発明家「洗脳マシーンを作ったから、ちょっと実験に付き合ってくれ」
発明家「お、やっと来たか被検体。遅いぞ全く」
発明家「新型のゲーム機を作ったから、家に遊びに来い」
発明家「確かにそれは俺の女性用下着だ。拾ってくれて感謝する」
登場人物
山田賢太郎 ……高校生の天才発明家。ケモナー。
呉羽夕子 ……隣に住んでいる山田の幼馴染。いつも発明品の被害に遭う人。
コタロー ……夕子の弟。小学1年生。
西島はるか ……夕子の友人。
木下りつこ ……夕子の友人。
鬼瓦慎吾 ……呉羽FC(ファンクラブ)のボス。夕子のためなら命を捨てる。山田のことは死ぬほど嫌い。
鮫島雄太 ……呉羽FCのアンダーボス。入学以来、夕子に一途。山田のことは死ぬほど嫌い。
不動大介 ……呉羽FCの幹部。夕子が好きでたまらない。山田のことは死ぬほど嫌い。
――――――
夕子「その前に一緒に交番に行こうぜ?」ガシッ
山田「べ、別に交番に用なんかないだろ……」アセアセ
夕子「いーや、あるね。幼馴染があたしを洗脳しようとしてんだぜ? ちょっとお巡りさんと相談くらいしたっていいだろ?」ホライクゾ
山田「やめろ! 俺はお前を洗脳して変なことする気なんて毛頭ない! ただ俺の洗脳マシーンで、人はどこまで言うことを聞くのか試したいという純粋な知的好奇心が!」
夕子「うるせえサイコ野郎! あんたは一度冷たい監獄の中で、良識とは何かを考えてこい! あ、ちょうどパトロールしてるのがいた! おーい!」
警察「ん? どうかしたのかい?」
山田「いえ、別に何も問題はありません」カチッ ピー
夕子「実はこいつが洗脳マシーンとかいう物騒な代物を作ったそうなんです!」
警察「いや、別に何も問題はないよ。それより洗脳と言えば、最近怪しげな宗教団体に洗脳されてどこかに消え去る集団失踪事件が起こっているから気をつけるんだよ」
夕子「いや、大問題でしょーが! その犯人こいつかもしれないし! だめだ、別のお巡りさんのとこに行こう」グイッ
山田「お前は実験に協力したい」カチッ ピー
夕子「あたしは実験に協力したいんだ。ほら、さっさとあんたの研究所に行くぞ!」グイグイッ
山田(なんてすばらしい性能なんだ)ニコッ
***
研究所
山田「実験に協力してくれて感謝する。これが今回発明した洗脳マシーン『オビディエンス』だ」ガシャッ
夕子「なんだ、洗脳マシーンってこの銃みたいなやつか……。てっきりもっと大きな装置かと」
山田「試行錯誤の末、持ち運びが可能なまで縮小することに成功したのだ。相手に照準を定めて引き金を引きながら、マイクに向かって指示を出す。そうすると相手は指示した通りに思い込んだり、行動したりするという優れ物だ」
夕子「……。もしかしてこれ、さっきあたしに使ったか?」ジッ
山田「いや、俺は使ってない」カチッ ピー
夕子「いや、お前は使ってない。疑って悪かった。それより今日はどんな実験をする気なんだ?」
山田「今日お前に協力してもらうのは、指示が対象者の能力を超えたものであっても通るのかどうかという実験だ。今回の英語の期末テスト、お前何点だった?」
夕子「……言いたくない」プイッ
山田「お前は英語の期末テストの点数を言う」カチッ ピー
夕子「あたしは英語の期末テストの点数を言う。12点だ」
山田「ひどいな。本当にひどいな」
夕子「う、うるさいな! それと実験になんの関係があんだよ! ///」
山田「大いにある。今から俺は、英語が苦手なお前を洗脳する。一日でこの大量のテキストを読み込み、TOEICの過去問で高得点が取れれば実験は成功だ」ドッサリ
夕子「は?! これを一日で全部読めって言ってんのか?! できるかそんなこと!」
山田「できる。お前は英語が得意だ」カチッ ピー
夕子「できる。あたしは英語が得意だ」
山田「お前は明日、TOEICの過去問で高得点を取る」ピー
夕子「あたしは明日、TOEICの過去問で高得点を取る」
山田「とりあえず、お前は読め」ピー
夕子「とりあえず、あたしは嫁」
山田「……? このテキストを読むんだ」ピー ピスピス
夕子「あたしは嫁。山田賢太郎の嫁///」
山田「?! ち、違うぞ! お前は俺の嫁なんかじゃないぞ?! む……なんか『オビディエンス』の調子が……」プスンプスン
夕子「……大好き///」ダキッ
***
2時間後
山田(さ、最悪だ……。最悪のタイミングで故障しやがった……)ウウウ
山田(修理に必要なパーツを取り寄せるのに1週間だと……? 1週間もこいつは……)チラッ
夕子「……今、目が合ったな///」キャッ
山田(こいつは俺の嫁だと思い込んでるだと……?)サッ
夕子「目ぇ逸らしちゃって……。照れ屋かコイツぅ♡」ツンツン
山田「……。なぁ夕子」
夕子「なあに、ケンちゃん?」ンフフフフフフ
山田「時計見てみろ。もう8時だな」
夕子「まだ、8時だな」
山田「……。いつまでうちにいる気だ? そろそろお前の家に帰れ。おばさんが夕飯作って待ってるぞ」
夕子「あ、そうだった! いっけない!」スック
山田(やっと解放される……)ホッ
夕子「お母さーん!」ガラガラ つ窓
母「あ、夕子。何してるのー? 早く帰ってらっしゃーい! お皿片付かないでしょー!」
夕子「ごめーん! せっかく作ってもらって悪いんだけど、ラップかけて明日の朝にでも食べてー! 今日からあたし、ここに住むことにしたからー!」
山田「?!」
母「?! ……へえ? ///」ニヤニヤ
山田「な、何言ってんだこの馬鹿! 違うんですおばさん! 今すぐこいつ帰しますんで!」アセアセ
母「……ケンちゃん」
山田「は、はい?」
母「いざって時は、電気消してあげてね♡」カラカラ ピシャッ
山田「いやちょっとおばさん? おばさん?!」
夕子「んもう……お母さんったら///」テレテレ
山田「んもう……じゃない! これ以上事態がややこしくなる前にさっさと帰れ!」グイッ
夕子「なんで帰らなきゃなんないんだ? 夫婦が一緒に暮らすのは普通のことだろ?」
山田「俺たちは結婚してないだろうが。結婚してないんだから夫婦であるはずがない。よって、お前は自分の家に帰るべきなんだ」
夕子「まだ結婚してないけどあたしはケンちゃんの嫁。これは揺るがない事実!」ドン
山田「くそう……! 『オビディエンス』の効力が強すぎて理が通らん! 頼む! とにかく帰ってくれ! いきなりお前と同棲なんてできない!」
夕子「……! そ、そうだよな……。ゴメンな? いきなり住むとか言って……」
山田「いや、謝ることはない。原因はまたしても俺なんだからな。だが、分かってくれて俺は嬉しいぞ」ホッ
夕子「じゃあ……またな」バイバイ
山田「ああ、また明日」
***
1時間後
夕子「歯ブラシと着替え持ってきた。そりゃ準備もせずにいきなり同棲なんかできないよな///」ニコニコ
山田「だああ! 違う! そういう意味じゃない!」アアアアアアア
夕子「それに食材もいくつか貰ってきた。足りない分は明日学校の帰りに一緒にスーパーに寄ってだな……」
山田「帰れ」
