恋のいくもも高校生編【ミリマス】
桃子「もうほんっと信じられない!」
莉緒「……」
桃子「育は桃子の気持ち全然わかってくれないんだもん。 鈍感だし、気が利かないし…… あっ、このパンケーキ美味しい」
莉緒「ねぇ桃子ちゃん」
桃子「何? 莉緒さん」
莉緒「私のこと呼んだ理由って育ちゃんとのノロケ話がしたかっただけ?」
桃子「の、惚気!? ち、違うもん! 桃子は育に本当の本当に愛想尽かしてるんだからね!」
莉緒「桃子ちゃんと会うの久しぶりだし、少し楽しみにしてたのに、まさか現役女子高生の生のイチャラブ話を聞かされるなんてねぇ……」
桃子「そ、そんなんじゃないって言ってるでしょ! 桃子怒ってるんだからね!」
莉緒「若いわねぇ……」
莉緒「そう、じゃあこの美味しいパンケーキ私の分もあげるから私帰っていい? 代金は払っておくから」
桃子「え、ちょっ、待って待って! まだ話が……」
莉緒「話? 育ちゃんに愛想尽かしたなら別れたらいいんじゃない? 元々桃子ちゃんに恋愛って向いてないのよ」
桃子「えっ…… わ、別れるとかそういうんじゃ……」
莉緒「育ちゃんのこと嫌いなんでしょ? それに前に桃子ちゃん『桃子はプロなんだから、恋愛とかしてるヒマ無いの』って言ってたじゃない……」
桃子「う、うぅ……」
莉緒「育ちゃんだってもしかしたら、付き合ったのも勢いで、桃子ちゃんのことそこまで好きじゃないかもしれないし、学生の恋愛なんてそんなものでしょ?」
桃子「育が……桃子のこと、好きじゃない……?」
莉緒(あっ、やば…… 桃子ちゃん泣きそう)
桃子「そ、そんなこと無いもん…… 育は毎日『好きだよ』ってライン送ってくれるもん…… ぜったい桃子のこと好きだもん……」
莉緒「あー、ごめんごめん、私に色々愚痴とか相談とかしたくて呼んだのよね、思うことあるなら全部私に吐き出していいから」
桃子「うぅ…… ありがと、莉緒さん……」
莉緒(一応そのスタンスでいくんだ)
桃子「育ね、この前の記念日忘れたの」
莉緒「え、記念日?」
桃子「そう、記念日」
莉緒「…… ちなみに何の?」
桃子「……秘密」
莉緒「何でここに来て隠すのよ!」
桃子「だ、だって…… 言うの恥ずかしいんだもん」
莉緒「…… 帰っていいかしら」
桃子「だ、ダメ! 話すから帰らないで!」
莉緒「えーっと…… まず初めから、その『いくもも記念日』って何?」
桃子「略さないでよ! それにこの記念日は育が言い出したんだからね」
桃子「昔、桃子たちがアイドルだった頃、桃子と育が初めて同じステージに立つことになった時、最初のレッスンで言ってくれたの」
桃子「『周防桃子ちゃん、だよね? わたし中谷育って言うの。 良かったぁ、同い年くらいの子が居て、そうだ桃子ちゃんって呼んでいい? お友だちになろっ?』って言ってくれて、次の年から友達になった記念日って決めたの」
莉緒「ふーん……」
桃子「大事な大事な記念日なのに何の連絡も無しなんて…… 許せない」
莉緒「それで、他には? 何か育ちゃんに不満とかあるの?」
桃子「えーっと…… んと……、ね……」
莉緒「無いのね……」
莉緒(こういう時は、正論で説得するんじゃなくて、桃子ちゃんの口から『育のことスキ』って言わせるように仕向けて……)
桃子「いいよね莉緒さんのところは、そういう細かい気づかいとかしてくれそうだし」
莉緒「そうね、確かに自分から記念日って言い出したのにいつの間にか忘れちゃうなんて少し酷いって思うわ」
桃子「でしょ!」
莉緒「乙女はロマンティックなんだから、そういうのを大切にしてくれることを恋人には求めるものよね」
桃子「そうそう」
莉緒「桃子ちゃんの話聞いてると育ちゃんって案外酷い娘なのね」
桃子「えっ、いやそういうことじゃ……」
莉緒「もしかして桃子ちゃんの誕生日にだって何もしてくれなかったんじゃない?」
桃子「そ、そんなこと無いもん…… 育はいい娘だもん……」
