【ラブライブ】梨子「ロストソング」
- 2018年07月17日 23:10
- SS、ラブライブ!サンシャイン!!
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ーー人生はいじわるだーー
ーー悪いことは何もしていないのにーー
ーー私から何もかも奪っていくーー
ーーー
「長い間お世話になりました」
「いえ、娘さんとご両親の努力あってこそです。我々はその手助けをしたまでですよ」
「……ありがとう、ございました」
「これからも色々と大変かもしれないが、君ならきっと大丈夫だ」
「……はい」
「さ、ーー行きましょう」
今でこそそれが私の名前だと分かるものの、居心地の悪さ……不自然な響きは無くならない
「……はい」
余所余所しい私の返事に、少し悲しげな表情を浮かべるこの女性ーー私の母だということは頭では理解できても心がついていかない
「ありがとうございました」
私の主治医だった人にもう一度頭を下げる母
それに倣って私ももう一度頭を下げ、2人で病院を後にする
ーー私は……
ーー桜内梨子という人間は事故により1年間を失い
ーー記憶喪失により過去の16年間も失い
ーー何も無い17歳の身体だけが残った
梨子「……これが海」
母方の親戚を頼りに私は生まれ育ったらしい東京を離れ
、母と共に静岡県の片田舎へやってきた
梨子「……」
私の知らない私を知ってる街に居続ける事は精神的に良くないと考えた母の計らいである
梨子「……春の海って寒いのね」
私の事を知らない町なら私はきっと自然体でいられるだろうと
梨子「……」
「だめーーー!!」
梨子「えっ!?」ビクッ
「わっ!?わわわわ……わーー!?」
ザバーン
何かが私のすぐ側をすり抜けーー桟橋から海に落ちた
「いやぁ、てっきりよからぬ事を考えてるのかと思っちゃってーーへっくしゅ!」
梨子「大丈夫……ですか?」
私と同じくらいの世代だろうかーー海に落ちた彼女は砂浜でずぶ濡れのまま慣れた手付きで火を起こし暖をとっている
「へーきへーき♪こんなの慣れっこだかーーへっくしゅ!」
梨子「……」
「すびっ……えっとこの辺の人じゃないよね?観光?」
梨子「まぁ……そんなところです」
「どこから来たの?」
梨子「……東京」
「東京!?凄い!」
梨子「……凄い?」
「ねぇねぇ!東京のどこ!?」
梨子「……えっと、秋葉原……?」
確かそんな名前の街だった
梨子「……えっと……ごめんなさい、それは知らないです」
「えー!?じゃあスクールアイドルは!?」
梨子「スクール……アイドル……」
彼女の口から出る言葉の響きに戸惑う
梨子「……ごめんなさい……聞いたことあるような気はするけど……私その、疎くて」
「なーんだー……残念」
梨子「その……スクールアイドル?……がどうかしたの?……えっと」
「ん?……あっ!ごめんごめん!自己紹介してなかったよね!」
千歌「私、高海千歌!千歌でいいよ♪」
梨子「千歌さん……私は桜内……梨子です」
梨子「……やってみたい?」
千歌「えっとね……これこれ!これがμ's!私のいっちばん好きなスクールアイドル!」
千歌さんがスマホの画面を向けると私達と同年代くらいの9人の少女達が華やかな衣装で歌い踊っている
梨子「……」
その姿に妙な懐かしさを感じる
千歌「どう!?」
梨子「えっ?」
千歌「凄くない!?」
梨子「え、ええ……そうね……凄い、のかな?」
千歌「μ'sってねみんな高校生だったの!多分どこにでもいるような……いや東京だから内浦の女子高生よりかはおしゃれだけどさ!でも普通の女子高生なの!なのにね、自分達で歌を作って衣装も作って……自分達の学校が廃校にならないようにスクールアイドルになったの」
目をキラキラとさせながら語る彼女の言葉に引っかかる
梨子「高校生……だった?」
梨子「そう……ですか」
千歌「でもね!今でも沢山ファンがいて、今でも沢山復活を望んでる人がいるくらい凄いの!」
何年経っても待ち続ける人がいる……私にはそんな人がいたのだろうか……
千歌「だから私もスクールアイドルになってこんな風にキラキラ輝いてみたいーーってうわぁ!こんな時間!?みとねぇにキレられるぅ!?」
スマホの示す時間に飛び上がった彼女はまだ生乾きな制服のまま鞄を掴んで駆け出した
千歌「梨子ちゃん!もしまた会えたらもっとスクールアイドルの話しようね!それじゃ!」
梨子「う、うん……さようなら……」
突然現れて突然消えていく彼女
でも…今の私の事しか知らない彼女に少しばかり安心感を覚えたのを自覚し、母の判断は少なくとも間違いではなかったんだと思った
浦の星女学院
今日から私が通う新しい学校
この学校は来年度からの新入生募集を止めるーーつまり廃校が決まっている
皮肉なことに過去のない私は未来のない学校に通うのだ
「桜内さん、どうぞ入って」
梨子「はい」
担任に促され古びたドアをくぐり、教室の広さに若干不釣り合いな少ない人数と対峙する
梨子「東京の音ノ木坂学院から来ました。桜内梨子です、これから2年間よろしくお願いします」
何度も練習したお陰か通った記憶のない学校名といまだに慣れない名前をスラスラと言えた
梨子「実は私は事故で1年間の休学をしており、また後遺症で事故以前の記憶がありません。年齢や知識等様々な点で皆さんにご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、是非ともよろしくお願いします」
誤魔化していくことも考えた
でもいずれそれは綻びて明るみに出る時は来るだろう
その時に苦しい思いをするなら
いっその事初めから避けられた方がマシだ
そう考えて全てを打ち明けたものの、深く下げた頭を上げるのが怖かった
「奇跡だよー!!」ガタンッ
梨子「へ?」
その場にそぐわない言葉につい顔を上げてしまう
そこに広がる景色は私ではなく謎の言葉を発した彼女ーー高海千歌に注目するクラスメイトしかいなかった
千歌「梨子ちゃん!私と一緒にスクールアイドルやりませんか!?」
梨子「……はい?」
ーーー
放課後
千歌「だーかーらー梨子ちゃんも一緒にスクールアイドルやろーよー」
梨子「あの……さっきから説明してますよね?」
千歌「あのμ'sと同じ音ノ木坂に通ってた梨子ちゃんが入れば百人力!」
梨子「……渡辺さんからも言ってください」
曜「曜でいいよー、千歌ちゃん、音ノ木坂から来たって言ってもなんにも覚えてないって言ってるんだし……」
千歌「もしかしたらスクールアイドルやれば思い出すかもしれないじゃん!」
曜「いや……音ノ木坂にいたからってスクールアイドルやってたとは限らないんだし……」
千歌「有り得ないよ!だって見て!梨子ちゃんこんなに美人なんだよ!?スタイルもいいし!声も綺麗だし!」
梨子「あの……千歌さん……」
曜「いや……思いっきり迷惑そうな顔されてるよ…」
千歌「これで3人!あと2人で部活申請も出来るようになる!」
梨子「……いつもこんな感じなんですか?」
曜「たまにね……」ヤレヤレ
千歌「梨子ちゃん!楽器とかやってない!?裁縫とか得意じゃない!?」
曜「千歌ちゃん……記憶喪失って何か知ってる?」
千歌「ものすっごい物忘れ!」
曜「梨子ちゃん、うちの千歌が大変申し訳ありません」
梨子「いや、うん……」アハハ…
曜「とにかくやる気だけでなんとかならないんだから落ち着いて」
千歌「いや、なんとかなる!なんとかする!」
曜「そんなこと言ってなんとかなった事ないでしょ……」
千歌「グサァッ!!」
千歌「はぁい……」ガクリ
曜「梨子ちゃんもごめんね?」
梨子「いえ、私は……」
曜「でもさ、もしほんの少しだけでも興味が湧いたら…私も梨子ちゃんとスクールアイドルやりたいかな」
梨子「……考えておきます」
曜「ありがと♪ほら千歌ちゃん!ぐだくだしてたら連絡船乗り遅れるよ!果南ちゃんのところ寄るんでしょ?」
千歌「やばっ!?そんな時間!?梨子ちゃんまた明日!」
梨子「うん、また明日」
曜「バイバーイ♪」
まるで嵐のような一時だった
ただ千歌ちゃんがすぐに勧誘にくるものだから、物珍しそうに見てくる他の生徒達が近寄れなくなっていたのは、正直なところありがたかった
ーーー
母「どうだった?学校?上手くやれそう?」
迎えに来た母の車に乗り、また少し居心地の悪さを感じながら帰路につく
梨子「……うん」
母「全部話したんだってね」
梨子「……うん」
母「……お母さん安心した」
梨子「……え?」
母「記憶が無くなっても梨子は梨子のままなんだなって」
梨子「……」
母「昔から大人しくて引っ込み思案だったけど……って時にはちゃんと立ち向かえる強い子だったから」
梨子「……」
母「挫けそうになったらちゃんと頼ってね、梨子の記憶があっても無くてもお母さんは梨子のお母さんなんだから」
梨子「……うん」
新しい私の部屋
なんの思い入れもない私物の中でも最も目立つ場所に座る
梨子「作曲……」
かつての私なら出来たのかもしれない
そんな事を考えながら目の前の大きな箱ーーピアノの鍵盤蓋を開ける
ずらりと並ぶ白と黒に指を伸ばし一つ音を出す
梨子「今の私には無理ね……」
この音がドレミのどれかも分からない
上に平積みされた楽譜を開けても何も読めない
その中でふと気付く
題名の無い手書きの楽譜
何枚も何枚も何枚もある
梨子「……私が、作ったのかな……」
素人の私でも一つ一つが違う曲だという事くらいは流石に分かった
梨子「……これをあげれば……って千歌さんも楽器はやってないんだったっけ」
一心不乱に勧誘してくる彼女の顔を浮かべながら楽譜を戻す
何も出来ない私にはーー彼女達の力になれない
ーーー
千歌「梨子ちゃん今日一緒に帰ろー?」
梨子「えっ……一緒に?」
曜「そういえば梨子ちゃんの家ってどの辺?沼津の方?」
梨子「いえ……えっと確か……十千万?とかいう旅館が近くにあった、かな」
曜「十千万?それってーー」
千歌「それってウチじゃん!?」
梨子「……えっ」
曜「そこ、千歌ちゃんの家族でやってる旅館なんだよ」
梨子「そうなの……?」
千歌「なーんだちょうど良いじゃん♪じゃあ今日から一緒に帰ろーよ♪」
梨子「今日……から?」
梨子「え、ええ……まぁ……そうなるわね」
曜「梨子ちゃん残念だったね」
梨子「えっ……何が?」
曜「こうなったらもう千歌ちゃんから逃げられないよー」ニシシ
梨子「逃げるってそんな……」
千歌「よしっせっかくだから果南ちゃんにも紹介しよう!」
曜「今日もいくの?」
千歌「もちろん!」
梨子「あの……その果南さん……とは?」
千歌「会えば分かる!」
曜「私達の幼馴染み、歳は一つ上だけどね」
ーーー
千歌「とーちゃーく!」
曜「よっと、梨子ちゃん足元気を付けてね」
梨子「うん」
千歌「果南ちゃーん!」タタタッ
「お?千歌、今日も来たの?なんかあったっけ?」
千歌「新しい友達紹介しに来た!昨日話してた梨子ちゃん!」
梨子「は……はじめまして、桜内梨子です」ペコリ
果南「あー、はじめまして、私は松浦果南、早速千歌に振り回されてるみたいだね」クスッ
千歌「もーなにーその言い方ー」
果南「これ片付けたら終わりだし、デッキで待っててよ」
曜「りょーかいでありまーす」ビシッ
梨子「あ、うん」
梨子「その……松浦さんって学校は?」
千歌「今休学中~お父さんが怪我しちゃってお店回らないんだって」
梨子「お店……?」
曜「ここ、連絡船の船着場兼ダイビングショップなんだ」
梨子「それでさっきボンベを……」
果南「おまたせ、何の話?」
千歌「果南ちゃんが学校行ってない話ー」
果南「言い方に悪意があるなぁ……私だって行きたくない理由じゃないんだから」
梨子「ごめんなさい……私が聞いたせいで……」
果南「あーいいよいいよ、別に責めたりしてるわけじゃないから」アハハ
千歌「昨日今日で集まるわけないじゃーん」
曜「相変わらず2人のまま……」
果南「梨子ちゃんだっけ?はやらないの?スクールアイドル」
梨子「いえ……私はそういうのは……」
果南「ま、転校してきていきなりスクールアイドルやれーって言われても困るよねー」アハハ
千歌「これじゃあ果南ちゃんが入る前に卒業しちゃうよー」グデェ
果南「そんな事言ったって約束は変えてあげないよー」
梨子「約束?」
曜「メンバー5人集めて正式に部活になったら果南ちゃんが入ってくれるって約束してるんだ、休学中だから設立の頭数には入れられなくって」
梨子「そうなんだ……」
千歌「部活になってないからおおっぴらに出来ないよー……誰か知ってる人入学したっけ?」
曜「知ってる人だとルビィちゃんとマルちゃんくらいかなぁ」
千歌「んむむ……」
果南「どっちもそういうのあんまり好きじゃないかもねー」
梨子「……?」
果南「今言った2人も幼馴染みでね、今年1年生なんだけど私らと違ってお堅ーい家柄なんだ」
曜「ルビィちゃんは昔からこの辺りの大地主のお家だし、マルちゃんはこれまた古ーいお寺の一人娘なの」
梨子「そう……なんだ……」
千歌「とりあえず聞くだけ聞いてみよーっと」
曜「私たちが中学卒業した時はまだだったけど?」
果南「……やっぱり勧誘は難しいかもね」
千歌「これで……よしっ!ルビィちゃんから返事来たら教えるね!」
曜「ヨーソロー!私そろそろバス来るし帰るね」
千歌「梨子ちゃんはどうする?」
梨子「私は別に……いつでも……」
千歌「じゃー帰ろっか」
梨子「曜さんはこの辺りに住んでないの……?」
曜「私の家、中学の時に沼津の方に引越したの、まぁギリギリ沼津って言える程度だけどね、それじゃまた明日」フリフリ
千歌「バイバーイ」フリフリ
梨子「はい……?」
果南「千歌から聞いたよ、色々大変なんだってね」
梨子「……」
果南「千歌って結構バカだし色々面倒臭いなぁって思うかもしれないけどさ」
梨子「……?」
果南「結構寂しがり屋でいい子なんだ、だから仲良くしてあげてね」
梨子「……はい」
千歌「梨子ちゃん、私たちも帰ろー」
梨子「あ、うん」
千歌「じゃーねー果南ちゃん」
梨子「お邪魔しました」ペコリ
果南「いつでもおいで、大体ここにいるから」
千歌「なんか今のおばさんくさーい」クスクス
果南「……なんだってー?」
千歌「わわっ!梨子ちゃん逃げるよー!」ダッ
梨子「ちょっ、千歌さん!?」アワアワ
ーーー
モブ「千歌ちゃーん、なんか1年生が呼んでるよー」
千歌「んん?」
曜「あれ、ルビィちゃんだ」
梨子「あの人が……?」
ーーー
曜「どうしたの?」
ルビィ「昨日千歌ちゃんからメールもらって…」
千歌「わざわざ会いに来てくれたのー!?相変わらずかーわいーなぁ」ギュー
ルビィ「ひゃあっ!?千歌ちゃん……く、くるし……!」バタバタ
曜「ちーかちゃーん」グイ
ルビィ「あの……それで……」チラッ
梨子「……」
ルビィ「……この人はどちら様ですか?」
千歌「色々手伝ってくれてる友達の梨子ちゃん」
梨子「えっ!?」
ルビィ「本人が一番びっくりしてますけど……」
曜「気にしないで、千歌ちゃんの最近のお気に入りだから」
ルビィ「あぁ……なるほど」
梨子「そんな説明で納得しちゃうんだ……」
曜「千歌ちゃん近いから」グイ
ルビィ「あの……マルちゃんはやっぱりそういうのよく分からないからって断られちゃったけど、私はやってみようかなぁって……」
曜「梨子ちゃん」ガシッ
梨子「えっ、あっ!」ガシッ
千歌「ルビィちゃーーうぐぇっ!?」
曜「ふぅ……危ない危ない」
ルビィ「あはは……ルビィね、誰にも言ってなかったんだけど実は昔からアイドルにちょっと憧れてて……」
曜「そうだったんだ、全然知らなかった」
ルビィ「部屋で動画みたり雑誌読んだりしてるだけでライブとかはまだ生で見たことないんだけどね、あと衣装とか自分で真似て作ってみたり……」
千歌「衣装作れるのっ!?ぃよっしゃー!これで3人!」
ルビィ「3人?」
曜「千歌ちゃんから聞いてない?私と千歌ちゃんとルビィちゃんで3人、あと2人で晴れて正式な部活になれるんだ」
ルビィ「えっ、部活まだ無いの!?」
梨子「どんな勧誘してたの……」
梨子「いや……だから私は……」
「なら私が入ってもいいかしら?」
曜「んっ?」
千歌「へ?」
「ハロー♪貴女達よね?スクールアイドルをスタートさせようとしてるのは」
千歌「そう……ですけど」
梨子「……誰?」ヒソヒソ
曜「知らない……三年生みたいだけどこんな人いたかなぁ」ヒソヒソ
鞠莉「はじめまして、私は小原鞠莉♪マリーって呼んでね♪私も貴女達と一緒にスクールアイドルをしてもいいかしら?」
千歌「えっと……大丈夫です……けど、誰から聞いたんですか?」
鞠莉「果南から♪」
千歌「果南ちゃんから?」
鞠莉「イエース♪実は私、1年の途中から留学しててね、この学校の思い出ってあんまり無いの。だからとっても楽しそうな事してる貴女達に惹かれちゃって♪」ウインク
鞠莉「それにちょっとくらいなら楽器も出来るわよ?」
千歌「よろしくお願いします!」ガシッ
曜「決断早っ!?」
千歌「これで5人!」
梨子「だから私はやらないって……」
ーーー
ルビィ「マルちゃん、やっぱり一緒にスクールアイドルしない?」
花丸「うーん……歌うのは好きだし憧れる気持ちも分かるけど……マル踊ったりはやっぱり……」
ルビィ「大丈夫だよ!ルビィも運動は苦手だけど好きなアイドルの振り付けとかいっぱい練習したら出来るようになったし!」
花丸「うーん……」
ルビィ「やっぱり……だめ?」
花丸「ルビィちゃんごめんズラ……マルにはやっぱりアイドルは無理だよ」
ルビィ「そっか……ごめんね無理に誘ったりして」
花丸「ううん、オラは平気♪その代わりルビィちゃんがスクールアイドルになったらいっぱい応援するから♪」
ルビィ「……うんっ♪」
花丸「じゃあまた明日」フリフリ
ルビィ「バイバーイ♪」フリフリ
ルビィ「……一緒に出来たらもっと楽しいと思ったんだけどなぁ……難しいなぁ……」
「お待たせ、ルビィ」
ルビィ「あ、お姉ちゃん」
ダイヤ「どうかしたの?」
ルビィ「ううん、何でもないよ」
ダイヤ「そう……」
ルビィ「そうだ、お姉ちゃんは小原鞠莉さんって知ってる?」
ダイヤ「……何故ルビィがその名前を?」
ルビィ「今日千歌ちゃん達と喋ってたら……その人とあって」
ダイヤ「そう……」
ダイヤ「ルビィ、その人とはあまり関わらない方がいいわ」
ルビィ「どうして……?」
ダイヤ「……あんな無責任な人と付き合っていたらルビィに悪影響だわ」
ルビィ「……え」
ダイヤ「まぁ……三年と一年だから、そう関わる機会もないと思うけど」
ルビィ「……」
ーーー
千歌「果南ちゃん」
果南「何?」
千歌「小原鞠莉さんって知ってる?」
果南「……」
千歌「知ってるよね?」
果南「……なんでその名前が出てくるのさ」
曜「その、小原先輩もスクールアイドルに参加することになって」
果南「なんでそんなことに……というか戻って来たの?」
梨子「えっ……小原さんは松浦さんから聞いたって……」
果南「待って、私は鞠莉が戻って来てることも今初めて聞いたんだよ?」
曜「えっ」
千歌「どーゆーこと?」
梨子「……?」
果南「……」
梨子「松浦さん……何か知ってます?」
果南「……鞠莉はね、小さい頃から内浦に住んでたの」
千歌「えっ嘘っ!?」
曜「でも私も千歌ちゃんも知らないけど……」
果南「あそこ、淡島ホテルのオーナーの娘なんだよ」
千歌「えー……でも淡島ホテルのオーナーさんって外国人じゃなかった?」
果南「鞠莉はハーフだからね」
曜「あの喋り方……留学かぶれかと思ったらハーフだっんだ……」
果南「小学校の3年生だったかな、アメリカから転校してきてさ……引っ込み思案でまだ日本語も下手でさ……あの頃、多分仲良かったの私とダイヤくらいじゃないかな」
千歌「……」
果南「家庭教師だとか塾だとかでいっつもすぐ帰っちゃうから、放課後遊んだりもないし、中学は沼津の方の私立に行っちゃって、なのに浦の星に入学したんだよね」
梨子「知ってたの?」
曜「知ってたっていうか小学校の頃、確かに学校でいっつも果南ちゃんの後ろにくっついてた金髪の子がいた気がする」
果南「うん、それが鞠莉」
千歌「え、いたっけ?」
曜「いたよ、私たちが果南ちゃんに会いに行ったりしたら逃げたりしてた」
千歌「……それほんとに小原先輩?なんか私たちが見たのとイメージ違いすぎるけど……」
果南「私も一年の時に再開してびっくりしたよ、全然違う性格になってたから」
梨子「……」
果南「自分からどんどんアピールしたりしてさ……その頃に廃校の話も出て、生徒会に掛け合ったりして……妙に張り切ってたんだ、それこそスクールアイドルを始めようなんて話もあった……なのに突然留学したんだよ」
曜「えっ…」
千歌「ちょ、ちょっと……果南ちゃん落ち着いて……」
果南「あ……ご、ごめん……」
千歌「……」
曜「千歌ちゃん」
千歌「なに?」
曜「ちょっと考え直したほうがいいんじゃないかな?小原先輩の事」
千歌「……」
果南「ごめんね千歌……鞠莉が参加するなら私は千歌達と一緒にスクールアイドルはやれない」
