1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:50:36.95 W6zgoKLo

タッタッタ…

男「くっ……!」

ライバル「よし、一着だ!」

男(くそっ……また負けた!)

男(どうして俺はあいつに勝てないんだ……!)


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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:51:57.64 W6zgoKLo

男「おい! 俺はあんたの指示通り走ってるのに、なんであいつに勝てないんだ!」

監督「お前があいつに勝てないのは、練習不足だからだ!」

男「練習不足!? 俺はたくさん練習してるぞ! あんたの指示が悪いんだろう!」

監督「バカいえ、しょっちゅうサボってるじゃないか!」

監督「お前のバネは明らかに日本人離れしてるんだ! 本気で練習すれば世界とも戦える!」

男「もういい! あんたの指図は受けないぜ!」スタスタ

監督「まったく……!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:53:33.98 W6zgoKLo

男(俺が練習してないだと? あの無能監督は分かっちゃいない)

男(オーバーワークを避けてるだけだ! 練習なんて三日に一度やればいい!)

男(とにかく……このままやってても俺はライバルに勝てない)

男(こうなったら、どうにかして奴を引きずり下ろす方法を考えるしかないな)

男「……そうだ」ニヤ…
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:54:03.05 W6zgoKLo

男(今度の競技会で、ライバルに禁止薬物を飲ませて失格させれば……)

男(あいつは競技から永久追放、自動的に俺が日本一になる!)

男(薬物は……無味無臭のこの薬物でいいか!)

男(待ってろよライバル……お前の競技人生は残りあとわずかだ!)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:55:44.63 W6zgoKLo

競技会当日――

ライバル「今日はお互い正々堂々走ろうな!」

男「おう!」

男(バカめ……お前のスプリンターとしての人生は、今日終わるんだよ)

男(卑怯者としてな!)

男(あいつがトイレに行った時がチャンスだ! この薬物を水筒に入れてやる!)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:56:45.94 W6zgoKLo

ライバル「ちょっとトイレ行ってこようかな」スッ





男(――今だッ!!!)シュタタタタタッ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 00:57:39.66 W6zgoKLo

選手「おう、こんなとこでも走ってるなんて、ウォームアップか?」

男(うおっ!?)

男「ハ、ハハハ……まぁな」

男(ちっ、邪魔すんじゃねえよ!)

選手「俺もストレッチしてくるかな……」

男「そうしろ、そうしろ(早くどこか行け!)」

男(よし、今度こそ!)サササッ
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:00:27.09 W6zgoKLo

ライバル「あ〜……スッキリした」スタスタ

男「きゃうっ!?」

ライバル「おお、驚かせて悪かった」

男(くそぉ〜……戻ってくるのが早いんだよ!)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:02:04.25 W6zgoKLo

男(あいつがいない! タイミング的にこれがラストチャンスだ!)

男「うおおおおおおおっ!」シュタタタタッ

男(よし……間に合う! この中に薬物を入れれば……)

記者「すみませーん! 取材よろしいですかー!?」

男「!」ドキッ

男「はい、どうぞどうぞ!」

男(ちくしょおおおおおおおおおお!!!)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:04:11.48 W6zgoKLo

男(こうして俺の計画は失敗に終わり、競技会では相変わらずの二位だった)

男(なぜ失敗したのか? それは俺のスピードが遅かったからだ)

男(特に三度目のチャンス、もう少し速く走れてれば、薬物入れることはできた!)

男(こうなったら……一から鍛え直すしかない!)
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:05:44.01 W6zgoKLo

男「監督!」

監督「なんだ?」

男「俺を一から……一から鍛え直して下さい!」

監督「おお……やっとその気になってくれたか!」

監督「お前がその気になれば、今からでも世界トップクラスになれる!」

監督「さぁ、やるぞ!」

男「はいっ!」

男(全てはあいつに薬物を飲ませるために!)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:07:23.14 W6zgoKLo

男「はぁっ、はぁっ、はぁっ」タタタタタッ

監督「今日はここまでにしよう! オーバーワークになってしまう!」

男「いえ……もっと走らなきゃ……目標は達成できない……」

監督「分かった! お前がその気ならば、どんどんメニューを追加してやろう!」



ライオン「ガルルルッ!」タタタタタッ

男(これだ……これくらいの緊張感がなきゃ、あいつに禁止薬物は入れられない!)タタタタタッ

監督「うわああああ……!」



次の競技会――

男(今だッ! この水筒に……)シュタタタタタッ

ライバル「何してんだ?」

男(またダメだった!)キキッ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:10:29.81 W6zgoKLo

