(´・ω・`)「お疲れ様、博士。きっと疲れてるでしょ。」

彡(-)(-)「ああ、事務員くんかどうもどうも。
　　　　　熱中しとったらそれほど苦にもならんかったわ。」

(´・ω・`)「それにしても妙なテーマだったね。
　　　　　売れないどころかタダでばらまくものを作るために、これだけの研究施設を作るなんて！
　　　　　研究費用だってバカにならないし。しかもこんな不景気の時代に・・・」

彡(ﾟ)(ﾟ)「そんなことはどうでもええ、ワイは出資者からの依頼通りにブツを作るだけやしな。
　　　　　それが見事に完成したんや。あとは契約でまとまった報酬もらうだけや！」

(´・ω・`)「うらやましいね。そんな大金をなんに使うの？」

彡(ﾟ)(^)「前も言ったかもしれんが、結婚の費用や。
　　　　　付き合ってる人がおってな、しばらく前に婚約したんや。
　　　　　これで夢にまで見た、豪華な結婚生活や！」

(´・ω・`)「それは本当におめでとう。さっそく研究の完成を関係者に連絡するよ。」

prrrrrr ｶﾞﾁｬｧ

(´・ω・`)「はい、はい、完成いたしましたのでぜひお越しください。」

～10分後～
ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛｰﾝ　　ｷｷｰｯ

(´・ω・`)「あ！真弓さんの車だ！」

(　･`ω･´)「やあ、完成したと聞いて急いでやってきたよ。」

彡(^)(^)「はい！なんとかこぎつけました！」

(　･`ω･´)「それはよかった。きみを見込んで研究を任せたのはこの私だからな、
　　　　　　催促してくる出資者のあいだに立って困っていたところだった。
　　　　　　なにしろ相当な資金をつぎこんでいたからな。」

彡(^)(^)「ワイもそれは察して急いでましてん！さあ成果はこちらです、どうぞどうぞ・・・」

(　･`ω･´)「む、ここは綺麗な花で満ちた温室だが花がどうしたというのだね。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「いえ、花が問題とはちゃうんです。ミツバチのほうですわ。
　　　　　この温室のハチはこんだけのミツを作ります。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「しかし、もう一つむこうに温室あるんですがそっちのハチはこんだけのミツを作るんです！」

(　･`ω･´)「ほう、ほぼ倍のミツじゃないか。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「倍のミツのハチは、ワイが発見した細菌を感染させてあるんです。
　　　　　じゃあ今度はこちらご覧ください。」

(　･`ω･´)「む、今度はハツカネズミの箱か。回し車を回転させているな。これは一体なんだ？」

彡(ﾟ)(^)「こっちも片方のネズミは菌を感染させてあるんです。
　　　　　するとやはり走る速さが通常の倍になっとるんです。」

(; ･`ω･´)「うーむ、きみの発見し改良した細菌の効果についてはよくわかった。
　　　　　　しかしこれがなんの役にたつというのだね。
　　　　　　動物の動きを速めたところで機械に及ぶわけでもない。研究目的を勘違いしたんじゃないか？」

彡(ﾟ)(ﾟ)「まあまあ、そんな簡単に結論出してもらったら困ります。順序だてて説明しますよってに・・・」

(　･`ω･´)「その順序とやらをなるべく簡単にたのむよ、博士。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「昆虫や動物ですといまのような結果になるんです。
　　　　　けど人間にはまた別の効果を示してくれるんですわ。」

彡(-)(-)「人間に向くようにするためにどれほど苦心したか・・・、あらゆる薬品、放射線・・・」

(　･`ω･´)「その苦心談も飛ばしてくれ。その苦心に対して約束した報酬にボーナスもつけよう。
　　　　　　だから手っ取り早い説明を頼むよ。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「わかりました、では今からお流しする映像をご覧ください。」ｴｲｿﾞｳﾎﾟﾁｰ

