはちゃんとにげてきたもんっ。
なにもできないわけじゃないもんっ。
みやこにいって、ふたりで、くらすんだもんっ」
勇者「……それは」
メイド長「何を夢物語を」
妹「でも、やるんだもんっ」
メイド長「百歩譲ってその熱意を努力と呼んでも
良いでしょう。しかし、それをなすに当たって
他者の家に忍び込み、あまつさえその厚意にすがり。
そればかりか寝床と食事を与えてくれた
その他者の立場を逃亡によってさらに悪くする。
そのような方法を是とする。
それがあなたたち農奴のやりようですか?」
妹「だって、だってぇ!」
メイド長「もう一度云います。
自分の運命をつかめない存在は虫です。
私は虫が嫌いです。大嫌いです。
虫で居続けることに甘んじる人を人間だとは思いません」
姉「……」
293: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:10:44.83 ID:ymJMKDcU0
なるほど
メイド長いい奴だ
メイド長いい奴だ
294: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:13:49.12 ID:AIDyRnsCP
メイド長「判りましたか?」
姉「はい……」
メイド長「謝罪を」
姉「このやかたのみなさま……きぞくさまには
ご、ごめいわくを、かけました。ごめんなさい」
メイド長「よろしい」
姉「……」
妹「ひっく……う。うううぅ」
メイド長「……」 じぃっ
姉「……」
メイド長「……それだけですか?」
妹「やぁ……。もどるの、やだよぅ……こわいよぉ」
姉「……いもうと、しずかにして」
姉「はい……」
メイド長「謝罪を」
姉「このやかたのみなさま……きぞくさまには
ご、ごめいわくを、かけました。ごめんなさい」
メイド長「よろしい」
姉「……」
妹「ひっく……う。うううぅ」
メイド長「……」 じぃっ
姉「……」
メイド長「……それだけですか?」
妹「やぁ……。もどるの、やだよぅ……こわいよぉ」
姉「……いもうと、しずかにして」
295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:14:21.93 ID:s4/0828FO
勇者甘ったれすぐる
気持ちは分からんでもないが
気持ちは分からんでもないが
297: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:17:39.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
姉「わたしたちを、ニンゲンにしてください。
わたしは、あなたがうんめい、だと――おもいます」
メイド長「頭を下げる時は
そのように這いつくばってはいけません。
せっかくスカートをはいているのですから
指先で軽くつまみ、ドレープを美しく見せながら
優雅に一礼するのです」
姉 ぺ、ぺこり
メイド長「……魔王様。この館は魔王城に比べれば
掘っ立て小屋も同然ですが私1人ではいささか手が
足りません。メイドを雇ってもよろしいでしょうか?」
勇者「いいのかっ? メイド長。あんなに嫌いだって
いってたのに。許してくれるのかっ?」
メイド長「嫌いなのは虫です。メイドを嫌う人は
この世界に存在しません。たとえそのメイドが
新人であってもです」
魔王「許す。鍛えてやってくれ」
姉「わたしたちを、ニンゲンにしてください。
わたしは、あなたがうんめい、だと――おもいます」
メイド長「頭を下げる時は
そのように這いつくばってはいけません。
せっかくスカートをはいているのですから
指先で軽くつまみ、ドレープを美しく見せながら
優雅に一礼するのです」
姉 ぺ、ぺこり
メイド長「……魔王様。この館は魔王城に比べれば
掘っ立て小屋も同然ですが私1人ではいささか手が
足りません。メイドを雇ってもよろしいでしょうか?」
勇者「いいのかっ? メイド長。あんなに嫌いだって
いってたのに。許してくれるのかっ?」
メイド長「嫌いなのは虫です。メイドを嫌う人は
この世界に存在しません。たとえそのメイドが
新人であってもです」
魔王「許す。鍛えてやってくれ」
298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:19:09.04 ID:iyvdeica0
支援
299: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:23:06.88 ID:0xwysVvQ0
こりゃたまらん
がんばれ
がんばれ
300: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:23:34.01 ID:iyvdeica0
しえん
302: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:27:33.55 ID:AIDyRnsCP
――雪の森の中
メイド妹「ゆーしゃーさまー。ゆーしゃーさまー」
メイド妹「ゆーしゃーさまーはどこですかー。
おいしーパンを、おとどけですよ」
ヒュンッ!
勇者「おう、お使いお疲れ」
メイド妹「わっ。どこにいたの?」
勇者「転移魔法だよ。声、森の中に響いてたぞ」
メイド妹「へへーん♪」
勇者「まぁ、この辺はすっかり安全になったから
平気だろうけどな。不用心なヤツだ」
メイド妹「ゆーしゃさまに、おとどけものです」
勇者「お!」
メイド妹「おひるごはんですー! クルミのパンと、
タマネギとベーコンのオムレツですー」
勇者「旨そうだな」
メイド妹「おねーちゃんがつくりましたっ」
勇者「順調に仕事覚えてるな。感心感心」
メイド妹「ゆーしゃーさまー。ゆーしゃーさまー」
メイド妹「ゆーしゃーさまーはどこですかー。
おいしーパンを、おとどけですよ」
ヒュンッ!
勇者「おう、お使いお疲れ」
メイド妹「わっ。どこにいたの?」
勇者「転移魔法だよ。声、森の中に響いてたぞ」
メイド妹「へへーん♪」
勇者「まぁ、この辺はすっかり安全になったから
平気だろうけどな。不用心なヤツだ」
メイド妹「ゆーしゃさまに、おとどけものです」
勇者「お!」
メイド妹「おひるごはんですー! クルミのパンと、
タマネギとベーコンのオムレツですー」
勇者「旨そうだな」
メイド妹「おねーちゃんがつくりましたっ」
勇者「順調に仕事覚えてるな。感心感心」
306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:33:55.68 ID:AIDyRnsCP
メイド妹「おいしい?」
勇者「美味いぞ! 温かい紅茶がまた泣かせるな。
走ってきたんだろう?」
メイド妹「うんっ」
勇者「一口飲め?」
メイド妹「うんっ!」
勇者「昼間とは云え、屋外作業は辛いなぁ。
なんかこー滅入るよ、まったく」
メイド妹「あ、そだ。とうしゅのおねーちゃんから
でんごんがあった」
勇者「何だ、先に云えよ」
メイド妹「『きょうは、いのしし6とうがのるまだ。
くまならいのしし2とうぶんにかぞえても、よい。
それから、かわのじょうりゅうをみてきてくれ。
はんらんしそうなばしょがあれば、
まほうでこわすか、なおしてくれ』」
勇者「人使い粗いな」
勇者「美味いぞ! 温かい紅茶がまた泣かせるな。
走ってきたんだろう?」
メイド妹「うんっ」
勇者「一口飲め?」
メイド妹「うんっ!」
勇者「昼間とは云え、屋外作業は辛いなぁ。
なんかこー滅入るよ、まったく」
メイド妹「あ、そだ。とうしゅのおねーちゃんから
でんごんがあった」
勇者「何だ、先に云えよ」
メイド妹「『きょうは、いのしし6とうがのるまだ。
くまならいのしし2とうぶんにかぞえても、よい。
それから、かわのじょうりゅうをみてきてくれ。
はんらんしそうなばしょがあれば、
まほうでこわすか、なおしてくれ』」
勇者「人使い粗いな」
307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:39:27.05 ID:AIDyRnsCP
勇者「そういや、学校はどうした?」
メイド妹「ごごは、からだのたんれん」
勇者「お前は鍛錬良いのか?」
メイド妹「まだ、せいとすくないから。
おなじ年のこ、いないの。ゆうしゃさまに
ごはんをとどけるのが、ごごのうんどうー」
勇者「お。『年』っておぼえたのか」
メイド妹「とーしゅのおねーちゃんが、
もじおしえてくれるんだよ」
勇者「忙しいクセにまめだな、魔王」
メイド妹「あと、さんすー」
勇者「算数か」
メイド妹「うまくやると、儲けでうはうは」
勇者「あの経済屋め。『儲け』だけは書けるのか」
メイド妹「損益分岐点、もかけるよ?」
メイド妹「ごごは、からだのたんれん」
勇者「お前は鍛錬良いのか?」
メイド妹「まだ、せいとすくないから。
おなじ年のこ、いないの。ゆうしゃさまに
ごはんをとどけるのが、ごごのうんどうー」
勇者「お。『年』っておぼえたのか」
メイド妹「とーしゅのおねーちゃんが、
もじおしえてくれるんだよ」
勇者「忙しいクセにまめだな、魔王」
メイド妹「あと、さんすー」
勇者「算数か」
メイド妹「うまくやると、儲けでうはうは」
勇者「あの経済屋め。『儲け』だけは書けるのか」
メイド妹「損益分岐点、もかけるよ?」
309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:41:36.30 ID:M+qN/VAn0
損益分岐点wwwwwwwwww
310: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:43:22.75 ID:AIDyRnsCP
勇者「あと、2匹か、イノシシ換算で」
メイド妹「なべー!」
勇者「突然どうした」
メイド妹「いのなべ?」
勇者「ああ、あれは美味いな!」
メイド妹「いのなべにしよー!」
勇者「お前は食い気ばっかりだな」
メイド妹「ゆーしゃさまが、ごはんとってきてくれる」にこっ
勇者「……ああ、そうだな」
メイド妹「ごはんいっぱいは、とても幸せだよ」
勇者「そだな」
メイド妹「けんかないもん。
そんちょーのあとつぎさまにぺとぺととしなくていいの。
まいにちあったかい。おふとんほかほか。
ふくがきれい。おねーちゃんとふたりで
ずっといっしょにいられる。それは幸せ」
勇者「……」
メイド妹「どうしたの?」
メイド妹「なべー!」
勇者「突然どうした」
メイド妹「いのなべ?」
勇者「ああ、あれは美味いな!」
メイド妹「いのなべにしよー!」
勇者「お前は食い気ばっかりだな」
メイド妹「ゆーしゃさまが、ごはんとってきてくれる」にこっ
勇者「……ああ、そうだな」
メイド妹「ごはんいっぱいは、とても幸せだよ」
勇者「そだな」
メイド妹「けんかないもん。
そんちょーのあとつぎさまにぺとぺととしなくていいの。
まいにちあったかい。おふとんほかほか。
ふくがきれい。おねーちゃんとふたりで
ずっといっしょにいられる。それは幸せ」
勇者「……」
メイド妹「どうしたの?」
312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 17:47:21.28 ID:AIDyRnsCP
勇者「いや、勇者って相当に役に立たないなと思って」
メイド妹「?」
勇者「知識があるわけでもなければ、
金勘定が出来るわけでもない。農業も動物の世話も
出来ないし、先生は……出来るって云っても剣くらいだ。
こうなってみるとつくづく思い知る。
俺、口先ばっかり平和とか云ってたけれど
平和ってどういうモノなのか、どうすれば平和になるのか
平和になったらどうすればいいのかなんて
ちっとも考えてなかったよ」
メイド妹「むずかしーね」
勇者「難しいな」
メイド妹「いのししべーこん、おいしいよ?」
勇者「あれ、好きなのか?」
メイド妹 こくん
勇者「気に入ったのか?」
メイド妹 うんうん
勇者「じゃ、勇者のお兄ちゃんとしては、もうちょい
イノシシやっつけて、減らしてくるかね~」
メイド妹「?」
勇者「知識があるわけでもなければ、
金勘定が出来るわけでもない。農業も動物の世話も
出来ないし、先生は……出来るって云っても剣くらいだ。
こうなってみるとつくづく思い知る。
俺、口先ばっかり平和とか云ってたけれど
平和ってどういうモノなのか、どうすれば平和になるのか
平和になったらどうすればいいのかなんて
ちっとも考えてなかったよ」
メイド妹「むずかしーね」
勇者「難しいな」
メイド妹「いのししべーこん、おいしいよ?」
勇者「あれ、好きなのか?」
メイド妹 こくん
勇者「気に入ったのか?」
メイド妹 うんうん
勇者「じゃ、勇者のお兄ちゃんとしては、もうちょい
イノシシやっつけて、減らしてくるかね~」
316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:05:28.67 ID:AIDyRnsCP
――館の広間、授業中
魔王「……以上が南部諸王国の現在の経済状態から
導かれる戦争の最大規模となる」
貴族子弟「……」めもめも
商人子弟「……えっとえっと」
軍人子弟「……」
魔王「私は専門ではないが、古来軍隊が壊滅すると
されている損耗率は」
軍人子弟「……最後の一兵まで戦い抜くでござる」
魔王「おおよそ30%と言われている。3割だな。
ゆえに、この常備軍および恒常的な傭兵戦力によって
戦線維持は難しく、散発的な会戦と拠点防衛が
現在魔王軍との戦闘の要旨となる」
魔王「ここまでで質問は?」
メイド姉「聖鍵遠征軍はどうでしょう?」
魔王「うむ、あれは例外だな」
魔王「……以上が南部諸王国の現在の経済状態から
導かれる戦争の最大規模となる」
貴族子弟「……」めもめも
商人子弟「……えっとえっと」
軍人子弟「……」
