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人間の心の謎について驚きの事実を暴いた7つの心理・社会実験【Part2】 : カラパイア

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 人は一人でいるときと、集団でいるとき、なぜかその行動が変わってしまう。実に理性的に論理的に考えているつもりでも、実際には何かに影響を受けている。

 そればかりか、人に押し付けられたバイヤスがいつのまにか自分に染み付き、それに寄せるような人格を形成してしまったりするのだ。「あなたはこういうタイプ」と言われ続けると、本当にそのタイプになるような行動を無意識にとってしまう。

 そこに人間心理の謎と興味深さがある。

 前回に引き続き、7つの心理・社会実験の結果を見ながら、人間の心の謎について迫っていこう。
 

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1. マシュマロテスト実験
(子どもの自制心と将来の社会的成果の関連性を調査)


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article source:wikipedia

 心理学者ウォルター・ミシェルが1960年代末から70年代初頭に実施した、子どもの自制心や我慢に関する研究である。

 4〜6歳の子供に、椅子のそばにあるテーブルの上におやつ(通常はマシュマロ、ときおりクッキーやプレッツェル)が置かれている部屋に入ってもらった。子供はおやつを食べても構わないのだが、15分誘惑に負けず手をつけずにいられたら、2つ目のおやつをもらえると約束された。

 すると目を手で覆って背を向けおやつを見ないようにする子、机を蹴る子、お下げ髪を引っ張る子、ぬいぐるみのようにマシュマロを撫でる子、人がいなくなった途端に食べ始める子がいた。


The Marshmallow Test

 600人以上の子供で実験をした結果、即座に食べ始めた子は少数派だった。また我慢を試みた子のうち、誘惑に打ち勝ち2つ目のおやつをもらえたのは3分の1だった。またその成否に最も影響した要因は年齢であった。

 追跡研究では、2つ目のマシュマロをもらえた子(自制心のある子)は、その後の人生も上手くいく傾向が判明した(大学進学適性試験、学歴、BMIなどで計測)。


2. 偽の合意実験
(人はみな自分と同じことを考えていると信じ込むことを証明)


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article source:Persuasive Litigator

 研究者は、大学生に「ジョーズで食べよう」というお店の宣伝が記載された大きなサンドイッチボードを身につけて、キャンパスを30分歩いてもらえるか頼んだ。

 次いで、学生にこれを着ることに同意する人は自分以外に何人いると思うか推測してもらった。すると同意した学生は、ほとんどの学生が同意するだろうと答え、拒否した学生は、ほとんどの学生が拒否するだろうと回答した。

 つまり学生は自分がジョーズの宣伝に協力するかどうかに関わらず、他人も自分と同じ選択をするだろうと考えていたのである。

 これを心理学で「偽の合意効果」という。我々は大部分の人が自分に同意し、同じように行動するだろうと考えているのだ。


3. 透明ゴリラ実験
(集中しているとそこにあるものが見えなくなる)


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article source:theinvisiblegorilla

 白いシャツを着た3人と黒いシャツを着た3人がバスケットボールをパスし合う短い動画を観るよう指示されたとしよう。その間、あなたは黙って白いシャツの人が出したパスの本数を数えなければならない。

 すると途中でゴリラが登場し、中央でカメラの方向を見ると、胸をドラミングして、また姿を消す。この間9秒である。

 おそらくほとんどの人が直感的にイエスと答えるだろう。そんな目立つものを見逃すはずがない、と。だがハーバード大学で数年前に行なわれた実験では、半数もの人がゴリラに気がつかなかった。まるでゴリラが透明だったかのようだ。


 下の映像がその時のものだ。目的は、白いシャツの人が出したパスの本数をきちんと数え、正しい答えを出しすこと。それを前提で見てほしい。


selective attention test

 ここから2つのことが分かる。1つは、我々は思っている以上に周囲の出来事の多くを見逃しているということ。もう1つは、それほど多くのことを見逃している事実に我々は気がついていないということだ。


4. ホーソン効果実験
(物理的条件よりも配慮が生産性により影響を与える)


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article source:The Economist

 ホーソン効果とは、1955年にヘンリー・ランズバーガーが提唱したものだ。その実験のもともとの目的は、物理的条件が生産性に与える影響を知ることだった。

 被験者となったのは、ホーソン工場の作業員2グループだ。初日、一方のみのグループの作業場の照明を劇的に改善した。すると照明が改善された側のグループの生産性が劇的に向上した。

 そのグループの作業環境は、その後も変更され(労働時間、休憩時間など)、いずれの場合も生産性が向上した。何と照明を再び暗くした場合であっても向上したのである。

 変更を繰り返し、作業環境が最初の状態に戻った後でも、そのグループの生産性は工場内で最高のものに達しており、欠勤も激減した。

 ここから、作業員の生産性に影響を与えているのは、物理的条件の変化ではなく、むしろ彼らの作業環境に対してきちんと配慮がなされており、人から気にかけられているという感覚であった。

 このグループの作業員は自分たちが選ばれたことに喜び、重要感を感じていた。その結果、生産性が向上したのだ。この効果は、実験において、ただ研究されているというだけで被験者の行動が変化することを示唆している。


5. モンスター実験
(吃音はレッテルにより症状が悪化することを証明)


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article source:spring

 これはウェンデル・ジョンソン博士による実験で、吃音(きつおん:言葉につまってしまったり、スムーズに発話ができない、どもるなどの症状)の原因に関する従来の理論の誤りを明らかにすることが目的だった。

