スキンディスプレイは、伸縮する皮膚の上にあってもディスプレイとしての電気的・機械的特性を損なわない薄型表示装置です。伸縮する素材の上に柔らかい電子部品と硬い電子部品を混在させて実装する「伸縮性ハイブリッド電子実装技術」を駆使して製造されました。伸縮素材の上で柔らかい部品と硬い部品の接合部に応力が集中しない構造を採用したことで、機械的な耐久性を高めた点が特徴。通気性に優れ、実験では一週間連続で装着し続けた場合でも、炎症を起こさないことが確認されています。
表示装置としての主な仕様として、最も伸ばした状態と、最も縮めた状態での実効的な表示面積は、それぞれ64×96mmと、38×58mm。駆動方式はパッシブマトリクス方式で、マイクロLEDの大きさは1×0.5mm。発光色は赤色です。2Vの電圧で駆動し、表示スピードは60Hz。最大消費電力は13.8mWとなっています。伸縮するディスプレイを皮膚の形状にフィットさせ、かつ人の動きに追従させた状態で、1画素の故障もなく動画を表示できたのは世界初とのこと。
活用例としては、病院と自宅を繋ぐ在宅ヘルスケア情報サービスが想定されています。一例として、心臓疾患のある患者が自宅から遠隔で医師の心電波形モニターを受け、問題ない場合に「いいね」マークをスキンディスプレイ上に表示するといった使われ方が提案されました。
今後は、デバイスの更なる信頼性向上、製造プロセスの高集積化、大面積化といった技術課題の解決に取り組み、3年以内の実用化を目指すといいます。
ウェアラブルデバイスで取得した各種の情報は、アプリを介してスマートフォンやタブレット上で表示できるようになってきていますが、入院中の高齢者や幼児がこれらの機器を操作することが難しいケースも考えられることから、特にアクセシビリティ(利用しやすさの指標)の高い健康管理向けデバイスのひとつとして、皮膚上に直接情報を表示する「スキンディスプレイ」が開発されました。
新しい技術には実用化に伴う量産コストの問題がつきものですが、今回発表されたスキンディスプレイの場合は「産業界で実績のある」量産性に優れた実装方法で製造されていることから、早期の実用化と低コスト化が見込めるとのことで、実用化までのスムーズな展開が期待できそうです。