魔王「私は専門ではないが、古来軍隊が壊滅すると
されている損耗率は」
軍人子弟「……最後の一兵まで戦い抜くでござる」
魔王「おおよそ30%と言われている。3割だな。
ゆえに、この常備軍および恒常的な傭兵戦力によって
戦線維持は難しく、散発的な会戦と拠点防衛が
現在魔王軍との戦闘の要旨となる」
魔王「ここまでで質問は?」
メイド姉「聖鍵遠征軍はどうでしょう?」
魔王「うむ、あれは例外だな」
317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:17:58.51 ID:AIDyRnsCP
魔王「聖鍵遠征軍について知っているところを述べよ」
貴族子弟「あっ。はい。聖鍵遠征軍は中央大陸の
危機会議によって結成された、聖なる遠征軍です。
目的は邪悪なる魔族を殲滅しこの戦争を終結させること。
この15年の間に2回おこなわれました。
南の極点にある魔界門から魔界へと侵攻して
魔族の重要都市二つを破壊、魔王の都まで
迫りましたが、神のご加護虚しく魔王の卑劣な
補給線破壊行為により撤退を余儀なくされました」
魔王「おお。ほぼ満点だな。
――このような遠征軍は巨大な兵力を背景にして
行なわれる。まず第一に必要なのは世界規模での
戦争終結への熱意だ。ただ一度の大遠征で終戦が
成し遂げられるのならば犠牲を払う価値があると
世界中の人間が望んでこそ、その戦いに身を
投じる参加者が生まれるわけだな」
魔王「もう一つは経済的バックアップだ。
本講の授業で何度でも扱うが、経済の支援無くして
社会も戦争行為も成り立たない。人間は食べなければ
飢えて死ぬ生き物なのだ」
貴族子弟「あっ。はい。聖鍵遠征軍は中央大陸の
危機会議によって結成された、聖なる遠征軍です。
目的は邪悪なる魔族を殲滅しこの戦争を終結させること。
この15年の間に2回おこなわれました。
南の極点にある魔界門から魔界へと侵攻して
魔族の重要都市二つを破壊、魔王の都まで
迫りましたが、神のご加護虚しく魔王の卑劣な
補給線破壊行為により撤退を余儀なくされました」
魔王「おお。ほぼ満点だな。
――このような遠征軍は巨大な兵力を背景にして
行なわれる。まず第一に必要なのは世界規模での
戦争終結への熱意だ。ただ一度の大遠征で終戦が
成し遂げられるのならば犠牲を払う価値があると
世界中の人間が望んでこそ、その戦いに身を
投じる参加者が生まれるわけだな」
魔王「もう一つは経済的バックアップだ。
本講の授業で何度でも扱うが、経済の支援無くして
社会も戦争行為も成り立たない。人間は食べなければ
飢えて死ぬ生き物なのだ」
318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:19:09.55 ID:s4/0828FO
支援
319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:20:42.37 ID:BGZnVIV00
地理・経済系の学部卒か現役か
社会系の知識に明るい人が世界構成したファンタジー物は面白いんだよな
社会系の知識に明るい人が世界構成したファンタジー物は面白いんだよな
320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:21:32.36 ID:Ek59IbD40
勇者がどんどん成長していくな
321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:21:39.10 ID:AIDyRnsCP
貴族子弟「時には金や食料よりも重要なことがある」だむんっ
軍人子弟「算盤をはじいて戦など出来ないでござる。先生」
商人子弟「……そうでしょうか」
軍人子弟「飢えだなんて精神的な弱者の言い訳だ」
貴族子弟「そもそも領主が保護している人民に
飢えなどは存在しないじゃないですか」
メイド姉「飢えたことがないんですね」
魔王「……次は、南氷海。すなわち南部諸王国と
極点である、魔王の大陸を取り巻く海についてだ。
この海は軍事的、経済的な意味で非常に大きな意味を
もっている。現在魔王軍との戦いのおよそ25%が
海を舞台に行なわれており……」
ちりーん、ちりーん、ちりーん
メイド長「お嬢様、授業終了のお時間です」
魔王「もうそんな時間か。では、本日はこれで終える。
明日はこの続きだ。それから、剣士様が明日の午後は
手ほどきに来るそうだぞ」
軍人子弟「まっておったでござる」
貴族子弟「明日はあたりだな」
魔王「では、解散。わたしは長老の家に移動して
夜間の農業講座をしなければならないのでな」
軍人子弟「算盤をはじいて戦など出来ないでござる。先生」
商人子弟「……そうでしょうか」
軍人子弟「飢えだなんて精神的な弱者の言い訳だ」
貴族子弟「そもそも領主が保護している人民に
飢えなどは存在しないじゃないですか」
メイド姉「飢えたことがないんですね」
魔王「……次は、南氷海。すなわち南部諸王国と
極点である、魔王の大陸を取り巻く海についてだ。
この海は軍事的、経済的な意味で非常に大きな意味を
もっている。現在魔王軍との戦いのおよそ25%が
海を舞台に行なわれており……」
ちりーん、ちりーん、ちりーん
メイド長「お嬢様、授業終了のお時間です」
魔王「もうそんな時間か。では、本日はこれで終える。
明日はこの続きだ。それから、剣士様が明日の午後は
手ほどきに来るそうだぞ」
軍人子弟「まっておったでござる」
貴族子弟「明日はあたりだな」
魔王「では、解散。わたしは長老の家に移動して
夜間の農業講座をしなければならないのでな」
323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:36:03.83 ID:AIDyRnsCP
――館の廊下
勇者「よっ。お疲れ」
魔王「疲れた」
勇者「疲れた顔してるよ」
魔王「なぜ私は教育などと言い出したんだろう。
人間の子供の相手をするのがあんなにも疲れるとは
思わなかった。あれではまるで動物ではないか。
理非も交渉も通じない」
勇者「あー」
魔王「なぜあの者たちはあんなにもプライドが高いのだ」
勇者「貴族や軍人や富裕層だからじゃないか?」
魔王「いっそ蛙に変えてしまうか」
勇者「冗談に聞こえないぞ」
魔王「冗談ではない」
勇者「止めておけ」
魔王「そうか」しょぼん
勇者「村長の家に向かうんだろう? 付き合うよ」
勇者「よっ。お疲れ」
魔王「疲れた」
勇者「疲れた顔してるよ」
魔王「なぜ私は教育などと言い出したんだろう。
人間の子供の相手をするのがあんなにも疲れるとは
思わなかった。あれではまるで動物ではないか。
理非も交渉も通じない」
勇者「あー」
魔王「なぜあの者たちはあんなにもプライドが高いのだ」
勇者「貴族や軍人や富裕層だからじゃないか?」
魔王「いっそ蛙に変えてしまうか」
勇者「冗談に聞こえないぞ」
魔王「冗談ではない」
勇者「止めておけ」
魔王「そうか」しょぼん
勇者「村長の家に向かうんだろう? 付き合うよ」
324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:36:39.61 ID:M+qN/VAn0
実はこのSSって
>>1じゃないんだよなぁ。
乗っ取ってるわけだが、興味深い。
>>1じゃないんだよなぁ。
乗っ取ってるわけだが、興味深い。
326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:40:10.81 ID:Et3NhPyPO
支援
332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:43:21.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「む。寒いな」
勇者「雪が降ってないだけましだ」
魔王「寒いぞ、勇者」
勇者「俺はその中で一日中イノシシを追っかけてたんだぞ?
魔王は家の中にいたんだから文句言うな」
魔王「ちがう。寒いのだ」
勇者「……」
魔王「……だめか?」
勇者「わかった、ほら」ばふっ「これであったかいか?」
魔王「うん、あったかい」
勇者「ご機嫌か」
魔王「ふふん。悪くはない」
勇者「偉そうだな」
魔王「勇者を手に入れて本当に良かった」すりっ
勇者「あー。こほん」
魔王「?」
勇者「おたがいな」
勇者「雪が降ってないだけましだ」
魔王「寒いぞ、勇者」
勇者「俺はその中で一日中イノシシを追っかけてたんだぞ?
魔王は家の中にいたんだから文句言うな」
魔王「ちがう。寒いのだ」
勇者「……」
魔王「……だめか?」
勇者「わかった、ほら」ばふっ「これであったかいか?」
魔王「うん、あったかい」
勇者「ご機嫌か」
魔王「ふふん。悪くはない」
勇者「偉そうだな」
魔王「勇者を手に入れて本当に良かった」すりっ
勇者「あー。こほん」
魔王「?」
勇者「おたがいな」
334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:50:56.62 ID:AIDyRnsCP
魔王「まぁ、なんとか動き出したのだから
文句を付けるのもおかしいのだろうな」
勇者「まぁなぁ」
魔王「悲しいほどに権威が物を言うのだな。
貴族の子弟を受け入れて、箔がついたら農民も
学んでも良いと言い出すのか。新しい農法も
この春からそれなりの規模で実験開始だそうだ」
勇者「結果が出るのに、時間はかかるだろうな」
魔王「いや、来年からにでも結果は出す」
勇者「出来るのか?」
魔王「秘密兵器を手に入れたからな」
勇者「なんだそれは」
魔王 ごそごそ 「これだ」
勇者「なんだその固まりは?」
魔王「これは馬鈴薯という。作物だ」
勇者「??」
魔王「植物なんだ。こうやって掘り出しているが、
この丸い部分は土中に出来る」
文句を付けるのもおかしいのだろうな」
勇者「まぁなぁ」
魔王「悲しいほどに権威が物を言うのだな。
貴族の子弟を受け入れて、箔がついたら農民も
学んでも良いと言い出すのか。新しい農法も
この春からそれなりの規模で実験開始だそうだ」
勇者「結果が出るのに、時間はかかるだろうな」
魔王「いや、来年からにでも結果は出す」
勇者「出来るのか?」
魔王「秘密兵器を手に入れたからな」
勇者「なんだそれは」
魔王 ごそごそ 「これだ」
勇者「なんだその固まりは?」
魔王「これは馬鈴薯という。作物だ」
勇者「??」
魔王「植物なんだ。こうやって掘り出しているが、
この丸い部分は土中に出来る」
335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:52:06.96 ID:EUtQl2pV0
あまずっぱい勇者が憎い
336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:53:29.91 ID:Lc0VoYEVO
なんだかガイアの夜明けを見てる気分
339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:54:44.77 ID:AIDyRnsCP
勇者「ふぅん……」
魔王「これはなかなか美味で栄養価の高い食物なのだ。
そのうえ、このような食用部分が地下に出来るために、
鳥害を受けにくい。また、痩せた土地や寒冷地、
固い地面でも成長できるという優れものだ。
そのうえ、土地あたりの収穫量は、ざっと計算した
ところ小麦の3倍に当たる」
勇者「まじかよっ!?」
魔王「ああ、大まじめだ」
勇者「神の食べ物か!?」
魔王「いいや、魔界の食べ物だ」
勇者「……」
魔王「異文化、異文明の接触というのは、
このように大いなる恩恵を生むことがあるんだ。
たとえ不幸な形の接触であっても、接触は接触だ」
勇者「複雑だなぁ」
魔王「これはなかなか美味で栄養価の高い食物なのだ。
そのうえ、このような食用部分が地下に出来るために、
鳥害を受けにくい。また、痩せた土地や寒冷地、
固い地面でも成長できるという優れものだ。
そのうえ、土地あたりの収穫量は、ざっと計算した
ところ小麦の3倍に当たる」
勇者「まじかよっ!?」
魔王「ああ、大まじめだ」
勇者「神の食べ物か!?」
魔王「いいや、魔界の食べ物だ」
勇者「……」
魔王「異文化、異文明の接触というのは、
このように大いなる恩恵を生むことがあるんだ。
たとえ不幸な形の接触であっても、接触は接触だ」
勇者「複雑だなぁ」
340: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:58:09.07 ID:Z+4MLga8O
しえん
341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 18:59:48.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「もっともこの馬鈴薯にだって弱点がない訳じゃない」
勇者「なにがあるんだ?」
魔王「まず、毒性がある」
勇者「ダメじゃん!」
魔王「いや、強い毒ではないし、毒性が発生するのは、
日光に当たって発芽しかけたものだけだ。
収穫や保存においてきちんと管理すれば問題ない。
むしろ冷暗所で保存すれば一年程度は持つはずだ」
勇者「ふむ……」
魔王「また、連作障害がある。この馬鈴薯という植物は
条件さえ合えば、年に3回程度収穫できるのだが」
勇者「聞くだにすごいな。さすが魔界の植物だ」
魔王「ああ。だが、その分土中の栄養素、つまり
いわゆる『大地の恵み』を多く消費してしまうんだ。
必要な種類の恵だけ使ってしまうから、おなじ場所で
作り続けると出来が悪くなって、病気にもかかりやすくなる」
勇者「ふむふむ」
勇者「なにがあるんだ?」