夕子「嫌だ」
山田「帰れ!」
夕子「嫌だ!」
山田「さっさと帰れ!」
夕子「嫌だって言ってんのがわかんねえのか」チャッ
山田「帰らなくていいから包丁を下ろせ」
夕子「……それよりお腹空いただろ? 今から美味しいの作ってやるから、先に風呂にでも入って来い」ガサッ
山田「やめろ。昔お前が作ったカレーで俺が2週間入院したのを忘れたのか」
夕子「覚えててくれたんだ……///」トクン
山田「なんだその良い思い出みたいな反応は。忘れられるわけないだろう」
夕子「ったく、いつの話をしてんだよ。あれからあたしだって調理実習でサンマ捌いたりとかして経験を積んできたんだぞ」
山田「ずっとお前と同じクラスだったが、調理実習でサンマの課題が出たことなかったぞ。なんで勝手に捌いたりしたんだ」
夕子「普通のスパゲティじゃつまんないだろ? ほら、さっさと入って来い。それとも何か? あたしと入りたくて待ってんのか? ///」コノスケベ
山田「ふん、俺はケモナーだから人間の裸なんか元々興味はない。それに加えてお前みたいなまな板」
夕子「いくら夫婦でも、言って良いことと悪いことがあるんだぞ」チャッ
山田「お前の体は魅力的だから包丁を下ろせ。……風呂に入ってくる」クルッ
***
夕子「どうだ? 美味いか? ///」モグモグ
山田「どう思う? 俺の顔は真っ青なんだが」モグモグ
夕子「喜んでくれたようでなによりだ///」ニコッ
山田「……」モグモグ
夕子「……どうした? 思いつめたような表情をして。せっかくの同棲初日なんだからもっと嬉しそうにしろよ」
山田「……こんなことになってしまって、本当にすまないと思っている」
夕子「何が?」
山田「お前だってこの状況が普通でないことくらい気づいているだろう。昨日まで毛嫌いしていた変態マッドサイエンティストと同棲してるこの異常性に」
夕子「不思議だよな。何で今までケンちゃんの名前を『死ねノート』に書いたりしてたんだろ?」
山田「そんなの書いてたのか」
夕子「でもやっと目が覚めた///」
山田「早く目を覚ましてくれ……」ウウウ
夕子「目は覚めてるってのに」
山田「……今のお前は、俺の発明品によって洗脳されている。手違いでお前は『俺の嫁』だと思い込まされているんだ」
夕子「まーたケンちゃんの発明の仕業か。……でも今回は許す。やっと自分に正直になれたからな///」
山田「それを洗脳というんだ。……俺は幼馴染であり、唯一の友であるお前をこんな形で傷つけることはしたくないんだ」
夕子「傷つかないぞ? あたしはホントにケンちゃんのことが好きなんだし。もし洗脳が解けた後のことを心配しているなら、解かなければいい」
山田「……」
夕子「……それともあたしに好かれると困るのか?」
山田「……別に俺もお前のことを嫌っているわけではない。大事な友だと思っている。しかし夫婦にはなれない」
夕子「なぜだ?」
山田「俺の腹の音を聞いてくれ。お前の作ってくれたリゾットを食べた結果がこれだ」グギュルルルルルルルルルルルル
夕子「いい音色///」
山田「そうだな。まるでVHSを早送りしてるみたいないい音色だな。お前と夫婦になるということは、つまりこういうことなんだ」ウプッ
夕子「も、もし口に合わないようなら、これから一生懸命練習する! それでもダメなのか?!」
山田「……もう一つ夫婦になれない理由がある」
夕子「なんだ?! あたしに問題があるなら直すから、なんでも言ってくれ!」
山田「……例えばこうやって俺がPCを開くとするだろ?」カチャッ
夕子「うん」
山田「そしてケモナー向けのアダルトサイトを開くとするだろ?」カチカチッ
夕子「……」スチャッ
山田「そうするとほら、包丁を首元に突きつけられることになるんだ。これじゃ命がいくつあっても足らん」フウ
夕子「それはてめえの問題だろうが……。見なけりゃいいだけの話じゃねえのか……?」ビキビキ
山田「ケモナーではないお前に言っても分からんと思うが、それは一般人が『今後一切女の裸は見るな、豚の写真で我慢しろ』と言われているようなものなんだ」
夕子「あたしのことを豚に例えてんのか?」メキメキメキメキ
山田「ぎああああああああああああ! 夫の首を本気で絞める妻がどこにいる!」シヌシヌ
夕子「そもそも夫婦になれるとかなれないとかは問題じゃねえ。あたしらは既に夫婦なんだからな……。浮気したらマジで殺すぞ……」パッ
山田(じ、地獄だ……)ハアハア
***
夕子「ふー、いいお湯だった。あ、もうこんな時間か……」
山田「ゲストルームはたくさんあるから、どれでも好きなのを使え。俺はもう寝る」
夕子「うん」
山田「じゃあおやすみ」スタスタ
夕子「おやすみ」スタスタ
山田「……」ピタッ
夕子「うわっ! 急に止まるな!」ドンッ
山田「……夕子、ゲストルームはあっちだ。どれでも好きなのを使え」
夕子「うん」
山田「俺は自分の寝室で寝るからな」
夕子「うん」
山田「じゃあおやすみ」スタスタ
夕子「おやすみ」スタスタ
山田「……」ピタッ
夕子「わぷっ!」ドンッ
山田「……なんでついてくるんだ?」
夕子「一緒に寝たいからだ」
山田「」
夕子「……?! ち、違うぞ?! 別に変な意味で言ってんじゃないぞ?! ただあたしはいつも親と寝てるから、独りじゃ眠れないだけだ! ///」
山田「なら家に帰って親と寝ろ」
夕子「そ、それは嫌だ。あたしはここで暮すと決めたんだ///」
山田「1週間もすれば俺とお前の関係は元通りになれるんだぞ。ここで一線を越えてしまえば、俺はもうお前に合わせる顔がない」
夕子「うわーやーらしー! 一緒に寝るだけなのに一線を越えるとか! ///」
山田「……俺にはその気は全くない。なんせケモナーだからな。ただ洗脳されたお前が何をするか分からんから言っているだけだ」
夕子「あ、あたしだってそんな気はさらさらないっつーの! ホントは自分がすけべなのを他人のせいにする気だろ! ///」
山田「……なら気のすむようにしろ」フー
夕子「やった!」
***
寝室
山田「お前はベッドを使え。俺はソファーで寝る」
夕子「え? せっかく大きいベッドなんだから一緒に寝たらいいじゃん」
山田「……」
夕子「い、いや! やっぱ別々の方がいいわな! 広く使えるし! ///」ナハハハハ
山田「変なことするなよ」
夕子「こっちのセリフだ! こ、こういうのはいくら夫婦と言えども、合意がなくちゃダメなんだ! 近寄って来たらグーでいくからな! ///」
***
翌日
担任「皆席に着いたかー?」
生徒「先生、呉羽さんがいませーん」
担任「大丈夫だ。いや、まぁ全然大丈夫じゃないんだが。今日のHRを前倒しでやってんのは呉羽についてお前らに説明しとかなきゃならんからだ」
鬼瓦「なんかこんな展開、前にもあったな……」
鮫島「ま、まさか……また山田の発明のせいで僕らの呉羽さんが……!」
担任「そのまさかだ。山田のせいで今度は呉羽の頭がおかしくなった」
不動「山田……やはりてめえか……!」ギリギリ
