チームは、太陽系から93億光年離れた3C 928と呼ばれる銀河の中心にある超大質量ブラックホールを調べました。この銀河はわれわれの銀河の初期とよく似た姿をしており、われわれの銀河がそのような状態からどのように発達したかを知るヒントになると考えられます。
科学者がわれわれの近傍の銀河を観測すると、銀河の大きさはその中心にある超大質量ブラックホールと密接な相関関係にあることがわかります。しかし3C 928の場合は、その相関が当てはまりません。この若い銀河は、中心のブラックホールに比べると本来予測されるほどの大きさを伴っていないことがわかりました。
このことは、銀河が形作られはじめるよりも前にまず超大質量ブラックホールが存在しており、徐々にそれに釣り合う銀河が形成されていくということを示しています。そして、ブラックホールを取り囲むクェーサー(ガスと塵で形成される明るく輝く円盤)からの高エネルギーな"風"がその銀河内を駆け巡り、恒星の形成、つまり銀河の発達に影響していると考えられます。
われわれの銀河がもともとどんな状態でどう発達してきたかは、われわれの銀河を見ているだけではわかりません。しかし遠く若い銀河の観測が、われわれの銀河の生い立ちを学ぶために魅力的かつ意外な事実を示しているのは興味深いものです。なお、この研究にはまだまだ観測で得た膨大なデータがあるとのこと。今後の分析でまた興味深い発見が出てくるかもしれません。