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【ラブライブ】にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】|エレファント速報:SSまとめブログ

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【ラブライブ】にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】

2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 19:38:07.83 ID:Y6bwFRdBO

『Jの罪/アイドルは仮面ライダー』



3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 19:41:51.62 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




???『……ライダーパンチっ!』



バードD『が、ぁぁぁっ!?」



ーー パリンッ ーー



???『…………ふぅ』ドライバートジ


???「はぁ、きりがないわね……」

???「それでも、私がやらなきゃ……。この学院を守るのよ」



ーーーーーー



16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 19:52:50.75 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




ーー カチッ ーー



コンロの火を止め、鍋の蓋を空ける。
広がるのは、味噌汁のいい匂い。

うん。
我ながらいい出来ね!



「…………さて」



時計を見ると、2本の針が丁度縦に並んだところ。

そろそろ起こさなきゃよね。
そう思い、彼女たちの部屋へ向かう。



「朝よー」



襖を開けて、声をかけると、



「んー、おねえさま……?」

「あとごふん……」

「Zzz……」



まだ夢の世界から戻ってきていない家族の姿があった。

ふふっ、仲良く3人川の字で寝てるわね。
こんな姿を見てたら、もう少し寝かせてあげたいけど……。



「起きなさい! 朝よ!」

「こころ! ここあ! こたろう!」




にこ「これから仕事なんだから!」




ーーーーーー



私は矢澤にこ。
職業、アイドル。



ーーーーーー



36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:09:50.44 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



アイドルの朝は早い。
家族のために食事を作り、洗濯をして、それから朝食を妹たちと一緒に食べる。

……って、これじゃアイドルというより主婦ね。



こころ「おねえさま、卵焼きもらっても?」

にこ「いいわよ、どんどん食べなさい」

ここあ「あたしも!」

にこ「はいはい」



食べ盛りの妹たちの相手をしながら、そんなことを考える。

んー。
そろそろ仕事モードに切り替えなきゃなんだけど……。
そう思っても、勿論、優先すべきは家族のこと。
と、そんなとき、



こたろう「…………にこにー」



今度は弟に呼ばれる。



にこ「…………ん? どうかした?」



こたろう「仮面ライダー」




こたろうが指差す方。
適当に流していたテレビには、今、それが写っていた。



『仮面ライダー』


そう呼ばれているらしい存在で、実際はここ東京都に隣接する都市で活躍してるっていうヒーロー。
ご当地ヒーローってやつね。

外見は、黒と緑の半分こで、赤い複眼と2本の角。
にこ的にはあんまりかっこいいとは思わないけど……。
ただ、こたろうは最近、その『仮面ライダー』とやらにすっかりご執心のようで……。

まぁ、なにきりアイテムなんていうのもあるらしいから、それが欲しいって言わないだけいいかしら。



45:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:15:55.62 ID:Y6bwFRdBO


ここあ「あっ!?」ガシャン

こころ「お醤油が!」

にこ「あー、やっちゃったわね」

ここあ「ご、ごめんなさい……」

にこ「ん、大丈夫よ。それより、台拭き持ってきて」

ここあ「う、うん!」




手伝います!
そう言うこころにお礼を言って、机の上を片付ける。

主婦は朝から大変だ。
『仮面ライダー』なんかよりも、ずっとヒーローだと思うわ。

そんなご家庭のヒーローには目を向けず、こたろうはテレビの中のヒーローに夢中だけれど。


怪人をやっつけてれば憧れられるんだもの。
ヒーローは気楽よね。


そんな風に、ポツリと呟いて、にこは手を動かす。
テレビは相変わらず、『仮面ライダー』の活躍を流し続けていた。



ーーーーーー



46:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:16:42.33 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



58:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:25:33.08 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



希「にこっち、おつかれさま~!」

絵里「はい。にこの分の飲み物よ」

にこ「ん、あんがと」



仕事終わり。
久しぶりに会う約束をしていた二人。

絢瀬絵里。
東條希。

二人ともにこの同級生で、高校時代、一緒にスクールアイドルをやっていた仲間だ。
今でも親交は続いている。



希「それじゃ、かんぱーい!!」

絵里「かんぱーい!」

にこ「かんぱい……アルコールじゃないけどね」

希「んー? アルコールの方がよかった?」

絵里「ちょっ、希!? 私たちはまだ飲める歳じゃーー」

希「フフッ、冗談やって♪ えりちは固いなぁ」

絵里「っ、もう!」

にこ「…………」



なんて、相変わらずのやりとりを見つめる。

変わらないわねぇ。
それを見ていて、少し落ち着く自分がいるのは二人には内緒だけどね。



希「……にこっち?」

にこ「ん?」

希「どうかした?」

にこ「ううん、なにもないわよ」

希「そ?」

にこ「えぇ」



66:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:34:56.24 ID:Y6bwFRdBO



絵里「ところで、にこ、明日も仕事なの?」



チョコレートドリンクらしきものを煽りながら、絵里がそう聞いてきた。
っていうか、それを一気に飲むとか……。
……見てるこっちが胸焼けしそうなんだけど。



絵里「にこ?」

にこ「あっ、いや、明日はオフね」

希「珍しいなぁ、売れっ子のにこっちにも休みはあるんやねぇ」


いやらしい笑みを浮かべながらそう言う希。



絵里「そうね。にこを見ない日は少ないものね」



と、それに素直に乗っかる絵里。

うーん。
なにかしら、この感じ。
ま、誉めてもらえてると思いましょうかね。
……それはそれで恥ずかしいけど。



希「じゃあ、明日どこか行くー?」

にこ「んー、パス」

絵里「なにか予定でもあるの?」

にこ「…………ちょっとね。音ノ木坂に顔でも出してこようかと思ってるのよ」



それだけ言って通じたようで、絵里は嬉しそうに頷いた。
希もいいんやない、なんて言ってる。



にこ「ま、たまにはね」



たまには。
後輩の様子を見に行ってもいいだろう。

あの3人の顔を思い浮かべながら、にこはそう呟いて、イチゴミルクを一気に飲んだ。



ーーーーーー



68:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:35:08.18 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



74:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:38:11.98 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



『イライラする……』ガンッ

『イライラするんだよぉ!!!』ガンガンガンッ



???『っ、やめなさい!』



『あ?』

『邪魔、しにきたのか……?』

???『……えぇ。ここから出ていってもらうわ』

『……ふ、ふざけるな!! こんな場所があるから!!』

???『っ』




『あァァァァ!!!』




ーーーーーー



75:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:39:06.50 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



114:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:49:14.80 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




にこ「ぬぅあによ、これ!?」




アイドル研究部部室。
輝かしき栄光を掴むために、苦楽を共にしたそこは、



にこ「なんで、立入禁止になってるのよ!?」



立入禁止になっていた。



凛「そんなこと言っても、仕方ないにゃー」

真姫「そうね」

にこ「んなに、落ち着いてるのよ!?」

真姫「騒いだって、どうしようもないでしょ?」

凛「そーにゃ、そーにゃ!」



と、にこに意見する生意気な二人の後輩。

星空凛と西木野真姫。

にこや絵里たちと同じスクールアイドルμ'sメンバー。
……って、今は違うグループ名だったわね。
そして、



花陽「ご、ごめんね、にこちゃん。せっかく来てくれたのに……」

にこ「花陽が気にすることじゃないわ」

花陽「……ありがと、にこちゃん」



小泉花陽。

現アイドル研究部部長。
そんな彼女も勿論、μ'sのメンバーだった娘だ。



真姫「…………」

凛「かよちんの扱いだけ違くない?」

にこ「気のせいよ」



162:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:55:51.35 ID:Y6bwFRdBO




にこ「それで、何があったのよ?」



立入禁止なんて、普通なるはずがない。

なに?
凛が赤点でもとったの?


凛「……今、凛バカにされた気がする」

にこ「気のせいよ」



凛を軽くいなして、花陽に尋ねる。

何があったの?
軽い気持ちでそう聞いた。



花陽「………………」


それこそ、凛の赤点じゃないけど、軽い気持ちで聞いたんだけど。
なんだか空気が重い?
花陽もなぜか俯いてるし。



真姫「……花陽……私から話す……?」

花陽「ううん……花陽が部長だから」

真姫「……そう」



そんな二人のやりとりの後、花陽は顔を上げた。
そして、こう言った。




花陽「部室がめちゃくちゃになってたの……」

にこ「は?」





184:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 20:58:56.99 ID:Y6bwFRdBO


部室がめちゃくちゃ?
え?
どういうこと?



真姫「……詳しいことは音楽室で話しましょ」

凛「かよちん、いこ?」

花陽「う、うん……」



混乱した頭で、3人の後に続く。
よく見ると、3人とも暗い表情をしていたのが……今になって気になった。



ーーーーーー



215:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:11:52.21 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




にこ「で、一体どういうこと?」



音楽室に着いて、最初に口を開いたのは、もちろんにこ。

部室が立入禁止って……。
めちゃくちゃ?
一体どういうこと?

その問いに答えたのは、花陽だ。

落ち着いて聞いてね?
そう前置きをしてから、花陽はこう言った。




花陽「……今日の朝、部室のものが全部壊されてたの」

にこ「………………は?」



さっきと同じリアクションになってしまった。

いけないいけない。
は?
なんて、アイドルにあるまじき言動よね……うんうん。

……………………って!



にこ「どういうことよっ!?」バンッ

花陽「ピャッ!?」



思わず机を叩く。
それに驚く花陽。



真姫「にこちゃん! うるさいわよ!」

にこ「全部壊されてたって!? なに!? え!?」

真姫「言葉通りよ」




真姫「全部、机もイスもパソコンも本棚も」

真姫「全部壊されてたわ」




にこ「!?」



230:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:19:20.12 ID:Y6bwFRdBO


壊されてた?
それって……?

にこの表情を見て、真姫ちゃんはなにかを取り出した。
それは数枚の写真だった。



真姫「……今朝の部室よ」

にこ「…………」



真姫ちゃんからそれを受け取る。



にこ「なっーー!?」



そこに写っていたのは、にこが知る部室とは全く違う光景だった。

二つに折られた机。
大破したイス。
パソコンは画面が粉々になっていて、本棚にはなにかで抉られたような跡があった。



にこ「………………なに、これ」



絶句、するしかない。

なによ、これ?
それすら言えない。
それほどまでに、写真に写った光景は凄まじいものだったから。
少なくとも人間業じゃ、ない。



凛「……凛たちも信じられなかったよ」

真姫「朝、来たらこれだもの……」



二人も俯く。



241:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:26:53.54 ID:Y6bwFRdBO



にこ「学校は……」

真姫「……すぐに警察に連絡してくれたわ。それで今はこの状況ってわけ」



それでどこも部活をやってないのね。
休みの日に部活が全くやってないのはおかしいと思ってたけど……。



凛「凛たちも、今、警察の人に話し終わったところなんだ」

にこ「事情聴取ってやつね」

凛「うん」

真姫「親が迎えに来るまで、ここで待ってるように言われてたんだけど……」

にこ「…………そこににこが来たのね」

真姫「えぇ」



警察とは入れ違いだったらしい。
勿論、まだ数人は警官がいるようだけど、どうやらにこは運良く?会わなかったみたいね。



にこ「って、そう言えば理事長は……」

真姫「その対応よ」

凛「最近、怪我してるのに大変だにゃ……」

にこ「怪我?」

凛「うん。なんか転んで骨折したんだって」

にこ「……理事長……」




254:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:39:50.63 ID:Y6bwFRdBO



花陽「にこちゃん」



理事長のタイミングの悪さに、心のなかで同情していると、花陽がポツリと名前を呼んできた。



にこ「なに?」

花陽「…………っ」




花陽「……ごめんねっ、わたし、わだしっ……」グスッ

にこ「っ」ダキッ



突然、泣き崩れる花陽。
どうにか、ギリギリで抱きかかえる。

いや、突然じゃないか。



花陽「ごめんねっ、はなよ、ぶちょう、なのにっ……っ」

にこ「……花陽……っ」

凛「かよちん!」

真姫「花陽っ」



不安。
恐怖。
たぶん、色んなものを押さえつけてたんだと思う。

部長だから。

自分にそう言い聞かせて。
それには、にこも覚えがある。
部長が狼狽えたら、きっと後輩はもっと不安になるから。

けど、後輩も帰って。
真姫ちゃんと凛、それからにこだけになって。
だから、きっと張り詰めてたものが切れたんだ。

不安で不安で仕方ない気持ちが溢れてきて……。



花陽「うわぁぁんっ……にこぢゃぁぁんっ」

にこ「ん、大丈夫。大丈夫よ」



そんな花陽の心を落ち着かせるように、にこは彼女の頭を撫でる。
撫で続ける。
頑張ったわね、って気持ちで。




花陽「ごめんね、にこ、ぢゃんっ……っ」

花陽「ぐやしいよぉ……っ」




にこの腕の中で、花陽は何度もそう繰り返していた。




ーーーーーー



262:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:41:44.48 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



ふざけんな!