鬼瓦「今度は何しやがった……! 場合によっちゃぶち殺すからなてめえ……!」ギリギリ
はるか「で、でも先生……夕子の頭が悪いのなんて昔からなのでは……?」
りつこ「この前の期末やってぶっちぎりのドベやったし……」
担任「勉強面じゃない。むしろ『あたしは英語が得意だ』と豪語しているくらいだ。ホントかどうかは知らんが」
生徒「じゃ、じゃあ一体どう頭がおかしくなったと……?」
担任「まぁこういったことに教師が首を突っ込むのもおかしいとは思うが……いかんせん呉羽にはファンクラブがあったりと影響力がでかいからな。とりあえず入って来い」
夕子「……はい」ガラガラ
鬼瓦「?」
鮫島「何も変わってないように見えるが……」
不動「相変わらず今日もかわいい……///」
鬼瓦「そして実にいい香りだ……///」スンスン
担任「呉羽……事情を説明してやれ」
夕子「先生、その前に一つ訂正させてください」
担任「ん?」
夕子「昨日付で……呉羽から山田に変わりました……///」
鬼瓦「」
鮫島「」
不動「」
はるか「」
りつこ「」
鬼瓦「……。……そうか、呉羽さんのご両親が離婚されたんだな」
鮫島「……きっとお母さんの旧姓が山田だったんだ。そうに決まってる」
不動「……かわいそうにな。よりにもよってあそこのクソ虫と同じ苗字になるなんてな」
夕子「昨日、山田賢太郎くんと夫婦になって……山田夕子になりました///」ニコッ
鬼瓦「」
鮫島「」
不動「」
はるか「」
りつこ「」
山田「はい。皆安心してくれ。こうなってるのは呉羽夕子の頭がおかしくなってるからだ。実際には結婚なんかしていない」
夕子「同棲はしてるけど……///」
鬼瓦「」
鮫島「」
不動「」
はるか「」
りつこ「」
夕子「ケンちゃんがそう言うなら……///」
山田「……簡単に説明すると、昨日俺と彼女は新しく発明した洗脳マシーンのテストをしていたんだ」
生徒「ま、またオメーはとんでもないもん作りやがって……」
山田「しかし英語のテキストを『読め』と洗脳したところ、『嫁』と勘違いしたらしい。おまけに洗脳マシーンが壊れてしまい、今の彼女を元に戻すのに1週間ほど要するというわけだ。説明は以上です先生」
担任「皆理解できたな。とりあえずHRはここまでだ」
日直「きりーつ。れーい」
全員「「ありがとうございましたー」」
鬼瓦「」ガタッ
鮫島「」ガタッ
不動「」ガタッ
呉羽FC「」ガタッ
呉羽FC「」ガタッ
発明家「な、なんだお前ら。やめろ! 離せ!」
鬼瓦「……ちょっとトイレ行こうぜ山田」プルプル
鮫島「どうしても我慢できなくてよお……」プルプル
***
はるか「……で、今は山田君にお熱ってわけね」
りつこ「昨日なんか山田君の隣になったからってうちに3千円で座席交換を持ち掛けてきたくらいやのに……」
夕子「で、できれば座席を元に戻してほしいんだけど……///」
りつこ「5千円で考えたる」
夕子「鬼!」
はるか「それよりさっきの同棲発言ってホントなの? 事と次第によっちゃ、夕子のファンクラブが揃って首吊るじゃないの」
夕子「う、うん……それはホント……///」
山田「ううう……あいつら他人の尻の穴を何だと思ってやがる……」ヨロヨロ
夕子「あ、戻って来た……。だ、大丈夫か?! 何されたんだ?! ズタボロじゃないか!」
山田「お前にはまだ早い……」ウウウ
鬼瓦「呉羽……いや山田さん! 同棲してるって聞きましたけど、この蛆に何かされてませんか?!」
鮫島「山田さんにもしものことがあったら……僕は……僕は……!」
夕子「べ、別に何もされてないよ……///」
不動「よ、よかった……!」ポロポロ
夕子「夫婦だけど、まだ手をつないだりはしてないし……///」
鬼瓦「それを聞いて安心しました……」ホッ
夕子「キスもまだだし……///」
鮫島「神よ……感謝します……!」
夕子「一緒にお風呂に入ったりもしてない……///」
不動「入ってたら今頃俺ら、首吊ってますよ」ハハハ
夕子「したことと言えば、ご飯食べて、一緒に寝たくらいかな……///」
鬼瓦「」
鮫島「」
不動「」
はるか「」
りつこ「……ひゅう」
山田「……誤解だ。本当に寝ただけだ。それだけだ……」ガクガク
鬼瓦「……なんかまた催してきちまったようだな」ガシッ
鮫島「……最近はトイレが近くなっていかん」ガシッ
不動「……すまんがもう一度付き合ってくれ」プルプル
山田「うわあああああああ! 離せええええええ! もう便所は嫌だあああああああああ!」ズルズル
***
3限・体育(柔道)
山田(女子はダンスだからな……。やっとあいつから離れられた……)フウ
山田(授業中もいちいち話しかけてきやがって……。周りから殺意を向けられるこっちの身にもなれ……)
体育教師「よーし、乱取り開始!」
鬼瓦「行くぞ山田……」スッ
鮫島「覚悟しろ山田……」スッ
不動「死ね山田……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
呉羽FC「……」スッ
山田「お、お前らもういいだろ! どんだけ俺を痛めつける気だ!」ヒイ
鬼瓦「これは他のクラスとの合同授業だからな。まだお前に制裁を加えていない呉羽FCはごまんといるんだ……」
鮫島「安心しろ……あくまでも乱取りをするだけだ……」ゴキッゴキッ
山田「これは立派ないじめだぞ! せ、先生! 助けてください!」
体育教師「お、おいお前ら! 集団で個をなぶるのは恥ずかしいことだぞ!」
不動「一人ずつなら問題ないってことですよね……。よし、まずは俺からだ……」
体育教師「不動! お前は有段者だろうが! 山田みたいな初心者よりも他の奴とやれ!」
不動「……」ガシッ ブンッ
体育教師「ぐはっ?!」ドシーン
不動「だめですよ先生。強い人と練習しなきゃ一向に上手くはならないんですから。僕は山田くんを鍛えてあげたい一心で……」ニコニコ
体育教師「い、一体なにがあったんだ不動……。昨日まで率先して俺の手伝いをしてくれるほど優しかったお前が……」ウググ
不動「さあて山田……乱取りはあと4分ある。最高の4分間にしようじゃないか」ニタニタ
山田「ひ、ひい……」ガタガタ
不動「……ふんっ!」ガシッ ブンッ
山田「ぐはっ?!」ドシン
不動「ほら立てよ山田……。立ってくれなきゃ投げらんねえだろ?」
山田「も、もう勘弁してくれ……!」
不動「投げられるのが嫌か……? ならもっと苦しい絞め技を……」
夕子「おらあああああああああああ!」ドゴオオオオオン
生徒「あ、山田さん……」
生徒「稽古場の重い扉を蹴っ飛ばしたぞ……」ビクッ
夕子「……てめえら、あたしの旦那に何をした……?」
不動「や、やだなあ……俺たちはただ山田と乱取りしようと……」ビクビク
夕子「嘘をつくな……てめえら複数人でケンちゃんを囲んでいじめてただろうが……」
生徒「見てたのかよ山田さん……」
生徒「授業はどうしたんだよ山田さん……」
不動「……確かに山田に制裁を加えようとしたのは事実です。しかしこれは全て山田さん……いえ、呉羽夕子さんを洗脳マシーンで強引に妻にするような山田に非が……」
