9785493『映画ドラえもん のび太の宝島』が初登場1位となりました。シリーズ最高興収だった前作を上回るスタートで、「歴代最高」の興収が見込まれています。マンネリ化で興収の落ち込んでいた『ドラえもん』は、なぜ復活できたのか・・



『のび太の宝島』が歴代最高になった理由


やはり映画ドラは2005年の声優交代(映画ドラとしての声優交代は2006年)が大きなターニングポイントでした。そのままの体制で作り続けることもできたでしょう、反対意見もたくさん出たでしょう。

 しかし製作サイドは、作品の耐用年数が近づきつつあることに気づいていました。マンネリを良しとせず、悩み抜いた末に、勇気をもって思い切りました。一言、大英断です。

 結果『ドラえもん』は、コンテンツとして、高価値なIP(知財)として延命することができました。作品もクルマや人間などと同様、適切にメンテナンスを続ければ長持ちするのです。

 余談ですが、「マンネリを断ち切るべし」はF先生自身の信条でもありました。自伝的要素の強い晩年の中編『未来の想い出』では、マンガ家の主人公(F先生がモデル)に向かって、編集者がたしなめるように同様のことを言っているからです。

 昔からあるものを大きく変えるのは、伝統を踏みにじる行為でしょうか?  長年の顧客に対する暴挙でしょうか?  それは違います。何百年も続く老舗の和菓子屋は、「昔と同じ味」を謳(うた)っていても、その時代の人の味覚に合うよう菓子の味を微妙に変えているといいます。粗食中心だった江戸時代の庶民の舌と、洋食が一般化してからの現代人の舌が、同じであるはずがありません。


●『映画ドラえもん のび太の宝島』予告編映像



 伝統芸能でありながら、歌舞伎や落語が多くの観客を集めているのも同じでしょう。固有の良さは残しつつ、その時代の観客の感覚に合うようにアレンジを加えることで、時代の変化に対応しています。もし伝統にあぐらをかいて居座り、かたくなに何ひとつ変えなければ、観客からは早晩愛想を尽かされるのではないでしょうか。

 ブランドや看板の価値を守り、生き残るために、あえて変える。いちばん大事なものを変えないために、変える。繁栄を続けている老舗企業は、必ずそれを実践しています。声優とスタッフを2005年に刷新したり、大人向けの目配せを施したりというのは、老舗の和菓子屋や歌舞伎役者や噺家がその看板を守り、これからも繁栄していくための精進とまったく同じ。むしろ顧客をつなぎとめるための努力です。

 そもそも、1969年から96年まで連載された『ドラえもん』の原作マンガですら、初期・中期・晩期で作風がまったく異なります。70年代の子供と90年代の子供では感じ入るツボが違う――それにF先生が気づいていなかったはずはありません。

 『のび太の宝島』の絶好調スタートは、決して一日にしてならず。「今年の宣伝が良かった、今年のタイアップは効果的だった、今年は特に傑作だった」といった近視眼的な話ではありません。長年にわたる蓄積の結果であり、その功績に与えられた勲章なのです・・

●詳細はソース


●[映画ドラえもん のび太の宝島]日本版予告 第2弾













●「映画ドラえもん のび太の宝島」予告3(星野源 主題歌「ドラえもん」ver.)