そう思った。

こんな優しくて後輩思いの娘を泣かせて。
にこの大切な後輩を泣かせて。



この犯人を絶対に捕まえてやるわ。



にこはそう決意した。



ーーーーーー



263:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:42:57.93 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



272:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:49:32.82 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




凛「………………」

にこ「………………」

凛「…………」

にこ「凛」

凛「なに? にこちゃん」



にこ「あんたは帰りなさい」

凛「嫌にゃ」




時間は午後10時。
よい子は寝る時間。
だけど、にこは音ノ木坂学院にいた。
凛と一緒に。



にこ「未成年は補導される時間よ!」

凛「にこちゃんも同じでしょ!」

にこ「にこはあと1年で未成年じゃなくなるからいいのよ!」

凛「…………見た目は中ーー」

にこ「犯人の前にあんたをはっ倒すわよ!?」

凛「……にこちゃん」

にこ「…………なによ」




凛「はっ倒されたって、凛は帰らないからね」

にこ「そ」




にこと凛がここにいる理由。
それは勿論決まってる。



犯人を捕まえる。



それだけよ。



280:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:57:19.95 ID:Y6bwFRdBO

あの後。
迎えが来た真姫ちゃんに花陽のことを頼んで、にこは部室に入った。
無断で。
その結果、ひとつのことが分かった。
それは、



部室のロッカーが壊されていなかった、ということ。



他のものは全て、壁までえぐられていたのに。
ロッカーだけは傷ついていなかった。
それが異様に気になった。
だから、



凛「にこちゃん、ほんとに犯人はここに戻ってくるの?」

にこ「えぇ! 必ず来るわ!」



そんな結論に至った。
犯人はもう一度帰ってくる。
たぶん、ロッカーを壊しに。



凛「……でも、警察の人いっぱいいるよ?」

にこ「……来るわ」

凛「……見つかったら、捕まるの凛たちも同じだけどね」

にこ「…………笑えない冗談は止めなさい」



凛との会話。
それから前にばかり気をとられてたせいだと思う。



「…………」



にこは後ろから近づいてくるその音に、気配に気づかなかった。
だから、




「ちょっと」




にこりん「「!?!?」」バッ




286:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 21:58:19.77 ID:Y6bwFRdBO




理事長「生徒は、下校する時間よ?」




捕まってしまったのだ。
よりによって、学院で一番偉い人に。



292:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:03:28.26 ID:Y6bwFRdBO


にこ「り、理事長……」

凛「な、なんで、ここに……」

理事長「私もここの責任者だもの、見回りくらいするわ」



あんなことがあった直後だしね?

そう言ってニッコリと笑う理事長。
正直、その笑顔が怖い。



理事長「それで?」



凛「そ、それでとは……」

にこ「なんでしょうか……?」



理事長「なんでこんな時間に、こんなところにいるのかしら?」

理事長「矢澤さん? 星空さん?」




にこりん「「…………っ」」



こ、怖い!?
この人、笑顔が怖い!?

くっ、こうなったら……。




にこ「にっこにっこーー」



理事長「矢澤さん」

にこ「はい……」



299:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:11:25.09 ID:Y6bwFRdBO




理事長「……はぁぁ」



と、理事長はそれまでの張りついたような笑顔を崩して、嘆息した。
呆れているような表情だ。



理事長「星空さん!」

凛「は、はい!」

理事長「アイドル研究部は自宅待機だと言ったわよね?」

凛「で、でも……」

にこ「理事長! にこたちはーー」

理事長「矢澤さんもです!」

にこ「っ、にこは……」




理事長「あなたたちが狙われてるのよ!」



にこ「……え?」



狙われてる?
あなたたちが、って……。

どういうこと?
狙われてるは、アイドル研究部の部室じゃ……?

待って?
あなたたちってことは……?
狙われてるのは、凛?
え、にこも……?

ってことは……?



309:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:13:30.80 ID:Y6bwFRdBO





ーー ガシャァァァン ーー






317:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:21:31.28 ID:Y6bwFRdBO




にこ「っ!?」ビクッ



思考が中断される。
それはなにかが壊れる音だった。



理事長「っ、やっぱりまた来たのね……」

凛「い、今の……」

理事長「…………二人はここを離れてはいけませんよ」

にこ「っ、でも、にこたちはっ!」

理事長「お願いだからーー」



理事長「ーーあなたたちを巻き込むわけにはいかないのよ」




理事長はそのまま校舎へ向かって駆け出した。

そして、聞こえてくる発砲音。
警官の悲鳴。
一体、なにが……?



凛「…………に、にこちゃん……」ギュッ

にこ「……凛」

凛「ね、ねぇ、さっきの拳銃だよね……?」

にこ「…………」

凛「……ね、ねぇ」



よく見ると、凛は震えていた。
袖をつかむ指が小刻みに震えてる。

いや。



にこ「…………っ」



これ、にこも震えてるのね。

当然だ。
部室の惨状を見てる。
普通は聞くことのない拳銃の音が聞こえた。
そして、本来は頼れる存在の警官の悲鳴が聞こえた。



ありえないことが起こってる。
それはきっと、とてつもなく恐ろしいこと。



なにが起こってるのかは分からない。
けれど、それだけは理解できた。



326:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:29:17.56 ID:Y6bwFRdBO


凛「にこちゃんっ、凛たちどうしたらいいのっ!?」

にこ「っ、ここで……待ってる」

凛「……っ、だ、だよね……」

にこ「…………」



そう。
待つのが正解のはずよ。
それ以外はありえない。

けど、




にこ「……っ」



ちらつくのは、昼間の花陽の姿だった。
花陽の涙だった。



にこ「………………凛」

凛「……にこ、ちゃん?」

にこ「あんたはここで隠れてなさい」

凛「っ!? にこちゃん!? なんで立ち上がって……っ!?」

にこ、「………………」



許せない。
そう思ったから。

危ないことは分かってる。
だから、危険になったらすぐに逃げる。
見つからないように、犯人が誰かだけを暴いてやるわ。
そして、それを教えて捕まえてもらえばいいのよ!



327:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 22:32:47.56 ID:Y6bwFRdBO


にこ「…………すぐ帰ってくるわ」

凛「……にこちゃん、だめ、だめだよっ!!」

にこ「大丈夫よ。待ってて」

凛「一人でいっちゃだめっ!!」

にこ「…………じゃあ、ついてくる?」

凛「え…………?」



意地悪な質問をしたのは分かってた。
でも、こうでもしないと凛はずっとにこのことを掴んで離さなそうだったから。



にこ「っ」

凛「あっ……!」

にこ「危ないと思ったら、すぐにここから離れるのよ!」



海未の家に駆け込めば、きっと守ってくれるはずよ!
それだけを凛に言って、体をそちらへ向ける。

夜の音ノ木坂学院。
いつもは真っ暗なはずのそこは、今日はとても明るかった。




ーーーーーー



346: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:19:26.43 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー



にこ「はっ……はぁ…………」



校舎内までどうにか入り込めた。
警官は皆、1階に集まっているようで、にこは見つからないように昇降口からすぐ階段を上がった。
そして、2階を通って、今は部室の丁度前にある階段の踊り場にいた。

……それにしても、



にこ「やけに静かね……」



校舎に入るまでは聞こえていた発砲音も聞こえない。
まるで、なにもなかったような静けーー




ーー ガシャァァァン ーー



にこ「っ」ビクッ




それは突然聞こえた。
階段の下……つまり、部室から聞こえた。

なにかを壊す音。



にこ「…………ふぅ」



大きく深呼吸をする。
震えが止まるように、1回、2回、3回。



にこ「よし……」



そのまま静かに、階下へ。
すぐに、部室の前の壁に背中をくっつける。
この向こうに、犯人が…………。



にこ「っ」



一瞬だけでいい!
その姿だけ確認するわ!

にこは部室のドアの窓からそっと中の様子を窺った。
そこにいたのは、





『……アァァぁぁ……』





にこ「…………ひっ!?」



化け物だった。



368:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/25(火) 23:27:18.91 ID:Y6bwFRdBO


化け物。
そう表現するしかない。

無機質な銀色の光沢を持った体。
顔の半分は鉄の球体でおおわれていて、表情は全く読み取れない。
そして、腕の先には、部室を破壊した武器……大きな鉄球がまるで腕の一部のように付いていた。


人じゃない……っ!
これは、にこにどうにかできる相手じゃない!

逃げなきゃっ!!



にこ「……あっ……はっ……」



そう思っても体は言うことを効かない。
手が震える。
足は自分のものじゃないみたいだった。
立てない。
動けない。



にこ「逃げ……」





『ニゲラレナイヨ』




ーー ガシャァァァァァン ーー




その音と同時にーードアが吹き飛んでいた。



378: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:37:31.60 ID:Y6bwFRdBO


にこ「ば、ばけ、も…………」

『ヤットアエタノニ、バケモノ? ヒドイナァ』




『ニッコニッコニー』




『ホラ、イツモノヤッテヨ』

にこ「……あ、あっ……」ガクガク



『ワラエヨッ!!!』バァァンッ



にこ「ひっ……!?」ビクッ




怖い。
怖い怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

なにも考えられない。



『ハハ……コンナニオビエテル……』

『ザマァナイネ……』

にこ「…………はっ、はぁ……っ」

『…………オマエハサイゴニスルツモリダッタケド……ヤットアエタンダカラ』




『イマ、スコシアソンデモイイヨネッ!!』ブンッ




目をつぶった。
これで終わりだと思ったから。

思い出すのは、家族のこと。
そして、μ'sの仲間のこと。



ごめんね、さよなら。






387: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:39:17.31 ID:Y6bwFRdBO

ーーーーーー




理事長「ハァァァァッ!!」バキッッ




ーーーーーー



396: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:45:32.60 ID:Y6bwFRdBO



『グッ!?』



にこ「………………え、え?」



体に何も衝撃が来ない。
なんで?

