我々人類はこの地球上において、定住し、道具を使い、文明を築き上げた唯一の種であると、当然のように考えられている。
だがもし、人類よりもはるか前に別の何者かが文明を築き上げていたとしたら?それが滅び去っいたら?
我々は地質学的記録の中にその証拠を発見することはできるだろうか?
この問いに挑んだのは、NASAゴダード宇宙科学研究所の気候学者ギャビン・A・シュミット氏と米ロチェスター大学の天文学者アダム・フランク氏である。
彼らは人類の工業化文明が地球に与える影響を調査し、そうした文明が発見される可能性や地球外生命の探求における意味合いを探ろうとした。
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気候学者ギャビン・A・シュミット氏と天文学者アダム・フランク氏は、他の惑星に宿る生命を捜索するには、まず地球との類似点を見つけ、生命が存在するために必要な条件を理解する必要があると考えた。
もちろん地球外知的生命体探査(SETI)のような、直接コミュニケーションをとるという試みもある。当然、そこには文明が発達し、工業が栄えなければならないという前提がある。
シルリア紀(シルル紀)仮説
これまで、地球に人類以外の知的生命体がいた可能性を真面目に調査した論文はなかった。そこで、シュミット氏とフランク氏は「シルリア紀の仮説」に挑んだ。
それは工業化文明が興る頻度がどの程度であるのかという疑問につながるもので、我々が知る工業化文明種は人類しかいないゆえに、状況を少々複雑なものにもしている。
さらに人類が工業化文明であったのはせいぜい過去数世紀の間だけだ。そうなれたのは一握りの種でしかなく、しかもかくも複雑な生命が地球に存在した期間もごく短い期間でしかないのだ。
ドレイクの方程式に疑問を投げかける
研究するにあたって、まず彼らはドレイクの方程式に疑問を投げかける大切さを述べてる。
一応説明しておくと、ドレイクの方程式とは、我々の銀河に存在し、通信が可能かもしれない文明の数(N)は、恒星が誕生する割合(R*)、その恒星が惑星を持つ割合(fp)、その惑星が生命を宿せる条件を備えている割合(ne)、そこで実際に生命が誕生する割合(fl)、その生命が知性を持つまでに進化する割合(fi)、知的生命が通信技術を発達させる割合(fc)、そうした文明が宇宙に信号を送り続けられる期間(L)から求められるとするものだ。
数学的には以下の通りだ:N = R* × fp × ne × fl × fi × fc × L
image credit:The Drake Equation (University of Rochester)
両名の研究では、シルリア紀の仮説によって、等式の各項の数値が変動するだろうと論じられている。
「仮にある惑星が存在する間に複数の工業化文明が興り、そのために生命が存在する期間より長い間存続するとすれば、fcの値は1よりも大きくなるかもしれない。」
「このことは宇宙生物学の最近の発展に照らせば、特に説得力のあることだろう。いずれも純粋な天文学的観測に関連する最初の3つの項は、今や完全に決定されている。」
「今やほとんどの恒星が惑星系を宿していることは明白だ。実に、それらの多くが恒星のハビタブルゾーンにあると考えらえるのである。」
要するに、観測機器や手法の改善のおかげで、我々の銀河内で恒星が誕生する割合が分かるようになった。
さらに太陽系外惑星の調査から、我々の銀河には潜在的に居住可能な惑星がおよそ1兆個ほどあるかもしれないと推定されている。
仮に地球の歴史上に別の文明があるという証拠が発見されでもしたら、ドレイクの方程式はさらに制約される。
文明による地質学的帰結を考察
両氏は人類の工業化文明によるあり得そうな地質学的帰結を考察し、それを地質学的記録の中に残された類似するように見える出来事と比較した。例えば、温室効果ガスや窒素肥料の結果である炭素、酸素、水素、窒素の同位体異常の放出を調べるのだ。
「18世紀以来、人類は石炭、石油、天然ガスを燃やすことで化石炭素0.5兆トン以上を放出してきた。これは自然の長期的排出源や吸収源よりも桁違いに早い割合だ。」
「さらに広範囲で森林の伐採が行われ、さらにバイオマスの燃焼を通じても二酸化炭素が追加されてきた。」
