籠池夫妻、執拗に値引き要求
財務省が国会に提出した学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る交渉記録では、詐欺などの罪で起訴された前理事長、籠池泰典被告(65)と妻、諄子被告(61)が執拗に値引きを求めていた。「あんたら罰が当たるぞ」「裁判で訴える」。時に声を荒らげながら、一瞬のスキをついて主導権を握る生々しいやりとりが浮かび上がった。
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具体的な賃料交渉が始まると、籠池夫妻は強硬な顔を見せ始める。15年1月、財務局に籠池夫妻や学園側の不動産鑑定士、コンサルタントらが顔をそろえた。「学校は公益目的なのに賃料が高すぎる」と籠池被告が値下げを要求。記録には「話は平行線状態のまま、理事長は声を荒らげて席を立ったが引き留める」と書かれている。
それ以降、籠池夫妻は電話や面談で繰り返し減額を求め、「あんたら、いじわるや、死んだら地獄に行くぞ」(諄子被告)と感情的にエスカレートしていく。15年3月に学園側の調査で軟弱地盤の恐れが判明。賃料で合意に至った後も手数料や違約金額などで反発し、罵詈(ばり)雑言が1時間に及ぶこともあった諄子被告は、財務局の統括官に「おまえなんか信用できない」とコースターを投げつけた。
5月にようやく正式な貸付契約を締結。工事に取りかかった学園側から、16年3月に財務局に入った「地中からゴミが大量に出てきている」との連絡が転機になった。
財務局はガラスくずの存在を15年9月の工事業者や設計業者との打ち合わせで把握していた。当時の記録には「建築に支障がない量なので埋め戻す」としたうえで「森友学園への説明ぶりについては検討が必要」と書かれている。
それまで籠池夫妻のクレームを退けてきた国側は16年3月16日、ゴミの存在を隠していたと責める籠池夫妻に「正確に伝わっていなかったことはおわびする」と謝罪に追い込まれた。そこからは籠池夫妻のペース。撤去費用を差し引いた売却額を巡る交渉で、籠池被告は安倍昭恵首相夫人の名前をちらつかせながら減額を迫った。
最終的に国は地中のゴミの量を約1万9500トンと推定。鑑定価格から撤去費用の約8億円を差し引き、16年6月に1億3400万円で売買する契約を交わした。3年間の交渉記録で、籠池夫妻や学園関係者による面会や電話の回数は約150回に及んだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30924880U8A520C1CC1000/