疑問に思いながら、少しずつまぶたを開けていく。
そこには、




理事長「…………ふぅぅぅ」




理事長がいた。
にこと化け物の間に立って、まるで、にこを庇うようにそこにいた。



にこ「り、じ……ちょう……?」

理事長「…………えぇ」

にこ「な、なん……で……」

理事長「それはこちらの台詞なのだけれど……待っていなさいと言ったでしょう」

にこ「っ、ごめ……ごめ、んな、さい……」

理事長「………………」




理事長「…………」ギュッ

にこ「…………え……?」




理事長「怖かったわね」

にこ「~~っ」

理事長「もう、大丈夫よ」




理事長「…………今、助けるから」







405: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:54:36.90 ID:Y6bwFRdBO


今、助けるから。
そう言って、理事長は懐からなにかを取り出した。
それ、どこかで……?

赤い、機械?



『オマエ……マタジャマヲ……』ギリッ

理事長「…………邪魔なのはあなたでしょう」スッ

『ッ!』



理事長「…………」ガシャン



理事長はその赤い機械をお腹の前でかざす。
と同時に、ベルトが展開し、理事長にそれが装着された。

…………それ、ベルト?

そして、もうひとつ。
理事長は懐から『それ』を取り出した。
そして、『それ』のボタンをゆっくりと押す。




『ジョーカー』






406: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/25(火) 23:55:08.85 ID:Y6bwFRdBO




理事長「この学院で暴れた罪ーー」

理事長「ーー悔い改めなさい!」




理事長「変身!」




『ジョーカー!!』






416: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/26(水) 00:01:13.02 ID:ZLcjwMXoO


ベルトから音が流れ出す。
その音が終わったとき、理事長は姿を変えていた。

その姿は……そうだ。
いつもニュースで、こたろうが釘付けになって見ていた『あれ』に似ている。


2本の角。
大きな赤い複眼。
ただひとつだけ違うのは、その色。
理事長が変わったその姿は全身が"灰色"だった。




にこ「『仮面ライダー』……」




にこはその名前を呼んでいた。
そして、それに答えるように彼女はこう名乗った。



『そう』

『私はーー』




ジョーカー『仮面ライダージョーカー!!』




ーーーーーー



453: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 19:34:12.00 ID:1UFAhrMMO


ジョーカー『またあなたなのね。確か、バイオレンスドーパントだったかしら』

バイオレンス『ダッタラナニ?』

ジョーカー『いえ。特殊能力がない楽だと思っただけよ』

バイオレンス『ッ、バカニッ!!』



化け物が向かってくる。



にこ「っ」

ジョーカー『大丈夫よ』

にこ「……え」



それと同時に理事長……ジョーカーも動いた。

体がゴツいせいだと思う。
化け物の動きはあまり速くない。
ジョーカーはその化け物の懐に入り込んで……。




ジョーカー『ハッ!!』バキッ

バイオレンス『ウッ、ガッ!?』



硬そうな装甲のような体を避け、化け物の首に一発、上段蹴りを入れた!
それによろめく化け物。



ジョーカー『まだよ!!』ダッ

バイオレンス『!?』



まだ終わらない。
今度は一瞬で後ろに下がる。
距離を取った……ってことは?



ジョーカー『ふっーー』

バイオレンス『トビゲーー』



ジョーカー『はぁぁっ!!!』バキィィィッ



跳び蹴り。
それが化け物の腹部を捉え、気づけば、そのまま化け物が吹き飛んでいた。



454: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 19:39:59.26 ID:1UFAhrMMO


バイオレンス『ハッ、ハァ……』

ジョーカー『ふぅ』



にこ「…………すご」



思わずそう呟いた。

あんなに恐ろしかった化け物が、まるで赤子みたいに、簡単にやられてる。
それを見て、気付いた。



にこ「震え……止まってる……」



それは化け物が思ったよりもずっと驚異じゃなかったから。
…………いや。
それは違うわね。
あの化け物はやっぱりまだ怖い。
けれど、にこの震えが止まったのは、たぶん……。



にこ「…………」ジッ



ジョーカー『……さぁ、そろそろ決めましょうか』スッ



この人のおかげだ。
このヒーローのおかげだ。



455: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 19:47:31.21 ID:1UFAhrMMO




ジョーカー『さぁ、これで決まりよ!』



ジョーカーはそう言うと、ベルトに刺さっていた『それ』を引き抜いた。
そして、ベルトの横へ刺し直す。



『ジョーカーマキシマムドライブ』



同時に、また機械音が聞こえた。
これで決まり。
そう言ったんだから、きっと必殺技的なやつでしょうね。



バイオレンス『ッ、マダダ!!』

バイオレンス『ワタシはまだっ!!』



ジョーカー『いえ、終わりよ』



にこの予想通り。
ジョーカーの腕に、エネルギーが溜まっていく。
そして、




ジョーカー『ライダーパンチ!!』



ーー バシィィィィン ーー




決着がついた。



ーーーーーー



456: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 19:58:07.48 ID:1UFAhrMMO

ーーーーーー



理事長「…………はぁぁぁ……」

にこ「えぇと……」



事件が終わった後。
理事長と一緒に、外で震えて待っていた凛を家まで送って。
そして、今、理事長はにこの家に来ていた。

…………事件が終わった後、っていうのは違うわね。
だって、



にこ「逃げられましたね」

理事長「えぇ……」



そう。
結果から言うと、あの化け物は退治できなかった。

マキシマムドライブ?って言ったっけ?
ジョーカーのパンチを受けても、あの化け物は生きていた。
勿論、無傷って訳じゃなさそうだったけど。



理事長「決まったと思ったのだけれど……」

にこ「あの化け物の体が硬かった……とかでしょうか……」

理事長「えぇ。それにたぶん……私とこのメモリの適合率もあまりよくないせいね」



理事長はそう言うと、懐から『それ』を取り出した。



にこ「USBメモリ……ですか?」



形はよく知るUSBメモリだった。
ただ、その表面にでかでかと『J』の文字が描かれていたのは気になったけど。

にこの質問に、理事長は首を横に振る。
否定の意味。


じゃあ、これは一体なんなんですか?


そう尋ねるにこ。
理事長は、ひとつため息を吐いてから、それに答えた。



理事長「『ガイアメモリ』」

理事長「そう呼ばれているわ」





475: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 20:05:57.20 ID:1UFAhrMMO



『ガイアメモリ』

USBメモリの形をしているそれには、地球の記憶が刻まれている。
それを人間が使うことで、超人へ変える力がある。

理事長の説明を簡単に言えば、こういうことね。
でも、なるほどね。



にこ「それで、理事長が『仮面ライダー』になっていたんですね」



納得。
正義の味方の変身アイテムって訳ね。
そう言えば、こんなのをこたろうが見ていた『仮面ライダー』もつけていた気がするわ。

……ん?
でも、ちょっと待って?



にこ「理事長」

理事長「なにかしら? にこさん」

にこ「なんで理事長がこんなものを持っているんですか?」



当然の疑問だと思う。
……もしかして、元から理事長は……?



理事長「いいえ。それはないわ」

理事長「私がこれを手にしたのは最近だもの」



にこの妄想を否定する理事長。
それから、『ガイアメモリ』を手にした経緯を話し始めた。



536: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 20:16:46.27 ID:1UFAhrMMO


理事長「事の発端は、禅空寺というところからの依頼なのだけれど」

理事長「にこさんも知っているでしょう? あの大きな風車がある街」

理事長「えぇ。東京と隣接してるその風都よ」

理事長「そこの有力者からの依頼だったわ」

理事長「端的に言えば」



理事長「音ノ木坂に被害が及ばないように、自衛してほしい」



理事長「というのも、風都から『ガイアメモリ』が流出しているらしいのよ」

理事長「製造元は壊滅したらしいのだけれどね」

理事長「とにかく風都の『仮面ライダー』だけじゃ他の都市までは守りきれないから、私たち大人に依頼が来た、というわけ」



548: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 20:22:26.10 ID:1UFAhrMMO


にこ「り、理事長! ちょっと待ってください」

理事長「はい、なにかしら?」



そこまで聞いて、口を挟んだ。

待って?
さっきまでの話を聞いてると、その『ガイアメモリ』って……。



にこ「悪いもの、なんですか?」



『ガイアメモリ』が流出した、とか。
自衛してほしい、とか。

え?
『ガイアメモリ』って『仮面ライダー』への変身アイテムなんじゃ?

にこの疑問を感じ取ったようで。
理事長は、またひとつため息を吐いて答えた。



理事長「えぇ」

理事長「『ガイアメモリ』は本来、『仮面ライダー』ではない超人になるためのものよ」

にこ「『仮面ライダー』ではない超人……?」

理事長「そう。私たちが出会ったあの怪物」




理事長「『ドーパント』」

理事長「その正体は『ガイアメモリ』を使った人間よ」




にこ「……え」



623: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 20:35:08.68 ID:1UFAhrMMO



理事長「『ガイアメモリ』をこのドライバーを経由して使わないと、『ドーパント』になるの」

理事長「そして…………いえ」



なにかを言いかけて止める理事長。

なにを言おうとしてたのか。
それも気にはなったけど、今、にこの頭のなかにあったのは別のこと。



にこ「………………理事長」

理事長「なにかしら……」

にこ「理事長、校舎に入る前に言っていましたよね」



にこ「にこたちが狙われてるって」



そう。
凛と一緒に理事長に見つかったとき、理事長はそう言っていた。



理事長「…………えぇ」



理事長は頷いた。

そして、教えてくれた。
理事長宛に、アイドル研究部の活動を中止させろという脅迫状紛いのものが届けられていたこと。
そうしなければ、μ'sのメンバーを一人ずつ消していくと書かれていたこと。



理事長「……にこさん、ごめんなさいね。こんなことに巻き込んでしまって……」

にこ「いえ……」

理事長「不安に思うかもしれない。けど、必ず守るわ」

にこ「……はい」



652: ◆6cZRMaO/G6 2017/07/31(月) 20:39:22.74 ID:1UFAhrMMO


あの化け物は、ただ目的もなく部室を破壊しただけかと思ってた。
悪の軍団とかの一員で。

でも、違う。
あの化け物は人間。
それがにこたちを狙ってるってことは……。



なにか動機があるってこと。
化け物になってまで、にこたちを狙う理由があるってことになる。


それに思い到って、背筋がゾッとした。

怖いって感情。
命を狙われることへの恐怖。



ただ、それだけじゃない。
にこの心はそれ以外のことも感じていた。



苦しさ。



なぜかは分からない。
だけど、にこたちが人間から狙われてるんだって知って、胸が苦しく、そして、痛んでいた。

これは、なに?



