科学者が開発したという、全身アルミホイルに覆われた赤ちゃん型ロボットがハイハイしながら動いていく。不気味の谷とはまた別の不気味さを漂わせている。
アルミホイルで作った帽子(ティン・ホイル)を被れば政府の洗脳から回避できるとか、宇宙人と交信できるとか、一部陰謀論者には言われているけれど、今回の実験はそういう目的ではないようだ。
では一体何のために?
その目的は、床に近い低いところの花粉、細菌などの生体物質の濃度を測定し、赤ちゃんが吸い込む埃の量を調べることにある。
その結果床に近い生体物質の濃度は、高いところよりも20倍も高いことがわかったという。
スポンサードリンク
室内の床に近い場所の汚れを観察
家庭でハイハイする赤ちゃんの口や鼻は床スレスレの位置にある。室内の、特に絨毯が敷かれた部分には、花粉、皮膚細胞、埃、胞子、細菌といった様々なものが詰まっている。
この最新の研究は、ハイハイをする赤ちゃんの視点に立って、床に近い位置の汚れの濃度の様子やそれが吸い込まれる様子を調べようという世界でも初めて試みだ。
研究チームは、人間の赤ちゃんが撒き散らす埃の量を可視化するために、ロボット赤ちゃんを開発した。
モデルとなったのはハイハイをする赤ちゃんの人形だったのだが、出来上がったのは腕を使って匍匐前進する足のないアルミホイル性のホラーめいたものだった。
そして研究チームは、この奇怪なロボットが絨毯のような埃(家庭から収集されたもの)満載の場所を通過する際、周囲に舞い上がった粒子を解析した。
image credit:youtube
床に近いところは高いところよりも20倍の生体物質濃度
「最先端のエアロゾル機器で、赤ちゃん周囲の空気中に舞い上がった生体粒子を秒単位のリアルタイムで追跡しました」と米パデュー大学のブランドン・ボーア助教は話す。
埃の中で舞う花粉、胞子、細菌の細胞といった生体物質は、レーザーが照射されると蛍光色に光る。これを観察して、生体物質と非生体物質の区別がされた。
またフィルターで回収された物質は、フィンランドの保健福祉研究所の協力を仰ぎ、DNA解析が実施された。
その結果、床に近いところに舞う生体物質の濃度は、高いところよりも20倍も高いことが判明した。ゆえに赤ちゃんが吸い込む埃の量も成人よりずっと多く、体重1キロあたり4倍であることが分かった。
image credit:youtube
埃に晒されることと免疫系の発達の関係性
一方で、このことは赤ちゃんにとってそれほど悪いことではないのかもしれない。こうして埃にまみれることで、実は免疫系の発達が促されている可能性があるからだ。
乳幼児のうちに様々なバクテリアやアレルゲンに晒されることでアレルギー発症のリスクが抑えらえるという研究結果が報告される(米研究)- カラパイア -
だがまだまだ解明すべきことはたくさん残っている。
「微生物学者や免疫学者と協力して引き続き研究を行い、室内の空気中を漂う微生物やアレルゲンが幼児の健康にどのように影響しているのか調べたいと思っています」(ボーア氏)
Babies kicking up a storm
この研究は『Environmental Science and Technology』に掲載された。
References:purdue/ translated by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
桃やりんごを食べると唇がかゆくなる?花粉症と関連性がある、果物や野菜で起きる口腔アレルギー症候群とは?
悪いことばかりじゃない?爪を噛む癖に隠された3つの真実
猫も人間の親友である。猫の遺伝子が喘息や糖尿病といった病気を治す鍵になる事が判明(米研究)
子どもの頃から犬や猫を飼っていると将来的に喘息になるリスクが低下する(米国微生物学会)
風邪をひくとなぜゾクゾクと寒気がするのだろう?風邪にまつわる7つのメカニズム
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「動画」カテゴリの最新記事
「サイエンス&テクノロジー」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3522 points | 史上初。シリアにあるロシア軍事基地がドローン群により攻撃を受けたとロシア国防省が発表 | |
2位 3243 points | 直感で選ぼう。どの扉を選んだかであなたが本当に求めている生き方がわかる「6つの扉」占い | |
3位 2080 points | イルカの薬物使用疑惑。イルカはフグの毒を使ってハイな気分になっている。 | |
4位 1485 points | オゾン層が回復していることを確認。南極上空のオゾンホールが閉じつつあるとNASAが発表 | |
5位 1191 points | 座るの躊躇するから!スターウォーズ「カークーンの大穴」がモチーフとなったクッションが販売されているという現実 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
ハイハイできる赤ちゃん人形などある中、一から作るのが技術者たる所以かな
埃も何もない無菌室は無理だから、こまめに掃除しような、くらいかな
2. 匿名処理班
なあに、かえって免疫力がつく
3. 匿名処理班
赤ちゃんの環境を考えるのはいいことだ
ついでに悪いけど床でごろごろしてるおっさんのアルミ人形でも実験してみてくれるかな?
4. 匿名処理班
銀紙(アルミホイル)は奥歯で噛み砕くに限るな
5. 匿名処理班
犬を飼っている家庭の子供ほどアレルギーが少ない、という記事も見た気がする。適度に免疫系を鍛えつつ育った子供のほうがよいのかねえ。。
6. 匿名処理班
アザラシ型って言えばいいのに。
7. 匿名処理班
ああ、成程
実験の為に動きと同時に重みとか形とかが必要だった訳か
何かホッとした
8. 匿名処理班
ひと形とかけ離れていれば不気味の谷には落ち込まない。
動きも陽気な感じで寧ろ可愛い・・・かも。
9. 匿名処理班
真面目な研究なのに申し訳ないけど、笑い転げてしまった。
まー、雑菌にまみれて育った方が丈夫になるだろね。
10. 匿名処理班
そのうち夜更けになると勝手に動いたり、どこからか泣き声や咳が聞こえたりするようになるんじゃなかろうか。