男「野崎梅太郎に転生した」
男「間違いない……俺は野崎に転生したんだ!!」
数分前
男『やべ、今日野崎くんの新刊じゃん!! 早く本屋行かないと!!』タッタッタッ
男『くそ……この信号青になるの遅いんだよな……無視しちゃえ!!』ダッ
キキー!!
男『!!!』
ドカーン!!
男「まさか漫画のキャラに転生するなんて……」
男「でも……あの大好きな野崎くんの世界に来られるなんて……なんて幸せだ!!」
男「それに……野崎になったって事は……」
男「俺の大好きな佐倉千代ちゃんといられるって事だ!!」
男「そうだ、千代ちゃんは野崎にゾッコン……」
男「つまり俺が告白すれば……カップル成立だ!!」
男「前世じゃ全くモテなかったからな……こりゃチャンスだ!!」
男「!! 誰だろう」
ガチャ
佐倉「野崎くんこんにちは!! アシスタントしに来たよ!!」
男「!!!///」
男「ほ、本物の千代ちゃんだ!!///」
佐倉「へ……?」
男「!! な、なんでもないよ!!」
男(すごい……本当にちっこくて可愛い……)
佐倉「うん!!」
男「……!!」
男(待てよ……俺、絵なんて碌に描いた事ないぞ!!)
佐倉「野崎くん、今日はどこをベタすればいいかな?」
男「!!! え、えーと……」
男「……あ!! ここだ!! ここにベタして!!」
佐倉「分かった!!」ベタベタ
男「……」
佐倉「……野崎くん、描かないの?」
男「! あ、いや、その……」
佐倉「???」
男「……!!」スラスラ
男(なんだ……手が勝手に……?)
佐倉「うわあ!! やっぱり野崎くんの描くマミコは可愛いね!!」
男(マミコが……描けた)
男「……」スラスラ
男(凄い……描きたいと思った物が全部描ける!!)
佐倉「野崎くん!!? 背景も描けるようになったの!!?」
男「……!! う、うん!! 密かに練習してたんだ!!」
佐倉「凄いよ野崎くん!! 堀先輩もきっと褒めてくれるよ!!」
男(しまった……野崎は背景を描けないんだった)
佐倉「ふぅ。 やっと終わったね」
男「そ、そうだね」
男(大好きな千代ちゃんと二人きりでいられるなんて……なんて幸せなんだ)
男「……」
男(よし、決めた)
男「……千代ちゃん。 言いたい事があるんだ」
佐倉「え……?」
男(第二の人生は……勝ち組になってやる!!)
男「俺は……君が好きだ」
佐倉「!!!??」
男「恥ずかしくて……素直になれなかったんだ。 それに……告白は男の方からちゃんとやった方がいいと思って」
男「だから改めて言わせてくれ……佐倉千代さん、俺と付き合ってください!!」
佐倉「……」
男(野崎にこんな事を言われたんだ。 きっと千代ちゃんはOKするに違いない!!)
佐倉「……ねぇ」
男「?」
佐倉「貴方、野崎くんじゃないでしょ」
男「!!!???」
佐倉「だっていつもと喋り方が違うんだもん、野崎くんは私の事を千代ちゃんなんて呼ばないよ」
佐倉「あと野崎くんは背景もそんな上手く描けないし誰かが家にあがったら必ず飲み物がいるかどうか聞くよ? 玄関からリビングまでいつも8歩なのに今日は10歩だったよね?」
佐倉「作業中に剣さんの話しなかったよね? 少なくとも野崎くんは一時間に5回は剣さんの話はするよ? 前野さんの悪口も言わなかったよね? 作業中の手の動きも姿勢もいつもと違ったよ? 腕の角度もいつもより20度違ったよ?」
佐倉「それに野崎くんはわたしの好意には絶対に気づかないよ。 だから気づいてないフリをしたっていうのは嘘だよね?」
佐倉「ねぇ、貴方は何者なの? 本物の野崎くんをどこへやったの?」
男「……」
佐倉「……?」
佐倉「転生した!?」
佐倉「しかも貴方が生前いたのは……私達が二次元の世界!!?」
男「は、はい……」
男(流石野崎フェチ……俺が偽物だと見破るなんて……)
男「でも……本当に信じてくれるの?」
佐倉「……うん、信じるよ。 いつもと違うのが何よりの証拠だよ」
佐倉「でも……みこりん達は信じてくれないかもね」
男「そ、そうだね……」
佐倉「死ぬと……誰かを乗っ取って違う世界に転生するって決まりがあるって事?」
男「うーん……」
佐倉「もう……野崎くんには会えないの?」
男「!!!」
男(千代ちゃんが悲しそうな顔をしている……)
男(こんな顔……これ以上は見たくない!!)