ーーーーーー



681: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 20:59:31.40 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



真姫「…………」

凛「…………」

にこ「…………」

花陽「…………え、えっと……」



にこが化け物と遭遇した次の日。
仕事終わりに、にこは真姫ちゃんに呼び出された。

私の家に来て、と。

なに?
もしかして、怖くなっちゃったから、にこに来てほしくなっちゃったとか?
ふふっ、真姫ちゃんも可愛いところあるじゃない♪


……………………。


……そう思っていた時期がにこにもありました。
実際は、



真姫「にこちゃん」

にこ「はい」

真姫「凛」

凛「はいにゃ」



真姫「あなたたち、昨日、現場に行ったんですってね」ニコニコ



説教である。
正座するにこと凛の目の前で、真姫ちゃんが引き吊った笑みを浮かべている。



にこ「そ、そんなに怒っちゃどぅめどぅめ♪ ほら、真姫ちゃんも一緒に~♪」

にこ「にっこにっこーー」



真姫「言い訳、ある……?」ビキッ



凛「…………ないです」

にこ「ありません」



やだ。
真姫ちゃん、ちょー怖い。



682: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:07:41.31 ID:TxSbGMMGO




真姫「モウっ! 何考えてるのよっ!?」バンッ



語気を強めて、真姫ちゃんは続ける。



真姫「犯人は部室をあんなに滅茶苦茶にするような危険な奴なのよ!」

真姫「そんな奴を捕まえるとか……」

真姫「~~っ、イミワカンナイっ!!」バンッ



そう言って、もう一度机を叩く真姫ちゃん。

心配してくれてるのは分かる。
実際、にこは死にかけた訳だし。
けど、



にこ「っ、だって、許せないじゃない!!」



そう。
許せなかった。
アイドル研究部の部室を滅茶苦茶にした奴が……。
それに、



花陽「……にこちゃん……」



花陽を泣かせた奴が、だ。


凛「そうだよ! 凛たちの部室をあんな風にした犯人は許せないにゃ! それに、かよちんが泣いてた!」

花陽「り、凛ちゃん……」

真姫「……それは」


にこの思いに、凛も同調したようで、真姫ちゃんにそう言い返す。

真姫ちゃんもたぶん思いは一緒。
それはそうだけど、と小声で呟いていた。



683: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:14:49.96 ID:TxSbGMMGO


真姫「…………」

凛「…………」

にこ「…………」



沈黙。
それを破ったのは、



花陽「ねぇ、二人とも……」



意外にも花陽だった。



凛「かよちん?」

花陽「あのね」



聞いてほしいんだけど。
そんな風に前置きをして、花陽は話し出した。



花陽「花陽ね、悔しかった」

花陽「わたしたちの部室をこんなにされて……」

花陽「わたしたちの頑張りを否定されたような気がして……」



分かる。
花陽の気持ちは。
だから、にこと凛はーー!



花陽「でも、二人が危ないことするのは嫌だよ」



にこ「っ」

凛「そ、それは……」


花陽「部室はね、壊れちゃったけど……それでも、活動はできるよ」

花陽「でも、二人がもしも怪我しちゃったり……もっと酷いことになっちゃったら……」

花陽「そう、考えたらね……」



そこまで言って、花陽は俯いた。

重い言葉だった。
にこたちには、何も言い返せない。
弱々しいけれど、強い言葉。



684: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:18:34.94 ID:TxSbGMMGO


真姫「凛」

凛「……うん」

真姫「貴女が花陽のことを大切に思っているように、私たちも貴女のことが大切なの」

凛「……………………うん」



真姫「にこちゃん」

にこ「…………なによ」

真姫「にこちゃんはプロのアイドルなんでしょ? なら、こんなところで怪我とかしちゃダメじゃない」



真姫「ファンが悲しむわよ」



にこ「っ」



あぁ、ずるい。
そんなことを言われたらーー



にこ「分かってる」



ーー頷くしかないじゃない。





685: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:21:52.65 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



二人の説教、というか説得を受けて。
凛も。
勿論、にこも。
この事件にはこれ以上首を突っ込まないことを誓った。



……………………。



そうよ。
犯人……というか化け物だけど。
それも分かったんだから、あとは警察とか、理事長とかに任せればいい。

『ガイアメモリ』とか。
『ドーパント』とか。
そんなの忘れて、日常に戻る。

アイドルとしての日常に……。



ーーーーーー



686: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:41:52.92 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



理事長「……………………」



外では警察の人たちが懸命に捜査をしている。
そんな中、私は理事長室の椅子に座り、一人考えていた。


なぜバイオレンスドーパントがアイドル研究部部室に現れたのか。

部室を壊したかったから。
μ'sメンバーを狙っているから。
……いえ。
そんなことは分かっている。

違う。
問題はそこじゃない。
そもそも……



理事長「なぜにこさんを狙ったの?」



ということ。

思い出す。
私があの場に乱入する直前に聞いた言葉を。


『…………オマエハサイゴニスルツモリダッタケド……ヤットアエタンダカラ』


最後にするつもり?
にこさんを?
なぜ?

やっと会えた?
会おうとしてたってこと?

そもそも、2年もたった今、なんでμ'sを持ち出してきたの?
…………違う?
2年も経ったのに……じゃなくて、2年経った今だから?



理事長「……………………」



……まさか?
いや、そんな馬鹿な話……。



理事長「………………少しだけ」



頭に浮かんだ荒唐無稽な考えが外れているように祈りながら、私は生徒名簿を開いた。



ーーーーーー



687: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:50:56.20 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



688: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:58:42.64 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



外出を控えてほしい。

そんな連絡が理事長から今朝入った。

ただ、仕事に穴を開けるわけにもいかない。
仕事には出かける。

そう連絡を返すと、理事長からは送り迎えの車を用意すると返ってきた。



にこ「……過保護すぎ……とも言えないわよね」



仕事帰り。
車の中で、ポツリと呟く。

実際に自分の目であの化け物を見てるわけだし……。
それに、襲われるリスクが1番高いのは自分だということも理解してるつもりだから。



理事長「ごめんなさいね、にこさん」

にこ「いいえ」



運転席には理事長の姿。
後部座席からミラーで見える理事長の目元からは、本当に申し訳ないと思ってるのが伝わってきた。



にこ「花陽たちは……?」

理事長「私の自宅にいますよ。希さんたちもね」

にこ「そうですか」



なるほど。
当然、他のメンバーにも声はかけてあるって訳ね。
まぁ。
二年生組は大丈夫でしょうし。



理事長「海未さんの家に寄っていくわね」

にこ「はい」



って、そうか。
海未は実家暮らしだったものね。
武道に精通しているとはいえ、あの化け物相手じゃーー



689: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 21:59:45.54 ID:TxSbGMMGO






『アァァァァ!!』




ーー ガンッ ーー







690: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:04:52.24 ID:TxSbGMMGO


突然だった。
突然、そいつは現れた。

そいつにぶつかった車は勢いを殺され、




にこ「っ、痛っーー!?」



にこは思いっきり、運転席のシートに叩きつけられた。
シートベルトをしてなかったら、と思うと、ゾッとする。



理事長「っ、またーー」

にこ「~~っ、いっ……」

理事長「…………にこさん、ここから出るわよ」

にこ「は、はいっ……」



理事長に支えられながら、車を這うように出る。
目の前には



バイオレンス『…………マタアエタ』



あの化け物。
表情は見えないはずのそれが、ニヤリと笑ったように見えて…………。



にこ「……っ」ビクッ



体が震えた。



691: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:12:02.61 ID:TxSbGMMGO





理事長「はあっ!!」バキッ



バイオレンス『っ、マタ……オマエッ!』



理事長の回し蹴りを受けて、少しだけ怯む化け物。
苛立ちを隠しきれないように、理事長の方を向いた。



理事長「にこさん! 離れてて!」

にこ「っ、はいっ」



震える足をどうにか動かし、車から離れる。
それを見届けた理事長は、懐から『ガイアメモリ』と『ドライバー』を取り出した。



理事長「…………気は進まないのだけど」スッ



『ジョーカー』



理事長「変身っ!」



『ジョーカー?』



理事長が『ガイアメモリ』を『ドライバー』に差し込むと、また音が鳴り響く。
そして、



ジョーカー『…………さぁ、今度こそ決着をつけましょうか』




また灰色の『仮面ライダー』に変身した。



692: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:23:54.41 ID:TxSbGMMGO


バイオレンス『ホントウニジャマ……』

ジョーカー『…………少し痛くするけれど、我慢ーー』



バイオレンス『ガァァァッ!!』バッ



ジョーカーの言葉を待たずに、化け物が突っ込んでくる。
それを躱すジョーカー。



ジョーカー『…………っ』

バイオレンス『ウゴクナ!!』

ジョーカー『……それは出来ない相談ーー』



ジョーカー『ーーねっ!』バキッ

バイオレンス『グッ……!?』



化け物が体勢を整えた瞬間に、ジョーカーの拳が腹部を捉えた。
前の戦いでも、効いた場所。
装甲の薄い部分になら、攻撃は通るみたい。

と、ここで、ジョーカーがメモリを抜いて……。
って、決めるつもり?



ジョーカー『…………っ』



『ジョーカーマキシマムドライブ』


バイオレンス『ッ!?』



前の時よりも化け物はピンピンしてるのに……?
なに?
なにか焦ってる?



ジョーカー『ライダー……キック』ダッ



ジョーカーが跳ぶ。
跳んでーー




バイオレンス『アァァァァッ!!!』ブンッ

にこ「っ!? 危ないッ!!」

ジョーカー『!?』




ーー バキィィィッ ーー




ーー落とされた。



693: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:33:39.06 ID:TxSbGMMGO



ジョーカー『が…………っ!?』



ジョーカーが転がる。
化け物の腕の鉄球をもろに受けてーー。

そして、変身が解けた。
『ドライバー』と『ガイアメモリ』が転がる。



にこ「理事長っ!!」

理事長「っ、はっ……あっ……」



にこの目に写るのは、血を吐き、胸を抱えて苦しむ理事長の姿。

って、え……?
な、なんで……?



にこ「っ、理事ーー」

理事長「ダメよっ……っ」



理事長「あなた……はっ……うごかな、で……」



にこ「っ」



息絶え絶えに、そう言う理事長を見て。
私の足は完全に止まってしまっていた。



バイオレンス『……………………ハ、ハハハ』



笑い声。

それが怖かった。
助けなきゃ、そう思っても……。
足が動かなかった。



にこ「は、はっ……は……」



息が乱れる。
体の震えも、また……。



694: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:43:25.98 ID:TxSbGMMGO



バイオレンス『ジャマモノハ……モウイナイ……』

バイオレンス『コレデ、ヤザワニコヲーー』



バイオレンス『ーーケセル』



ケセル。
消せる。

それは、にこを殺すってこと?



にこ「は、はっ……はぁ……っ」



にこが何をしたの?
なんでにこが……?




理事長「…………っ、やめ、さい……」ガシッ


バイオレンス『…………ハ?』



気づけば、理事長が化け物の足を掴んでいた。
血だらけの体を引き摺ってまで、止めようとしていた。



バイオレンス『…………ナンデソコマデ……』



化け物も同じことを思ったんだろう。
理事長を見下しながら、そう呟いていた。

それに、理事長は答える。
ぜぇぜぇと荒い呼吸をしながら。



理事長「生徒を、まもる、のは……きょう、し、役目……よ」

バイオレンス『……ヤザワニコハ……モウアナタノセイトジャ……』

理事長「…………私が、まも、るのは……にこさんだけじゃない……」





理事長「……あなたも、よっ」






704: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:52:07.77 ID:TxSbGMMGO



にこ「…………え……?」



あなたも。
理事長は化け物を見て、そう言った。

それはつまり、



バイオレンス『………………そう』

バイオレンス『バレていたんですね』



「…………私のこと」



化け物が姿を変える。
人間に。
そこにいたのは、音ノ木坂の制服に身を包んだ女の子だった。

その娘には、見覚えがあった。



にこ「あ……あなた……アイドル研究部の…………?」



「……はい。今年入学した1年生です」



彼女はニコリと笑顔を見せた。
何処か危うさを感じる笑顔だ。



「矢澤にこ先輩」

「私のことを知っていてくれたんですね!」

「光栄です!」

V「あ、勿論、名前まではご存知ないですよね! 私のことは……『V』でいいですよ♪」



メモリの頭文字です。

そんなことを言う彼女が不気味だった。



718: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 22:58:45.87 ID:TxSbGMMGO