また農業、森林伐採、運河の掘削の結果として、川の沈殿物の流れや沿岸環境の堆積物が増加する割合、ならびに工業化と都市の拡大の直接的な結果である家畜やげっ歯類といった小動物の拡散も考察された。
合成物質、プラスチック、放射性元素(原子力発電や核兵器の実験の結果)も地質学的な記録に痕跡を残すことだろう。放射性同位元素の場合なら数百万年も残ることだってある。
大量絶滅イベントを調査
最後に、過去の大量絶滅イベントを調べて、それらが人類文明が崩壊したと仮定した場合のイベントといかに比較されるうるかを調べた。
「そうした類似性のあるイベントの最も明確なクラスは異常高温だ。最も顕著なのは暁新世始新世境界温暖極大期(Paleocene-Eocene Thermal Maximum)だが、より小型の異常高温イベントや白亜紀やジュラ紀の海洋無酸素事変、古生代の重大イベント(はっきりと特徴付けられていない)なども含まれる。」
こうしたイベントに付随して、気温の上昇、炭素や酸素同位体の増加、堆積物の増加、海洋酸素の現象が起こっている。
一方、K-Pg境界(小惑星の衝突や大規模な火山活動)のようなはっきりとした個別の原因があるイベントは考慮されなかった。
著者らによれば、とりわけ暁新世始新世境界温暖極大期には人為的な気候変動と一致していそうなサインが見られるという。
「10万〜20万年続く一連のイベントと系への外因的炭素の急激な入力は、北アメリカ海台が勇気堆積物に侵入したことと関連があるかもしれない。」
「気温は5〜7度上昇(複数の要素から推測)し、炭素同位体の負のスパイク(>3パーセント)があり、上部海洋では海洋炭化の減少が見られた。」
堆積物の元素的・構成的異常を調査
締めくくりに、この疑問に対する限界を緩和させるための研究アプローチも考察された。著者らの主張によれば、それは現存する堆積物の元素的・構成的異常をさらに深く探求することだという。
つまりこうした絶滅イベントの地質学的記録をより詳細に調査し、工業化文明と関連性がある異常を探せということだ。異常が発見されれば、化石記録を調査し、その候補となる種を調べればいい。
もちろんシルリア紀仮説をさらに発展させるにはより多くの証拠が必要となる。
例えば、急激に気候が変動した過去のイベントの多くは、火山やプレート活動の変化が関連してきた。また現在生じている気候変動は他の地質学的記録のどれよりも早いという事実もある(ただし、これに関しては、地質学的記録の限界ゆえに断言することは難しい)。
そして大昔の絶滅イベントの原因を知るには、さらなる研究が必要になることは言うまでもない。
この研究は地球にとどまらず、火星や金星に昔はいたのかもしれない生命の研究に関しても示唆に富んでいる。
「古代火星の気候(38億年)に地表に水が存在したという証拠は豊富にあるし、初期の金星(20億〜7億年)は居住可能だった(太陽は今より薄暗く、大気のCO2も低かった)という予測は最近のモデルを利用した研究によって支持されている。」
「もしかしたら、将来的にいずれかの惑星を掘削し、地質学的記録を評価する研究が行われることだってあるだろう。そうなれば生命の痕跡や、組織化された文明の痕跡がどういったものかという考察すら具体的になるだろう。」
ドレイクの方程式の主要な2項については、非常に多くの恒星と惑星が存在することが分かっており、さらに生命が持つ時間は長くなる可能性があると想定できる。
これまでのところ、1つの惑星に生じる高度なテクノロジーと通信が可能な知的生命は1種と想定されている。だが、これがもっと多いのだということになれば、過去および現在において文明がひしめく銀河が発見されることもあるかもしれない。
それを否定することなど誰にもできない。我々のこの足元のすぐ下に、人間ではない高度文明の痕跡が残されていたってちっともおかしくはないのだ。
References:cambridge / zmescience / motherboard / arxivなど/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
たった数万年の文明で月まで行けるもんな
数億年の間に複数回文明があってもおかしくないな
2. 匿名処理班
環境のいい星を見つけて掃除して、
移住先を探している異星人に売る。
そんな宇宙の不動産屋さんがいるかもしれないねっ!