千歌「……」
梨子「千歌さん……」
千歌「うん……ちょっと考えてみる……」
ーーー
ルビィ「そんな事が……」
曜「ダイヤさんには話したりした?」
ルビィ「はい……でもあまり関わらないほうがいいって言われただけで、それ以外は」
梨子「あの……その、ダイヤさんって?」
ルビィ「あ、私のお姉ちゃんです。果南さんと同じ三年生で生徒会長なんです」
梨子「生徒会長……」
曜「千歌ちゃんどうする?果南ちゃんもダイヤさんもそんな簡単に人を貶したりするような性格じゃないよ?」
千歌「……昨日夜ずっと考えてたんだけどさ」
曜「うん」
千歌「私はやっぱり小原先輩に入ってもらおうと思う」
千歌「分かってるよ、果南ちゃんがあんなに取り乱すなんてよっぽどの事だし、ダイヤさんだって昔から面倒見のいい人だもん……でも」
梨子「でも……?」
千歌「今、小原先輩の事を断ったら前に進めない気がする……作曲とか申請の必要人数とか、そういうのを含めて」
ルビィ「……」
千歌「利用するみたいで気分がいい事じゃないけど……でも私は小原先輩をまず受け入れてみたい」
曜「……果南ちゃんは諦めるってこと?」
千歌「今はそうかもしれない、どっちみち部活として形にならなきゃ一緒にやれないんだから」
梨子「……」
千歌「……」
曜「乗りかかった船だからね、船長の千歌ちゃんがそういうなら私もそれに合わせるよ!」
千歌「曜ちゃん……」
ルビィ「る、ルビィも!せっかくスクールアイドルをやれるチャンスだから!辛いことも頑張る!」
千歌「ルビィちゃん……2人ともありがとう……」
曜「さぁ!そうと決まればあと1人!部活設立に向けて全速前進ヨーソロー!」ビシッ
ルビィ「よ、ヨーソロー……?」ビシッ
梨子「……」
ーーー
千歌「いらっしゃーい、適当に座っていいよー」
ルビィ「よいしょ」
鞠莉「放課後に友達の家でまったり……これぞスクールガールって感じね♪」
曜「意味分かんないです……」
梨子「あの……千歌さん」
千歌「んー?」
梨子「なんで私も呼ばれたの?」
千歌「えっ?」
梨子「……えっ?」
ルビィ「あ、梨子先輩はメンバーってわけじゃないんだった……」
鞠莉「ワッツ?そうなの?いつも千歌っちと一緒にいるからてっきりメンバーかと思ってたわ」
千歌「……」
梨子「……」
千歌「まぁ来ちゃったんだし、くつろいで行ってよ♪」
梨子「えー……もぅ……」ヤレヤレ
曜「あはは、すっかり千歌ちゃんのペースだね」
ルビィ「で、今日は何するんですか?」
千歌「よくぞ聞いてくれたねルビィちゃん!今日はなんと!」
ルビィ「なんと……?」ゴクリ
千歌「グループ名を考えるのだ!」
曜「あー確かにそろそろ考えておかなきゃだね、設立してからじゃ遅いし」
鞠莉「それもそうねー」
ルビィ「他のスクールアイドルと被らないようにしないとだし、結構大変かも」
千歌「もしもーし、皆さんリアクションがあっさりしすぎじゃないですかー……?」
梨子「これは私も参加した方がいい流れ……?」
鞠莉「ナイスアイディアがあればどんどん発言していいんじゃない?♪」
曜「うんうん、アイドルに詳しいルビィちゃん的にはどんな風に名付けすればいいと思う?」
ルビィ「そうだなぁ……やっぱり私達らしさっていうのは重要だと思うの……千歌ちゃんはどんなスクールアイドルを目指したい?」
千歌「μ'sみたいなスクールアイドル!」グッ
ルビィ「じゃあどちらかと言えば正統派のアイドルかなぁ、それなら柔らかい印象がいいかも、あとあんまりひねくれない感じ?」
鞠莉「比較的ストレートなネームって事ね」
曜「んー……じゃあ歌うに踊ると書いて歌踊丸!」ドヤッ
千歌「曜ちゃん……漁船じゃないんだから……」
鞠莉「今ので曜っちのネーミングセンスがデンジャラスなのがよく分かったわ」
曜「えっそんなにダメ!?」ガーン
ルビィ「でも海に関係するのはいいかも、内浦らしいし」
梨子「じゃあ……5人になってからだけどファイブマーメイドとか?」
鞠莉「梨子っちも曜っちとイーブンね」
梨子「えっ!?」ガーン
ルビィ「あはは……じゃあえっと、とりあえずたくさん関係のある単語を挙げてみるのはどうかな?何か良いのがあるかも」
千歌「ミカン」
ルビィ「海はどこいっちゃったの!?」
曜「ヨーソロー」
鞠莉「曜っちは1回船から離れて」
梨子「うーん……海、魚、水……ビーチ……」
千歌「夏!」
ルビィ「期間限定ユニットになっちゃうよぅ……」
鞠莉「sea……water、marine、ocean……wave、aqua……splash……」
千歌「アクア……アクアっていいかも!」
曜「確かになんか透き通った感じするかも」
鞠莉「そうねー、いいんじゃないかしら?」
千歌「アクアって英語でどう書くの?」
曜「私が知ってると思う?」
鞠莉「A・Q・U・Aでaquaよ」
千歌「さすが留学生」パチパチ
鞠莉「この程度で褒められても嬉しくないんだけど……」ヤレヤレ
千歌「でもなんかさっぱりしすぎじゃない?」
梨子「うーん……単語そのままっていうのが駄目なのかな……」
千歌「象語?パオーン?」
曜「それは無いよ千歌ちゃん……」
梨子「どんな風に変えるの?」
ルビィ「例えばμ'sは元々ギリシャ神話のMuseからきてるらしくて、更にギリシャ文字のμに置き換えたっていう……」
曜「μ'sって頭もいいんだね!」
千歌「更に遠い存在になった気がする!」
鞠莉「貴女達ほんとにやっていけるの……?」
千歌「じゃあアクアを英語に置き換えたら?」
梨子「アクアがそもそも英語じゃ……」
千歌「ホントだ!?」ガーン
鞠莉「……んーじゃあ私達のものって感じでoursとかはどう?」
千歌「泡?」
梨子「ours……」
曜「でも読みはアクアにするんでしょ?」
ルビィ「oursを混ぜるなら……」
梨子「AとQは最初にないとめちゃくちゃになっちゃうよね?」
ルビィ「じゃあその後にoursを入れてaqoursua?」
鞠莉「なんか長ったらしくない?最後のUとAは無くてもノープロブレムじゃないかしら?」
ルビィ「Aqours……?」
曜「それでアクアって読めばいいんじゃないの?」
梨子「到底読めないけど……」
ルビィ「まぁグループ名だから読み方はこうだ!って言ったもの勝ちみたいなところはあるから大丈夫かなと……」
千歌「じゃあこれでけってーい!」
鞠莉「貴女達もっとスタディするべきよ……」
ルビィ「あはは……」
梨子「……」
千歌「よしっ!じゃあこれから私達はスクールアイドル……Aqours!……って、どうしたの梨子ちゃんニヤニヤして」
梨子「えっ……あ、面白い名前だなぁって」
曜「面白い?」
梨子「A・Q・Oursって読むと永久泡'sって聞こえるでしょ?永久の泡……絶対に弾けたりしない夢の泡って感じがしない?」
鞠莉「ふふっ♪梨子っちはポエマーなのね♪」
梨子「ぽ、ポエマーって別にそんな!」アワアワ
千歌「私は好きだな!」
ルビィ「千歌ちゃん?」
曜「でも泡ってなんかマイナスイメージな使われ方もしない?」
千歌「いいじゃん!この内浦みたいになんにもないところからブクブクブクって湧き出してさ!面白いじゃん!私達ここにいるよ!って!しかも割れないんだよ!ずっとそこにあるんだよ!」
鞠莉「私も千歌っちみたいなポジティブシンキングがいいと思うわ」
ルビィ「なんにもないところからどんどん湧き出る泡」
曜「しかも絶対に割れない永久の泡か」
ルビィ「賛成です!裏のイメージとしてもすごくいい!」
千歌「私達の海、永久の泡!Aqours!」
曜「なんか私も急に色々動き出してきてワクワクしてきた!」
ルビィ「憧れのアイドルへの1歩……!」
鞠莉「もう後戻りは出来ないわよ?♪」
千歌「絶対に退かないよ……絶対に!」
梨子「……♪」クスッ
ーーー
鞠莉「梨子っちお待たせ、少しなら大丈夫よ」
梨子「すみません小原先輩」
鞠莉「マリー」
梨子「……?」
鞠莉「マ・リ・イ」
梨子「鞠莉……先輩」
鞠莉「んもう、梨子っちの噂、三年まで聞こえてるのよ?」
梨子「……」
鞠莉「同い年なんだから先輩なんて付けなくていいわ」
梨子「……鞠莉さん」
鞠莉「んー、まぁそれでいいわ、で、用ってなぁに?」
梨子「渡したいものがあるんです、私の家がすぐ近くなんで来てもらえますか?」
鞠莉「OK♪」
梨子「こっちです」
梨子「……」
鞠莉「何も聞かないの?」
梨子「何をですか?」
鞠莉「……果南かダイヤから全部聞いてると思ったんだけど」
梨子「……聞きましたよ」
鞠莉「貴女はどう思った?」
梨子「分かりません」
鞠莉「わからない……?」
梨子「今の私は経験が無さ過ぎて鞠莉さんがどんな気持ちかも、松浦さん達がどんな気持ちなのかも正直分かりません」
鞠莉「……」
梨子「でも今日の鞠莉さんを見て思いました、多分私と同じなんだと」
鞠莉「同じ……?」
梨子「多分ですよ?……経験がないんです、今も昔も……何があったのかなんて分かりませんけど多分鞠莉さんはどうしていいか分からなかったんじゃないかなって」
鞠莉「……」
梨子「本当はそんなつもりじゃなかった……こんなはずじゃなかった…でもそうするしかなかった……そんな感じだったんじゃないかなって」
鞠莉「ふふっ、面白い意見ね♪」
梨子「ここです、今取ってくるので少し待っててください」
鞠莉「ええ」
鞠莉「……」
鞠莉「そうするしかなかった、か……」
鞠莉「……結局は言い訳よね」
梨子「お待たせしました、これを」
鞠莉「……これは……楽譜?」
梨子「ピアノの楽譜なんですけど、鞠莉さん楽器出来るんですよね?」
鞠莉「ええ、まぁ……でもなんでこんなものを……?」
梨子「それ、多分全部私が作った曲なんです」
鞠莉「梨子っちが……これを?」
梨子「私、記憶がなくなる前はピアノをやってたみたいで……でも今の私には読めもしない単なる紙切れなんで……スクールアイドルをやるのに良かったら使って下さい」
鞠莉「……いいの?」
梨子「はい」
鞠莉「じゃ、有難く使わせてもらうわ……用件はこれだけ?」
梨子「はい」
鞠莉「なら私は帰るわね」
梨子「すみません、時間を取らせて」
鞠莉「気にしないで♪それじゃ、チャオ♪」ヒラヒラ
梨子「おやすみなさい」
ーーー
ルビィ「あのぅ……津島さん」
善子「何?」
ルビィ「津島さんはスクールアイドルとか興味ありませんか?」
善子「スクールアイドル?ごめんなさい、私そういうミーハーなのは嫌いなの」
ルビィ「そ、そうですよね……変なこと聞いてすみません…」
花丸「ルビィちゃん……ルビィちゃんは頑張ったズラ」ナデナデ
善子「それよりも私は今噂の記憶喪失先輩のほうが興味あるわね、貴女達も何か知らない?」
花丸「記憶喪失……先輩?」
ルビィ「それって……」
善子「知ってるのね!?このヨハネに紹介しなさい!」ガシッ
ルビィ「ひぃぃ!?い、いきなりそう言われてもぉ……」
花丸「津島さん、先輩の都合もあるだろうし……ね?」
善子「おっとそうね、不可抗力とはいえ人間界にいる以上は人間の都合にも合わせてあげなくちゃ」
花丸「……」ヤレヤレ
ルビィ「い、一応ちょっと聞いてみるね……」
ーーー
梨子「……その、初めまして……」
花丸「はじめまして、ルビィちゃんの幼馴染の国木田花丸です」ペコリ
梨子「うん、話は聞いてるよ、よろしくね」
善子「私は堕天使ヨハネ、貴女が記憶喪失だと聞いてピンときたの!貴女は間違いなく天界での我が半身だわ!」ギランッ
梨子「えっ……違うと思います……」
花丸「意味不明ズラ……」
ルビィ「津島さん……先輩だから……」
善子「覚えていないだけよ、私の魂が間違いなくそうだと囁いているの!さぁ、私と共に天界へ反逆の狼煙をあげるわよ!」ビシッ
梨子「あの……帰ってもいいかな?」
ルビィ「いきなり呼び出してすいませんでした……」ペコリ
花丸「すいませんでした……」ペコリ
梨子「気にしないで……私は大丈夫だから……それじゃ」
善子「あ、ちょっと待ちなさいよー!」
花丸「津島さんちょっといい加減しするズラ」ググッ
ルビィ「先輩相手に失礼過ぎるよー」ググッ
善子「あーんもう!せっかく上手く行きそうだったのにー」
花丸「何がどう上手くいきそうだったのか全然わからない……」
ルビィ「なんで梨子先輩にこだわるの?」
善子「だって記憶喪失なんて物凄く不幸じゃない」
花丸「う、うん」
善子「不幸体質の私と気が合わないわけないわ」
ルビィ「うん……?」
善子「もう黒澤さん!」
ルビィ「はいっ!?」
善子「アンタと関わりがあるってことはあの人もスクールアイドルって事よね?」ズイッ
ルビィ「いや……梨子先輩は違うけど……」
善子「庇ったってだめよ!こうなったら私もスクールアイドルになって記憶喪失先輩に取り入ってやるんだから」
花丸「はい……?」
ルビィ「えぇ……そんな理由で入られるのはちょっと……」
善子「アンタが先に勧誘したんでしょ」
ルビィ「うぅ……誘う相手間違えちゃった……」
花丸「ドンマイズラ……」
ーーー
善子「よろしくお願いします」
千歌「こちらこそよろしくね♪」
鞠莉「なんだかミステリアスな子ね♪面白そう♪」
梨子「……」
曜「梨子ちゃんどうかした?」
ルビィ「あの……梨子先輩……ほんとにごめんなさい……」
梨子「き、気にしないで、ルビィちゃんは悪くないから」
千歌「よし、じゃあこれで遂に5人!」
曜「やっと部活申請出来るね!」
千歌「うんっ!というわけで皆さん!この用紙に名前をお願いします!」バンッ
鞠莉「OK♪」
ルビィ「黒澤、ルビィ……と」カキカキ
善子「……ヨハネっと」カキカキ
ルビィ「津島さん」
善子「うっ……」カキナオシ
曜「出来た!」
千歌「よし!じゃあせっかくだからみんなで出しに行こう!」
ルビィ「えっ……みんなで……」
梨子「あ……ルビィちゃんのお姉さんが……」
千歌「あ、そうだった……じゃあ私が出してーー」
ルビィ「……大丈夫です」
梨子「ルビィちゃん……」
ルビィ「いずれはバレちゃうし……それなら最初から隠さないで堂々としたほうがいいと思うから……」
曜「ほんとに大丈夫?」
ルビィ「はいっ」
千歌「分かった、じゃあ6人で行こう!」
梨子「えっ、私も行くの!?」
ダイヤ「……スクールアイドル部ですか」
千歌「はい、5人いれば部活の設立に問題はないですよね?」
梨子「……」ソワソワ
ダイヤ「そうですわね……幾許もない時期になぜ新設するのか等々言いたい事は山ほどありますが、規則としては問題ありませんし、私にそれを覆す権利もありませんわ」
千歌「じゃあ……!」
ダイヤ「スクールアイドル部の設立は認めます」
曜「やった!」
ルビィ「うっ……」
ダイヤ「鞠莉さん、貴女がもし私達にしたのと同じ過ちを繰り返すというのなら、私は何をするか分かりませんよ」
鞠莉「……ふふっ♪肝に銘じておくわ♪」
ダイヤ「……部室の割り当て等は改めて後日お伝えします」
千歌「ありがとうございます!」
ダイヤ「……」
千歌「失礼しましたー」ペコリ
鞠莉「チャオ♪」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「な、何かな……」
ダイヤ「貴女ももう高校生、私がとやかく言う事はないけど、その分貴女達に責任が伴う事を忘れないように」
ルビィ「……うん」
千歌「……」
ーーー
千歌「よしっ、正式に部活にもなったし、早速スクールアイドルAqoursとして動き出さなきゃ」
曜「とにかく曲を作らないことには始まらないよね」
鞠莉「ふふっ♪そーんな貴女達のためにこのマリーがスペシャルなミュージックをプレゼントしてあげるわ♪」
ルビィ「へ?」
千歌「ミュージックって……もしかしてもう作曲したんですか!?」
鞠莉「イエース♪」
善子「用意周到ね」
鞠莉「だってみんなはともかく私はこの一年しかいないのだから、どんどん動かなきゃ勿体ないじゃない?」
曜「そっか……鞠莉先輩三年生だもんね」
鞠莉「ノンノン♪シリアスはノーセンキューよ♪とにかく聞いてみてくれる?」
千歌「はいっ」
梨子「……」
ルビィ「……」チラッ
曜「すごい……ほんとに曲になってる……」
善子「いかにもアイドルって曲ね」
鞠莉「まぁ私ももっとハードなテイストにしようかと迷ったんだけど、王道には王道の良さってものがあるから♪」
千歌「鞠莉先輩すごいよー!」
曜「これに歌詞をつけて振り付けを考えれば……」
ルビィ「私達も晴れてスクールアイドル!」
千歌「歌詞は誰が考える?」
善子「私はアイドルソングとか聞かないしパス」
曜「私もそういうのよく分かんないかな……」
ルビィ「ルビィは衣装作りですよね……?」
千歌「えっ、じゃあ振り付けは?」
善子「私踊りとかやったことないし」
曜「盆踊りくらいなら!」
ルビィ「衣装……」
梨子「前途多難ね……」
千歌「とーにーかーく!鞠莉先輩は作曲だしルビィちゃんは衣装作りだから私達3人がなんとかしなきゃ!」
曜「やっぱりそうなるよね……」
善子「はぁ……黒澤さん」
ルビィ「何かな?」
善子「付け焼き刃になるけどなんかアイドルらしさが分かりそうなオススメとかないの?」
ルビィ「うーん……じゃあとりあえずいくつかまとめて後で送るね?」
善子「ありがと」
曜「ルビィちゃん!」
千歌「私達にも!」
ルビィ「えっ、 えぇ……」
ーーー
ピロリン
梨子「ルビィちゃんから……?」
ルビィ『いきなりすみません。余計なお世話かもしれないですけどこの動画を見てもらえませんか?』
梨子「……」
記された動画のページへアクセスすると
とあるスクールアイドルのライブ映像の詳細ページに繋がる
しかし、私はそのまま再生せずに元の画面へ戻った
梨子「……」
梨子『わざわざありがとう、でもごめんなさい、知識としてはもう知ってるの』
梨子「……」
梨子『気にしないで』
そう返して再び動画のページを選択する
二年前の日付と共に記されたタイトル
梨子「……音ノ木坂学院……アイドル研究部……1年生グループ…」
まだグループ名もなく、先輩の前座として踊った初舞台らしい
そこに連なる4つの名前の1つに懐かしさと気持ち悪さが湧き上がる
ーーー
千歌「うわぁぁ!もう全っ然思いつかない!」
曜「さっきからμ'sの曲の歌詞ばっかり書いてるもんね……」
善子「堕天使としての本能が隠しきれない!」
鞠莉「貴女達、ここ図書室よ」
千歌「そもそも図書室という落ち着かない空間が悪い!」
曜「他に誰もいないのがまたね……」
善子「嗚呼、リトルデーモンの気配が無い!一体どれほどの結界が張られて……」
鞠莉「貴女達ほんとダメ人間よね」ヤレヤレ
ガラッ
ルビィ「あ、まだいた」
花丸「お邪魔しますズラ……」
千歌「あっ!マルちゃん!」
曜「久しぶりー」
鞠莉「どちら様?」
花丸「千歌ちゃん、曜ちゃんお久しぶり」
花丸「リトルデーモンって何っ!?というかズラ丸って何っ!?」ガーン
善子「だってアンタいっつもズラズラ言ってるじゃない」
花丸「そんなひどい渾名初めてズラ!……あっ」
善子「ほらまた言った!」
鞠莉「ねぇどちら様ぁ?」
曜「あっ、私達の幼馴染みで国木田花丸ちゃんです」
花丸「初めまして国木田です、ルビィちゃんがいつもお世話になってます」ペコリ
鞠莉「オーウ♪初めまして♪」
千歌「マルちゃんもAqoursに入ってくれるの?」
ルビィ「来ていきなり!?」
花丸「あー……それは前にルビィちゃんにも誘われたんだけど…オラはそういうの苦手だから……」
千歌「えーマルちゃん可愛いし歌なんかめっちゃくちゃ上手いからぴったりだと思ったのに」
花丸「オラは聖歌隊で歌ってるだけで十分だから……」
ルビィ「本格的な衣装作りだともっと勉強しなきゃなぁって思って、そういう本がないか探しに」
花丸「マルは借りた本を返しに来たのと新しい本を借りに」
曜「それ全部読んでるの?」
花丸「もちろんズラ」ドサッ
千歌「漫画より文字多いのよくそんなたくさん読めるよねー」
鞠莉「それは千歌っちが読まなさすぎじゃ……」
千歌「あ」
曜「ん?」
千歌「マルちゃんって文章好きだよね!?」
花丸「文章が好きって……そんな考え方はしたことないけど……まぁ本は好きだけど?」
千歌「じゃあさ!踊らなくても歌わなくても良いから作詞担当として部員になるのはどう!?」
花丸「さ、作詞?」
曜「あーそっか別に部員だからってステージで踊る必要はないんだ」
鞠莉「貴女何か裏方作業出来るの?」
善子「……お茶くみ?」
鞠莉「論外デース」
善子「なんでカタコトなのよっ」
花丸「いや……オラはそんなことしたことないし……」
千歌「大丈夫!私達もこれからやること全部初めてだから!」
花丸「えぇ……」
ルビィ「マルちゃん……ダメかな?ルビィもマルちゃんと一緒にスクールアイドルやりたいの」
花丸「……」
花丸「うん……」
善子「そーいえば記憶喪失先輩は?」
曜「善子ちゃんその呼び方やめなって」
千歌「梨子ちゃんなら今日は沼津の病院に行くって帰っちゃった」
鞠莉「そもそも梨子っちは部員じゃないからいる方がおかしいと思うわよ?」