莉緒「そうなの?」
莉緒「制服……? 桃子ちゃんって確か制服とか無い私立校だったんじゃ?」
桃子「うん、だけど育が『桃子ちゃんわたしの制服見て可愛いって言ってたでしょ? それに女子高生みたいなことしてみたいとも言ってたし』って」
莉緒「ふーん、予備のを貸してくれたんだ」
桃子「べ、別に桃子はそんなに可愛い制服とか放課後デートとかに憧れてた訳じゃないし、制服は育のサイズだったから少しおっきかったけど…… まぁ、嬉しかった」
莉緒「ふーーーーん?」
桃子「な、何?」
莉緒「アツアツじゃない、貴女たち?」
桃子「あ、当たり前でしょ! 育が桃子のこと好きなのは当然として、桃子も育のこと好きだもん! ……あっ」
莉緒「まっ、高校生の痴話喧嘩なんてそんなもんでしょ、ほらほらとっとと育ちゃんに『意地張ってごめんなさい、愛してるチュッ』って送りなさい」
桃子「意地張ってるわけじゃ…… て桃子はそういうの送ったりしない! 莉緒さんじゃないんだから」
莉緒「私のことなんて気にしないで、早く出なさいよ」
桃子「ん…… ごめんなさい莉緒さん。 も、もしもし?」
桃子「うん……」
桃子「ご、ごめんね育…… くだらないことで怒っちゃって」
桃子「い、いいよ別に! また桃子が癇癪起こしただけだし!」
桃子「桃子、つまんないことで怒っちゃうけど、その…… 面倒だって思わない?」
桃子「嫌だ、とかさ」
桃子「え、何?」
桃子「えぇ…… まぁ……」
桃子「えっ、えーっ……」
桃子「ん、んと…… 一度だけだからね……」
桃子「育…… いつも桃子に付き合ってくれてありがとう。 育のこと、だ…… 大好き!」
桃子「は、早いよ!」
莉緒(桃子ちゃん、久々に会っても桃子ちゃんのままで可愛いわね)
莉緒(あんなラブラブなの見せつけられたら、何だか私もそういう気持ちになっちゃうじゃない)
莉緒(『今夜、家行ってもいい? 断れても行くけど』っと)
育「美奈子さぁん……」
美奈子「えーっと……」
育「桃子ちゃんに嫌われちゃった…… 朝、急に桃子ちゃんから電話がかかってきて、『育のことなんてキライ』って」
美奈子「だ、大丈夫落ち着いて育ちゃん、私が相談に乗ってあげるから元気だして」
育「美奈子さん……!」
奈緒「『キライ』なんて、そんなんいつもの桃子の癇癪やろ、ほっとけば向こうから謝まってくるって」
美奈子「ちょっと奈緒ちゃん!」
奈緒「どーせ高校生の喧嘩なんて犬も食わない奴なんやろ? テキトーにあしらっておくか、いっそ一旦別れたら」
育「ふえぇっ!?」
奈緒「あ……」
美奈子「育ちゃんは真剣に悩んでるの、そういう適当なこと言う奈緒ちゃん最低だし、私嫌いだよ」
奈緒「えっ、いやいやいや、今のは言葉の『あや』って言うか…… ごめん美奈子~」
美奈子「謝る先が違うでしょ?」
奈緒「ごめんな育、話ちゃんと聞くから……」
育「は、はい……」
美奈子「…… まぁ私たちが喧嘩してても仕方無いし、育ちゃんの話聞こっか?」
奈緒「てな感じで、喧嘩したってすぐに仲直り出来るってことを育に伝えたかってん」
美奈子「もう、調子いいんだから……」
育「うぅん…… 桃子ちゃん怒るだけ怒って、すぐに電話切っちゃったからよくわからないんです」
美奈子「そっか…… 何か心当たりとかは?」
育「それも何も……」
奈緒「んー…… それ結構マズイんちゃう?」
美奈子「そうだね……」
育「えっ! そうなんですか!?」
美奈子「パートナーの思ってること、考えてることがわからないって結構問題なんじゃないかなって」
奈緒「何でもかんでも開けっ広げって訳にはいかへんけど、それでもわたしは美奈子に隠し事なんてしてないで」
美奈子「私たちの場合は一緒に住んでるってこともあるけどね」
美奈子「育ちゃんは桃子ちゃんのことどれくらい好き?」
育「どれくらい……? い、いっぱい!」
美奈子「そっか、それなら桃子ちゃんは育ちゃんのことどれくらい好きでいてくれると思う?」