にこ「あ、んた……」

V「はい?」



体の震えをどうにか抑えて彼女に声をかける。
不気味、ではあったけど、さっきよりは話が通じそうだと思ったから。



にこ「なんで、あんなこと……」

V「……あんなこと? あぁ! 部室のことですか」

にこ「っ、そ、そうよっ!」

V「んー、あれはですね……」



V「μ'sが何も残してくれなかったからですよ♪」



にこ「は……?」

V「聞こえませんでした? 先輩方がなにも残してくれなかったからです」



意味がわからない。



V「意味がわからない、って顔ですね」

にこ「っ」



内心を読まれたようで、少し体が跳ねた。

分からないようなら、お教えしますね。
そう言って、彼女は一人語り始める。



738: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:07:21.83 ID:TxSbGMMGO


V「私、μ'sに憧れていたんです」

V「2年前、μ'sのライブを見て、すごいなって思って」

V「ずっと憧れてた。そして、思ってた」




V「いつかμ'sに入るんだって」




V「……でも、μ'sはおしまいになった。先輩たちの卒業と一緒に」

V「…………でも、それはしょうがないって思ったんです」

V「μ'sの皆さんが決めたことだからって」

V「幸い、私が入学するときには、まきりんぱなのお三方と一緒に活動できますから。それまでは我慢するんだって、自分を納得させたんです」

V「伝説のスクールアイドルのメンバーと一緒に活動できるんだからって」



V「でも、私が入学したとき」

V「三人はもうμ'sじゃなかった」

V「その片鱗も感じなかった」



V「…………だから、私は思ったんですよ」




V「あのμ'sをダメにしたこんな場所はいらないッ!」

V「それにダメになったμ'sもいらないってッ!!」





750: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:19:11.13 ID:TxSbGMMGO



身勝手だ。


そう思った。
思っていたのと違うから壊そうとしている。
そんなこと、ふざけてる。

でも、同時に感じた。
思ってしまった。

たぶん、ううん。
彼女をこうしてしまったのは、間違いなく……。



にこたちの決断のせいだ。



にこ「…………」



なんだろう……。
モヤモヤ……する。



V「ねぇ、先輩?」

にこ「っ」

V「消えてください」



その声で、にこは現実に引き戻された。
そうだったわ。
今の状況は……。



『バイオレンス』



『ガイアメモリ』。
理事長のものとは形の違う、禍禍しい『それ』を彼女は自分の右の掌に差し込んだ。
そして、姿が変わっていく。



バイオレンス『ふふっ♪』



無数の凹凸と自らを守る鋼の鎧。
それは、にこたちが歪めてしまった彼女自身の心を現してるようで……。



にこ「……っ」



心が痛む。



769: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:24:25.83 ID:TxSbGMMGO


バイオレンス『ねぇ、にこ先輩』

バイオレンス『『ガイアメモリ』って、使った人の人格をどんどん壊してくらしいんですよ』



にこ「……っ」



……なるほど。
それで理事長は焦ってたのね。
彼女を守ろうとして……。



バイオレンス『でも、私はそうは思いません』

バイオレンス『だって、こんなにクリアなんですよ?』



バイオレンス『私はこんなにもμ'sを壊したいって思ってる♪』




にこ「っ、あんた……」



言ってることが滅茶苦茶だわ。
これが『ガイアメモリ』の……。



バイオレンス『ねぇ、にこ先輩』



っ!?

そうだ!
今は考えてる場合じゃない!
今は…………!



バイオレンス『壊させてくださいねッ!!』



ーー ブンッ ーー






772: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:25:08.62 ID:TxSbGMMGO





ーー ギギギギギィィィィ ーー






786: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:29:48.22 ID:TxSbGMMGO

爆音。
それがバイクの音だと気付いたのは、バイオレンスが吹き飛んだ後だった。



理事長「っ、にこさ、んっ……」

にこ「っ!!」



理事長の声と同時に、にこは理事長の方へ走る。
そして、理事長を抱えて、




「乗って!!」



バイクと共に現れたその人物の指示に従った。
理事長をどうにか抱きかかえ、



「出すよっ!!」



謎の人物に身を預けた。



ーーーーーー



789: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:30:25.17 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



798: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/01(火) 23:36:07.96 ID:TxSbGMMGO

ーーーーーー



にこと理事長を乗せて。
そのバイクはしばらくすると止まった。

そこは見慣れた場所。
とある和菓子屋だった。



???「……ふぅ! 危なかったね!」

にこ「…………あんた」

???「あぁ!! まずは理事長の手当てが先かなっ」

にこ「えぇ……でも、その前に……」

???「そうだった!」



そう言って、彼女はヘルメットを脱いだ。

彼女の素顔は懐かしいもので。
こんな状況だというのに、変わらないあの笑顔でーー





穂乃果「久しぶり! にこちゃん!」





高坂穂乃果は、にこの名を呼んだ。




ーーーーーー



809: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:11:48.24 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



理事長の手当てをした後。
にこは改めて穂乃果と向き合っていた。



穂乃果「ほんと、久しぶりだね」

にこ「そうね。とは言っても、あんたが卒業してまだ一年よ?」

穂乃果「うん。そうなんだけどね」



色々あったから、なんだか久しぶりな気がしちゃって。
穂乃果はそう言って、笑う。



にこ「ふぅ」

にこ「……それで」



ひとつ息を吐いてから、本題を切り出すことにする。
本題。
そう、『ガイアメモリ』のことだ。



にこ「穂乃果もあの化け物のこと知ってたの?」

穂乃果「…………うん」



穂乃果はコクリと頷く。



にこ「…………なんで」

穂乃果「理事長から頼まれてね。色々と調べてたんだ」

にこ「……なんで、あんたにそんなこと……」

穂乃果「…………あはは、ちょっとね」

にこ「……………………」



にこの質問を誤魔化すように笑う穂乃果。

この反応。
穂乃果にも、なにかあったのかもしれない。



813: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:21:20.24 ID:k64ZgDLGO

にこが卒業してから今まで。
1年生組……って、もう1年生じゃないか。
とにかく、真姫ちゃんや凛、花陽とは連絡をとってはいたけれど、あまり穂乃果たちには連絡をしていなかった。
海未は実家のことで、ことりは海外留学の準備とかで忙しかったから。

ただ。
穂乃果とはなぜか連絡がつかなかった。

何をしているのか、とは思ってたけど。



にこ「まさか、こんな形で再会するとはね……」

穂乃果「あはは……」



2年ぶりの再開が、化け物から助けてもらった場面なんて。
ビックリを通り越して、あれね。
スピリチュアル。




穂乃果「それで、にこちゃん! 本題なんだけど!」



と話が逸れそうになったところを、穂乃果の一言で本題を思い出す。
そうそう。
『ガイアメモリ』のことだったわね。



穂乃果「……『ガイアメモリ』のことは」

にこ「理事長から大体は聞いたわ」

穂乃果「『仮面ライダー』のことも?」

にこ「えぇ」

穂乃果「そっか。じゃあ、話が早いかな」

にこ「?」



穂乃果はそこで、懐からあるものを取り出した。
赤色の……って!



にこ「それ……!」

穂乃果「うん」



穂乃果「『ロストドライバー』」

穂乃果「『仮面ライダー』になるための道具だよ」





816: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:31:42.33 ID:k64ZgDLGO

『ロストドライバー』
『仮面ライダー』の変身アイテム。
って、ことは?



にこ「穂乃果も……?」

穂乃果「………………ううん」



これは理事長から預かってるスペアだよ。

にこの問いに首を振り、穂乃果はそう答えた。
スペアって……?



穂乃果「……万が一、理事長が変身できなくなったときのためのね」

にこ「っ」



穂乃果の言葉で思い出す。
隣の部屋で休んでいる理事長の様子を。
今でこそ落ち着いてはいるけれど、見ていられなかった。
息も絶え絶えで、血も……。



にこ「……っ」



穂乃果「…………」



穂乃果は『ガイアメモリ』によるダメージは普通の医学じゃ治せない。
本人の回復力に任せるしかないって言っていた。

だから、もしかしたらっ……!



穂乃果「大丈夫」

穂乃果「きっと」


にこ「…………穂乃果」



まるで、にこの心を読んだかのようにそう言う穂乃果。

…………うん。
今は不安がるより……穂乃果を信じましょう。



819: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:40:58.61 ID:k64ZgDLGO



にこ「それで……?」

穂乃果「へ?」

にこ「…………へ、じゃなくて」



それよ、それ。

そう言って、にこは穂乃果が取り出した『ロストドライバー』を指差した。
そして、訊ねる。



にこ「なんで、それをわざわざ取り出したのよ?」

穂乃果「…………」



にこの質問。
けれど、穂乃果は答えない。



にこ「穂乃果……?」

穂乃果「うぅ……あのね」

にこ「うん?」

穂乃果「理事長はたぶん……戦えない」



まぁ、そうよね。
あの怪我じゃ戦うなんて……。

穂乃果は頷く。
そして、

でも、あの化け物……『ドーパント』は倒さなきゃいけない。

と、そう続けた。

それも……分かる。
あのVって名乗った娘は、にこたちを消そうとしていた。
このままだと、いずれ……。



穂乃果「だからね! にこちゃん!」




穂乃果「にこちゃんが戦ってくれないかな?」




にこ「は…………?」



821: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:49:44.87 ID:k64ZgDLGO



にこ「な……なに、言ってんのよ……?」



にこが戦う?
そんなことできるわけ……。



穂乃果「『ガイアメモリ』には適合率っていうのがあってね」

穂乃果「理事長と『ジョーカー』のメモリはそれがすごく低かったんだ」

穂乃果「だから、灰色になっちゃってた」

穂乃果「だけど……」



穂乃果はそこで言葉を区切って、にこを見る。



にこ「にこは……それが、高いって……言うの……」

穂乃果「うん」



穂乃果は頷く。
そして、まっすぐに見つめてくる。



にこ「っ、そんなの、にこ以外にも高い人はいるんじゃないの……?」

穂乃果「かもしれない」

にこ「穂乃果は……」

穂乃果「穂乃果じゃダメなんだ。理事長よりも低くて、灰色どころじゃなくなっちゃう」

にこ「……なら、他の……」



穂乃果「……にこちゃん……」




まっすぐ、見つめてくる。

にこはその眼を。
頼ってくれた眼をーー



にこ「………………っ」





822: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:51:05.86 ID:k64ZgDLGO






にこ「ごめん…………」




ーー見つめ返すことができなかった。




ーーーーーー



823: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 22:51:47.69 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



827: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:00:19.48 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー




穂乃果「当たり前だよねぇ……」



にこちゃんが帰ったあと。
穂乃果は部屋でそう呟いた。


普通、そうだよね。
『ドーパント』に実際に襲われて、理事長が怪我するのを見てるんだもん。
怖くて仕方ない。

……うん。
穂乃果だって、そうだったもん。



穂乃果「感覚が麻痺してるよぉ……」



…………とにかく。
にこちゃんをこれ以上巻き込めないし、後は穂乃果ができる限り動こう!

にこちゃんにも、居場所が分かるようにGPSは常にONにしてもらってる。
他のみんなにも連絡して……っと。



穂乃果「よし! これでよし!」



海未ちゃんは心配要らないだろうし。
ことりちゃんも……うん。

あの娘……Vちゃんだっけ。
あの娘が狙うとしたら、穂乃果たち以外の他の6人のはず。

……………………。



穂乃果「……バイクで回ってこよっかな!」



うん!
考えるより行動だ!