夕子「なにいじめを正当化しようとしてんだ」バチュッ
不動「」ペタン
鬼瓦「?!」ヒッ
鮫島「い、一撃で柔道4段の不動を沈めたぞ……」ビクッ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
呉羽FC「……」ガタガタ
夕子「扉の隙間から見てたから誰がいじめてんのかはよく見えなかったが……今震えてんのは全員黒だな……」ギロッ
呉羽FC「俺は違います」ガタガタ
呉羽FC「俺も違います」ガタガタ
呉羽FC「犯人はこいつです」ガタガタ
呉羽FC「いや、こいつが犯人です」ガタガタ
呉羽FC「俺には老いた両親がいるんです」ガタガタ
呉羽FC「こいつの両親より俺の両親の方が老いてます」ガタガタ
呉羽FC「殺さないでください」ガタガタ
呉羽FC「どうか俺だけは見逃してください」ガタガタ
夕子「Shut up!」バチュッ
呉羽FC「」ペタン
山田「な、なんて嫌な音のする金的なんだ……。それからいつの間にか英語の発音が良くなったなお前……」ゾオオオ
鮫島「殺される!」ダッ
夕子「逃げんなって」バチュブリュッ バチュンッ
鬼瓦「」ドシャッ
鮫島「」グシャッ
生徒「……」ガタガタ
夕子「キンタマ潰されたくなかったら、お前ら全員一列に並べ……。動かれたらうまく力を調節できん……」
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
呉羽FC「……」ポロポロ
夕子「それからいじめに加担しなくても見て見ぬふり決め込んでた男子共……。お前らは後であたしが30分間乱取りしてやるから覚悟しとけ……」バチュッ バチュッ
生徒「ひい?! 俺らもすか?!」ビクッ
生徒「あれ止めるなんて無理っすよ! だって呉羽FC、みんなガタイがいいっすもん!」ガタガタ
夕子「……」バチュッ バチュッ バチュッ バチュッ
生徒「……」ガタガタ
***
30分後
夕子「ふう……乱取り終了」
山田「2クラス分の男子を全員足腰立たなくするとは……」ビクビク
夕子「さっきトイレ連れてかれたときもいじめられてたんだろ? 何されたんだ? 今からこいつらに同じことしてやるぞ?」
山田「いや、しなくていい……。もう充分だ……」
夕子「そうか……。まぁそれはそうとして、ケンちゃんにもせめてあたしを守れるくらい強くなってほしいなぁ///」
山田「そうだな。いつか筋肉増強剤でも作ってみる」
夕子「そんなことしなくても、授業時間はまだ15分ほどあるぞ。ケンちゃんも相手がいないと練習にならないだろ?」クイクイ
山田「俺は一人でトレーニングしてるからいい。お前は早くダンスの授業に戻れ」
夕子「何言ってんだ。あたしが今から寝技を教えてやる///」ガッ
山田「いいってのに!」バタバタ
***
昼休み
夕子「ったく、なんであたしが職員室に呼ばれなきゃなんないんだ。いじめ問題の解決に尽力しただけだろうが」モグモグ
山田「授業をサボり、稽古場の扉を蹴り壊し、いじめに関わった男子11名の睾丸を蹴り飛ばし、関係のない男子全員に巴投げをかまし、いじめの被害者に寝技と称したセクハラ攻撃をしたからだろうな」
夕子「ち、違うぞ! あれはセクハラなんかじゃないからな! ///」
山田「ほお。なら柔道着を脱がされてトランクス1枚で逃げ回る相手を血眼で追いかけ回すこともセクハラではないと?」
はるか「お、なんだい、さっそく夫婦喧嘩かい?」ドッコイセ
りつこ「聞いたで夕子。あんた男子更衣室の扉蹴っ飛ばして、男子全員の服をひっぺがし、血眼で追っかけ回して睾丸採集に勤しんだらしいな」ヨッコラセ
夕子「どういう風に伝わったらそうなんのよ……」
はるか「それにしても、山田君以外の男子全員が保健室に行ってるとこの教室も広く感じるなぁ。いつも夕子の周りは男子が固めてるから、こんなに伸び伸びと昼食とるのは久しぶりだわ」モグモグ
りつこ「ん? なんや山田君、今日は珍しくお弁当かいな」モグモグ
山田「欲しけりゃやるぞ」
りつこ「要らんわ、そんなきったない色したマズそうなお弁当。どうせあれやろ? 夕子の愛妻弁当やろ?」カカカ
夕子「み、見た目はちょっと悪くても味はいいのよ! ……どうしたケンちゃん? まだ一口も食べていないようだが……?」
はるか「食べちゃダメだよ山田君。あたしらは中学ん時、調理実習で夕子と同じ班だったがために地獄を見たから……」
りつこ「なまじ一つの班の人数が多かったうえに、職員室中の先生にまで試食させたからの……。便所が椅子取りゲーム状態になったんはあれが最初で最後や」
山田「二人で仲よく排泄した強者もいたそうだな」ハハハ
夕子「弁当広げてんのにウ○コの話なんかすんじゃねえ! ほら、アーンしろ! アーン!」
りつこ「ほれ山田君、特別に卵焼きをやろう」アーン
山田「ありがたい」パクッ
夕子「」
りつこ「どや? うちのお母んの作る卵焼きは美味いやろ」
山田「本当に美味い……。昨日からろくなもの食べてなかったから涙が出てきた……」モグモグ ポロポロ
夕子「」
はるか「ちょ、ちょっとりつこ……やめなって……」ビクビク
りつこ「なはは! 冗談やんか夕子! ただのじょ……」
夕子「」
山田「美味い……美味すぎる……」モグモグ ポロポロ
りつこ「……す、すまんかったの、山田君。……仲良うせえよ」スタスタ
山田「なぜ謝るんだ? お礼を言いたいくらいなのに……」モグモグ
夕子「」
***
その晩
夕子「別に無理して美味しいと言ってもらわなくてもいいんだ……。ただ、せっかく早起きして作ったお弁当を食べてほしかっただけなんだ……」ギリギリ
山田「痛だだだだだだだ! 逆エビはやめろ! 下手すりゃ死ぬ!」バンバンバンバン
夕子「それをてめえは……妻のアーンを断って……あまつさえ妻の友人には応じやがって……!」ギリギリギリギリ
山田「夕子! お前は何か勘違いしている! 食事の用意をすることが必ずしも妻の仕事とは限らないだろ?! だから苦手なことを無理にすることはないんじゃないか?!」
夕子「なに論点すり替えようとしてんだ! あたしは今、人の好意を踏みにじったことを咎めてんだ!」ギリギリギリギリ
山田「木下の卵焼きに手を出したことは謝ろう! だが、それだけ俺の胃袋は追い詰められていたということだ! お前は好意の押し売りをしていたんだぞ!」イタイイタイ
夕子「……!」パッ
山田「……夫婦の形はそれぞれだ。お前のご両親こそがお前の中での夫婦のスタンダードなのかもしれんが、おじさんやおばさんとお前は違う。夫婦として、お互いが納得できる関わり方ができればそれでいいんだ」
夕子「……そうだな。すまん」
山田「だから別に食事を夫が作ろうが、夫がアダルトサイト見てようが、別にいいんだ」
夕子「いいわけあるか。食事の件はそれで納得するとして、アダルトサイトは許さん。発覚したと同時に制裁を加える」
山田「それ、今日お前がぶちのめした奴らとどう違うというんだ……」
