不気味の谷現象という言葉を聞いたことがあるだろう。ロボットを人間に近づけていくと親近感は増していくのだが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わるというものだ。そして不気味の谷を越え、見分けがつかないくらい人間とそっくりになると親近感は一気に上がる。
ではなぜ不気味の谷現象が起きるのだろう?
子供たちも不気味の谷現象が起きるのだろうか?
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ある時点で突然強い嫌悪感に変わる「不気味の谷」現象
「ナショナル・ロボティクス・イニシアティブ」の予測では、将来的に現代の車、コンピューター、携帯電話と同じようにロボットが普及し、家庭や職場、陸海空、宇宙に至るまで稼働するようになるという。
大人は自分たちに似たロボットが好きだが、どの程度似ているかによって「不気味の谷現象」が起きる。人間の容姿との近似に何らかの閾値(しきいち)が存在することは確かだ。そこに行きつくまでは人に似ることで魅力が増すが、不気味の谷に陥ると一気に不気味に見えてくる。
親しみやすさは突如急降下し、代わりに嫌悪感が増すのだ。人間そっくりなんだけど100%まではいかないロボットは、そうでないロボットよりも不気味で、とりわけ歯車やワイヤーが見えるような機械っぽいロボットよりも不気味に映る。
不気味の谷現象が起きる理由はまだ仮説の段階
一説によると、その理由は病気への恐怖に起因するという。人間そっくりのロボットは病気の人間に見える傾向があるのだという。
また人間に似ることで、思考や感情があるという印象を与える一方、大人はそんなはずがないと考えている。ゆえにロボットの見た目と行動が予測に反することになり、それが不安に思わせるという説もある。
子供は不気味の谷を感じないのか?
大人と不気味の谷についての研究はいくつもあるが、子供とそれについては皆無だ。はたして子供も不気味の谷を感じるのであろうか?
ロボットはすでに家庭に入り込んでいる。そして大人の家事を手伝うだけでなく、子供の遊び相手になったり、教師になったりもしている。
昨年、子供と触れ合うことを念頭に置いたロボットがいくつもリリースされたが、彼らはロボットをどう感じているのだろう?
この問いに答えるため、米ミシガン大学のハロルド・W・スティーブンソン教授は240名の子供(3〜18歳)をインタビューして、人間そっくりのロボット、機械のようなロボット、人型ロボットについて感想を聞いてみた。
またロボットは思考できるか、目的を持って行動しているか、善悪の判断がつくかといった質問や、ロボットは朝食を食べないと空腹を感じるか、蛇を見て恐怖を感じるか、つねられると痛みを感じるか、といった質問もした。
9歳未満なら不気味の谷を感じない
すると9歳未満の子供は、それが人間そっくりでも大人のようには不気味さを感じていないことが判明した。
したがって不気味の谷の原因について、人間が病人を避けるよう進化したためであると説明する仮説は棄却される。もしこの仮説が正しければ、幼い子供でも大人と同様に不気味さを感じるはずだからだ。
その一方で、9歳以上の子供の場合、人間そっくりのロボットから機械のようなロボットよりも不気味な印象を受けていた。このことは、人間そっくりのロボットに対する反応は、発達の過程で学習されるものであるらしいことが窺える。
幼い子供にはロボットに心という属性を与えるほうが好ましい
また本調査からは、子供がロボットに心という属性を与えているかどうかが印象に影響することが分かっている。
幼い子供ほど考えて行動するロボットの方を好ましいと考えていた。彼らにとっては、心があるほどにいい存在なのだ。
これは大人や年長の子供とは対照的で、こちらの場合は心(特に人間のような感情や思考)があるように見えるほど、不気味な印象を受けていた。
大人や年長の子供にとっては、機械としての心なら構わないが、人間のような心となると受け付けられなくなる。認識された不気味さは、認識された心と関係する。
子供の年齢に合わせて段階的ロボットの外観を変える
また本結果は発達に合わせて考えることの大切さも浮き彫りにする。子供は小さな大人ではない。彼らは年齢や経験に応じて、世界の認識を変える。
ロボットは子供たちの生活に益々浸透しつつある。それは家庭用に設計されているだけではなく、学校の教室で子供たちに教え、病院で患者を助けている。今回の発見は、子供たちと触れ合うロボットの外見について考察する重要性を明らかにしている。
それは子供の年齢に合わせて段階的に考えるということだ。幼い子供向けなら、心が感じられるような人間に似せたロボットを作るといいかもしれない。だが、ある程度成長した子供向けなら、あまり人間に似すぎているのも考えものなのかもしれない。
また段階的に考えるとは、子供が生まれた年代を考慮することでもある。大恐慌当時に生まれた子供たちと、戦時生まれ、ベビーブーム世代、ミレニアル世代では成長の仕方が異なる。
References:boingboing / nsf / npr/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
1枚目の突然のスケキヨに心臓止まるかと思ったじゃねーか!!!
2.