3. 匿名処理班
地球は本当はノンマルトの物だったんだ!
4. 匿名処理班
どなたか、頭の悪いわたくしめにも分かるよう3行で説明して頂けませんか
5. 匿名処理班
まだ知られていない古代文明の可能性は否定しないけど、でもそれは超文明である訳は無いな。
何の痕跡も残さず消し去れる文明なんてあったとしたら、「そもそも何故」が判らない。
6. 匿名処理班
ハインリッヒの法則の応用
7. 匿名処理班
自然団体の戯言って人類≠自然という前提がないと成り立たないのよね...
8. 匿名処理班
今の地球人は猿から進化した生命体と思っていたいヤツはそのまま信じ続けとけばいいよ。
9. 匿名処理班
※2 ラセンウジバエ解決法…
“私には彼らは天使には見えませんでした。彼らは不動産屋に見えました” ってヤツだね。
10. 匿名処理班
※8
ここ10年くらいで遺伝子やタンパク質の解析技術が大幅に向上して、大量のデータが取られて、色んな生物同士の類縁関係が明らかになって来てる。人間が他所からやって来た可能性は無いなあ。
11. 匿名処理班
今の人類が滅んで10億年後の新人類は我々の存在に気が付けるだろうか?
12. 匿名処理班
※8
じゃあ、人類はどこから来たのだろう?
その人類の元になった種族がいたとしたらそれはどこから来たのだろう?
更にその元になった…これを問うて行き続けてくれ。
13. 匿名処理班
イグアナの娘「おのれドノヴァンめ ! 」
14. 匿名処理班
トップ画像の首傾げてる爬虫類人、なんか可愛い
15. 匿名処理班
人間は進化したんじゃなく
他の知的生命に作られたのかもしれない
居るかもしれない居ないかもしれない みつを
16. 匿名処理班
地球上に数千万年単位で痕跡が残るのは無理だろうし、あったとしても人類がそれを天然の物と区別できるかどうか。案外石油なんかも太古の海底にあった現代とは全く異質な工業文明の副産物かもしれない
むしろ月にでも期待したほうがよさそうだな。あるいは静止軌道か
過去何億年の間に一度でも探査機や衛星を送れるレベルに達したことがあれば、の話だが
17. 匿名処理班
ロマンっすなぁ。
まぁ地球も分かってるだけで、5〜6回くらい生命体の大量絶滅が起こってるしな。
そのなかに知的生命体が含まれててもおかしくない。
AC/BC含めて今の人類の生きてる長さなんて、全体の1%にも満たないんだし。
18. 匿名処理班
※11
10億年どころか、ローマなんか数百年前の都市ですら
完全に地中に埋没してて、工事とかで偶然に地下都市が発掘されてるからなぁ・・・
19. 匿名処理班
※2
さあ行きますよザーボンさんドドリアさん!
20. 匿名処理班
宇宙が地球の周りを回ってるって信じられていた時もあったんだし、地球に人類以外の知的生命体が存在したとしても驚かないが、科学的に証明されるまでは信じる信じないのレベルの話かな。
石油は化石燃料だと長い間信じられていたけど、実は地球内部で作られてるって最近わかってきたらしいし、いつの日か人類以外の知的生命体が存在したことも証明されるかもね。
もしかしたら、宇宙人との交信が先かも?
21. 匿名処理班
痕跡がないってのは無理よね