ーーー
梨子「……」
脳、身体共に特に異常はなし
梨子「……はぁ」
症状ーー全生活史健忘
梨子「……えっと、バス停は……あっちね」
「あっ」
梨子「ん?」
善子「記憶そーーじゃなかったえっと……桜内先輩」
梨子「津島さん、なんでこんなところに?」
善子「なんでも何も、私沼津に住んでるから」
梨子「あ、そうなんだ……浦の星に通うの大変じゃない?」
善子「そうでもないわ」
梨子「そっか……私ここまでくるのにすごい時間かかっちゃったし……」
善子「先輩は転校生でしょ?単に土地勘が無いだけじゃない?」
梨子「あはは……多分それもあるかな」
梨子「ん?」
善子「先輩は、なんで記憶喪失になったんですか?」
梨子「なんでって言われても……事故にあったからとしか…」
善子「どんな事故ですか?」
梨子「……私はわき見運転の車に跳ねられたとしか」
善子「そうですか……変なこと聞いてすいません」
梨子「ううん……もう慣れたから」
善子「そうだ、先輩の事渾名で呼んでいいですか?」
梨子「渾名……?鞠莉さんみたいな?」
善子「そうね……んー、りこ……りー……」
梨子「……」
善子「り……あっ!リリーとか!」
梨子「えー……」
善子「決定!今からリリーって呼ぶわ!」
梨子「まぁ……津島さんがそう呼びたいなら私は別に……」
梨子「はい?」
善子「ヨ・ハ・ネ!私の事はヨハネって呼んで」ビシッ
梨子「えっ……なんで……」
善子「なんでって私がヨハネだからよ!」ギランッ
梨子「え……やだ……」
善子「やだって酷くない!?」
梨子「私はそのまま津島さんで……」
善子「いや!だって津島善子なんてダサいじゃん!」
梨子「……じゃあえっと……よっちゃん」
善子「……小原先輩から聞いたとおりあんまりセンスないわね」
梨子「うっ……」
善子「まぁ今はそれでいいわ、でもいつかヨハネって呼ばせてやるんだから!」ダッ
梨子「あっ、行っちゃった……」
梨子「……渾名で呼ぶって敬語もやめる感じなのかな……?」
ーーー
千歌「梨子ちゃんおはよー」
梨子「おはよう」
千歌「実は私!昨日すっごいいいこと思いついたのだ!」
梨子「いい事?」
千歌「梨子ちゃん!」ズイッ
梨子「な、なに?」
千歌「スクールアイドル部のマネージャーになってくれませんか!?」クワッ
梨子「マ、ネージャー……?」
千歌「そう!ステージで歌ったり踊ったりするだけがスクールアイドルじゃないんだって」
梨子「どういう事?」
千歌「曲を作ったり衣装作ったりさ、チラシとか!ライブの時も裏方さんってやっぱり必要じゃん!そういうのも全部含めてスクールアイドルなんじゃないかなぁって」
梨子「裏方もスクールアイドル……」
梨子「うーん……確かに」
千歌「そんなAqoursをまとめられそうな人がきっと必要なんだ、で、それを梨子ちゃんにやってもらいたいなぁって」
梨子「でも……私、元々余所者だし……その、記憶喪失だし」
千歌「だからだよ!」
梨子「……はい?」
千歌「ずっと内浦にいる私達と違うからこそ梨子ちゃんにお願いしたいんだ!きっと私達とは違うものが見えるから!」
梨子「違うもの……」
千歌「あっ」
梨子「えっ?」
梨子「ぷっ……♪」
千歌「あー笑ったー!」
梨子「ふふっ♪ごめんなさい♪」
千歌「もー私これでも真面目に考えてるんだからぁ」
梨子「そうね……私も考えてみようかな……」
千歌「ほんと!?」
梨子「うん、お手伝いくらいなら私にも出来るだろうし」
千歌「いよっしゃー!」
梨子「あの、まだ考えるとしか言ってないからね?」
千歌「これで7人だ!」
梨子「だからー……って、えっ?7人?」
ーーー
千歌「ばばーん!」
曜「じゃじゃーん!」
鞠莉「オーウ♪ようやく部室が出来たのね」
善子「でもなんで体育館なのよ?教室どころか校舎単位で余りまくってるのに」
ルビィ「スクールアイドル部のためだけに使ってない校舎を開けるのは難しいんだって」
曜「でもここだと練習とかも行きやすいし」
千歌「体育館でライブする時は控え室にもなるのだ!」
鞠莉「エクセレンッ♪」
千歌「そしてもう一つお知らせがございます!」
ルビィ「お知らせ?」
曜「2人ともこっちこっち」
花丸「……」ドキドキ
梨子「そんな畏まって紹介はいらないんじゃ……」
善子「リリーにズラ丸じゃない」
ルビィ「リリー……?」
曜「よっ!」パチパチ
ルビィ「マルちゃん……!」パチパチ
善子「ふふっ……やはりヨハネとリリーは惹かれ合う運命……!」
鞠莉「なんだかどんどん部活らしくなってきたわね♪」
千歌「じゃあ2人から一言ずつどーぞ!」
花丸「えっ!?あっ、マルはみんなと一緒に歌ったり踊ったりは出来ないけどみんなが頑張れるように色々お手伝い頑張るズラ」
梨子「えー、っと……私もステージには上がらないけど、その分裏方として力になりたいと思います……」
曜「拍手ー!」パチパチ
鞠莉「シャイニー☆」パチパチ
ルビィ「まだ何かあるの?」
千歌「こうして部活として動き出したからにはやっぱり見てもらわなきゃダメ!」
善子「まぁスクールアイドルだし」
千歌「なのでライブをしようと思います」
ルビィ「遂に……!」ゴクリッ
千歌「早ければ早い方がいいです」
曜「うんうん」
千歌「だから皆さん頑張って曲を作りましょう……」ガクッ
梨子「えっ……あれから進んでないの?」
花丸「聞いてた以上にマズいズラ……」
千歌「だから梨子ちゃんとマルちゃんが頼りなんだよぉ」
梨子「えっ」
花丸「えー……」
梨子「はぁ……」
梨子「そうね……鞠莉さん、曲のサンプルは?」
鞠莉「えっ?……あぁ、このプレイヤーよ」
梨子「ありがとうございます」
鞠莉「……」
梨子「花丸ちゃんは聴いた?」
花丸「オラはまだ聴いてないです」
梨子「じゃあまずは曲を聴いてイメージを考えましょうか」
花丸「分かりました」
鞠莉「……」
ルビィ「鞠莉先輩ちょっといいですか?」
鞠莉「ワッツ?何かしら?」
ルビィ「……ここじゃちょっと」
鞠莉「……OK」
ーーー
ルビィ「あの……鞠莉先輩」
鞠莉「何かしら?」
ルビィ「あの曲……鞠莉先輩が作った曲じゃないですよね?」
鞠莉「……どうして?」
ルビィ「……」
鞠莉「ルビィちゃん?」
ルビィ「変なこと聞いてすいません……鞠莉先輩が作ったならそれでいいんです」ペコリ
鞠莉「……」
ーーー
千歌「さすがマルちゃんと梨子ちゃん……もう歌詞が出来た!」
梨子「もう一度言っておくけど仮の歌詞だからね?」
曜「仮でもすごいよ、私達なーんにも浮かばなかったし」
千歌「そうそう」
梨子「難しく考えすぎなんじゃないかな?」
千歌「難しく?」
梨子「うん、私も花丸ちゃんもとりあえず音から作っただけだから」
曜「もう少しわかりやすく説明してほしいであります!」ビシッ
千歌「言葉のリズム……」ムムッ
梨子「うん、それから意味が分かるように言葉を変えたり……パズルみたいな感じ」
曜「千歌ちゃんパズルだって」アハハ
千歌「じゃー私と曜ちゃんには無理だね」アハハ
曜「だねー」アハハ
ようちか「はぁ……」
梨子「2人ともパズル苦手なのね……まぁこれからは私と花丸ちゃんで頑張ってみるから2人はダンスを頑張ってね?」
曜「そーだ!ダンス!うわぁ……」
千歌「とりあえずルビィちゃんに教えてもらったスクールアイドルを参考に色々考えてみよう」
曜「了解であります……あ、そろそろバス来ちゃう」
千歌「じゃあ曜ちゃんまた明日ー」
梨子「ばいばい」
曜「じゃーまたねー」
ーーー
千歌「んーと……ここはこう?ほっ!うわっ!?」ドテッ
千歌「いてて……んー?あ、こっちかぁ……ほっ」
果南「ちーかー」
千歌「ほへ?うわわっ!?」
バシャーン
果南「あっちゃー……もうほら掴まって」
千歌「あ、ありがどー」ブクブク
果南「何をクルクル回ってたのさ?」
千歌「ダンスをね、考えてたんだ」
果南「ダンス?千歌が?」
千歌「曜ちゃんもだけどね」
果南「ふーん……なんか千歌のそんなに真剣な顔初めて見たかも」
千歌「それ私がなんか適当に生きてきたみたいじゃない!?」ガーン
果南「ごめんごめん♪」
千歌「もぅ……」ムスッ
千歌「うん?……そりゃぁ楽しいけど、どうしたの?」
果南「いーや、なんでもないよ♪ほらダッシュで帰らないと風邪引くよ」
千歌「あ゛ー……またみとねぇに馬鹿にされちゃうよー」
果南「自業自得だよ」
千歌「はぁ……じゃあ果南ちゃんまたね」フリフリ
果南「気を付けてねー」フリフリ
果南「……」
果南「……いつまでそこに隠れてるつもり」
鞠莉「ふふっ♪とーっても心配そうねー♪」
鞠莉「ノープロブレ~ム♪千歌っち達はみんな立派にやってるわ」
果南「……」
鞠莉「……ねぇ果南」
果南「……って」
鞠莉「復学し「帰って!」
鞠莉「果南……」
果南「はっきり言うよ、鞠莉がいる限り私はスクールアイドルなんかやらない……だから帰って」
鞠莉「……そう、ごめんなさい」スタスタ
果南「……」
ーーー
千歌「それで、こう!」キュッ
善子「地味じゃない?」
曜「腕を伸ばしてみるとか?」
千歌「こう?」ビシッ
善子「あぶなっ」
曜「あー、今のステップのままじゃ距離が近いか、じゃあ、ここの足運びをもう1歩広げてみた方がいいかな」
千歌「こうして……こう!」キュッ
善子「なんとか形にはなってきたわね」
ルビィ「凄くいいと思う!」
鞠莉「スムーズに動けば中々のダンスになるんじゃない?」
千歌「よしっ!じゃあ1回みんなでやってみよう!」
善子「いや、先輩以外全員同じステップは変でしょ」
千歌「あっ」
曜「千歌ちゃんをセンターにするわけだから……善子ちゃんと鞠莉先輩は今のステップで……ルビィちゃんと私は逆のステップか」
千歌「出来る?」
曜「まぁ逆にするだけなら簡単だから、ちょっと3人でやってみる?」
善子「ものは試しね」
ーーー
ルビィ「梨子先輩、花丸ちゃーん」
花丸「どうしたズラ?」
ルビィ「歌詞はどんな感じかなぁって思って」
梨子「ほぼ完成してるわよ♪聴いてみる?」
ルビィ「聴くって……もう録音したんですか!?」
梨子「国木田さんの歌、凄く上手でびっくりしちゃった」
花丸「せせせ先輩!言わないでほしいズラ!」
ルビィ「花丸ちゃんの歌聴きたいっ!」
ーーー
花丸「……穴があったら入りたい……」
鞠莉「ワーオ……」
善子「歌になってる……」
曜「凄いよ梨子ちゃん!マルちゃん!」
千歌「うぉぉ!なんか私達すっごいことしてる!」
梨子「あはは……」
ルビィ「ルビィも早く衣装完成させなきゃ……!」
梨子「私達に手伝える事があったら言ってね、といっても大したことは出来ないけど……」
ルビィ「ありがとうございます♪」
千歌「あっ!」
鞠莉「どうかしたの?」
千歌「チラシ!」ガサゴソ
曜「チラシ?」
善子「……地獄絵図?」
花丸「相変わらずダメな方に限界突破してるズラ……」
千歌「はい、曜ちゃん!」
曜「はいきたー」
梨子「……?」
曜「えっと……ここはこうだから……」サササッ
曜「清書完了でありますっ!」ビシッ
鞠莉「まるでアルケミストね」
ルビィ「清書って一体なんだろう……」
千歌「どうかな!?」
梨子「ええ……曜さんの描いたのならとてもいいと思う」
千歌「よしっ!じゃあこれを配ったり貼ったりしよう!」
鞠莉「配るっていっても具体的にどこに?」
千歌「とりあえず回覧板で回したりかなぁ」
善子「案外小さく攻めるのね」
千歌「そりゃあたくさんの人に来てもらいたいけどさ、いきなり高望みしても仕方ないし、まずは内浦のみんなに見てもらいたいから」
善子「……っ!?」ガーン
花丸「善子ちゃんが面食らってる……」
善子「……思った以上にまともな答えが返ってきたらびっくりもするわよ」
千歌「なんか失礼じゃないかな!?」ガーン
鞠莉「じゃあチラシについては千歌っちに任せても?」
千歌「あっ、うんっ!」
ルビィ「それじゃ、チラシを完成させるためにも日程とか場所とか早く決めないとだね」
梨子「そうだね」
ーーー
ダイヤ「体育館の使用許可ですか?何の為に?」
千歌「はいっ、この日程のどれかで私達のライブをしたいんです」
ダイヤ「……少し待っていてください」
千歌「はいっ」
梨子「そういえば、生徒会長さんも幼馴染みなんだよね?」
曜「そーだよ?」
梨子「その割には果南さんと違って千歌さんの態度が堅いというか……」
曜「あー、昔からダイヤさんって凄く優等生なところがあったから、嫌いとか仲良くないって訳じゃないんだけど、なんて言うか……一緒にいたら背筋がピンっとしちゃう感じかな」
梨子「へぇ……」
ーーー
ダイヤ「ではこれで受理しておきます」
千歌「ありがとうございます」
ダイヤ「他に何か貸出が必要なものはあれば一緒に書類を用意しますが」
千歌「体育館の2階の照明と体育館の放送室って書類いりますか?」
ダイヤ「照明?……あぁ、あれはいりませんわ、放送室も使ってもらって構いません」
千歌「なら大丈夫です、ありがとうございました」
ダイヤ「えぇ」
千歌「ダイヤさん」
ダイヤ「他に何か?」
千歌「ダイヤさんにも色々思う事があるかもしれないけど、良かったら私達の初ステージ見に来てください」
ダイヤ「……考えておきますわ」
千歌「ありがとうございます!失礼しましたー」ガラッ
ダイヤ「……」
明日中にはファーストライブ編が終わってもう少し話が動きます
ーーー
梨子「果南さんには言わなくていいの?」
千歌「果南ちゃんなら何となく私の気持ちも分かってくれるかなぁって」
梨子「気持ち……」
千歌「なんて言うんだろうなぁ……誘いたいけど今誘ったらもっと離れちゃいそうな気がして」
梨子「……」
千歌「果南ちゃんってさ、昔から〝お姉ちゃん〟って感じでさ、まぁ私本当のお姉ちゃんもいるんだけどさ」
梨子「うん」
千歌「私達の前を歩いてくれたり、後ろを歩いてくれたり……いつだって私達が私達でいられるように見守ってくれてるんだ」
梨子「……」
千歌「だから鞠莉先輩とのことであんなに怒ったりするのもきっと私達の事を思っての事なんだよ」
梨子「そっか……」
千歌「でもさ」
梨子「ん?」
千歌「ダイヤさんが言ってたじゃん、私達には責任が伴うって」
梨子「そうね」
千歌「鞠莉先輩の事だけじゃなくてこれから先Aquorsとして活動していくなかで、きっとそういう時がいっぱいくるのかもしれないじゃん」
梨子「……」
千歌「そんな時……昔みたいに果南ちゃんやダイヤさんに頼ってばっかりなままの私じゃダメなんだよ……」
梨子「千歌さん……」
ーーー
花丸「糸が……通らない……」プルプル
梨子「ルビィちゃん、そんなにすいすい縫って怪我しないの?」
ルビィ「衣装作りもそうだけど、お裁縫は昔から好きなんです、巾着袋とか小物も作ったりしてて」
梨子「凄いね……痛っ……また刺しちゃった……」ガックリ
善子「リリーもズラ丸も賢いだけで不器用ね」
ルビィ「善子ちゃん、ダンスは?」
善子「私はきゅーけー、今でこそ堕天し不幸体質になったとはいえ!はるか昔に天界にその名を轟かした天使なのだから!ダンスの一つや二つに手古摺るようなヨハネじゃないのよ!」ギランッ
ルビィ「善子ちゃん凄い!もう覚えちゃったの?」
善子「えっ!?あっ、まぁね……」タジッ
花丸「純粋無垢なルビィちゃんの真っ直ぐな賞賛にたじろいでるズラ……」
梨子「あはは……」
ルビィ「そんなことは……」チラッ
花丸「あっ……また糸が抜けたっ」ガーン
梨子「えっと……次はこっち側……かな?」
ルビィ「……あるかも」ガクッ
善子「仕方ないわね、リリー貸しなさい」
梨子「へっ?」
善子「こういう所は、ここを通して、このくらいで……こう」シュッ
梨子「えっ」
善子「ズラ丸は針を持つ時はここで糸を持つの、で、引っ張る時は針じゃなくてこうやって糸を引っ張るの」シュッ
花丸「おおっ!?」
ルビィ「善子ちゃん……お裁縫得意なの?」
善子「ふっ……ヨハネが本来纏うべき衣はこの現世に存在しないよ、つまり自ら生み出す事が必要なの……!」バッ
花丸「意味わからないズラ……」
ルビィ「……つまりコスプレ衣装を作ってるって事かな……?」
善子「コスプレ言うなっ!」
ルビィ「あの……」
梨子「ん?」
ルビィ「前から思ってたんですけど、善子ちゃんと梨子先輩っていつの間にあだ名で呼び合う仲になったんですか?」
花丸「確かに、善子ちゃんが馴れ馴れしいのは分かるけど桜内先輩からってのが想像つかない」
善子「考えるまでもないわ!ヨハネとリリーは魂を分けた存在なのだから!」
梨子「全然違う……よっちゃんが渾名で呼べって言うから」
花丸「じゃあオラのこともマルって呼んでほしいな♪」
ルビィ「ルビィも……はっ!ルビィってあだ名で呼ばれた事ないっ」
善子「珍しい名前なんだから別にいいじゃない」
ルビィ「ぅゅ……確かに」
善子「とりあえずこの二人に任せてたらいつまで経っても完成しそうにないから私も衣装手伝うわ」
ルビィ「ありがとう♪」
鞠莉「ライブのセットリスト?」
千歌「うん、一曲だけって流石にねぇ……」
梨子「でも今から作って間に合うの?」
曜「いや無理じゃないかな……」
善子「MCで乗り切る?」
千歌「喋ってるだけじゃアイドルのライブじゃないような……」
ルビィ「じゃあバラード曲を用意するとかはどうかな?」チラッ
鞠莉「バラード……バラードねー」ウーン
梨子「……」
花丸「桜内先輩となら歌詞はなんとかなるけどなんでバラード?」
ルビィ「バラードなら最悪踊らなくてもいいかなぁって」
善子「確かに、適当に手振りしてればそれっぽくはなるわね」
ルビィ「あとは……カバー?」
曜「カバーかぁ、千歌ちゃんµ’sの曲ならちょっと踊れるんじゃないの?」
千歌「そんなことしていいの?」
ルビィ「大会とかじゃないからオリジナルじゃなくても大丈夫だと思うよ?」
善子「大会ってあの見せてくれた……なんだっけ?」
鞠莉「ラブライブよ」
善子「そーそれ、ああいうのはオリジナルじゃないとダメなの?」
ルビィ「うん、他にも企業主催とか色々あるけどだいたいオリジナルに限定されてるの」
千歌「じゃあµ’sのカバーもして3曲!」
曜「初ステージならそれくらいでも十分かな?」
ルビィ「うんっ!」
鞠莉「じゃあバラード曲に関しては私と梨子っちとマルちゃんで用意するわ」
ルビィ「衣装は時間的余裕がないから今作ってる1着で全部やるしかないかな……」
千歌「分かった!じゃあ私達はµ’sのどれをカバーするか考えよう!」
曜「µ’sって9人だよね、ということは5人用にアレンジもしなきゃならないのかー」
善子「なんとかなるでしょ」
ーーー
むつ「ちーかー」
千歌「どーしたのむっちゃん」
いつき「これ見たよ」スッ
曜「あ、私らのチラシ」
千歌「来てくれるの!?」
よしみ「行くっていうか……」
むつ「なんか手伝えることないかな?」
千歌「へっ?」
いつき「ライブするって結構大変なんでしょ?」
梨子「まぁ……初めての事だから……」
よしみ「私達も部活あるから入部までは難しいけどね」
千歌「みんな……」
曜「どー思う?」
梨子「それは……始まったら私とマルちゃん以外ステージの上だから1人でも多ければ嬉しいかな」
千歌「というわけだから!」
むつ「任せて!」
いつき「また詳しいこと決まったら教えてね」
千歌「うんっ!」
曜「じゃあ行こっか」
梨子「それじゃ」
よしみ「頑張ってねー!」
ーーー
梨子「じゃあ一旦休憩で」
5人「はーい」
花丸「みんな凄いズラ、あっという間にアイドルらしくなってる」
梨子「ね、みんな頑張ってるよね♪」
千歌「あ゛ー……私がセンターなのに私が一番間違えてるー」グデェ
曜「でも、毎日どんどん改善してるから大丈夫だよ!」
千歌「そーだけどさー、曜ちゃんは運動神経良いの知ってるから分かるけど、善子ちゃんもルビィちゃんも鞠莉先輩も上達早すぎない?」
鞠莉「フフッ、私こう見えて色々スポーツはやって来てるのよ?」ドヤッ
ルビィ「ルビィは昔からアイドルのダンスとか真似してただけで……」
善子「ある程度動きが分かればそんなに難しく無いでしょ」
千歌「なんか酷いコンプレックスを抱えそうだ!」ガーン
ーーー
花丸「小原先輩は凄いなぁ、すぐこんな曲作れるんだもん」
梨子「……」
花丸「……桜内先輩?」
梨子「えっ?」
花丸「なんかぼーっとしてたけど大丈夫ですか?」
梨子「あぁ、ごめんね、歌詞を考えてたらちょっと」
花丸「確かにバラードって難しいズラ……」
梨子「あんまりネガティブ過ぎるのも良くないからね」
花丸「うーん……」
梨子「……」
ーーー
千歌「……」ソワソワ
曜「千歌ちゃん大丈夫?」
千歌「う、うんっ!」ソワソワ
梨子「えっと、この曲はイントロがかかったらこの順番で色を変えてもらえますか?」
むつ「曲中はずっとこの繰り返し?」
梨子「うん、ただサビで足元のスポットを点けるせいで分かりにくくなるから気を付けてください」
よしみ「りょーかい」
梨子「サビの始めと終わりは分かりやすい曲だけどその分ズレると目立っちゃうから注意してね」
いつき「責任重大だ……」
キィィィィン!!!