彡(ﾟ)(ﾟ)「子供に例の細菌を感染させ、行動を観察した映画になってます。
　　　　　もちろん無害と確認はしとります。」

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

(*^◯^*)「あのヤマヤスタオルが欲しいんだ！」

J( 'ー`)し「この前、同じのを買ったからだめよ。」

(*^◯^*)「いやだ！もう一つ、どうしても欲しいんだ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

J( 'ー`)し「もう、仕方ないわねえ。今回だけよ。」

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

彡(ﾟ)(ﾟ)「下等動物の場合は単に動作となってあらわれますが、
　　　　　知的な人間の場合は精神的な効果をもたらしました。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「では、こちらもどうぞ」ｴｲｿﾞｳｶｴｰ

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～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

(　･`ω･´)「アイスを食べた少年がもう一つ食べたいとだだをこねていたな。」

彡(^)(^)「そうです！人間の場合は欲しいという気持ちを通常の倍に高めるんです！
　　　　　もちろん、ほかの副作用は存在しないことは言うまでもありまへん。」

(　-`ω-´)「・・・」

(　･`ω･´)「すばらしい！これこそ我々が望んでいたものだ！購買欲を倍にするなど最高じゃないか！」

彡(^)(^)「そうでっしゃろ！？ワイも研究した甲斐がありましたわ！」

(　-`ω-´)「なにしろ世界が完全に平和になり、戦争がなくなってからというもの徐々に不景気になる一方だった。
　　　　　　生産能率が上がっても大衆の消費が伴わないとどうしようもないからな。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「そりゃそうでしょうな、購買欲には限度があります。ワイだって同じ本は二冊買う気になれません。」

(　･`ω･´)「それを買ってもらわねば困るんだよ。
　　　　　　すぐに捨ててもいいから、なにがなんでも一応は買ってもらわなければならない。
　　　　　　そのためにテレビをはじめとして様々な形の宣伝が行われている。」

(　･`ω･´)「しかし、その限度を突き破ることは容易ではなかった。
　　　　　　きみのこの発明によって大衆の購買欲に刺激を与えることになれば、
　　　　　　産業界は一挙に活気を取り戻すことだろう。」

彡(-)(-)「しかしワイの研究はムダを助長するような気がしてならんのです。世にばらまくのが不安です。」

(　･`ω･´)「気にすることはない、ムダこそ文明の本質だからな。
　　　　　　ピラミッド以来、浪費でないものは1つもない。
　　　　　　酒、煙草、コーヒー、香水、アクセサリー、流行から芸術にいたるまですべてムダと呼ぶことができる。
　　　　　　野球だってムダだろう。考えようによっては長生きも最大のムダかもしれない。」

(　･`ω･´)「しかし、このムダが大きいほど、文明が高いと人類が喜ぶのだから逆らってはいけない。
　　　　　　この細菌によって、世の中は明るく、文明が進んだと誰しもが喜ぶ。
　　　　　　つまり、正しいことなんだよ。」

彡(-)(-)「ワイは科学に関してはプロですが、文明や経済についてはよくわかりまへん。
　　　　　・・・では、フィルムを先に進めましょか。」

(　･`ω･´)「あとはどんなシーンが残っているんだ？」

彡(ﾟ)(ﾟ)「さっきの少年に治療薬を与えて、物欲がもとに戻る場面ですわ。」

(; ･`ω･´)「な、なんだと！治療薬などを作ってしまったのか！？」

彡(ﾟ)(ﾟ)「はあ、アカンかったでしょうか。」

(; ･`ω･´)「それは困るんだよ。購買欲を抑えることは文明の進歩にブレーキをかけることだ。
　　　　　つまり、時代への逆行ということになってしまうではないか。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「いちおう、その場合の用意も作ってはおりますが。」

(　･`ω･´)「そうなのか。なんだね、それは。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「例の細菌の強力なもんです。
　　　　　薄めた治療薬で培養して、生き残ったものを少しずつ濃度の高い液に移しました。
　　　　　コイツでしたら治療薬は効きまへん。
　　　　　ですがそれもアカンやろ思って、すぐ殺菌できるよう保管してまして。」