穂乃果はバイクの鍵を手に、家を飛び出した。



ーーーーーー



828: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:01:06.45 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



831: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:15:07.99 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



花陽「…………あれ?」

真姫「どうかしたの? 花陽?」

花陽「……あ、えっと」チラッ



希「よし! ウチの勝ち!!」

凛「またまけたぁぁ!!」

希「ふっふっふっ、凛ちゃん、海未ちゃんの次に弱いんやない?」

凛「にゃにゃ!?」



花陽「ちょ、ちょっと、お花摘みに……」クルクル

真姫「……そ」

花陽「う、うん……」スッ



凛「次はコテンパンにしてやるにゃ!!」

希「臨むところやね!」



絵里「…………ねぇ、真姫?」

真姫「ん、なに?」

絵里「犯人、まだ捕まらないのかしらね」

真姫「理事長からも連絡ないし、まだでしょうね。……なぜか穂乃果から連絡はあったけど」

絵里「あぁ、なにかしらね。GPSをONにしておいて、なんて」

真姫「さぁ?」

絵里「…………って、そういえば花陽は?」

真姫「……花摘み」

絵里「そう」



834: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:25:58.07 ID:k64ZgDLGO


凛「またまけたぁぁぁ!!」

希「圧勝!!」

凛「うぅぅぅぅ、かよちーーーん!!」

凛「………………にゃ?」



凛「……って、あれ?」



凛「真姫ちゃん、かよちんはー?」

真姫「花摘み」

凛「?」

真姫「……お手洗い」

凛「あー」

絵里「……でも、少し遅いわね」

希「調子悪いんかな?」

真姫「……かもね」



真姫「なんか、もじもじしてたし」



凛「……もじもじ……?」

凛「……………………」

凛「ね、ねぇ、真姫ちゃん!!!」

真姫「ヴぇぇぇ!? な、なによ!?」

凛「もしかして、それって……!」


凛「こんなの!?」クルクル


真姫「そ、それよ。なんか指くるくるさせてたわ」

凛「っ!?」スッ

絵里「凛! どこに行くの!?」



凛「それ! かよちんが嘘つくときの癖にゃ!」



真姫「……え?」

希「えりち、玄関行ってみよ」スッ

絵里「っ、そうね!」




凛「っ」ダッ


真姫「凛っ!」




なんだろう。
すごく嫌な予感がする……。



ーーーーーー



835: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:30:21.50 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



To 花陽先輩

お話ししたいことがあります。
μ'sの皆さんに関わることなんです。
今から音ノ木坂まで来てもらえませんか?



ーーーーーー



836: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/10(木) 23:31:33.17 ID:k64ZgDLGO

ーーーーーー



一人目はあなたですよ

小泉花陽先輩♪



ーーーーーー



847: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 21:43:22.64 ID:d1rl4USyO

ーーーーーー



にこ「はぁぁぁ……」



穂乃果の家からの帰り道。
にこは深いため息を吐いた。
そして、呟く。



にこ「戦えるわけないじゃない」



戦ってほしい。

そう言う穂乃果のお願いを、にこは断った。
当然よ。
あんな化け物と戦うなんて……。



にこ「…………」



「μ'sが何も残してくれなかったからですよ♪」

「あのμ'sをダメにしたこんな場所はいらないッ!」

「それにダメになったμ'sもいらないってッ!!」

『ねぇ、にこ先輩』

『『ガイアメモリ』って、使った人の人格をどんどん壊してくらしいんですよ』

『でも、私はそうは思いません』

『だって、こんなにクリアなんですよ?』

『私はこんなにもμ'sを壊したいって思ってる♪』



ふと、彼女の言葉を思い出す。
『ガイアメモリ』でおかしくなってしまった彼女の言葉を。

おかしい。
そこまで頭のよくないにこでもその論理が破綻してることは分かる。
幼稚で、身勝手な感情。
それが『ガイアメモリ』の副作用……ってやつなのね。



にこ「…………でも」



でも。
……その先に言葉は続かない。
続けたくない。


おかしくなってしまった原因は間違いなく『ガイアメモリ』。
だけど、そのきっかけは……。



にこ「分かってるわよ」






851: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 21:53:16.68 ID:d1rl4USyO



花陽たちが下手になった、わけじゃない。


経験を重ねるに連れ、年々パフォーマンスの質は上がってる。
ダンスだって、歌だって、確実に2年前よりも上手くなってる。

でも、μ'sの時と比べると、やっぱりなにかが足りないように感じてしまうのも事実だった。
だから、彼女の言うことも少しは理解できる。

……ほんの少しだけ。



にこ「…………はぁ、なんでこうなるのかしら」



ポツリ。
空を見上げて呟く。
力のない、弱々しい呟き。



にこたちはμ'sを最高の形で終わらせた。
スクールアイドルがさらに羽ばたけるように力を合わせてあの歩行者天国のライブだってやったつもりだった。
実際、あれから2年が経った今でもスクールアイドルは人気のまま。

だから、にこたちの選択は正解なんだとずっと思ってた。



みんなを笑顔にできたんだって。






852: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 21:56:40.67 ID:d1rl4USyO




にこ「………………でも」



実際、一人が道を踏み外しかけてる。
にこたちの選択が一人の女の子を、化け物に変えてしまった。



にこ「………………」



そして、にこはその娘を救うのを拒否した。



にこ「ごめんね……」



謝っても無駄なのは分かってる。

けれどーー



853: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:02:35.26 ID:d1rl4USyO




ーー prprprprpr ーー




にこ「っ!?」



無機質な音が鳴る。

って、スマホ……?
鞄から取り出して、画面を見ると、そこには「星空凛」の文字が。



にこ「……凛?」



頭に疑問符が浮かんだ状態のまま、通話ボタンを押した。
途端に、




凛「にこちゃんっ!!」

凛「かよちんと一緒じゃない!?」




凛の大声が鳴り響いた。



にこ「っ、うっさい!」



そう言い返す。
あー。
耳がキーンってしてる……。
そんなにこのことはお構い無しで、凛は息を切らせながら、更に続けた。




凛「かよちんがいなくなったのっ!!」






858: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:06:25.40 ID:d1rl4USyO



にこ「!?」



凛の声から、それを想像するのは1秒もかからなかった。

あの娘、花陽を呼び出してっ!!



にこ「一旦切るわ!!」

凛「えっ、な、なんで……!?」

にこ「花陽の居場所、穂乃果に聞くから!!」

凛「なんで、穂乃果ちゃーー」



凛の返事を聞く前に電話を切る。
そして、そのまま穂乃果の番号へ。

………………。

…………。

……!



にこ「穂乃果!」

にこ「今すぐ花陽の居場所教えなさいっ!」

にこ「今すぐよッ!!!」




ーーーーーー



859: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:07:29.50 ID:d1rl4USyO

ーーーーーー



863: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:16:04.10 ID:d1rl4USyO

ーーーーーー




ーー ガチャッ ーー




花陽「っ、眩し……」



音ノ木坂学院の屋上。
その扉を開けたのと同時に、花陽の目に飛び込んできたのは、夕日のオレンジ色だった。
そして、次に見えたのは……。



V「来て、くれたんですね」



彼女だった。



花陽「どうかしたの?」



突然メールくれたからビックリしたよ。

そう続けると、彼女は微笑んだ。



V「ごめんなさい。お話があって」

花陽「お話…………メールに書いてあったね」

V「はい♪」

花陽「μ'sのこと、だっけ?」

V「…………はい」



花陽「………………」

V「………………」



そこで一旦会話が終わって、沈黙が流れる。
彼女の表情は夕日のせいで、見えないけど……。





V「花陽先輩」






867: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:22:51.46 ID:d1rl4USyO

話を切り出したのは、彼女から。



V「私がアイドル研究部に入部したときのこと覚えてますか?」

花陽「……覚えてるよ」

V「………………本当ですか?」

花陽「…………うん」

V「……じゃあ、私が自己紹介で言ったこと覚えていますか?」



……うん。
覚えてる。



花陽「μ'sが大好きです」

花陽「花陽先輩たちと活動できるのがすごく嬉しいです」



花陽「…………だよね」



覚えてるよ。
言葉は普通だった。

だけど、この娘の目がすごくキラキラしてたから。
すごく印象的だった。



V「……フフッ、流石ですね」

花陽「ありがとう」



わたしだけじゃない。
きっと真姫ちゃんも凛ちゃんも覚えてると思う。
そのくらい、好きなんだってことが伝わってきたから。



872: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:30:01.47 ID:d1rl4USyO

V「…………本当に」

V「本当に嬉しかったんです」


花陽「そっか」



μ'sに憧れて、ずっと追いかけて。
やっと一緒に活動できるようになった。
その時の私の気持ち、分かります?

屋上のフェンスを、指で弾きながら彼女は歩く。

カツン。
カツン。
響く音を鳴らしながら歩いてく。
歩いて、語る。



V「凛先輩は楽しくて、でも、頼れるリーダーで」

V「真姫先輩はちょっと怖いけど、優しくて」

V「花陽先輩は……」



V「………………」

花陽「…………花陽は……?」



V「花陽先輩は……いつも優しくしてくれて」

V「話してるとあったかくて」

V「そして」



V「私のことをよくみてくれました」



花陽「そう、かな?」

V「そうですよ」

花陽「そっか……」

V「……だからね、花陽先輩……私は……」




V「…………私は先輩たちが大好きなんですっ」






873: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:35:48.35 ID:d1rl4USyO

その声。
それはあの時ーー彼女が入部したとき聞いたその声と一緒だった。
本当に嬉しそうな、大好きだって思いが伝わる声色。



花陽「…………うん、うれしい」

V「っ、私もです……」



でも、あれ?
……なんで……?
なんでーー



V「でも、ね……先輩……」

V「だめ、なんです……」

V「私、決めたんです……」

V「真姫先輩も、凛先輩も」


V「そしてーー貴女もッーー」




『コワサナキャイケナインデス』




花陽「っ、え……?」



変わった。
声色が、雰囲気が……。



878: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:43:18.03 ID:d1rl4USyO


V「入部してしばらくしてから、μ'sのPVを見て」

V「違和感があった」

V「なんだか、違うって……」

V「勿論、分かってた。違うことは」

V「でもーー」

V『ユルセナクテ』

V「受け入れました。違うのは当たり前だって」

V『ナンデチガウノ? μ'sハドコニイッタノ?』

V「花陽先輩たちはこの2年間で」

V『カワッタコトガユルセナイ』

V「だから……私はーー」

V『ケサナキャ』

V「違うっ! 私はーー」

V『ダメニナッタナラコワサナキャ』

V「違うッ!! そうじゃないっ」

V『ダメニナッタμ'sハ』




『ミーンな、殺さナキゃ♪』




『バイオレンス』




バイオレンス『フフッ♪』



883: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:50:42.54 ID:d1rl4USyO



花陽「……え、え……な、なんで……?」



彼女が姿を変えた。
怪物に……。
ネットで見たことある。

『ドーパント』

たしか、そんな名前だった。
でも、え?
なんで、この娘が……?