善子「うぎゃぁあ!?」
鞠莉「ノォォォ!?」
ルビィ「ひぃぃぃっ!?」
キィィィィン…ブツッ
曜「び、びっくりしたぁ……」
千歌「ぅぁぁ……まだきーんってしてる」フラフラ
鞠莉「ボリュームフルスロットルにしたみたいね……」
善子「ズラ丸……」
曜「マルちゃん相変わらず機械苦手だもんね……」
ルビィ「うん……大丈夫かなぁ」
梨子「と、とりあえずそろそろリハーサルしましょうか……」
千歌「おっけー、衣装はどうする?」
ルビィ「衣装の最終チェックもしたいから着てもらった方がいいかな」
鞠莉「じゃあすぐ着替えましょうか」
梨子「じゃあ着替え終わったらステージに上がってくれる?」
曜「はーい」
よしみ「じゃあ各自持ち場へ!」
むつ「ラジャー」
いつき「はーい」
ーーー
『あー、あー、こちらむつ、少しずつお客さんが来はじめてます、どうぞ』
曜「こちら曜、了解であります、どうぞ」
善子「なんでスマホで無線みたいなやり取りなのよ」
ルビィ「ぅゅ……」ソワソワ
鞠莉「ルビィちゃん大丈夫?」
ルビィ「今になって緊張してきちゃった……」オロオロ
千歌「……」
鞠莉「千歌っちも緊張してる?」
千歌「緊張っていうか……なんだろうこれ」
鞠莉「?」
曜「武者震いじゃない?」
鞠莉「武者?サムライ?」
千歌「そっか……こんな気持ち初めてだよ……」グッ
善子「いい話っぽいことしてるところ悪いけど、千歌先輩ニヤニヤし過ぎてキモイ……」
千歌「えっ!?」ガーン
鞠莉「ヨハネちゃん……それは酷いわよ」
善子「だってー」
ルビィ「……ぷっ♪」
曜「あ、ルビィちゃんが笑った」
ルビィ「だって本番前なのに、みんな自由だから」クスクス
鞠莉「ホント、マイペースよね~」
善子「先輩がそれ言うの?」
ppp
千歌「あ、むっちゃんから……開場するって」
曜「お客さん……どれくらいいるかな」
ルビィ「見に行くよって言ってくれる人は結構いたと思うけど……」
鞠莉「鬼が出るか蛇が出るか……」
善子「武者震い知らない癖になんでそんな言葉知ってるのよ……」
千歌「そーだ」
ルビィ「ん?」
千歌「あれやろう、あれ……円陣?」
鞠莉「いいわね」
曜「肩組もう肩!」
善子「そんな暑苦しいの嫌なんだけど……」
ルビィ「えいえいおー、とか?」
善子「運動会みたい……」
曜「µ’sはなんかやってたの?」
千歌「えっと……知らない……」ガクッ
ルビィ「あんまりそういう裏の話する人いないよね……」
曜「出航~とか」
鞠莉「イッツァショータイム♪とかは?」
善子「それでいいんじゃない?」
千歌「グループ名とか言うものじゃないの?Aqours……なんとかー!って」
鞠莉「そういもの?」
善子「さぁ……」
ルビィ「アクアー、イッツショータイム……って語呂が悪い気が……」
千歌「うーん……あ、じゃあサンシャインとか!」
善子「いや、なんで」
千歌「なんとなく!他と被らなさそうだし!」
鞠莉「随分フワッとした理由ね」
曜「まぁオリジナリティー溢れるって言えば溢れるかもね」
ルビィ「うんっ」
善子「じゃあもうそれでいいわ」
千歌「よしっ!じゃあ、みんな手を重ねよう!1っ!」
曜「えっ数字?えっと2っ!」
ルビィ「えっえっ、3っ!」
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ」
千歌「アクアー……」
5人「サンシャイーン!」
善子「……やっぱり意味分からないわよこれ」
鞠莉「まぁシャイニーだし☆ノープロブレムよ♪」
ppp
千歌「梨子ちゃんだ……みんな、始まるよ!」
ーーー
梨子「御来場の皆様、大変長らくお待たせいたしました、まもなく浦の星女学院スクールアイドル、Aqoursのステージが開演いたします、開演後は足元が暗くなりますのでお気をつけください、また携帯電話、スマートフォンの電源はお切りいただくようお願いたします」
花丸「……」
梨子「ふぅ……緊張した……」
花丸「凄いズラ、アナウンサーさんみたい、さすが標準語……」
梨子「いや……読んでるだけだから……」
花丸「それが全然違うんだなぁ、オラには出来ない」
梨子「方言も可愛いと思うけど……じゃあマルちゃん始めよっか、カメラOK」
花丸「はいっ、ステージライトオン!」ポチッ
梨子「音楽スタート!」ポチッ
花丸「開幕ズラ~♪」ポチッ
梨子「始まった……」
花丸「お客さんもちゃんと来て良かった……」
梨子「……」ズキッ
花丸「ルビィちゃん凄い嬉しそう……」
梨子「……」
花丸「善子ちゃんも何だかんだいって楽しそうズラ」
梨子「……」
花丸「……桜内先輩?」
梨子「……えっ?」
花丸「なんか……怖い顔してたけど……何かありました?」
梨子「えっ……いや……ごめんなさい……別にそういうのじゃ……」
花丸「あ、いやマルこそごめんなさい、変なこと聞いて」
梨子「ううん……ごめんね……」
花丸「……」
梨子「あ、サビ入るよ、スポットよし……バッチリだね」
花丸「あ、うんっ、良かったズラ」
梨子「……」ズキッ
ーーこの込み上げる気持ちはなんだろうか?
ーー憧れ、それとも記憶の底に沈んだ感情?
ーーならどうしてこんなにも
ーー突き刺すように痛いのか
ーーー
~♪~♪
ダイヤ「……」
ダイヤ「……そんなところで隠れてないで堂々と見ればいいのでは?果南さん」
果南「……」
果南「……ダイヤは平気なの?」
ダイヤ「正直な所、複雑な気持ちではあります」
果南「私は……」
ダイヤ「ですが」
果南「……?」
ダイヤ「私のつまらない感情でルビィの晴れ舞台から目を逸らしたくはないんです」
果南「……」
ダイヤ「ルビィだけではありませんわ、千歌さんや曜さんだってそうですし、裏方ではありますが花丸さんだっているんです」
果南「……」
ダイヤ「いつも私達の後ろを走り回ってたルビィ達が、自分達だけで何かを成し遂げようとしてる、姉として先輩として、生徒会長として、見届ける義務が私にはあると思ってます」
果南「……」
ダイヤ「……もちろん」
果南「……」
ダイヤ「鞠莉さんと特に仲の良かった貴女がそんな簡単に割り切れたり出来ないのも分かってはいますが」
果南「……」
ダイヤ「あの子達の眩しい姿を少しくらい見たってバチは当たりませんわ」
果南「……」
ーーー
千歌「……♪」ハァハァ
パチパチパチ♪
ワーワーワー♪
千歌「っ……」
曜「千歌ちゃん♪」
千歌「うん……!」
千歌「皆さん!今日は来てくれてありがとうございました!」
4人「ありがとうございました!」
千歌「えっと、改めまして私達、スクールアイドルのAqoursです!」
チカチャーン
ヨカッタヨー
千歌「あはは、ありがとうございます!」
千歌「おばさんやおばあちゃんも通ったこの学校が私達の代で無くなってしまうのが……悔しくて悔しくてたまりません……」グッ…
曜「……」
鞠莉「……」
ルビィ「で、でも!……えっとだからこそ……ここに私達の学校があったんだよってみんなに知ってほしくて……!」
善子「……」
千歌「うん……だから!私達はスクールアイドルを始めました!」
……
千歌「全国で有名になんて簡単になれないし、もしかしたら県内の人にすら覚えてもらえないかもしれないけど……でも!」
曜「私達はここにいるよって、ここにいたんだよって!誰かに知ってもらいたくて!」
千歌「なんの取得もない私だけど、この町が好きだから!みんながいるこの学校が好きだから!」
千歌「だから……」
ルビィ「千歌ちゃん……」
千歌「私は……私達は歌を歌っていきます!なので!応援よろしくお願いします!」
4人「お願いします!」
パチパチ…
パチパチパチ
パチパチパチ
千歌「っ……!」
ガンバレー
マタライブヤッテネー
シンセキニジマンシトクゾー
曜「ぁ……!」
千歌「頑張ります!今日は本当にありがとうございましたっ!」
ーーー
花丸「よ、よがっだずらぁぁ」ズビッ
ルビィ「マルちゃん!?」
善子「えぇ……顔ぐっしゃぐしゃ……まるで魔物じゃない」
鞠莉「……」フゥ…
梨子「お疲れ様でした」
鞠莉「お疲れ様♪」
梨子「ステージ凄かったです♪」
鞠莉「フフッ、このマリーがいるんだから当たり前よ♡」
千歌「梨子ちゃーん!」ダキッ
梨子「きゃっ!?」
千歌「終わったぁ」グデェ
梨子「お、重い……んだけど……」ググッ
曜「ほら、千歌ちゃん、汗くらい拭いて」
花丸「ひぐっ、ぢかぢゃんのえんじぇぢゅ凄がっだじゅら……」ズビッ
曜「おぉ!?どうしたのマルちゃん!?」
梨子「最後のMCで感極まったみたい……」
千歌「ありがとうマルちゃん、梨子ちゃん」
梨子「私達は手伝っただけだから、ステージに上がったみんなの結果だよ」
千歌「ううん、梨子ちゃんもマルちゃんもいなかったら何も出来なかった」
鞠莉「……」
千歌「むっちゃん達もだし、来てくれたみんなもいなかったら何も無かった」
善子「……」
千歌「みんながいてくれたから歌えたんだよ」
ルビィ「……」
千歌「だからみんなありがとう、私のスクールアイドルをやりたいっていう夢に付き合ってくれて」
千歌「ん?」
曜「それを言うのはこれから先ぜーんぶやり切ってからだよ」
善子「そうそう、これから……えっとなんだっけ、なんとかの大会」
ルビィ「善子ちゃん……まずは夏のラブライブを目指して」
鞠莉「夢はビッグにチャンピオンよー♪」
千歌「ラブライブ……うんっ♪よしっ、じゃあまた円陣組もう!」
曜「ほいきた!」
梨子「えっ何?」
鞠莉「いいから合わせて♪」
善子「あぁ……この体育会系なノリにいつ慣れるか……」
ルビィ「みんなでサンシャイーン♪って言うんだよ♪」
花丸「なんでサンシャイン?」
曜「2っ!」
ルビィ「3っ!」
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ」
梨子「えっ?えっと6っ?」
花丸「じゃあ7っ!」
千歌「目指せラブライブ!アクアー!」
7人「サンシャイーーン!!」
ーーー
千歌「リーダー?」
ルビィ「うん、リーダー」
千歌「私が?」
曜「むしろ他に誰がいるの?」
千歌「私でいいの?」
鞠莉「千歌っちじゃなきゃ嫌よ♪」
善子「誰でもいいわよ」
千歌「じゃあ……」
カタカタカタ
ルビィ「あとは全員の名前を書いて……登録っ♪」
カチッ
鞠莉「たった今エントリーしたんだから当たり前じゃない」
千歌「現実は厳しいねー……」ガックリ
曜「これでどうすればラブライブに行けるの?」
ルビィ「参加資格は2つで、公式サイトに登録して活動中であること、オリジナルの楽曲があること」
曜「それだけ?」
ルビィ「うん、あとは時期が来れば各予選の案内が届くから、エントリーして出場して勝ち進んでいけば最終的に本戦に出られるんだ」
善子「じゃあ何のためのランキング形式よ」
ルビィ「うーん、例えば私達のライブって内浦の人しか見てないよね?でもここに動画をアップすれば他の地域の人も見れるようになって」
花丸「ふむふむ」
ルビィ「例えばこのグループみたいに今のイチオシみたいにピックアップされたり、他にもランキング上昇率とか色々な点で注目されてライブのお誘いを受けたりするようになるの」
鞠莉「つまり自分達が全国でどれだけフューチャーされてるか一目で分かるってことね?」
ルビィ「うん、そうやって沢山の支持を集めることがラブライブに出場するのに大切なの」
ルビィ「えっ……えっと……」チラッ
梨子「……?」
ルビィ「今の1位は……このν-tralって2人組です……」
曜「にゅーとらるって読むんだ……」
千歌「この2人、音ノーーあっ」
梨子「……!」
ルビィ「……」
千歌「す、凄いんだねー、投票数も2位のグループより全然多いや♪私達じゃこんなに投票してもらえないねー、あはは……」
鞠莉「……千歌っち」
千歌「ご、ごめんなさい……そうだ!動画!動画アップしなきゃ!」
ルビィ「あっ、そうだね、善子ちゃんお願い」
善子「はいはい、ちょっと待ってよね」
鞠莉「自分達の踊ってる姿を見るってなんか不思議よね」
曜「確かに、練習でチェックするのとはまた違うからね」
善子「お待たせ、とりあえず歓声とかは出来るだけ小さくしたけど……音源が別にあるわけじゃないし、私もそこまで知識ないから出来る事は限られてるんだけど、こんな感じ」
千歌「凄い……」
花丸「善子ちゃん凄いズラ……マルには一生出来そうにないや……」
善子「編集ソフトがあれば誰でも出来るわよ、公式のガイドラインだとエフェクトとかあんまりかけられないから、今後は別でレコーディングして被せるって手もあるけど、どうする?」
曜「何か変わるの?」
ルビィ「踊りながら歌ってるから声量とかリズムが崩れちゃう事もあるし、アイドルっていっても素人だから、それなら別で歌だけ撮って被せてしまった方が綺麗には出来ると思うけど」
鞠莉「でもそれだとライブ感は薄れそうよねー」
ルビィ「うん、プロみたいに綺麗に編集出来れば良いんだけど、そうもいかないから……」
善子「頑張ってはみるけどね」
千歌「いいんじゃないかな?このままで」
曜「私もそう思う、ありのままの私達を見てもらおうよ」
ルビィ「うんっ♪」
善子「分かったわ、じゃあアップするわよ」
千歌「うんっ!」
ーーー
曜「最近果南ちゃんのところ寄ってなくない?」
千歌「うーん……なんとなく顔合わせ辛くて……」
曜「まぁ……鞠莉先輩のことがあるからね」
千歌「んー……どうしたらいいのかなぁ、どうしたらいいと思う?梨子ちゃん」
梨子「えっ?……うーん、私には想像もつかないかな……」
千歌「だよねー……」
曜「いっそ次のライブ誘ってみる?」
千歌「そのほうがいいかなぁ……その前に次のライブ決めなきゃだけど」
曜「じゃあまた明日考えよっか」
梨子「そうね」
ーーー
鞠莉「ーー!ーー!」
千歌「お待たせー……って鞠莉先輩外で何してるの?」
善子「さぁ、電話で喧嘩してるみたい」
花丸「ちらっと聞こえたけど英語で喋ってたから何言ってるかさっぱり」
ルビィ「ぅゅ……」
曜「プライベートなことかもしれないしそっとしとこうよ」
梨子「そうね、今日のランキングはどうだった?」
ルビィ「うん、少し上がってたけどかなり落ち着いてきちゃった気はするかな」
千歌「ホントだ、2つしか上がってないや」
曜「やっぱり早く新曲と大きなライブしなきゃダメかー」
梨子「そうね、全国にこれだけスクールアイドルがいるんだからどんどん新しいものを出していかないとすぐ埋もれちゃうもんね」
千歌「そだねー、イベントには呼んでもらえるけどほとんど身内みたいなものだし新曲もないしね」ウーン…
善子「やっぱり沼津でやるのが一番じゃないの?」
花丸「でも沼津の高校にもスクールアイドルはいるんだよね?怒られたりしないかな?」
ルビィ「別に縄張り争いしてるわけじゃないからそんなことはないけど……アウェーなのは間違いないかな」
ガラッ
鞠莉「みんなごめんなさい、ちょっと急用で今日は帰るわ」
千歌「あ、はい」
曜「ばいばーい……」
ルビィ「……」ビクビク
善子「……」
梨子「……凄い怒ってたね」
花丸「いつもニコニコしてる分余計に怖いズラ……」
曜「と、とりあえず次のライブ開場の候補とか色々決めよー」
ーーー
ルビィ「……?」
ルビィ「お父さんと……誰か来てるのかな?」
ルビィ「……」ソローリ
ルビィ「……外国人?」
「何してるのルビィ」
ルビィ「っ!?」バッ
ダイヤ「そんなところで盗み聞きなんてしてないで早く寝なさい」
ルビィ「お、お姉ちゃん……はい……」オズオズ
ダイヤ「……」
ーーー
鞠莉「ハーイ♪新曲お待たせー♪」
曜「あ、鞠莉先輩」
千歌「おおっ!さすが鞠莉先輩!」
梨子「最近何かあったみたいですけど大丈夫ですか?」
鞠莉「ノープロブレム♪心配させちゃってごめんなさい」
梨子「何か力になれる事があったら言ってくださいね?」
鞠莉「ありがと♪もしもの時は頼りにしてるわ♪」
花丸「ルビィちゃん、新曲どう?」
ルビィ「うんっ、今回も凄くいいと思う♪なんだか元気になれそうな曲だよ♪」
曜「私も聴きたーい♪」
善子「これで一つ条件はクリアしたわね」
梨子「あとはライブ開場ね」
ルビィ「それなんだけどね、実はちょっと考えてて」
千歌「いい候補あった?」
ルビィ「ううん、ライブじゃなくてね、PVもいいんじゃないかなぁって」
花丸「ぴーぶい?」
鞠莉「プローモーションビデオよ、ミュージックビデオとも言うわね」
ルビィ「うん、動画編集とか撮影の仕方とかライブと違った技術が必要だけど、会場も観客もなしで出来るし……例えばこのグループみたいにPVの出来次第で注目もしてもらえるかなぁって」
善子「その辺はまぁ頑張るわ」
ルビィ「撮り直しとかも出来るから一つの方法としてはいいんじゃないかな?」
千歌「いいね!PVやってみようよ!」
花丸「じゃ、じゃあ早く歌詞を書かないと」
梨子「ふふっ、そうね♪」
ーーー
千歌「うわっ、踊りにくいっ」ザッザッ
曜「一回合わせてみよっか、梨子ちゃーん」
梨子「はーい、音楽……スタートー」ポチッ
花丸「……」
梨子「……」
花丸「流石のマルにもこれが酷い出来なのは分かるズラ……」
梨子「ダンスも衣装も砂浜で踊ることを考慮してなかったみたいね……ストップストーップ!」
善子「なんで砂浜で踊るのにヒール高いのよー!」
ルビィ「はぅ……ごめんなさい……」
鞠莉「と言うか、どこで踊るか先にイメージするべきだったわね……」
曜「場所から考え直しかー」
千歌「内浦にいながら浜で踊れないなんて内浦民失格だー!」ウガー
ーーー
千歌「こんな感じで鞠莉先輩まで順番に映せる?」
梨子「やってみるけど一回で成功しないかも……」
千歌「それは仕方ないよ」
善子「ねぇマリー、いいカメラ持ってないの?お金持ちでしょ?」
花丸「そんな直球で言っちゃうの!?」
鞠莉「うーん、あるにはあると思うけど借りれたところで使い方が分からないと思うわよ?」
善子「あー、確かに」
ルビィ「ここのカットも一緒に撮ったほうがいいかも」
千歌「背景はどうするの?」
ルビィ「こうやってちょっと下から撮ったら映り込みはないかなって」
曜「なんかルビィちゃんスカート覗いてるみたい」
ルビィ「……違う場所で撮りましょう」ムッ
曜「うそうそっ!冗談だよー」アワアワ
ルビィ「むー」プクゥ
曜「もー拗ねないでー♪」ナデナデ
梨子「ふふっ、じゃあそろそろ始めましょうか」
千歌「はーい、鞠莉先輩、善子ちゃん、マルちゃん始めるよー」
鞠莉「オッケー♪」
梨子「えっと……ここからこんな感じ……ん?」
花丸「ん?」
梨子「ちょっとストップ」
千歌「どうかした?」
善子「バッテリーでも切れたの?」
梨子「そうじゃなくてあっち」
曜「んー?あ、人がいる」
鞠莉「……」
千歌「ちょっとだけ離れてもらえないか聞いてくる」ダッ
梨子「あ、千歌さん」
鞠莉「あれは……多分無理ね、仕事中っぽいから」
花丸「残念、日を改めないとだね」
梨子「うん……」
千歌「ごめーん、やっぱり無理だってー」
曜「あちゃー」
善子「ていうか、こんなところで何してるのよ」
ルビィ「他の人から見たらルビィ達もそう思われると思うけど……」
鞠莉「……仕方ないわ、帰りましょう」
千歌「はーい」
梨子「……」
ーーー
善子「……」カチカチッ
善子「あっ……もう……えっと……」カチカチッ
曜「ほいっ、善子ちゃんの分」コトッ
善子「ありがとう」カチカチッ
ルビィ「何かお手伝い出来たらいいんだけどなぁ」
千歌「仕方ないよー、私達さっぱりだもん」
花丸「次の曲の相談でもする?」
曜「そうは言っても作曲の鞠莉先輩がいないんじゃねー」
梨子「お待たせー」
千歌「どうだった?」
梨子「はい、音楽室の鍵」
曜「おっ、良かったー、やること見つかった」
梨子「まだ鞠莉さんから連絡ないの?」
曜「うん」
ルビィ「どうしたんだろうね」
千歌「……」
花丸「とりあえず音楽室が使えるなら歌の練習が出来るから先に始めるズラ」
曜「うんっ」
花丸「一層ビシバシ厳しくやるから覚悟するように」キリッ
ルビィ「えっ!?」
曜「マルちゃん怖っ」
花丸「さぁキビキビ歩くのだー」
ルビィ「キャラが変わってる……」ガーン
曜「千歌ちゃん、行くよー」
千歌「あ、うんっ」
梨子「私は部室で待ってるね、お手伝い出来ることもないだろうし」
善子「私もー、もうちょっとしてから行くわ」カチカチッ
千歌「分かったー」
梨子「……」
善子「……もうちょい?……ん……やっぱ無し……」カチカチッ
梨子「……」
善子「……」カチカチッ
梨子「なんか意外だね」
善子「何が?」カチカチッ
梨子「よっちゃん、最初あんまりやる気無さそうだったから」
善子「まぁね、リリーに近付くためだけに入ったし、こんなものかな」カチカチッ
梨子「楽しい?」
善子「そうね、楽しくないって言ったら嘘になるわ」カチカチッ
梨子「なら良かった」
善子「リリーは?」カチカチッ
梨子「もちろん楽しいよ、自分が普通じゃないって事を忘れそうなくらい」
善子「ダメよ、闇の眷属としてのプライドは常に高めておきなさい、いつラグナロクが始まるのか分からないのよ!」カチカチッ
梨子「……」
善子「……」カチカチッ
梨子「よ、よく聞こえなかったなー……」
善子「返しが下手すぎるでしょ!?」ガーン
梨子「ご、ごめんなさい……」シュン
善子「……あのなんだっけ、1位のグループ」カチカチッ
梨子「……」ピクッ
善子「にゅーなんとか、リリーの同級生でしょ?」カチカチッ
梨子「……そのはず」
善子「ふーん」カチカチッ
梨子「……」
梨子「……さぁ、お母さんは私は私だって言ってくれてたけど……」
善子「……つまり根っこは変わらない……と、あ、間違えた」カチカチッ
梨子「そう……なのかな」
善子「つまり、魂は継続し続ける!例え記憶がなくとも私の前世が堕天使である証明ね!」ガタッ
梨子「……」
善子「……」
梨子「……えっ?」
善子「リアクション薄っ!?」
梨子「こ、これもだめー……?」
善子「まぁいいわ、さて今日はこのくらいにしてズラ丸達と合流しようかな」ノビー
梨子「編集終わりそう?」
