かつて見世物小屋と呼ばれるものがあった。海外ではフリークスショーと呼ばれ、珍奇さや禍々しさを売りにして、日常では見られない芸、変わった獣や人間を見せるアトラクションだった。
1900年代、アメリカで特に人気だったのが「首なし女(ヘッドレス・ガール)」と「蜘蛛女(スパイドーラ)」である。
こうした奇怪な見世物トリックの歴史に少し分け入ってみよう。
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頭は人間で体は巨大なクモ。蜘蛛女(スパイドーラ)
「スパイドーラ」は1800年代後半に、イギリス・ロンドンのヴォードヴィルショーの魔術師ヘンリー・ロルテアによって考案され、1930年代後半にアメリカのコニー・アイランドで絶大な人気を博した。
頭は実物女性だが体は巨大なクモという驚きの見世物アトラクションだった。
ジョー・ニッケルの2005年の著書『Secrets of the Sideshows』によると、彼は子供のころにコニー・アイランドでスパイドーラの初期のショーを繰り返し見たという。
巨匠アドルフ・フリードレンダーによるスパイドーラのヴィンテージリトグラフ
スパイドーラのショーはとても人気があり、観客がこれから目にするものを宣伝するショーの客引きの口上のセリフまでニッケルは覚えている。
寄ってらっしゃい、見てらっしゃい、クモ女スパンドーラのお目見えだよ! 頭と顔は美しい女性。ところが体は醜いクモ。彼女は男から決して愛されることのない悲惨な人生を生き抜いている
客引きは、見世物として生きてきたスパンドーラは、本物のクモと同様にハエや昆虫を食べるとも語る。
スパンドーラにはいくつかの改作版がある。最悪の場合、クモの体を描いた箱からぞんざいに首だけ突き出している女性を見るだけだ。
1938年、ヴァージニアでの見世物ショーのスパイドーラ
だが改良版では、白い撚糸でできたクモの巣やフェイクファーを使ったクモの体や足で多少工夫の様子が見られるクモ女が歓待してくれることもある。
足はチューブになっている場合もあり、スパイドーラが自分で足を本当に動かしているように見せることができる。
スパイドーラ役の女性の実際の体は、クモの巣やクモの胴体に見せかけた箱の壁の後ろに隠れていて、頭だけが不気味に怖いもの見たさの観客のほうに向けられている。
スパンドーラの存在は、蝶人間、ヘビ女などその他のたくさんの人間と動物のハイブリッド誕生の刺激となった。
首なし女(ヘッドレス・ガール)
1939年、ドイツ、ハンブルグ出身の自称医師、ハイネマン博士(エゴン・ハイネマン)は、アメリカ・ニューヨークのワールドフェアで初めて「首なし女」を披露して観客たちの度肝を抜いた。
首なし女のショーは、怖ろしいほどリアルに見えるトリックショーだ。首なし女「オルガ」はロンドンで店のショーウィンドウに展示され、この首のない女性の胴体を目にした者をぎょっとさせた。
エゴン・ハイネマンと首なし女「オルガ」(1930年代後半、イギリス、ブラックプール)
この女性の喉からはチューブが伸びていて、彼女の食べ物の摂取を管理する仕掛けにつながっているという。
スパイドーラと同様、この首なし女オルガもまた、ほかの魔術師に模倣されて、ティナと名づけられたリ、優雅にマドモアゼル・イヴェットと呼ばれたりした。
首がないにもかかわらず、栄養補給チューブや説明のつかない技術によって"生きている"とされた。写真で見るとわかるように、首のない女性の姿は視覚的に非常に戸惑う。
アイオワ州のステートフェアに登場した首なし女
首なし女が本物だと思わせるためか、多くのショーではどうして彼女が頭を失うはめになったのか、ということについて、サメに襲われたとか、トラックに轢かれて胴体と頭がバラバラになった不幸なショーガールといった、悲惨な裏話が必ずついてまわった。
インターネットの"サイドショー・ワールド"によると、首なし女の出し物は1980年代にはアメリカや世界中で広がり続け、2002年にはオズフェスト(アメリカで毎年行われているロックフェスティバル)にもお目見えした。
やはり、オルガや彼女のたくさんのライバルたちやコピーの不気味さが、思わず足を止めてしまう究極の出し物だったのだ。
1939年、ニューヨークのワールドフェアにて、小説家で編集者、魔術師でもあったクレイトン・ロースンと首なし女。ロースンは1940年にミステリ小説『首のない女』を書いている。
ニュージャージーでラジオのインタビューを受ける首なし女
頭が隠れる鏡のティアラをかぶる首なし女。テントの壁に反映されて見る者の目を欺く。古い車の部品や圧縮モーターといった機械類は、彼女の機能を維持し続けるためのものだという。
当時の映像も残されている。
Olga, The Headless Girl. SECRET MEDICAL MIRACLE!
References:dangerousminds/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
蜘蛛女は45度に傾けた鏡を使ったトリックだね。
「手品のひみつ」みたいな本で見たことある。
首無し女も鏡のトリックぽい。顔の前に二枚の鏡をV字に置いてるんじゃないかな。
背景暗くすればまず鏡とはわからない。
2. 匿名処理班
人間の感性は常に変化しているんだなぁ・・・
当時のシュールとされていたもの以外にも創始時のディズニーとかの初期カートゥーンやピエロなんかも現代の人間が見ると拒否反応が出るけど、
逆に100年後なんかは現代のpopな「グロかわキャラ」とかいうやつでも同じ反応をされるかもしれない。
3. 匿名処理班
正直もうこんな感じでもいいから どっかに楽な仕事ない?
4. 匿名処理班
ちょっと笑っちゃったw
どうやったらこんなこと思いつくんだろう?
5. 匿名処理班
首なし女は動画を見れば作り物とわかるけど、
白黒写真だと確かにギョッとする。
子供の頃「見世物小屋」という響きと得体の知れなさに
怯えたものだが大人の今なら少し見てみたいかも。
6. 匿名処理班
>1938年、ヴァージニアでの見世物ショーのスパイドーラ
これはさすがに…当時の人もわかっていて楽しんでいたと思いたい程ぞんざいな出来…
7. 匿名処理班
さぁさぁ かわいそうなのはこのワイだよ親の因果が子に報い 生まれ出たる金無し男
もう財布には三千円しかないという やっと決まった配送のバイト その金入るの一月後
生きるか死ぬかだよお立ち会い
8. 匿名処理班
「三本足の女」っていうのもあって、その口上が『足の付け根までご覧にいれます』だった。
当然、R指定だが怖いもの見たさとエロが癒合したこの出し物は大人気を博したそうだ。
9. 匿名処理班
イランの出し物で有名な羊男(女)と同じですね。
10. 匿名処理班
なんかすごいなぁ…
その時使える技術で魔法みたいなんを作り出すってのは発想力も改変力もいるしさらに行動に移すとなると技術力もいるからなぁ。
最初ちょっとやばめのネタかと思ったけどブラックなマジックショーやった