犬は昔から人間の親友と言わてきた。もちろん猫だって素晴らしい友だが、犬は犬、猫は猫ならではの愛し方がある。
この人と決めた飼い主に対する犬の忠誠心は海よりも深い。それは時に死すら超える。ここでは10匹の忠犬にまつわる切ない伝説や物語を見ていこう。
日本からはあの有名な忠犬が入っている。
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10. シェップ(アメリカ):
飼い主の遺体が運ばれた駅から死ぬまで離れなかった犬
References:fortbenton
1936年、アメリカ・モンタナ州の牧師が病に倒れ、病院に運ばれた。彼の飼い犬シェップは飼い主から離れることを拒み、病院まで付き従った。
シェップは病院のドアの前で主人の回復を待っていたが、残念ながら牧師は帰らぬ人となった。
帰郷させるため、牧師の遺体が駅に運ばれた時もシェップはついてきた。駅職員によれば、棺が電車に運び込まれ、遠くに走り去る間ずっとキュンキュンと鳴いていたという。
それから5年間、シェップは線路のそばから離れなかった。そして駅に電車が到着するたびに、降りてくる人の中に主人がいないかと探し回った。
そんなシェップは駅でも有名になり、駅員から餌をもらうようになっていた。だが年をとったシェップは耳が聞こえなくなり、電車が近づく音すら気付かなくなった。ある日、電車に轢かれて亡くなった。
A Postcard From the Field: The Story of Shep the Dog | Dateline NBC
フォートベントンには、帰らぬ主人を待ち続けたシェップの銅像が建てられている――いつか主人に再開できるようにと。
9. キャプテン(アルゼンチン):亡き主人の墓から離れない犬
References:odditycentral
2006年にミゲール・ガズマンが亡くなると、愛犬のキャプテン(スペイン語でキャピタン)は家から姿を消した。しかし1週間ほどして、亡き主人の墓の前で佇む犬の姿が目撃された。
家族がキャプテンを墓に連れていったことはなく、いかにしてそこに主人が眠っていることを知ったのかは謎だ。
今、ガズマン家の人々は毎週日曜日に墓参りに訪れ、キャプテンの様子を確認している。もちろん彼らも犬を家に連れて帰ろうとしたのだが、逃げてしまい無駄であった。
時折キャプテンが帰宅することもあるそうだが、必ず墓に戻るという。餌は墓地の職員によって与えられているが、彼らによると、昼の間は周辺をぶらぶらして、6時ぴったりに墓の前に戻ってくるのだという。キャプテンは今でも主人の帰りを待っている。
●また会えると信じて。6年前に亡くなった主人の墓から離れようとしない犬(アルゼンチン) : カラパイア
8. ゲラート(イギリス):命がけで狼から赤子を守った犬
References:historic-uk
13世紀の伝説によると、ウェールズ大公スラウェリンは狩猟犬を飼っていたが、特にゲラートという犬がお気に入りだった。
だがある日、角笛を鳴らしてもゲラートだけ姿を見せなかった。大公は仕方なくそのまま狩りに出る。帰還すると、ゲラートが嬉しそうに出迎えてきたではないか。だがどこかおかしい。全身血まみれだったのだ。大公は即座に息子の安否を気にした。
宮殿内はめちゃくちゃだった。ゆりかごが倒れ、部屋のそこかしこに血の跡があった。最悪の事態に慄然とした大公は、剣を抜き、ゲラートを殺した。
だが、その瞬間、赤子の泣き声が聞こえてきたのである。その子はゆりかごの下におり、すぐ後ろに大きな狼の死体があった。ゲラートは狼から大公の子を守っていたのであった。大公はその忠義に報いるため、ゲラートを国葬で送ることにした。
面白いことに、フランスにも同じような話が伝わっている。ただし犬の名はギヌフォルといい、赤子を襲ったのは狼ではなく蛇である。教会は認めていないが、地元では聖人扱いされている。
7. ワグヤ(インド):
王の遺体を火葬した時、自ら火の中に飛び込んでいった犬
References:dnaindia
17世紀、インドのシヴァージーは覇道を進み、マラーター王国を作り上げた。インドでは英雄として崇拝される彼であるが、その覇業は彼一人のものではないことを伝える伝説がある。
シヴァージーには常に愛犬のワグヤが付き従っていた。だが王が死に、遺体が火葬に付されると、ワグヤもまた燃え盛る薪の中に身を投げたという。シヴァージーの記念碑が建てられた時、その1つはワグヤに捧げられた。
2012年当時、ワグヤの記念碑は地元でも慣れ親しまれた場所であった。だが中にはこの話は単なる伝説であり、シヴァージーを侮辱するものだと受け入れない人たちがいた。
