パークランドの高校で発生した銃乱射事件ではその後、惨劇を生き残った生徒たちがあえて表に出てきて銃規制を訴える集会を行い、さらにあらゆる銃規制議論をもみ消してきた全米ライフル協会(NRA)に対して自動小銃の禁止法案を支持するよう訴えかけました。
ところが大統領はこうした心に傷を負いながらも立ち上がった生徒たちの活動を称賛するどころか「先生に銃を持ってもらえばいいじゃないか」と全く噛み合わない提案をし、そのうえ「銃を持つ教師にはボーナスを支給しよう」と言い出す始末。
そして、その流れの延長線なのかどうなのか、今度はビデオゲームや映画の映像表現における暴力性に問題があるのではとして、すぐにもビデオゲーム業界のメンバーと会って「学校を守る」ための議論を行う方針を示しました。
たしかに、1999年に発生したコロンバイン高校銃乱射事件では、犯人が好んでいたFPSゲーム「Doom」やヘヴィメタル音楽が事件を引き起こす一因になったとする論調が高まったことがあります。しかし、ゲームや映画、音楽といったコンテンツが人間の暴力性を引き出すことを証明した決定的な研究はいまだありません。
2015年にはアメリカ心理学会が暴力的なビデオゲームと暴力行為の関連性を研究したものの、やはりそれを証明することはできませんでした。それどころかこの2月には、英ヨーク大学が暴力的なビデオゲームと暴力行為との関連性を裏付ける「証拠がない」とする研究結果を発表しています。
いわば迷信と言っても差し支えないビデオゲームと暴力の関連について、いまさら大統領はメーカーと何を議論しようというのか? というのはわれわれ一般人の誰もが感じるところ。一方で多額の献金で政治家に影響力があるNRAらロビー団体や、大統領の支持基盤である保守派が銃規制反対の立場である以上、トランプ氏が「銃規制します」ということはなさそうです。
なおホワイトハウスの報道官はトランプ大統領が来週、どのゲームメーカーの誰と合うかについては明確にしていません。
ちなみに米ジョージア州ダルトンの中学校では2月28日、銃を手にした教師が教室に立てこもり、校長が入室しようとした際に発砲する事件も発生しており、教師に銃をもたせる案から懸念された問題が証明される事態となっています。