魔王「まず、毒性がある」
勇者「ダメじゃん!」
魔王「いや、強い毒ではないし、毒性が発生するのは、
日光に当たって発芽しかけたものだけだ。
収穫や保存においてきちんと管理すれば問題ない。
むしろ冷暗所で保存すれば一年程度は持つはずだ」
勇者「ふむ……」
魔王「また、連作障害がある。この馬鈴薯という植物は
条件さえ合えば、年に3回程度収穫できるのだが」
勇者「聞くだにすごいな。さすが魔界の植物だ」
魔王「ああ。だが、その分土中の栄養素、つまり
いわゆる『大地の恵み』を多く消費してしまうんだ。
必要な種類の恵だけ使ってしまうから、おなじ場所で
作り続けると出来が悪くなって、病気にもかかりやすくなる」
勇者「ふむふむ」
343: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:04:25.24 ID:TMJUmSgc0
ジャガイモは昔ドイツで悪魔の作物と言われていたとかなんとか
聞いたごとがあるな・・・
聞いたごとがあるな・・・
344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:06:00.60 ID:AIDyRnsCP
魔王「もうちょっと」
勇者「へ?」
魔王「もうちょっとくつくのだ。隙間があると寒い」
勇者「う、うん……。あー。くっつくとこっちが
いろいろもにょもにょなんだけど」
魔王「……わたしの身体は気持ち悪いか?」
勇者「いやいや、そうじゃないんですが」
魔王「まぁ、とにかく。この食物も、寒冷地の
飢饉対策に役立つはずなんだ。毒性の部分は
気をつけていればさほど大きな問題にはならない。
どちらかというと、連作障害の方が問題だろうな」
勇者「俺の理性の方にも問題が」
魔王「大地の恵みは時間がたてば回復するが
それに対してこちら側からも働きかけを行なう方法を
確立しないと、一カ所に留まって生産量を上げることは
限界があるだろうな」
勇者「大地の神に祈祷でもするのか?」
勇者「へ?」
魔王「もうちょっとくつくのだ。隙間があると寒い」
勇者「う、うん……。あー。くっつくとこっちが
いろいろもにょもにょなんだけど」
魔王「……わたしの身体は気持ち悪いか?」
勇者「いやいや、そうじゃないんですが」
魔王「まぁ、とにかく。この食物も、寒冷地の
飢饉対策に役立つはずなんだ。毒性の部分は
気をつけていればさほど大きな問題にはならない。
どちらかというと、連作障害の方が問題だろうな」
勇者「俺の理性の方にも問題が」
魔王「大地の恵みは時間がたてば回復するが
それに対してこちら側からも働きかけを行なう方法を
確立しないと、一カ所に留まって生産量を上げることは
限界があるだろうな」
勇者「大地の神に祈祷でもするのか?」
345: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:09:37.52 ID:IH+kRfza0
おもろい
346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:10:57.82 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだな。祈祷の一種だ」
勇者「無神論者じゃないのか? 魔王は」
魔王「私が無神論だろうと何だろうと、
利用できるものは隙無く隈無く躊躇無く
利用したおすのが経済屋というものだ」
勇者「ある種の悪魔だな、こいつ」
魔王「大地そのものに、契約の証として捧げ物をするんだ。
この種の捧げ物は人間社会でも、経験的に行なわれている。
焼いた食物や動物の遺骸、動物の糞尿や、食べかすなどだ」
勇者「ふむ。なんか捧げ物ってイメージじゃないけど」
魔王「期待しているのは南氷海の魚なんだがな」
勇者「なぜ?」
魔王「捧げ物には魚が良いんだよ」
勇者「買ってきてやろうか? 転移呪文でひとっ飛びだぞ」
魔王「ありがたいが、持って帰れる量ではないと思う。
畑一つに月50匹。それも毎年だと云ったら驚くか?」
勇者「無神論者じゃないのか? 魔王は」
魔王「私が無神論だろうと何だろうと、
利用できるものは隙無く隈無く躊躇無く
利用したおすのが経済屋というものだ」
勇者「ある種の悪魔だな、こいつ」
魔王「大地そのものに、契約の証として捧げ物をするんだ。
この種の捧げ物は人間社会でも、経験的に行なわれている。
焼いた食物や動物の遺骸、動物の糞尿や、食べかすなどだ」
勇者「ふむ。なんか捧げ物ってイメージじゃないけど」
魔王「期待しているのは南氷海の魚なんだがな」
勇者「なぜ?」
魔王「捧げ物には魚が良いんだよ」
勇者「買ってきてやろうか? 転移呪文でひとっ飛びだぞ」
魔王「ありがたいが、持って帰れる量ではないと思う。
畑一つに月50匹。それも毎年だと云ったら驚くか?」
350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:17:55.33 ID:AIDyRnsCP
勇者「うっわ、そりゃ」
魔王「無理だろう?」
勇者「うん」
魔王「だが、それも問題が大きくてな」
勇者「なんだ? 南氷海に問題でもあるのか?」
魔王「ああ。二つある。
一つは、勇者も知ってると思うが南氷将軍だ」
勇者「……あの親父か」
魔王「ああ、あの男、魔族の中でも強硬派だからな。
魔王の私が伏せっているこの時期でも略奪行為を
続けていると聞いている。銀鱗族、飛魚族、鉄亀族、
巨大烏賊族、歌姫族を率いる、魔族でも指折りの
実力者だ……」
勇者「何度か戦りあったことがある。
ばかでかい図体で、すげー銛さばきだった」
魔王「南氷海で活動するからにはどうあっても
利害が衝突するだろうな」
魔王「無理だろう?」
勇者「うん」
魔王「だが、それも問題が大きくてな」
勇者「なんだ? 南氷海に問題でもあるのか?」
魔王「ああ。二つある。
一つは、勇者も知ってると思うが南氷将軍だ」
勇者「……あの親父か」
魔王「ああ、あの男、魔族の中でも強硬派だからな。
魔王の私が伏せっているこの時期でも略奪行為を
続けていると聞いている。銀鱗族、飛魚族、鉄亀族、
巨大烏賊族、歌姫族を率いる、魔族でも指折りの
実力者だ……」
勇者「何度か戦りあったことがある。
ばかでかい図体で、すげー銛さばきだった」
魔王「南氷海で活動するからにはどうあっても
利害が衝突するだろうな」
355: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:27:04.00 ID:AIDyRnsCP
魔王「もう一つが『同盟』だ」
勇者「なんだそりゃ」
魔王「この話は、もうちょっと伏せておこうかと
思ってたんだがな。良い機会だから説明しておこう」
勇者「うん」
魔王「正式には『南部独立都市および自由商人による
経済同盟』と呼ぶ。まぁ、いまでは『同盟』で
何処でも通じるな」
勇者「聞いた覚えはあるけど、それって有名なのか?」
魔王「名前だけは有名だが、実体をする人間は
多くはないな。特に商人でない人間にとっては
意味が薄い」
勇者「つまり、商人の寄り合い所帯だろう?」
魔王「まぁ、そうだ。
50年ほど前に南部諸王国中心の街にうまれた団体だ。
交易商人による団体で、団体構成員の交易特権を
守るために生まれたのが発祥の契機だな」
勇者「なんだそりゃ」
魔王「この話は、もうちょっと伏せておこうかと
思ってたんだがな。良い機会だから説明しておこう」
勇者「うん」
魔王「正式には『南部独立都市および自由商人による
経済同盟』と呼ぶ。まぁ、いまでは『同盟』で
何処でも通じるな」
勇者「聞いた覚えはあるけど、それって有名なのか?」
魔王「名前だけは有名だが、実体をする人間は
多くはないな。特に商人でない人間にとっては
意味が薄い」
勇者「つまり、商人の寄り合い所帯だろう?」
魔王「まぁ、そうだ。
50年ほど前に南部諸王国中心の街にうまれた団体だ。
交易商人による団体で、団体構成員の交易特権を
守るために生まれたのが発祥の契機だな」
357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:32:55.13 ID:AIDyRnsCP
勇者「交易特権?」
魔王「ああ。ある街から別の街に物資を持っていくと
当然のように、許可が下りたり、降りなかったりするだろう」
勇者「あるな」
魔王「商人たちはその『許可』を求めるし
手に入れれば守りたがったんだ。
当たり前だな、その免許のあるなしで、
商売が出来るかどうかが決まる。死活問題だ」
勇者「ふむふむ」
魔王「時代が下ると、税の機構が整備されて、
おなじ許可でも税が重かったり軽かったりするようになった。
こうして王族や貴族は税を通じて経済に接触できるんだ。
しかしそれは逆に、経済の輩、つまり商人が
貴族や王族といった支配階級に接触することをも意味する」
勇者「うへぇ、なんだか難しい話だ」
魔王「『同盟』はそういった商人の作った組織の中でも
最大のものだよ。その規模は想像を絶する」
勇者「へー? どれくらいなんだ? 千人くらいいるのか?」
魔王「ああ。ある街から別の街に物資を持っていくと
当然のように、許可が下りたり、降りなかったりするだろう」
勇者「あるな」
魔王「商人たちはその『許可』を求めるし
手に入れれば守りたがったんだ。
当たり前だな、その免許のあるなしで、
商売が出来るかどうかが決まる。死活問題だ」
勇者「ふむふむ」
魔王「時代が下ると、税の機構が整備されて、
おなじ許可でも税が重かったり軽かったりするようになった。
こうして王族や貴族は税を通じて経済に接触できるんだ。
しかしそれは逆に、経済の輩、つまり商人が
貴族や王族といった支配階級に接触することをも意味する」
勇者「うへぇ、なんだか難しい話だ」
魔王「『同盟』はそういった商人の作った組織の中でも
最大のものだよ。その規模は想像を絶する」
勇者「へー? どれくらいなんだ? 千人くらいいるのか?」
358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:36:33.89 ID:kGQHhrt80
支援
359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:38:05.19 ID:AIDyRnsCP
魔王「この場合、人数は問題じゃないんだ」
勇者「そうなのか?」
魔王「経済的な組織だからな。動かせる富の量や
流通に介入する能力が彼らの武器だ。人数じゃない」
勇者「理屈で云えばそうなるのか。
……で、どれくらいなんだ?」
魔王「その商業範囲は、南部を中心にしてではあるが
この中央大陸全土に及ぶ。
主要な都市に『同盟』の出張機関がない場所はなく、
『同盟』の支店がある場所こそがすなわち主要都市だ。
『同盟』の総資産は誰にも判らないけれど、
いくつかの歴史的な介入から私が試算する限り
その総額は天文学的な規模にあがる」
勇者「……」
魔王「少なく見積もっても、南部諸王国全部を
5回売り買いしてもおつりが来ることは確かだ」
勇者「!?」
勇者「そうなのか?」
魔王「経済的な組織だからな。動かせる富の量や
流通に介入する能力が彼らの武器だ。人数じゃない」
勇者「理屈で云えばそうなるのか。
……で、どれくらいなんだ?」
魔王「その商業範囲は、南部を中心にしてではあるが
この中央大陸全土に及ぶ。
主要な都市に『同盟』の出張機関がない場所はなく、
『同盟』の支店がある場所こそがすなわち主要都市だ。
『同盟』の総資産は誰にも判らないけれど、
いくつかの歴史的な介入から私が試算する限り
その総額は天文学的な規模にあがる」
勇者「……」
魔王「少なく見積もっても、南部諸王国全部を
5回売り買いしてもおつりが来ることは確かだ」
勇者「!?」
360: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:41:20.98 ID:DiSuZ9EY0
商人って凄いな
361: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:41:56.86 ID:FXdf4v1B0
バブル期の日本を見てるようwww
362: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:42:11.51 ID:AIDyRnsCP
魔王「そう言う組織なんだ」
勇者「なんだそりゃ!?」
魔王「こと、この南部地方に限って云えば、都市間の
小麦の流通のおおよそ60%に同盟の息がかかっている。
その気になれば、領主も王の首もすげ替えられる力を
『同盟』はもっていることになるな」
勇者「化物かよ」
魔王「まごうことなき化物だ。
人間の生活は化物の背に乗って行なわれている」
勇者「俺、そのなんとか同盟ってのに頼まれて
何回か戦意高揚演説したことがあるぞ」
魔王「そうなのか?」
勇者「ああ。魔族を倒しに立ち上がろう、えいえいおー!
みたいなやつ。そのあとひらひらしたドレスの
姉ちゃんが出てきて、攻城塔の上でうたってたぞ。
キラッ☆とかいって」
魔王「プロパガンダだな。数百万Gは儲けただろう」
勇者「おれには謝礼15Gだったんだぞっ!?」
勇者「なんだそりゃ!?」
魔王「こと、この南部地方に限って云えば、都市間の
小麦の流通のおおよそ60%に同盟の息がかかっている。
その気になれば、領主も王の首もすげ替えられる力を
『同盟』はもっていることになるな」
勇者「化物かよ」
魔王「まごうことなき化物だ。
人間の生活は化物の背に乗って行なわれている」
勇者「俺、そのなんとか同盟ってのに頼まれて
何回か戦意高揚演説したことがあるぞ」
魔王「そうなのか?」
勇者「ああ。魔族を倒しに立ち上がろう、えいえいおー!