そうした人々のグループはワグヤの像を引き倒すと、谷底へ突き落とすという暴挙に出る。結局73人が逮捕されたが、現在に至るまでワグヤの像は再建されぬままだ。
6. フィド(イタリア):14年間毎日亡き主人を迎えにいった犬
References:pathtolunch
亡き主人に忠義を尽くした犬の多くは、死後に有名になっている。だがイタリアのフィド(イタリア語で忠義を意味する)は、生きている間に世に知られた数少ない忠犬だ。
野良犬だったフィドは、1941年に溝に落ちて身動きが取れなくなっていたところをカルロ・ソリアーニに救われた。フィドはその名の通りの忠犬で、どこにでもソリアーニに付き従った。毎朝、フィドは主人が通勤に使うバス停まで見送り、そこで帰宅を待った。
だが1943年12月、連合軍がソリアーニが務めていた工場を爆撃した。その日、フィドは夜まで待つが主人は帰宅せず、仕方なく家路についた。それから14年間というもの、毎日夜になるとフィドはバス停まで主人を出迎えに行った。
この姿に気づいた町の人々は、金メダルと税金の免除と銅像でフィドの忠義を讃えることにした。
5. スコットランド女王メアリーの愛犬
References:thepoodleanddogblog
スコットランド女王メアリーは波乱の生涯を生きた。わずか生後6日にしてスコットランドの王座に就き、つかの間フランスの王妃になり、失冠するとスコットランドに帰還。イングランドに逃れるが、カトリックであったことが脅威とみなされ、いとこだったエリザベス1世の捕虜となる。
そんな彼女に付き従った数少ない者がフランスで手に入れた小さな愛犬であった。捕虜となっている間、メアリーは孤独を紛らわすために犬に話しかけたと言われている。
しかしメアリーが王座簒奪を企んでいるとの疑惑が生じ、エリザベス1世は死刑執行令状にサインをする。断頭台へ赴く彼女が独りではなかったことに気づいた者は誰もいなかった。スカートの下にその犬が隠されていた。
首が切り落とされると、スカートが動き、中から小さな犬が這い出してきた。血に塗れたその犬はメアリーの首と胴体の間でうずくまったという。言い伝えによると、犬はその場から動こうともせず、そのまま餓死したそうだ。
4. ラスワープ(イギリス):遭難した主人を11週間守り続けた犬
References:.telegraph
グラハム・ナトールはウェールズで登山に行ったまま帰ってこなかった。1990年1月のその日、天候は悪く、捜索隊は1週間かけてもナトールも愛犬のラスワープも発見できなかった。
ついに捜索が打ち切られ、さらに7週間が過ぎたころ、あるハイキング客が川のほとりでナトールの遺体を発見。その傍らには飢えて衰弱しきったラスワープがいた。
雪と雨の中を11週間も主人に危険が迫っていないか警戒し続けたラスワープは山から降ろされ、どうにか主人の葬儀に出席することもできたが、それから間もなく息を引き取った。
2009年、ナトールが再建に力を尽くしていた駅のホームにラスワープの銅像が建てられた。この駅を救った誓願書には、ラスワープの手形も添えられている。
3. コスチャ(ロシア):少女の交通事故現場で待ち続ける犬
References:twistedsifter
ロシアのトリヤッチに、せわしなく行き交う道路の傍で日がな一日を過ごす犬がいた。地元の人たちはその犬のために家を探そうとしたが、彼は必ずいつもの道路脇に戻って行った。不審に思い調べてみると、犬には悲劇的な過去があることが判明した。
その犬が待つ場所は交通事故の現場であった。少女が即死し、その父親も病院で亡くなった。唯一の生き残りが彼らの飼い犬だった。いつまでも主人の帰りを待つ犬の忠義を讃えるために、トリヤッチの人々はコスチャという名を与えた。ロシア語で「忠義」を意味する言葉だ。
コスチャは7年間もそうして過ごしたが、ある日、近くの林の中で死んでいるところが見つかった。人々は悲しみ、コスチャの像を建てることにした。最近では新婚夫婦が互いの忠節を誓うために、コスチャ像の鼻を撫でていくという。
2. ハチ公(日本):約10年間駅で帰らぬ主人を待ち続けた犬
References:wikipedia
農業の研究をしていた大学教授、上野英三郎はかねてから秋田犬を欲しいと願っており、1924年ついに念願叶って子犬を手に入れるとハチと名付けた。
ハチは毎日上野に連れられて駅まで来ると、そこで晩まで主人の帰りを待った。だが二人の出会いからわずか1年後に上野は急死してしまう。以来、ハチは約10年間、駅で帰らぬ主人を待ち続けることになる。
その忠義ある様子に町の人々はすぐに気がつき、餌を与えるようになる。忠犬ハチ公の話は日本全国に広まり、1934年にはそれを讃えるための銅像まで建てられた。
1935年にハチは亡くなる。その様子を捉えた写真では、ハチ公の亡骸に集まり悲嘆にくれる人々の姿が確認できる。