善子「どうかしら、ただずっとパソコンとにらめっこしてたらせっかく柔らかくなり始めた身体がまた硬くなっちゃいそうだし」
梨子「全部任せちゃってごめんね」
善子「いいわよ、出来る人がやればいいんだから、その分ダンス考えるのは2人に任せちゃってるし、歌詞もリリー達に丸投げだし」
梨子「それもそうなのかな」
善子「そうなの、リリーはどうする?一緒に行く?」
梨子「ううん、鞠莉さんが来るかもだから掃除でもしながら待ってる」
善子「そ、じゃ」
梨子「頑張ってね」
善子「あ、そうそうマリーのことだけど」
梨子「ん?」
善子「あんまり良くないことになるかもねー」
梨子「どういう、事?」
善子「勘よ、ただヨハネって不幸体質なせいか悪い事には勘がよく働くのよねー」
梨子「……」
ーーー
千歌「おっまたせー」
曜「PVの反響はどう?」
ルビィ「それが……」
花丸「……」
梨子「あれ……?」
曜「も、もしかして……」
鞠莉「ヨハネちゃん、見せてあげて」
善子「ん」スッ
ようちかりこ「……」
千歌「……県内上昇率……」
曜「に、2位!?」
梨子「東海エリアピックアップアイドルにも入ってる!?」
ルビィ「凄いでしょ!2日で600以上ランクが上がってるの!」
花丸「一躍有名人ズラ~♪」
善子「皆、ヨハネの魅力に気付いてしまったようね……!」
曜「コメントもいっぱい来てる!」
梨子「頑張った甲斐あったね♪」
鞠莉「ランクはまだまだ下の方だけど少しラブライブが見えて来たんじゃない?」
千歌「うんっ!!」
ーーー
志満「千歌ちゃん、動画見たわよー♪」
千歌「志満姉、チェックしてくれてたの?」
志満「可愛い妹が頑張ってるんだもの、当たり前じゃない」
美渡「千歌のくせに中々いい調子みたいじゃん」
千歌「美渡姉、一言余計だよー」ムスッ
美渡「まぁまぁ、珍しく美渡お姉様が千歌に良いものをあげようじゃないか、はいプリン」
千歌「くれるの?ってこれ元々私のじゃんっ!?」ガーン
美渡「はははっ、何かの大会で入賞でも出来たらほんとになんかあげるから頑張りなー」
千歌「もー全っ然期待出来ないんですけどー」
志満「まぁまぁ、ああ見えて美渡も千歌ちゃんの頑張りには期待してるのよ?」
千歌「どこが!?」
志満「美渡は素直じゃないから~♪」
千歌「むぅ……」
志満「千歌ちゃん」
千歌「ん?」
志満「内浦や学校の為に頑張ってくれてるんだと思うけど、頑張り過ぎて迷子になっちゃだめよ?」
千歌「う、うん……?」
ーーー
千歌「……東京の大会に……招待!?」
曜「……マジか」
ルビィ「どどどどうしたらいいの!?」
鞠莉「思わぬ展開ねー」
善子「今の私達には荷が重くない?」
花丸「オラにはどうすればいいか分からないー!」
梨子「……」
千歌「行こう!」
曜「東京だよ!?東京!」
ルビィ「ととととととーきょー」アワワワ
花丸「大都会……怖いズラっ」
鞠莉「ステップアップするには絶好のチャンスだけど……」
善子「……各エリアのピックアップと比べたら私達最底辺よ?」
梨子「……」
千歌「だから行こうよ!」
善子「腕試し的なつもり?」
曜「面白そうだとは思うけど……」
ルビィ「どうしよう……東京と言えば……あのグループにあのユニットが……秋葉原にも行ってみたい……けど怖い……」プルプル
花丸「東京では喋らないようにしなきゃ……田舎者だと思われたら笑われるズラ……」ガタガタ
鞠莉「どんな結果でも受け入れる覚悟はある?」
千歌「うん、まだ始めて数ヶ月の私達が結果を残せるなんて思ってない、だからむしろ見てみたい!全国のスクールアイドルを!」グッ
曜「……はぁ、こうなったらテコでも動かないや」ヤレヤレ
善子「ま、いざとなればこのヨハネが!」ギランッ
ルビィ「ま、マルちゃん、ルビィ達もが、頑張ろう!」
花丸「う、うんっ!」
梨子「……」
千歌「……梨子ちゃん」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃーん」
梨子「えっ?あ、どうしたの?」
千歌「梨子ちゃんはどうする?」
梨子「どうって、部員なんだからもちろん行くよ?」
千歌「無理してない?」
梨子「大丈夫♪」
千歌「ありがとう、私のワガママにいつも付き合ってくれて」
梨子「なんでそんなに改まって言うのよ、もう」クスクス
千歌「あはは、よし!じゃあみんな!ラブライブに向けて、の……こういう時なんて言うんだっけ?ほら、なんとかせんってやつ!」
善子「……前哨戦?」
千歌「それっ!ぜんしょーせんとして東京行くぞー!」
「おー!」
ーーー
鞠莉「出口はこっちね」
ルビィ「……ぅゅ……」オロオロ
花丸「……」ガタガタ
千歌「おおぅ……これがとーきょーしてぃー……」
曜「ライブの時より人多くない!?」
梨子「とりあえず荷物を置きにチェックインだけ済ましに行こっか」
鞠莉「そうね」
善子「ほら、置いてくわよー」
千歌「なんで平気なの!?」
ルビィ「マルちゃん、あの3人から離れちゃだめだよ」ガタガタ
花丸「うんっ」オロオロ
曜「右も左も人人人……ぅあ、人酔いしてきた……」ガクッ
ルビィ「音がいっぱいだよぉ……」
花丸「目がちかちかするズラ……」
千歌「曜ちゃん曜ちゃん!」バシバシッ
曜「ぅぅ、どうしたの千歌ちゃん」トボトボ
千歌「今もμ'sのグッズが売ってる!」
鞠莉「本当に凄い人気なのねー」
善子「凄いっ……魂の真名が顕現してる者がこんなにも!」ギランッ
梨子「……貴女達……これじゃいつまで経っても宿に着かないんだけど……」ガクッ
ーーー
鞠莉「さーて、大会は明日、今はまだお昼前♪これからどうする?」
千歌「はいはーい」
鞠莉「はい、千歌っち」
千歌「おと、じゃなくて……えっと……神田明神!」
曜「神田明神?」
ルビィ「確かμ's縁の神社だよね?」
千歌「うんっ、明日の大会のこともお参りしたいし!」
梨子「お昼はどうする?」
善子「途中で適当なところでいいんじゃないの?」
花丸「都会だからきっとどこでも美味しいんだろうなぁ……でも高そう……」
鞠莉「じゃあ他に候補もないみたいだしとりあえずそこにいきましょー♪」
梨子「……」
曜「梨子ちゃん大丈夫?」
梨子「え?」
曜「やっぱり、気まずかったりするんじゃない?」
梨子「ありがとう、私は大丈夫だから」
曜「しんどくなったら無理しないでちゃんと言ってね?」
梨子「うん♪」
ーーー
善子「ん?どっち?」
鞠莉「逆よ逆」
善子「もう、あっちもこっちもビルばっかりで分かりにくいのよ」
ルビィ「もうすぐで着くと思うけど先にご飯食べちゃう?」
花丸「すまーとほんで地図も見れるなんてルビィちゃん凄いズラ」
ルビィ「そんなに難しいことはしてないんだけど……」
曜「どこに入る?」
千歌「あそこのお蕎麦屋さんにする?」
梨子「……」ズキッ
梨子「……?」
ルビィ「……?梨子先輩、ここ和菓子屋さんみたいですよ?」
梨子「えっ?あ、ほんとだ、ちゃんと見なきゃだめだね」アハハ…
ルビィ「……?」
ルビィ「……穂むら……?」
ーーー
千歌「着いたー!」
善子「……長い階段しか見えないけど」
鞠莉「この先にあるってことかしら?」
ルビィ「ここはμ'sが普段の練習場所に使ってたらしいんです」
花丸「こんな階段で練習してたの!?」
曜「私達もやってみる?」
善子「やるって何をよ」
千歌「走るっ!」ダッ
曜「だよね!」ダッ
善子「うそでしょー……」
ルビィ「ルビィもっ!」ダッ
鞠莉「ほらほら、置いてっちゃうわよー♪」ダッ
善子「もー分かったわよー!」ダッ
花丸「行っちゃった……」
梨子「……」
花丸「オラ達も行ったほうがいいのかな?」
梨子「……」
花丸「桜内先輩?」
梨子「あっ、うんそうだね、せっかくだから行ってみよっか」
花丸「が、頑張るズラっ!」ダッ
梨子「……」ダッ
千歌「ゼェゼェ……」ベチャァ
曜「くぅぅ……μ's凄いなぁ」ハァハァ
ルビィ「……」チーン
善子「はぁはぁ……食べたばっかりにやる運動じゃないわよこれ……」ヨロヨロ
鞠莉「流石に……伝説のスクールアイドルは格が違うわね……」ハァハァ
花丸「足、あがら……ない……」ヨロヨロ
梨子「はぁはぁ……」
千歌「これくらい……へっちゃらで登れないと……ラブライブで優勝なんて、夢のまた夢なのかな……」
曜「でも、多分μ'sも最初から登れたわけじゃないんじゃないかな?」
鞠莉「そうね……μ'sだって元々普通のスクールガールだったんだもの」
ルビィ「……」ベチャァ
善子「お腹痛くなってきた……」
花丸「マルには無理ズラ……」ベチャァ
梨子「……」
千歌「そう、だよね……よしっ!じゃあお参りしよう!」プルプル
曜「千歌ちゃん膝が笑ってるよ……」
千歌「か、肩を貸してください……」
ーーー
善子「時間まだあるけどどうする?」
鞠莉「秋葉原まで戻って観光でもする?」
千歌「……」
曜「どこか行きたいところある?」
千歌「うーん、秋葉原でいいんじゃないかな」
ルビィ「次は頑張ろうねマルちゃん」
花丸「うんっ!分かってれば何とかなる!」
梨子「……」
鞠莉「梨子っちもそれでいい?」
梨子「千歌さん」
千歌「ん?」
梨子「私に遠慮しなくていいよ」
千歌「……なんのことかな?」
鞠莉「……?」
梨子「見てみたいんじゃない?……音ノ木坂」
千歌「……」
善子「おとのきざかってなに?」ヒソヒソ
曜「μ'sの母校で梨子ちゃんが浦の星に来る前に行ってた学校」ヒソヒソ
梨子「私は近くで待ってるから、見ておいでよ」
鞠莉「梨子っちは行かないの?」
梨子「うん……私の事を知ってる人に会うのはちょっとまだ……」
千歌「……いいの?」
梨子「うん、私のせいで我慢させるのは申し訳ないし」
千歌「私はそんなつもりじゃなかったけど……」
梨子「でも一度見ておきたいんでしょ?」
千歌「……ありがとう!」
梨子「みんなはどうする?」
ルビィ「私も、見に行きたいかな」
花丸「ちょっと気になるズラ……」
曜「私も!μ'sが救った学校だし、梨子ちゃんのいた学校でもあるから」
千歌「じゃあちょっと行ってくる!」
梨子「うん♪」
鞠莉「いってらっしゃーい」
善子「どこか適当なお店にでも入って待っておきましょ」
梨子「2人はいいの?」
善子「私は別に、μ'sに憧れてるわけでもないし」
鞠莉「ミートゥー」
梨子「そっか、じゃあみんなが戻って来るまでお茶でもしてよっか」
ーーー
千歌「なんかさ、こういうの合宿みたいでワクワクするね!」
曜「分かる!青春って感じだよね!」
ルビィ「家族以外とお泊まりってあんまりしたことないからなんか緊張しちゃう……」
花丸「オラも……」
鞠莉「さぁ!夜は長いわ!目一杯エンジョイしなきゃ!」
梨子「1日歩いてまだそんな元気あるのね……」
善子「リリーはリリーでおばあさんみたいなこと言うわね……」
千歌「よしっ!何しよっか!」
梨子「明日に備えて早く寝る」
曜「却下!他には?」
梨子「却下って……」ガックリ
鞠莉「女子が集まって夜することなんて一つしかないでしょ♪」
ルビまる「?」
鞠莉「イッツァ!ガールズトークタァァイム!」バーン
善子「えー……」
鞠莉「さぁ♪花も恥じらう年頃ガールなんだから恋バナの一つ二つあるでしょー?」ウキウキ
善子「ない」キッパリ
ルビィ「そ、そういうのはルビィ分かんないかな……」
花丸「本の中の話なら……」
千歌「曜ちゃんなんかある?」
曜「あると思う?」
梨子「記憶にありません」
鞠莉「……oh」
千歌「鞠莉先輩こそ留学先とかでなんかないんですかぁ?」
鞠莉「1日でも早く内浦に帰るために勉強漬けだった私にそんなロマンスがあると思ってるの?」
曜「いや初耳だし……」
善子「なんで恋バナなんてしようとしたのよ……」
鞠莉「じゃあ他に何かあるの?」
善子「正邪が入り乱れるこの魔都の闇深き刻に、ヨハネの導きに従い崇高なる悪魔召喚を行うべきよ」ギランッ
千歌「このお饅頭美味しい」
花丸「この穂むらってお店知ってる、檀家さんがたまに持ってきてくれる有名な老舗ズラ」
善子「聞きなさいよー!」クワッ
ルビィ「穂むら?」
善子「なんでそっちは聞いてるのよ!」
花丸「うん、ルビィちゃんも知ってる?」
ルビィ「ううん、でもどこかで……あ」
鞠莉「ん?」
ルビィ「お昼に神田明神に行く時に通り過ぎた和菓子屋さん、ほら、梨子先輩が見てたお店」
梨子「え?……あぁ、あのお店」
曜「へぇ、東京って新しいものばっかりかと思ってたけど有名な老舗もあるんだねー」
千歌「お土産これにしよーよ♪」
花丸「おばあちゃんここのお饅頭好きだから喜んでくれそう」
ルビィ「お姉ちゃんも喜んでくれるかなぁ」
曜「家の分でしょ?クラスのみんなにもあげなきゃ」
千歌「果南ちゃんにもお裾分けしたいしー……お小遣い大丈夫かな……」
鞠莉「……」
梨子「私達何しに来たか覚えてるのかしら……」
ーーー
曜「でかっ!」
善子「これがアキバドームシティーホール、3000人収容だって」
花丸「三千!?Aqoursの最初のライブはえっと……」
鞠莉「146人よ」
曜「えっと……何倍?」
ルビィ「で、あっちがアキバドーム……!」
千歌「あれが……」
ルビィ「ラブライブ本戦の舞台……まさに聖地!」パシャパシャ
梨子「アキバ、ドーム……」
ルビィ「わぁぁ♪あれは九州で今大注目のスクールアイドル!あっ!あっちはν-tralと並ぶと言われる大阪のグループ!」キラキラ
鞠莉「どのグループも私達よりずっと格上ねー」
ルビィ「格上なんてものじゃないです……あの3人グループは去年冬の大会で本戦出場してますし、あっちのグループはラブライブ未参加なのに1桁ランクなんです」
曜「サメに囲まれたイワシの気分だね」
花丸「他にもっと例えるものなかったの……」
梨子「……」
千歌「で、なんで会場前にこんなにスクールアイドルいるの?」
善子「さぁ」
?「もしかして貴女達も招待グループですか?」
千歌「ほぇ?」
?「この大会は開場前にファンやグループ同士の野外交流会もやってるんです、もし参加グループなら控え室で衣装に着替えて一緒にどうですか?」
善子「あぁ、そうなのね」
花丸「ご親切にありがとうございます」ペコッ
?「それじゃ、今日はよろしくね」
?「……また会いましょう」チラッ
梨子「……?」
ルビィ「……!」パクパク
鞠莉「なんだか見たことある顔ね」
曜「どうしたのルビィちゃん、酸欠?」
ルビィ「にゅにゅにゅ……ν-tralですよ!」
千歌「えっ!?今のが!?」
鞠莉「どうりで……意外と私服だと気付かないものね……」
花丸「普通の親切な人だったズラ……」
ルビィ「気付いてよぅ!昨年の冬の優勝者なんだよっ!」
善子「言ってくれればよかったのに、まぁいいわ、私達も控え室行きましょ」ヤレヤレ
ルビィ「善子ちゃんあっさり過ぎるよー!」アワアワ
梨子「……」
ーーー
ルビィ「あわわ……」
鞠莉「ほら、ルビィちゃん♪リラックスリラックス♪」
ルビィ「りり、りらっくしゅ……」アワアワ
善子「流石にこんなに大勢の前で歌うのは勇気いるわね……」
千歌「……みんな始まるよ」
曜「ν-tralからなんだ」
鞠莉「オープニングも兼ねたエキシビションなのね」
ルビィ「わぁぁ……♪」
善子「……」
千歌「これが……1位」ギュッ
鞠莉「……」
善子「こんなのほとんどプロじゃないのよ……」
ルビィ「凄い……生で見れるなんて……」
曜「ねぇ千歌ちゃん」
千歌「なーに?」
曜「どんな気持ち?」
千歌「……ドキドキでワクワクで……怖い」
曜「私も」
鞠莉「気軽に目指せチャンピオンなんて言えなくなったわね」
善子「そもそも気軽に言っていいものではないでしょ」
ルビィ「……」
千歌「でも、嫌な気持ちじゃない」
曜「うんっ」
鞠莉「ベリーハードよ?♪」
善子「まぁ分かってたけど」
ルビィ「はいっ」
千歌「まずは今の私達を見てもらおう!それがどんな結果でも!」
ーーー
梨子「みんなお疲れ様」
花丸「全然負けてなかったよ」グッ
善子「とは言ってもねー……」
ルビィ「はぅ……」
鞠莉「40組中37位、同率最下位じゃねぇ……」
千歌「覚悟してたとはいえ、マルちゃんと梨子ちゃんの2票しか入ってないってどういう事ー!」
曜「まぁ、スクールアイドル始めて2ヵ月だし……」
善子「呼んでもらえただけでもありがたいと思うしかないわね」
千歌「そうだけどさぁ……」
梨子「まだまだこれからだよ」
花丸「うん、オラ達ももっと頑張るから!」
ルビィ「マルちゃん……」
曜「帰ったら反省会だー!」
鞠莉「それは明日でいいんじゃないの……?」
?「Aqoursの皆さん」
ルビィ「はい?……うわわわ!?」
?「今日はお疲れ様でした」
千歌「あっ、ν-tralの……お、お疲れ様でした!」
?「今日は楽しめましたか?」
曜「はいっ!」
善子「結果は惨敗だけどね」ボソッ
?「これから帰られるんですか?」
千歌「はい、そうですけど……」
?「もしお時間があれば少しお茶でもどうですか?」
鞠莉「お2人と……?」
?「はい」
ルビィ「行きますっ!」
花丸「ルビィちゃん!?」
ルビィ「あっ……」
?「ふふっ、じゃあ行きましょうか♪」
梨子「……」
曜「前回優勝者に声掛けられるなんてもしかしてもしかする!?」
鞠莉「多分……そっちじゃないわよ」
ーーー
?「改めて突然ですみません」
千歌「あ、いえ、ν-tralのお2人に誘ってもらえるなんて光栄です」
ルビィ「……」ドキドキ
?「そんなに畏まらなくていいですよ、同じ高校生なんですから」
曜「そうは言っても……」
?「そう言えば自己紹介がまだですね」
「音ノ木坂学院三年の高坂雪穂です」
「同じく三年の絢瀬亜里沙です」
梨子「……」
千歌「う、浦の星女学院二年の高海千歌ですっ」
曜「渡辺曜です」
ルビィ「一年の、くく、黒澤ルビィ……です……」
善子「ヨハーーじゃなくて津島善子」
鞠莉「私は三年の小原鞠莉よ」
花丸「国木田は、花丸です……」
梨子「……」
雪穂「……」
千歌「あ……」
梨子「……二年の桜内梨子です」
亜里沙「……」
善子「……気まずっ」ボソッ
雪穂「……」
曜「……」
雪穂「……元気そうでよかった」
梨子「……っ」
鞠莉「まぁ……知ってて当然よね……」
梨子「……覚えて、なくて……ごめんなさい」
亜里沙「梨子……」
雪穂「皆さんは梨子の……桜内さんの事情は?」
千歌「記憶喪失の事なら知ってます」
梨子「……」
雪穂「そっか……」
亜里沙「こんな形でまた梨子と会えるとは思ってなかったね」
善子「どういうこと?」
雪穂「……梨子は話した?」
梨子「……」フルフル
雪穂「……話してもいい?」
梨子「……」
千歌「……」
梨子「……はい」
亜里沙「……」
雪穂「……梨子はね、本当は私達と同じ三年でね」
千歌「それも知ってます」
雪穂「私達と一緒にスクールアイドルをしてたの」
千歌「えっ……」
鞠莉「……」
ルビィ「……」
善子「マジ?」
曜「初耳……」
梨子「……隠しててごめんなさい」
亜里沙「あんな事が無ければ、今頃梨子もν-tralの1人だったんです」
曜「あんな事?」
善子「リリーが記憶喪失になった原因の事故の事でしょ」
千歌「……」
雪穂「でもよかった」
梨子「……えっ」
雪穂「引っ越したって聞いた時は、もう会えないんじゃないかって思ってたの」
亜里沙「でもこうやってまたスクールアイドルとして会えた、立場は違うけどね」
梨子「……」
雪穂「梨子は何があっても梨子のままなんだって、ホッとしたよ」
雪穂「皆さん、梨子のことよろしくお願いします」
千歌「は、はいっ!」
亜里沙「雪穂、そろそろ」
雪穂「そうだね、今日はお時間取らせてすみませんでした」
曜「あ、いえ」
ルビィ「こちらこそありがとうございました」
雪穂「じゃあね、梨子」
亜里沙「またね」
梨子「……はい」
鞠莉「……」
ルビィ「……」
善子「はぁー、なんか色々あって疲れたわ」
千歌「……さ、私達も帰ろうよ、内浦に」
曜「そうだね」
ーーー
曜「さて、さっそく昨日の反省会であります!」
善子「渡辺先輩ってほんと元気ねー……」
千歌「梨子ちゃんとマルちゃんは客席から見てどうだった?」
花丸「うーん……オラ、ダンスとかそういうのよく分からないからなんとも言えないズラ……」
鞠莉「やっぱり技術的な問題じゃないかしら?」
梨子「その点についてはどうしようもないと思います……」
千歌「なんで?」
梨子「……昨日の話聞いてた?」
千歌「梨子ちゃんは元スクールアイドルだった!」
梨子「いや、そうなんだけど……」
鞠莉「つまり、梨子っちが音ノ木坂にいた時からあの2人もスクールアイドルだったわけだから経験値がそもそも違い過ぎるのよね」
梨子「……うん」
ルビィ「他のグループも一年生の時からとか、中学生の頃からダンスの練習したりしてた人がほとんどだよね」
善子「あー……中学でダンス部とか流行ってたわね」
曜「なんで?」
ルビィ「一番はμ'sやA‐RISEの存在じゃないかな、ちょうどルビィ達が中学一年生の頃にラブライブが始まったから」
千歌「そだっけ?」
善子「それで憧れた子が高校入る前から練習してたって訳ね」
鞠莉「そうなると他の部分で補うしかないわよね」
曜「歌とか?」
花丸「それならマルがもっとビシバシ鍛えればいいから大丈夫」ニコッ
善子「目が笑ってないわよ……」
ルビィ「他の部分もどうかな……」
梨子「そうだね、歌唱力や知名度も長くやってる方がずっと有利なのには違いないから」
曜「じゃあどうしたらいいの!?」
千歌「完全に手詰まりだよー……」
ルビィ「……でもね」
鞠莉「ん?」
ルビィ「そういうのを全部ひっくり返せるのが本当のアイドルなんじゃないかな」
曜「どういう事?」
鞠莉「……μ'sね」
ルビィ「うん、μ'sってね一年しか活動してないんだ」
善子「えっ、いまだに名前聞くくらい有名なのに?」
ルビィ「うん、なのにその頃絶対的人気だったA‐RISEを超えて第2回の優勝者になったの」
鞠莉「まさにジーニアスね」
ルビィ「そうかもしれない……でもそれだけじゃないと思うの……多分」
千歌「μ'sかぁ……」
