サイバーコネクトツーの松山氏、今はもうスマホゲーは基本やらないと宣言している記事が掲載中。コンシューマーに全力投球という姿勢になっており、意気込みそのものは買いたいところですね。
松山洋氏(以下、松山):サイバーコネクトツーは、もともと1996年に福岡で誕生したゲーム会社です。当初、10名ほどの社員しかいなかったのが、20年たった今は約200人にまで成長しました。
福岡の本社で約170名、東京本社で約20名、カナダのモントリオールにあるスタジオで16名ほどスタッフが働いており、家庭用ゲームを中心に開発を行っています。
5、6年前にはスマホゲームの開発も手掛けていましたが、今は家庭用向けに完全に特化しています。最後に作ったスマホゲームは、ドリコムとの共同タイトル『フルボッコヒーローズX』ですが、今は運営はすべてドリコムさんにおまかせしている状況です。
なぜ、スマホゲームから手を引いているかというと、現状、弊社はアプリには向いていないと感じているから。我々が得意とするものは、アクションゲームやアクションアドベンチャー。とにかくアクションが得意なわけです。
これは個人的意見ですが、アクションゲームは物理ボタンの手応えがあるからこそ面白い! 物理ボタンをガチャガチャ押し込むからアクションゲームは気持ちいいんです。スマホの画面で無理やりにアクションをさせたところで、その手応えはないように感じてしまうんですよね。
――確かに、スマホゲームでは複雑なアクションを表現することは難しいですよね。
松山:もちろん、スマホにも向き不向きがあるのは理解しています。
ソーシャルゲームのカード合成など何かをタップで選んで合成するとか、指で押して引っ張るなどの操作は、スマホというデバイスにピッタリです。このあたりはスマホなりのアクション要素ではありますが、いずれにしても本当のアクションではないというのが、私の意見です。
また、ゲームソフトというのは本来、まだ遊んでもいないものを面白そうだと思って購入するものですよね?
今でこそ体験版がダウンロードできて、発売前に遊ぶことができますが、その全容はもちろん把握できない。だけど、面白そうという期待を抱いてソフトを買う。そして、買った以上は最後までやり切るというものでした。
お客様の期待に、メーカーは面白さで応えるという、目に見えない信頼関係があるからこそ、ゲームは成り立っているものだと思っています。スマホゲームの「基本プレイ無料」というビジネスモデルは、私の考えと根本からして違うんです。
加えて、我々はお客様の期待に応えられるものを作るため、映像演出にもこだわっていて、高精細でダイナミックな映像が弊社のゲームの特徴です。スマホの小さい画面より、大きいテレビ画面で遊んでもらった方がその魅力を存分に楽しめると思います。
こういったところから、スマホゲームはやっぱりうちには向いていない、という結論に至りました。
ただし、いっさいやらないと決めているわけではないですよ?
現場のスタッフから面白いアイデアが出てきたり、パートナー会社から案件をいただければその都度お話をさせていただきますし、それが実現してスマホゲームを再び開発することもあるかもしれません。
典型的な、いわゆるカードソーシャルゲームは、やらないと決めているだけです。
ゲームアプリはとにかく金がかかる……
松山:アプリ開発はそれなりに時間がかかりますが、昔は半年かけて作ったものをパッとリリースして、あとは運営でなんとかしていくという感じでした。
しかし、ちょっと前まで開発費が1億円未満だったのが、今や4億、5億と高騰しています。そして、いざサービスが始まったらKPI(※)とのにらめっこが始まり、開発スタッフは24時間体制で気の休まる暇がまったくありません。
※KPI:Key Performance Indicator(目標の達成度を評価するための評価指標)
それによってお客様が一喜一憂してくださるならそれでいいかもしれないですけど、1年、2年、3年と運営していって、成功しているものはありますが、いずれはサービスが終了しますよね? 中には半年くらいで終わってしまうものもある。
サービス終了の瞬間って、作ってる我々もお客様も、必ず疲れ果ててサービスを閉じるんです。
疲れ果てた結果、運営側は「もういいや」となってしまう。これが嫌なんですよ!