夕子「まぁ実際、あたしは妻としてはまだまだだと思う。家事はまるっきりダメだし、数学ができないから家計簿もつけられない。でも今のケンちゃんの言葉を聞いて少し気持ちが楽になった」
山田「そうか……良かったな……」
夕子「だから自信をもってご飯を出せるようになるまではしばらく料理を封印する。もちろんお母さんと一緒に練習はするけどな」
山田「俺もそれがいいと思うぞ」ウン
夕子「ところで……あたしの料理をまずいまずいと言うくらいなんだから、あんたはさぞ美味しいのを作ってくれるんだろうな?」
山田「馬鹿かお前は。何年独り暮らししてると思ってんだ。料理ぐらい5分で作ってやる」
夕子「まーた大きく出やがって。ま、そう言ってくれるなら風呂掃除しながら楽しみに待ってるよ」
山田「いや、風呂はもう洗ったからテレビでも見てろ。すぐに出来る」
夕子「ならお言葉に甘えさせてもらおうかな」ゴロン
***
5分後
山田「出来たぞ夕子。カップうどんとサプリメントだ」ドン
夕子「」
山田「どん兵衛と赤いきつねの2種類あるから、どれでも好きな方を食べていいぞ」ニコッ
夕子「こんな晩飯があるかああああああっ!」ガシャーン
山田「ああっ! なんてことを!」
夕子「あれだけ食材がありながらカップうどんだと……? まさかあんた、毎日こんなもん食ってたんじゃないだろうな……」
山田「え、栄養のことなら問題ないぞ! ちゃんと俺の作ったサプリメントが必要最低限は補ってくれるのだ!」
夕子「こんな食事ばっかしてっからそんな情けない体なんだろうが! もういい! やっぱりあたしが作る!」
山田「やめろ! 食材への冒涜だソレは!」
夕子「なんだとこの野郎!」
***
1時間後
山田「やはり店屋物に限るな」モグモグ
夕子「……なんでもない日に出前頼むなんて、もったいないことしやがって」モグモグ
山田「俺が発明品売って稼いでる金なんだから別にいいだろ」モグモグ
夕子「いーや、1度贅沢を覚えたらもう元には戻れないんだ。今後はあたしが財布を預かる」モグモグ
山田「家計簿つけられないやつが何言ってやがる……」モグモグ
夕子「……ところで今度の土曜日暇だろ? あたしも部活が休みだから一緒に映画でも観に行かないか?」
山田「すまんがその日は俺が楽しみにしている児童向けアニメ『しましまシマウマ しまざぶろう』の放送日だ」
夕子「だから何だ。録画しとけそんなもん」
山田「分かってないなお前は。見終わった直後の最高に熱い状態でケモナー仲間と語り合う、これがまたおつなんだろうが」
夕子「今やってる映画はだな……」バサッ
山田「聞く耳持たずかお前」
夕子「あ、これなんか面白そうだな。『その人を崇めよ』だと」
山田「どこが面白そうなんだ。宗教色全開じゃないか」
夕子「ネットの情報だと全国でも3か所でしか上映してないぞ! その内の1つが近所だなんて! これは観るしかないだろ!」
山田「絶対ハズレだそんなもん! お?! 『しまざぶろう THE MOVIE』がまだやってるだと?! これは観るしかない!」
夕子「あんたソレ、もう10回は観に行ったって言ってたろ! 今度の土曜は『その人を崇めよ』で決まりだ」
山田「じゃあ俺は『しまざぶろう』でお前は『その人を崇めよ』を観る。それでいいな?」
夕子「ダメだ。同じの観なきゃ一緒に行く意味ないだろうが」
山田「じゃあお前1人で行け。俺は明日の放課後にでも観てくる」
夕子「それもダメだ! 今度の土曜は映画デートだ! もしすっぽかしたらギタギタにしてやる!」
山田「ジャイアンリサイタルかお前!」
***
翌日
担任「出欠をとるぞー。相沢ー」
生徒「はーい」
担任「石山ー」
生徒「はい」
担任「鬼瓦ー。……ん、鬼瓦はいないのかー?」
山田「……。珍しいな、あの鬼瓦が休むなんて……」
生徒「先生、鬼瓦くんは『しばらく学校を休む』って昨日学級のラインで言ってました」
山田「……ちょっと待て、そんなグループがあるのを俺は知らんぞ?」
生徒「山田さんに嫌われちゃったからもう生きていけないとも……」
担任「珍しく愛されてんな山田」
山田「俺じゃなくて呉羽のことでしょう。俺は元々死ぬほど嫌われてます」
夕子「いじめは許せなかったけど、別にみんなのこと嫌いになったわけじゃないのに……」
はるか「それに鮫島君や不動君、その他呉羽FCの人も来てないっぽいですね」
担任「好きな子にキンタマ蹴られた位で情けない奴らめ……。それに引き換え、他の男子はあれだけ理不尽な暴力受けときながらよく来れたもんだ」エライゾ
生徒「いや、なんかあんな風にかわいい女の子に掴みかかられたの初めてで……///」ヘヘヘ
生徒「痛みも今となっちゃほどよく心地よいというか……///」ヘヘヘ
生徒「今呉羽FCへの加入を検討してるとこです……///」ヘヘヘ
りつこ「あんたら今、最高に気持ち悪いで……」ウワア
***
土曜日
夕子「ごめーん、待ったー? ///」タッタッタ
山田「10分の遅刻だぞ。同じ家で暮してるのに待ち合わせをする必要がどこにある」
夕子「ったくロマンが無えなケンちゃんは。そこは『気にするな。俺も今来たとこだ』くらい言えよ」
山田「早くしないと『しまざぶろう』が始まってしまうだろうが。ほら、もうチケットは買っといてやったぞ」ハイ
夕子「大丈夫だ、『その人を崇めよ』が始まるまでにまだ30分はあんだから」パシッ ビリビリ
山田「あああああああ! 何でチケットを2枚とも破くんだ!」ノオオオオ
夕子「あんたが不純な動機で児童向けの映画を観ようとしているからだ。……それよりも少し腹が減らないか? おにぎり作って来たから、入る前に一緒に食べよう///」
山田「結構だ。やや! あんなところに美味そうなホットドッグが売ってるぞ!」
夕子「何がホットドッグだ。日本人ならおにぎりだろ?」グイッ
山田「やめろ! 離せ! この前料理は封印するって言ったばかりだろうが!」グヌヌヌヌ
夕子「もう4日前の話だろ! あれから毎日、部活終わりに実家に通ってお母さんと練習したんだぞ! しかもおにぎりだけを!」
山田「知るか! お前の作った殺人おにぎりなんか食えるか!」バタバタ
夕子「殺人おにぎりかどうかは食ってから言え!」
山田「食ってからじゃ遅いだろ!」
夕子「どうしても食わないと言うのか!」
山田「絶対に御免だ!」グヌヌヌヌヌヌヌヌ
夕子「……そうか」パッ
山田「うわっ!」ドガシャアアアン
夕子「……。頑張ったのにな……」ポロッ
山田「お、おい……おにぎりくらいで泣くな……。女の涙は卑怯だぞ……」オロオロ
夕子「ううう……うえええええええええん……」シクシク
山田「や、やめろ……人が見てるだろ……」アワアワ
通行人「お、何だ何だ? 超絶かわいい子が泣いてるぞ?」
通行人「あの男が泣かしたのか?」
筋肉達磨「とりあえずあの男をぶちのめせばいいのか?」
夕子「ひいいいいいいん……」シクシク
山田「わ、分かった分かった! 食べる食べる! 食べればいいんだろ!」
夕子「ホントだな?!」ケロッ
山田(うわ……嘘泣きしやがったこいつ……)