梨子「……」
千歌「あれ?」
花丸「どうしたの?」
千歌「μ'sが活動してたのが私が中二だった頃ってことは……」
曜「……?」
千歌「梨子ちゃんが音ノ木坂に入学した時ってμ'sのほとんどがまだ音ノ木坂にいたんじゃ……」
梨子「……そうなるかな」
ーーー
梨子「……」ガサガサ
梨子「……」ピッ
『ーー』
『ーー!』
『ーー♪ーー♪』
何度見たって実感の湧かない練習風景
梨子「……」
あの頃のままだと言われても
私自身がそれを理解出来ない
『ーー?』
『ーー!』
『ーー、ーー♪』
梨子「……」
画面の向こう側にいる『私』はどんな気持ちだったのだろうか
梨子「……」
梨子「……」ピッ
梨子「……はぁ」
梨子「……」
きっとあの頃憧れていたあの人達のことすら思い出せない『私』のどこがあの頃のままなのだろうか……
ーーー
志満「大変、のんびりお喋りしてたら遅くなっちゃった、美渡にまた小言言われちゃうわねー」イソイソ
「ーー」
志満「ん?もう閉園の時間よね……誰かいるのかしら」
「ーー」
志満「あれは……確か千歌ちゃんの……」
「無理を言ってーー」
「我々もーーだから、ーーしてるよ」
「ーーにありがとうございます」
「またーー連絡してくださいね」
「はいっ、では失礼します」
志満「……?」
ーーー
鞠莉「そう言えば、梨子っちが元スクールアイドルってバレたんだから隠す必要もないのよね?」
千歌「なにが?」
ルビィ「……」
梨子「まぁ……話したところで何も変わらないと思いますけど……」
曜「んー?」
鞠莉「あのね、私達が歌った曲、本当は私じゃなくて梨子っちが作った曲なの」
善子「えっ」
千歌「えええっ!?」ガタッ
花丸「どういう事ズラ?」
梨子「正確には私が記憶を失う前に作ってた曲なの……」
曜「じゃあ梨子ちゃん楽器出来るの?」
梨子「元々ピアノをやってたみたいなんだけど……今は流石に……楽譜も読めないし」
千歌「全然知らなかった……」
鞠莉「ふふっ♪ルビィちゃんは気付いてたみたいだけど?」
曜「えっなんで!?」
ルビィ「ぁぅ……」チラッ
梨子「もう全部話しても大丈夫だよ?」
ルビィ「じゃあ……実はこれ」
善子「動画?」
千歌「音ノ木坂学院、アイドル研究部……一年生グループ……絢瀬亜里沙、高坂雪穂……」
曜「……桜内梨子」
ルビィ「二年前、まだ入学して間もない頃……ν-tralとして活動するずっと前の動画です」
千歌「この……ナナっていうもう1人の人は?」
梨子「……分からないの、当時は一緒にスクールアイドルとして活動するつもりだったみたいだけど……」
ルビィ「それで下に……」
千歌「作曲、桜内梨子……ほんとだ……」
梨子「その時に作ってた楽譜がいっぱいあってね、読めない私にはどうしようもないから、今は全部鞠莉さんに預けてるの」
鞠莉「まぁ、作りかけのだったり、思い付きで書いただけみたいなのがほとんどだからすこーし手は加えてるけど」
曜「言ってくれれば良かったのに」
梨子「その時はこうして入部までして一緒にやるつもりがなかったから……その後も言い出せなくて……」
ルビィ「先輩……」
千歌「ありがとう梨子ちゃん」
梨子「えっ、いや私は別に……」
千歌「よしっ!」
曜「お?どした?」
千歌「ライブやろう!」
善子「えっ、どういう流れでよ」
千歌「梨子ちゃんと鞠莉先輩が作る曲をもっと聴いてもらいたいから!それに、こんなふうに喋ってるだけじゃ何にも解決しないじゃん!」
ルビィ「そうだね、出来ることをどんどんやっていかないと」
花丸「でもどこでやるズラ?」
善子「そりゃ……沼津?」
曜「まぁいつまでも内浦でやってたって仕方ないところはあるよね」
千歌「大丈夫!だって私達東京でだって歌えたんだし!」
曜「それもそうだね!」
鞠莉「ねぇ、それについては私に1度預けてくれない?」
千歌「へ?」
善子「アテでもあるの?」
鞠莉「イエース、そんなところ♪もう少しで新曲の用意も出来るからライブをする前提で動いてノープロブレムよ♪」
花丸「小原先輩は手回しが早くてすごいズラ!」
千歌「分かりました!じゃあ鞠莉先輩に任せます!」
鞠莉「ありがと♪」
千歌「よしっ!まずは夏のラブライブに向けて頑張ろー!」
曜「ヨーソロー!」
梨子「ふふっ♪」
ーーー
ガラッ
鞠莉「ハァイ♪みんな♪」
曜「あ、鞠莉先輩、ご機嫌ですね」
鞠莉「ふふっ♪実はね、いいニュースと悪いニュースがあるんだけどどっちから聞きたい?」
ルビィ「映画みたいな台詞!」
花丸「小原先輩が言うと様になりますね」
鞠莉「リアリー?嬉しいわ♪一度言ってみたかったのよね♪」
善子「言ってみたかったって……」
鞠莉「ニュースが二つあるのはほんとよ?」
千歌「じゃあいいニュース!」
鞠莉「ライブが決まったわ♪」
梨子「もう?随分早く決まったんですね」
鞠莉「このマリーにかかればちょちょいのちょいよ♪」
曜「どこどこ?沼津?」
鞠莉「なんと!伊豆・三津シーパラダイスよ!」
ルビィ「みとしー!?」
梨子「みとしー?」
花丸「内浦にある水族館ズラ」
善子「小さい頃に行ったきりね」
千歌「なんでみとしー?」
鞠莉「私達らしさを出すにはうってつけじゃない?」
花丸「確かに地元の水族館でライブなんてなかなか出来ない気がするね」
ルビィ「普通のライブとは違う形になるだろうから注目はしてもらえるかも!」
千歌「イルカショーとライブとか!」
曜「なにそれ凄い!」
梨子「ちなみに悪いニュースは?」
鞠莉「それは……」
千歌「……?」
鞠莉「……」
ルビィ「鞠莉先輩……?」
鞠莉「……ごめんなさいっ」
曜「急にどうしたの?」
善子「まさか辞めるとか言うんじゃないわよね」
梨子「えっ……」
鞠莉「いいえ、そうじゃないわ……」
花丸「じゃあ一体……」
鞠莉「みんなの……Aqoursの力を貸して欲しいの……」
千歌「ちから?」
鞠莉「……今から話すことはまだ誰にも話さないでくれる?」
善子「……」
ルビィ「か、家族にも?」
鞠莉「えぇ、公になったら大変な事になりかねない……だから私達だけの秘密にしておいてほしいの」
梨子「……」
千歌「分かった」
曜「約束するよ!」
ルビィ「うん!」
花丸「オラは口が堅いから安心するズラ」
善子「フフッ……このヨハネと密約を交わそうなんていい覚悟ね」ギランッ
梨子「よっちゃん、茶化さないで」
鞠莉「みんな……ありがとう」
ーーー
千歌「じゃあランニングいってきまーす」
花丸「いってらっしゃーい」
梨子「さて、じゃあ歌詞考えよっか」
花丸「はい!」
梨子「それにしても一気に二曲なんて思い切った事するよね、鞠莉さん」
花丸「色々と焦ってるのかもしれないですね……」
梨子「うん……私達がしっかりサポートしてあげなきゃね」
花丸「……」
梨子「マルちゃん?」
花丸「へっ?あっ、すいません、じゃあこっちの曲から考えましょう」
梨子「うん……?」
ーーー
梨子「はぁ、一本乗り遅れるだけでこんなに遅くなっちゃうなんて……」
タッタッタッ
梨子「……!」
梨子「……足音……なに……?」
タッタッタッ
梨子「あっ……あれって……」
ーーー
「1、2、3、4、1、2、おわっ!?」ドテッ
「いたた……」
花丸「はぁ……みんなよくこんなの出来るズラ……」
花丸「ダメダメ、もう一回!」
花丸「1、2、3、4、1、2、わっとっと!」
花丸「うーん……」
「そこは二歩前のステップをもう少し大きく出せば上手くいくよ♪」
花丸「二歩前ってえっと……って、わわっ!?」ビクッ
梨子「ふふっ♪こんばんは」
花丸「あわわわ……こ、これはそのっ……」
梨子「見ててね」
花丸「えっ……」
梨子「1、2、3、4、1、2、3、4、ほらっ♪」
花丸「桜内先輩……」
梨子「マルちゃんは……1人で練習してて寂しくない?」
花丸「……でも、オラどんくさいし……みんなに迷惑が……」
梨子「大丈夫、来て数ヶ月しか経ってない私にもそれくらい分かるよ」
花丸「……」
梨子「それとも、小さい頃からずっと知ってるマルちゃんから見たら、みんなそんな風に見えちゃうの?」
花丸「そんなことない!みんなすっごく優しくてーー」
梨子「なら大丈夫」
花丸「あ……」ウルッ…
梨子「きっと千歌さんもルビィちゃんも、みんな待ってるんじゃないかな♪」
花丸「……っ」ゴシゴシ
梨子「ふふっ♪」
花丸「い、今のステップもう少し練習してから帰る!」
梨子「付き合ってあげるよ」
花丸「そんな、悪いズラ」
梨子「いいから、いいから」
花丸「大丈夫だから」
梨子「私こそ大丈夫だから」
花丸「……」
梨子「……」
花丸「……桜内先輩、いつからオラの事見てました?」
梨子「えっ……いや……その……ジョギングしてるのを見つけて、ついてきて……」
花丸「……」
梨子「……」
花丸「……帰れないんですか?」
梨子「……っ」ギクッ
花丸「……ふふっ♪」
梨子「し、仕方ないじゃない……ついて行くのに夢中で周りなんか見てなかったんだから……」オロオロ
花丸「分かりました♪ちゃんとオラが案内してあげるズラ♪」
ーーー
曜「はい、次背中伸ばすよー」
鞠莉「はーい」
善子「はぁ……そろそろヨハネにとって辛く厳しい季節がやって来るのね」
ルビィ「夏苦手なの?」
善子「だって暑いし」
曜「こらー!だらだら喋りながらだと練習中に怪我するよー」
ルビィ「はいっ!」
千歌「よいしょ……ん?」
鞠莉「どうかした?」
千歌「あれ……」
梨子「遅くなってごめんなさい」
曜「梨子ちゃんとマルちゃん……どうしたのその格好?」
梨子「私達も練習に参加していいかな?」
曜「それはいいけど……」
善子「……?」
梨子「ほら、マルちゃん♪」
花丸「うん……その……みんなが頑張ってるのを見てたら……その……オラ運動神経も良くないから……迷惑かけちゃうけど……その……」モジモジ
鞠莉「あらあら?♪」
花丸「お、オラもみんなと一緒に踊りたいから!」
ルビィ「マルちゃん……!」
梨子「私も、今更だけどみんなと一緒にステージに上がりたいと思って」
りこまる「よろしくお願いしますっ!」
千歌「二人共……」
鞠莉「反対の人はいるかしら?♪」
曜「ここにはおりませんっ!」ビシッ
善子「まぁ良いんじゃない?」
ルビィ「うんっ!」
千歌「梨子ちゃん、マルちゃん、改めてようこそAqoursへ!」
花丸「……はいっ!」
梨子「改めてよろしくね♪」
曜「ただーし!」キリッ
善子「また始まった……」
曜「トレーニングに関しては一切手心を加えるつもりはないので覚悟するよーに!」クワッ
花丸「が、頑張るズラ!」
梨子「……これがいわゆる体育会系?」
善子「というか軍隊に近いわね……」
曜「ではストレッチから全員やり直しー!」
ーーー
鞠莉「ステージの見取り図貰ってきたわよ♪」バーン
千歌「おおっ!って……あれ?ここ、こんなに広かったっけ?」
鞠莉「私達の為に特設ステージとして拡張してくれるそうよ」
曜「そこまでしてくれるの?」
鞠莉「地元で頑張る私達の為に出来ることはやってあげたい、だそうよ♪」
花丸「おお……今から緊張してきたズラ……」
ルビィ「マルちゃん大丈夫、ルビィもいるから」
梨子「ホントは全部踊れたら良かったんだけど……」
鞠莉「それについては仕方ないわ、全曲分のフォーメーションから何から考え直す時間はないもの」
千歌「でもその分、新曲でサプライズ出来るし!」
曜「今までの曲だってこれからまだまだ踊る機会はあるんだから気にしないで♪」
梨子「千歌さん、曜さん……ありがとう」
善子「今回チラシは?」
鞠莉「曜っちの用意してくれた原案を先方に渡してあるわ、数日もしない内に完成するんじゃないかしら」
ルビィ「海の上のステージでしょ……落っこちたらどうしよう……」
善子「さすがにそこまで心配する必要はないでしょ……」
千歌「じゃあ、そろそろ歌の練習しよっか」
曜「はーい、マルちゃん先生よろしくであります!」
花丸「任せなさい!」ドヤッ
梨子「ふふっ♪」
ーーー
曜「ヨーソロォォオ!」
善子「……なにあれ」
梨子「さぁ……海に向かって吠えてるんだと思うけど」
善子「毎日見てるのになんで……?」
梨子「私に聞かないで……」
千歌「すっごいねー!ほんとに海の上にステージが出来るんだ!」
鞠莉「正確にはイルカショーのスペースなんだけども」
ルビィ「わぁ♪」
イルカ「キュー」ザバンッ
ルビィ「……ぅぁ」ビショビショ
花丸「ルビィちゃん!?」
曜「海バンザーイ!」
善子「もしかしてライブ中もイルカいるの?」
鞠莉「ステージにはあがれないようにするみたいだけども、イルカ自体はずっといるそうよ?」
梨子「それイルカ的に色々大丈夫なの?」
千歌「ライブしてる間にも跳ねたりするのかな?」
鞠莉「やってもらう?」
千歌「出来るの?」
鞠莉「さぁ?聞いてみないことには」
梨子「色々と勝手が特殊だからその辺りも含めてしっかり話をしないといけないね」
善子「それ、ライブ決める前にする事だと思うんだけど……」
鞠莉「まぁ何とかなるわよ♪」
曜「おーもかーじいーっぱーい!」
善子「さっきからうるさいわよっ!」
ーーー
「失礼しましたー」
千歌「もうこんな時間になっちゃったね、曜ちゃんと善子ちゃんバス大丈夫?」
善子「まだ大丈夫よ」
曜「問題なーし」
鞠莉「じゃあどこか寄ってく?」
千歌「そだねー」
「お待ちなさい」
善子「ん?」
ルビィ「あっ……お姉ちゃん……」
ダイヤ「……」
曜「果南ちゃんまで……どうしたの?」
果南「……鞠莉、どういうつもり」
鞠莉「ワッツ?何の話?」
ダイヤ「とぼけないでください」
千歌「……」
善子「あ、そう?それじゃ……」
ルビィ「……」ガシッ
花丸「……善子ちゃん」
善子「冗談よ冗談……」
鞠莉「貴女達……」
梨子「大方話の予想はつきますから」
ダイヤ「……」
果南「……千歌達は、何とも思わないの?」
千歌「私達は納得してここにいるから」
果南「まさか何か変わると思ってるの?こんな田舎で」
千歌「思ってる」
ダイヤ「東京のイベントに呼ばれて勘違いでもしたんですか?これはそういう類の話とは違うのですよ」
果南「鞠莉は、自分の都合で千歌達を利用してるんだよ!?」
鞠莉「……っ」
千歌「知ってるよ」
果南「……!」
千歌「でも、こんな言い方したら酷いけど、私だって鞠莉先輩を利用してるし」
ダイヤ「どういう……」
曜「部活設立も曲作りも鞠莉先輩がいなきゃ出来なかったんだよ」
梨子「……」
果南「そんな理由で……」
千歌「……そんな理由じゃない!」
果南「っ!?」
ルビィ「千歌ちゃん……」
千歌「私達にとっては大事な事なんだよ!今回のライブだって、そりゃスクールアイドルの活動としては変かもしれないけど……でも私が……私達がやりたい事のためには必要な事なの!」
果南「千歌……」
千歌「……ごめん」
梨子「……勝負しませんか?」
花丸「桜内先輩!?」
ダイヤ「貴女……一体何を……」
梨子「私達が何も変えられないのかどうか、このライブで証明してみせます」
鞠莉「ちょっと梨子っち……」
果南「出来なかったら?」
梨子「もう二度とこんな馬鹿げたことしないように……解散します」
曜「ええぇっ!?」
ダイヤ「……正気?」
梨子「その代わり、私達が勝ったら鞠莉さんと話をしてください」
果南「何の為に……」
梨子「誰も後悔しないために」
果南「……」
善子「言ってること無茶苦茶じゃない……」
ダイヤ「……好きにしなさい」
梨子「約束ですよ」
ダイヤ「たった7人の高校生に出来るんですかーー」
ダイヤ「ーー内浦の複合リゾート開発計画を止めるなんて」
梨子「……止めてみせます」
鞠莉「……梨子っち」
千歌「梨子ちゃん……」
ーーー
梨子「……ぅぅ」
千歌「……梨子ちゃん」ナデナデ
善子「いいの?これで」
曜「まぁ……うーん」
梨子「……ぁぁ、ぁああ、あああ!」
ルビィ「ひっ!?」ビクッ
梨子「私なんであんな事言っちゃったのよぉ!?」ウワァァ
花丸「もう後戻りは出来ないズラ……」
鞠莉「……私のせいでごめんなさい」
千歌「いいんです」
曜「うん、やるって言ったのは私達だし」
善子「まぁ……なんかヤバい方向に話が転がってるけど」
梨子「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」ブツブツ
千歌「ほーら梨子ちゃん、もう過ぎたことなんだし」
梨子「だって私、ほとんど部外者なのに……解散するとか言っちゃうし……もう……」
花丸「背水の陣でむしろ頑張れるから!」
ルビィ「マルちゃん、手がぷるぷるしてるよ……」
花丸「む、武者震いズラ!」
善子「ま、今更無しになんて出来ないんだし、やるしかないでしょ」
曜「むしろ、梨子ちゃんのお陰だよ」
千歌「うんっ!」
梨子「私の……なんで?」
曜「私達じゃ色々と堪えちゃってうやむやにしちゃったかもしれないから」
梨子「……」
ルビィ「ルビィもどうしたらいいのか分からなくて何も言えなかったから……」
千歌「これが私達が背負う責任なんだよきっと」
花丸「責任……」
梨子「……」
千歌「楽しいとかいいことばっかりじゃやっていけない……それでも目をそらしちゃいけない……私達がやってるのはそういうことなんだよ……多分」
善子「多分じゃ締まらないじゃない……」
鞠莉「梨子っち」
梨子「鞠莉さん……」
鞠莉「みんなも、ありがとう」
千歌「へへっ♪」
鞠莉「私、何としても……パパを止めてみせるから」
曜「みんなで、だよ!」
善子「……そういえば、なんで生徒会長はこのこと知ってたの?あれまだ公になってないんでしょ?」
ルビィ「多分、お父さんの話を聞いちゃったんじゃないかな?」
善子「どういう事?」
花丸「あー、なるほど、確かにルビィちゃんのところなら話が行っててもおかしくないよね」
善子「いやだからどういう事よ」
曜「ルビィちゃんとダイヤさんの家って昔からここら辺一帯の大地主なんだ」
善子「……は?」
ルビィ「今はもう昔ほど沢山管理してるわけじゃないみたいだけど、はっきりと分からないけど、まだそれなりに息のかかってる所は多いみたいだから……」
善子「アンタ、お金持ちだったの……?」
ルビィ「えっ?いやそういうわけじゃないけど……それなら花丸ちゃんのところの方が……」
花丸「ウチはただのお寺だからそんなことないよ」
善子「寺なんてお金持ちの象徴みたいなもんでしょ……」
曜「影響力って意味じゃマルちゃんのところも古いお寺だから話がいってるかもね」
善子「こんなのほとんど全面戦争じゃない……」
ーーー
梨子「……あれ?」
むつ「よろしくお願いしまーす」
よしみ「伊豆・三津シーパラダイスでAqoursのライブやりまーす」
梨子「みんな、それ……」
いつき「あ、桜内さん」
むつ「駅前で会うなんて奇遇だね!沼津で何か用事?」
梨子「今日は検診で……それよりそれは?」
よしみ「ビラ配りだよ」
むつ「さっき千歌からごっそり貰って来ちゃった」
梨子「どうして三人が?」
いつき「桜内さんも国木田さんも踊るんでしょ?練習とか大変だろうしと思って」
よしみ「みとしーじゃ体育館の時よりお客さんも沢山入るから沼津からもしっかり人呼ばなきゃねって事で」
梨子「みんな……」
むつ「私達にはこんな事しか出来ないからね」
梨子「ううん、そんなことないよ、ありがとう、私も頑張るね」
いつき「ちなみに私達三人だけじゃないんだよ?」
梨子「えっ?」
いつき「今、アーケードの方でもクラスのみんなが配ってるの」
梨子「いつの間にそんなに……」
むつ「Aqoursのライブをみんな楽しみにしてるんだ」
よしみ「だからライブまでは私達に任せて!」
いつき「本番の事だけに集中して頑張って」
梨子「……うんっ!絶対成功させるね!」
むつ「頑張り過ぎて怪我しないでね」
梨子「ありがとう!それじゃ私行くね」
いつき「ばいばーい」
むつ「……」
よしみ「桜内さんなんかすごく柔らかくなったね」
いつき「うん、あとキラキラしてる」
よしみ「さすが都会っ子」
いつき「それは関係ないんじゃ……」
むつ「ほら二人共、今日中に半分は配っちゃうよー」
ーーー
花丸「心の準備はしてきたつもりだけど……ほんとにテレビ局まで来てる……」
ルビィ「生中継……なんだよね……」ゴクリ
鞠莉「……」
曜「天気よーし、風よーし!」ビシッ
ルビィ「今日はまだ気温高くなるみたいだから気を付けてね?」
善子「マジ?……ただでさえ辛いのに……」
千歌「そろそろ始まるよー」
花丸「……」ゴクリ
梨子「マルちゃん、リラックスリラックス♪リハーサルはちゃんと出来てたよ♪」
曜「梨子ちゃんは随分落ち着いてるね」
梨子「うん、なんでかな、ワクワクしてる」
千歌「分かるよその気持ち」
善子「逆にマリーはいつになく緊張してるみたいね」
曜「鞠莉先輩にとっては正念場だからね……」
千歌「先輩」
鞠莉「ん?」
千歌「私達もいます」
鞠莉「……」
ルビィ「今は目の前のライブをいっぱい楽しみましょう」
鞠莉「……うん」
曜「今日までに出来ることは全部やったんだから、あとは後悔しないライブを、ね?」
鞠莉「……そうね!」
マモナクカイエンシマース
梨子「はーい」
千歌「よし、みんな行くよ!1っ!」
曜「2っ!」
ルビィ「3っ!」
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ!」
梨子「6!」
花丸「7っ!」
千歌「アクアー!」
7人「サンシャイーン!!」
ーーー
花丸「あぁ……もうすぐ出番ズラ……」ソワソワ
梨子「……」
花丸「どうしよぉ……」ソワソワ
梨子「……」
花丸「先輩はなんでそんなに落ち着いてられるんですか?」
梨子「……」
花丸「……桜内先輩?」
梨子「……」ジワッ
花丸「……?」
梨子「……」ポロポロ
花丸「せ、先輩!?どうしたの!?」オロオロ
梨子「……えっ?」ポロポロ
花丸「き、緊張しすぎちゃったズラ?」オロオロ
梨子「分からない……なんで……」ゴシゴシ
花丸「先輩……」
梨子「……違う」ゴシゴシ
花丸「……?」
ミナサンアリガトウゴザイマス!