男「……もしかしたらなんだけどね」
佐倉「?」
男「俺は……前の世界で未練があったからこの世界に来たのかもしれない」
佐倉「未練……?」
男「うん……」
男「月刊少女野崎くんの……最新刊が見れなかった事だ!」
佐倉「!!」
男「うん」
男「だから最新刊が見れたら……俺は未練がなくなって……いなくなるかもしれない!!」
男「……我ながら暴論だけどね」
佐倉「で、でも!! もし仮にそうだったとして!! どうやってこの世界で最新刊を手に入れるの!?」
佐倉「だって……この世界の私達は……三次元なんだよ!!?」
男「俺がこうやって千代ちゃん達と過ごす事が……それに相当するかもしれない」
佐倉「え……?」
男「だから……俺が10話分に相当する日々を過ごす事が……最新刊の話を見た事になると思うんだ!!」
男「どう……かな?」
佐倉「うーん……めちゃくちゃだとは思うけど……」
男「……」
佐倉「でも……やってみる価値はあると思うよ!」
男「!!」
佐倉「それにダメでも……また違う方法を探せばいいもんね!!」
男「千代ちゃん……」
佐倉「今日のアシスタントも終わったし……ネタ探ししよう!! 上手く行けば2話分稼げるかも!!」
男「……うん!!」
男「チーズケーキ買おう」
佐倉「凄い!! 私の好物も知ってるんだ」
佐倉「へぇ~……私達のそれって漫画だけじゃなくてアニメにもなってるんだ」
男「二期見たかったな……」
男「野崎って本当鈍感だよな……」
佐倉「もう!! 野崎くんの体で野崎くんの悪口言わないで!!」
佐倉「そうだね!!」
佐倉「……」
男「……千代ちゃん?」
佐倉「今日こうやって……過ごしたのも……」
佐倉「本物の野崎くんは……覚えてないし……知らないんだよね」
佐倉「というか……本物の野崎くんは……もう帰ってこないのかもしれないんだよね」
男「千代ちゃん……」
男「……」
佐倉「え……?」
男「野崎に転生しちゃって……本当にごめん」
佐倉「な、なんで貴方が謝るの!!?」
男「俺が……信号を無視しなければ……死なずに済んだのに……」
男「千代ちゃんを……悲しませる事もなかったのに……」
佐倉「そ、そんな事言わないでよ!! 過去の事をどう言ってもしょうがないよ!!」
佐倉「それにね……貴方とこうやって過ごしてるけど……凄く楽しいよ!!」
佐倉「今までの野崎くんだったら実現できなかった事が実現してるんだもん!!」
佐倉「悪いのは私だよ!! こんなによくしてもらってるのに……悲しそうな顔をするなんて……」
男「千代ちゃん……」
佐倉「え……?」
男「だから……俺は君が幸せな所が見たいんだ」
男「だから俺が……早く君が幸せになれるよう努力する」
男「この身体から抜け出して……本物の野崎と会わせる」
男「だから……もし俺がこの身体から離れる事ができたら……」
男「ちゃんと野崎に告白して……幸せになって欲しいんだ」
佐倉「……」
佐倉「……分かった。 約束する」
男「……?」
佐倉「貴方……私に幸せになって欲しいんだよね?」
男「う、うん」
佐倉「だったら……」
男「千代ちゃん……?」
佐倉「……野崎くん!! 私、野崎くんの事が好きです!!」
佐倉「私と……付き合ってください!!」
男「!!!!」
男(そうか、そういう事か!!)
男「……俺でよければ!!」
パァァ
男「!!!」
男「……!! 野崎の体から俺の魂が抜けていく!!?」
佐倉「やっぱり……やっぱりだよ!!」
佐倉「貴方の未練は月刊少女野崎くんの最新刊が見れなかった事じゃない……」
佐倉「月刊少女野崎くんの結末が見れなかった事だったんだよ!!」
男「!!!」
佐倉「私が幸せになる事が……私が野崎くんと付き合う事が……漫画のゴールインだったんだよ!!」
男「よかった……これで……」
佐倉「……約束するね!!」
男「!!!」
佐倉「私……貴方を幸せにする為に……幸せになるね!!」
佐倉「これから野崎くんと……楽しい日々を過ごすね!! 恋人らしい事……いっぱいするね!!」
男「千代ちゃん……本当にありがとう……」
男「短い間だったけど……本当にありがとう……さよなら……」
佐倉「……うん!! 元気でね!!」
パァァ……
母「起きて!! 起きて!!」
母「ほら見て!! あんたの好きな野崎くんよ!! 最終回も載ってるわ!!」
医者「お母様……残念ながら息子さんは……」
男「……」ムクッ
医者「!!!?」
男「……母さん?」
医者「馬鹿な……信じられん」
男「……それは?」
母「野崎くん!! 最終巻よ!!」
母「ほら見て!! 野崎くんと千代ちゃんが……」
男「……!!」
男(そうか……千代ちゃん……よかった……)
男(千代ちゃんの恋が実ったなら……もう思い残す事は……)
男「……」バタッ
女「ねー野崎くんの最終回見たー?」
女「見た見た!! 千代ちゃんがとうとう野崎くんに告白したよねー!!」
女「連載終わったのは寂しいけど……千代ちゃん野崎と付き合えてよかったねー」
女「ねー」
佐倉『……野崎くん!! 私、野崎くんの事が好きです!!』
佐倉『私と……付き合ってください!!』
野崎『……俺でよければ!!』
終わり
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