***
20分後
夕子「な? 今日のはちゃんと美味しかったろ?」
山田「ほとんど奇跡に近いな……。これ絶対おばさんが作っただろ……」
夕子「あたしだっての。……それにしても、同棲を始めて今日で6日目かぁ。早いもんだなぁ……」シミジミ
山田「もう少しすればやっと解放されるんだな……」シミジミ
夕子「誰が解放なんかするもんか。例え洗脳が解けたとしても、ケンちゃんの家に居座り続けてやる」
山田「どうせお前の方から俺をぶん殴って離れてくだろうな」
夕子「絶対にそんなことしないぞ! あたしら夫婦の愛は永遠だ!」
山田「こんなのが永遠に続いてたら身が持たん。……まぁこの一週間は呉羽FCの奴らも学校に来なかったから、そこまで苦しいものでもなかったけどな」
夕子「結局あれから皆学校に来なくなっちゃったな……。もうとっくに許してるってのに……」ショボン
山田「気にするな。どうせ呉羽禁断症状を引き起こして学校に来るようになるだろ」ポン
夕子「……。優しいな、ケンちゃんは///」フフフ
山田「そ、そんなんじゃない……。お、そろそろ映画が始まるぞ。もう座っておくか///」
夕子「ふふふ、なーに照れてんだコイツめ! ///」
***
2時間後
山田(ううう……結局映画が始まってすぐにトイレに駆け込むことになったとは……)ギュルルルルルルルルルルル
山田(味は普通でも、毒物はやはり毒物だったか……)ピイイイイイイイイイイ
山田(一体何を触ってから握ったらあんなことになるんだ……。ち○ちんでも掻いてたのか……?)ツイテナイカ
山田(まぁ案の定クソつまらなさそうな映画だったが……ほとんど見てないからきっと夕子の奴は怒ってるぞ……)ヨロヨロ
山田「ああ……やだやだ……」ギイイイイ
劇場「」シイイイイイイイイイイイン
山田「……? 誰もいない……?」
山田「おーい! 誰かいないのか?!」
映画「崇めよ……! その人を崇めよ……!」
山田「映画はまだ続いている……。しかし夕子を含めて10人はいたはずなのに……いつの間にかいなくなっているぞ……」
映画「崇めよ……! その人のもとに集え……!」
山田「あまりのつまらなさに皆帰ったのか……?」
映画「崇めよ……!」
***
――――――
【またも集団失踪! 今度は映画で洗脳か?!】
アナウンサー「次のニュースです。本日午後2時頃、全国3か所の映画館で今日公開された映画『その人を崇めよ』を観た観客数十名が、上映中に映画館を抜け出し、前に停まっていたマイクロバスに乗り込んで失踪するという事件が発生しました」
アナウンサー「映画の内容は『その人を崇めよ』『その人のもとに集え』といったメッセージを何度も繰り返すもので、宗教団体による洗脳の可能性が高いと警察は見ています」
アナウンサー「警察は現在、失踪者の行方を調べています」
――――――
***
呉羽宅
山田「……」
母「ああ……こんなことになるなんて……」ポロポロ
父「夕子は一体どこに行ってしまったんだ……」ポロポロ
コタロー「うああああああああん! お姉ぢゃああああああああん!」ビャアアアアアアアアアアアアアア
警察「今、警察が必死に行方を調べていますが……まったく足取りがつかめていない状況です……」
山田「すみません……俺がついていながら……」
父「いや、ケンちゃんはまったく悪くない……。夕子の作ったものを食べて腹を壊していたんだから当たり前だ……」ポロポロ
母「だから男の子に食べさせるおにぎりを作る前にそんなとこ掻くなって言ったのに……!」ポロポロ
山田(どこを掻いたんだ一体……)
父「いや、むしろそのおかげでケンちゃんが洗脳されなかったんだ。不幸中の幸いだろう……」ポロポロ
コタロー「ケン兄ぢゃん! お願い! お姉ぢゃんを捜じで!」ビャアアアアアアアアアアアアアア
母「もうケンちゃんの発明だけが頼りなの……!」ポロポロ
父「僕からも頼む……! この通りだ……!」ポロポロ
山田「今、捜索のための機械を考案していますが、すぐに実用化させることはできないでしょう……。今あるもので何とかできないものか……?」
佐川急便「ちわー、佐川急便です。お届け物にあがりましたー」ガチャ
父「なんだ宅配便か……。あ、これはケンちゃん宛だな……。この前も間違ってうちにお隣宛のアダルトビデオ持ってきたろ、君」
佐川急便「あれ、また間違ってました……?」ドウモスミマセン
山田「今はたまたま俺がここにいるからよかったものの……。いや待て、貴様アダルトビデオを間違ってこの家に届けただと……?」
佐川急便「あ、ここにサインお願いします」
山田「なに流そうとしてやがる。だいたい貴様先月も……む! この荷物は?!」ガシッ
母「どうしたのケンちゃん……?」
山田「夕子を捜しだす妙案が浮かびました! よくやったぞ貴様! 佐川急便の方には後で俺が賛辞とクレームの電話の両方を入れといてやろう!」ポン
佐川急便「あ、どうもっす」
***
鬼瓦「うう……こんな夜中に何の用だよう……」シクシク
鮫島「何でお前がクラスのライン知ってんだよう……」シクシク
不動「もう俺たちのことはほっといてくれよう……」シクシク
呉羽FC「うう……」シクシク
呉羽FC「山田さんに嫌われちゃった……」シクシク
呉羽FC「きっともう挨拶を返しても貰えない……」シクシク
呉羽FC「謝罪の言葉も見つからない……」シクシク
呉羽FC「てめえに対しては一つも悪いと思ってないけど……」シクシク
呉羽FC「山田さん……」シクシク
呉羽FC「もう死にたい……」シクシク
呉羽FC「うう……」シクシク
山田「生きていけないとか言ってた割にピンピンしてて安心したぞ。それからややこしいから今後は呉羽に統一しろ。この一件が無事に片付けば、あいつは呉羽夕子に戻る」
鬼瓦「何呼び捨てにしてんだこのタコ!」
鮫島「『さん』をつけろよ、でこ助野郎!」
山田「分かった分かった。それでお前らはまだ呉羽の身に何が起こったのかは知らないだろう」
不動「……? 何が起こったかって……?」
鬼瓦「呉羽さんがどうしたってんだ?!」
山田「お前らも映画館で洗脳された観客のニュースくらいは知っているだろう」
鮫島「ああ……観客が集団で失踪したとかいう……」
山田「あの中に呉羽がいた」
鬼瓦「!」
鮫島「!」
不動「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
不動「け、警察はどうした?! ちゃんと日本中の警察が呉羽さんを捜しまわってるんだろうな?!」
山田「日本中かどうかは知らんが、必死に捜査してくれている。しかし手がかりは何もつかめていないそうだ」
鮫島「何やってんだよ日本の警察は!」
鬼瓦「なんのために消費税収めてると思ってんだ!」
山田「そこでお前らに協力を依頼したい。やってくれるな?」
不動「……。でも警察ですら見つけられないのに俺たちが捜したところで……」シュン
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