image credit:Death of Hachiko - Last Photo.jpg - Wikipedia
ハチ公像は東京でも有名なスポットとなっている。また国立科学博物館にはハチ公の剥製も展示されている。
image credit:Hachiko Stuffed specimen.jpg - Wikipedia
そしてハチ公の没後80年にあたる2015年3月8日、ハチ公と上野英三郎博士像が東京大学、弥生キャンパスの農学部正門を入ってすぐ左に建てられた。
image credit:en.a.u-tokyo.ac.jp
1. グレーフライアーズ・ボビー(イギリス):
14年間主人の墓を守り続けた犬
References:historic-uk
エディンバラ、キャンドルメーカー・ロウの片隅には、観光客が群がり写真撮影を行なっている小さな犬のブロンズ像がある。その道路を渡ったところにあるのがグレーフライアーズ・カークヤード墓地である――グレーフライアーズ・ボビーの伝説が生まれた場所だ。
言い伝えによれば、ジョン・グレイというエディンバラの警察官がボビーというテリアを飼っていたという。やがてグレイが亡くなると、彼はグレーフライアーズ・カークヤード墓地に埋葬された。しかしボビーは主人から離れようとはしなかった。
管理人はボビーを立ち去らせようとするが、犬は頑として言うことを聞かず、やがて人々からグレイの墓守とみなされるようになる。
ボビーが14年の墓守を終え、息をひきとると、その遺体は主人の墓のそばに埋葬され、墓石には「グレーフライアーズ・ボビー――1872年1月14日永眠――享年16歳――その忠義と献身を我々全員の教示とせん」と碑銘が刻まれた。
この言い伝えには異論がある。
ある研究者によると、実は墓の管理人が餌でボビーを呼び寄せて忠犬の噂を広め、参拝者を増やそうと企てたのだという。墓地の近くにあるパブも噂のおかげで大きな利益を得ることができた。
また”ボビー”が死ぬと、新しい”ボビー”に置き換えられて、企てが続けられたという主張もある。身もふたもない話であって、ほとんどの人は言い伝え通りの忠犬ボビーを信じている。
written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
犬は、家族だよ
2. 匿名処理班
タロとジロもそうだが、偉人ならぬ偉犬を剥製で残す感覚がわからない。
3. 匿名処理班
タイトルだけで涙滲んできた…
インドのは…インドには夫が亡くなると妻が後追い焼身自殺させられる風習があるから、もしや…?と思ってしまった
現在では禁止されてるけど、隠れて行われる事件が今でもある
貞淑な妻として美談になるんだそう、でも当然嫌がる人はいるけど周りが精神的にも物理的にも逃げ場を無くしていく恐ろしい事例が…
犬と全然関係ないけとちょっと浮かんでしまった…
4. 匿名処理班
狼から赤ちゃん守った犬の話で日本の化け猫の話思い出した
猫が遊女を蛇から守ってたのに殺しちゃった話が慥かあったよね
5. 匿名処理班
昔の価値観ならハチ公を剥製にした理由はわかるけれど
現代に同じことが起こってもハチ公を剥製にしようと思わないだろう
もう剥製の見世物は止めて焼却して成仏させなよ
見世物にしているのむかつくわ
6. 匿名処理班
大公トラウマもんだな
7. 匿名処理班
"この姿に気づいた町の人々は、金メダルと税金の免除と銅像でフィドの忠義を讃えることにした。"
イタリアでは犬も税金払ってるのか。。
8. 匿名処理班
泣いちゃうよ
9. 匿名処理班
いやゲラートさん可哀想過ぎるやん…
10. 匿名処理班
ハチ公と上野博士の像を見ると涙が出てくる
どんな形であっても、再会できて良かったね
11. 匿名処理班
東大の像のこと、この記事で初めて知った。
素敵な像だね。
12.
13. 匿名処理班
あの世で一緒になることを願うよあの世があるかは知らんが
14. 名無しのまとめりー
ゲラート…安楽死ということでなんとか胸糞回避
15. 匿名処理班
8にそっくりな話を「まんが日本昔ばなし」で見たな
飼い主は殿様とかじゃなく慎ましい猟師だけど
後の人生で『俺ぁ犬にも劣る人間だ』と嘆いたという
最後のナレーションが子供心に印象的だった
16. 匿名処理班
ご主人と一緒に銅像になってる子ってハチだけなのかな、この銅像見るとハチ公もハチ公のご主人も、再会した姿を銅像として造ろうって企画した人達も皆が愛しくて涙が出るよ
17. 匿名処理班
とりあえず、飼い主死に過ぎー
18. 匿名処理班
「待ち続ける犬」の話は数多くあるが、悲劇に遭った人間にもたまに起こるように"時が止まってしまった"のか、それとも"分かっていてそれでも"なのか・・・
いずれにしても切ない