最近の調査によって、木星の第2衛星エウロパや土星の第2衛星エンケラドゥスは内部に海のような液体をもつことが判明しているが、これに着目した研究者の探検が話題になっている。
新たな生命を求める研究者の間では、その2つの衛星の環境をもとに、「地球の海とマントルの鉱物が未知の生物を育む」という説も論じられている。
地球のどこかにあるかもしれない未確認生命の起源。その可能性に魅入られたアメリカの海洋地質学研究者が、ブラジルのある島で深海調査に乗り出した。
スポンサードリンク
Secrets of the Rocks | bioGraphic
未知の生物を求めブラジルの深海を調査
地球上の生命の起源を探る調査は、地球で最も過酷な環境にも科学者を連れ出してしまう。
2017年の夏に行われたマサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所チームの遠征もその例外ではなかった。
海洋地質学者フリーダー・クラインが率いるチームは、この探検をロックスオブライフ(生命の岩)と称し、大西洋赤道海域にあるサンペドロ・サンパウロ群島沖の深海を科学的に調査した。
ブラジルのサンペドロ・サンパウロ群島
image credit:youtube
マントルが露出した稀有な環境が未知なる生物を宿している可能性
この海底にはサンペドロ・サンパウロ橄欖(かんらん)岩海底峰という切り立った地形があるが、実はそこはマントルが露出している例外的な場所として知られており、主にかんらん岩で構成されている。
深海で調査中のフリーダー・クラインとメンバー
image credit:youtube
そしてクラインは、地殻で覆われていない海中のこの岩が、まったく新しい生物を宿しうると考えているのだ。
まだ見ぬ新たな生命を求め、深海に挑むクラインの説は以下のようなものだ。
海水とマントルの鉱物中の鉄分は化学反応で水素分子を生成する。その水素を栄養にする細菌や単細胞、または多細胞生物が育てば、数十億年前の地球に存在した生物にも似た、地球の初期の生物に深い関わりのある生物が生まれる可能性がある。
つまり、もし未知なる生物が発見された場合、それは、かつて地球が誕生してまもなく生息していた生物である可能性もあるということだ。
水深およそ1000mの暗い海中で、彼らは生命の兆候を探る。それは太陽光ではなく、海底の熱水噴出孔から生まれる化学エネルギーを糧にする生物のはずだ。
image credit:youtube
深海の微生物を調査して化学的過程を分析する。その過程がマントルの岩石内部で起こることもありうる。
image credit:youtube
原始時代にさかのぼる窓
チームは初期の生命の構造を垣間見ることを望んでいる。それは私たちの最も原始的な時代にさかのぼる窓のようでもあり、エイリアンとの遭遇になるかもしれない。
image credit:youtube
太陽光に頼らず、海と岩に育まれる新しい生物。そのヒントを探る今回の探査について、クラインは以下のように語っている。
「私たちは、衛星のエウロパやエンケラドゥスの表層の氷や岩盤の下に液体があるのを知っています。それらの衛星はここの島々にあるものと同じ岩を含有しているのです」
「もし太陽系内の遠い衛星にも同じ岩や水があれば、それらが化学的過程の中で地球にあるような基本的な生物を養ったはずです」
クラインはこのような生態系で生物を発見する方法を説明し、生命の起源の手がかりを提供する。その手がかりは地球だけでなく、宇宙のどこかにもありうるのだ。
via:boingboing / wikipediaなど / translated by D/ edited by parumo
あわせて読みたい
何かいるかも!衛星エウロパの氷の地表から水が大噴出しているところが観測される(NASA)
地球に現れた最初の生命「LUCA(全生物最終共通祖先)」は半分生きている?(ドイツ研究)
地球外生命体から地球を守れ!NASAが惑星防衛官を募集中ーー年収は最大2,000万円以上・福利厚生あり
NASA、衛星「エウロパ」に生命体探しの旅へ。魚型生命体に出会えるか?
深海ファンタジー。海の最深部「超深海帯(ヘイダルゾーン)」に関する驚きの8つの事実
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「植物・菌類・微生物」カテゴリの最新記事
「UMA・未確認生物」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 5008 points | 本当に恐竜なら世紀の大発見。化石ではなくミイラ化した恐竜そっくりの死体が発見される(インド) | |
2位 4372 points | 推定年齢512歳。世界最高齢の脊椎動物とされるサメが北大西洋で発見される | |
3位 2918 points | 父もすごいが息子もすごい!息子の描いた絵をさらに発展させたアニメ作家の父親のイラスト | |
4位 2044 points | 100年以内に人間とロボットが子供を作ることが可能となる(国際会議) | |
5位 1428 points | もっとかわいくだと?これが地顔じゃい!クリスマス仕様となったハスキー犬のアヌコ氏。相変わらず悪い顔してた。 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
海底に未知の洞窟があり、内部が大陸並みの広さで未知の生物がいるなんていうこともあるかもしれない
2. 匿名処理班
グリーンランドにも地底のモホロディディッチ面(地殻とマントル層の境界面)が露出してる場所が有りますよね。
そこの海底にも未知の生命体が居るかも知れないですね。
海底の熱泉噴出口の側にも硫黄や特殊鉱物を栄養源にしてる生物が居るから、何かしら見つかるかも?
3. 匿名処理班
地面の下ってのは最後のフロンティアの一つだね、深い地面の下、熱水噴出口のそばの岩の割れ目で生物の原型が発生しうるなら、太陽から遠く離れた惑星、衛星の似た環境でも期待できる。我々の生きてる時代では確認は難しいだろうが、数百年後にどんな展開が期待できるだろうか?
4. 匿名処理班
日本の海洋研究開発機構も頑張ってるよー。
子供向けの一般公開に行ったんだけど、大人も子供も楽しめる充実した内容だった。Tシャツとかグッズのセンスもナイス!
5. 匿名処理班
深海は遠過ぎる宇宙より幾らか身近で現実的?なワクワク感あるよな
直ぐ近くの日本海溝なんか未だ未だ全然判らん事だらけだしね