(　･`ω･´)「待ってくれ！それを渡すんだ。
　　　　　　人体に害がなく、文明がそれだけ繁栄するのなら価値のとても高いものだ。
　　　　　　約束の報酬のほかに、ボーナスも弾んでやるぞ。」

彡(-)(-)「うーん、どうしよか・・・」

(　･`ω･´)「・・・む？強力な菌の入れ物のさらに横にある容器はなんだね？」

彡(ﾟ)(ﾟ)「ああ、あれですか。あれは菌の伝染力をさらに強めたもんです。
　　　　　あれをバラまいたらたちまち世界中にひろまってまうでしょうな。」

(　･`ω･´)「そうだ！それこそ一瞬のうちに世界に活気を取り戻す薬だ！
　　　　　　ぜひ、それを渡してくれ。ボーナスは君の要求通り払うことを約束しよう。」

彡(-)(-)「そやなあ・・・、金額はもうちょい考えさせてくれませんか？」

(　･`ω･´)「いや、今決めてしまおう。
　　　　　　わたしは今すぐにでもその細菌を使いたいのだ。
　　　　　　それにきみが感染してからだと金額が倍になってしまうからな。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「はあ、では仕方ないですね。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「（えーと一生ぜいたくな生活できる金はこんなもんで・・・。
　　　　　　ほんで、それを念のため倍にしたら、こんなもんやな。）
　　　　　　じゃあ、こんだけください。」

(　･`ω･´)「よし、わかった。」ｷﾝｶﾞｸｶｷｰ

(　･`ω･´)「さあ、受け取ってくれ。
　　　　　　わたしの小切手だからどこの銀行でもすぐに現金にできるはずだ。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「では、容器をどうぞ。
　　　　　ワイも学者です、説明した通りの菌の効果は保証します。」

(　･`ω･´)「厚く礼を言わせてもらう！明日にでも世界がすばらしい活気に溢れていることだろう！。」

彡(ﾟ)(ﾟ)「踊るような足どりで帰って行かはった・・・」

彡(^)(^)「まあワイも踊りたいくらいやけどな！
　　　　　なんせ、すべての夢が実現できるんや！
　　　　　結婚ができる、しかもクッソぜいたくな生活や！　　
　　　　　菌のせいで『別荘がもう一軒欲しいわ』なんて言い出すかもしれん。
　　　　　やけど、そのための資金の用意は充分にあるんや！」

彡(ﾟ)(ﾟ)「さあて準備して、明日彼女に会いに行ったろ！」

～～～そして翌日～～～


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

彡(ﾟ)(ﾟ)「ワイやで！研究はぜんぶうまくいったで！
　　　　　喜べ！すばらしい結婚生活が始められるんや！」

(o'ω'n)「よかったおん！うれしいおん！」

彡(ﾟ)(ﾟ)「・・・ん？なんやその指にはめた指輪は！？
　　　　　1つはワイのあげたやつやが、もう1つはいったい・・・？」

(o'ω'n)「これも婚約指輪だおん！」

彡(ﾟ)(ﾟ)「ファッ！？」

(o'ω'n)「別にあなたを愛してない訳じゃないおん！婚約はそのままだおん。
　　　　　でも、何故だかわからないけれどあなた一人じゃ満足できない気分になったんだおん！
　　　　　それで、さっき婚約を申し込んできた人にも婚約しちゃったんだおん！」

彡(-)(-)「・・・」

彡(^)(^)「その気持ちはワイには少しずつわかりかけてきたで・・・。
　　　　　ワイもお前一人では満足できそうにもないわ。
　　　　　・・・たしかに、真弓さんの言う通りや。
　　　　　これからの世界はかなり活気あふれたものになりそうや・・・。」

以上、星新一著「宇宙のあいさつ」より『不景気』でした。

やっぱ星新一は天才やな
サンキューイッチおもろかったで

>>45
サンガツ

こんなＳＳより原作のほうが格段に面白いからみんなも星新一読むんやで
こんな話が何百とあるし一生楽しめると思う