1975年「小腸半分男」が逃走中！病院が異例の呼びかけ

これは昭和50年（1975年）に発生した怪事件である。

なんと手術の最中に受刑者が脱走。そのまま行方不明になってしまったというのだ。




事件の経緯を説明しよう。1975年3月5日掲載の毎日新聞記事によると、「小腸が半分の男」という見出しの記事が躍り出ている。

記事によると、留置所内で腸閉塞を起こして名古屋市内の病院に入院していた男性が、手術の最中に病院から姿を消した、という。

男性は愛知県名古屋市の無職・Oで彼は1974年の11月15日、窃盗目的で盗みにはいった家を証拠隠滅のために放火して逃走。さらにOは愛知県内で2件の放火事件を起こしていたことがわかり、愛知県警は窃盗および連続放火の容疑で同年12月17日にOを逮捕した。

しかし、逮捕されてから約1週間後の12月25日、Oは収容されていた留置所内で突然の腹痛を発症。

翌26日、Oは名古屋市内の某病院へ入院し「腸閉塞」と診断され即日、手術となった。

幸い手術は成功し、Oは約3ヶ月の病院生活となったのだが手術から約2ヶ月後の1975年2月13日、精密検査当日に病院を脱走。以来、1ヶ月近く行方不明になっているという。

病院側によるとOの病状は重く原因不明の悪性。かなりの重症だったため小腸を半分切り取っており、体力的にもオカユを少し食べるのがやっとの状態だったという。

そのため医師側は新聞の紙面を使い、

「このまま逃げていれば生命が危ない！すぐに病院へ戻って来い！」

と訴えている。

その後Oが病院へ戻ったかどうかは不明だが、小腸が半分ない状態なのにも関わらず逃亡してしまうとは、なんとも見上げた根性である。

切断された手首が繋がった！？

続いては1972年7月5日の毎日新聞に掲載された事件である。



なんと完全切断してしまった男性の手首が元通りにくっついたというのである。

1972年7月1日、奈良県の某製材所へ勤めるYさんは仕事中に回転中の電気ノコギリに左手首が触れ切断してしまった。

Yさんと切断された手首はすぐに奈良県立医科付属病院へ持ち込まれ緊急手術。

幸い切断してから病院へ担ぎ込まれるまで時間が浅かったほか、手術室に空きがあったことから、Yさんの手術はすぐに開始された。Yさんの手首はつながる可能性が高く医師は接合手術を決意。

その手術方法は全身麻酔をかけた後、傷口と切断部分を入念に洗い、汚染された組織は切り落とし、切られた骨を金属で固定。動脈と整脈、そして筋肉をつなぎ合わせるというものだった。

この結合手術は無事に成功し、元通りに血が通ったほか、筋肉や神経も良好で1年後には知覚も元通りになるとのことだった。

この手首接合手術は1972年当時、世界で50例目、日本では5例目の成功例だったという。

医師の話によると今回の手術が成功したのは切断から手術までの時間が浅かったこと、切断面が比較的綺麗であったことが大きかったという。

現在ではさらに医療が発達し手首の再接合手術はさらに精度が増しているほか、切断面がぐちゃぐちゃになった手首も場合によっては元通りくっつけることができるという。

このように、人間の体にはまだまだ明かされない秘密が多い。

結局は「小腸半分男」も「手首切断」も、彼らの「生きたい！」という気持ちが医療技術を上回ってしまったのかもしれない。



出典：
毎日新聞縮刷版

Text by：穂積昭雪（昭和ロマンライター / Atlas編集部）


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