私は映画、漫画、アニメが好きなんですが、例えば映画なら、プロモーションや予告を見て「面白そうだな」と感じて映画館に観にいく。そこで2時間も拘束されて、「面白かった!」って思うこともあれば、「だまされた! クソやん!!」と思うこともあるわけですよ。
これは家庭用ゲームにも共通していて、期待して購入しても、当たりはずれがある。面白いと思ってもらえるかどうか、我々クリエイターにとってはお客様との真剣勝負なんです。
今の時代、社会人はもちろん、学生だって忙しいので、空き時間にポチポチやるのもいいとは思いますよ。
ただ、たまの週末に映画を観るのと同じ感じに、晩御飯やお風呂も済ませて、ビールやコーラなんかを用意して、「今日は眠くなるまで遊ぶぞ!」とゲームを遊ぶのが好きなんです。これが、僕の好きな娯楽なんです。
いつまでもずるずると課金が必要となるやり方が気に入らないわけですよ。
今の家庭用ゲームって、大体6,000~7,000円くらいの価格ですけど、これに見合った体験ができればそれでいいと思うんです。
「100時間遊べます」というボリュームをウリにしても、今の人たちは忙しいから、そんなに時間は取れません。10時間くらいでサクッと終わっても「あー面白かった!」と、生活の中で濃密な体験ができる作品こそ、必要なものではないかと私は思っているんです。
なので、サイバーコネクトツーができてから20年ですけど、5年後はどうしているかわかりませんが、今はやらない。それが弊社の考え方です。
もし、スタッフがアイデアを出してきたとしても、いわゆるポチポチゲーはやらせません。まだ誰も見たことがないような、「スマホを使ってそんなことやんの!?」みたいな尖ったやつ、売れるかどうか正直判断つかないようなやつをやりたいと思っています。
今のゲーム業界は、どこもスマホゲームを運営していて、弊社でも「スマホの方が利益率高いし、じゃあうちも……」みたいな意見もやっぱり出てくるわけです。話しを聞く限り、どこの会社でもそういった声は出てくるようです。
でも、今のスマホゲーム市場ってレッドオーシャン(※1)。結局は札束の殴り合いじゃないですか? 年末年始の番組スポンサーをやったり、その番組内で「なんとかゲーム プレゼンツ」って言わないとDAU(※2)が稼げないわけじゃないですか。あの手法は、どの企業にでもできる手段ではありません。
「すき間でもいいから、ちょっとお金がほしい」と始めた人たちは、失敗している事例もよく耳にします。今や中途半端では無理です。年間20億円ぐらいは使う気でいないと。20億円使って、400億円儲けましょうっていうのが今のアプリビジネスの実態ではないでしょうか。
※1レッドオーシャン:競争の激しい市場
※2 DAU:Daily Active Users(1日あたりのアクティブユーザー数)
様変わりした家庭用ゲーム開発現場
松山:一方で、今の家庭用ゲームは、この10年で変わってきていて、ゲームクリエイターの仕事の仕方も変化しています。
ほんの10年前、PS2の時代であれば、開発チームは10~30人でのリソースで、1年くらいのペースでゲームソフトを発売していました。もちろん、もっと人員や時間を割いている大作もありましたが、10年前のゲームビジネスっていうのは、少人数、短期間開発が主流だったんですよ。
でも今は、最低でも100人は必要。100人以下だったら本気で売る気がないと思われます。開発期間は3年はかかります。
弊社で開発したPS4向けタイトルも、早くて2年半、普通にやると3年は絶対に費やします。それほどに、今のゲーム機(PS4)はスペックが向上して、スケールも膨大なんです。
お客様も、クリアするだけなら10時間くらいのボリュームで納得しますが、そのあとに無限に遊べるようなゲームデザインを求めています。だからオープンワールドが主流になって、オンライン対戦だったり、ランキングだったりを実装する。
開発規模があまりにも大きくて、大人数を長期間維持することになるので、最低でも10億円か20億円、大抵はそれ以上の開発費が発生します。北米やヨーロッパで開発されているゲームのほとんどは100億規模の予算です。今はどうやってお金を集めるかがゲームビジネスになっているんですよね。
なので、毎年のように新作が発売される人気シリーズなんかは、複数の開発会社が交互に新作を作ることで、開発会社は3年に1本の開発だけど、それを実現させているんです。