呉羽FC「……」
山田「……呉羽はお前らのことを、嫌いになったわけではないと言ってたぞ」
鬼瓦「!」
鮫島「!」
不動「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
呉羽FC「!」
山田「お前らのことをとっくに許してるとも言っていた。そんな呉羽は今頃、よく分からん教祖のおっさんを崇めて何してるんだろうな……」
鬼瓦「てめえらあああああああああああああああああああああ! 草の根を分けてでも呉羽さんを捜しだせえええええええええええ! そして教祖はブチ殺せええええええええええええええええええ!」
呉羽FC「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」ダンダンダンダン
山田(馬鹿どもは扱いやすくて助かる)
山田「その通りだ。先ほど洗脳マシーン『オビディエンス』を修理した。今からお前らは俺に洗脳され、人間の力を遥かに超えた嗅覚でもって呉羽夕子を捜しだすのだ」
不動「きゅ、嗅覚って……。俺たちは犬じゃねえんだぞ……?」
山田「この洗脳マシーンはただ言うことを聞かせるだけではない。対象者の内に眠っている力を洗脳によって呼び起こすことができる」ガシャ
鬼瓦「し、しかしそんなこと……」
山田「俺も半信半疑だった。しかし見ろ! この昨日返された呉羽の英語の小テストを! 期末で12点とってた馬鹿が、今や筆記では満点! 発音はネイティブ! 英語ができると洗脳されてから、一度も英語を勉強していないのにだ!」
鮫島「そんな馬鹿な……」
山田「恐らく今まで耳にしてきた英語や、目に触れた英文を脳が総動員して思い起こしたのだろう。つまり、いつも呉羽とすれ違う度に鼻をクンクンさせていたお前らにも同じことが可能だと言える!」
不動「な、なぜそれを……///」
山田「安心しろ、あいつは馬鹿だから気づいていない。……それよりも、やってくれるなお前ら?」
鬼瓦「当たり前だ!」
呉羽FC「「おう!」」
山田「お前らの嗅覚はどの生き物よりも優れている。遠く離れた呉羽夕子の匂いを追えるほどに」カチッ ピー
呉羽FC「「俺たちの嗅覚はどの生き物よりも優れている! 遠く離れた呉羽夕子の匂いを追えるほどに!」」
山田「どうだ? 何か感じるか?」
鬼瓦「感じる……感じるぞ……!」クンカクンカ
鮫島「匂う! 呉羽さんの髪の匂いや汗の匂い、○○の匂いや△△の匂いだって匂うぞ! ///」クンカクンカ
不動「なんていい香りなんだ……! その香りはまさに至福の一言に尽きる! ///」クンカクンカ
山田「洗脳しておいてこんなこと言うのもあれだが、恐ろしく気持ち悪いなお前ら……。……まぁいい。とりあえずお前らに一台ずつバイクを用意したから、匂いを頼りに呉羽を捜してくれ」
呉羽FC「「おう! ///」」クンカクンカ
***
信者「教祖様ー!」
信者「教祖様ー!」
教祖「私を信じよ。そして崇めよ。さすればそなたらの心の中に無限のパワーが宿るのだ」
夕子「教祖様あ……」
教祖「やや?! なんだか今日はやけにかわいいのが来てるぞ! ///」ドキーン
幹部「今日の映画による布教で新しく入った信者です。名前は山田夕子だそうです」
教祖「夕子ちゃんか……。なんと麗しい顔つき……そして控えめなバスト……。私の下半身に無限のパワーが宿るのを感じる……///」
幹部「山田夕子、こちらに来なさい」
夕子「はい……」フラフラ
教祖「おお、夕子よ。そなたは数多くの信者の中でも抜きんでた心の清さを持っておる」
夕子「ありがとうございます……。教祖様にそう言って頂けるとは……感激の至りです……」フラフラ
教祖「この団体では心の清さに従って上納金を定めている。心の汚れたものは浄化をする必要があるため何百万という上納金を持って来なければならぬが、そなたのように心の清い者は1円も納めなくてもよいぞ」
夕子「お金ないので助かります……」フラフラ
教祖「しかしだ……。いくら清いとは言ってもそなた自身、心に何らかの負い目があるはずだ。そうであろう?」
夕子「はい……この前11人の男子の睾丸を蹴り飛ばしました……。その内何人かは嫌な感触がしたので……もしかしたら潰しちゃったかもしれません……」フラフラ
幹部(怖っ! なんて心の汚れた女だ!)ビクッ
教祖「そこでだ。その少し負い目のある心を全て清くするために、そなたは清い私と共に心と体を重ね合わせる修業をせねばならん///」ハアハア
夕子「いえ……あたしはケンちゃんのお嫁さんなので……そういうことはできません……」フラフラ
教祖「?! そなたはまだ高校生であろう?! すでに結婚をしておると言うのか?!」
夕子「結婚はしてないけど……お嫁さんなんです……」フラフラ
幹部「恐らく付き合ってる状態のことを言っているのでしょう。巷では彼氏のことを旦那と呼ぶ女性もいるのだとか……」
教祖「そうであったか……。ところでそのケンちゃんとやらと私のどちらが大切なのだ?」
夕子「教祖様のことはもちろん崇拝しています……。でもあたしはケンちゃんのお嫁さんです……これは揺るがない事実なんです……」フラフラ
教祖「こ、これはかなり強い暗示にかかってるぞ……。こんなに可愛い子を洗脳して嫁にするとは一体何者なのだ、ケンちゃんというのは……?!」
幹部「どうしましょう?」
教祖「ここは無理にでも修業場に連れていくしかなかろう……。すまんが最寄りの修業場の予約を取ってくれんか?」
幹部「はい。ベッドのサイズはキングサイズでよろしいでしょうか?」
教祖「よいよい///」
***
鬼瓦「山田……ここから呉羽さんの匂いがするぞ……」ブオンブオン
鮫島「間違いない。僕の嗅覚もそう言っている……」
不動「表向きはただの雑居ビルって感じだが、地下にはかなり広い空間があるようだ。そこから数多くの人間どもの臭いと呉羽さんの芳醇な香りが漂ってくる……」スンスン
警察「君らからは若干犯罪者の匂いがするけどな……」
警察「だいたい君らの乗ってるバイク、値札ついてるけどどこで手に入れた? あと君ら、ホントに免許もってんだろうな?」
山田「今はそんなことはどうだっていい」カチッ ピー
警察「まあ今はそんなことはどうだっていい。ここに必ず被害者達がいるはずだ。外に停まっているマイクロバスもいい証拠だ」
警察「先輩、俺いつでもいけますよ!」
警察「よし、突入だ!」
***
教祖「では夕子、さっそく修行場へ向かうとしよう///」グイッ
夕子「だ……だめです……それは……いけません……」フラフラ
幹部「こら、抵抗するんじゃない」プスッ
夕子「あ……」トローン
教祖「さあ来るのだ///」グイグイッ
警察「おらあああああああああああああああああああああ!」ドガアアアアン
警察「警察だああああああああ! 全員床に伏せろおおおおおおおおおおおおおおお!」
警察「撃ち殺すぞコラああああああああああああああああ!」ズガアアアアアン! ズガアアアアアン!