『心の準備は大丈夫?』
梨子「……何も覚えてないのに……」ポロポロ
ジツハミンナニオシラセガアリマス!
『出来ることは全部やった!』
梨子「……何も思い出せないのに……」ゴシゴシ
アクアニアタラシイメンバーガクワワリマシタ!
『目一杯楽しもう!』
梨子「……私……“知ってる”……」ポロポロ
花丸「えっ……」
クニキダハナマルチャント!
『行くよっ!みんなっ!』
梨子「……ごめん」ゴシゴシ
サクラウチリコチャンデスッ!
梨子「……行くよ、マルちゃん!」
花丸「は、はいっ!」
ワァァァァ!
ーーー
花丸「お、終わった……練習より疲れた……」プシュー
ルビィ「マルちゃんお疲れ様♪すっごく良かったよ♪」
花丸「ありがとズラぁ……」
鞠莉「……」
千歌「鞠莉先輩、やり切れましたね」
鞠莉「そうね、あとはどう転ぶか……」
曜「おりゃっ」グイッ
鞠莉「ひょわっ!?ひょうっひにゃにひゅりゅの!?」
曜「せっかく楽しいライブだったのにそんなしかめっ面してたらダメですよ」ニシシ
鞠莉「曜っち……ふふっ♪」
善子「あとはこのヨハネが人心掌握の黒魔術を実行すれば……」ギランッ
ルビィ「変なことしちゃダメだよ!? 」
花丸「……桜内先輩」
梨子「どうしたの?」
花丸「さっきの……先輩もしかして……」
梨子「……ううん」
花丸「……」
梨子「残念だけど何にも……」
花丸「……そうですか……」
梨子「……実はね」
花丸「……?」
梨子「……実はちょっとだけ不安だったの……何を見ても何にも感じなくて、思い出せなくて……私はからっぽになっちゃったんじゃないかって」
花丸「……」
梨子「でも今日で分かったの、私の心はちゃんと覚えてるって……ただ思い出せないだけだって」
花丸「先輩……」
梨子「だから少し希望が湧いたかな♪」
花丸「……うんっ!」
千歌「希望がなーに?」ズイッ
花丸「わっ!?千歌ちゃん!」
梨子「ふふっ♪今回のライブ、上手くいったから希望はあるんじゃないかなぁって♪」
千歌「梨子ちゃん……だよね!鞠莉先輩!梨子ちゃんも希望はあるって!」
鞠莉「梨子っち……ありがと♪」
梨子「まぁ私が蒔いた種だし……」アハハ…
ルビィ「そういえば……いつ分かるんだろう……」
鞠莉「私がパパに直接聞くしかないわね」
曜「その時は私達も一緒に行くよ!」
鞠莉「えっ?」
ルビィ「うんっ!私達にとっても大事な事だから」
鞠莉「……分かったわ♪その時はみんな一緒に」
善子「えっ、私も?」
花丸「当たり前ズラ」
ーーー
ルビィ「みんな揃ってますか!?」
千歌「そんなに慌ててどーかしたの?」
善子「どーもこーもないわよ、コレ!」
曜「んー?」
梨子「えっ!?なにこれ……」
鞠莉「ランキング……907位!?」
千歌「なんでこんなに上がってるの!?」
曜「この間やっと2500位越えれたくらいだったよね?」
梨子「うん……」
花丸「この間のみとしーのライブの反響が凄くて……」
千歌「コメントもすごいいっぱい……」
鞠莉「テレビの生中継で見たよ……こんな素敵なライブ初めて見た……新しい二人も凄く可愛い……」
曜「どんどん完成度上がってる……今回もいい曲、毎回新曲が楽しみ……次は現地で見たい……」
ルビィ「あと……これも」カチカチッ
千歌「上昇率4位……前は2位じゃなかった?」
ルビィ「ちーがーいーまーすぅ!これ!」ビシッ
梨子「全国上昇率4位……全国!?」
善子「トップページにもでかでかと名前出てるのよ」
花丸「なんかとんでもない事になってきたズラ!」
千歌「これはもしかするともしかするのかな!?」
曜「鞠莉先輩!」
鞠莉「……うん、みんな着いてきてくれる?」
千歌「はいっ!」
ーーー
善子「でっか……」
曜「え、ここ家だったの……?」
梨子「庭だけで校庭くらいありそう……」
千歌「ウチのお客さん全員泊めてもまだ部屋余ってそう……」
鞠莉「みんなはゲストルームで待っててくれる?案内するわ」
ルビィ「お、お邪魔しまぁす……」
花丸「げすとるーむって何?」ヒソヒソ
ルビィ「客間の事じゃないかな?」
善子「私の部屋より広い玄関って……」
梨子「あんまりキョロキョロしたら失礼よ……」
曜「わぁ……鹿の頭ってほんとに飾るんだ」
鞠莉「それはトナカイよ、それじゃここで待ってて」
千歌「はぁい」
ルビィ「なんて言うか……白い……」
花丸「目がチカチカするズラ……」
曜「ここから海に飛び込めそう」
梨子「鞠莉さん大丈夫かな……」
善子「……」
ルビィ「……」
千歌「……今ランキングどうなってる?」
善子「え?ああ、ちょっと待って」
曜「……」
善子「はい」
梨子「……882位ね」
花丸「また上がってる」
善子「みとしーライブの影響で他に上げたのも再生回数とかかなり増えてるわね」
千歌「これで私達だけじゃなくて内浦に興味を持ってくれたらいいんだけど」
曜「……海が綺麗……夏に絶対行く……景色最高……PVのコメントも増えてるから大丈夫だと思いたいけど……」
ーーー
ガチャッ
鞠莉「おまたせ」
千歌「鞠莉先輩!どうでした!?」
善子「……」ゴクリ
鞠莉「……」
梨子「……まさか」
鞠莉「……プロジェクトは中止するつもりはないって……」
ルビィ「そんな……」
花丸「あんなに頑張ったのに……」
鞠莉「……」
千歌「もう一回、私達でお願いしてーー」
鞠莉「でもね」
曜「?」
鞠莉「大規模なリゾート開発は一旦取り止めるって!」
梨子「それって……」
鞠莉「再来年度から順次開発開始の予定だったんだけど、それを一旦白紙に戻して今の内浦を残したままで再計画出来ないか検討してみるって!」
曜「じゃあ……!」
ルビィ「やったぁ!」
千歌「私達のやったことは無駄じゃなかった……」
善子「解散にならなくて良かったわね」ニヤリ
梨子「ホントにすみませんでした……」
鞠莉「みんなありがとう……私……」ウルッ
梨子「鞠莉さん……」
鞠莉「私……本当に……グスッ……今までどうしていいか分からなくて……」ポロポロ
ルビィ「……」
鞠莉「みんながいてくれなかったら……私……全部無くしちゃうところだった……」ゴシゴシ
千歌「鞠莉先輩……」
善子「マリー、感傷に浸る前にもう一つ大仕事が待ってるわよ」
梨子「重ね重ね、勝手なことしてすみません……」ガクッ
善子「……やっぱり帰りたい」ゲンナリ
花丸「善子ちゃん……我慢して」
鞠莉「……」
果南「……」
ダイヤ「……」
曜「かれこれ10分くらいあの状態だけど……」
ルビィ「こっちまで気まずい……」
千歌「あーもう!」ガタッ
ルビィ「ち、千歌ちゃんっ」ガシッ
曜「ちょっと待ってってば、千歌ちゃんっ!」ガシッ
千歌「むぅ……」
梨子「あ、やっと喋りそう」
果南「……はっきり言って、私は鞠莉が何をしたいのか分からない」
鞠莉「……」
果南「浦の星で再会したらまるで別の人みたいにやけに明るくなって、廃校を止めるなんて騒ぎ立てたくせに何も言わずにいなくなって……」
ダイヤ「……」
果南「またふらっと帰ってきて、何か言い訳でもするのかと思ったら何も言わずに千歌達に取り入って……」
鞠莉「……」
ダイヤ「鞠莉さん……自分でもクラスの皆から白い目で見られてるのは分かっていますよね、それなのに何故何も言ってくれないんですか」
鞠莉「……私ね……初めてこの町に来た時のこと……今でもはっきり覚えてるの」
果南「何、今更思い出話がしたいの?」
ダイヤ「果南さん、少し落ち着いてください、糾弾しに来たわけではないでしょう」
果南「……」
鞠莉「……それまでずっとイギリスで暮らしてたのに、ある日急に日本に来ることになって……ママから教わったとはいえ、カタコトの日本語で最低限の意思疎通くらいしか出来なくて……」
ダイヤ「……」
鞠莉「どうしていいか分からない子供の私には……ただただ怖いって気持ちしかなかった……」
果南「……」
鞠莉「でも……そんな私に一生懸命みんな話しかけてくれて……特に果南とダイヤは……私が何か伝えようとするのをじっと待ってくれたりして……私、嬉しかったの」
果南「……それが何の関係があるの」
鞠莉「だからね……私、本当にこの町が……果南やダイヤ……みんなの事が……大好きなの」
果南「……だったら!」ガタッ
ダイヤ「果南さん」
果南「っ……だったらなんで居なくなったりするのさ……」
鞠莉「私ね、昔からパパに『ゆくゆくは後継者としてグループの中心になる存在』なんて言われてきたの」
ダイヤ「……」
鞠莉「いずれは日本での展開をしていく上で必要だからこそ、私を日本で育てたかったみたい……」
果南「……」
鞠莉「二人も知ってるでしょ?……日本に馴染む前からずっと習い事や家庭教師で息苦しい毎日だった……私が沼津の私立中学に行ったのも全部パパの決めたこと」
ダイヤ「それで……」
鞠莉「そうやってパパの言う通りに生きていくんだなって、納得は出来なかったけど理解はしてたつもりだった……でもやっぱり耐えられなかった」
果南「……」
鞠莉「家から見える内浦の町が恋しくて……みんなが恋しくて……浦の星に来る為だけに、パパと喧嘩して酷いことも沢山言って……パパの指定した学校の入試を全部わざと落ちたの」
ダイヤ「そこまでして……浦の星に」
鞠莉「パパは納得しなかったけど、娘が高校にもいけないんじゃメンツが立たないからね……そうやってまたみんなのところに帰ってこれた……」
果南「……なんで別人みたいに明るくなったのかわかんないんだけど」
鞠莉「……ただでさえ外から来て上手く馴染めたとは言えなかったんだよ……その上で10代の三年間がどれだけ大事だったか……無理してでも……そうやって輪に入らなきゃ、なくなった三年間を埋められないって思って……」
果南「……」
鞠莉「結局……私は本当の自分なんて上手く言えない臆病者だから……そうするしかないと思ってたの……」
ダイヤ「……留学については?」
鞠莉「それもパパの決めたこと、よっぽど浦の星にいるのが気に食わなかったみたい……びっくりしちゃうよね……ある日帰ったら荷物がまとめられて今からアメリカに行けって、知らない間に周りに手回しして私の事なんかお構い無しで全部決まってたの」
果南「……!」
ダイヤ「そんな……!」
鞠莉「……ううん……結局のところそれでも行かないって言えなかった私が悪いのよね……なんにも言えなくてやっぱりパパのいいなりにしか出来なかった私の弱さが悪いの……」
ダイヤ「そんなこと……ただの高校生に出来るわけありません……」
鞠莉「……」
果南「なんで……なんでそんなこと言ってくれなかったの……」
鞠莉「言えるわけないでしょ……あれだけ廃校を止めようなんて言って回ってたのに……全部台無しにしたのは私なのよ!」
果南「だったら……だったらなんで今更戻ってきたの!少なくとも帰って来なかったらそんな思いしなくて済んだじゃん!」
ダイヤ「ちょっと二人共、落ち着いて……」
鞠莉「私だって分かってるわよ!いじめられるんじゃないかって思ったりもしたわよ!それでもここに帰りたい理由があったから死にものぐるいで勉強して1年半で留学を終わらせてきたの!」
果南「一体何の為にさ!」
鞠莉「みんなと卒業したかったから!!」
果南「っ……!?」
ダイヤ「鞠莉、さん……」
鞠莉「良く思われてなかったとしても……ぐすっ……最悪いじめられることになっても……あの日私の手を握って受け入れてくれたみんなと……ぐすっ……卒業したかったの……」
果南「そん、な……」
ダイヤ「……私……今まで、なんて事を……」
鞠莉「私っ……わだしだっで……ほんとは……みんなと笑っで過ごしだいの……ぐすっ……でも……ぜんぶ私のぜいだから……ひぐっ……謝っでゆるしてもらえるようなこどじゃないから……だから……だがら……」
果南「ま、り……」
鞠莉「ぜめて……この内浦を……ひぐっ……内浦だけはなくじたぐなくで……私……だがらぁ……うわぁぁぁん!」
ーーー
鞠莉「……ぐすっ」
ダイヤ「落ち着きましたか?」
鞠莉「……うん……ごめんなさい……」
ダイヤ「謝るのは……私の方です……ごめんなさい鞠莉さん……事情も知らず責め立てるような事を言って」
鞠莉「……私が話さなかったんだから仕方ないよ」
果南「……」
ダイヤ「果南さん」
果南「……酷いこと言って、ごめん」
鞠莉「ううん……私こそごめんなさい」
果南「……」
鞠莉「……」
ダイヤ「……ぷっ」
果南「なんで笑うのさ」
ダイヤ「こんな歳でこんな内容なのに、子供みたいな謝り合いで終わってしまうのがなんだか可笑しくて……」
鞠莉「ふふっ……ほんとね」
果南「でも、そんな簡単な事がずっと出来なかったんだね私達……」
ダイヤ「ええ……」
鞠莉「……あのね二人共」
果南「ん?」
ダイヤ「どうしました?」
鞠莉「私、もう一つ叶えたい夢があるの」
ーーー
ガラッ
鞠莉「ちょっとみんな!昨日先に帰ったでしょ!」
花丸「いやぁ……そのぉ……」
善子「あんな重たい話、そう何度も聞けないわよ……」
ルビィ「三人の間に水を差すのも悪いかなって……」
千歌「で、ちゃんと仲直り出来ました?」
鞠莉「うん、それなんだけどね……」
曜「まさか上手くいかなかったの?」
鞠莉「ううん、そうじゃなくてその……」
ガラッ
ダイヤ「誘っておいていつまで待たせるつもりですか?」
果南「ほんと、せっかく復学したのに」
千歌「おぅぇえ!?」ガタッ
梨子「果南さん!?」
ルビィ「お姉ちゃん!?」
果南「よっ♪」
曜「よっ♪……じゃないよ!」
鞠莉「その……二人もAqoursに入ってもらうっていうのはダメ……かしら?」
善子「……は?」
花丸「うん?」
梨子「え、ちょっと待って……話の流れが分からない」
ダイヤ「鞠莉さんがどうしても私達とスクールアイドルをしたいって言うんです」
果南「私は千歌との約束もあるからね」
千歌「果南ちゃん……」
梨子「曜さん」ガシッ
曜「がってん!」ガシッ
千歌「果南ちゃーーうぐぇっ」
鞠莉「これは私のわがままだから……ダメなら……」
ルビィ「ダメじゃないよ♪」
ダイヤ「ルビィ……」
花丸「オラも賛成♪」
善子「なんか随分大所帯になっちゃったわね」
曜「2人がいれば百人力だね♪」
梨子「これからよろしくお願いします♪」
鞠莉「みんな……」
千歌「果南ちゃん、ダイヤさん、ようこそAqoursへ!」
果南「ありがとう、よろしくねみんな」
ダイヤ「見知った顔も多くいますが、不束者ですがよろしくお願いします」
曜「そうと決まれば早く2人のお披露目しなきゃね!」
ルビィ「ライブ早く決めなきゃ!」
善子「あぁ、それについてだけどうってつけのがあるわよ」
花丸「善子ちゃんいつの間に!?」
善子「私が手配したわけじゃないわよ、出演依頼のメールが来てたのよ」カチカチッ
千歌「また東京?」
善子「違うわよ、これ、夏休み入ってすぐ」
梨子「沼津夏まつり実行委員会……?」
千歌「えっ!?」
曜「狩野川のやつじゃん!!」
果南「えっ……マジ……?」
梨子「……有名なの?」
花丸「昔からやってる伝統的なお祭りです」
鞠莉「何十万人も見に来るお祭りよ」
ルビィ「スペシャルゲストとして御出演していただけないでしょうか……って私達が!?」
ダイヤ「まさかそんなところで初舞台をやれと……?」
善子「今からなら新曲も間に合うし、生徒会長と松浦先輩も踊れるようにはなるでしょ」ニヤリ
千歌「やろう!」
果南「えっ、ちょっと待って私踊りとか初めてなんだよ?」
花丸「大丈夫ズラ!オラでも頑張って練習したら踊れるようになったから!」
ダイヤ「いつもこんな感じなんですか……?」
梨子「まぁ……そうですね」アハハ…
ダイヤ「相変わらずと言うかなんと言うか……」ヤレヤレ
ーーー
曜「じゃあ少し休憩ー!」
善子「あっつ……もう無理……溶けて消える……」
花丸「疲れたズラぁ……」
ルビィ「でも、マルちゃんどんどん速くなってきたよ♪」
鞠莉「はい、千歌っち」
千歌「ありがとー」
梨子「それにしても本当に暑くなってきたね」
ダイヤ「はぁ……はぁ……みんな凄いですわね……」
果南「……」
ダイヤ「……どうしたんですか?……と言うか、果南さん……相変わらずすごい体力……」
果南「なんかさ……鞠莉の気持ちやっとわかったかも」
ダイヤ「はい……?」
果南「ちょっと見なかっただけで、みんなおっきくなったなぁって、マルなんて昔から運動はダメダメですぐへばってたのに」
ダイヤ「……断トツの1位でゴールしておいて……息ひとつ切らさない貴女が言うと……嫌味に聞こえますわ……」
果南「いや、そういう話じゃないんだけど……」
ーーー
千歌「1、2、3、4、1、2、3、4、マルちゃん遅れてる」
花丸「はいっ!」
千歌「1、2、3、4、梨子ちゃん、もっと大きく」
梨子「はいっ!」
千歌「はいっ、みんなお疲れ、じゃあビデオチェックするよー」
曜「ルビィちゃん、もっとおっきくジャンプしていいんじゃないかな?」
ルビィ「じゃあ次はもっと跳んでみるね」
花丸「あ、ここからちょっと遅れちゃってるのかぁ……」
善子「こっちの振りが大きすぎるわね」
ダイヤ「なんというか……」
果南「ん?」
ダイヤ「思ってた以上に真剣で……」
果南「確かにねー」
梨子「それにしても果南さん凄いですね」
果南「ん?何が?」
花丸「すぐにダンス覚えちゃうんだもんね」
曜「果南ちゃん昔から運動神経オバケだからねー」
ルビィ「いつもほわほわしてるのにね」
千歌「でもその分おバカだよねー」
果南「いや、千歌には言われたくないんだけど……」
善子「生徒会長も生徒会長でなんかやってるんですか?」
ダイヤ「日本舞踊なら幼い頃からずっとしてますが」
梨子「だからあんなに綺麗な動きなんですね」
ダイヤ「いえ、勝手が随分違うのでなかなか上手くはいきませんわ」
花丸「はっ!……オラの立場危うし……」
ルビィ「マルちゃんは歌が一番上手だから大丈夫だよぉ」ナデナデ
ーーー
ダイヤ「はぁ……思った以上に疲れましたわ、こんな事ならもう少し基礎体力を付けておくべきでしたね……」
果南「じゃあ明日から一緒に私のトレーニングする?」
ダイヤ「無茶言わないでください、果南さんに付き合ってたら1日で身体壊します」
果南「えー」
鞠莉「ふふっ♪二人共ありがとう」
果南「なに急に、気持ち悪いなぁ」
ダイヤ「もう少し言葉を選んでください……」
鞠莉「ほんとよねー、昔の果南はもっと優しかったのにー」
果南「悪かったねー、優しくなくなって」
鞠莉「それに比べてダイヤは全然変わらないわね」
ダイヤ「そうでしょうか?」
鞠莉「胸とか」
ダイヤ「張り倒しますよ」
果南「ぷっ♪」
ダイヤ「なんでそこで笑うんですか!そもそも二人が無駄に成長し過ぎなんですわ!」
鞠莉「きゃー♪セクハラよー♪」
ダイヤ「なっ……!そもそも話を振ったのは鞠莉さんでしょう!」
ワーワーキャーキャー
梨子「鞠莉さん、楽しそう」
曜「うん、なんか前より生き生きしてるね」
ルビィ「お姉ちゃんも嬉しそう♪」
千歌「やっぱり笑ってるのが一番だよね」
花丸「うん♪」
