今回のアリアン5打ち上げでは離陸9分後に切り離された上段ロケットからのテレメトリーが受信できなくなり、打ち上げは失敗したように思われました。実際、ArianespaceのプロジェクトチーフであるStephane Israel氏は謝罪の言葉を述べ、問題を調査するとのコメントを出しています。
しかしその後、2つの衛星はともに分離され、軌道上でそれぞれの事業者との通信を開始したことがわかりました。AFPによれば、2つの衛星は正しい場所でリリースされたわけではなく、予定していた軌道に乗っているわけではない模様。しかし幸いなことに、そこから本来の軌道へは再配置可能であり、Arianespaceも通信事業者も胸をなでおろしているに違いありません。
SES-14にはNASAの電離層等観測機Global-scale Observations of the Limb and Disk、略してGOLDが搭載されいます。これは電子レンジほどの大きさの機器で、高度約3万5000kmから地球の上層大気、特に電離圏と熱圏の温度を調べ、太陽活動がどのような影響を及ぼすのかを知るための研究に用いられます。
GOLDは単独の衛星としてでなく、民間の衛星に組み付けられた「ホステッド・ペイロード」と呼ばれる方式の最初の例。NASAは「これまでどおりの人工衛星が必要になるケースもあるが、商業衛星に科学調査用のツールを付け加えることで、より費用対効果の高い方法を提供できるようになった」としています。
Arianespaceとしては、もちろんテレメトリーが失われた原因を調べ、問題を潰す必要があります。しかし、打ち上げの最終的な目的はすべて達成できたことはArianespaceだけでなく通信事業者、そしてNASAにとっても良い結果だったと言えそうです。