やがて――

男「だあああああああああああああああっ!」タタタタタッ

ライバル「くっ……!」タタタタタッ



監督「やったぞ! ついにライバルに勝った!」

男「……」

監督「嬉しくないのか?」

男「監督、俺はこんな勝敗はどうでもいいんです」

監督「なんと……! 陸上選手としてそんな域まで達していたとは……!」

男(俺に勝ちがあるとすれば、それはあいつに禁止薬物を飲ませた時だ!)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:12:28.40 W6zgoKLo

しかし――

シュタタタタタッ

男(入れてやるぅぅぅぅぅ!)

監督「お、走りすぎてケガするなよ!」

男(邪魔すんな、クソ監督ゥゥゥゥゥ!)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:14:21.44 W6zgoKLo

ある日――

ライバル「やぁ」

男「おお、お前か」

ライバル「昔はオレとお前は好敵手だなんていわれたけど、すっかり差がついちゃったな」

男「そんなことはないだろ」

ライバル「いや……オレにはもう分かってるんだ、自分の限界が」

ライバル「だからオレ……今度の競技会でドーピングしようと思うんだ。失格覚悟で」

男「!?」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:15:50.79 W6zgoKLo

ライバル「競技人生の最後に、禁止薬物の力を借りてでも最高の走りをしたいと思ってね」

ライバル「ただ、お前だけには打ち明けときたかった。止めないでくれよ」

男「バカヤロウ!!!」

バチンッ!

ライバル「ぐふっ!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:17:14.32 W6zgoKLo

男「お前……自分で禁止薬物飲むなんてふざけるなよ……」

男「そんなことしたら……今までの俺の努力はどうなる!?」

ライバル「え……」

男「いいか、もしお前が自分でドーピングなんかやってみろ……」

男「俺はお前を絶対許さん! いや……ブッ殺してやる!!!」

ライバル「……」

ライバル「まさか、止められるとはね……」

男「当たり前だ!」

ライバル(オレはもうお前から相手にされてないと思ってたけど、精一杯やってみるよ……)
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:20:00.23 W6zgoKLo

それからしばらくして――

実況『オリンピック100m決勝! なんと今大会では日本人選手が二人も残っています!』

実況『人種という絶対的な壁を突き破った二選手、果たして奇跡を起こせるか!?』



男(クソが……また禁止薬物入れるのに失敗した……!)

男(もうこうなりゃ、全力で走るだけだ!)

黒人選手「OH、ジャパニーズカミカゼ! キミと戦えることを楽しみにしてたよー!」

男(うるせえ……俺はこんなレースどうでもいいんだよ! 消化試合だ!)

ライバル「ここまでこれたのはお前のおかげだ……正々堂々勝負だ!」

男(そうだよ! 俺が禁止薬物を入れられなかったから、お前は失格しなかったんだ!)



セット… パァンッ!!!
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:21:11.08 W6zgoKLo

タタタタタッ

黒人選手(どうやらボクの勝ちだね!)

男「ぐっ……!」

男(ライオンに追われた、あの緊張感を思い出せえっ!)

男(いつもいつも禁止薬物入れるのに失敗した、あの悔しさを思い出せえっ!)

男「怖いよおおおおおおおおおお! ちくしょおおおおおおおお!!!」ズドドドドドッ

黒人選手「!?」

黒人選手(これが……ジャパニーズ、カミカゼ……!)
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 01:25:08.44 W6zgoKLo

男「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

記者「歴史に残る大快挙です! 100メートル走での金メダルおめでとうございます!」

記者「金メダルを獲得できた秘訣は、なんでしょうか?」

男「禁止……ゲホッ(薬物を水筒に入れることし)か……眼中に、なかった……」

記者「なるほど〜! 金しか眼中になかったと!」

記者「ライバル選手も銅メダルと大健闘しましたが?」

男「(知らねえ、疲れてるんだ。ライバルなんか……)どうでもいい」

記者「銅でも素晴らしい、と! さすがです!」

記者「今後の目標は?」

男「そりゃもちろん、禁……(止薬物をライバルに飲ませることだ!)」ハァハァ…

記者「連覇というわけですね!」

記者「ありがとうございました! これからも頑張って下さい!」

男(ああ、頑張るさ……いつか必ずライバルの水筒に禁止薬物入れてやる!)





― 完 ―