みたいなやつ。そのあとひらひらしたドレスの
姉ちゃんが出てきて、攻城塔の上でうたってたぞ。
キラッ☆とかいって」
魔王「プロパガンダだな。数百万Gは儲けただろう」
勇者「おれには謝礼15Gだったんだぞっ!?」
363: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:42:17.66 ID:2G93HqOeO
支援
365: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:43:39.32 ID:DiSuZ9EY0
やっすいwww
368: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:47:46.85 ID:AIDyRnsCP
勇者「うううう。俺は、俺ってヤツは……」
魔王「そんなに落ち込むな、勇者」
勇者「俺はそんなヤツらに騙されて……」
魔王「経済は君の専門じゃない。無理もないさ」
勇者「俺はそのお姉ちゃんに『憧れてますっ!』
なんてキラキラ瞳で云われたせいで
それだけで胸がいっぱいになって
魔界へ飛び出しちゃうし」
魔王「……」
勇者「帰ってきたら祝勝パレードで
良い感じのパーティーに招待しますからとか
依頼してきた青年に言われちゃったりして、
モテますねとか肘でつつかれて舞い上がったり……。
いま考えるとあの青年も商人だったんだなぁ」
魔王「……」
勇者「うううう。俺はダメ勇者だ」
魔王「ふんっ。きつい教育が必要だな」
魔王「そんなに落ち込むな、勇者」
勇者「俺はそんなヤツらに騙されて……」
魔王「経済は君の専門じゃない。無理もないさ」
勇者「俺はそのお姉ちゃんに『憧れてますっ!』
なんてキラキラ瞳で云われたせいで
それだけで胸がいっぱいになって
魔界へ飛び出しちゃうし」
魔王「……」
勇者「帰ってきたら祝勝パレードで
良い感じのパーティーに招待しますからとか
依頼してきた青年に言われちゃったりして、
モテますねとか肘でつつかれて舞い上がったり……。
いま考えるとあの青年も商人だったんだなぁ」
魔王「……」
勇者「うううう。俺はダメ勇者だ」
魔王「ふんっ。きつい教育が必要だな」
371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:55:05.85 ID:AIDyRnsCP
勇者「つまり、敵だな」
魔王「あ-。物騒なことを云うな」
勇者「いいや、敵だ。最上級撃魔封殺雷撃魔法で仕留める」
魔王「都市攻略術式を個人相手に使おうと考えるな」
勇者「だって騙したんだぞ」しくしく
魔王「子供か、君は。
……そもそも『同盟』には意志なんてないんだ。
金儲けをするための商人が寄り集まって、
知恵を出し合い、自分たちの身を守り成長することだけを
願った組織。もはや肥大してしまって個人の思惑なんて
欠片も差し挟めないほどに成立してしまった
『概念』に近い存在なんだ。
仮に勇者がだまされたとしても向こうに騙すつもり
なんて無かったし、逆に言えば復讐したって
痛みなんて感じる機能はない」
勇者「くぁ、余計むかつく」
魔王「敵でも味方でもない。獣みたいなモノなんだ」
勇者「……」
魔王(それでも、あるいは……)
魔王「あ-。物騒なことを云うな」
勇者「いいや、敵だ。最上級撃魔封殺雷撃魔法で仕留める」
魔王「都市攻略術式を個人相手に使おうと考えるな」
勇者「だって騙したんだぞ」しくしく
魔王「子供か、君は。
……そもそも『同盟』には意志なんてないんだ。
金儲けをするための商人が寄り集まって、
知恵を出し合い、自分たちの身を守り成長することだけを
願った組織。もはや肥大してしまって個人の思惑なんて
欠片も差し挟めないほどに成立してしまった
『概念』に近い存在なんだ。
仮に勇者がだまされたとしても向こうに騙すつもり
なんて無かったし、逆に言えば復讐したって
痛みなんて感じる機能はない」
勇者「くぁ、余計むかつく」
魔王「敵でも味方でもない。獣みたいなモノなんだ」
勇者「……」
魔王(それでも、あるいは……)
372: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 19:59:02.75 ID:AIDyRnsCP
勇者「むー。知らないことばっかりだ」
魔王「ぼやくな」
勇者「まぁ、いいけどさ。戦ってばかりいる時よりも
前に進んでいる気がするから」
魔王「……ずっと側にいる」
勇者「うん。俺もだ」
魔王「あー。あー」あせっ
勇者「なんだ?」
魔王「ほら、もう村長の家だ。きょ、今日は
クローバーによる土中の恵みの結晶化について話すのだっ」
勇者「そ、そか」
魔王「……その」
勇者「うん」
魔王「4時間ほどで、帰るから」
勇者「わかった」
魔王「い、いってくるからな」ぎゅっ
勇者「おう! 行ってこい!」ぎゅっ
魔王「ぼやくな」
勇者「まぁ、いいけどさ。戦ってばかりいる時よりも
前に進んでいる気がするから」
魔王「……ずっと側にいる」
勇者「うん。俺もだ」
魔王「あー。あー」あせっ
勇者「なんだ?」
魔王「ほら、もう村長の家だ。きょ、今日は
クローバーによる土中の恵みの結晶化について話すのだっ」
勇者「そ、そか」
魔王「……その」
勇者「うん」
魔王「4時間ほどで、帰るから」
勇者「わかった」
魔王「い、いってくるからな」ぎゅっ
勇者「おう! 行ってこい!」ぎゅっ
374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:03:40.63 ID:AIDyRnsCP
ぽぽぽ。
切りが良いので、ここでQKしてまいります。
んがくっく。次の展開なんて何にも考えてないので
ヒロイン増やす希望どうぞ(いい加減)
全く何の責任も取れませんが。
切りが良いので、ここでQKしてまいります。
んがくっく。次の展開なんて何にも考えてないので
ヒロイン増やす希望どうぞ(いい加減)
全く何の責任も取れませんが。
375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:04:58.50 ID:Ek59IbD40
勇者は魔王一途が良いなぁ
おっさんが欲しい
おっさんが欲しい
376: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:05:02.89 ID:FXdf4v1B0
あとは宗教が絡むと面白いかなとおもう
その辺からライバル的なやつお願いします
その辺からライバル的なやつお願いします
377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:06:02.61 ID:0xwysVvQ0
増やさないでいいので、講義をお願いします先生
379: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:09:13.21 ID:xL/HlWluO
増やさない方向で
383: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:12:32.50 ID:JKoKE5Vy0
追ヒロイン追加はいい、既存キャラのアクを強化で
387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:27:02.41 ID:RiPRwn/U0
これはしっかりと完結させてほしいな
391: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 20:54:49.08 ID:DNZ5ZB5H0
おもすれー
394: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 21:12:16.25 ID:xL/HlWluO
ほ
395: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 21:17:48.44 ID:x59uavvi0
ほ
416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:38:43.77 ID:Et3NhPyPO
ほし
419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:46:44.67 ID:AIDyRnsCP
――湖の国、首都郊外
しゅんっ!
勇者「……いいぞ」きょろきょろ
魔王「む。便利なものだな、転移魔法というものは」
勇者「魔王だって使えるだろう?」
魔王「いや、個人長距離移動性能と、目的地の選択の
関係でここまでの汎用性はない」
勇者「そうなのか」
魔王「術式が違うのだ。機会があれば研究したいが」
勇者「まぁ、いまは目的が先か」
魔王「うん。どこだ?」
勇者「あの丘の向こうだ。念のために顔は隠してな」
魔王「心得た。淑女の服に比べれば、変装の方が
ずっと着心地が良いぞ」
勇者「あれはあれでよい物なんだがなぁ」
しゅんっ!
勇者「……いいぞ」きょろきょろ
魔王「む。便利なものだな、転移魔法というものは」
勇者「魔王だって使えるだろう?」
魔王「いや、個人長距離移動性能と、目的地の選択の
関係でここまでの汎用性はない」
勇者「そうなのか」
魔王「術式が違うのだ。機会があれば研究したいが」
勇者「まぁ、いまは目的が先か」
魔王「うん。どこだ?」
勇者「あの丘の向こうだ。念のために顔は隠してな」
魔王「心得た。淑女の服に比べれば、変装の方が
ずっと着心地が良いぞ」
勇者「あれはあれでよい物なんだがなぁ」
420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:48:18.48 ID:DNZ5ZB5H0
キタタタタタタタタタアタタアタタタ
421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:48:20.53 ID:Et3NhPyPO
支援支援支援支援
422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:53:25.47 ID:AIDyRnsCP
ざっざっ
魔王「あれか?」
勇者「ああ、あの石造りの建物が、このあたりの
修道会を束ねる修道院だ」
魔王「宗教ばかりは私たちには判りづらいな」
勇者「俺だって説明しにくいよ。専門家じゃないんだし。
まぁ、でも『同盟』が化物だとすると
『教会』だって同じくらい化物だって事だ」
魔王「ふむ。用心するべきなのだな」
勇者「ああ、もちろんだ。お前は特に魔王なんだからな。
危険人物リストのぶっちぎりナンバー1だ。
なんせ神の敵だぞ」
魔王「ははは。神など恐れたことはない」
勇者「神の名を叫ぶ人間ってのは怖いんだぞ」
魔王「うむ、それは肝に銘じる」ぶるっ
勇者「さ、いくぞ。一応紹介の連絡だけは
入ってると思うが……」
魔王「最悪魔法で逃げ出せばいいだろう」
勇者「悪い意味で場慣れしてきたな、俺たちも」
魔王「あれか?」
勇者「ああ、あの石造りの建物が、このあたりの
修道会を束ねる修道院だ」
魔王「宗教ばかりは私たちには判りづらいな」
勇者「俺だって説明しにくいよ。専門家じゃないんだし。
まぁ、でも『同盟』が化物だとすると
『教会』だって同じくらい化物だって事だ」
魔王「ふむ。用心するべきなのだな」
勇者「ああ、もちろんだ。お前は特に魔王なんだからな。
危険人物リストのぶっちぎりナンバー1だ。
なんせ神の敵だぞ」
魔王「ははは。神など恐れたことはない」
勇者「神の名を叫ぶ人間ってのは怖いんだぞ」
魔王「うむ、それは肝に銘じる」ぶるっ
勇者「さ、いくぞ。一応紹介の連絡だけは
入ってると思うが……」
魔王「最悪魔法で逃げ出せばいいだろう」
勇者「悪い意味で場慣れしてきたな、俺たちも」
423: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 22:59:20.74 ID:AIDyRnsCP
――湖畔修道会、内部
修道士「こちらでございます、お客様……」
魔王「静かだな」
勇者「うん」
修道士「我が修道院はただいま『沈黙の行』の
時間です。どうかお気遣い賜りますよう……」
魔王「う、うん……」
勇者(雰囲気に飲まれてるぞ、魔王)
かつん、かつん、かつん……
勇者(独特の雰囲気があるな、修道会ってのは)
修道士「こちらが会議のための部屋となっております。
もうしわけありませんが、我が修道院は
午後の祈りを控えております。
しばらくお待たせしてしまうのですが」
勇者「かまわない。案内ありがとう」
修道士「こちらでございます、お客様……」
魔王「静かだな」
勇者「うん」
修道士「我が修道院はただいま『沈黙の行』の
時間です。どうかお気遣い賜りますよう……」
魔王「う、うん……」
勇者(雰囲気に飲まれてるぞ、魔王)
かつん、かつん、かつん……
勇者(独特の雰囲気があるな、修道会ってのは)
修道士「こちらが会議のための部屋となっております。
もうしわけありませんが、我が修道院は
午後の祈りを控えております。
しばらくお待たせしてしまうのですが」
勇者「かまわない。案内ありがとう」
424: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:04:27.16 ID:AIDyRnsCP
魔王「さて、と。潜入は成功だ」
勇者「あとは、院長に面会して交渉か」
魔王「うん」
勇者「今回は出たとこ勝負って事になるのか」
魔王「まぁ、いくつか交渉材料は考えてきてあるんだが。
というか、そもそもこれは人間側のために考えた
人間にメリットの多い企画なんだがなぁ」
勇者「相手は宗教屋だからな」
魔王「そういえば、この世界の人間は、なんと言ったっけ?
その、光の精霊とかを信じているんだろう?」
勇者「ああ、中央大陸の主だった国は全て光の精霊信仰だ」
魔王「勇者はさっきから聞いていれば、
涜神的な言動が多いが、信仰心は薄いのか?」
勇者「薄いというか、何というか。
戦場に身を置いて、特に魔物なんかと戦ってると、
精霊様ってのは身近に感じるんだよ」
魔王「ふむ」
勇者「信仰心が薄い訳じゃなく、友達感覚のつきあいなんだ」
魔王「そうなのか? それはまた珍しい気がするんだが」
勇者「あとは、院長に面会して交渉か」
魔王「うん」
勇者「今回は出たとこ勝負って事になるのか」
魔王「まぁ、いくつか交渉材料は考えてきてあるんだが。
というか、そもそもこれは人間側のために考えた
人間にメリットの多い企画なんだがなぁ」
勇者「相手は宗教屋だからな」
魔王「そういえば、この世界の人間は、なんと言ったっけ?
その、光の精霊とかを信じているんだろう?」
勇者「ああ、中央大陸の主だった国は全て光の精霊信仰だ」
魔王「勇者はさっきから聞いていれば、
涜神的な言動が多いが、信仰心は薄いのか?」
勇者「薄いというか、何というか。
戦場に身を置いて、特に魔物なんかと戦ってると、
精霊様ってのは身近に感じるんだよ」
魔王「ふむ」
勇者「信仰心が薄い訳じゃなく、友達感覚のつきあいなんだ」
魔王「そうなのか? それはまた珍しい気がするんだが」
429: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:11:19.24 ID:AIDyRnsCP
勇者「まぁ、俺は特別だよ。
夢のお告げなんかも聞いたりしちゃったしな」
魔王「神は実在するのか!?」
勇者「神じゃない、光の精霊だ」
魔王「ふむ……」
勇者「すごく善人なだけで、竜とか魔王とかと
似たような存在なのじゃないかな? 光の精霊も。
面倒くさいことが断れない気の弱い性格なんだと思うよ」
魔王「そんな存在でも、信仰の対象なのだろう?」
勇者「まぁな。それに信仰以外の所でも、
『教会』ってのは社会の中で大きな意味を持ってるんだ。
こんだけでかい組織だからなぁ。
『同盟』なんか人数だけで云えば比べものにならない」
魔王「研究や学術の面でも、か」
勇者「ああ。この世界のそう言った知識は、
殆ど教会の権力の下にあると云っても
良いんじゃないかな。以前にも話しただろう?
都市部の人々は、教会のミサで
お話や読み書きを教えてもらうんだ」
夢のお告げなんかも聞いたりしちゃったしな」
魔王「神は実在するのか!?」
勇者「神じゃない、光の精霊だ」
魔王「ふむ……」
勇者「すごく善人なだけで、竜とか魔王とかと
似たような存在なのじゃないかな? 光の精霊も。
面倒くさいことが断れない気の弱い性格なんだと思うよ」
魔王「そんな存在でも、信仰の対象なのだろう?」
勇者「まぁな。それに信仰以外の所でも、
『教会』ってのは社会の中で大きな意味を持ってるんだ。
こんだけでかい組織だからなぁ。
『同盟』なんか人数だけで云えば比べものにならない」
魔王「研究や学術の面でも、か」
勇者「ああ。この世界のそう言った知識は、
殆ど教会の権力の下にあると云っても
良いんじゃないかな。以前にも話しただろう?
都市部の人々は、教会のミサで
お話や読み書きを教えてもらうんだ」
430: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:15:44.99 ID:ymJMKDcU0
これは気弱な光の妖精が押しかけてくるフラグか!