バイオレンス『ア、ははは♪』

バイオレンス『最高ッ! サイこウよっ!!』

バイオレンス『いイ気分だワッ♪』



変身した彼女は、花陽の前で笑い続ける。

最高の気分。
そう言う彼女の声は…………。




花陽「苦しい……の?」




気付いたら、わたしはそう言っていた。
エコーのかかったような彼女の声を聞いて、花陽はそう聞いていた。



バイオレンス『……ハァ?』

バイオレンス『なに言っテるんでスカ?』

バイオレンス『私ハ今、すごクさいコウの気分なんデスよ?』

バイオレンス『だっテ』



バイオレンス『今かラ、花陽セんぱイをこの手で…………』



花陽「っ」



886: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:58:20.97 ID:d1rl4USyO

花陽は。
花陽は弱くて、びびりんぼだから。
弱い人の気持ちが分かる。

勿論、全部はわからないけど。
でも、少なくとも苦しいよって気持ちだけは分かるつもり。

だって、花陽はその気持ちを、μ'sに入るまでずっと抱えてたから。

だから、分かる。
今、彼女はーー



花陽「苦しい……よね」

バイオレンス『っ、な、ナにを……?』

花陽「ごめんね……」



ずっと見てたのに……。
貴女がどこか悩んだような表情で、花陽たちを見ていたことは知ってたのに……。

見てたつもり、だった。
もっと声をかけて、もっと話してたら……。



花陽「っ、ごめんね……」




バイオレンス『謝らないで、ください、よ』

バイオレンス『私はーー』




バイオレンス『ーー貴女を殺すんですから♪』




ーーーーーー ブンッ ーーーーーー






887: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 22:59:53.81 ID:d1rl4USyO

ーーーーーー




にこ「花陽っ!!!」バッ




ーーーーーー



892: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:08:01.92 ID:d1rl4USyO



バイオレンス『っ!?』


花陽「っ」

にこ「は、くっ」



間一髪。
飛び込んで、花陽を抱きかかえながら、あいつの鉄の拳を躱した。
そのまま、転がって、距離を取った。



にこ「はっ、はっ……はぁ……」



か、躱せた……っ!
っ、ぶなっ!!



穂乃果「にこちゃん! 花陽ちゃん!」



遅れて穂乃果。
にこたちとあいつの間に、バイクをつける。



穂乃果「バッドショット! スタッグフォン!!」


『バッド』
『スタッグ』


バイオレンス『!?な、ナニこれ!?』

穂乃果「よしっ!」



あいつは穂乃果に任せて……今は!



にこ「花陽! 大丈夫!?」



花陽よ!
間に合った、とは思うけど、怪我とか……?

そう思って、花陽を見ると、花陽はーー




花陽「にこ、ちゃん…………っ」




ーー泣いていた。



893: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:12:06.26 ID:d1rl4USyO



にこ「っ、大丈夫よっ!」



ぎゅっと。
強く抱きしめる。

そうよね。
怖かったわよね。

にこは一回襲われてるから、その気持ちが痛いほどよく分かる。
本当に、怖かった。
だから、今はーー



花陽「ち、ちがうっ、の!」

にこ「え……?」



花陽から返ってきたのは、予想とは違う言葉。
そして、スッと離れた。




花陽「怖い思い……辛い思いしてるのは……あの娘だよっ」




花陽の指差す先。
そこには、化け物に姿を変えたVがいた。



897: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:18:22.41 ID:d1rl4USyO


にこ「……あの娘って……」

花陽「うん……だって、あの娘はμ'sが好きで、わたしたちのことが好きで、アイドル研究部が好きで」




花陽「なのに、壊そうとしてるっ!!」

花陽「そんなのって…………辛いよ……」




にこ「……………………」




花陽の言葉を聞いて、思い出す。



それはμ'sを終わらせたときのこと。

にこたちは大好きで。
でも、それはずっとは続かないもので。
にこたちの卒業と同時に、μ'sはおしまいになった。



好きなものを好きなままおしまいにする。



それはーー




にこ「…………確かに、辛かったわよね」






898: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:26:43.20 ID:d1rl4USyO

ふと、彼女の方を見る。



バイオレンス『あぁぁぁっ!!』ブンッ

穂乃果「っ、やっぱりこれだけじゃダメか……」




バイオレンス『はやク、はヤク壊サナキャっ!!!』




鉄の拳を振り回すあの娘の姿は、確かに苦しんでいるように見えた。
それは多分気のせいじゃないはずよね。



花陽「ねぇ……にこちゃん……」

にこ「…………なに?」

花陽「あの娘、助けられないのっ……!?」

にこ「助ける……」



方法はある。
そう聞いた。
理事長も穂乃果も言っていた。

『マキシマムドライブ』で『ガイアメモリ』を体の外へ排出し破壊する。
『メモリブレイク』ーーそう言った。

それが彼女を助ける唯一の方法。



にこ「………………」



でも、それはつまり、



にこ「変身…………」ボソッ



しなくちゃならないってこと。

穂乃果は変身できないって言ってた。
かといって、花陽にさせるわけにはいかない。
……残りは……。




にこ「……………………っ」



ダメ……よ。
にこじゃ……にこは…………。



905: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:33:52.45 ID:d1rl4USyO




花陽「にこ……ちゃん……」

にこ「っ、花陽……っ」



にこの思考を遮るように。
花陽はにこの手を握った。

握った手にぎゅっと力を込めて。
涙を流しながら。

花陽はこう言った。



花陽「お願いっ、にこちゃんっ……!」

花陽「もし、助ける方法しってるならっ……っ」

花陽「っ」

花陽「あの娘は、わたしたちのファンなの……っ!」

花陽「花陽は……ファンを、大事な後輩を……っ、泣かせたくないの」

花陽「ねぇ、にこちゃんっ」

花陽「花陽じゃできないからーー」




花陽「あの娘を『笑顔』にしてっ」

花陽「……たすけてっ!!」




にこ「ーーーーーーーー」




花陽のその言葉で。
その涙で。




ーーーーーー カチリッ ーーーーーー




何かがはまった音がした。




ーーーーーー



908: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/13(日) 23:37:31.93 ID:d1rl4USyO

ーーーーーー



にこ「花陽」

にこ「ここで待ってなさい」



にこ「…………」



にこ「にこはプロよ」

にこ「プロのアイドル」

にこ「アイドルの仕事はなに?」

にこ「……そ」




にこ「ファンを最高の『笑顔』にさせること」




にこ「だからーー」




にこ「ーーいってくるわ」




ーーーーーー



918: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 14:54:16.57 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー




バイオレンス『……もう、終ワリ……?』

穂乃果「っ……このままじゃ……って! にこちゃん!?」



にこ「………………」



穂乃果より一歩前。
一歩分、彼女に近づく。
大きく踏み込めば、彼女に届く距離。



バイオレンス『ヤザワ……にコ……』

にこ「……ねぇ、あんた」

バイオレンス『?』

にこ「ひとつ聞いてもいい?」

バイオレンス『なニ?』



にこ「あなた、μ'sのファンなのね」



バイオレンス『μ's……ふァン? あ、そウネ、ファん』

バイオレンス『私ハ、μ'sが大好キだかラ』

バイオレンス『だかラ、コワサなきャ!!!』ガンッ


穂乃果「っ! メモリに飲まれてる……」

にこ「…………そう」



彼女の振るう鉄の拳の音。
あんなに恐ろしかったその音が……今は怖くない。

助けを求めてる。

今のにこにはそうとしか聞こえなかった。



919: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:10:10.61 ID:iaRwcW30O

にこ「穂乃果、『ドライバー』と『メモリ』貸しなさい」

穂乃果「へ?」

にこ「はやく!!」

穂乃果「! う、うん!」スッ



穂乃果からそれを受け取る。
そして、



にこ「…………」スッ



ガチャリ、と。
機械音が鳴った。
そして、腰回りに感じる重さ。
服越しにも機械の冷たい温度を感じた。



にこ「…………」

バイオレンス『……なニを……?』



深く息を吸い込む。
目も閉じて。

1。
2。
3。
……3つ、数えて、それから目を開ける。
数えたのは、時間だけじゃない。



にこ「1つ」

にこ「にこたちの決断でファンであるあんたを『ドーパント』にしてしまった」


にこ「2つ」

にこ「戦う覚悟をもてなかった」


にこ「3つ」

にこ「そのせいで、沢山の人の『笑顔』を守れなかった」



バイオレンス『……ナにを言っテルんですかっ!!』

にこ「…………」



いつか見た、『仮面ライダー』の真似事。
けれど、これが、今のにこにできる精一杯のこと。

今からにこは。
アイドルで……『仮面ライダー』!!



にこ「私は自分の罪を数えたわよ」




にこ「さぁ」

にこ「お前の罪を数えろ」






920: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:14:20.95 ID:iaRwcW30O





『ジョーカー』




にこ「変身!!!」



『ジョーカー!!』







921: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:31:23.26 ID:iaRwcW30O

理事長が変身したのと同じ音。
気づけば、にこの視界は変わっていた。



穂乃果「……黒い、ジョーカー……」



穂乃果の一言で、それを察する。
これが……。



ジョーカー『仮面ライダー、なのね』



バイオレンス『っ!! なんデ!?』

ジョーカー『……あんたを助けるためよ』



目の前で変身したにこを見て、混乱した様子の彼女にそう答える。

約束したから。
大事な後輩に。

それに、



ジョーカー『ファンを『笑顔』にするのが、アイドルだから』ニッ





922: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:38:44.78 ID:iaRwcW30O


バイオレンス『~~っ、えガオ』

バイオレンス『訳ワカんないでス』

ジョーカー『…………大丈夫よ。今は分からなくてもいいわ』

バイオレンス『……ぐ、ぁ、あぁ』

ジョーカー『すぐ終わらせて、教えてあげるわよ!!』

バイオレンス『~~ッ、アァァア!!』



にこの言葉を受けて、バイオレンスが突っ込んでくる。

大丈夫よ。
すぐに終わらせるから。

……いままでは恐かった攻撃がーー



ジョーカー『ふっ!』バッ

バイオレンス『っ!? 避ケーーッ』



ジョーカー『はっ!!』



ーー バキィッ ーー



バイオレンス『カッーーっ』グラッ



避けて、さらにすれ違い様に後ろ蹴りを入れた。

うん、見える!
それに運動能力もかなり上がってるみたい!
これならーー



ジョーカー『次はこっちから!!』バッ

バイオレンス『!?』



一気に距離を詰める。
そして、ここから!



ジョーカー『らぁぁぁっ!!!』バキッ

バイオレンス『ぐ、っーー』



まずは一撃。
固く握った拳が、バイオレンスの腹を捉えた。

けど、まだ終わりじゃないわ!



ジョーカー『まだよ!!』

バイオレンス『!?』





923: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:49:07.76 ID:iaRwcW30O


ジョーカー『はぁっ!』ベシッ

バイオレンス『グっ!?』



左肩!


ジョーカー『らぁっ!!』バキィッ

バイオレンス『ぐ、ガッーー』



右頬!



ジョーカー『ーーだぁぁぁっ!!!』ググググッ

バイオレンス『ナっ!?』



ーー バキィィィィッ ーー



みぞおち!!

続けざまの三連撃で、吹き飛ぶバイオレンス。
効いてる、けど……。



ジョーカー『……っ、固いわね……』



攻撃してるこっちの手が割れそうよ……。
これは、理事長が苦戦してたのも頷けるわね。


穂乃果「にこちゃん!!」

ジョーカー『!?』



バイオレンス『ぅぅぅ、ア゛ァァァぁぁ!!!』バッ



穂乃果の声に、改めてバイオレンスの方へ向き直る。
そこには、すでに立ち上がって、雄叫びをあげるバイオレンスの姿があった。



ジョーカー『っ、効いてはいるけど……』



決定的じゃないわね。

……ふぅ。
仕方ないわ。



924: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 15:59:16.80 ID:iaRwcW30O


ジョーカー『穂乃果!!』

穂乃果「え!? う、うん!」

ジョーカー『屋上の扉の向こうに、花陽が隠れてるわ』

穂乃果「!」

ジョーカー『お願い!』

穂乃果「うんっ! 任せて!!」



……よし。
これでいいわね。



バイオレンス『……はぁ、ハっ……』

ジョーカー『……疲れてる?』

バイオレンス『あ、ハっ……まさカ……』

ジョーカー『……悪いわね。すぐに終わらせるって言ったのに』

バイオレンス『っ、だから、疲れテナんかーー!!』


ジョーカー『ふっーー』バッ



ーー ブォォォォンッ ーー


ーー ギギギギギィィィッ ーー



ジョーカー『ハァッ!!』バキィィィッ

バイオレンス『ガッーー!?』



バイオレンスの不意を突いて、共々屋上からダイブする!
屋上のフェンスを引き倒しながら。


……え?
なにしたか?