善子「ほのぼのするのも良いけどライブ近いんだからシャキッとしてよね」
梨子「よっちゃん……」
曜「なんか真面目なセリフ似合わないね……」
善子「なんで普通のこと言ったのにツッコまれるのよっ!?」ガーン
ーーー
千歌「じゃーん!」バーン
曜「あっ、夏まつりのチラシ!」
千歌「ここにちゅうもーく!」ビシッ
ルビィ「話題沸騰中……静岡発の人気スクールアイドル達によるスペシャルステージも開催……」
花丸「また大ごとになってるズラっ!?」
果南「去年何人くらい来てたっけ……」
ダイヤ「1日目は18万人くらいだったかと」
梨子「じゅーはちまん……」
善子「……東京の大会は?」
鞠莉「アキバドームシティホールは収容人数3000人超ね」
曜「何倍?」
千歌「6倍!」
ダイヤ「60倍ですわ……」ヤレヤレ
花丸「全員が見るわけじゃないにしてもそれでも数万人は確実に見るってことになるよね……」ガタガタ
ルビィ「そんなプロみたいなことやったら緊張で死んじゃうよ……」ガタガタ
果南「ま、今更後悔しても遅いし諦めて恥を晒そう♪」
ケラケラ
ダイヤ「貴女は全く……その通りですけど……」
ーーー
花丸「今日は風が涼しいズラぁ」ノビー
曜「潮のいい香りだねー」ノビー
果南「泳ぎたくなっちゃうよねー」ノビー
善子「あ、メール……」カチカチッ
千歌「7人だとフォーメーション難しいね」
梨子「それどころか次は9人になるからもっと大胆に変えることになるかも」
ルビィ「こうしてみると改めてμ'sって凄かったんですねー」
ダイヤ「そう言えばμ'sも9人でしたわね」
千歌「ダイヤさん知ってるの?」
ダイヤ「あれだけ話題になれば当然知ってますわ、これでもスクールアイドルをやろうとしてたこともあるんですから」
鞠莉「参考になるかもしれないからまたみんなで見てみる?」
ルビィ「見るっ!」
ダイヤ「ルビィ……貴女、ただ見たいだけじゃ……」
ルビィ「ぎくっ……」
曜「そろそろ再開しよっか」
千歌「はーい」
善子「ちょい待ちー」
果南「どうかした?」
善子「全員しゅーごー」
花丸「んん?」
千歌「なになに?」
善子「遂に来たわよ」
梨子「何が?」
善子「予選の案内」
曜「予選って……まさか」
ルビィ「遂に……夏のラブライブが始まるっ!」
善子「どうする?」
千歌「やる!」
善子「最初の予選は夏まつりの直後よ?」
果南「てことは、大会用に新曲を用意してる暇は無いね」
ダイヤ「この場合、私と果南さんは外れる方が良いのでは?」
果南「だね」
千歌「それはダメ」
花丸「うんっ、マルも9人で出たいズラ」
ダイヤ「足手まといになりますわ」
鞠莉「二人を外して出る大会に意味は無いわ」
梨子「私もそう思うかな」
ダイヤ「はぁ……」
果南「こりゃ言っても聞かないね」
善子「じゃ、責任もってリーダーがエントリーして」ズイッ
千歌「……?」
曜「……?」
鞠莉「……?」
梨子「……千歌さん?」
千歌「えっ?……あっ、リーダー私か!」
果南「えっ、それ忘れる……?」
ダイヤ「頭が痛くなってきましたわ……」
千歌「じゃあえっと……」カタカタカタ
花丸「本当に始まるんだね……」
ルビィ「うんっ!」
千歌「送、信!」カチッ
善子「オッケー」
曜「さーて、忙しくなるぞー!」
梨子「練習の前に一度ラブライブについて話した方がいいんじゃないかな、私もよく分かってないし」
千歌「そうだね、じゃあ予定変更!今からミーティング!部室に移動!」
ーーー
果南「ルビィせんせー、これさ何回くらい勝ち抜けばいいの?」キョシュ
ルビィ「参加組数にもよりますけど、本戦出場の為にルビィ達は最低でも県予選、県大会、地区予選の3回勝ち抜く必要があります」
鞠莉「なかなかに高い壁ね」
ルビィ「はい、例年通りならまず県予選はブロック毎に行われて約20組が県大会へ行きます、ちなみに去年の静岡県大会予選の出場組数は101組です」
善子「5分の1か……」
ルビィ「現段階のAqoursは静岡県内のランクで見れば27番目なので正直厳しいけど、可能性はあると思います」
曜「はーい」キョシュ
ルビィ「はい、曜ちゃん」
曜「県大会に行けたら?」
ルビィ「予選を勝ち抜いた約20組で県大会本戦が行われ上位5組に地区予選への出場権が与えられます」
千歌「それも勝ち抜いたら?」
ルビィ「Aqoursの場合は静岡、岐阜、愛知、三重の4県からそれぞれ勝ち進んだ計20組で地区予選が行われます」
花丸「地区予選からは何組が本戦に行けるズラ?」
ルビィ「ラブライブ本戦に行けるのは上位3組だけ」
花丸「まさに狭き門だね……」
ルビィ「そして全国15地区をそれぞれ勝ち抜いた計40組により2日間かけて本戦が行われます」
果南「ん?もしかして地区毎に本戦行ける組数が違う?」
ルビィ「うん、特に東京大会は参加組数がかなり多いから実質地区予選扱いで5組選出されるの」
千歌「ずるくない!?」
ルビィ「ううん、去年の東海地区の総参加は約400組だったんだけど、東京大会だけで約500組いたの」
鞠莉「ワーオ……」
ルビィ「他にも兵庫と大阪の阪神地区も5組で、東海、北海道、南関東、北九州が3組だったかな、後の地区は2組ずつ」
梨子「随分偏るのね……」
ルビィ「うん、都道府県毎に高校の数が何倍も違ったりするし、東京や阪神地区なんかは一校で2グループ以上参加したりするから」
ダイヤ「……ルビィってスクールアイドルに関する話をする時はいつもこんなに饒舌なんですか?」ヒソヒソ
曜「うん、凄いよね」
ルビィ「単純計算でも本戦に行けるのは100分の1以下、年々スクールアイドルは増えてるから実際はもっと少ないと考えてください」
善子「無理ゲーじゃないの」
ルビィ「正直なところ、ランク800代後半のAqoursが本戦に出れる確率は0に等しいです」
果南「ズバリ言っちゃうねー」
ルビィ「ただ一つ勝ち抜く方法があるとすれば……」
曜「あるとすれば……?」
ルビィ「夏まつりで更にブーストをかけた上での一般投票」
千歌「なにそれ?」
ルビィ「予選、本戦のすべてで行われるんだけど、審査員による技術面での採点とは別に一般観覧者による投票があるの」
ダイヤ「でも、それは学校関係者による集団投票でかなりの差が出るのでは?」
ルビィ「さすがお姉ちゃん、一つ一つ説明すると長くなるから省くけどそこはちゃんと色々対策がされてるから安心していいと思う」
ダイヤ「なるほど」
ルビィ「一般投票は総投票数から得票率を出してそれを元に加点されるの、だからそれで大きく加点することが出来ればチャンスがあると思う」
千歌「……?」
鞠莉「言わば魅力点ってところかしら」
ルビィ「うん、ラブライブ本戦出場が難しいのはそこ、どれだけ歌やダンスが上手くてもファンの心を掴めなきゃいけない、逆に言えば歌やダンスが多少拙くてもファンの支持を得られれば勝ち抜ける可能性があるの」
梨子「その指標がランキングなのね……」
果南「……そろそろ頭がパンクしそう」
善子「なるほどねー……」
花丸「より心動かされるアイドルになる必要があるってことだね」
ルビィ「うん、もちろんそれだけで全てが決まるわけじゃないし、冬は冬でまた少し違った採点基準があるんだけどそれはまたその時に話すね、というわけでルビィのラブライブ講座は以上でした」ペコリ
千歌「ルビィちゃんありがとう」
曜「なかなか骨が折れそうだねー」
ダイヤ「そうですわね」
千歌「でもやることは変わらないんじゃないかな」
善子「結局のところ、人気あるグループが勝てると」
ルビィ「乱暴な言い方になっちゃうけどそういうことだね……」
果南「私達が加入して人気落ちたりしない?」
花丸「果南さん、いつもより後ろ向きズラ」
果南「そりゃぁ、後から入るわけだし、今までみんながやって来たことを台無しにしちゃったらどうしよう、とか思うじゃん?」
ダイヤ「それについては私も果南さんと同じですわ」
千歌「大丈夫!」
果南「なんでそんなこと言い切れるの?」
千歌「今まで何とかなったから!」
曜「私達だって別に誰彼構わず加入させてるつもりはないよ」
ダイヤ「他にも加わりたいという方が?」
梨子「そういう訳じゃないですけど、でもなんとなくこのメンバーなら大丈夫かなって私も思います」
千歌「だからもうそういうネガティブな考え方無し!前だけ向いてー!」
曜「全速前進ヨーソロー!」ビシッ
善子「意味不明なんだけど」
果南「あはは♪」
ダイヤ「全く、敵いませんわ」クスクス
ーーー
曜「なんじゃこりゃー!」
花丸「おっきい画面がいっぱいズラ~!」
梨子「まさか……これ全部に映し出されるってこと?」
鞠莉「そういうことみたいね」
千歌「ほんとにプロのアーティストみたい!」
ルビィ「あわわわ……どうしよう、どうしよう、こんなところでライブするの!?」オロオロ
果南「めちゃくちゃお金かかってるねー」
ダイヤ「まさにスペシャルステージですわね……」
善子「ぅぇ……緊張で吐き気がしてきた……」
ルビィ「こんなフェスみたいな環境でほんとにやるの!?」
曜「何回確認するの、ルビィちゃん……」
ダイヤ「いきなりこんなところに立たされるなんて思いもしませんでしたわ……」
鞠莉「千歌っち、ルビィちゃん、代表の人が呼んでるから行くわよー」
千歌「あ、はーい」
ルビィ「うう、頭が回らない……」トボトボ
花丸「ルビィちゃん、頑張れ!」
果南「……」
ダイヤ「打ち合わせはいつもあの三人が?」
梨子「はい、千歌さんはリーダーで、ルビィちゃんはアイドルとか詳しいし、鞠莉さんも最年長ということで」
ダイヤ「そうでしたか……」
曜「うーん、これだけ広いとフォーメーションも少し直さなきゃダメだね」
善子「そうね、ここを直接見る人もいるわけだし、あんまり小さくまとまるような動きは無い方がいいかも」
花丸「ちょっと踊ってみる?」
曜「そだね、今のうちに動きは見た方がいいかも、とりあえずいつもの立ち位置に並んでみよっか」
梨子「こんな感じ?」
花丸「やっぱりいつもより広いね」
善子「んじゃ、半歩ずつ広がってみて?」
果南「こんな感じ?」
梨子「さっきよりは大きく見えるんじゃないかな?」
曜「これ以上広がっちゃうと踊りにくいかもだし、これで調整しよっか」
ダイヤ「分かりましたわ」
ーーー
ガヤガヤガヤ
梨子「いくら夏休みだからって……何この人だかり……」
曜「ぁぁ……もう酔ってきた……」ゲンナリ
果南「相変わらず曜は人混み苦手なんだね」
善子「そういや東京でも同じこと言ってたわね」
千歌「あー!浴衣着たかったー!」
ルビィ「仕方ないよ、ライブしなきゃダメなんだし」
花丸「浴衣は明日にお預けズラ」
ダイヤ「あんまりはしゃぎすぎて時間に遅れないようにお願いしますよ?」
鞠莉「それじゃ一時解散よー♪」
ーーー
ダイヤ「遅いですわ」
果南「まぁまぁ、まだ30分以上あるし」
ダイヤ「そういう気の緩みが後々に大事になるんです」
鞠莉「もぅだからってそんなにぷりぷり怒ることないじゃない」
ダイヤ「ダメです」
ルビィ「あ、お姉ちゃーん」
花丸「さすがダイヤさん、早いズラ」
善子「リリー達はまだなの?」
ダイヤ「まだですわ、全く……リーダーの自覚はあるんでしょうか……」
善子「……あんまり無いと思うわ」
果南「無さそうだねー……」
ダイヤ「はぁ……」
花丸「あ、あれ、千歌ちゃん達じゃないかな?」
鞠莉「あ、ほんとね、おーい♪」
曜「ほら千歌ちゃん!早くっ!」
梨子「遅くなってごめんなさい……!」
千歌「もごもご!」
ルビィ「千歌ちゃんハムスターみたいになってる……」
千歌「んくっ……いやぁ焼きそばの屋台が混んでて」アハハ
果南「あーなら仕方ないね」
ダイヤ「仕方なくありません、他のグループはもう来てるんですから、私達も挨拶して準備しますわよ」
曜「はーい」
鞠莉「梨子っち」
梨子「はい?」
鞠莉「口、ソース付いてるわよ」クスッ
梨子「っ……!」ゴシゴシ
鞠莉「それじゃ、出番までゆっくりしてましょうか」
千歌「やっぱり外に出ちゃだめー?」
梨子「ダメって言われたでしょ?」
果南「えー」
千歌「えー」
曜「えー」
梨子「人酔いするのになんで曜さんも出たがるの……」
曜「じっとしてるの苦手だし!」
善子「そもそもトリなんか引き当てるからこんな待ち時間長いんじゃない……」
千歌「いやぁ、私そんなにくじ運強い方じゃないんだけどねぇ♪」
ダイヤ「お陰で私と果南さんの出番が締めの1曲になってしまいましたわ」
花丸「多分今日一番の注目を浴びるズラ……」
果南「荷が重い……」
ルビィ「わぁぁ♪」
鞠莉「やっぱりこうして見るとみんなハイレベルねー」
梨子「負けてられないよね」
曜「なんか……前から思ってたんだけど、梨子ちゃんって結構負けず嫌いなとこあるよね」
梨子「えっ!?そ、そうかな……」
ダイヤ「そういえば、私達に勝負しろなんて持ちかけたのも桜内さんでしたわね」
梨子「いや……あれは……」
ルビィ「いつも頼りになるお姉さんって感じ♪」
善子「まぁ、普段忘れてるけど本当はリリーも三年生のはずだしね、なんだかんだ頼りになるわよね」
梨子「年齢だけで言えばそうだけど……」
曜「私は!?」キョシュ
善子「賑やかし」
曜「この団子引きちぎるぞこのやろー!」ガシッ
善子「ぎゃー!やめなさいよー!」
ダイヤ「貴女達、あんまり騒がない!」
鞠莉「始まる前から体力使ってどうするのよ、もー」
梨子「あはは……」
ーーー
千歌「曜ちゃん、リボン曲がってるよ」
曜「ほんと?こう?」
花丸「スゥー……ハァー……スゥー……ハァー」
ルビィ「こう?こっち?」
善子「さっきの方がいいかも」
果南「なんかやっぱり恥ずかしいなぁ……」
千歌「果南ちゃんってフリフリな服全然着ないもんねー」
果南「変じゃない?大丈夫?」
鞠莉「とっても似合ってるわよー♪ベリープリティー♪」
果南「余計恥ずかしくなってくるからやめてよ……」
ダイヤ「もう少し締めてもらって大丈夫ですわ」
梨子「じゃあこれくらいですか?」
ダイヤ「はい、ありがとうございます」
千歌「よーし、じゃーいつもやろう!」
果南「いつもの?」
花丸「円陣組んで番号を言っていくの」
ダイヤ「掛け声みたいなのもあるんですか?」
ルビィ「千歌ちゃんがアクアーって言ったらサンシャイーンってみんなで言うの」
ダイヤ「……なんでサンシャインなんですか?」
果南「どうせ、千歌が適当に決めたんでしょ」
千歌「グサァッ!バレてる!?と、とりあえずやるよ!」
ルビィ「はぁい♪」
曜「2っ!」
ルビィ「3っ!」
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ!」
梨子「6!」
花丸「7っ!」
果南「じゃあ8っ!」
ダイヤ「9っ!」
千歌「アクアー!」
9人「サンシャイーン!」
曜「じゃあ先に行ってまいります!」ビシッ
ルビィ「頑張ってくるね!」
善子「しっかり盛り上げておくわ」
果南「いってらっしゃい」
ダイヤ「……」
果南「……」
ダイヤ「頼もしい背中ですわね」
果南「うん、ちょっと寂しいね」
ダイヤ「ええ、ですがその分、追いかける楽しみが出来ましたわ」
果南「だね!」
ようちか「善子ちゃん!」
善子「うわっ!?ちょっといきなり大声で入ってこないでよ」
ルビィ「あれ?今日、練習休みだよね?」
梨子「気になって気になって仕方ないみたい」
ダイヤ「桜内さんもですか?」
梨子「いえ、私は二人に引っ張り出されて……」
ダイヤ「あぁ、なるほど」
善子「ダメ、明日までおあずけ、私だって昨日夜にアップしてから見てないんだから」
曜「先輩の権限で見せてよっ」
善子「ダメなもんはダメよ、ネット周りは私が一任されてるんだから私の指示に従ってもらうわ」
千歌「じゃあリーダー命令で!」ビシッ
善子「却下」
千歌「なんでなのだー!」ガーン
梨子「だから明日みんなで見ればいいじゃない」
千歌「梨子ちゃんは気にならないの!?」
梨子「気にはなるけど……」
千歌「でしょ!?」
善子「そもそも今日、予選用に衣装直しに来てるだけでノーパソ持ってきてないし」
曜「えっ!?」
梨子「残念でした、帰るよ二人とも」ガシッ
千歌「あーん……気になって宿題に身が入らないよー」ズルズル
曜「上の空になっちゃうよー」ズルズル
梨子「日頃の宿題も出来てないのに何言ってるの……」
ルビィ「ば、バイバーイ……」
善子「先輩としてどうなのよあれ……」
ダイヤ「昔からあんな感じですわ……」
ーーー
鞠莉「おっまたせー♪」
千歌「遅いっ!」ビシッ
果南「ごめんごめん」
善子「んじゃ、揃ったし見ましょうか」カチカチッ
ルビィ「何位くらいになってるかな」
梨子「多分、他のグループも上がってるだろうけど……」
ダイヤ「この結果次第で夏のラブライブへの活路が開けるかどうか決まるのですね」
善子「……」カチ…
花丸「……善子ちゃん?」
曜「ど、どう?」
善子「……ん」スッ
ルビィ「ランク……471位!?」
果南「結構いいの?」
善子「いいなんてもんじゃないわ、上位10%くらいまでくい込んできたのよ」
梨子「始めてまだ半年も経ってないのにもうこんなところまで来ちゃった……」
千歌「これなら……ラブライブだってほんとに夢じゃないかも!」
曜「私達って実は凄いのかな!?」
鞠莉「イエース!勝利の女神が微笑んでくれてるのかも♪」
ルビィ「……」
ダイヤ「……ルビィ?嬉しくないの?」
ルビィ「嬉しいけど……」
花丸「けど?」
ルビィ「本当に大変なのはここからだから」
善子「……あー、そっか」
曜「どういうこと?」
善子「ほら、私達これまで上がる時は一気に上がってたでしょ?」
千歌「うん」
善子「特にみとしーライブの時、どのくらいランク上がったか覚えてる?」
鞠莉「……あっ、そういう事ね……」
花丸「2500位くらいから900位くらいまで上がってたような……」
梨子「あっ……それで上昇率で全国4位になったんだ……」
ルビィ「うん……上昇率って実はランクが低い方がずっと取り上げられやすいの」
果南「そうなの?」
ルビィ「だいたい二週間毎に集計されるんだけど、その期間で特にランクを大きく上げたグループがピックアップされるのが上昇率ランキングなの」
ダイヤ「なるほど……」
果南「それじゃ……」
ルビィ「うん、もちろん他にも色んな特集とかあるけど、やっぱり注目を浴びる事は今までよりずっと少なくなってくるから、ここから先はランクを一つ上げるだけでも難しいと思う」
千歌「……」
ルビィ「特にこのくらいのランクになってくると他のグループは3年目だったりするから固定のファンも多くいるし……」
鞠莉「動画を一つ上げるだけでも1度に多くのポイントが動く訳ね」
ルビィ「うん……もしかしたら今のランクで身動きが取れなくなるかもしれない……」
千歌「でも……だからって止まるわけにはいかないよね」
鞠莉「ふふっ♪そうね♪」
善子「まぁ、まぐれだったとしても間違いなくここまで来れたわけだし」
花丸「チャンスはあるズラ!