432: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:17:41.52 ID:AIDyRnsCP
魔王「その組織に期待したいんだがな」
勇者「まぁ、今日のはとっかかりだし、
失敗しても傷口は浅くて済む。
『教会』は大所帯だから、内部ではいろんな
派閥があるんだ。いまはその派閥が『修道会』という
形で表に出てきている。様々な『修道会』が
入り乱れているのが現状だ」
魔王「でも、すべて光の精霊を信仰しているのだろう?」
勇者「そうだよ。だから表向き、全ての『修道会』は
友好的、と言う建前になっている。善の勢力ってことだな。
でも実際には信仰の方法論が違ったり、過激さが違ったり
もっと露骨に云えば信者の奪い合いでライバル関係で
あることも少なくはない」
魔王「なんだか、魔界の部族の領土争いと変わらないな。
破壊神と煉獄神と暗黒神とにわかれていたほうが、
まだ判りやすいぞ」
勇者「そう言う宗教があるのか?」
魔王「あるぞ。でも、大半はただのファッションだ」
勇者「まぁ、今日のはとっかかりだし、
失敗しても傷口は浅くて済む。
『教会』は大所帯だから、内部ではいろんな
派閥があるんだ。いまはその派閥が『修道会』という
形で表に出てきている。様々な『修道会』が
入り乱れているのが現状だ」
魔王「でも、すべて光の精霊を信仰しているのだろう?」
勇者「そうだよ。だから表向き、全ての『修道会』は
友好的、と言う建前になっている。善の勢力ってことだな。
でも実際には信仰の方法論が違ったり、過激さが違ったり
もっと露骨に云えば信者の奪い合いでライバル関係で
あることも少なくはない」
魔王「なんだか、魔界の部族の領土争いと変わらないな。
破壊神と煉獄神と暗黒神とにわかれていたほうが、
まだ判りやすいぞ」
勇者「そう言う宗教があるのか?」
魔王「あるぞ。でも、大半はただのファッションだ」
435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:22:45.56 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、まぁ。この湖畔修道会は修道会の中でも
実利的、かつ穏健でな」
魔王「ほう」
勇者「農民の生活援護みたいな事を主な活動にしているんだ。
労働力の提供とか、ブドウ栽培の指導とか、
戸籍の補完とか、そうそう、病院もやってるよ」
魔王「病院もか!」
勇者「つーか、病院ってのは教会の仕事だろう?
もっとも病人は受け付けない教会も少なくないけどな」
魔王「……ふむ」
勇者「魔王?」
魔王「どうした?」
勇者「魔王は……。なんだかな、そのう。
時々すごく寂しそうな顔をするよな。いまみたいな時」
魔王「そうか?」
勇者「ああ」
魔王「そんな自覚はないんだがな」
勇者「そうなのか? なぁ、魔王。魔王には
どういう風に物事が見えて」
ガチャリ
実利的、かつ穏健でな」
魔王「ほう」
勇者「農民の生活援護みたいな事を主な活動にしているんだ。
労働力の提供とか、ブドウ栽培の指導とか、
戸籍の補完とか、そうそう、病院もやってるよ」
魔王「病院もか!」
勇者「つーか、病院ってのは教会の仕事だろう?
もっとも病人は受け付けない教会も少なくないけどな」
魔王「……ふむ」
勇者「魔王?」
魔王「どうした?」
勇者「魔王は……。なんだかな、そのう。
時々すごく寂しそうな顔をするよな。いまみたいな時」
魔王「そうか?」
勇者「ああ」
魔王「そんな自覚はないんだがな」
勇者「そうなのか? なぁ、魔王。魔王には
どういう風に物事が見えて」
ガチャリ
437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:30:35.05 ID:AIDyRnsCP
魔王「あー。お初にお目にかかる」
勇者「はじめまして。紹介書は届いてるかと思いますが」
魔王「南部辺境で農業を中心に研究生活を送っている。
紅の学士と云います。よろしくお願いしたい」
勇者「俺はその介添え兼護衛の白の剣士。
修道院に入るのは気後れする粗忽者なのだが
ご寛恕ください」
女騎士「……」
魔王「湖畔修道会に来たのは初めてですが
立派な建物ですね、びっくりしました」
勇者「……あ」
女騎士「……白の剣士ですって?」
魔王「へ」
勇者「あー。それはな。えっと」
女騎士「ゆ う し ゃ ! あなたねっ!!」
勇者「うぁ」
勇者「はじめまして。紹介書は届いてるかと思いますが」
魔王「南部辺境で農業を中心に研究生活を送っている。
紅の学士と云います。よろしくお願いしたい」
勇者「俺はその介添え兼護衛の白の剣士。
修道院に入るのは気後れする粗忽者なのだが
ご寛恕ください」
女騎士「……」
魔王「湖畔修道会に来たのは初めてですが
立派な建物ですね、びっくりしました」
勇者「……あ」
女騎士「……白の剣士ですって?」
魔王「へ」
勇者「あー。それはな。えっと」
女騎士「ゆ う し ゃ ! あなたねっ!!」
勇者「うぁ」
438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:32:09.01 ID:7vh82bSHP
おやおや
441: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:38:33.95 ID:AIDyRnsCP
女騎士「なにが『白の剣士』よっ。
いままで何処ほっつき歩いてたのよ!
もう一年よ!? 一年も音沙汰無しでっ!!」
魔王「どういうことなのだ?」
勇者「いや、その」
女騎士「あなたがあたしたちを放り出したんでしょっ。
この先に進むのは一人で良いとか何とか
適当なことほざいてっ!!
あんな辺境の街で放り出された
私たちの身にもなりなさいよっ。
どんだけ心配したことかっ。
ってか腹立たしかったか!」
魔王「あー」
勇者「だってさぁ」
女騎士「だってもクソもないのよっ!
あっ。す、すみません。精霊様、クソなんて
云ってしまいました。懺悔しますっ」
いままで何処ほっつき歩いてたのよ!
もう一年よ!? 一年も音沙汰無しでっ!!」
魔王「どういうことなのだ?」
勇者「いや、その」
女騎士「あなたがあたしたちを放り出したんでしょっ。
この先に進むのは一人で良いとか何とか
適当なことほざいてっ!!
あんな辺境の街で放り出された
私たちの身にもなりなさいよっ。
どんだけ心配したことかっ。
ってか腹立たしかったか!」
魔王「あー」
勇者「だってさぁ」
女騎士「だってもクソもないのよっ!
あっ。す、すみません。精霊様、クソなんて
云ってしまいました。懺悔しますっ」
442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:42:50.89 ID:AIDyRnsCP
勇者「ううう」
女騎士「私はともかく、弓兵さんも、魔法使いちゃんも
ものすごくへこんでたんだからねっ」
魔王「攻撃力過多なパーティーだな」
勇者「回復は俺と騎士でやりくりをね」
女騎士「話聞いてるのっ!? 勇者っ」
勇者「すんません」
女騎士「……ふぅ。で、いままで何してたの?」
魔王「あー」
勇者「そ、それは」
女騎士「ああ。済みませんでしたっ。学士様。
席も勧めませんで、今すぐお茶を持ってこさせます」
魔王「は、はぁ」
勇者「どうしたもんかなぁ」
女騎士「わたしは、元聖銀冠騎士団所属の女騎士。
ゆかりあって、いまはこの湖畔修道会で
みんなの生活の向上のために勤めています」
女騎士「私はともかく、弓兵さんも、魔法使いちゃんも
ものすごくへこんでたんだからねっ」
魔王「攻撃力過多なパーティーだな」
勇者「回復は俺と騎士でやりくりをね」
女騎士「話聞いてるのっ!? 勇者っ」
勇者「すんません」
女騎士「……ふぅ。で、いままで何してたの?」
魔王「あー」
勇者「そ、それは」
女騎士「ああ。済みませんでしたっ。学士様。
席も勧めませんで、今すぐお茶を持ってこさせます」
魔王「は、はぁ」
勇者「どうしたもんかなぁ」
女騎士「わたしは、元聖銀冠騎士団所属の女騎士。
ゆかりあって、いまはこの湖畔修道会で
みんなの生活の向上のために勤めています」
444: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:48:48.98 ID:AIDyRnsCP
――湖畔修道会、会議室
勇者「と、まぁ。そんな訳で。魔王にも手傷は
負わせたんだけどさ。魔物総攻撃みたいな話になっちまって
退却してきたって訳さ」
女騎士「そうだったの……。まさか、いままでずっと
怪我の療養を?」
勇者「いや、それはないな。まぁ、色々事情があって
表舞台には顔を出せなかったって云うか……」
女騎士「諸王国がそこまで手を回したのっ!?」
魔王「――」じぃっ
勇者「いや、なんだそれ?」
女騎士「ううん。いいんだけどっ。判ったわ」
勇者「そっちは何でこんなところで修道院長やってるんだ?」
女騎士「もうっ。
私は元々の出身がこの辺なのよ。
騎士の叙勲されたのも教会でだったし教会所属の騎士なの」
勇者「そーいやそうだったなー」
勇者「と、まぁ。そんな訳で。魔王にも手傷は
負わせたんだけどさ。魔物総攻撃みたいな話になっちまって
退却してきたって訳さ」
女騎士「そうだったの……。まさか、いままでずっと
怪我の療養を?」
勇者「いや、それはないな。まぁ、色々事情があって
表舞台には顔を出せなかったって云うか……」
女騎士「諸王国がそこまで手を回したのっ!?」
魔王「――」じぃっ
勇者「いや、なんだそれ?」
女騎士「ううん。いいんだけどっ。判ったわ」
勇者「そっちは何でこんなところで修道院長やってるんだ?」
女騎士「もうっ。
私は元々の出身がこの辺なのよ。
騎士の叙勲されたのも教会でだったし教会所属の騎士なの」
勇者「そーいやそうだったなー」
445: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:51:12.65 ID:Z+4MLga8O
なにやら陰謀の匂い
446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:52:05.81 ID:AIDyRnsCP
女騎士「……実は、勇者が魔王城に向かってね。
それを諸王国軍本部へと報告して、ひと月たった頃。
特使が来てね。……勇者が出かけて、その身を顧みず
魔王に一矢浴びせたって。そう言って、仲間全員に
恩賞金が出たのよ」
魔王「ふむ」
女騎士「勘違いしないでよねっ。
私は受け取ってないんだから。
……で、そのあとね。
私たち三人はいままで大きな活躍をしてきたから、
王国の要職に取り立てるって……」
勇者「そうだったのか」
女騎士「……それって、体の良い引退勧告だよね。
私はイヤだった。勇者をだしにして出世するなんて
イヤだったし。だから故郷に戻って、今度はみんなの
ためになる仕事をしようと思って」
勇者「立派な志じゃないか。いや、女騎士は以前から
やるときゃやってくれる男気あふれた仲間だと
思ってたんだよ」
女騎士「…………はぁ」
それを諸王国軍本部へと報告して、ひと月たった頃。
特使が来てね。……勇者が出かけて、その身を顧みず
魔王に一矢浴びせたって。そう言って、仲間全員に
恩賞金が出たのよ」
魔王「ふむ」
女騎士「勘違いしないでよねっ。
私は受け取ってないんだから。
……で、そのあとね。
私たち三人はいままで大きな活躍をしてきたから、
王国の要職に取り立てるって……」
勇者「そうだったのか」
女騎士「……それって、体の良い引退勧告だよね。
私はイヤだった。勇者をだしにして出世するなんて
イヤだったし。だから故郷に戻って、今度はみんなの
ためになる仕事をしようと思って」
勇者「立派な志じゃないか。いや、女騎士は以前から
やるときゃやってくれる男気あふれた仲間だと
思ってたんだよ」
女騎士「…………はぁ」
447: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:52:39.43 ID:iyvdeica0
支援
449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:53:22.81 ID:HWfr8FyM0
魔王様の嫉妬クルー?
450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/04(金) 23:55:54.27 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、あとの二人は?」
女騎士「……うん」
勇者「?」
女騎士「……弓兵さんはね。ほら、元々兵士だったでしょ?」
勇者「ああ、そうだな」
女騎士「だからね、諸王国軍に帰ったの。
恩賞金ももらってた。連合参謀本部の諜報室に
行くんだって云ってたよ。……その、ごめんね」
勇者「何で謝るんだ? 俺の活躍で報奨金が出たなら
それってすごく良いことじゃないか。出世もしたみたいだし」
女騎士「……う、うん」
勇者「で、魔法使いは? あいつも金もらってただろ?
ああ見えて守銭奴だからな。
『東方の、魔道書、買った……』とか
無表情のままぼそぼそーっとか云ってたろ?
あいつは味わいのあるヤツだからなぁ」
女騎士「魔法使いちゃんは、1人で行っちゃった」
勇者「へ?」
女騎士「勇者を追って、魔界へ」
女騎士「……うん」
勇者「?」
女騎士「……弓兵さんはね。ほら、元々兵士だったでしょ?」
勇者「ああ、そうだな」
女騎士「だからね、諸王国軍に帰ったの。
恩賞金ももらってた。連合参謀本部の諜報室に
行くんだって云ってたよ。……その、ごめんね」
勇者「何で謝るんだ? 俺の活躍で報奨金が出たなら
それってすごく良いことじゃないか。出世もしたみたいだし」
女騎士「……う、うん」
勇者「で、魔法使いは? あいつも金もらってただろ?
ああ見えて守銭奴だからな。
『東方の、魔道書、買った……』とか
無表情のままぼそぼそーっとか云ってたろ?
