妻子を殺して食べた男！

これは戦後すぐ、1948年（昭和23年）2月19日に掲載された記事である。


「妻子を殺して食う」という強烈な見出しで、東京都の奥多摩地方に住む57歳の男性が妻（58歳）および長男（14歳）を食べてしまった、という事件が掲載されている。

記事によると男は2月17日の深夜、家主である57歳の男性が寝室で枕を並べて寝ていた妻と長男を斧で殺害し、包丁を使って肉を切り取り、その肉を生のままムシャムシャと食べていたのだという。

男は戦時中だった5年前（1943年）に病気により娘を失ったうえ、耕していた畑を国から奪われて以来、精神が病んでおり、戦争が終わったあとも荒れた生活を送っていた。
いわゆる、重い統合失調症に罹っていたわけだが、精神を壊していたとしても、自分の妻子を殺しその死肉をしゃぶるという異常性は、本人も十分に理解はしていたようで「俺は世界でも日本でも類のないとんでもないことをしてしまった。早く死刑になりたい」と警察でわめいていたという。

事件から1年が経過した1949年、正式な鑑定の結果、この男はやはり症状の重い精神異常者であることがわかり、警察は彼を日本の法律にて罰することができず不起訴処分としている。（その後、彼は多摩市内の精神病院へ収容されている）。

なお、この事件から約30年が経過した1981年に発生した「パリ人肉事件」の犯人・佐川一政も精神鑑定の結果、脳に重い障害を持った人物の犯行と診断され、罰することができずに不起訴処分となっている。

昭和の日本でも、人間が人肉食に至るまでの精神は、法律で罪を負わせられないほどに「異常」もしくは「狂逸」な状態と判断していたのである。

「手首ラーメン事件」の2年前に発生した大事件

1978年、都市伝説の世界では有名な「手首ラーメン事件」が発生している。

これは兵庫県と岡山県の山中からバラバラになった遺体が発見され、犯人のひとりが指紋から身元が判明するのを恐れ、彼が東京都荒川区で商売をしていたラーメンの屋台で出汁をとるための鍋に手首を入れて煮詰め、残った骨は粉々にして破棄した、という事件である。

このニュースが報じられるや否や東京都内では「自分の食べたラーメンに人間の手首が入っていた？」と大パニックになり週刊誌でも報道。

犯人の自供によると「手首ラーメンは実際には販売しなかった」というが、真相のほどはよくわかっていない。
以上が世にも有名な「手首ラーメン事件」であるが、実はこの事件から遡ること2年前の1976年、千葉県木更津市で知られざる「人肉食事件」が発生していた。

掲載されなかった新聞記事

1976年3月、千葉県木更津市の山中で中年男性のバラバラ死体が見つかった。

見つかった遺体はダンボールやビニールに首、両腕、両足などが収められており、ところどころ腐敗し野犬に食われた箇所があった。検視の結果、殺されたのは木更津市に住むサラリーマンのSという39歳の男性であった。

ところが、Sさんは根が真面目で恨みを買うような背景はなかったことから、犯人は快楽目的の殺人鬼ではないかと捜査が進み、犯人の目的に確固たる動機がない以上「これは迷宮入りになるか…」と警察は頭を悩ましたが、意外にも本事件はSさんの遺体発見からわずか6日目に解決となっている。

Sさんが殺されるに至った当日の足取りを追っていくと、Sさんと共にひとりの男性の行方がわからなくなっていたのだ。その男の名はKといい、彼は飲み屋で知り合ったSさんの持っていた現金5万円を奪おうと泥酔させた挙句、Sさんを自宅へ連れ込み体をバラバラにし山の中へ捨てたのだという。

さて、ここまでであれば、現金目的のバラバラ殺人事件であり「怪奇事件」と紹介するほどではない。現に読売新聞は3月10日のKの逮捕をもって続報の掲載を終えている。

しかし、その一ヶ月後、読売新聞の発行している雑誌『週刊読売（読売ウィークリー）』にて強烈な「後日談」が掲載されていた。

「本当はワサビ醤油で食べたかった」

なんと犯人のKは（そのような趣味があったのか）殺したSの陰茎と睾丸を丁寧に包丁で切り取り水洗い保管した挙句、残った死肉を油炒めにして口にしていたのだという。



実は、Kの職業は元板前でその包丁裁きは彼の元同僚も認めており、遺体をバラバラにしたのも、板前の時代の知識・技術が役にたった。

そして、Kは大好きだったSから切り取った肉を自分の好物である「上質の鶏もも肉」に見立て、Sの太ももの肉を油で炒め塩と胡椒で味付けして食べてしまったという。

なおKは週刊読売の取材に対しSの死肉を食べたことを認め「人肉はマグロの赤身のように簡単に切れる。本当は刺身にして食べてみたかったが、ワサビ醤油が手元になかったので油で炒めて塩コショウでソテーにした」と証言したうえ、「人肉があんなに臭いものだとは思わなかった」「箸でつまんで口に入れようとするだけでムカッとする。人間なんて無理に食べるものじゃないね」という、まさに人肉を口にしたものにしかわからないであろうトンデモ発言を次々に行っているのだ。

好きな相手の陰茎を切り取った挙句にその死肉を食べるとは、まさに恐るべし人間の好奇心である。

1981年に日本を震撼させた「パリ人肉事件」の約5年前、日本でも世にも恐ろしい「人肉食事件」は発生していたのだ。


参照：読売新聞縮刷版、週刊読売

【Atlas関連リンク】
女性を殺害し、調理して食べた！フランスと日本を震撼させた「パリ人肉事件」
http://mnsatlas.com/?p=22054

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