 1930年代、吃音の原因は器質性・遺伝性であるとされていた。もしそうなら、吃音を持って生まれた子にはほとんどなす術がないということになる。

 しかしジョンソン博士は、吃音というレッテルが症状を悪化させると考えていた。場合によっては正常な子まで吃音になる可能性もあった。実験はそれを証明するためのものだ。

 被験者として22人の若い孤児を集め、2つのグループに分けた。1つ目は「正常な話者」グループ、2つ目は「吃音」グループである。なお吃音グループであっても、実際に吃音だった子供は半分だけであった。

 実験中、正常な話者グループは肯定され励まされたのだが、この実験を悪名高いものにしたのは吃音グループに対する扱いであった。

 こちらのグループは吃音に意識が向くよう仕向けられた。吃音について講義され、単語を繰り返さないよう特に注意せよと指導された。

 孤児院の教師やスタッフらは、そうしたことを知らされずに吃音のレッテルを強化するために募集された人たちで、吃音グループの全員が本当に吃音であると説明されていた。

 この結果、吃音グループの正常な子6人のうち5人で吃音が生じるようになった。またもともと吃音だった子5人のうち3人の症状が悪化した。一方、正常な話者グループの子で実験によって吃音が悪化したのは1人だけであった。

 研究者は実験の影響力を強さを悟り、子供たちの回復を試みたが無駄であった。吃音とレッテルを貼られた孤児たちへのダメージは恒久的で、彼らはその後の人生でずっと吃音と付き合っていかねばならなくなった。

 目的は善意のものであっても、明らかに倫理的な問題のある実験である。2001年、実験が行われたアイオワ大学は正式に謝罪を表明している。


6. 「傍観者効果」の概念が生まれたキティ・ジェノヴィーズ事件


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article source:Psychology Today

 これは実験ではなく、キティ・ジェノヴィーズという女性が殺された殺人事件なのだが、その観察から「傍観者効果」という概念が提唱されることになった。

 傍観者効果は、例え緊急事態であっても自分以外に周囲に他人がいると、人は率先して行動をしようとしなくなる現象をいう。

 1964年、ジェノヴィーズはニューヨークの自宅アパートの表で刺殺された。犯行当時、周囲に人がいたのだが、助けようとした者はおらず、また警察に通報した者もいなかった。

 社会心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーによると、傍観者効果は、他の人が積極的に行動しないので、事態は緊急性を要しないと考える「多元的無知」、もう1つは、他の人と同調することで責任や非難が分散されると考える「責任分散」、もし行動を起こした場合、その結果に対して周囲からのネガティブな評価がくるのを恐れる「評価懸念」という3つの要因が関係しているという。


7. ボボ人形実験
(人間の行動原理は遺伝的なのか?社会的模倣なのか?)


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article source:explorable

 1961年にアルバート・バンデューラが行なった実験。人間のあらゆる行動が遺伝的要因ではなく、社会的模倣によって学習されたものだという彼の仮説を検証するために行われた。

 子供が模範である大人の行動を真似することを証明するために、被験者である子供は3つのグループに分けられた。

 1つのグループには、大人がボボ人形に暴行する場面を見せた。2つ目のグループには、大人がボボ人形で普通に遊ぶ場面を見せた。対照群である3つ目のグループには、大人の様子を見せなかった。

 その後、子供たちをボボ人形などのオモチャが置かれた部屋に入ってもらった。子供には、オモチャが他の子供のものであり、それで遊んではいけないと告げた。これはフラストレーションを感じさせるためのものだ。


Bandura's Bobo Doll Experiment

 すると暴行を見た子供はボボ人形に同様の行為を行うことが多かったが、他のグループの子はそうした攻撃性を示さなかった。また暴行を見たグループの中でも、特に男の子はそれを真似する傾向が強かった。

All translated by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 20:47
  • ID:hgb9WKZ90 #

つまり粗暴な両親の子供は、その両親に育てられたら将来粗暴な人間になるってことだよね

2

2. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 20:49
  • ID:IekLmfus0 #

傍観者効果で有名の有名事件は2007年に発生したサンダーバード号レ〇プ事件
40人乗客がいたけれどだれも通報しなかった

3

3. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 22:04
  • ID:7E16BQ.m0 #

6. 「傍観者効果」
都会の人は冷たい、とよく言われるのはこれのせいだと思う。
自分も一度炎天下の歩道で倒れて手を着いたまま動けなくなってしまった事があるけど、周りをぞろぞろ人が歩いてるにもかかわらず見てるだけで誰一人声を掛けてくれなかった。
これがもし誰もいなくて人が倒れてる所にたまたま一人で通りかかったとしたらまずみんな声を掛けると思う。

4

4. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 22:14
  • ID:0YVm69BF0 #

申し訳ないって思いがあるのかわからんね。

5

5. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 22:31
  • ID:FCky.zjM0 #

1.のマシュマロテスト、自制心のある子を成功者にしたいのなら、我慢したときに絶対に2個マシュマロを与えること。

あとで条件を変えられたら、明日の1,000円より今日の100円な人間になる。

うん、自分がそうw

6

6. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 22:35
  • ID:JZdOab380 #

ウォッチメンのロールシャッハ氏がヒーロー始める一因になった事件も傍観者効果でしたね

7

7. 匿名処理班

  • 2017年12月15日 23:18
  • ID:BNbyrC.x0 #

>>3偽の合意実験のとうりになったね

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