あいつは味わいのあるヤツだからなぁ」
女騎士「魔法使いちゃんは、1人で行っちゃった」
勇者「へ?」
女騎士「勇者を追って、魔界へ」
453: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:07:26.45 ID:5kaffl9OP
魔王「……」
勇者「……」
女騎士「……ごっ、ごめんね」
勇者「止めたんだろ?」
女騎士「もちろんだよっ! でも、次の朝。
荷物が無くなってて、多分……」
勇者「じゃ、仕方ない。気持ちはわからんでも無いけれど
女騎士が気に病む事じゃないさ。もとはといえば
俺が1人で突っ込んだせいなんだろうしな」
女騎士「……勇者」
勇者「それより、今日は交渉だの相談だのがあってきたんだ」
女騎士「紹介状にも書いてあったけど……」
勇者「ま……学士」
魔王「わたしだな。改めて挨拶させてもらおう。
紅の学士と呼んで欲しい。学者だ」
女騎士「初めまして、勇者のもと仲間の女騎士です」
勇者「……」
女騎士「……ごっ、ごめんね」
勇者「止めたんだろ?」
女騎士「もちろんだよっ! でも、次の朝。
荷物が無くなってて、多分……」
勇者「じゃ、仕方ない。気持ちはわからんでも無いけれど
女騎士が気に病む事じゃないさ。もとはといえば
俺が1人で突っ込んだせいなんだろうしな」
女騎士「……勇者」
勇者「それより、今日は交渉だの相談だのがあってきたんだ」
女騎士「紹介状にも書いてあったけど……」
勇者「ま……学士」
魔王「わたしだな。改めて挨拶させてもらおう。
紅の学士と呼んで欲しい。学者だ」
女騎士「初めまして、勇者のもと仲間の女騎士です」
455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:10:43.85 ID:5kaffl9OP
や、わるい。リアルタイムで即興書きしてると
書く方に集中して投下を忘れたりする。
誤字の多さとかには目をつむっていただきたい。
1じゃない弊害だと思って。
書く方に集中して投下を忘れたりする。
誤字の多さとかには目をつむっていただきたい。
1じゃない弊害だと思って。
458: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:14:23.98 ID:5kaffl9OP
魔王「今日来たのは、この修道会のお力をお借りするためだ」
女騎士「うかがいましょう」
魔王「まず、これを見て欲しい」
とさっ
女騎士「これは?」
魔王「馬鈴薯、と言う植物だ。くわしい情報はこちらの
羊皮紙にもまとめてあるが、要点をまとめると
寒冷地でも耕作可能な農作物で、単位面積あたりの
収穫量は小麦の三倍に達する」
女騎士「っ!?」
魔王「もちろん、いくつかの注意点もあるが
作物としては多くの優位性がある。栽培もけして
難しくはない。お解りだと思うが」
女騎士「この作物は、多くの飢餓者を救える」
魔王「そうだ」こくり
女騎士「うかがいましょう」
魔王「まず、これを見て欲しい」
とさっ
女騎士「これは?」
魔王「馬鈴薯、と言う植物だ。くわしい情報はこちらの
羊皮紙にもまとめてあるが、要点をまとめると
寒冷地でも耕作可能な農作物で、単位面積あたりの
収穫量は小麦の三倍に達する」
女騎士「っ!?」
魔王「もちろん、いくつかの注意点もあるが
作物としては多くの優位性がある。栽培もけして
難しくはない。お解りだと思うが」
女騎士「この作物は、多くの飢餓者を救える」
魔王「そうだ」こくり
461: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:18:19.44 ID:5kaffl9OP
女騎士「どのような助力を当修道会にお望みですか?
金銭ですか? それでしたらどのような手段を用いても、
最大限出来うる限りの謝礼を用意させていただきます」
魔王「ほら見ろ、勇者。これがこの作物に対する
智慧ある人物の対応だ」
勇者「わるかったなぁ、反応が鈍くて」
女騎士「……政治的介入や権力の行使をお望みなのですか?
何らかの爵位や身分を? 申し訳ありませんが、
当修道会は王族や貴族にそこまでの影響力は
保持していないのです。お金の用意できる量も……」
勇者「いや、それはない。
女騎士がそう言うの苦手なのはよく知ってるし」
女騎士「勇者じゃなくて、学士様と話してるのっ」
魔王「金銭的な援助は、それはあればあっただけ嬉しいが
当面の目的はそうではない」
女騎士「どういったことでしょう?」
金銭ですか? それでしたらどのような手段を用いても、
最大限出来うる限りの謝礼を用意させていただきます」
魔王「ほら見ろ、勇者。これがこの作物に対する
智慧ある人物の対応だ」
勇者「わるかったなぁ、反応が鈍くて」
女騎士「……政治的介入や権力の行使をお望みなのですか?
何らかの爵位や身分を? 申し訳ありませんが、
当修道会は王族や貴族にそこまでの影響力は
保持していないのです。お金の用意できる量も……」
勇者「いや、それはない。
女騎士がそう言うの苦手なのはよく知ってるし」
女騎士「勇者じゃなくて、学士様と話してるのっ」
魔王「金銭的な援助は、それはあればあっただけ嬉しいが
当面の目的はそうではない」
女騎士「どういったことでしょう?」
466: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:23:11.70 ID:yHlGsg7q0
支援
467: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:26:57.24 ID:5kaffl9OP
魔王「南部辺境に、冬越しの村という寂れた寒村がある」
女騎士「はい」
魔王「その村に修道院を建てて欲しい」
女騎士「そんなことでよろしいのですか?」
魔王「私ももちろんバックアップをしよう。その修道院を
中心に、この馬鈴薯の栽培方法を農民に指導して欲しいのだ」
女騎士「それは願ったりというか、我が修道会の理念に
乗っ取った行動ですが……。そんなことで良いのですか?」
魔王「うん。もちろん、馬鈴薯の栽培が成功した場合、
付近の村や国に修道院を増やして、その栽培方法を
広めてもらえないだろうか」
女騎士「その過程でこの修道会の影響も増えますから、
それはこちらにとっては得ばかりの話ですが、
学士様にとってはどのような得があるのですか?」
魔王「実はこちらの目的も、馬鈴薯の栽培方法の伝播でね。
南方寒冷地の食糧事情の改善がされれば目的にかなう」
女騎士「そう……ですか」
女騎士「はい」
魔王「その村に修道院を建てて欲しい」
女騎士「そんなことでよろしいのですか?」
魔王「私ももちろんバックアップをしよう。その修道院を
中心に、この馬鈴薯の栽培方法を農民に指導して欲しいのだ」
女騎士「それは願ったりというか、我が修道会の理念に
乗っ取った行動ですが……。そんなことで良いのですか?」
魔王「うん。もちろん、馬鈴薯の栽培が成功した場合、
付近の村や国に修道院を増やして、その栽培方法を
広めてもらえないだろうか」
女騎士「その過程でこの修道会の影響も増えますから、
それはこちらにとっては得ばかりの話ですが、
学士様にとってはどのような得があるのですか?」
魔王「実はこちらの目的も、馬鈴薯の栽培方法の伝播でね。
南方寒冷地の食糧事情の改善がされれば目的にかなう」
女騎士「そう……ですか」
468: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:30:44.67 ID:5kaffl9OP
魔王「それに栽培したいのは馬鈴薯だけではない。
農業の手法改革研究も進めている。
従来の三圃式農業にかわる、新しい生産性向上の
手法がある」
女騎士「そうなんですか!?」
勇者「なかなか優れものだぜ」
魔王「そう言った手法を実験的に行なっているのが
くだんの冬越し村なのだが、成功したとしても
私達だけでは広く伝えるための組織や人材が
不足しているのだ。
そう言った点で協力しあえればと考えている」
女騎士「あなたは、光の精霊様に使わされた
御使い様に違いありませんっ」
勇者「それはどーかなー」
魔王「……」げしっ
勇者「痛っ!?」
農業の手法改革研究も進めている。
従来の三圃式農業にかわる、新しい生産性向上の
手法がある」
女騎士「そうなんですか!?」
勇者「なかなか優れものだぜ」
魔王「そう言った手法を実験的に行なっているのが
くだんの冬越し村なのだが、成功したとしても
私達だけでは広く伝えるための組織や人材が
不足しているのだ。
そう言った点で協力しあえればと考えている」
女騎士「あなたは、光の精霊様に使わされた
御使い様に違いありませんっ」
勇者「それはどーかなー」
魔王「……」げしっ
勇者「痛っ!?」
471: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:32:41.88 ID:HnbUmApdO
追い付いた支援
なんかわくわくするなこれ
なんかわくわくするなこれ
472: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:34:57.42 ID:5kaffl9OP
女騎士「そのようなことであれば、出来うる限りの。
ええ、私自らが冬越し村へと赴き、修道会の
総力を挙げて助力いたしましょう」
魔王「ご厚情痛みいる」
勇者「いや、それは……」
女騎士「何か文句あるの? 勇者」
勇者「いや、なんてーのかなぁ。ほら、えーっと」
女騎士「じれったいわね」
勇者「俺って昔から危険をはらんだニヒルな
勇者じゃない? だから、ほら。
近くにいると、無用の火の粉が……」
女騎士「そんなのずっと前から体験済みよっ。
それとも私が冬越し村に行くと何かまずいわけっ?」
勇者「えーっと……それは、そのまおーとか……」
ええ、私自らが冬越し村へと赴き、修道会の
総力を挙げて助力いたしましょう」
魔王「ご厚情痛みいる」
勇者「いや、それは……」
女騎士「何か文句あるの? 勇者」
勇者「いや、なんてーのかなぁ。ほら、えーっと」
女騎士「じれったいわね」
勇者「俺って昔から危険をはらんだニヒルな
勇者じゃない? だから、ほら。
近くにいると、無用の火の粉が……」
女騎士「そんなのずっと前から体験済みよっ。
それとも私が冬越し村に行くと何かまずいわけっ?」
勇者「えーっと……それは、そのまおーとか……」
474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:38:15.85 ID:5kaffl9OP
魔王「協力してくださる修道会の長に
失礼があってはいけないぞ、勇者」
勇者「ええーっ!?」
女騎士「……余裕がおありですね」めらっ
魔王「余裕など無い台所事情ゆえ、こちらの修道会に
協力を求めてきたのだ。わたしは契約至上主義者ゆえ
契約の相手には最大限の敬意を払うことにしている」
勇者(た、たすけてー)
女騎士「ともあれ、二度と会えないかと思った……。
いえ、一年ぶりに会うことの出来た勇者と一緒に
このような恩恵の食物をもたらしてくれた学士様も
光の精霊のお導きというものでしょう。
わが修道会の天命かと思います」
魔王「いいえ、魂持つものの努力です」
女騎士「……ええ、そうですね。その通りです」
失礼があってはいけないぞ、勇者」
勇者「ええーっ!?」
女騎士「……余裕がおありですね」めらっ
魔王「余裕など無い台所事情ゆえ、こちらの修道会に
協力を求めてきたのだ。わたしは契約至上主義者ゆえ
契約の相手には最大限の敬意を払うことにしている」
勇者(た、たすけてー)
女騎士「ともあれ、二度と会えないかと思った……。
いえ、一年ぶりに会うことの出来た勇者と一緒に
このような恩恵の食物をもたらしてくれた学士様も
光の精霊のお導きというものでしょう。
わが修道会の天命かと思います」
魔王「いいえ、魂持つものの努力です」
女騎士「……ええ、そうですね。その通りです」
478: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:41:19.55 ID:5kaffl9OP
――湖畔修道会、前庭
女騎士「本当い良いの? 見送りは」
勇者「ああ、かまわない。部屋でも良かったのに。
どうせ転移魔法なんだから」
女騎士「そりゃそうだけど」
魔王「では、冬越し村で会えるのを楽しみにしている」
女騎士「そうですね、冬の間はさすがに移動できませんから。
この修道院の後任院長を決めて、春一番でそちらへと
向かいましょう。修道院建築に関して、当地の領主や
有力者との間に好意的な合意が出来れば良いのですが」
魔王「そちらに関しては、この冬の間に
出来る限りの根回しをしておこう」
女騎士「ありがとうございます」
勇者「なんだか仲が良さそうに見えて怖い」
女騎士「何か言った?」
勇者「なんでもありません」
女騎士「では春に!」
魔王「ああ、春にお目にかかろう」
女騎士「本当い良いの? 見送りは」
勇者「ああ、かまわない。部屋でも良かったのに。
どうせ転移魔法なんだから」
女騎士「そりゃそうだけど」
魔王「では、冬越し村で会えるのを楽しみにしている」
女騎士「そうですね、冬の間はさすがに移動できませんから。
この修道院の後任院長を決めて、春一番でそちらへと
向かいましょう。修道院建築に関して、当地の領主や
有力者との間に好意的な合意が出来れば良いのですが」
魔王「そちらに関しては、この冬の間に
出来る限りの根回しをしておこう」
女騎士「ありがとうございます」
勇者「なんだか仲が良さそうに見えて怖い」
女騎士「何か言った?」
勇者「なんでもありません」
女騎士「では春に!」
魔王「ああ、春にお目にかかろう」
479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:45:53.44 ID:HnbUmApdO
まほうつかいたんは伏線かな……
切なすぐる…
切なすぐる…
480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:45:53.51 ID:xDyaaswtO
wktkとニヤニヤが止まらねぇ
482: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:49:00.34 ID:5kaffl9OP
――冬越し村の春
小さな村人「うんわぁ、やっとこお日様が顔をだしたなや」