・・・としていてPS4(と海外ではXBOXOne)と更にニンテンドースイッチにも手を広げているので、これからどういう舵取りをしていくかというのは注目されますね。PS4がメインのような台詞になっていますから、3年という開発機関を経て世に出るゲームが期待通りな事を願いたいですね。
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松山洋氏(以下、松山):サイバーコネクトツーは、もともと1996年に福岡で誕生したゲーム会社です。当初、10名ほどの社員しかいなかったのが、20年たった今は約200人にまで成長しました。
福岡の本社で約170名、東京本社で約20名、カナダのモントリオールにあるスタジオで16名ほどスタッフが働いており、家庭用ゲームを中心に開発を行っています。
5、6年前にはスマホゲームの開発も手掛けていましたが、今は家庭用向けに完全に特化しています。最後に作ったスマホゲームは、ドリコムとの共同タイトル『フルボッコヒーローズX』ですが、今は運営はすべてドリコムさんにおまかせしている状況です。
なぜ、スマホゲームから手を引いているかというと、現状、弊社はアプリには向いていないと感じているから。我々が得意とするものは、アクションゲームやアクションアドベンチャー。とにかくアクションが得意なわけです。
これは個人的意見ですが、アクションゲームは物理ボタンの手応えがあるからこそ面白い! 物理ボタンをガチャガチャ押し込むからアクションゲームは気持ちいいんです。スマホの画面で無理やりにアクションをさせたところで、その手応えはないように感じてしまうんですよね。
――確かに、スマホゲームでは複雑なアクションを表現することは難しいですよね。
松山:もちろん、スマホにも向き不向きがあるのは理解しています。
ソーシャルゲームのカード合成など何かをタップで選んで合成するとか、指で押して引っ張るなどの操作は、スマホというデバイスにピッタリです。このあたりはスマホなりのアクション要素ではありますが、いずれにしても本当のアクションではないというのが、私の意見です。
また、ゲームソフトというのは本来、まだ遊んでもいないものを面白そうだと思って購入するものですよね?
今でこそ体験版がダウンロードできて、発売前に遊ぶことができますが、その全容はもちろん把握できない。だけど、面白そうという期待を抱いてソフトを買う。そして、買った以上は最後までやり切るというものでした。
お客様の期待に、メーカーは面白さで応えるという、目に見えない信頼関係があるからこそ、ゲームは成り立っているものだと思っています。スマホゲームの「基本プレイ無料」というビジネスモデルは、私の考えと根本からして違うんです。
加えて、我々はお客様の期待に応えられるものを作るため、映像演出にもこだわっていて、高精細でダイナミックな映像が弊社のゲームの特徴です。スマホの小さい画面より、大きいテレビ画面で遊んでもらった方がその魅力を存分に楽しめると思います。
こういったところから、スマホゲームはやっぱりうちには向いていない、という結論に至りました。
ただし、いっさいやらないと決めているわけではないですよ?
現場のスタッフから面白いアイデアが出てきたり、パートナー会社から案件をいただければその都度お話をさせていただきますし、それが実現してスマホゲームを再び開発することもあるかもしれません。
典型的な、いわゆるカードソーシャルゲームは、やらないと決めているだけです。
ゲームアプリはとにかく金がかかる……
松山:アプリ開発はそれなりに時間がかかりますが、昔は半年かけて作ったものをパッとリリースして、あとは運営でなんとかしていくという感じでした。
しかし、ちょっと前まで開発費が1億円未満だったのが、今や4億、5億と高騰しています。そして、いざサービスが始まったらKPI(※)とのにらめっこが始まり、開発スタッフは24時間体制で気の休まる暇がまったくありません。
※KPI:Key Performance Indicator(目標の達成度を評価するための評価指標)
それによってお客様が一喜一憂してくださるならそれでいいかもしれないですけど、1年、2年、3年と運営していって、成功しているものはありますが、いずれはサービスが終了しますよね? 中には半年くらいで終わってしまうものもある。
サービス終了の瞬間って、作ってる我々もお客様も、必ず疲れ果ててサービスを閉じるんです。
疲れ果てた結果、運営側は「もういいや」となってしまう。これが嫌なんですよ!