育「うぅん…… た、多分桃子ちゃんもわたしのこと好き…… だと思う……」
美奈子「思う?」
育「うん……」
美奈子「まっ、そうだよね。 人の気持ちなんてそんな簡単にわかるようなものじゃないよね」
育「恋愛と片想い? えっと、恋愛は好き同士じゃないといけないって…… こと?」
美奈子「そう、恋愛はどちらか一方の愛じゃ成り立たなくて、お互いが好きで初めて恋愛になるものなの」
美奈子「だから育ちゃんが桃子ちゃんとちゃんとお付き合いしていくためには、育ちゃんが桃子ちゃんのことを愛してあげるだけじゃダメ、同じくらいたっくさん愛されないと」
育「愛される……?」
美奈子「そ、私も奈緒ちゃんにいっぱいいっぱい大好き伝えてるけど」
奈緒「わっちょっ! いきなり抱き付かんて」
美奈子「奈緒ちゃんも必ずそれを返してくれる、よねー?」
奈緒「ま、まぁな…… ほらぎゅー」
育「わぁ……」
奈緒「て、人前で何させとんねん!」
美奈子「えへへ~」
育「桃子ちゃんから?」
美奈子「そ、だから今度桃子ちゃんと話すとき桃子ちゃんの方から『好き』って言ってもらうようにしてみて、それだけでふたりの関係変わってくると思うから」
育「そうなの?」
美奈子「うん!」
奈緒「今朝桃子が癇癪起こしたなら、そろそろ頭冷えてる頃やろ、電話してみ」
育「うん、してみます」
育「あっ! 桃子ちゃん?」
桃子「うん……」
育「えっと……」
桃子「ご、ごめんね育…… くだらないことで怒っちゃって」
育「あ、うん…… わたしも、桃子ちゃん怒らせちゃった、んだよね?」
桃子「い、いいよ別に! また桃子が癇癪起こしただけだし!」
育「何、桃子ちゃん?」
桃子「桃子、つまんないことで怒っちゃうけど、その…… 面倒だって思わない?」
育「え?」
桃子「嫌だ、とかさ」
育「えーっと…… ちょっと待って桃子ちゃん」
桃子「え、何?」
育「いっつも『スキ』ってわたしから言ってばっかりだよね? それって不公平だと思うんだ」
桃子「えぇ…… まぁ……」
育「だからさ、今日は桃子ちゃんの口から聞きたいな!」
桃子「えっ、えーっ……」
育「うんうん」
桃子「育…… いつも桃子に付き合ってくれてありがとう。 育のこと、だ…… 大好き!」
育「わたしも!」
桃子「は、早いよ!」
桃子「暇…… ま、まぁオフだけど」
育「それならふたりで遊びに行こうよ!」
桃子「う……うん! いいよ」
育「場所はさ」
桃子「育が決めるの?」
育「いっつも桃子ちゃんが行きたい所ばっかりでしょ? だからたまにはわたしが行きたい所に行こうよ」
桃子「先に言っておくけど、アニメ映画は無しだからね」
育「うえっ!? 何でわかったの?」
育「えっ!? えっ!」
桃子「も、もう! そういう反応されるとこれから言いにくいでしょ!」
育「もっと! もっと言って!」
桃子「だ、だから……」
育「ん~?」
桃子「あ、明日! アニメ映画行くんでしょ! ちゃんと席事前に取っておいてよね! ばいばい!」
育「あっ…… 切れちゃった」
美奈子「ふふっ、その様子だとすっかり大丈夫そうだね!」
育「はい!」
奈緒「顔めっちゃニヤケとるやん? 嬉しいことあったの隠す気無いな~」
育「明日、とっても楽しみです!」
おわり
読んでくれた人ありがとうございます。
「SS」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
今週
先週
先々週
コメント一覧
-
- 2018年04月21日 20:27
- 自然同性が付き合える素晴らしい世界
-
- 2018年04月21日 21:08
- よきかな
スポンサードリンク
デイリーランキング
ウィークリーランキング
マンスリーランキング
掲示板サイト
アンテナサイト
新着コメント
最新記事
LINE読者登録QRコード
スポンサードリンク