痩せた村人「だしたなやぁ。ああ、風がぬるくなってきた」
村の狩人「ほーい。ほーい」
小さな村人「どうしたー?」
痩せた村人「今日は良い天気だなやー」
村の狩人「そうだなぁ。今年はなんだか良い事が
起きそうな気がするだなー」
小さな村人「さっそくかい?」
村の狩人「ああ、ウサギが4匹も捕れたよ。
1匹は村長さんの所へ持っていく」
小さな村人「そりゃぁいいな!」
痩せた村人「今年はイノシシの塩漬けがまだたくさんあるしな」
村の狩人「ああ、びっくりしたなや」
小さな村人「これも村はずれの剣士様のお陰だなー」
痩せた村人「うちの息子が、斧を研いでもらっただよ」
村の狩人「熊もつぶしてくれたとかで、
森の中も少し風通しが良いみたいだなや」
小さな村人「うんわぁ、やっとこお日様が顔をだしたなや」
痩せた村人「だしたなやぁ。ああ、風がぬるくなってきた」
村の狩人「ほーい。ほーい」
小さな村人「どうしたー?」
痩せた村人「今日は良い天気だなやー」
村の狩人「そうだなぁ。今年はなんだか良い事が
起きそうな気がするだなー」
小さな村人「さっそくかい?」
村の狩人「ああ、ウサギが4匹も捕れたよ。
1匹は村長さんの所へ持っていく」
小さな村人「そりゃぁいいな!」
痩せた村人「今年はイノシシの塩漬けがまだたくさんあるしな」
村の狩人「ああ、びっくりしたなや」
小さな村人「これも村はずれの剣士様のお陰だなー」
痩せた村人「うちの息子が、斧を研いでもらっただよ」
村の狩人「熊もつぶしてくれたとかで、
森の中も少し風通しが良いみたいだなや」
484: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:56:04.90 ID:sOKMpZ9VO
わっふるわっふる
485: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:56:25.53 ID:5kaffl9OP
メイド妹 ~♪ ~♪
小さな村人「おんや。噂をすれば、村はずれの館の姉妹だなよ」
痩せた村人「本当だ。ほーぅい、ほーぅい!」
村の狩人「どこへいくんだーい」
メイド姉「こんにちは、みなさん」ぺこり
メイド妹「あのねー。村長さんの所へ、木イチゴの樽付け
を分けてもらいに行くんだよっ」
小さな村人「そーかそーか。えらいな」
痩せた村人「お客さんでもくるんかい?」
メイド姉「はい、そのようです」
村の狩人「そうかそうか。……ふむ。
ようし、このウサギを、当主の学者様へと
お届けしてほしいだなや」
小さな村人「おんや、太っ腹だな、狩人さん」
村の狩人「なんの。森を安全にしてくれた
大恩あるおうちじゃないか。
ウサギなんて春になったのだからまた取れるだな」
小さな村人「おんや。噂をすれば、村はずれの館の姉妹だなよ」
痩せた村人「本当だ。ほーぅい、ほーぅい!」
村の狩人「どこへいくんだーい」
メイド姉「こんにちは、みなさん」ぺこり
メイド妹「あのねー。村長さんの所へ、木イチゴの樽付け
を分けてもらいに行くんだよっ」
小さな村人「そーかそーか。えらいな」
痩せた村人「お客さんでもくるんかい?」
メイド姉「はい、そのようです」
村の狩人「そうかそうか。……ふむ。
ようし、このウサギを、当主の学者様へと
お届けしてほしいだなや」
小さな村人「おんや、太っ腹だな、狩人さん」
村の狩人「なんの。森を安全にしてくれた
大恩あるおうちじゃないか。
ウサギなんて春になったのだからまた取れるだな」
486: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 00:59:34.36 ID:5kaffl9OP
メイド妹「ありがとー♪」
小さな村人「それもそうだ。
これは沢で取れたクレソンだなや。
ほら、分けてやるから持っていくと良い」
メイド姉「ありがとうございます、本当に」
痩せた村人「雪解けの屋根修理には是非呼んでくれだな」
村の狩人「そうだそうだ、是非お世話してやんねと」
メイド姉「はい。かならず当主に伝えます」
小さな村人「ええってええって」
痩せた村人「なんだ、みんなにこにこしてからに」
村の狩人「やぁ。やっぱりお屋敷詰めともなると
本当に2人ともべっぴんさんだねぇ」
メイド姉「……」
小さな村人「ああ、本当だ。俺たちとは全然違うだなや。
賢くて優しくてべっぴんで、俺たちは、みんな
2人に憧れてるだなよ」
メイド妹「ありがとー」にこぉっ
メイド姉「……ごめんなさい」
小さな村人「それもそうだ。
これは沢で取れたクレソンだなや。
ほら、分けてやるから持っていくと良い」
メイド姉「ありがとうございます、本当に」
痩せた村人「雪解けの屋根修理には是非呼んでくれだな」
村の狩人「そうだそうだ、是非お世話してやんねと」
メイド姉「はい。かならず当主に伝えます」
小さな村人「ええってええって」
痩せた村人「なんだ、みんなにこにこしてからに」
村の狩人「やぁ。やっぱりお屋敷詰めともなると
本当に2人ともべっぴんさんだねぇ」
メイド姉「……」
小さな村人「ああ、本当だ。俺たちとは全然違うだなや。
賢くて優しくてべっぴんで、俺たちは、みんな
2人に憧れてるだなよ」
メイド妹「ありがとー」にこぉっ
メイド姉「……ごめんなさい」
492: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:11:23.61 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、深夜
勇者「よっ。ほっ」 ぎゅっ、かちっ
勇者「こんなもんか? 薬草もあるし、あとは
現地でどうとでも奪えばいいか」
魔王「こんな深夜に完全武装か」
勇者「魔王……」
魔王「私の物のくせに」
勇者「あー。うん。……ごめん」
魔王「なんだその情けない顔は。勇者だろうに」
勇者「後ろめたいとどうしてもこういう顔になるんだよ」
魔王「私はお前の物なんだぞ。そしてお前は私の物だ」
勇者「ああ」
魔王「止められるとでも思ったか?」
勇者「……」
魔王「見くびらないでもらおう」
勇者「え? いいのかっ?」
勇者「よっ。ほっ」 ぎゅっ、かちっ
勇者「こんなもんか? 薬草もあるし、あとは
現地でどうとでも奪えばいいか」
魔王「こんな深夜に完全武装か」
勇者「魔王……」
魔王「私の物のくせに」
勇者「あー。うん。……ごめん」
魔王「なんだその情けない顔は。勇者だろうに」
勇者「後ろめたいとどうしてもこういう顔になるんだよ」
魔王「私はお前の物なんだぞ。そしてお前は私の物だ」
勇者「ああ」
魔王「止められるとでも思ったか?」
勇者「……」
魔王「見くびらないでもらおう」
勇者「え? いいのかっ?」
493: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:13:51.98 ID:Ix6X7znV0
支援
494: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:15:01.77 ID:5kaffl9OP
魔王「ほら」
勇者「これは?」ずしっ
魔王「先々代だったか? の魔王が使ってたという、
黒玉鋼の鎧兜だ。安心して良い。呪いの類は
かかっていない」
勇者「……?」
魔王「魔王の私がいなくて、魔界の統治のたがが
緩んできてるんだ。勇者はその粛正を適当にしてきてくれ」
勇者「お、おう」
魔王「こっちの紙に信用できそうな部族の族長のリストと、
紹介状をしたためておいた。人捜しなら助力を仰ぐ
必要もあるだろう」
勇者「いや、あいつはああみえて、その……。
動じないヤツだから。
きっと平気でけろっとしてると思うんだ」
魔王「だからといって探していけない道理もあるまい」
勇者「これは?」ずしっ
魔王「先々代だったか? の魔王が使ってたという、
黒玉鋼の鎧兜だ。安心して良い。呪いの類は
かかっていない」
勇者「……?」
魔王「魔王の私がいなくて、魔界の統治のたがが
緩んできてるんだ。勇者はその粛正を適当にしてきてくれ」
勇者「お、おう」
魔王「こっちの紙に信用できそうな部族の族長のリストと、
紹介状をしたためておいた。人捜しなら助力を仰ぐ
必要もあるだろう」
勇者「いや、あいつはああみえて、その……。
動じないヤツだから。
きっと平気でけろっとしてると思うんだ」
魔王「だからといって探していけない道理もあるまい」
499: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:18:26.71 ID:5kaffl9OP
勇者「魔王……」
魔王「私が寛大で感謝するんだぞっ」
勇者「もちろんだ。ありがとう」
魔王「……」じぃっ
勇者「?」
魔王「それだけか?」
勇者「なにが?」
魔王「ほら、そのぅ。人間には、その、何だ……
親しい人と……というか親しい男女が別離をする時の
特別な風習があるそうではないか」
勇者「えー。あ。ああ」
魔王「……駄肉だからダメか?」
勇者「何でこういうタイミングで
じわぁって見上げるかなっ!?」
魔王「所有契約の項目外なのか?」 じわぁ
魔王「私が寛大で感謝するんだぞっ」
勇者「もちろんだ。ありがとう」
魔王「……」じぃっ
勇者「?」
魔王「それだけか?」
勇者「なにが?」
魔王「ほら、そのぅ。人間には、その、何だ……
親しい人と……というか親しい男女が別離をする時の
特別な風習があるそうではないか」
勇者「えー。あ。ああ」
魔王「……駄肉だからダメか?」
勇者「何でこういうタイミングで
じわぁって見上げるかなっ!?」
魔王「所有契約の項目外なのか?」 じわぁ
500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:19:33.26 ID:HOqJO4100
魔王のほうが背が高いイメージだったなぁ
502: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:21:37.90 ID:DDOWIpgDO
>>500
ちょっとしゃがんで見上げてると考えれば良いじゃないか
ちょっとしゃがんで見上げてると考えれば良いじゃないか
501: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:21:29.62 ID:5kaffl9OP
勇者「えー、あー。その」
魔王「やっぱりスキンシップが足りないのか」
勇者「なんでそうなる」
魔王「実は毎週メイド長に説教されるんだ。
『まおー様はスキンシップが足りません。
そもそも露出もかわいげも足りてないんですから
スキンシップくらいケチってどうなります?
いいですか? 戦争の基本は物量です。
飽和攻撃で殿方の理性など崩壊させてしまえば
戦術の必要性すらないのです』
そう言われるんだ」
勇者「戦術論的には正しいんだが」
魔王「ダメなのか?」
勇者「そ、その。照れくさいぞ。
そういうのはさ、ほら。
もっと落ち着いた時にさっ」
魔王「やっぱりスキンシップが足りないのか」
勇者「なんでそうなる」
魔王「実は毎週メイド長に説教されるんだ。
『まおー様はスキンシップが足りません。
そもそも露出もかわいげも足りてないんですから
スキンシップくらいケチってどうなります?
いいですか? 戦争の基本は物量です。
飽和攻撃で殿方の理性など崩壊させてしまえば
戦術の必要性すらないのです』
そう言われるんだ」
勇者「戦術論的には正しいんだが」
魔王「ダメなのか?」
勇者「そ、その。照れくさいぞ。
そういうのはさ、ほら。
もっと落ち着いた時にさっ」
504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:24:44.99 ID:5kaffl9OP
魔王「それで良く勇者が名乗れるな。
それでは臆病者ではないかっ」
勇者「ば、ばか云えっ。俺は勇気にかけては
世界公認の第一人者、それゆえ勇者ですよ!?」
魔王「では覚悟を決めるのだっ」
勇者「何で開き直ってるんだよ、魔王っ」
魔王「半年だぞ!? 雪の中にこもって
生活してればアドバンテージが取れて当然だろうに
なんだか流されるままにずるずると
何の進展もなく半年もの時間を浪費してしまった事実が
私を責めさいなんでるのだ。
そんな状況下でそろそろ修道院の建築も始まり、
夏の間には完成してしまう上に、
私の勇者は昔の女を探しに行ってしまうわけで
精神的に追い詰められない方がおかしいではないかっ」
勇者「あー」
それでは臆病者ではないかっ」
勇者「ば、ばか云えっ。俺は勇気にかけては
世界公認の第一人者、それゆえ勇者ですよ!?」
魔王「では覚悟を決めるのだっ」
勇者「何で開き直ってるんだよ、魔王っ」
魔王「半年だぞ!? 雪の中にこもって
生活してればアドバンテージが取れて当然だろうに
なんだか流されるままにずるずると
何の進展もなく半年もの時間を浪費してしまった事実が
私を責めさいなんでるのだ。
そんな状況下でそろそろ修道院の建築も始まり、
夏の間には完成してしまう上に、
私の勇者は昔の女を探しに行ってしまうわけで
精神的に追い詰められない方がおかしいではないかっ」
勇者「あー」
507: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:27:40.89 ID:k96/TBmJO
魔王可愛いすぎるな
508: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:29:15.28 ID:5kaffl9OP
魔王「……」じぃ
勇者「まったくなぁ」
魔王「……」
勇者「……」 ちゅ
魔王「……むぅ」
勇者「なんだよその恨みがましい視線はっ」
魔王「おでこではないか」
勇者「おでこで悪いか。気に入らないなら返せ」
魔王「それはダメだ。勇者の全ては私に所有権がある。
つまりこのおでこも私の私有財産だ。議論の余地はない」
勇者「むぅ……」
魔王「……」
勇者「残りは帰ってからっ!」
魔王「約束だぞ、勇者。かならずだぞっ!」
しゅんっ!
勇者「まったくなぁ」
魔王「……」
勇者「……」 ちゅ
魔王「……むぅ」
勇者「なんだよその恨みがましい視線はっ」
魔王「おでこではないか」
勇者「おでこで悪いか。気に入らないなら返せ」
魔王「それはダメだ。勇者の全ては私に所有権がある。
つまりこのおでこも私の私有財産だ。議論の余地はない」
勇者「むぅ……」
魔王「……」
勇者「残りは帰ってからっ!」
魔王「約束だぞ、勇者。かならずだぞっ!」
しゅんっ!