3. 匿名処理班
遠 神 恵 賜
4. 匿名処理班
ピエロ型ロボットにしてみたらいいんじゃないかしら。
5. 匿名処理班
年を取れば取るほど初対面の人の属性(職業とか)って一発でわかるようになるから、
そういう後天的な経験から出てくるものなんじゃないかな。
人って周りの雰囲気に合わせて表情を変えるから、
それが適正に行われていないと怪しい人に見えるんだと思う。
6. 匿名処理班
マジか?と思って6歳児で実験してみたら
スレ画のロボット怖くなくて可愛いって
昔ネットで話題になってた大阪のキモ不気味な幼児ロボット動画も見せてみたけど可愛いらしい
7. 匿名処理班
これは自論だが、不気味の谷は偏に”違和感”だと思っている。
「人間はこうであるべきだ」という自身の持つ概念からほんの少しズレたロボットが「そういうフリをしているだけ」に見えてしまう事で何を考えてるのか分からない不気味な存在になる。
意図的に人からずらしたロボット(ペッパーとかアシモとか)はそういうものだと脳が理解できるが、限りなく人間に近づけようとして残ったアラが嫌悪の原因かと。
それは表情でも仕草でも見た目でも言えることだと思う。
ここの記事でいう9歳児未満が不気味の谷を感じずらいというのは、
そういう細かい「人間らしさ」からズレている事をまだ完全には理解していないからなのではないだろうか。
8. 匿名処理班
イノセンス それは命
9. 匿名処理班
コミュ障の私はロボットとオハナシする日が待ち遠しいのですが・・・
10. 匿名処理班
子供は違和感を感じる程のサンプルを持ち合わせてないとは考えられないのか?
11. 匿名処理班
TVゲームなどに出てくるCGで製作された人物をより人間に近づけると不気味に見えるって話を聞いた事があるな。
だからワザと作り物と分かる様にした方が受け入れ易いとか・・・
人に近づけるなら顔の作りを左右対称では無く微妙に非対称にした方がよりリアルになるらしい。(3DCG女子高生「Saya」とはは実在の人物にしか見えない)
12. 匿名処理班
さっき丁度この問題について考えていた。
人間の定義、生命の定義とは何か?
人間は遺伝的な正常さを保つため、集団の安全のために奇形を避けて来た。
それならナチスがやったアーリア人優越主義による他民族や障碍者のガス室送りは正当化されるのか?
それはない。ではロボットやAIは要件を満たせば生命と同じとみるのか?
おそらく千年後の人々は我々とは全く違う価値観、生命倫理を持っているハズで、その人達と(人ではないかもしれない)交流できないのが歯がゆい。
13. 匿名処理班
その不気味の谷ってのは
人間なのか人形なのか分からなくなるから不気味なのか。
或いは人間でも人形でもない、
得体の知れない何かに見えるから不気味なのか。
14. 匿名処理班
子供のころ、ディズニーランドのスターツアーズ行ったんだ。
搭乗口までの通路に行くあいだ、ロボットがあったんだけど、人間ぽい姿、喋り方がリアルなほど、何故か不安に感じたかな。r2d2は可愛く感じて好きだったな。
15. 匿名処理班
逆に、人間がロボットのような動きを演じ続けると、見ている人には恐怖感を起こさせる。
不思議だね。
自分が子供の頃(9歳以下)、父親が人差し指と中指で、人が歩くような動作で自分に迫られると悲鳴を上げて逃げていたものだった。
16. 匿名処理班
人間の筋肉や皮を完全再現出来た上で物理演算で摩擦とか重力の影響とか、そういう物も考慮されてないとガワだけ人間っぽくても「やっぱりなんか違う」になる。
17. 匿名処理班
そりゃそうだろ
いくら人間そっくりといっても現状はやたらリアルなマネキン人形が動いてスピーカー越しの音声を発しているに過ぎないんだからな
不気味に思わんほうがおかしい
もっと極端なことを言えばだ、西洋人形や日本人形がいきなり動き出してみろよ
ちょっとしたホラーだろが
要するにだ、人間に近づいているようで実のところ全然その領域に達していないんだよ
18. 匿名処理班
不気味の谷と不気味を混同してる人いるよね
谷の遥か遠くにいる日本人形も不気味だよね
19. 匿名処理班
>聞いたことがあるだろう。
いや、初めて聞いたけど。
20. 匿名処理班
FF14のキャラクターがマネキンっぽくて苦手なんだけど、やはりこの現象のせいなのかな。
21. 匿名処理班
ゲームAIのNPCに人間と区別できないほど精巧な会話プログラムや表情などをセットしても同じように不気味に感じるのかな
22. 匿名処理班
※20
自分には14のキャラは不気味には見えないな、ただ不細工に感じることはある。
好みの問題とかじゃなく、上手く説明出来ないかもしれないが「惜しい、だいたいこんな感じの顔の人間っているけど、実物よりも目が大きすぎる」みたいな違和感
その上で、恐らくキャラクターをアニメ寄りの存在と捉えてるんで目が大きすぎる点は人間に当てはめれば不気味だけど、アニメキャラとしちゃ普通なので気にならず、逆に人間風に見せている肌の質感の粗なんかが目につき、もっと綺麗綺麗な表現にしたほうが可愛いのに…っていう感想になってしまっているんだと思う
23. 匿名処理班
不気味の谷現象の解釈で個人的に一番ゾッとして好きなのが
人間に擬態して人間に近づくものと人間を見分けるため
ってやつ。最高
24. 匿名処理班
難しくなく
単純に防衛反応だぞ
仲間かどうかが曖昧なほど不安になる
子供もあるもんだと思ってた
猿にもあるらしいし。。
25. 匿名処理班
病人忌避説が否定されて
9歳ぐらいからが不気味の谷を感じる境い目になるなら、
じゃあ、「本音を隠して建前で喋ってそうな相手への警戒感」あたりはどうだろう?
小さな幼児でも、嘘をついたり
周囲の顔色をうかがって行動を変えたりはするが、
思ったことをそのままベラベラ喋らず
TPOで求められた振舞いをするという
社会性が身に着き始めるのが、基本的には
大体この小学校中学年あたりからなのでは?
そういう前提のある人間が
「ある程度は流暢だけど、今一歩どこかぎこちない」
不気味の谷段階のロボットに接すると、
「腹に一物隠し持ってそうな、何考えてるのか見えない相手」
っぽい不気味感を抱いてしまうんじゃないかと。