Microsoft Pix は、マイクロソフト傘下の独立研究機関 Microsoft Research が iPhone 向けに無料提供中のカメラアプリ。
適当にシャッターボタンを押すだけで最適な瞬間を撮り、被写体に応じてちょうど良い感じに調整してくれるのが基本機能です。
基本はシンプルながら、これまでマイクロソフト・リサーチがさまざまな形で提供してきた人工知能や画像処理のアプリを集結させた多機能ツールとしての側面もあります。
たとえばブレた失敗写真が少ないのは、アプリを開いた瞬間からカメラデータをバッファして、シャッターボタンが押される直前直後も画像解析してベストショットを選ぶ仕組み。このとき場面に動きを認識すると、通常の写真に加えて髪が風にそよぐポートレート写真や、川が流れる風景写真など、静止画に動きを足したループ動画 Live Image も同時に自動で出力します。
動画を撮ったあとは、手ぶれ補正やタイムラプス効果も選択可能。これは Hyperlapse の名前で提供されてきた技術です。また印刷物を検出すれば、書類の部分だけ切り出して歪み補正や色補正を施し、スキャナで取り込んだような画像も自動で保存してくれます。こちらは単体の Office Lens アプリとしても提供中。
今回新たに合流したパノラマ撮影は、マイクロソフトが2008年からアプリやウェブで提供ししていた写真合成サービス Photosynth の技術。iPhone の標準パノラマ撮影では端末を縦か横かどちらかに動かすことで長いパノラマを撮影しますが、Microsoft Pix のパノラマでは上下左右に好きなように動かすことで、連続的に取り込んだデータに色補正や露出補正、ステッチを施し、上下左右に広い超広角写真が得られます。マイクロソフトによれば、ステッチと同時に適用する画像処理でパノラマ写真自体の画質が優れている点も売り。
もうひとつの Pix Comix は、動画から3枚のハイライトを選び出し、3コマ漫画風の一枚を出力する機能。数種類からフキダシを選んで、自分でテキストを入力して載せることもできます。
この Comix 機能は Photosynth と同様、すでに撮影した動画にも適用可能です。
そういえば先日、Google も新技術をアプリとして配布する実験 Appsperiments と称して、動画を漫画風にする Storyboardアプリを公開していました。
Storyboard はフキダシ追加の機能こそないものの、画像自体もフィルタで線画風やカラーイラスト風にしてくれます。
実は Microsoft Pix にも、また別の機能として画風変更フィルタを備えています。こちらは一時期流行った、油絵風や点描風、有名絵画風のスタイルを機械学習で抽出して写真に適用する技術。フィルタで写真が前衛絵画のようになる様子をGIF出力までしてくれます。
Microsoft Pix は iOS 向けに Apps Store で無料配信中。インターフェースがシンプルすぎてここまで強力なツールが詰まっているようには見えませんが、起動して右上にある「田」ボタンでiPhoneの写真・動画一覧を呼び出して、そこからフィルタの適用や編集が選べます。他のアプリやカメラで撮った動画を単にブレ補正したいだけでも便利です。