私は映画、漫画、アニメが好きなんですが、例えば映画なら、プロモーションや予告を見て「面白そうだな」と感じて映画館に観にいく。そこで2時間も拘束されて、「面白かった!」って思うこともあれば、「だまされた! クソやん!!」と思うこともあるわけですよ。
これは家庭用ゲームにも共通していて、期待して購入しても、当たりはずれがある。面白いと思ってもらえるかどうか、我々クリエイターにとってはお客様との真剣勝負なんです。
今の時代、社会人はもちろん、学生だって忙しいので、空き時間にポチポチやるのもいいとは思いますよ。
ただ、たまの週末に映画を観るのと同じ感じに、晩御飯やお風呂も済ませて、ビールやコーラなんかを用意して、「今日は眠くなるまで遊ぶぞ!」とゲームを遊ぶのが好きなんです。これが、僕の好きな娯楽なんです。
いつまでもずるずると課金が必要となるやり方が気に入らないわけですよ。
今の家庭用ゲームって、大体6,000~7,000円くらいの価格ですけど、これに見合った体験ができればそれでいいと思うんです。
「100時間遊べます」というボリュームをウリにしても、今の人たちは忙しいから、そんなに時間は取れません。10時間くらいでサクッと終わっても「あー面白かった!」と、生活の中で濃密な体験ができる作品こそ、必要なものではないかと私は思っているんです。
なので、サイバーコネクトツーができてから20年ですけど、5年後はどうしているかわかりませんが、今はやらない。それが弊社の考え方です。
もし、スタッフがアイデアを出してきたとしても、いわゆるポチポチゲーはやらせません。まだ誰も見たことがないような、「スマホを使ってそんなことやんの!?」みたいな尖ったやつ、売れるかどうか正直判断つかないようなやつをやりたいと思っています。
今のゲーム業界は、どこもスマホゲームを運営していて、弊社でも「スマホの方が利益率高いし、じゃあうちも……」みたいな意見もやっぱり出てくるわけです。話しを聞く限り、どこの会社でもそういった声は出てくるようです。
でも、今のスマホゲーム市場ってレッドオーシャン(※1)。結局は札束の殴り合いじゃないですか? 年末年始の番組スポンサーをやったり、その番組内で「なんとかゲーム プレゼンツ」って言わないとDAU(※2)が稼げないわけじゃないですか。あの手法は、どの企業にでもできる手段ではありません。
「すき間でもいいから、ちょっとお金がほしい」と始めた人たちは、失敗している事例もよく耳にします。今や中途半端では無理です。年間20億円ぐらいは使う気でいないと。20億円使って、400億円儲けましょうっていうのが今のアプリビジネスの実態ではないでしょうか。
※1レッドオーシャン:競争の激しい市場
※2 DAU:Daily Active Users(1日あたりのアクティブユーザー数)
様変わりした家庭用ゲーム開発現場
松山:一方で、今の家庭用ゲームは、この10年で変わってきていて、ゲームクリエイターの仕事の仕方も変化しています。
ほんの10年前、PS2の時代であれば、開発チームは10~30人でのリソースで、1年くらいのペースでゲームソフトを発売していました。もちろん、もっと人員や時間を割いている大作もありましたが、10年前のゲームビジネスっていうのは、少人数、短期間開発が主流だったんですよ。
でも今は、最低でも100人は必要。100人以下だったら本気で売る気がないと思われます。開発期間は3年はかかります。
弊社で開発したPS4向けタイトルも、早くて2年半、普通にやると3年は絶対に費やします。それほどに、今のゲーム機(PS4)はスペックが向上して、スケールも膨大なんです。
お客様も、クリアするだけなら10時間くらいのボリュームで納得しますが、そのあとに無限に遊べるようなゲームデザインを求めています。だからオープンワールドが主流になって、オンライン対戦だったり、ランキングだったりを実装する。
開発規模があまりにも大きくて、大人数を長期間維持することになるので、最低でも10億円か20億円、大抵はそれ以上の開発費が発生します。北米やヨーロッパで開発されているゲームのほとんどは100億規模の予算です。今はどうやってお金を集めるかがゲームビジネスになっているんですよね。
なので、毎年のように新作が発売される人気シリーズなんかは、複数の開発会社が交互に新作を作ることで、開発会社は3年に1本の開発だけど、それを実現させているんです。
・・・としていてPS4(と海外ではXBOXOne)と更にニンテンドースイッチにも手を広げているので、これからどういう舵取りをしていくかというのは注目されますね。PS4がメインのような台詞になっていますから、3年という開発機関を経て世に出るゲームが期待通りな事を願いたいですね。
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