えー?
にこはぁ、ここじゃ戦いにくいから~♪
穂乃果が置いていったバイクで、バイオレンスごと、屋上からダイブしたにこっ♪


ふぅ。
穂乃果のバイクが役に立ったわね。
これで、校舎内でバイク走らせた甲斐があったわ。

……まぁ、階段もバイクで爆走したのは流石に頭おかしいと思ったけど……。



925: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:06:04.64 ID:iaRwcW30O





ーー バキィィィィッ ーー




バイオレンス『ッーーガ、はっ……!?』

ジョーカー『っ!』



ーー ギギィィィッ ーー



流石に、屋上からバイクに引かれながら叩き落とされたら効くようね!
作戦、成功にこっ!



バイオレンス『は、はっ……』

ジョーカー『っと、悪いわね。手荒なことして』

バイオレンス『ッ、この程度ッ!!』

ジョーカー『その割には、息上がってるわよ?』

バイオレンス『アァァァっ!!』



鉄拳を振りかざして、向かってくるバイオレンス。
あれ、食らったら一溜りもないわね。

……なら、



バイオレンス『ハァァアっ!!』ブンッ

ジョーカー『っ』




ーー バキッ ーー




バイオレンス『捉えタ!』





ジョーカー『ーーのは、こっちよ』グッ



926: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:13:26.43 ID:iaRwcW30O



バイオレンス『ナっ!? 腕、掴まレテ……』

ジョーカー『……痛っ……でも、捕まえたわ!』



あえて一撃を食らって、懐に入る。

チマチマ、攻撃しても効かないのは、理事長との戦いとさっきまでの攻撃で分かったから。

捕まえてしまえばこっちのもんよ!
あとは、弱点の鎧の体の隙間。

腹に叩き込む!




『ジョーカーマキシマムドライブ』



ジョーカー『食らいなさいっ!!』




バイオレンスの腕を掴んだまま、『マキシマムドライブ』を発動させる。



ジョーカー『終わりよっ!』グググッ

ジョーカー『ライダー……』





バイオレンス『い、イヤァァァッ!!』ブンッ




ジョーカー『!?』



927: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:22:22.49 ID:iaRwcW30O




ーー ブンッ ーー



ーー バキィィィィッ ーー



ジョーカー『が、はっ!?』



技を決めるその直前。
にこは振り回した鉄球で、校舎の壁に叩き付けられた。

っ、なんでよ!?
掴んでたはずなのに!

そう思い、痛む体を起こして見る。
そこには、



バイオレンス『アァァァァァ!!!!』



ーー ガンッ ーー

ーー ガンッ ーー

ーー ガンッ ーー

ーー ガンッ ーー



校庭中を跳ね回るバイオレンスの姿。
その姿はさっきまでの人型のそれと違い、体自体がまるで鉄球のようになっていた。



ジョーカー『形が変わる、とか……聞いてないんだけど……』



ボソリと呟く。
たぶん追い詰められた最後の悪あがきってやつね。

…………ふぅ。



ジョーカー『……でも、やることは変わらない』



『マキシマムドライブ』を決めて、『メモリ』を壊す。
それだけよ。



ジョーカー『ここでーー』




『ジョーカーマキシマムドライブ』




ジョーカー『ーー決めるわ!』






928: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:25:05.60 ID:iaRwcW30O





バイオレンス『アァァァ、ァァァッ!!』



狙いは定められない。
決めるのは、




バイオレンス『ガァァぁぁっ!!』



ーー ブンッ ーー




ジョーカー『ここ!!』





ーー バキィィィッ ーー







929: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:34:15.88 ID:iaRwcW30O

その一撃は、




バイオレンス『ぐ、な……』

ジョーカー『ぐ、ぅぅ……』




バイオレンスの一撃を受け止めていた。



バイオレンス『な、んで……』

ジョーカー『……ぐ、さ、さくせん、どーりよ……』



『マキシマムドライブ』でバイオレンスの渾身の一撃を受け止める。
苦し紛れの作戦だったけど!



ジョーカー『はぁぁぁっ!!』ブンッ

バイオレンス『っ!? 変形がーー』



バイオレンスが人型に戻った!
今よ!




『ジョーカーマキシマムドライブ』




ジョーカー『ライダーキック!』




跳ぶ。
そして、




ジョーカー『はぁぁぁぁぁッ!!』

バイオレンス『なっーー!?』



ーー バキィィィィッ ーー



バイオレンス『~~~~ッ』





バイオレンス『がぁぁぁぁぁぁっ!?!?』



ーーーーーー ドォォォォォォォォン ーーーーーー





バイオレンスの絶叫と共に。
着地したにこの後ろで、爆発音が聞こえた。



930: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:41:37.41 ID:iaRwcW30O





ーー パリンッ ーー


V「は、ぁ……っ」



振り向いた先にあったのは、彼女の姿。
そして、粉々に砕け散った『メモリ』。



にこ「……っ」



変身を解き、駆け寄る。
息は、ある……。



にこ「ふ、ふぅ……」



思わず、ため息が出た。


よ、良かった……どうにかなったのね。

正直な話。
殺してしまうんじゃないかとヒヤヒヤしてたのよ……。



V「に、こ……せんぱ……」

にこ「! 喋るんじゃないわよ! 今、救急車呼ぶからーー」




V「ありがと、ございま、した……」ギュッ




にこ「……え?」



携帯を取り出したにこの手を取って、彼女はそう言った。

そして、もうひとつ。

弱々しいものだった。
だけど、彼女は確かにーー




V「やっと……とまれ、ました」ニコッ




ーー確かに、笑ったのだった。



ーーーーーー



931: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:42:17.08 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー



932: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:52:17.30 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー



File.1
音ノ木坂学院アイドル研究部部室破壊事件。



『バイオレンスメモリ』使用者による破壊事件。
アイドル研究部部室及び校舎内の物品を破壊した。


『仮面ライダージョーカー』が撃破。
メモリも破壊した。


メモリ使用者は病院に搬送され、メモリによる毒素で重症ではあるが、命に別状はない。
使用者の身元等は、理事長権限により非公開とする。



ーーーーーー



尚、破壊された物については下に示す。
・アイドル研究部部室
・校舎内廊下(バイクのタイヤ痕?)
・屋上フェンス
・校舎壁面



ーーーーーー



933: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 16:59:19.07 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー



にこ「……それで、なんでにこは報告書を作らされてるんでしょうか?」

理事長「ん? なにか言ったかしら?」



理事長室にて。
にこは、理事長の代わりに報告書を書いていた。

え?
アイドルの仕事じゃないよね?



理事長「ふふっ、ごめんなさいね。『仮面ライダー』だけじゃなくて、報告書まで作ってもらって」

にこ「……聞こえてるじゃないですか」

理事長「ふふっ」

にこ「それで、なんでにこが……」




理事長「タイヤ痕」ボソッ




にこ「ぐっ……」

理事長「校舎内に残ってたタイヤ痕なのだけれど。あれ、にこさんが乗ってるバイクのものと一致してるそうなのよ」



ということらしい。



理事長「戦ってもらったのだから、修繕費を払えとは言わないけれど……ね?」



そう言って、理事長はウインクをひとつした。

それが様になってしまうんだから、恐ろしいわ。
流石、ことりの母親というか……。



934: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 17:06:57.96 ID:iaRwcW30O


にこ「…………」カタカタ

理事長「…………♪」

にこ「…………」カタカタ

理事長「……お茶が沁みるわねぇ」ズズズッ



って!



にこ「違うわよ!!」バンッ



机を叩く。

危ない危ない!
危うく流されるところだったわ!



理事長「どうかした?」

にこ「理事長! あのバイクは穂乃果のなんです!」

理事長「穂乃果ちゃんの……?」

にこ「はい!」



そうよ!
元々穂乃果が乗ってたやつだったわけだし!
そういえば、にこが持ってる『ドライバー』だって、穂乃果が理事長から渡されたものだって言ってたし!

ということは、穂乃果の行動は、理事長の指示だと言っても過言ではないわけで!



理事長「………………」

にこ「理事長……?」



そこまで言って、気付く。

理事長の表情……なにか……?



理事長「にこさん?」

にこ「なんですか……?」

理事長「穂乃果ちゃんの件なんだけどね……」

にこ「はい?」




理事長「私は穂乃果ちゃんに『ドライバー』を渡していないわ」




にこ「え……?」



935: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 17:10:54.48 ID:iaRwcW30O

え?
でも、穂乃果は確かに理事長が何かあったときのために『ドライバー』を……って。



理事長「そもそも、穂乃果ちゃんとは連絡が取れなくなっているわ」

にこ「……え、じゃあ……」

理事長「…………」

にこ「…………」



理事長「……穂乃果ちゃんがなぜ『ドライバー』を持っていたのか」

理事長「なぜ『ガイアメモリ』のことを知っているのかは分からない」



にこ「………………」



穂乃果の表情から。
確かに、なにかあったんだろうとは予想できた。
でも、本当にーー



にこ「あんた、何してるのよ」

にこ「……穂乃果」



ーーーーーー



936: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 17:12:44.09 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー



937: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 17:17:55.71 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー



『ガイアメモリ』と『仮面ライダー』

アイドルであるにこが出会った人智を超えたその出来事。
それと関わってしまったにこがその後、どうなったかというと……。



ーーーーーー



938: ◆6cZRMaO/G6 2017/08/19(土) 17:26:30.75 ID:iaRwcW30O

ーーーーーー




花陽「じ、じじ……事件ですっ!!」バンッ




真姫「」ビクッ

凛「」ビクッ

にこ「」ビクッ



花陽「にこちゃん!!」

花陽「UTXの前に鳥人間が現れたそうです!!」

花陽「ほら! 見てください! ネットはお祭り騒ぎですよ!?」



結局。
あの場にいた花陽に話さない訳にもいかず。
そして、なし崩し的に、真姫ちゃんと凛にも話すことになってしまった。

まぁ。
絵里と希には知られなかったことを幸いと思うしかないわね。

それで、



花陽「さぁ! 行きましょう、にこちゃん!」



にこ「え、えっと……」チラッ

真姫「こうなってしまった花陽を止めるのは無理ね」

凛「凛はこっちのかよちんも好きだよ♪」



花陽「にこちゃん!」

花陽「皆が『仮面ライダー』を待ってるよぉ!」



にこ「…………はぁ」

にこ「仕方ないわね」

にこ「ただし、花陽は留守番してなさい」

花陽「な……!?」



絶句する花陽を凛たちに任せて、バイクの鍵を取り出した。




にこ「…………行ってくるわ」





『アイドル』と『仮面ライダー』
にこはまだもう少し、二足のわらじを履かなきゃいけないみたい。




ーーーーーー fin ーーーーーー



元スレ
【ラブライブ】にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/
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コメント一覧

    • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2017年12月22日 19:27
    • なんか意外と面白そう
      ゆっくり読むか
    • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2017年12月22日 19:43
    • 空白多くて早く読み終わった
      読みやすさ重視したのかな
    • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2017年12月22日 21:13
    • 無駄に隙間多い

はじめに

コメント、はてブなどなど
ありがとうございます(`・ω・´)

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