幹部「ひっ?! 警察?!」
教祖「うろたえるでない! 信者たちよ!」
信者「教祖様の危機だ!」
信者「教祖様をお守りしろ!」
信者「この命に代えても!」
警察「ぐっ! 信者たちが盾になっただと?!」
警察「どうします先輩! 俺、射撃には自信あるんで信者ごと教祖を撃ち抜くことならできますよ!」
警察「待つんだ! 信者たちだって被害者なんだ! 殺してはいかん!」
警察「くそお! 何のために俺はこれまで射撃訓練をしてきたんだ!」ダンッ
夕子「ああ……!」フラッ
幹部「は、はい!」ダッ
山田「教祖以外はしゃがめ」カチッ ピー
信者「」ストン
信者「」ストン
信者「」ストン
信者「」ストン
幹部「」ストン
教祖「な、なんだと?!」
警察「よし、今なら狙えるぞ!」
警察「死ねええええええ!」チャッ
教祖「皆の者、立ち上がるのだ!」
信者「」スック
信者「」スック
信者「」スック
信者「」スック
幹部「」スック
警察「ああ! また信者が盾に!」
山田「しゃがめ」カチッ ピー
信者「」ストン
信者「」ストン
信者「」ストン
信者「」ストン
幹部「」ストン
教祖「立て!」
信者「」スック
信者「」スック
信者「」スック
信者「」スック
幹部「」スック
警察「くそう! これでは埒が明かんぞ!」
警察「先輩、俺もう我慢の限界です! 次しゃがんでもっかい立ち上がったら信者ごと撃ちます!」ハアハア
鮫島「お前ら! 呉羽FCの名誉挽回のチャンスだぞ!」ガッ
不動「おらあああああああ!」ブンッ
呉羽FC「「うおおおおおおおおお! 呉羽さんのためにいいいいいいいいいい!」」ドドドドドドド
教祖「ひい! なんて迫力だ!」ビクッ
警察「見えた! 死ねええええええええええええええ!」ズガアアアアアアアアアン!
教祖「あっぶなっ?!」チュインッ
山田「待て殺すな! 殺さなくても狙えさえすれば教祖を取り押さえる方法がある!」
警察「し、しかし! 打ち殺す以外にいったいどんな方法があるってんだ!」カタカタカタカタ
山田「教祖! お前は俺の信者だ!」カチッ ピー
教祖「私が……お前の信者……?」ポワーン
山田「そうだ! お前は山田教の信者だ! 俺の言うことを聞け!」カチッ ピー
教祖「や、山田様……。仰せのままに……」
山田「まずはお前の信者たちの洗脳を解け!」
教祖「はい……」
鬼瓦「おお! 教祖が山田の言うことを聞いてるぞ!」
鮫島「でかした山田!」
山田「それからお前が信者から巻き上げたものは金であれ、物であれ、なんでも俺に貢ぐんだ!」
教祖「はい……」
不動「なんか私利私欲に走り始めたぞ……」
警察「とりあえず一件落着だな」フウ
***
鬼瓦「教祖による洗脳はみんな解けたみたいだな……」
鮫島「あとは呉羽さんに山田がかけた洗脳を解くだけだ」
不動「それにしても……へへへ……呉羽さんに御礼を言われてしまった……///」ヘヘヘ
呉羽FC「「えへへへへへへへ……///」」ニタニタニタニタ
夕子「……なあケンちゃん。ホントに洗脳解いちゃうのか……? このままでもいいんじゃないか……?」
山田「いや駄目だ。人の心を思いのままに操るなんてのは、やはりいけないことだ。今回の一件で身に染みた」
夕子「……どうしてもか?」
山田「……どうしてもだ」
夕子「……。分かった」ダキッ
山田「!」
鮫島「……」ピキッ
不動「……」イラッ
呉羽FC「「……」」ムカッ
鬼瓦「みんな堪えろ……。ここで手を出したらまた呉羽さんに嫌われてしまうぞ……」ギリギリ
夕子「……このまま洗脳を解いてくれ。そうすれば、解かれたあともほんの少しだけ近くに居られるだろ……///」ギュウウウウウウウ
山田「夕子、そういうロマンチックなのは要らん。ただ洗脳が解けた後、俺のことを殴らないと約束してくれ」
夕子「約束する。絶対に殴らない……///」
山田「あと関節技とかもなしだぞ。最近お前のせいで俺の体のあちこちにガタがきている」
夕子「関節技もしない……///」
山田「……。お前は俺の嫁ではない。元の呉羽夕子に戻れ」カチッ ピー
夕子「あたしは山田賢太郎の嫁ではない……。元の呉羽夕子に戻る……」
山田「……。どうだ? 洗脳が解けた気分は」
夕子「やっと目が覚めたよ、ケンちゃん……///」ギュッ
山田「ゆ、夕子……」
夕子「いっぺん死ねてめええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」ブオンッ
山田「ぎあっ?!」ドガシャアアアアアアアアアアアアン
鬼瓦「な、何と見事な巴投げ……!」ビクッ
鮫島「アスファルトに思い切り叩き落したぞ……!」ヒイ
夕子「てめえとんでもねえことしてくれたなオイ! もう恥ずかしくて学校いけねえだろうが!」オラタテ!
山田「痛い痛い! あれはただの事故で……! それに今だって必死にお前を助けたし……!」ビクビク
夕子「てめえが洗脳なんかしなきゃ、映画だって観に行かなかっただろうが!」ブオンッ
山田「痛あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」ズシンッ
夕子「てめえのせいで変な噂が出回ってんだぞこのヤロオオオオオオオオ!」ブオンッ
山田「死ぬ! 死んじゃう!」バアアアアアンッ
***
数日後
夕子「あたしの宿題やれ」カチッ ピー
山田「お前の宿題やる……」カキカキ
夕子「あたしにお茶淹れろ」ピー
山田「お前にお茶淹れる……」トクトクトク
夕子「あたしの肩揉め」ピー
山田「お前の肩揉む」モミモミ
はるか「ちょっと夕子、あんたいつまで山田君をこき使う気よ」
りつこ「ほとんど奴隷扱いやないか」
夕子「あたしの気が済むまで。あたしが受けた屈辱は十二分に味わってもらう」ズズズ プハーッ
はるか「ったく……いい加減にしとかないと、痛い目見るかもよ?」
夕子「そんなの怖くないもーん。さーて次は何をさせようかな♪ とりあえずお前はあたしの……おっと!」ピー ガシャアン
りつこ「何やってんねんあんた……」アアモウ
夕子「ダイジョブダイジョブ! ほら、こぼれたお茶を雑巾で拭け!」ピスピス
山田「とりあえず俺はお前の……夫……」
夕子「ん? どうした? 早く雑巾もってこい」プスンプスン
山田「俺は夫……! 呉羽夕子の夫……! ///」
夕子「ち、違うぞ?! お前はあたしの夫なんかじゃないぞ?! ……おいどうした『オビディエンス』?! 動けオイ!」プスプス
山田「大好きだ! ///」ダキッ
夕子「さ、最悪なタイミングで故障しやがった!」ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
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コメント一覧
-
- 2017年12月23日 15:32
-
イチャイチャしやがってさっさと結婚しろ
-
- 2017年12月23日 15:55
- 互いを夫婦だと洗脳すればハッピーエンド
-
- 2017年12月23日 16:55
- しまじろうに出で来たシマウマの名前がしまさぶろうだっけ?
勘違いされたりとかしてたやつ
-
- 2017年12月23日 17:02
- 面白い
あれだなバカテスにノリが似てる
-
- 2017年12月23日 18:34
- 暴力系ヒロインは好きじゃないけどこれはヒロインが1番の被害者だから好き
-
- 2017年12月23日 19:33
- これ科学者としてどうよ?
-
- 2017年12月23日 20:41
- 前回冒頭で言ってた洗脳機ホントに造ったのかw
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