509: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 01:29:34.95 ID:Ix6X7znV0
しえん
578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:14:24.81 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、中庭
女騎士「さて、諸君らの手元にあるのは南部諸王国の
軍において用いられる標準的な武器、ロングソードだ。
この武器は威力、間合いにおいてバランスが良く、
鉄の国おいて鋳造された製品で質も良い。
重量バランス配分がこの種の武器の使い勝手を
決めるので、手に持って馴染むかどうか、判断の
参考にして欲しい」
貴族子弟「……」
商人子弟「……」
軍人子弟「ばからしーでござる」
女騎士「何か言ったか?」
貴族子弟「……」ぷいっ
軍人子弟「馬鹿らしいといったでござる。何で拙者が
女如きに剣を教わらないといけないのでござるか」
女騎士「……」
軍人子弟「白の剣士殿から剣を教わったのは
別に女に弟子入りするためではないでござるよ。
女は家の中でケーキでも焼いていれば良いでござる」
女騎士「さて、諸君らの手元にあるのは南部諸王国の
軍において用いられる標準的な武器、ロングソードだ。
この武器は威力、間合いにおいてバランスが良く、
鉄の国おいて鋳造された製品で質も良い。
重量バランス配分がこの種の武器の使い勝手を
決めるので、手に持って馴染むかどうか、判断の
参考にして欲しい」
貴族子弟「……」
商人子弟「……」
軍人子弟「ばからしーでござる」
女騎士「何か言ったか?」
貴族子弟「……」ぷいっ
軍人子弟「馬鹿らしいといったでござる。何で拙者が
女如きに剣を教わらないといけないのでござるか」
女騎士「……」
軍人子弟「白の剣士殿から剣を教わったのは
別に女に弟子入りするためではないでござるよ。
女は家の中でケーキでも焼いていれば良いでござる」
581: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:20:50.67 ID:5kaffl9OP
女騎士「おい、そこのデブ」
商人子弟「ひゃ、ひゃいっ!? ぼ、ぼく?」
女騎士「剣を両手に持って構えろ」
商人子弟「……ううう」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
貴族子弟「!?」
軍人子弟「ッ!!」
商人子弟「けけけ、剣がっ!! ま、まっぷた、真っ二つ」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
商人子弟「み、短くなったっ!?」
女騎士「その気になれば5cmずつ切り取ることも出来るんだぞ」
軍人子弟「ど、ど、どうしてっ」
女騎士「そこのゴザルに云っておく」
商人子弟「ひゃ、ひゃいっ!? ぼ、ぼく?」
女騎士「剣を両手に持って構えろ」
商人子弟「……ううう」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
貴族子弟「!?」
軍人子弟「ッ!!」
商人子弟「けけけ、剣がっ!! ま、まっぷた、真っ二つ」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
商人子弟「み、短くなったっ!?」
女騎士「その気になれば5cmずつ切り取ることも出来るんだぞ」
軍人子弟「ど、ど、どうしてっ」
女騎士「そこのゴザルに云っておく」
583: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:25:44.21 ID:5kaffl9OP
女騎士「私は、湖の国の女騎士。かつて勇者と共に
魔界で千の戦をくぐり抜けてきた女だ」
貴族子弟「ゆ、勇者っ勇者様のっ!?」
商人子弟「!?」
軍人子弟「ま、ま、ま、まさか『鬼面の騎士』!?
『怪力皇女』!? 『石壁しぼりの女夜叉』!?」
女騎士「色々詳しいじゃないか、ゴザル」
軍人子弟「……」がくがくぶるぶる
女騎士「これは別に怪力じゃない。技だ。
刃筋を安定させて、力を強度の低い場所に
集中させれば諸君らでも実行可能だ。
勇……あー。白の剣士は、素質がありすぎでな。
なんでも『なんとなーく』でやってしまうので
教師としては不適当なのだ」
商人子弟「もしかして、白の剣士殿は、女騎士殿の
弟子だったのですか!?」
貴族子弟「そ、そうかっ!」
軍人子弟「そうでござったか……」
魔界で千の戦をくぐり抜けてきた女だ」
貴族子弟「ゆ、勇者っ勇者様のっ!?」
商人子弟「!?」
軍人子弟「ま、ま、ま、まさか『鬼面の騎士』!?
『怪力皇女』!? 『石壁しぼりの女夜叉』!?」
女騎士「色々詳しいじゃないか、ゴザル」
軍人子弟「……」がくがくぶるぶる
女騎士「これは別に怪力じゃない。技だ。
刃筋を安定させて、力を強度の低い場所に
集中させれば諸君らでも実行可能だ。
勇……あー。白の剣士は、素質がありすぎでな。
なんでも『なんとなーく』でやってしまうので
教師としては不適当なのだ」
商人子弟「もしかして、白の剣士殿は、女騎士殿の
弟子だったのですか!?」
貴族子弟「そ、そうかっ!」
軍人子弟「そうでござったか……」
584: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:36:22.66 ID:5kaffl9OP
女騎士「う、うむ。そういうような……。
そ、そういうことだ。とっ、とにかく。
白の剣士は、勅命を帯びて探索の旅に出ている」
貴族子弟「勅命……王のご命令ですか」
軍人子弟「探索の旅! 男子の本懐でござるな!」
女騎士「そう言うわけで、週に4回の戦闘訓練は
しばらくのあいだ私が受け持つ」
商人子弟「は、はヒィ!」
女騎士「なに。私は白の剣士とちがって
理論的かつ実戦的、基本に即した教練方法を
採用するつもりだ。諸君らの武芸を必ずや
実用の域まで高めよう」
貴族子弟「勇者の仲間の騎士様に
剣を教授いただけるとは光栄です!」
軍人子弟「そこまで言われては仕方ない。
拙者も剣の道を究めるとするでござる」
女騎士「では、手始めに北の森を、走り込みで三周。
そのあと帯剣して素振りをしながら一周。
小川へと移動したら、腰まで水につかって
ロングソードの素振り500回だ」
三子弟「「「ひぃぃぃ!?」」」
そ、そういうことだ。とっ、とにかく。
白の剣士は、勅命を帯びて探索の旅に出ている」
貴族子弟「勅命……王のご命令ですか」
軍人子弟「探索の旅! 男子の本懐でござるな!」
女騎士「そう言うわけで、週に4回の戦闘訓練は
しばらくのあいだ私が受け持つ」
商人子弟「は、はヒィ!」
女騎士「なに。私は白の剣士とちがって
理論的かつ実戦的、基本に即した教練方法を
採用するつもりだ。諸君らの武芸を必ずや
実用の域まで高めよう」
貴族子弟「勇者の仲間の騎士様に
剣を教授いただけるとは光栄です!」
軍人子弟「そこまで言われては仕方ない。
拙者も剣の道を究めるとするでござる」
女騎士「では、手始めに北の森を、走り込みで三周。
そのあと帯剣して素振りをしながら一周。
小川へと移動したら、腰まで水につかって
ロングソードの素振り500回だ」
三子弟「「「ひぃぃぃ!?」」」
587: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:41:31.45 ID:5kaffl9OP
――村はずれの屋敷、初夏
ひいぃぃぃ! ひぃぃぃぃ!
魔王「今日も元気だな」
メイド長「まったくです。でも、女騎士さんは
あれで結構楽しそうですよ?」
魔王「そうなのか? 勇者がいなくなって
お尻に矢が刺さったアナグマのように怒り狂って
いたではないか」
メイド長「頼りにされると張り切ってしまう人
なんでしょう。可愛らしい人ですよ」
魔王「む」
メイド長「まおー様より引き締まった身体ですし」
魔王「むぅ」
メイド長「いえいえ。まおー様もスタイルは
悪くないんですよ? 出るべきところのボリュームは
それはたいしたものです。えっちではしたない肉体です」
魔王「メイド長の言い方の方がはしたない」
ひいぃぃぃ! ひぃぃぃぃ!
魔王「今日も元気だな」
メイド長「まったくです。でも、女騎士さんは
あれで結構楽しそうですよ?」
魔王「そうなのか? 勇者がいなくなって
お尻に矢が刺さったアナグマのように怒り狂って
いたではないか」
メイド長「頼りにされると張り切ってしまう人
なんでしょう。可愛らしい人ですよ」
魔王「む」
メイド長「まおー様より引き締まった身体ですし」
魔王「むぅ」
メイド長「いえいえ。まおー様もスタイルは
悪くないんですよ? 出るべきところのボリュームは
それはたいしたものです。えっちではしたない肉体です」
魔王「メイド長の言い方の方がはしたない」
588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 14:52:32.71 ID:5kaffl9OP
メイド長「しかし肉体性能は、お色気か癒し系ですのに
ご本人の性格がお色気とも癒しともまるで無関係なのが
まおー様の泣き所でしょうか?」
魔王「ほうっておけ」
がきょ、がちょ
メイド長「なんですか? それ」
魔王「うむ。呼び寄せた職人に依頼していた試作品だ。
実験して手直しして欲しい部分の指示を
書き付けておかないとな」
メイド長「何に使う物なのですか?」
魔王「羅針盤といわれているものだ。いま作っているのは
その改良だな。この二軸のシャフトと、大きなガラス球で
内部の羅針盤を水平に保つのだ」
メイド長「ふむふむ。改良前はどうやっていたんですか?」
魔王「水の上に磁石を浮かべていたんだ。
ほら、この内側の、内部に浮かんでいるのと
おなじ構造だな」
ご本人の性格がお色気とも癒しともまるで無関係なのが
まおー様の泣き所でしょうか?」
魔王「ほうっておけ」
がきょ、がちょ
メイド長「なんですか? それ」
魔王「うむ。呼び寄せた職人に依頼していた試作品だ。
実験して手直しして欲しい部分の指示を
書き付けておかないとな」
メイド長「何に使う物なのですか?」
魔王「羅針盤といわれているものだ。いま作っているのは
その改良だな。この二軸のシャフトと、大きなガラス球で
内部の羅針盤を水平に保つのだ」
メイド長「ふむふむ。改良前はどうやっていたんですか?」
魔王「水の上に磁石を浮かべていたんだ。
ほら、この内側の、内部に浮かんでいるのと
おなじ構造だな」
589: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:00:01.62 ID:5kaffl9OP
メイド長「だいたい判りました。でも、随分巨大化
してしまったわけですね」
魔王「仕方ない。これは試作品だからな。
実用化されれば、小型化のめども立つだろう」
メイド長「どういう改良なのですか」
魔王「うむ、羅針盤とは包囲を知るものだ。
この内部の水の上に浮かべた磁石が回転して
北の方角を教えてくれるわけだが……。
そのためには水面が水平安定する必要があるな」
メイド長「はぁ」
魔王「方位を知りたがるのは船乗りだろう?
揺れる船の上で、ましてや嵐なんか来たりした日には
水に浮かべた磁石の方向を安定させるのは至難だ」
メイド長「じゃぁ、いままでどうやってたんですか!?」
魔王「根性だろ」
メイド長「……」
魔王「……」
メイド長「人間ってすごいですね」
してしまったわけですね」
魔王「仕方ない。これは試作品だからな。
実用化されれば、小型化のめども立つだろう」
メイド長「どういう改良なのですか」
魔王「うむ、羅針盤とは包囲を知るものだ。
この内部の水の上に浮かべた磁石が回転して
北の方角を教えてくれるわけだが……。
そのためには水面が水平安定する必要があるな」
メイド長「はぁ」
魔王「方位を知りたがるのは船乗りだろう?
揺れる船の上で、ましてや嵐なんか来たりした日には
水に浮かべた磁石の方向を安定させるのは至難だ」
メイド長「じゃぁ、いままでどうやってたんですか!?」
魔王「根性だろ」
メイド長「……」
魔王「……」
メイド長「人間ってすごいですね」
591: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:08:37.94 ID:5kaffl9OP
魔王「まぁ、この宙づり自由式であれば
設置場所に難があるとは云え、揺れる船の上でも
下部の釣り錘によって水平が保持される」
メイド長「ふむ。根性が無くても出来るわけですね」
魔王「いや。人間であるというのは根性は必須だと
女騎士殿は云っていたから、根性はやっぱり
必要なのだろう。
この改良で軽減されるのは技能だ。
羅針盤を扱うのは特殊な技術だったからな。
この簡便な装置で技術者が増えるわけだ」
メイド長「でも、この村には海ありませんよ?」
魔王「うむ。この装置は、売りつける」
メイド長「買ってくれますかね?」
魔王「まともな目利きがあれば、家ほどの
黄金でも積むだろうな。これで『同盟』と接触する」
メイド長「まおー様の専門ですから、お任せします」
魔王「まかせておけ」
メイド長「ところでお昼は馬鈴薯で?」
魔王「うむ、まことに馬鈴薯の揚げは美味なるぞ」にこっ
設置場所に難があるとは云え、揺れる船の上でも
下部の釣り錘によって水平が保持される」
メイド長「ふむ。根性が無くても出来るわけですね」
魔王「いや。人間であるというのは根性は必須だと
女騎士殿は云っていたから、根性はやっぱり
必要なのだろう。
この改良で軽減されるのは技能だ。
羅針盤を扱うのは特殊な技術だったからな。
この簡便な装置で技術者が増えるわけだ」
メイド長「でも、この村には海ありませんよ?」
魔王「うむ。この装置は、売りつける」
メイド長「買ってくれますかね?」
魔王「まともな目利きがあれば、家ほどの
黄金でも積むだろうな。これで『同盟』と接触する」
メイド長「まおー様の専門ですから、お任せします」
魔王「まかせておけ」
メイド長「ところでお昼は馬鈴薯で?」
魔王「うむ、まことに馬鈴薯の揚げは美味なるぞ」にこっ
595: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/05(土) 15:18:25.86